説明

流体噴射装置及び流体噴射方法

【課題】ヘッドの重複領域におけるドットの分散性の悪化を抑制する。
【解決手段】流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、流体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列であって、所定方向における一方側の端部が前記第1ノズル列の所定方向における他方側の端部と重なる重複領域を形成して配置された第2ノズル列と、入力画像データから変換されたドットサイズを示すドットデータに応じて第1ノズル列と第2ノズル列から流体を噴射させる制御部であって、重複領域において、ドットサイズ毎の発生率データに第1ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて第1ノズルから流体を噴射させ、重複領域において、ドットサイズ毎の発生率データに第2ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて第2ノズルから流体を噴射させる流体噴射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置及び流体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置の一つとして、ヘッドに設けられたノズルからインク(流体)を噴射して画像を形成するインクジェットプリンター(以下、プリンター)が挙げられる。このようなプリンターの中には、複数の短尺のヘッドを紙幅方向に並べて、その複数のヘッドの下を搬送される媒体に対してヘッドからインクを噴射して画像を形成するプリンターがある。
【0003】
特許文献1には、各ヘッドの端部(ノズル列の一部)を重複させて、複数のヘッドを配置したプリンターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−255175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヘッドの端部が重複するプリンターの中には、ヘッドのつなぎ目(以下、「重複領域」という)で形成すべきドット(ハーフトーン処理後のドットデータ)を、紙幅方向に並ぶヘッドのうちの何れか一方のヘッドにマスクを用いて分配するものがある。しかしながら、ハーフトーン処理とドットの分配処理はそれぞれ独立した処理である。よって、ハーフトーン処理によるドットの分散性とマスキング処理によるドットの分散性との間に関連性がなく、重複領域におけるドットの分散性が悪化するという問題がある。すなわち、ヘッドの重複領域におけるドットの分散性の悪化を抑制することが望まれる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ヘッドの重複領域におけるドットの分散性の悪化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
(A)流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、
(B)流体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列であって、前記所定方向における一方側の端部が前記第1ノズル列の前記所定方向における他方側の端部と重なる重複領域を形成して配置された第2ノズル列と、
(C)入力画像データから変換されたドットサイズを示すドットデータに応じて前記第1ノズル列と前記第2ノズル列から流体を噴射させる制御部であって、
前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第1ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて前記第1ノズルから前記流体を噴射させ、前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第2ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて前記第2ノズルから前記流体を噴射させる制御部と、
を備える流体噴射装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1Aは、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図1Bは、プリンター1の概略図である。
【図2】図2Aは、ヘッドユニット30に設けられたヘッド31の配列を示す図であり、図2Bは、ヘッド31の下面のノズル配列を示す図である。
【図3】図3は、ヘッドユニットのノズルによってドットが形成される画素を説明する図である。
【図4】比較例の印刷データの作成処理のフローチャートである。
【図5】重複領域に対応するハーフトーン済みデータを上流側ヘッド31Bのノズル列と下流側ヘッド31Aのノズル列に割り当てる様子を示す図である。
【図6】第1ノズル列と第2ノズル列の使用率を示す図である。
【図7】ドット発生率変換テーブルを示す図である。
【図8】本実施形態の印刷データの作成のフローチャートである。
【図9】本実施形態における重複領域のドット発生率変換テーブルを示す図である。
【図10】ドット発生率データ拡張処理のフローチャートである。
【図11】重複領域のデータを複製し、重複領域データに各ノズル列の使用率を乗算する様子を示す図である。
【図12】図12Aは、ディザマスクを示す図であり、図12Bは、ディザ法によるハーフトーン処理の様子を示す図である。
【図13】本実施形態で用いられるディザマトリックスの生成方法の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】格納要素決定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図15】マトリックスに1〜25番目にドットが形成されやすい閾値(0〜24)が格納された様子を示すマトリックスMG24と、これらの要素に対応する25個の画素の各々にドットが形成された様子を示す説明図である。
【図16】格納候補要素選択処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図17】行方向決定済み閾値数と列方向決定済み閾値数とを示す説明図である。
【図18】格納候補要素の対応ドットと決定済み閾値の対応ドットとがオンされた状態(ドットパターンDpa1)を示す説明図である。
【図19】ドット形成状態を数値化したマトリックス、すなわちドット密度を定量的に表したドット密度マトリックスDpa1を示す説明図である。
【図20】図20Aは、比較例の重複領域におけるドット発生数のばらつきを示すグラフであり、図20Bは、本実施形態の重複領域におけるドット発生数のばらつきを示すグラフである。
【図21】比較例と本実施形態における粒状性指数の結果を示すグラフである。
【図22】あるラスターラインが隣のラスターラインの濃度に影響を及ぼす例を示す図である。
【図23】テストパターンを示す図である。
【図24】シアンの補正用パターンをスキャナーで読み取った結果である。
【図25】濃度むら補正値Hの具体的な算出方法を示す図である。
【図26】各ノズル列(CMYK)に関する補正値テーブルを示す図である。
【図27】シアンのn番目の列領域に関して各階調値に対応した補正値Hを算出する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。すなわち、
(A)流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、
(B)流体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列であって、前記所定方向における一方側の端部が前記第1ノズル列の前記所定方向における他方側の端部と重なる重複領域を形成して配置された第2ノズル列と、
(C)入力画像データから変換されたドットサイズを示すドットデータに応じて前記第1ノズル列と前記第2ノズル列から流体を噴射させる制御部であって、
前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第1ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて前記第1ノズルから前記流体を噴射させ、前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第2ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて前記第2ノズルから前記流体を噴射させる制御部と、
を備える流体噴射装置。
このようにすることで、ハーフトーン処理後のマスキングの処理を行わないこととすることができる。そして、第1ノズルと第2ノズルのそれぞれについて、ドットサイズ毎の発生率データに使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行うので、ヘッドの重複領域におけるドットの分散性の悪化を抑制することができる。
【0010】
かかる流体噴射装置であって、
前記制御部は、
前記入力画像データのうちの前記重複領域に対応する画像データを複製し、
複製した前記重複領域に対応する画像データを前記入力画像データに挿入し、
前記重複領域に対応する画像データに基づいて生成したドットサイズ毎の発生率データに前記第1ノズル列の前記他方側の端部の使用率を乗算したデータを、ハーフトーン処理し、
挿入した前記重複領域に対応する画像データに基づいて生成したドットサイズ毎の発生率データに前記第2ノズル列の前記一方側の端部の使用率を乗算したデータを、ハーフトーン処理することが望ましい。
このようにすることで、適切に重複領域におけるドットデータを生成することができる。
【0011】
また、前記ドットサイズ毎の発生率データは、前記入力画像データの階調値に応じて形成されるドットサイズと、当該ドットサイズにおける発生率と、を示すテーブルに応じて求められることが望ましい。
このようにすることで、テーブルに応じて形成されるドットサイズとドットサイズの発生率を求めることができる。
【0012】
また、前記ドットサイズ毎の発生率データを求めるための前記テーブルは、前記重複領域と前記重複領域ではない非重複領域とで異なるものが用いられることが望ましい。
このようにすることで、重複領域において非重複領域よりも小さなドットを高い確率で発生させるテーブルを用いることができる。
【0013】
また、前記重複領域に属するある前記第1ノズルの前記使用率は、その前記第1ノズルよりも前記他方側に位置する前記第1ノズルの前記使用率よりも高く、
前記重複領域に属するある前記第2ノズルの前記使用率は、その前記第2ノズルよりも前記一方側に位置する前記第2ノズルの前記使用率よりも高いことが望ましい。
このようにすることで、異なるノズル列により形成される画像の境目を目立たなくすることができる。
【0014】
また、前記ハーフトーン処理において用いられるディザマスクのしきい値は、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記使用率を乗じた値に応じて所定の画素群の各々に形成されるドット密度の差が所定の範囲内となるように決定されていることが望ましい。
このようにすることで、形成される画像の部分的あるいは局所的な濃度むらが抑制されたハーフトーン処理を実現することができる。
【0015】
また、本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項も明らかとなる。すなわち、
(A)流体を噴射するノズルが所定方向に並んだノズル列を含むヘッドと、
(B)前記ヘッドを前記所定方向と交差する交差方向に移動させる移動部と、
(C)前記流体を噴射する媒体を前記所定方向に搬送する搬送部と、
(D)前記ヘッドを前記交差方向に移動させて前記流体を噴射させる第1ドット形成動作を行わせた後、前記媒体を搬送させ、前記ヘッドを前記交差方向に移動させて前記流体を噴射させる第2ドット形成処理を行わせる制御部であって、前記媒体上において前記第1ドット形成動作における前記ノズル列の一端と前記第2ドット形成動作における前記ノズル列の他端とで重複領域を形成させ、
入力画像データから変換されたドットサイズを示すドットデータに応じて前記ノズル列から流体を噴射させる制御部であって、
前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第1ドット形成動作における前記一端の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて前記一端のノズルから前記流体を噴射させ、前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第2ドット形成動作における前記他端の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて前記他端のノズルから前記流体を噴射させる制御部と、
を備える流体噴射装置である。
このようにすることで、ハーフトーン処理後のマスキングの処理を行わないこととすることができる。そして、重複領域におけるノズル列の一端と他端のそれぞれについて、ドットサイズ毎の発生率データに使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行うので、ヘッドの重複領域におけるドットの分散性の悪化を抑制することができる。
【0016】
また、本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項も明らかとなる。すなわち、
流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、
流体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列であって、前記所定方向における一方側の端部が前記第1ノズル列の前記所定方向における他方側の端部と重なる重複領域を形成して配置された第2ノズル列と、を備える流体噴射装置から流体を噴射させる流体噴射方法であって、
(A)前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第1ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータを求め、前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第2ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータを求めるステップと、
(B)前記第1ノズル列のドットデータに応じて前記第1ノズル列における重複領域のノズルから前記流体を噴射し、前記第2ノズル列のドットデータに応じて前記第2ノズル列における重複領域のノズルから前記流体を噴射するステップと、
を含む流体噴射方法である。
このようにすることで、ハーフトーン処理後のマスキングの処理を行わないこととすることができる。そして、第1ノズルと第2ノズルのそれぞれについて、ドットサイズ毎の発生率データに使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行うので、ヘッドの重複領域におけるドットの分散性の悪化を抑制することができる。
【0017】
===システム構成===
インクジェットプリンターの中のラインヘッドプリンター(以下、プリンター1)とコンピューター50が接続された印刷システムを流体噴射装置として、実施形態を説明する。
【0018】
図1Aは、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図1Bは、プリンター1の概略図であり、プリンター1が用紙S(媒体)を搬送する様子を示す図である。外部装置であるコンピューター50から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー10により、各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット30)を制御し、用紙Sに画像を印刷する。また、プリンター1内の状況を検出器群40が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0019】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11は、外部装置であるコンピューター50とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13は、CPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12は、メモリー13に格納されているプログラムに従ったユニット制御回路14により各ユニットを制御する。
【0020】
搬送ユニット20は、搬送ベルト21と搬送ローラー22A,22Bを有し、用紙Sを印刷可能な位置に送り込み、用紙Sを搬送方向に所定の搬送速度で搬送する。搬送ベルト21上に給紙された用紙Sは、搬送ローラー22A,22Bにより搬送ベルト21が回転することによって、搬送ベルト21上の用紙Sが搬送される。また、搬送ベルト21上の用紙Sを下側から静電吸着やバキューム吸着するとよい。
【0021】
ヘッドユニット30は、用紙Sにインク滴を噴射するためのものであり、複数のヘッド31を有する。ヘッド31の下面には、インク噴射部であるノズルが複数設けられる。各ノズルには、インクが入った圧力室(不図示)と、圧力室の容量を変化させてインクを噴射させるための駆動素子(ピエゾ素子)が設けられている。
【0022】
このようなプリンター1では、コントローラー10が印刷データを受信すると、コントローラー10は、まず、用紙Sを搬送ベルト21上に送る。その後、用紙Sは、搬送ベルト21上を一定速度で停まることなく搬送され、ヘッド31のノズル面と対向する。そして、ヘッドユニット30の下を用紙Sが搬送される間に、画像データに基づいて、各ノズルからインク滴を断続的に噴射する。その結果、用紙S上には、搬送方向に沿ったドット列(以下、ラスターラインとも呼ぶ)が形成され、画像が印刷される。なお、画像データは、2次元に配置された複数の画素から構成され、各画素(データ)は、各画素に対応する媒体上の領域(画素領域)にドットを形成するか否かを示す。
【0023】
<ノズル配置について>
図2Aは、ヘッドユニット30に設けられたヘッド31の配列を示す図であり、図2Bは、ヘッド31の下面のノズル配列を示す図である。本実施形態のプリンター1では、図2Aに示すように、搬送方向と交差する紙幅方向に複数のヘッド31を並べて配置し、各ヘッド31の端部を重複させて配置している。また、紙幅方向に隣り合うヘッド31A,31Bを搬送方向にずらして配置している(千鳥状に配置している)。紙幅方向に隣り合うヘッド31A,31Bのうち、搬送方向下流側のヘッド31Aを「下流側ヘッド31A」と呼び、搬送方向上流側のヘッド31Bを「上流側ヘッド31B」と呼ぶ。また、紙幅方向に隣り合うヘッド31A,31Bを合わせて「隣接ヘッド」と呼ぶ。
【0024】
図2Bでは、ヘッドの上部から透過的にノズルを見ている。図2Bに示すように、各ヘッド31の下面には、ブラックインクを噴射するブラックノズル列Kと、シアンインクを噴射するシアンノズル列Cと、マゼンタインクを噴射するマゼンタノズル列Mと、イエローインクを噴射するイエローノズル列Yが形成されている。各ノズル列は358個のノズル(#1〜#358)から構成されている。また、各ノズル列のノズルは紙幅方向に一定の間隔(例えば720dpi)で並んでいる。なお、各ノズル列に属するノズルに対して、紙幅方向の左側から順に小さい番号を付す(#1〜#358)。
【0025】
そして、紙幅方向に並ぶヘッド31A,31Bは、各ヘッド31のノズル列の端部の8個のノズルを重複させて配置している。具体的には、下流側ヘッド31Aのノズル列の左側端部の8個のノズル(#1〜#8)と上流側ヘッド31Bのノズル列の右側端部の8個のノズル(#351〜#358)を重複させ、下流側ヘッド31Aのノズル列の右側端部の8個のノズル(#351〜#358)と上流側ヘッド31Bのノズル列の左側端部の8個のノズル(#1〜#8)を重複させている。図示するように、隣接ヘッド31A,31Bにおいて、ノズルが重複している部分を「重複領域」と呼ぶ。また、重複領域に属するノズル(#1〜#8,#351〜#358)を「重複ノズル」と呼ぶ。
【0026】
また、紙幅方向に並ぶヘッド31A,31Bの端部にて重複しているノズルの紙幅方向の位置は一致している。即ち、下流側ヘッド31Aの端部ノズルの紙幅方向の位置と、それに対応する上流側ヘッド31Bの端部ノズルの紙幅方向の位置が等しい。例えば、下流側ヘッド31Aの最も左端のノズル#1と上流側ヘッド31Bの右から8番目のノズル#351との紙幅方向の位置は等しく、下流側ヘッド31Aの左から8番目のノズル#8と上流側ヘッド31Bの最も右端のノズル#358との紙幅方向の位置は等しい。また、下流側ヘッド31Aの最も右端のノズル#358と上流側ヘッド31Bの左から8番目のノズル#8との紙幅方向の位置は等しく、下流側ヘッド31Aの右から8番目のノズル#351と上流側ヘッド31Bの最も左端のノズル#1との紙幅方向の位置は等しい。
【0027】
このようにヘッドユニット30において複数のヘッド31を配置することで、紙幅方向の全域に亘ってノズルを等間隔(720dpi)に並ばせることができる。その結果、等間隔(720dpi)にドットが並んだドット列を紙幅長さに亘って形成することができる。
【0028】
図3は、ヘッドユニットのノズルによってドットが形成される画素を説明する図である。図には、上流側ヘッド31Bのノズル列と下流側ヘッド31Aとが示されている。また、これらのノズルの下には、ドットが形成される画素がセル状に示されている。図において、各ノズルに付されたハッチングの方向と、そのノズルがドットの形成を受け持つ画素のハッチングの方向とを一致させてある。図に示されるように、重複領域では2つのノズル列が分担してドットの形成を行うことになる。
【0029】
<比較例の印刷データ作成処理>
図4は、比較例の印刷データの作成処理のフローチャートであり、図5は、重複領域に対応するハーフトーン済みデータを上流側ヘッド31Bのノズル列(以下、第1ノズル列と呼ぶ)と下流側ヘッド31Aのノズル列(以下、第2ノズル列と呼ぶ)に割り当てる様子を示す図であり、図6は、第1ノズル列と第2ノズル列の使用率を示す図である。以下、比較例の印刷方法を実施するための印刷データの作成処理(比較例)について説明する。
【0030】
比較例の印刷方法では、所望の画像濃度を得るために重複領域で形成すべきドットを、第1ノズル列(上流側ヘッド31B)または第2ノズル列(下流側ヘッド31A)のいずれか一方の重複ノズルで必ず形成する。例えば、図3に示すように、画像データでは重複領域に対応付けた全ての画素にドットを形成するように示している場合、その全ての画素に対して、第1ノズル列又は第2ノズル列の何れか一方の重複ノズルにより、ドットが形成される。このような印刷を行うための印刷データの作成処理を以下に示す。なお、ここでは、プリンター1に接続されたコンピューター50にインストールされたプリンタードライバーによって印刷データが作成されるとする。
【0031】
図4に示すように、プリンタードライバーは、各種アプリケーションプログラムから画像データを受信すると(S102)、解像度変換処理を行う(S104)。解像度変換処理とは、各種アプリケーションプログラムから受信した画像データを媒体Sに印刷する際の解像度に変換する処理である。解像度変換処理後の画像データはRGB色空間により表される256階調(高階調)のRGBデータである。そのため、プリンタードライバーは、次に、色変換処理にて、RGBデータをプリンター1のインクに対応したYMCKデータに変換する(S106)。そして、プリンター1に濃度むら補正値Hが設定されている場合には、プリンタードライバーは、補正値Hによって256階調のYMCKデータを補正する(S108)。
【0032】
次に、プリンタードライバーは、ドット発生率変換処理を行う(S108)。
図7は、ドット発生率変換テーブルを示す図である。ドット発生率変換処理において、プリンタードライバーは、各画素における階調値をドット発生率変換テーブルにあてはめ、いずれのドットサイズについてどれだけの発生率で生成するかの変換を行う。例えば、入力階調値(以下、単に「階調値」と言うことがある)が「180」であった場合、大ドットが生成されることになることが分かる。また、その大ドットの発生率が約40%となっていることが分かる。また、ここでは、ドット発生率に対応したレベルデータが示されている。すなわち、レベルデータは、ドット発生率を256段階に置き換えたドット発生率ということができる。図7からは、ドット発生率が約40%のときのレベルデータが「100」となっていることが読み取れる。
【0033】
尚、階調値をあてはめた際、大ドットと中ドットとが切り替わる領域(入力階調値75〜255)や、中ドットと小ドットとが切り替わる領域(入力階調値0〜255)が存在するが、このような場合はより大きなサイズのドットのみが選択される。このようにすることで、各画素について、いずれかのサイズのドットが選択され、さらにそのサイズにおけるレベルデータ(ドット発生率)が得られることになる。
【0034】
次に、プリンタードライバーは、ハーフトーン処理を行う(S110)。ハーフトーン処理では、ディザマスク(「ディザマトリックス」と言うこともある)を適用し、上述のレベルデータとディザマスクにおけるセルの値とを比較して、セルの値よりも大きいレベルデータを有する場合にそのドットを形成するものと判定する。一方、セルの値以下のレベルデータを有する場合に、そのドットは形成しないものと判定する。このハーフトーン処理により、ドットサイズ毎に各画素におけるドットの生成の有無を示すデータが得られることになる。
【0035】
次に、プリンタードライバーは、画像分配処理にて(S114)、ハーフトーン処理済みのデータを第1ノズル列の重複ノズル(#351〜#358)と第2ノズル列の重複ノズル(#1〜#8)とに分配する。この分配は、ドットサイズ毎に行われる。
【0036】
図5の上図はハーフトーン処理後の大ドットの生成の有無を示すデータである。黒いマス目が大ドットを形成する画素を表し、白い部分が大ドットを形成しない画素を表す。また、一点鎖線で囲われたデータが第1ノズル列に割り当てられるハーフトーン済みデータであり、点線で囲われたデータが第2ノズル列に割り当てられるハーフトーン済みデータである。そして、重複して囲われたハーフトーン済みデータが、重複領域に対応するハーフトーン済みデータである。
【0037】
そして、図5の上から2番目の図は、プリンタードライバーによって、第1ノズル列と第2ノズル列に分配されたデータを示す。ただし、点線で囲われた重複領域データは、第1ノズル列の重複ノズルと第2ノズル列の重複ノズルの両方に割り当てられたデータである。そのため、図5の上から2番目の図に示すデータのままであると、第1ノズル列の重複ノズルによるドットと第2ノズル列の重複ノズルによるドットが全て重ねて形成されてしまう。そこで、プリンタードライバーは、重複領域データ(ハーフトーン済みデータ)が示すドットを、第1ノズル列の重複ノズルに形成させるのか、それとも、第2ノズル列の重複ノズルに形成させるのか、を決定する。そのために、図5の上から3番目の図に示すオーバーラップマスクを用いてマスキング処理(S116)が行われる。
【0038】
このマスキング処理は、オーバーラップマスクとの論理積を求めることにより行われる。すなわち、画素において分配データとして黒色で表されている画素とオーバーラップマスクにおいて黒色で表されている画素とが重複する場合に、その画素において中ドットが生成されることとする。ここで使用されるオーバーラップマスクは、図6のノズル使用率に応じて生成されたものであって、ノズル列の端部ほどドットの生成率が低くなるようなマスクとなっている。
【0039】
こうして重複領域データに対するマスキング処理(S116)によって、各ノズル列が形成を受け持つ画素のドットを特定することができた後、プリンタードライバーは、ラスタライズ処理によって、マトリックス状の画像データをプリンター1に転送すべき順に並べ替える(S118)。これらの処理を経たデータを、プリンタードライバーは、印刷方式に応じたコマンドデータと共に、プリンター1に送信する。プリンター1は、受信した印刷データに基づいて印刷を実施する。
【0040】
このようにして求められた画像データに基づいて重複領域を含めた印刷を行うことができる。しかしながら、上述のハーフトーン処理とマスキング処理は、それぞれが独立した処理である。よって、ハーフトーン処理によるドットの分散性とマスキング処理によるドットの分散性との間に関連性がなく、その結果、重複領域におけるドットの分散性が悪化するという問題がある。よって、以下に示すような実施形態により、ヘッドの重複領域におけるドットの分散性を改善する。
【0041】
<本実施形態>
図8は、本実施形態の印刷データの作成のフローチャートである。プリンター1に接続されたコンピューター50内のプリンタードライバーは、アプリケーションソフトから画像データを受信すると(S202)、比較例の印刷データの作成処理と同様に、解像度変換処理し(S204)、色変換処理し(S206)、濃度補正処理(S208、詳細は後述)し、ドット発生率変換(S210)を実施する。
【0042】
図9は、本実施形態における重複領域のドット発生率変換テーブルを示す図である。実施形態では、重複領域と非重複領域とで使用されるドット発生率変換テーブルが異ならされている。本実施形態において、非重複領域では、前述の図7に示されるドット発生率変換テーブルが用いられる。また、重複領域では、図9のドット発生率変換テーブルが用いられる。
【0043】
図7のドット発生率変換テーブルと図9のドット発生率変換テーブルとを比較すると、図9に示された重複領域におけるドット発生率変換テーブルのほうが、より小さいドットを発生させやすいテーブルになっていることがわかる。このように、重複領域では、より小さいドットを発生させることにより画質を向上させている。
【0044】
次に、プリンタードライバーは、ドット発生率データ拡張処理(S212)を行う。
図10は、ドット発生率データ拡張処理のフローチャートである。ドット発生率データ拡張処理において、最初に重複領域のデータの複製が行われる(S2122)。
図11は、重複領域のデータを複製し、重複領域データに各ノズル列の使用率を乗算する様子を示す図である。図11の上段の図は、前述のドット発生率変換(S210)により得られたレベルデータの発生率を示す図である。
【0045】
ここでは、第1ノズル列(上流側ヘッド31Bのノズル列)と第2ノズル列(下流側ヘッド31Aのノズル列)に対応付けられた大ドットの発生率のデータが示されている。図中の1マスが1画素に相当し、画素内に記載した数字がその画素における大ドットのレベルデータである。
【0046】
ここでは、説明の容易のために、大ドットの発生率に対応するレベルデータの値が対応する画素毎に示されているが、ドット発生率変換を経ることで、小ドット及び中ドットのものも生成されることになる。また、さらに説明の容易のために、各画素における大ドットのレベルデータを全て「100」(入力階調値が「200」のものが採用されている)として示している。
【0047】
また、太線で囲まれた画素(データ)が第1ノズル列及び第2ノズル列の重複領域に対応する「重複領域データ」である。また、画像データ上において、紙幅方向に対応する方向をX方向、搬送方向に対応する方向をY方向とする。プリンタードライバーは、重複領域データを複製する。その結果が、図11の上から2番目のデータであり、2つの重複領域データがX方向に並ぶ。
【0048】
次に、プリンタードライバーは、2つの重複領域データに対して各ノズル列の使用率を乗算する(S2124)。図11の最下段に示すデータが、重複領域データに各ノズル列の使用率を乗算した結果である。
【0049】
本実施形態のノズル使用率は、重複ノズルの位置に応じて変化させている。図11の上から3番目の図に示すように、第1ノズル列の使用率では、重複ノズルのうちの第1ノズル列側(左側)のノズルほど使用率が高く、徐々に使用率が低くなっている。一方、第2ノズル列の使用率では、重複ノズルのうちの第1ノズル列側(左側)のノズルほど使用率が低く、徐々に使用率が高くなっている。そして、第1ノズル列の使用率と第2ノズル列の使用率を合計すると、100%の使用率となる。
【0050】
例えば、元の重複領域データの最も左側の画素(列)は、第1ノズル列のノズル#351に割り当てられるデータであり、複製重複領域データの最も左側の画素(列)は、第2ノズル列のノズル#1に割り当てられるデータである。第1ノズル列のノズル#351の使用率を89%とし、第2ノズル列のノズル#1のノズルの使用率を11%とし、分配前の画素のレベルデータを「100」とする。この場合、図11の最下段に示すように、第1ノズル列のノズル#351に割り当てられるレベルデータが「89」となり、第2ノズル列のノズル#1に割り当てられるレベルデータが「11」となる。このように、重複ノズルの位置に応じて使用率を変化させることで、重複領域で形成された画像と非重複領域で形成された画像との濃度差を目立たないようにして印刷することができる。
【0051】
このようにして、ノズル使用率の乗算処理(S2124)が完了すると、次に、ノズル列ごとにハーフトーン処理(S214)が行われる。
【0052】
図12Aは、ディザマスクを示す図であり、図12Bは、ディザ法によるハーフトーン処理の様子を示す図である。ディザ法は、ディザマスクに記憶されたしきい値と各画素が示すレベルデータとの大小関係に基づいてドット形成の有無を判定する手法である。ディザ法によれば、1つのディザマスクが割り当てられる単位領域ごとに、画素が示すレベルデータに応じた密度でドットを発生させることができる。また、ディザ法によれば、ディザマスクのしきい値の設定によりドットを分散させて発生させることができ、画像の粒状性を向上させることもできる。
【0053】
図12Bには、第1ノズル列および第2ノズル列の非重複領域データと重複領域データに、ディザマスク(太線)が対応付けられる位置を示す。プリンタードライバーは、高階調(256階調)のレベルデータにおいて、X方向の左側、Y方向の上側から順に、ディザマスクを対応付けて、注目画素とそれに対応するディザマスクの閾値とを比較して、大ドット形成の有無を判断する。そして、2次元のレベルデータにおける左上の「256画素×256画素」に対するドット形成の有無の判定が終了したら、判定済みの画素のX方向の右側の「256画素×256画素」に対するドット形成の有無の判定を行う。こうして、2次元のレベルデータのX方向の全域に亘ってドット形成の有無の判定が終了したら、プリンタードライバーは、次に、Y方向の上から256番目よりも下の画素に対してX方向の左側から順にドット形成の有無を判定する。
【0054】
図12Bは、第1ノズル列の重複領域データの左から2番目・上から1番目の画素(ノズル#352に対応する画素)からX方向及びY方向に256個の画素に対して、対応付けられるディザマスクの位置を示す。プリンタードライバーは、例えば、ディザマスクの左上のしきい値「1」と、それに対応する画素の示すレベルデータ「77」を比較する。この場合、プリンタードライバーは、しきい値よりも画素の示すレベルデータの方が大きいので、大ドットを形成すると判定する。
【0055】
ここでは、大ドットに関して説明を行ったが、勿論、小ドット及び中ドットに関しても同様の処理が行われる。なお、図12Aに示すディザマスクは、256画素×256画素で構成されているが、16画素×16画素のディザマスクを用いることとしてもよい。また、ここでは通常のディザマスクを用いてハーフトーン処理を行う手法について説明したが、本実施形態で用いられるディザマスク(ディザマトリックス)は後述するような、ばらつき抑制型ディザマスクを用いることが望ましい。このような、ばらつき抑制型ディザマスクを用いたとしても、ハーフトーン処理の手法は上記と同様である。
【0056】
最後にラスタライズ処理(S216)を行う。ラスタライズ処理は、前述の比較例の手法と同様である。これらの処理を経たデータを、プリンタードライバーは、印刷方式に応じたコマンドデータと共に、プリンター1に送信する。プリンター1は、受信した印刷データに基づいて印刷を実施する。
【0057】
このようにすることで、ハーフトーン処理後のマスキングの処理を行わないこととすることができる。そして、第1ノズルと第2ノズルのそれぞれについて、レベルデータにノズル使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行うので、ヘッドの重複領域における粒状性の悪化を抑制することができる。さらに、ハーフトーン処理の際、後述するようなばらつき抑制型ディザマスクを用いることとしているので、各ラスターラインにおけるドットの派生量の変動を抑制することができる。
【0058】
図13は、本実施形態で用いられるディザマトリックスの生成方法の処理ルーチンを示すフローチャートである。この例では、説明を分かりやすくするために10行10列の小さなディザマトリックスを生成するものとしている。ディザマトリックスの最適性をあらわす評価としては、粒状性指数(後述)が使用されるものとしている。
【0059】
ステップS302では、着目閾値決定処理が行われる。着目閾値決定処理とは、格納要素の決定対象となる閾値を決定する処理である。本実施形態では、比較的に小さな値の閾値、すなわちドットの形成されやすい値の閾値から順に選択することによって閾値が決定される。このように、ドットが形成されやすい閾値から順に選択すれば、ドットの粒状性が目立つハイライト領域におけるドット配置をコントロールする閾値から順に格納される要素を固定していくことになるので、ドットの粒状性が目立つハイライト領域に対して大きな設計自由度を与えることができるからである。
【0060】
ステップS304では、格納要素決定処理が行われる。格納要素決定処理とは、着目閾値を格納する要素を決定するための処理である。このような着目閾値決定処理(ステップS302)と格納要素決定処理(ステップS304)とを交互に繰り返すことによってディザマトリックスが生成される。なお、対象となる閾値は、全ての閾値であっても良いし、あるいは一部の閾値であっても良い。
【0061】
図14は、格納要素決定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。ステップS310では、決定済み閾値の対応ドットがオンとされる。決定済み閾値とは、格納要素が決定された閾値を意味する。本実施形態では、前述のようにドットの形成されやすい値の閾値から順に選択されるので、着目閾値にドットが形成される際には、決定済み閾値が格納された要素に対応する画素には必ずドットが形成されることになる。逆に、着目閾値にドットが形成される最も小さな入力階調値においては、決定済み閾値が格納された要素以外の要素に対応する画素にはドットは形成されないことになる。
【0062】
図15は、マトリックスに1〜25番目にドットが形成されやすい閾値(0〜24)が格納された様子を示すマトリックスMG24と、これらの要素に対応する25個の画素の各々にドットが形成された様子を示す説明図である。このようにして構成されるドットパターンDpaは、26番目のドットをどの画素に形成すべきかを決定するために使用される。
【0063】
ステップS320では、格納候補要素選択処理が行われる。格納候補要素選択処理とは、印刷画素群に形成されるドット数のバラツキが過大とならないように格納候補を選択する処理である。
【0064】
図16は、格納候補要素選択処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。ステップS322では、ディザマトリックスMの行方向の決定済み閾値の最小数である行方向最小数Rminと、列方向の決定済み閾値の最小数である列方向最小数Cminとを算出する。
【0065】
図17は、行方向決定済み閾値数と列方向決定済み閾値数とを示す説明図である。図17から分かるように、たとえば、第1列の各要素には、閾値17、19、12の3個の閾値が格納されているが、第4列の各要素には、閾値16の1個の閾値のみが格納されている。一方、たとえば、第1行の各要素には、閾値17、7、14の3個の閾値が格納されており、第2行の各要素には、閾値1、24の2個の閾値が格納されている。このような各決定済み閾値数に基づいて、第4列における閾値数「1」が行方向最小数Cminとして決定されるとともに、第2行等における閾値数として「2」が列方向最小数Rminとして決定される。
【0066】
ステップS324では、着目要素選択処理が行われる。着目要素選択処理とは、決定済み閾値が格納されていない格納要素を所定の順序で選択する処理である。本実施形態では、第1列から列毎に順に選択されるものとしている。たとえば、最初の着目要素は、*1印が付された1行2列の要素が着目要素として選択され、1行3列(*2)、1行4列(*3)と順に選択されていくことになる。
【0067】
ステップS326では、差分計算処理が行われる。差分計算処理とは、着目要素が属する行方向決定済み閾値数Rtargetと行方向最小数Rminの行方向差分値Diff_Rと、列方向決定済み閾値数Ctargetと列方向最小数Cminの列方向差分値Diff_Cを算出する処理である。たとえば着目要素が1行2列の要素の要素である場合には、行方向決定済み閾値数Rtargetは、「3」で、行方向最小数Rminは「2」なので、行方向差分値Diff_Rは、「1」となる。一方、列方向決定済み閾値数Ctargetは、「3」で、列方向最小数Cminは「1」なので、列方向差分値Diff_Cは、「2」となる。
【0068】
ステップS328では、行方向差分値Diff_Rと列方向差分値Diff_Cの双方が所定の基準値よりも小さいか否かが判断される。この判断の結果、行方向差分値Diff_Rが基準値Nよりも小さく、かつ、列方向差分値Diff_Cが基準値Mよりも小さい場合には、処理がステップS329に進められる。一方、何れか一方が基準値以上である場合には、処理がステップS322に戻される。たとえば2つの基準値N、Mがいずれも「1」のときには、1行2列や1行3列の要素は、基準値以上となるが、1行4列の要素は、基準値よりも小さいことが分かる。
【0069】
ステップS329では、着目要素が格納候補要素に入れ替えられる。このように、着目要素が属する行と列の決定済み閾値数と、行と列の決定済み閾値数の最小値との差が所定の基準値よりも小さいものだけが格納要素として選択されることになる。具体的には、行番号に拘わらず、第4列、第7列、第9列、そして第10列に属する要素(ハッチングされた要素)のみが格納候補要素として選択されることになる。ステップS329の処理が完了すると、処理がステップS330(図14)に戻される。
【0070】
ステップS330では、格納候補要素の対応ドットがオンとされる。この処理は、ステップS310において、決定済み閾値の対応ドットとしてオンとされたドット群に追加される形で行われる。
【0071】
図18は、格納候補要素の対応ドットと決定済み閾値の対応ドットとがオンされた状態(ドットパターンDpa1)を示す説明図である。ここでは、格納候補要素は、1行7列の要素としている。図19は、このドット形成状態を数値化したマトリックス、すなわちドット密度を定量的に表したドット密度マトリックスDda1を示す説明図である。数字0は、ドットが形成されていないことを意味し、数字1は、ドットが形成されていること(ドットが格納候補要素に形成されていると仮定されている場合を含む)を意味する。
【0072】
ステップS340では、評価値決定処理が行われる。評価値決定処理は、このドット密度マトリックス(図19)に基づいて粒状性指数を評価値として算出する処理である。粒状性指数は、後述する計算式によって算出することができる。
【0073】
ステップS350では、今回算出された粒状性指数が、前回に算出された粒状性指数(図示しないバッファに格納)と比較される。比較の結果、今回算出された粒状性指数が小さい(好ましい)ときには、このバッファに算出された粒状性指数と格納候補要素と関連づけられて格納(更新)されるとともに、今回の格納候補要素が格納要素と仮に決定される(ステップS360)。
【0074】
このような処理は、全ての候補要素について行われ、最後に図示しないバッファに格納された格納候補要素に決定されることになる(ステップS370)。さらに、このような処理が全ての閾値、あるいは予め設定された範囲の全ての閾値について行われ、ディザマトリックスの生成が完了する(ステップS400、図13)。
【0075】
このように、各行と各列とにおいて各階調値で形成されるドット数の差が所定の範囲に制限されるので、局所的な濃度ムラを抑制して画質を向上させることができる。さらに、本実施形態では、各ラスターラインの濃度誤差を小さくするので、バンディングの発生をも抑制することができるという利点もある。
【0076】
図20Aは、比較例の重複領域におけるドット発生数のばらつきを示すグラフである。図20Bは、本実施形態の重複領域におけるドット発生数のばらつきを示すグラフである。ここでは、意図的にドットの発生量を後述するようなパーセンテージとなるような画像データを生成し、この画像データに応じて印刷を行わせたものである。それぞれの図には、ドットの発生量を意図的に3.05%としたときと、6.17%としたときと、6.17%に設定して印刷を行ったときの実際のドット発生量が示されている。横軸はノズル番号であり、ノズル#344〜#350は非重複領域のノズルであり、ノズル#351〜#358は重複領域のノズルである。
【0077】
図20Aを参照すると分かるとおり、比較例の手法では、ドットの発生量を上記のように規定して印刷を行ったとしても、ハーフトーン処理及びハーフトーン処理後のマスキング処理により、実際のドッド発生量は理想状態のものよりもずれを生じたものとなってしまっており、かつ、そのずれ量はばらついたものとなっている。
【0078】
一方、図20Bに示されるように本実施形態の手法では、ドットの発生量を上記のように規定して印刷を行った場合、比較例に比してドット発生量は規定した量と近い値を示している。特に注目すべきは、重複領域においてもドット発生量が規定した量と近い値を示すことである。つまり、2つのノズルが分担して重複領域の印刷を行ったとしても、重複領域のドット発生量のばらつきを小さく抑制できることになる。すなわち、分散性を良好に保つことができる。
【0079】
図21は、比較例と本実施形態における粒状性指数の結果を示すグラフである。本図における結果は、シミュレーションを行った場合の結果である。粒状性指数は、粒状感を定量化したものである。
【0080】
視覚の空間周波数特性VTFを利用すれば、人間の視覚感度を視覚の空間周波数特性VTFという伝達関数としてモデル化することによって、ハーフトーン処理後のドットの人間の視覚に訴える粒状感を定量化することが可能となる。このようにして定量化された値は、粒状性指数Gと呼ばれる。以下に示す式は、視覚の空間周波数特性VTFを表す代表的な実験式を示している。
【数1】

【0081】
上式中の変数Lは観察距離を表しており、変数uは空間周波数を表している。上式は、粒状性指数を定義する式である。式中の係数Kは、得られた値を人間の感覚と合わせるための係数である。
【0082】
上式を用いた粒状性指数Gは、以下のような式である。なお、FSは、得られた画像についてフーリエ変換を行って求められたパワースペクトルである。
【数2】

【0083】
上式を用いて求められたのが図21の結果である。図に示されるように、横軸はデューティ値であり、横軸の数値に(1/255)を乗ずることで求められる値である。ここでのデューティ値は、「1.0」が100%のデューティ値となる。100%のデューティ値は、全ての画素が1色のインクで埋め尽くされるときの値である。縦軸は粒状性指数であり、上式によれば粒状性指数が小さいほど粒状性に優れているといえる。
【0084】
図に示されるように、比較例における非重複領域と本実施形態における非重複領域の粒状性指数は、全域にわたってほぼ同じ値を示している。一方、重複領域に関しては、比較例に比して本実施形態における粒状性指数が全域にわたって低い値を示している。すなわち、重複領域における粒状性は改善されていることがわかる。
【0085】
このように、上述の本実施形態による手法によれば、重複領域における粒状性も改善することができるようになる。
【0086】
次に、濃度補正処理について説明する。以下の説明のため、「画素領域」と「列領域」を定義付ける。「画素領域」とは画素に対応する媒体上の領域であり、「列領域」とは画素領域が搬送方向に並んだ領域であり、画像データ上でX方向に並んだ複数の画素(以下、画素列)に対応する。
【0087】
図22は、あるラスターラインが隣のラスターラインの濃度に影響を及ぼす例を示す図である。図22において、2番目の列領域に形成されたラスターラインは、ノズルから噴射されたインク滴の飛行曲がりにより、3番目の列領域に寄って形成される。その結果、2番目の列領域は淡く視認され、3番目の列領域は濃く視認される。一方、5番目の列領域に噴射されたインク滴のインク量は規定量よりも少なく、5番目の列領域に形成されるドットが小さくなっている。その結果、5番目の列領域は淡くなる。これが画像上において濃度むらとなって現れる。そのため、淡く印刷される列領域は濃く印刷されるように補正し、濃く印刷される列領域は淡く印刷されるように補正する。また、3番目の列領域が濃くなる理由は、3番目の列領域に割り当てられたノズルの影響によるものではなく、隣接する2番目の列領域に割り当てられたノズルの影響によるものである。
【0088】
そこで、濃度補正処理では、隣接ノズルの影響も考慮して、列領域(画素列)ごとの補正値Hを算出する。なお、補正値Hは、プリンター1の製造工程やメンテナンス時に、プリンター1の機種ごとに算出するとよい。また、ここでは、プリンター1に接続されたコンピューター50にインストールされている補正値取得プログラムに従って補正値Hを算出するとした。以下、列領域ごとの補正値の具体的な算出方法について説明する。
【0089】
図23はテストパターンを示す図である。補正値取得プログラムは、まず、プリンター1にテストパターンを印刷させる。図は、各ヘッド31が有するノズル列(YMCK)のうちの1つのノズル列によって形成された補正用パターンを示す図である。テストパターンとして、ノズル列(YMCK)ごとの補正用パターンを印刷する。
【0090】
補正用パターンは3種類の濃度の帯状パターンから構成される。帯状パターンはそれぞれ一定の階調値の画像データから生成されたものである。帯状パターンを形成するための階調値を指令階調値と呼び、濃度30%の帯状パターンの指令階調値をSa(76)、濃度50%の帯状パターンの指令階調値をSb(128)、濃度70%の帯状パターンの指令階調値をSc(179)と表す。また、1つの補正用パターンは、ヘッドユニット30において紙幅方向に並ぶノズル数のラスターライン(列領域)から構成される。
【0091】
なお、補正用パターンを印刷するための印刷データを作成する際にも、上述の実施形態と同様に、ドットサイズ毎のレベルデータにノズルの使用率を乗算したデータに対してハーフトーン処理を行う。
【0092】
図24は、シアンの補正用パターンをスキャナーで読み取った結果である。次に、補正値取得プログラムは、スキャナーがテストパターンを読み取った結果を取得する。以下、シアンの読取データを例に説明する。補正値取得プログラムは、読取データにおける画素列と補正用パターンを構成する列領域とを、一対一で対応させた後、帯状パターンごとに、各列領域の濃度(読取階調値)を算出する。具体的には、或る列領域に対応する画素列に属する各画素の読取階調値の平均値を、その列領域の読取階調値とする。図24のグラフでは、横軸を列領域番号とし、縦軸を各列領域の読取階調値とする。
【0093】
各帯状パターンは、それぞれの指令階調値で一様に形成されたにも関わらず、図24に示すように列領域ごとに読取階調値にばらつきが生じる。例えば、図24のグラフにおいて、i列領域の読取階調値Cbiは他の列領域の読取階調値よりも比較的に低く、j列領域の読取階調値Cbjは他の列領域の読取階調値よりも比較的に高い。即ち、i列領域は淡く視認され、j列領域は濃く視認される。このような各列領域の読取階調値のばらつきが、印刷画像に発生する濃度むらである。
【0094】
各列領域の読取階調値を一定の値に近づけることで、重複領域画像の淡さやノズルの加工精度による濃度むらを改善できる。そこで、同一の指令階調値(例えばSb・濃度50%)において、全列領域の読取階調値の平均値Cbtを、「目標値Cbt」として設定する。そして、指令階調値Sbにおける各列領域の読取階調値を目標値Cbtに近づけるように、各列領域に対応する画素列データの示す階調値を補正する。
【0095】
具体的には、図24において目標値Cbtよりも読取階調値の低い列領域iに対応する画素列データの示す階調値を、指令階調値Sbよりも濃い階調値に補正する。一方、目標値Cbtよりも読取階調値の高い列領域jに対応する画素列データの示す階調値を、指令階調値Sbよりも淡い階調値に補正する。このように、同一の階調値に対して、全列領域の濃度を一定の値に近づけるために、各列領域に対応する画素列データの階調値を補正する補正値Hを算出する。
【0096】
図25A及び図25Bは、濃度むら補正値Hの具体的な算出方法を示す図である。まず、図25Aは目標値Cbtよりも読取階調値の低いi列領域において、指令階調値(例Sb)における目標指令階調値(例Sbt)を算出する様子を示す。横軸が階調値を示し、縦軸がテストパターン結果における読取階調値を示す。グラフ上には、指令階調値(Sa,Sb,Sc)に対する読取階調値(Cai,Cbi,Cci)がプロットされている。例えば指令階調値Sbに対してi列領域が目標値Cbtにて表されるための目標指令階調値Sbtは次式(直線BCに基づく線形補間)により算出される。
Sbt=Sb+{(Sc−Sb)×(Cbt−Cbi)/(Cci−Cbi)}
【0097】
同様に、図25Bに示すように、目標値Cbtよりも読取階調値の高いj列領域において、指令階調値Sbに対してj列領域が目標値Cbtにて表されるための目標指令階調値Sbtは次式(直線ABに基づく線形補間)により算出される。
Sbt=Sa+{(Sb−Sa)×(Cbt−Caj)/(Cbj−Caj)}
【0098】
こうして、指令階調値Sbに対する各列領域の目標指令階調値Sbtが算出される。そうして、次式により、各列領域の指令階調値Sbに対するシアンの補正値Hbを算出する。同様にして、他の指令階調値(Sa,Sc)に対する補正値、及び、他の色(イエロー,マゼンタ,ブラック)に対する補正値も算出する。
Hb=(Sbt−Sb)/Sb
【0099】
図26は、各ノズル列(CMYK)に関する補正値テーブルを示す図である。上述のように算出した補正値Hを、図示する補正値テーブルにまとめる。補正値テーブルでは、列領域ごとに、3つの指令階調値(Sa,Sb,Sc)にそれぞれ対応する補正値(Ha,Hb,Hc)が設定されている。このような補正値テーブルを、補正値Hを算出するためにテストパターンを印刷したプリンター1のメモリー13に記憶させる。その後、プリンター1はユーザーのもとへ出荷される。
【0100】
ユーザーは、プリンター1の使用開始時に、プリンター1に接続するコンピューター50にプリンタードライバーをインストールする。そうすると、プリンタードライバーはプリンター1に対してメモリー13に記憶されている補正値Hをコンピューター50に送信するように要求する。プリンタードライバーは、プリンター1から送信される補正値Hをコンピューター50内のメモリーに記憶する。
【0101】
補正前の階調値S_inが指令階調値のいずれかSa,Sb,Scと同じであれば、各指令階調値に対応した補正値Hであってコンピューター50のメモリーに記憶されている補正値Ha,Hb,Hcをそのまま用いることができる。例えば、補正前の階調値S_in=Scであれば、補正後の階調値S_outは次式により求められる。
S_out=Sc×(1+Hc)
【0102】
図27は、シアンのn番目の列領域に関して各階調値に対応した補正値Hを算出する様子を示す図である。横軸を補正前の階調値S_inとし、縦軸を補正前の階調値S_inに対応した補正値H_outとする。補正前の階調値S_inが指令階調値と異なる場合、補正前の階調値S_inに応じた補正値H_outを算出する。
【0103】
例えば、図27に示すように補正前の階調値S_inが指令階調値SaとSbの間であるとき、指令階調値Saの補正値Haと指令階調値Sbの補正値Hbの線形補間によって次式により補正値H_outを算出する。
H_out=Ha+{(Hb−Ha)×(S_in−Sa)/(Sb−Sa)}
S_out=S_in×(1+H_out)
【0104】
なお、補正前の階調値S_inが指令階調値Saよりも小さい場合には、最低階調値0と指令階調値Saの線形補間により補正値H_outを算出し、補正前の階調値S_inが指令階調値Scよりも大きい場合には、最高階調値255と指令階調値Scの線形補間によって補正値H_outを算出する。
【0105】
こうして、色ごと、画素データが属する列領域ごと、階調値ごとに設定される補正値Hによって、プリンタードライバーは濃度補正処理(図8のS208)にて、各画素の示す階調値S_in(256階調データ)を補正する。そうすることで、濃度が淡く視認される列領域に対応する画素の階調値S_inは濃い階調値S_outに補正され、濃度が濃く視認される列領域に対応する画素の示す階調値S_inは淡い階調値S_outに補正される。
【0106】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、濃度むら補正方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0107】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、紙幅長さに亘って複数のヘッドを並べ、固定されたヘッドの下を用紙が搬送されることによって画像を形成するプリンター(所謂ラインヘッドプリンター)を例に挙げているが、これに限らない。例えば、複数のヘッドの各ノズル列の端部が重複するように、複数のヘッドをノズル列方向に並べる。そして、その複数のヘッドを用紙に対してノズル列方向と交差する方向に移動しながら画像を形成する動作と、複数のヘッドに対して用紙をノズル列方向に搬送する動作と、を交互に繰り返すプリンター(所謂シリアル式のプリンター)であってもよい。この場合にも、各ヘッドが重複する重複領域について、前述の実施形態と同様に、ドットサイズ毎のドット発生率データ(レベルデータ)にノズル使用率を乗算したデータをハーフトーン処理することにより印刷データを得ることができる。
【0108】
<流体噴射装置について>
前述の実施形態では、流体噴射装置としてインクジェットプリンターを例示していたが、これに限らない。流体噴射装置であれば、プリンターではなく、様々な工業用装置に適用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置等であっても、本件発明を適用することができる。
また、流体の噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、インク室を膨張・収縮させることにより流体を噴射するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によって液体を噴射させるサーマル方式でもよい。また、流体はインクなどの液体に限らず、粉体などでもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21 搬送ベルト、22A,22B 搬送ローラー、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
40 検出器群、50 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、
(B)流体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列であって、前記所定方向における一方側の端部が前記第1ノズル列の前記所定方向における他方側の端部と重なる重複領域を形成して配置された第2ノズル列と、
(C)入力画像データから変換されたドットサイズを示すドットデータに応じて前記第1ノズル列と前記第2ノズル列から流体を噴射させる制御部であって、
前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第1ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて前記第1ノズルから前記流体を噴射させ、前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第2ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて前記第2ノズルから前記流体を噴射させる制御部と、
を備える流体噴射装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記入力画像データのうちの前記重複領域に対応する画像データを複製し、
複製した前記重複領域に対応する画像データを前記入力画像データに挿入し、
前記重複領域に対応する画像データに基づいて生成したドットサイズ毎の発生率データに前記第1ノズル列の前記他方側の端部の使用率を乗算したデータを、ハーフトーン処理し、
挿入した前記重複領域に対応する画像データに基づいて生成したドットサイズ毎の発生率データに前記第2ノズル列の前記一方側の端部の使用率を乗算したデータを、ハーフトーン処理する、請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記ドットサイズ毎の発生率データは、前記入力画像データの階調値に応じて形成されるドットサイズと、当該ドットサイズにおける発生率と、を示すテーブルに応じて求められる、請求項1又は2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記ドットサイズ毎の発生率データを求めるための前記テーブルは、前記重複領域と前記重複領域ではない非重複領域とで異なるものが用いられる、請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記重複領域に属するある前記第1ノズルの前記使用率は、その前記第1ノズルよりも前記他方側に位置する前記第1ノズルの前記使用率よりも高く、
前記重複領域に属するある前記第2ノズルの前記使用率は、その前記第2ノズルよりも前記一方側に位置する前記第2ノズルの前記使用率よりも高い、
請求項1〜4のいずれかに記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記ハーフトーン処理において用いられるディザマスクのしきい値は、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記使用率を乗じた値に応じて所定の画素群の各々に形成されるドット密度の差が所定の範囲内となるように決定されている、請求項1〜5のいずれかに記載の流体噴射装置。
【請求項7】
(A)流体を噴射するノズルが所定方向に並んだノズル列を含むヘッドと、
(B)前記ヘッドを前記所定方向と交差する交差方向に移動させる移動部と、
(C)前記流体を噴射する媒体を前記所定方向に搬送する搬送部と、
(D)前記ヘッドを前記交差方向に移動させて前記流体を噴射させる第1ドット形成動作を行わせた後、前記媒体を搬送させ、前記ヘッドを前記交差方向に移動させて前記流体を噴射させる第2ドット形成処理を行わせる制御部であって、前記媒体上において前記第1ドット形成動作における前記ノズル列の一端と前記第2ドット形成動作における前記ノズル列の他端とで重複領域を形成させ、
入力画像データから変換されたドットサイズを示すドットデータに応じて前記ノズル列から流体を噴射させる制御部であって、
前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第1ドット形成動作における前記一端の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて前記一端のノズルから前記流体を噴射させ、前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第2ドット形成動作における前記他端の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータに応じて前記他端のノズルから前記流体を噴射させる制御部と、
を備える流体噴射装置。
【請求項8】
流体を噴射する第1ノズルが所定方向に並んだ第1ノズル列と、
流体を噴射する第2ノズルが前記所定方向に並んだ第2ノズル列であって、前記所定方向における一方側の端部が前記第1ノズル列の前記所定方向における他方側の端部と重なる重複領域を形成して配置された第2ノズル列と、を備える流体噴射装置から流体を噴射させる流体噴射方法であって、
(A)前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第1ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータを求め、前記重複領域において、前記ドットサイズ毎の発生率データに前記第2ノズル列の使用率を乗じた後にハーフトーン処理を行って得られたドットデータを求めるステップと、
(B)前記第1ノズル列のドットデータに応じて前記第1ノズル列における重複領域のノズルから前記流体を噴射し、前記第2ノズル列のドットデータに応じて前記第2ノズル列における重複領域のノズルから前記流体を噴射するステップと、
を含む流体噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−171140(P2012−171140A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33524(P2011−33524)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】