説明

流体噴射装置

【課題】媒体を支持面上に安定させることが可能な流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】媒体を支持する支持部材と、前記支持部材に対向して設けられ、前記支持部材へ向けて流体を噴射する噴射ヘッドと、前記媒体が前記支持部材に支持されるように前記媒体を保持しつつ第1方向に排出する排出部とを備え、前記排出部は、前記支持部材側から前記媒体に接する主動ローラと、前記噴射ヘッド側から前記媒体に接する従動ローラとを有し、前記従動ローラは前記主動ローラに対して第2方向に両端がはみ出すように設けられており、前記従動ローラのうち前記主動ローラに対してはみ出した部分の径は、前記従動ローラの他の部分の径よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体に流体を噴射する流体噴射装置として、例えばインクジェット型の記録装置が知られている。このような記録装置のうち、例えば単一のニップ部を形成する一対のローラによって記録用紙などの媒体を移動させながら、流体を噴射する噴射ヘッドからプラテン(支持部材)上に支持された記録用紙(媒体)へ流体を噴射する構成が知られている。
【0003】
従来、プラテン上に媒体を支持させる際、媒体の位置によっては当該媒体の一部が噴射ヘッド側へ湾曲した状態で支持されてしまうなど、媒体の姿勢が安定しないことがある。このように噴射ヘッドから媒体までの距離が変動すると、流体の飛翔距離が変化して媒体への良好な流体の配置が行えなくなってしまい、流体の配置不良が生じてしまっていた。
【0004】
これに対して、媒体を付勢する付勢部材を設けた構成が知られている。この構成では、媒体がプラテン表面に対して一定の角度をつけて搬送されることになり、当該媒体がプラテンの表面へ付勢されることになる。これにより、媒体がプラテンから離間されるのを防ぐことができ、記録用紙の支持姿勢をプラテン上に安定させることができる。
【特許文献1】特開平9−48161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、付勢部材を設ける構成によれば、当該付勢部材の近傍においてはプラテン上に媒体を安定して付勢することができるものの、付勢部材から離れた位置においては付勢力が弱まってしまい安定して付勢することができない。近年、噴射ヘッドが媒体の搬送方向に長尺化してきており、流体の配置領域が媒体の搬送方向に長尺化している。このため、媒体のうち流体の配置領域全面をプラテンの表面に安定させることが困難になってきている。
【0006】
上述した事情に鑑み、本発明は、媒体を支持部材上に安定させることが可能な流体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る流体噴射装置は、媒体を支持する支持部材と、前記支持部材に対向して設けられ、前記支持部材へ向けて流体を噴射する噴射ヘッドと、前記媒体が前記支持部材に支持されるように前記媒体を保持しつつ第1方向に排出する排出部とを備え、前記排出部は、前記支持部材側から前記媒体に接する主動ローラと、前記噴射ヘッド側から前記媒体に接する従動ローラとを有し、前記従動ローラは前記主動ローラに対して第2方向に両端がはみ出すように設けられており、前記従動ローラのうち前記主動ローラに対してはみ出した部分の径は、前記従動ローラの他の部分の径よりも大きいことを特徴とする。
具体的には、媒体を支持する支持部材と、前記支持部材に対向して設けられ、前記支持部材へ向けて流体を噴射する噴射ヘッドと、前記媒体が前記支持部材に支持されるように前記媒体を保持しつつ第1方向に排出する排出部とを備え、前記排出部は、前記支持部材側から前記媒体に接する主動ローラと、前記噴射ヘッド側から前記媒体に接する従動ローラとを有し、前記従動ローラは前記主動ローラに対して第2方向に両端がはみ出すように設けられており、前記従動ローラのうち前記主動ローラに対してはみ出した部分の径は、前記従動ローラの他の部分の径よりも大きく、前記第2方向に見て、前記従動ローラと前記主動ローラとが重なっている形態が好ましい。
【0008】
本発明によれば、媒体を保持しつつ第1方向に搬送する排出部が、支持部材側から媒体に接する主動ローラと、噴射ヘッド側から媒体に接する従動ローラとを有し、従動ローラは主動ローラに対して第2方向に両端がはみ出すように設けられており、従動ローラのうち主動ローラに対してはみ出した部分の径が従動ローラの他の部分の径よりも大きいこととしたので、排出部に保持された媒体は従動ローラによって湾曲させられる。媒体を湾曲させることにより、湾曲による突出方向について媒体の剛性を高めることができるので、当該方向についての媒体の形状を安定させることができる。これにより、媒体を支持部材上に安定させることができる。
また、第2方向に見て、従動ローラと主動ローラとが重なっていることとしたので、媒体をより確実に湾曲させることができる。これにより、媒体の剛性を確実に高めることができる。
【0009】
上記の流体噴射装置は、前記排出部は、前記第2方向に複数配列されていることを特徴とする。
本発明によれば、排出部が媒体の搬送方向に直交する第2方向に複数配列されているので、媒体の第2方向全体に湾曲部を形成することができる。この湾曲部によって媒体の剛性をより高めることができ、媒体の形状をより安定させることができる。
【0010】
上記の流体噴射装置は、複数の前記排出部は、ほぼ等しい間隔で配列されていることを特徴とする。
本発明によれば、複数の排出部がほぼ等しい間隔で配列されていることとしたので、媒体の第2方向に湾曲部をほぼ等しい間隔で形成することができる。これにより、媒体の第2方向において剛性を均一にすることができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記第2方向に見て、前記従動ローラと前記主動ローラとが重なっていることを特徴とする。
本発明によれば、第2方向に見て、従動ローラと主動ローラとが重なっていることとしたので、媒体をより確実に湾曲させることができる。これにより、媒体の剛性を確実に高めることができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記従動ローラは、前記第2方向の中央部から端部にかけて徐々に径が大きくなっていることを特徴とする。
本発明によれば、従動ローラが第2方向の中央部から端部にかけて徐々に径が大きくなっていることとしたので、媒体を徐々に湾曲させることができる。このため、媒体が折れ曲がってしまうのを抑制することができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記従動ローラは、前記第2方向の中央部から端部にかけて湾曲していることを特徴とする。
本発明によれば、従動ローラが第2方向の中央部から端部にかけて湾曲していることとしたので、媒体のうち従動ローラに接する部分が曲面となる。これにより、媒体が折れ曲がってしまうのをより確実に抑制することができる。
【0014】
上記の流体噴射装置は、前記従動ローラは、平面視で前記主動ローラに対して前記支持部材側の位置に配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、従動ローラが平面視で主動ローラに対して支持部材側の位置に配置されていることとしたので、従動ローラ及び主動ローラによって媒体を保持した場合に、当該媒体を支持部材上に付勢することができる。これにより、媒体を支持面上に確実に安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
以下の説明においては、本発明に係る流体噴射装置の一例としてインクジェットプリンタを挙げて説明する。以下の各図においては、各部材を認識可能な大きさとするために、縮尺を適宜変更した状態で示している。
【0016】
図1は、インクジェットプリンタ100の内部構成を示す斜視図である。図2は、インクジェットプリンタ100の内部構成を示す平面図である。図3は、インクジェットプリンタ100の内部構成を示す断面図(記録用紙Pの搬送方向沿う断面図)である。図4は、インクジェットプリンタ100の電気的な接続を示す模式図である。
【0017】
これらの図に示すように、インクジェットプリンタ100は、キャリッジユニット1と、給紙ユニット2と、搬送ユニット3とを有している。インクジェットプリンタ100は、キャリッジユニット1に給紙ユニット2及び搬送ユニット3が一体的に取り付けられた構成になっている。
【0018】
キャリッジユニット1は、媒体として用いられる記録用紙P上にインク(流体)を噴射することによって記録用紙Pに対する印刷(記録)を行うユニットである。当該キャリッジユニット1は、インクを噴射する記録ヘッド4(噴射ヘッド)と、該記録ヘッド4を支持するキャリッジ5と、該キャリッジ5を記録用紙Pの搬送方向(副走査方向)と直交する平面方向(走査方向)に移動するキャリッジ駆動装置6(図4参照)とを有している。
【0019】
記録ヘッド4は、インクを噴射するためのノズルを複数備えている。記録ヘッド4は、内部に形成された駆動素子(例えばピエゾ素子)により、ノズルを介してインクを噴射する構成になっている。キャリッジ5には、不図示のインクカートリッジが搭載され、該インクカートリッジから記録ヘッド4にインクの供給が行われるようになっている。
【0020】
キャリッジ駆動装置6は、駆動プーリ6aと、従動プーリ6bと、これらの駆動プーリ6a及び従動プーリ6bに回し掛けられると共にキャリッジ5に一部が固定される無端ベルト6cと、キャリッジ5の移動を案内するキャリッジ軸6dとを有している。キャリッジ駆動装置6の駆動プーリ6aの駆動により無端ベルト6cを移動させることによって、キャリッジ5がキャリッジ軸6dに沿って走査方向に移動するようになっている。
【0021】
キャリッジユニット1は、キャリッジモータ1a(図4参照)を有している。当該キャリッジモータ1aから、駆動プーリ6aに駆動力が伝達されるようになっている。
【0022】
給紙ユニット2は、キャリッジユニット2に記録紙Xを給紙するユニットである。この給紙ユニット2は、図3に示すように、複数の記録用紙Pを積層して配置可能な給紙カセット7と、該給紙カセット7に積層して配置された記録用紙Pを1枚のみピックアップして給紙する給紙ローラ8と、該給紙ローラ8にて給紙された記録用紙Pを検出する記録用紙検出センサ9とを備える。
【0023】
給紙カセット7は、インクジェットプリンタ100の後ろ上方に向けて斜めに延在されており、記録用紙Pを斜めに設置可能とする。
【0024】
給紙ローラ8は、図3に示すように、回転方向において一部に切欠きが形成された駆動ローラであり、切欠きのない周面にて記録用紙Pをピックアップして給紙するものである。なお、給紙ローラへは、後述の搬送ユニット3が備える搬送モータ3aから伝達ギアを介して駆動力が伝達されるようになっている。
【0025】
記録用紙検出センサ9は、検出レバー9aと、回動軸9bを中心として回動可能に支持されるセンサ本体部9cとを備えている。記録用紙検出センサ9は、検出レバー9aの上方に配置され発光部(不図示)からの光を受光する受光部(不図示)を備えている。記録用紙Pの通過に伴って検出レバー9aが上方に押し上げられるように回動する。この動作により受光部に発光部からの光が受光される。例えば記録用紙Pの通過が完了した場合などには、検出レバー9aが下方に戻るように回動する。この動作により発光部からの光が遮断される。記録用紙検出センサ9は、このように検出レバー9aの回動動作を行うことで、発光部から受光部に向かう光の遮断及び通過を行う。記録用紙検出センサ9は、検出レバー9aに設けられる受光部での受光の有無に基づいて記録用紙Pの検出を行う。
【0026】
搬送ユニット3は、給紙ユニット2によって給紙された記録用紙Pを搬送するユニットである。この搬送ユニット3は、給紙ユニット2の記録用紙検出センサ9を通過した記録用紙Pを搬送する紙送りローラ対10と、該紙送りローラ対10を通過した記録用紙Pを下方から支持するプラテン11と、該プラテン11を通過した記録用紙Pを排紙する排紙ローラ対12とを備える。
【0027】
紙送りローラ対10は、回転駆動される紙送りローラ10aと、従動ローラ10bとを有しており、紙送りローラ10aと従動ローラ10bとによって形成されるニップ部にて記録用紙Pを挟んで搬送するものである。
【0028】
プラテン11は、キャリッジユニット1のキャリッジ5の下方においてキャリッジ5の移動可能範囲に対応して設けられている。このプラテン11上では、キャリッジ5に支持された記録ヘッド4から記録用紙Pに対してインクが噴射されるようになっている。
【0029】
排紙ローラ対12は、回転駆動される主動ローラ12aと、従動ローラ12bとを有している。排紙ローラ対12は、主動ローラ12aと従動ローラ12bとによって形成されるニップ部にて記録用紙Pを挟んで搬送するものである。
【0030】
搬送ユニット3は、搬送モータ3a(図4参照)を備えている。当該搬送モータ3aから、伝達ギア3bを介して紙送りローラ10aと主動ローラ12aに駆動力が伝達されるようになっている。
【0031】
また、図1及び図2に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ100は、記録ヘッド4のメンテナンスを行うメンテナンス装置13を備えている。このメンテナンス装置13は、記録ヘッド4に対するフラッシング処理、吸引処理、ワイピング処理、及びキャッピング処理等のメンテナンス処理を行うものである。メンテナンス装置13は、キャリッジ5の走査方向の端部に配置されている。
【0032】
また、図4に示すように、本実施形態のインクジェットプリンタ100は、制御部20を備えている。制御部20は、本実施形態のインクジェットプリンタ100の全体を制御するものである。制御部20は、キャリッジユニット1や、給紙ユニット2、搬送ユニット3、メンテナンス装置13等に電気的に接続されている。
【0033】
制御部20は、CPU等の演算処理装置、ROMやRAM等の記憶装置を備えている。制御部20は、例えば外部から供給される印刷データ等に基づいて、記録ヘッド4、キャリッジモータ1a、搬送モータ3aを制御する。
【0034】
図5は、プラテン11及び排紙ローラ対12の構成を示す平面図である。同図においては、図中上下方向が記録用紙Pの搬送方向(第1方向)であり、記録用紙Pは図中矢印の向きに搬送されるようになっている。以下、記録用紙Pの搬送方向を第1方向と表記し、記録用紙Pの搬送方向に直交する方向(図中左右方向)を第2方向と表記する場合がある。
【0035】
同図に示すように、排紙ローラ対12は、第2方向上に複数、例えば5つ設けられており、各排紙ローラ対12がほぼほぼ等しい間隔で一直線上に配列されている。各主動ローラ12aは、共通の回転軸12cに連通されている。各主動ローラ12aは、当該回転軸12cが回転することによって全ての主動ローラ12aが同時に回転するようになっている。従動ローラ12bは、例えばゴムなどの材料からなり、表面にフッ素コート層が設けられた構成になっている。従動ローラ12bは、それぞれ独立した回転軸12dを有している。従動ローラ12bの回転軸12dは、第2方向に延在する同一直線上に配置されている。
【0036】
従動ローラ12bの各回転軸12dは、平面視で主動ローラ12aの回転軸12cに対してプラテン11とは反対側(搬送方向の後方)にずれた位置に配置されている。したがって、主動ローラ12aと従動ローラ12bとで形成されるニップ部を通過する際、記録用紙Pがプラテン11側に傾斜するようになっている。
【0037】
図6は、排紙ローラ対12の断面構成を示す図である。図6においては、紙面の手前側から紙面の奥側への方向が上記第1方向に一致しており、図中の左右方向が上記第2方向に一致している。したがって、図6においては紙面の手前側から奥側にかけての方向を第1方向と表記し、図中左右方向を第2方向と表記することがある。
【0038】
同図に示すように、従動ローラ12bのうち第2方向の両側の端部12hは、主動ローラ12aの第2方向の両側の両端12gに対して当該第2方向にはみ出すように設けられている。従動ローラ12bのうち当該はみ出した部分の径は、従動ローラ12bの他の部分の径(例えば第2方向における中央部)よりも大きくなっている。
【0039】
従動ローラ12bは第2方向の中央部から端部12hにかけて徐々に径が大きくなるように湾曲した形状になっている。また、第2方向から見て、従動ローラ12bの一部と主動ローラ12aの一部とが重なるように従動ローラ12b及び主動ローラ12aが配置されている。
【0040】
次に、このように構成された本実施形態のインクジェットプリンタ100の動作を説明する。本動作の説明において、動作の主体は制御部20である。
まず、給紙ユニット2の給紙カセット7に複数の記録用紙Pが積層して配置された状態にしておく。この状態において、制御部20は、給紙ユニット2の給紙ローラ8を回転駆動させる。この回転駆動によって給紙カセット7に積層して配置された記録用紙Pの最上部の1枚の記録用紙Pのみがピックアップされて給紙される。
【0041】
給紙ローラ8の回転駆動により給紙された記録用紙Pは、記録用紙検出センサ9を通過する。この際、記録用紙検出センサ9は、記録用紙Pの存在を検出し、その検出結果を制御部20に入力する。記録用紙検出センサ9を通過した記録用紙Pは、搬送ユニット3の紙送りローラ対10によってプラテン11上に搬送される。
【0042】
この状態で紙送りローラ対10を回転させ続けると、プラテン11のうち搬送方向の中央部に記録用紙Pが搬送されてくる。制御部20は、この記録用紙Pに対しキャリッジユニット1の記録ヘッド4からインクを噴射させる。制御部20は、記録ヘッド4を支持するキャリッジ5を走査方向に移動させながらインクを噴射させる。記録ヘッド4からインクを噴射させる際、インクが記録用紙Pの所望の箇所に配置されるように、制御部20は、記録用紙検出センサ9の検出結果や印刷データ等に基づいてインクの噴射タイミングを制御する。
【0043】
記録用紙Pの先端が排紙ローラ対12に到達すると、記録用紙Pが排紙ローラ対12及び紙送りローラ対10の両方で保持・搬送されることになる。図7は、記録用紙Pが排紙ローラ対12によって保持されている状態を示す平面図であり、図5と同一の方向から見たときの図である。図8はこのときの断面形状を示す図であり、図6と同一の方向から見たときの図である。
【0044】
排紙ローラ対12では、主動ローラ12aと従動ローラ12bとで形成されるニップ部に記録用紙Pが挟まれた状態で保持される。このとき、図7及び図8に示すように、記録用紙Pは主動ローラ12aの表面12e及び従動ローラ12bの表面12fに接触し、従動ローラ12bの表面12fに沿って湾曲させられた状態になる。
【0045】
図7及び図8に示すように、5箇所の排紙ローラ対12においてそれぞれ記録用紙Pが湾曲させられた状態になる。記録用紙Pのうち排紙ローラ対12によって保持された部分及びその近傍は、第2方向全体に波打つように湾曲した形状になる。従動ローラ12bの位置が主動ローラ12aに対して第1方向の後方にずれているため、排紙ローラ対12に保持された状態において記録用紙Pはプラテン11に付勢されることになる。
【0046】
また、記録用紙Pのうちプラテン11に付勢される部分は湾曲することなく、平坦な状態で安定してプラテン11に支持されることになる。この状態で制御装置20は主動ローラ12aを回転させる。主動ローラ12aの回転により、主動ローラ12aと記録用紙Pとの接触部分に摩擦が発生し、当該摩擦によって記録用紙Pが第1方向に搬送される。
【0047】
このように、本実施形態によれば、記録用紙Pを保持しつつ第1方向に搬送する排紙ローラ対12が、プラテン11側から記録用紙Pに接する主動ローラ11aと、記録ヘッド4側から媒体に接する従動ローラ12bとを有し、従動ローラ12bは主動ローラ12aに対して第2方向に両端部12hがはみ出すように設けられており、従動ローラ12bのうち主動ローラ12aに対してはみ出した部分の径が従動ローラ12bの他の部分の径よりも大きいこととしたので、排出ローラ対12に保持された記録用紙Pは従動ローラ12bによって湾曲させられる。記録用紙Pを湾曲させることにより、湾曲による突出方向について記録用紙Pの剛性を高めることができるので、当該方向についての記録用紙Pの形状を安定させることができる。これにより、記録用紙Pをプラテン11上に安定させることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、排出ローラ対12が第2方向に複数配列されているので、記録用紙Pが第2方向全体に波打った形状になるように湾曲部を形成することができる。この湾曲部によって記録用紙Pの剛性をより高めることができ、記録用紙Pの形状をより安定させることができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、複数の排出ローラ対12がほぼ等しい間隔で配列されていることとしたので、記録用紙Pの第2方向に湾曲部をほぼ等しい間隔で形成することができる。これにより、記録用紙Pの第2方向において剛性を均一に高めることができる。また、本実施形態によれば、第2方向から見て、従動ローラ12bと主動ローラ12aとが重なっていることとしたので、記録媒体Pをより大きく湾曲させることができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、従動ローラ12bが第2方向の中央部から端部12hにかけて徐々に径が大きくなっていることとしたので、記録用紙Pのうち従動ローラ12bに接する部分が折れ曲がってしまうのを抑えることができる。また、従動ローラ12bが第2方向の中央部から端部12hにかけて湾曲していることとしたので、記録用紙Pのうち従動ローラ12bに接する部分が曲面となる。これにより、記録用紙Pが折れ曲がってしまうのをより確実に抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、従動ローラ12bが平面視で主動ローラ12aに対してプラテン11側の位置にずれるように配置されていることとしたので、従動ローラ12b及び主動ローラ12aによって記録用紙Pを保持した場合に、当該記録用紙Pをプラテン11上に付勢することができる。これにより、記録用紙Pをプラテン11上に確実に安定させることができる。
【0052】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態では、従動ローラ12bのうち第2方向の中央部から端部12hにかけて徐々に径が大きくなるように湾曲している構成としたが、これに限られることは無い。例えば第2方向の両端部12hのみを突出させ、両端部1hで挟まれる部分を平坦にする構成としても構わない。
【0053】
また、上記実施形態では、第2方向から見て、従動ローラ12bの一部が主動ローラ12aの一部に重なるように配置された構成としたが、これに限られることは無い。例えば記録用紙Pを湾曲させることができる範囲であれば、当該第2方向から見て従動ローラ12bと主動ローラ12aとが重なっていない構成としても構わない。
【0054】
また、上記実施形態では、平面視で従動ローラ12bが主動ローラ12aに対してプラテン11側にずれた位置に配置された構成としたが、これに限られることは無い。例えば平面視で回転軸12c及び回転軸12dが重なるように従動ローラ12b及び主動ローラ12aを配置させても構わない。
【0055】
また、上記実施形態では、複数の排紙ローラ対12をほぼ等しい間隔で配置する構成としたが、これに限られることは無い。例えば排紙ローラ対12の間隔を異ならせるように配置する構成としても構わない。例えば、プラテン11の第2方向の中央部について排紙ローラ対12を多く配置し、第2方向の端部について排紙ローラ対12を少なく配置する構成であったり、逆に第2方向の端部の方に多く排紙ローラ対12を配置する構成であったりしても構わない。
【0056】
また、複数の排紙ローラ対12のうち全ての従動ローラ12bについて、主動ローラ12aに対して第2方向に両端部12hがはみ出しており当該はみ出し部分の径が他の部分の径よりも大きい構成としたが、これに限られることは無い。例えば複数の排紙ローラ対12のうち一部の排紙ローラ対12の従動ローラ12bのみが上記構成であることとしても構わない。
【0057】
また、上記実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式記録装置に具体化したが、この限りではなく、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する粉体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す平面図。
【図3】本実施形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す断面図。
【図4】本実施形態に係るインクジェットプリンタの電気的な接続を示す図。
【図5】本実施形態に係るインクジェットプリンタのプラテン近傍の構成を示す斜視図。
【図6】本実施形態に係るインクジェットプリンタのプラテン近傍の構成を示す斜視図。
【図7】本実施形態に係るインクジェットプリンタの動作の様子を示す図。
【図8】同、動作図。
【符号の説明】
【0059】
100…インクジェットプリンタ(流体噴射装置) 4…記録ヘッド(噴射ヘッド) 11…プラテン(支持部材) 12…排紙ローラ 12a…主動ローラ 12b…従動ローラ 12h…端部 P…記録用紙(媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を支持する支持部材と、
前記支持部材に対向して設けられ、前記支持部材へ向けて流体を噴射する噴射ヘッドと、
前記媒体が前記支持部材に支持されるように前記媒体を保持しつつ第1方向に排出する排出部と
を備え、
前記排出部は、前記支持部材側から前記媒体に接する主動ローラと、前記噴射ヘッド側から前記媒体に接する従動ローラとを有し、
前記従動ローラは前記主動ローラに対して第2方向に両端がはみ出すように設けられており、
前記従動ローラのうち前記主動ローラに対してはみ出した部分の径は、前記従動ローラの他の部分の径よりも大きく、
前記第2方向に見て、前記従動ローラと前記主動ローラとが重なっている
ことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記従動ローラは、前記第2方向の中央部から端部にかけて徐々に径が大きくなっている
ことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記従動ローラは、前記第2方向の中央部から端部にかけて湾曲している
ことを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記従動ローラは、平面視で前記主動ローラに対して前記支持部材側の位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−256098(P2009−256098A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289912(P2008−289912)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】