説明

流体噴射装置および流体噴射方法

【課題】顔料系の流体を用いた場合であっても、長期間の待機後に良好な噴射を可能とする流体噴射装置及び流体噴射方法を提供する。
【解決手段】記録紙に向けてインクを噴射する複数のノズル17からなる噴射面21Aを有する流体噴射ヘッド13を備えたインクジェットプリンタであって、インクは、溶媒との比重差が1以上の二酸化チタンを含み、記録ヘッド13を回動させることで記録紙12の搬送経路12Aに対する噴射面21Aの向きを変化させるヘッド回動機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置および流体噴射方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置としてのインクジェットプリンタは、小型高画質で、急速に普及している。中でも微細な顔料粒子を分散させた顔料系インク(流体)は、反射濃度も高く、普通紙での画質に優れることから多く利用されている。しかし、顔料インクは、長時間静的に保管されると、顔料粒子のみが溶液中に沈降し、インクタンク下層の顔料濃度が高くなる現象が発生する。顔料粒子の沈降は、インクを多孔質吸収体に収納した形態のタンクにおいても発生するが、インクを液体状態で収納するタンクにおいて顕著である。
【0003】
従来、沈降した顔料の攪拌は、インクタンクの液体収納部に直接、耐溶剤性樹脂で被覆された磁性体を入れ、プリンタの内部のキャリッジ移動範囲内に複数個の永久磁石を配置することで、キャリッジの移動によってインクタンク内の耐溶剤性樹脂で被覆された磁性体が、プリンタ内部の永久磁石の影響を受けて移動することで沈降インクの攪拌を行うものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−187943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、磁性体を収容可能な空間がないと実施できないという問題点を有している。また、インクジェット用の白色インクとしては、耐候性のよい二酸化チタン顔料を用いることが好ましいが、溶媒に対して比重の大きい二酸化チタン顔料ではすぐに沈降、凝集してしまい、保存安定性に大きな問題があった。
これらのことから、より簡単な構成で、非噴射状態で長時間放置した場合でも、インク(沈殿、凝集した沈殿物)を噴射再開前に攪拌できる装置、または、ノズル開口部に沈殿物が堆積・固化しない装置が望まれている。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、顔料系の流体を用いた場合であっても、長期間の待機後に良好な噴射を可能とする流体噴射装置及び液滴吐出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流体噴射装置は、上記課題を解決するために、媒体に向けて流体を噴射する複数のノズルからなる噴射面を有する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置であって、前記流体は、溶媒との比重差が1以上の微粒子を含み、前記流体噴射ヘッドを回動させることで前記媒体の搬送経路に対する前記噴射面の向きを変化させる回動機構を有することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、回動機構により流体噴射ヘッドの姿勢を変えることで媒体の搬送経路に対する噴射面の向きを変化させることにより、微粒子を含む流体を攪拌することができる。溶媒との比重差が1以上の微粒子は沈降しやすい。そのため、本発明のように、流体噴射ヘッドにおける噴射面(ノズル)の向きを適宜変化させることが可能な構成とすることによって、沈降して凝集した微粒子を攪拌することができる。よって、非噴射状態で長時間放置された場合でも、噴射再開前に微粒子の分散性を確保することが可能である。また、ノズルに微粒子(沈殿物)が堆積、固化するのを防止することができる。これにより、噴射再開時に噴射不良が生じるのを防止することができる。
【0008】
また、回動機構により、流体噴射ヘッドを噴射姿勢とは異なる姿勢で待機させることにより、ノズルに微粒子が堆積及び固化するのを防止することができる。これによって、ノズルの目詰まり発生を防止することが可能である。
【0009】
また、前記微粒子が二酸化チタンからなることが好ましい。
本発明によれば、溶媒に対する比重が大きく沈降しやすい二酸化チタンを含む流体であっても、流体の保存安定性を確保することができる。これにより、噴射不良が生じるのを防止することができる。
【0010】
また、前記噴射面に当接し、メンテナンス処理時に前記流体噴射ヘッドから前記流体が排出されるキャップ部材を備え、前記キャップ部材が、少なくとも回動前後の前記流体噴射ヘッドの前記噴射面をそれぞれ被覆することが好ましい。
【0011】
本発明によれば、一つのキャップ部材で少なくとも回動前後の流体噴射ヘッドの噴射面を被覆することが可能である。これにより、流体噴射ヘッドの姿勢が変化してもその噴射面が保湿されて流体が乾燥するのを防止することができる。したがって、ノズルの目詰まりを生じさせることなく噴射再開時に良好な噴射が可能となる。
なお、回動中の流体噴射ヘッドの噴射面を被覆するようにしても良い。
【0012】
また、前記噴射面に当接し、メンテナンス処理時に前記流体噴射ヘッドから前記流体が排出されるキャップ部材と、回動後の前記流体噴射ヘッドの前記噴射面を被覆する被覆部材と、を有し、前記被覆部材と前記キャップ部材とが前記流体噴射ヘッドの回動方向に配置されていることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、メンテナンス用のキャップ部材とは別に被覆部材を設けたので、メンテナンス用のキャップ部材を流体噴射ヘッドの回動に伴って移動させる必要がなくなる。よって、キャップ部材の構造が複雑化するのを避けることができる。
また、被覆部材により回動後の流体噴射ヘッドの噴射面を保湿することができる。これにより、流体の乾燥を防止することができるので、ノズルの目詰まりを防止して、再噴射時に噴射不良が発生するのを抑制できる。
【0014】
また、メンテナンス時にはキャップ部材により噴射姿勢とされた流体噴射ヘッドの噴射面を被覆することによってメンテナンス処理(吸引処理)を行うことが可能である。また、キャップ部材と被覆部材とが流体噴射ヘッドの回動方向に配置されていることから、流体噴射ヘッドの噴射面に対するキャップ部材および被覆部材の位置合わせが容易となる。これにより、キャップ部材および被覆部材によって噴射面を確実にキャッピングすることができる。
【0015】
また、前記流体噴射ヘッドが、前記媒体の搬送方向とは交差する方向に延在する軸を中心に回動可能であることが好ましい。
本発明によれば、流体噴射ヘッドが、媒体の搬送方向とは交差する方向に延在する軸を中心に回動可能な構成としたので、媒体に対向している流体噴射ヘッドの姿勢(噴射面の向き)を容易に変えることができる。ラインヘッドのような長尺形状の記録ヘッドの場合、媒体の搬送方向と交差する方向に延在する軸を中心に回動させれば、回動領域を最小限に抑えることが可能である。したがって、本発明は、回動させることで装置が大型化するのを回避したいラインヘッドに適用した場合に、特に効果的である。
【0016】
また、流体噴射ヘッドの噴射面を媒体とは反対側(重力方向上側)に向けて待機させることが好ましい。すると、微粒子は噴射面から遠ざかるようにして沈降するため、ノズル側には溶媒のみが存在する。よって、待機中にノズル内に微粒子が詰まるような不具合をなくすことができる。また、噴射姿勢へと復帰させる際、流体噴射ヘッドの回動距離が長くなるので沈降した微粒子を効率よく攪拌することが可能となる。
【0017】
本発明の流体噴射装置は、溶媒との比重差が1以上の微粒子を含む流体を、媒体に向けて噴射する複数のノズルからなる噴射面を有する流体噴射ヘッドと、前記流体噴射ヘッドを回動させることで前記媒体の搬送経路に対する前記噴射面の向きを変化させる回動機構と、前記流体噴射ヘッドに対する噴射指令の有無に応じて前記回動機構の駆動または停止を切り換える制御装置と、を有することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、制御装置が、流体噴射ヘッドに対する噴射指令の有無に応じて、回動機構の駆動または停止を切り換えることから、流体噴射ヘッドの噴射面が媒体に対向した状態で噴射指令があった場合には、制御装置は回動機構を駆動させず、停止したままの姿勢で媒体に向けて流体の噴射を開始する。一方、流体噴射ヘッドが噴射姿勢であるにもかかわらず噴射指令がない場合には、制御装置が回動機構を駆動させて、搬送経路に対する流体噴射ヘッドの噴射面の向きを変化させる。そして、次の噴射指令があるまで回動後の状態で流体噴射ヘッドを待機させる。そして、流体噴射ヘッドが待機状態にあるときに噴射指令があった場合には、再び回動機構を駆動させることにより流体噴射ヘッドを回動させて待機姿勢から噴射姿勢へと復帰させ、噴射面が媒体に対向した状態で噴射を開始する。
【0019】
また、前記制御装置は、時間に応じて前記回動機構の駆動または停止を切り換えることが好ましい。
本発明によれば、時間に応じて回動機構の駆動または停止を切り換えることとしたので、例えば噴射終了後、所定時間が経過しても噴射指令がない場合に回動機構を駆動させることが可能である。1ジョブ終了後はすぐまた噴射指令が出される可能性が高いので、噴射姿勢としておくことで噴射動作をスムーズに実行することが可能である。
また、所定時間ごとに回動機構の駆動または停止を切り換えることは、流体噴射ヘッド内の流体を所定時間毎に攪拌することとなり、長時間噴射指令がない場合でも、流体中の微粒子の分散性を確保することが可能になり、良好な噴射が行える。
【0020】
本発明の流体噴射方法は、溶媒との比重差が1以上の微粒子を含む流体を、媒体に向けて噴射する複数のノズルからなる噴射面を有する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射方法であって、噴射姿勢において前記噴射面が前記媒体の搬送経路に対向する前記流体噴射ヘッドを回動させて前記搬送経路に対する前記噴射面の向きを変化させる回動段階と、回動後の姿勢から前記噴射姿勢へと前記流体噴射ヘッドの姿勢を復帰させる復帰段階と、を有する。
【0021】
本発明によれば、流体噴射ヘッドを回動させてその姿勢を適宜変化させることにより、流体噴射ヘッドが揺動し、待機中に沈殿した微粒子を攪拌することが可能である。特に、回動後の姿勢から噴射姿勢へと流体噴射へッドの姿勢を復帰させる復帰段階において流体が攪拌されることになり、噴射再開前に流体中の微粒子の分散性を確保することができ、るので、ノズルに目詰まりが生じることなく良好な噴射が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る流体噴射装置の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る流体噴射装置として、インクジェット式プリンタを例示する。
【0023】
図1は、本実施形態のインクジェット式プリンタ(以下、インクジェットプリンタ100と称す)の概略構成図、図2は、記録ヘッド13の周辺の要部平面図、図3は、記録ヘッド3の噴射面21Aを示す平面図である。
インクジェットプリンタ100は、図1及び図2に示すように、記録対象物である記録紙12に対して記録を行う記録部10と、記録部10のメンテナンス処理を行うメンテナンス部11とを有している。
【0024】
記録部10は、インク滴を噴射して記録紙12に画像形成する記録ヘッド13(流体噴射ヘッド)と、記録紙12を搬送する記録紙搬送機構34と、記録ヘッド13に供給するインク(流体)を貯留したインク貯留部15とを有している。
【0025】
記録ヘッド13は、インクジェットプリンタ100が対象とする最大サイズの記録紙12の少なくとも一辺を越える長さ(最大記録紙幅W)に亘ってノズル17(図3)が多数配列された、所謂ラインヘッド型の記録ヘッドである。本実施形態においては、少なくとも各色(Y、M、C、K、W)に対応した5つの印刷部5Y,5M,5C,5K,5Wを備えている。各印刷部5Y,5M,5C,5K,5Wは、インク滴を噴射するためのノズル17を多数整列配置してなるノズル列L(図3)をそれぞれ有しており、当該ノズル列Lの形成された領域がノズル形成領域21Bとなっている。
【0026】
ノズル列Lは、記録紙12の搬送方向に沿って順に配設されている。ノズル列Lは、ノズル17による1列のライン又はノズル17による複数列のラインであって、ノズル17の数やラインの数は適宜設定される。図3はノズル列Lの一実施例を示すものであり、ノズル17による複数列のラインを示している。ライン数を増やすことにより、一度に広範囲の記録が可能になるとともに、画像の解像度も高まる。
【0027】
記録ヘッド13は、最大記録紙幅Wに対応する長さ方向を記録紙12の搬送方向と直交する方向に配置され、各ノズル列Lのノズル17からインク滴が記録紙12に噴射されることにより記録紙12に画像が記録される。
【0028】
インク貯留部15は、プリンタ本体16の一側に配置されており、不図示のインク供給手段により後述の記録ヘッド13へインクを供給する。このインク貯留部15は、インクジェットプリンタ100の各色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、白(W)に対応する色のインクを貯蔵するインクタンク15Y,15M,15C,15K,15Wを有している。インク貯留部15と記録ヘッド13との間は、不図示のインク供給手段を介して連通されている。
【0029】
インクジェットプリンタ100は、インク貯留部15と記録ヘッド13とを連通するインク供給手段として、複数のインク供給流路(不図示)を有しており、各インクタンク15Y,15M,15C,15K,15Wから各印刷部5Y,5M,5C,5K,5Wへとインクが供給されるようになっている。
【0030】
記録紙搬送機構34は、紙送りモータ(不図示)や、この紙送りモータによって回転駆動される紙送りローラなどを有しており、記録(印字・印刷)動作に連動させて記録紙12を記録ヘッド13に対向するようにその搬送経路12Aに沿って順次送り出すことができるようになっている。
【0031】
メンテナンス部11は、ノズル17の乾燥防止又はノズル17内で増粘したインクを排出させる吸引動作を行うためのキャッピング装置50と、残留したインク等、記録ヘッド13の噴射面21Aに付着している異物を拭き取ったり、払ったりするワイピング装置70(図6参照)と、キャッピング装置50によって排出されたインクを回収する廃インクタンク39とを含んでいる。
【0032】
キャッピング装置50は、キャップ部材51と、キャップ部材51の底部に接続された排出チューブ54と、排出チューブ54上に配置された吸引機構40とを有している。
キャップ部材51には、凹部56が形成されており、この凹部56内にインク吸収体57が設けられている。インク吸収体57は、インクを保持可能(吸収可能)なスポンジ状部材、あるいは多孔部材等から構成されるものであり、後述するようなキャッピング装置50を用いた吸引動作によりノズル17から排出されたインクを吸収することで噴射面21Aに排出されたインクが付着しないようにするためのものである。このようなキャップ部材51は、凹部56の開口側が記録ヘッド13の噴射面21Aに対向して配置されている。
【0033】
また、記録ヘッド13は、噴射姿勢の状態でヘッド移動機構(不図示)によって上下方向に移動可能とされている。具体的には印刷位置とメンテナンス位置との間において上下方向に移動可能となっている。ここで、噴射姿勢とは、記録ヘッド13の噴射面21Aが記録紙12の搬送経路12Aに対向した状態をいう。
【0034】
なお、印刷位置とは、記録ヘッド13のノズル17から記録紙12へインクを噴射することによって記録を行う位置であり、相対的に記録ヘッド13を上方に移動させた位置である。また、メンテナンス位置とは、吸引機構40により、記録ヘッド13のノズル17におけるメンテナンス処理が行われる位置であり、相対的に記録ヘッド13を下方に移動させた位置である。
【0035】
本実施形態で用いるインクは、記録材(染料、顔料)及びこれを溶解または分散する溶媒を基本的成分とし、また必要に応じて各種添加剤が添加されている。
白色インク(W)は、溶媒である水に二酸化チタンからなる顔料粒子(微粒子)を加えたものである。通常の顔料の比重が約1.0〜0.3程度であるのに対し、二酸化チタンの比重は3.7〜4.2である。二酸化チタンの添加量は、インク全体に対して1〜50質量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは3〜30質量%である。1質量%未満であると、印刷した際の隠蔽性が低下し、50質量%よりも多いと、二酸化チタンの分散性や記録ヘッド13のノズル17に目詰まり防止に問題を生じさせる可能性がある。
なお、溶媒として、水に水溶性有機溶媒等を加えたもの、または、有機溶媒を用いてもよい。
【0036】
淡色系インク(Y,M,C,K)は、溶媒である水に二酸化チタン以外の顔料及び/または染料を適量添加したものである。染料、あるいは顔料としては種々のものが挙げられるが、特にアルカリ可溶性のものが好ましい。
インク組成物の具体例としては、本願の出願人による特開2002−348513号公報の段落0039および段落0040に記載されているものが挙げられる。
【0037】
以下、図4を参照して記録ヘッド13の構成について詳述する。図4は、記録ヘッド13の一部を示す断面図である。
図4に示すように、記録ヘッド13は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えている。ノズル基板21には複数のノズル17が形成されており、ノズル基板21の下面が、複数のノズル17が形成された領域(ノズル形成領域21B)を含む噴射面21Aとなっている。
なお、ノズル形成領域21Bは、噴射面21Aに形成されたすべてのノズル17のうち、最外周に配置されたノズル17の外端を結んだ領域により規定される。
【0038】
ヘッド本体18は、合成樹脂からなる箱形の部材である。ヘッド本体18には、駆動ユニット24を収容する収容空間23と、外部から供給されたインクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成されている。
収容空間23内に配置された駆動ユニット24は、複数の圧電素子25と、複数の圧電素子25の上端を支持する固定部材26と、駆動信号を圧電素子25に供給する柔軟なケーブル27とを備えている。圧電素子25は、複数のノズル17のそれぞれに対応して設けられている。
内部流路28は、ヘッド本体18を図4上下方向に貫通して形成されており、図示上側から供給されるインクを流通させ、図示下端側の開口端を介して流路形成ユニット22に供給する。
【0039】
流路形成ユニット22は、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を積層し、接着剤等で接合一体化したものである。流路形成ユニット22には、ヘッド本体18の内部流路28と接続された共通インク室29と、共通インク室29と接続されたインク供給口30と、インク供給口30と接続された圧力室31とを備えている。圧力室31は、各々のノズル17に対応して設けられており、各々の圧力室31は、共通インク室29と反対側の端部においてノズル17に接続されている。
【0040】
振動板19は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工したものである。振動板19の圧力室31に対応する部分には、エッチングなどにより支持板を環状に除去することで、圧電素子25の下端と接合される島部32が形成されている。島部32はダイヤフラム部として機能する。すなわち、振動板19は、圧力室31上において、島部32の周囲の弾性フィルムの部分が圧電素子25の駆動に応じて弾性変形し、島部32が上下動するようになっている。また、振動板19と内部流路28の下端近傍との間にも、支持板の一部を除去して弾性フィルムのみとした部分が設けられており、この部分が共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33となっている。
【0041】
流路基板20は、内部流路28の下端とノズル17とを接続する共通インク室29、インク供給口30、及び圧力室31それぞれの空間を形成するための凹部を有する。これらの凹部は、流路基板20の基材となるシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることで形成されている。
【0042】
ノズル基板21は、所定方向に所定間隔(ピッチ)で形成された複数のノズル17を有する。本実施形態のノズル基板21は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された板状の部材である。ノズル基板21の外面が噴射面21Aである。(尚、上述のように噴射面21Aは、ノズル基板21の下面によって形成されている。)
【0043】
そして、ケーブル27を介して圧電素子25に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19がキャビティに接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。これにより、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル17から、インクが噴射される。
【0044】
このように、本実施形態の圧電素子25は、ノズル17よりインクを噴射するために、入力される駆動信号に基づいて、ノズル17に接続された圧力室31の圧力を変動させる。そして、ノズル17から噴射されたインクによって記録紙12に所望の画像が形成される。
【0045】
図5(a)、(b)は、インクジェットプリンタ100における要部構成を模式的に示す斜視図である。
本実施形態における記録ヘッド13は、上下方向(Y方向)の移動のほか、ヘッド回動機構53によってその起立姿勢を変化させるべく回動可能に構成されている。
【0046】
具体的に記録ヘッド13は、図5(a)に示すように、記録紙12の搬送方向(X方向:矢印で示す)とは交差する方向(Z方向)に延在する回動軸Oを中心として回動可能な構成となっている。回動軸Oは、記録ヘッド13の中心に位置していることが好ましく、これによって、記録ヘッド13の回動領域を最小限に抑えることができる。
この構成により、印刷状態と非印刷状態とで記録ヘッド13の姿勢を反転させることが可能である。
【0047】
ところで、本実施形態に係るインクジェットプリンタ100は、白色インク(W)による印刷が可能なものである。白色インクは、黒色などの明度の低い印刷面に印刷することにより視認性の良好な記録物が得られる。しかしながら、白色インクは、二酸化チタンの比重と溶媒の比重の差により、二酸化チタンが沈降、凝集しやすいため、非印刷時に記録ヘッド13を噴射姿勢のまま待機させておくと、印刷を再開した際に凝集した二酸化チタンが記録ヘッド13の微細なノズル17を目詰まりさせるおそれがある。
【0048】
これに対して、本実施形態では、記録ヘッド13が回動軸Oを中心に回動可能となっており、非印刷時には、図5(a)の噴射姿勢から図5(b)の待機姿勢へと記録ヘッド13の姿勢を変化できるようになっている。
【0049】
図5(a)に示すように、記録ヘッド13の噴射面21Aが記録紙12の搬送経路12Aに対向した姿勢を噴射姿勢とすると、図5(b)に示すように、搬送経路12Aに対する記録ヘッド13の噴射面21Aの向きを反転させた状態が待機姿勢である。本実施形態では、噴射面21Aが上方(搬送経路12Aとは反対側)へ向くように記録ヘッド13を略180度回転させた状態を待機姿勢とし、このとき記録ヘッド13の噴射面21Aとは反対側の上面21Cが搬送経路12Aに対向している。
【0050】
噴射面21Aを上方に向けた姿勢で待機させることにより、インク中の二酸化チタンはその自重に従って噴射面21Aとは反対側に向かって沈降する。そのため、噴射面21A側には溶媒のみが存在することになり、沈降した二酸化チタンによってノズル17が目詰まりするようなことはない。
【0051】
インクジェットプリンタ100は、待機姿勢とされた記録ヘッド13の噴射面21Aを被覆する被覆部材43をさらに有している。被覆部材43には凹部43Aが形成されており、噴射面21Aのノズル形成領域21Bに対応した大きさの開口43aを有している。被覆部材43は、記録ヘッド13のキャップ部材51とは反対側に配置され、記録紙12の搬送方向において噴射姿勢の記録ヘッド13やキャップ部材51の位置と一致している。被覆部材43は、その開口43a側を記録ヘッド13に向けた状態で記録ヘッド13に対して近接あるいは離間する方向(図中の矢印で示す方向)に移動可能となっており、待機姿勢とされた記録ヘッド13の噴射面21Aに当接して被覆する。
【0052】
記録ヘッド13の噴射面21Aを被覆部材43によって被覆することによって、噴射面21Aとの間に形成される空間を保湿することができる。
【0053】
図6は、インクジェットプリンタ100の電気的な構成を示すブロック図である。
本実施形態におけるインクジェットプリンタ100は、全体の動作を制御する制御装置58を備えている。この制御装置58には、インクジェットプリンタ100の動作に関する各種情報を入力する入力装置59と、インクジェットプリンタ100の動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60とが接続されている。
【0054】
また、制御装置58には、記録紙搬送機構34、キャリッジ駆動装置7、キャッピング装置50及びワイピング装置70を含むメンテナンス部11、被覆部材43、ヘッド回動機構53等が接続されている。また、インクジェットプリンタ100は、圧電素子25を含む駆動ユニットに入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。この駆動信号発生器62は、制御装置58に接続されている。
【0055】
駆動信号発生器62には、記録ヘッド13の圧電素子25に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて吐出パルス等の駆動信号を発生する。
【0056】
以下、インクジェットプリンタ100の動作の一実施形態について説明する。
まず、記録ヘッド13による印刷動作について説明する。
制御装置58は、印刷すべき画像に基づいて、駆動信号発生器62から圧電素子25に駆動信号を入力する。
制御装置58を介して圧電素子25に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に近接する方向および離れる方向に変形(移動)する。
振動板19の変形に伴い、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル17から、インクが噴射される。
そして、ノズル17から噴射されたインクによって、記録紙12に所望の画像が形成される。
【0057】
次に、ヘッド回動機構53の動作について説明する。図7(a)〜(c)は、記録ヘッド13の回動状態を説明する断面図である。
ヘッド回動機構53の駆動または停止は制御装置58によって制御される。制御装置58は、記録ヘッド13に対する印刷指令(噴射指令)の有無に応じてヘッド回動機構53の駆動または停止を切り換える。
【0058】
[印刷時]
インクジェットプリンタ100の初期状態においては、図7(a)に示すように、記録ヘッド13の噴射面21Aが記録紙12(搬送経路12A)に対向した状態となっている。この状態で噴射指令があった場合には、制御装置58はヘッド回動機構53を駆動させず、そのままの姿勢(噴射姿勢)で記録紙12に向けてインクの噴射を開始する。印刷中、制御装置58は、記録ヘッド13の噴射姿勢を維持する。
【0059】
1ジョブの印刷終了後は、すぐまた印刷指令が出される可能性が高いので、次の指令が出されるまで、記録ヘッド13の噴射面21Aをキャップ部材51によってキャッピングする。
【0060】
[非印刷時]
非印刷時において、制御装置58は、ヘッド回動機構53を駆動させて記録ヘッド13を待機姿勢にする(回動段階)。
具体的には、印刷終了後、記録ヘッド13が噴射姿勢(図7(a))であるにもかかわらず噴射指令がない場合には、制御装置58がヘッド回動機構53を駆動させて記録ヘッド13を回動軸O周りに回動させ、搬送経路12Aに対する噴射面21Aの向きを変化させる(図7(b))。本実施形態では、記録ヘッド13を180°程度回動させて噴射面21Aを記録紙12の搬送経路12Aとは反対側に向けた状態にし、上面21Cを搬送経路12Aに対向させる(図7(c))。そして、次の噴射指令があるまで回動後の状態(待機姿勢)で記録ヘッド13を待機させる。
【0061】
次に、制御装置58は、図7(c)に示すように被覆部材43を下降させ、待機姿勢とされた記録ヘッド13の噴射面21Aに当接させてノズル形成領域21B全体を被覆する。被覆部材43により噴射面21Aを被覆することにより、被覆部材43と噴射面21Aとの間に形成される空間K内が保湿され、ノズル17からのインクの蒸発を防いでインクが増粘したり固化するのを抑制する。
【0062】
[再印刷時]
再印刷時において、制御装置58は、図7(a)に示すようにヘッド回動機構53を駆動させて記録ヘッド13を噴射姿勢へと復帰させる(復帰段階)。
具体的には、記録ヘッド13が待機姿勢とされた状態にあるときに噴射指令があった場合、制御装置58は、まず、被覆部材43を上昇させて噴射面21Aから離間させ、被覆状態を解除する。
その後、制御装置58は、ヘッド回動機構53を駆動させて待機姿勢(図7(c))の記録ヘッド13を回動軸O周りに回動させ、再び噴射姿勢へと復帰させる(図7(a))。
【0063】
制御装置58は、印刷指令の有無に応じてヘッド回動機構53の駆動または停止を切り換えることによって、上述した回動段階および復帰段階を繰り返し行う。また、印刷指令が出されるまでの間、記録ヘッド13を所定の回動範囲で往復させて記録ヘッド13自体を揺動させることにより、印刷前にインクの攪拌を十分に行うようにしても良い。
【0064】
制御装置58は、印刷指令の有無のほか、時間に応じてヘッド回動機構53の駆動または停止を切り換える。例えば、印刷終了後、所定時間が経過しても印刷指令がない場合、非印刷状態であると判断し、ヘッド回動機構53を駆動させて記録ヘッド13を回動させる。本実施形態では、印刷終了後から約3分経過しても印刷指令が来なければ、回動段階へ移行して記録ヘッド13を待機姿勢へと反転させる。
【0065】
以上述べたように、本実施形態では、ヘッド回動機構53により、印刷時と非印刷時とで記録ヘッド13の姿勢を適宜変化させることができる。白インクに含まれる顔料粒子、つまり二酸化チタンは溶媒(水)との比重差が大きいため沈降し易く、記録ヘッド13を噴射姿勢のまま待機させると、沈降、凝集した二酸化チタンによってノズル17が目詰まりするおそれがある。そのため本実施形態のように、非印刷時に記録ヘッド13を回動させて噴射面21Aを上方に向けた状態で待機させることで、噴射面21Aとは反対側に向かって二酸化チタンが沈降して噴射面21A側には溶媒のみが存在することになる。よって、沈降した二酸化チタンがノズル17に堆積、固化して目詰まりするのを防ぐことができる。
【0066】
また、非印刷状態から印刷状態へと移行する際に待機姿勢から噴射姿勢へと記録ヘッド13の向きを変化させることによって、記録ヘッド13を揺動させる。すると、記録ヘッド13内のインクが攪拌されて、待機中に凝集した二酸化チタンを分散させることができ、結果的に印刷再開時に良好な噴射が可能となる。このように、記録紙12の搬送方向に対する記録ヘッド13の噴射面21Aの向きを適宜変化させることによって、溶媒に対する比重が大きく沈降しやすい二酸化チタンを分散させることができる。
よって、非噴射状態で長時間放置された場合でも、噴射再開前にインク中の二酸化チタンの分散性を確保することが可能となり、噴射再開時に噴射不良が生じるのを回避することができる。
【0067】
本実施形態のようなラインヘッドとされた記録ヘッド13の場合、記録紙12の搬送方向と交差する方向に延在する回動軸Oを中心にして回動させることによって、記録ヘッド13の回動領域を最小限に抑えることが可能である。したがって、回動させることで装置が大型化するのを回避することができる。
【0068】
また、本実施形態では、被覆部材43により待機中の記録ヘッド13の噴射面21Aを保湿することができる。これにより、ノズル17からのインクの乾燥を防止することができてノズル17の目詰まりが防止される。また、例えば被覆部材43内に噴射面21Aを保湿する保湿材を設けてもよい。
【0069】
また、被覆部材43とキャップ部材51とが記録ヘッド13の回動方向に配置されていることから、記録ヘッド13の噴射面21Aに対するキャップ部材51および被覆部材43の位置合わせが容易である。これにより、制御装置58が被覆部材43およびキャップ部材51を記録ヘッド13に対して上下動させるだけで、噴射姿勢あるいは待機姿勢とされた噴射面21Aをそれぞれ確実にキャッピングすることが可能である。
【0070】
キャップ部材51においては、印刷指令間の僅かな時間であっても、噴射姿勢の記録ヘッド13の噴射面21Aをキャッピングすることによって、ノズル17からのインクの蒸発を抑制し、良好な噴射を維持することが好ましい。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもなく、上記各実施形態を組み合わせても良い。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば、上記実施形態では、待機姿勢とされた記録ヘッド13の噴射面21Aを被覆部材43によって被覆するようになっているが、メンテナンスに用いるキャップ部材51により被覆するようにしても良い。その場合、例えば、噴射姿勢あるいは待機姿勢とされた記録ヘッド13の噴射面21Aをそれぞれ被覆するようにしてもいいし、印刷終了後に噴射姿勢の記録ヘッド13の噴射面21Aをキャッピングし、そのまま記録ヘッド13の回動に伴ってキャップ部材51を移動させることで回動中も引き続き噴射面21Aをキャッピングするようにしても良い。
【0073】
これにより、一つのキャップ部材51で記録ヘッド13の噴射面21Aを被覆することが可能となる。但し、待機中の記録ヘッド13の噴射面21Aをキャッピングする際、キャップ部材51内のインク吸収体57に含まれたインクが噴射面21A側に漏れ出さないように、回動前に吸引機構40によりインク吸収体57内のインクをある程度吸引しておくことが好ましい。
【0074】
また、上記実施形態では、記録ヘッド13の噴射面21Aを上方(搬送経路12Aとは反対側)に向けた状態を待機姿勢としたが、この姿勢に限ることなく、搬送経路12Aに対する噴射面21A(ノズル17)の向きを変化させることができればその回動範囲は問わない。但し、回動角度が大きいほどインクの攪拌効果を得やすくなる。そのため、例えば記録ヘッド13を回動軸Oを中心に360°回転可能な構成としてもよい。
【0075】
また、記録ヘッド13の回動速度を可変可能な構成にしてもよく、例えば、回動段階よりも復帰段階の記録ヘッド13の回動速度を高めることで、攪拌効果を高めるようにしても良い。
【0076】
また、上記実施形態では、記録ヘッド13の長手方向(搬送方向と交差する方向)に延在する回動軸Oを中心に回動させる構成としたが、記録ヘッド13の短手方向(搬送方向に沿う方向)に延在する回動軸を中心に回動させても良い。この場合も、記録ヘッド13の中心部に回動軸を配置することが好ましい。
【0077】
また、上記実施形態では、記録ヘッド13の長手方向(搬送方向と交差する方向)に延在し、かつ、記録ヘッド13の長手方向に交差する面(側面)にある回動軸Oを中心に回動させる構成としたが、回動軸を記録ヘッド13の長手方向(搬送方向と交差する方向)に延在し、かつ、記録ヘッド13の長手方向に交差する面(側面)以外に配置するように構成し、回動軸を中心に記録ヘッド13を回動させても良い。具体的には、回動軸と記録ヘッド13の距離を一定に保つことができる部材を構成すれば良い。
【0078】
また、ラインヘッドに限らず、記録ヘッドを主走査方向(記録紙の幅方向)に移動させながらインクを吐出する主走査方向の移動動作と、記録紙を副走査方向に移動する動作とを組み合せて印刷を行う所謂シリアルヘッド型プリンタに、ヘッド回動機構を適用することも可能である。
【0079】
上記実施形態は、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置と、その流体を収容した流体容器を採用しても良い。
【0080】
微小量の液滴を吐出させる流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。
【0081】
また、流体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
【0082】
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0083】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および流体容器に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本実施形態のインクジェットプリンタの概略構成図。
【図2】記録ヘッド周辺の要部平面図。
【図3】噴射面を示す平面図。
【図4】記録ヘッドの概略構成を示す断面図。
【図5】インクジェットプリンタにおける要部構成を模式的に示す斜視図。
【図6】インクジェットプリンタの電気的な構成を示すブロック図。
【図7】記録ヘッドの回動状態を説明する断面図。
【符号の説明】
【0085】
12…記録紙(媒体)、12A…搬送経路、13…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、17…ノズル、21A…噴射面、43…被覆部材、51…キャップ部材、53…ヘッド回動機構(回動機構)、58…制御装置、100…インクジェットプリンタ(流体噴射装置)、O…回動軸(軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に向けて流体を噴射する複数のノズルからなる噴射面を有する流体噴射ヘッドを備えた流体噴射装置であって、
前記流体は、溶媒との比重差が1以上の微粒子を含み、
前記流体噴射ヘッドを回動させることで前記媒体の搬送経路に対する前記噴射面の向きを変化させる回動機構を有する
ことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記微粒子が二酸化チタンからなる
ことを特徴とする請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記噴射面に当接し、メンテナンス処理時に前記流体噴射ヘッドから前記流体が排出されるキャップ部材を備え、
前記キャップ部材が、少なくとも回動前後の前記流体噴射ヘッドの前記噴射面をそれぞれ被覆する
ことを特徴とする請求項1または2記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記噴射面に当接し、メンテナンス処理時に前記流体噴射ヘッドから前記流体が排出されるキャップ部材と、
回動後の前記流体噴射ヘッドの前記噴射面を被覆する被覆部材と、を有し、
前記被覆部材と前記キャップ部材とが前記流体噴射ヘッドの回動方向に配置されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記流体噴射ヘッドが、前記媒体の搬送方向とは交差する方向に延在する軸を中心に回動可能である
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の流体噴射ヘッド。
【請求項6】
溶媒との比重差が1以上の微粒子を含む流体を、媒体に向けて噴射する複数のノズルからなる噴射面を有する流体噴射ヘッドと、
前記流体噴射ヘッドを回動させることで前記媒体の搬送経路に対する前記噴射面の向きを変化させる回動機構と、
前記流体噴射ヘッドに対する噴射指令の有無に応じて前記回動機構の駆動または停止を切り換える制御装置と、を有する
ことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項7】
前記制御装置は、所定時間ごとに前記回動機構の駆動または停止を切り換える
ことを特徴とする請求項6記載の流体噴射装置。
【請求項8】
溶媒との比重差が1以上の微粒子を含む流体を、媒体に向けて噴射する複数のノズルからなる噴射面を有する流体噴射ヘッドを用いた流体噴射方法であって、
噴射姿勢において前記噴射面が前記媒体の搬送経路に対向する前記流体噴射ヘッドを回動させて前記搬送経路に対する前記噴射面の向きを変化させる回動段階と、
回動後の姿勢から前記噴射姿勢へと前記流体噴射ヘッドの姿勢を復帰させる復帰段階と、を有する
ことを特徴とする流体噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−36496(P2010−36496A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203375(P2008−203375)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】