説明

流体噴射装置

【課題】メンテナンス性に優れた流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】媒体へ流体を噴射する複数のノズルを有する流体噴射ヘッドと、前記流体の噴射方向上に設けられ、回転可能な回転体と、複数の前記回転体上にそれぞれ設けられ、前記媒体を支持する媒体支持部と、複数の前記回転体上であって前記媒体支持部に対して回転方向にずれた位置にそれぞれ設けられ、前記噴射領域をキャッピングするキャップ部と、前記回転体の軸部分に設けられ、電源部に接続された電極とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置は、流体を噴射可能な噴射ヘッドを備え、この噴射ヘッドから各種の流体を被記録材等に向けて噴射する装置である。流体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式噴射ヘッド(以下、単に噴射ヘッドという)を備え、この噴射ヘッド(噴射ヘッド)のノズルから液体状のインク(流体)をインク滴として記録紙等の記録媒体に向けて噴射、着弾させドットを形成することで記録を行うインクジェット式記録装置が知られている。
【0003】
流体噴射装置では、噴射ヘッドから噴射される流体の良好な噴射状態を維持又は回復するため、当該噴射ヘッドのメンテナンスを定期的に行っている。その具体的なメンテナンス動作として、ノズルのメニスカスを調整する動作や、ノズルの吐出不良を検出する動作などが挙げられる(例えば、特許文献1)。
【0004】
近年では、噴射ヘッドの下方に回転体を配置させ、当該回転体の回転方向に記録媒体の支持部、キャップ部材などを取り付けた構成が知られている。この構成では、回転体を回転させることにより、記録媒体の支持部、キャップ部材を噴射ヘッドにそれぞれアクセスさせることができるようになっている。この構成により、メンテナンス性が向上することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−174766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような回転体を有する構成においては、メンテナンス性の更なる向上の点から、ノズルの吐出不良検出動作についても回転体を用いて行うことができるような構成が求められている。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、メンテナンス性に優れた流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る流体噴射装置は、媒体へ流体を噴射する複数のノズルを有する流体噴射ヘッドと、前記流体の噴射方向上に設けられ、回転可能な回転体と、複数の前記回転体上にそれぞれ設けられ、前記媒体を支持する媒体支持部と、複数の前記回転体上であって前記媒体支持部に対して回転方向にずれた位置にそれぞれ設けられ、前記噴射領域をキャッピングするキャップ部と、前記回転体の軸部分に設けられ、電源部に接続された電極とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、電源部に接続された電極が回転体の軸部分に設けられているので、ノズルによる流体の噴射状態を検出する際の電圧源とすることができる。これにより、回転体を用いてノズルの噴射状態の検出を行うことができるので、高いメンテナンス性を確保することができる。
【0010】
上記の流体噴射装置は、前記回転体は、前記電極を露出させる開口部を有することを特徴とする。
本発明によれば、回転体の軸部に設けられた電極を露出させる開口部が回転体に設けられているため、流体を電極上に直接噴射させてノズルの噴射状態の検出を行うことができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記回転体上には、前記電極に電気的に接続された第2電極が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、電極に電気的に接続された第2電極が回転体上に設けられているので、ノズルの噴射状態の検出を回転体上において行うことができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記回転体は、複数の前記ノズルのフラッシング動作に用いるフラッシング受部を有し、前記第2電極は、前記フラッシング受部に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、ノズルのフラッシング動作を行うフラッシング受部に第2電極が設けられているので、フラッシング動作とノズルの噴射状態の検出動作とを同時に行うことができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記第2電極は、前記媒体支持部に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、第2電極が媒体支持部に設けられているので、当該媒体支持部においてノズルの噴射状態を検出することができる。加えて、媒体支持部と複数のノズルのそれぞれとの間の距離を検出することもできる。
【0014】
上記の流体噴射装置は、前記回転体は、前記ノズルの噴射状態の検出に用いた前記流体を収容する収容部を有することを特徴とする。
本発明によれば、ノズルの噴射状態の検出に用いた流体を収容する収容部が回転体に設けられているので、当該流体が装置内に飛散するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタ装置の構成を示す概略図。
【図2】プリンタ装置の一部の構成を示す図。
【図3】噴射ヘッドの噴射面の構成を示す図。
【図4】噴射ヘッドの断面構成を示す図。
【図5】メンテナンス装置の構成を示す断面図。
【図6】インク滴センサの構成を示す模式図。
【図7】インク滴センサの検出原理を示す図。
【図8】インク滴センサによって検出される電圧波形を示すグラフ。
【図9】プリンタ装置の構成を示すブロック図。
【図10】プリンタ装置の動作の様子を示す図。
【図11】同、動作図。
【図12】同、動作図。
【図13】同、動作図。
【図14】同、動作図。
【図15】本発明に係るプリンタ装置の他の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面をもとにして、本発明に係る流体噴射装置の実施の形態を説明する。流体噴射装置の各部材を認識可能な大きさとするため、以下の説明に用いる各図面には、縮尺が適宜変更された状態で各部材が示されている。本実施形態では、流体噴射装置としてインクジェット式のプリンタ装置を例に挙げて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態のインクジェット式プリンタ(以下、プリンタ装置PRTと称す)の概略構成図である。図2は、噴射ヘッド周辺の要部平面図である。図3は、噴射ヘッドのノズル開口形成面を示す平面図である。
【0018】
図1においては、XYZ直交座標系を設定し、XYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する場合がある。この場合においては、図中左右方向をX方向とし、図中紙面の奥行き方向をY方向とし、X方向及びY方向のそれぞれと直交する方向(すなわち図中上下方向)をZ方向とする。
【0019】
これらの図に示すように、プリンタ装置PRTは、記録媒体Mに画像や文字などを記録する装置である。記録媒体Mとしては、例えば紙やプラスチックなどが用いられる。プリンタ装置PRTは、インク噴射機構IJ、搬送機構CR、メンテナンス機構MN及び制御装置CONTを有している。
【0020】
インク噴射機構IJは、記録媒体Mにインク滴(流体)を噴射する部分である。インク噴射機構IJは、噴射ヘッド(流体噴射ヘッド)11及びインク供給部12を有している。本実施形態で用いるインクは、染料や顔料、これを溶解または分散する溶媒を基本的成分とし、必要に応じて各種添加剤が添加された液状体を用いる。
【0021】
噴射ヘッド11は、記録媒体Mに複数色のインク滴を噴射可能なヘッドである。噴射ヘッド11は、例えば図2に示すように、プリンタ装置PRTが対象とする最大サイズの記録媒体Mの少なくとも一辺を越える長さ(最大記録紙幅W)に亘って噴射領域15を有するライン型の噴射ヘッドである。噴射ヘッド11は、例えばZ方向上に移動可能に設けられている。噴射ヘッド11は、ノズル13及び共通インク室14を有している。
【0022】
共通インク室14は、例えば4色(イエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:C、ブラック:K)に対応するインクを保持する(共通インク室14Y、14M、14C、14K)。噴射領域15は、上記各色の共通インク室14に対応して設けられている(噴射領域15Y、15M、15C、15K)。
【0023】
ノズル13は、噴射ヘッド11の噴射領域15Y、15M、15C、15K内にそれぞれ複数設けられ、例えば上記4色のインク滴を吐出する開口部である。ノズル13は、例えば図3に示すようにY方向に複数配列されている(ノズル列L)。ノズル列Lは、各色の噴射領域15Y、15M、15C、15Kについて、1列又は複数列設けられる。ノズル13の数やノズル列Lの数は、適宜設定される。噴射ヘッド11のうちノズル13が設けられる面が噴射面11Aとなる。噴射面11Aは、噴射ヘッド11の−Z側に設けられる。噴射ヘッド11は、−Z側へインク滴を噴射するようになっている。
【0024】
図4は、噴射ヘッド11の構成を示す断面図である。
同図に示すように、噴射ヘッド11は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えている。
【0025】
ヘッド本体18は、合成樹脂からなる箱形の部材である。ヘッド本体18には、駆動ユニット24を収容する収容室23と、外部から供給されたインクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成されている。
【0026】
収容室23内に配置された駆動ユニット24は、複数の圧電素子25と、複数の圧電素子25の上端を支持する固定部材26と、駆動信号を圧電素子25に供給する柔軟なケーブル27とを備えている。圧電素子25は、複数のノズル13のそれぞれに対応して設けられている。
【0027】
内部流路28は、ヘッド本体18を図4上下方向に貫通して形成されている。内部流路28は、図中上端部がインク供給部12及び加圧機構38に接続されている。内部流路28は、インク供給部12から供給されてくるインクを図示下端側の開口端を介して流路形成ユニット22へ流通させるインクの流路である。
【0028】
流路形成ユニット22は、振動板19、流路基板20、及びノズル基板21を積層し、接着剤等で接合一体化された構成になっている。流路形成ユニット22には、ヘッド本体18の内部流路28に接続された共通インク室14と、共通インク室14に接続されたインク供給口30と、インク供給口30に接続された圧力室31とを備えている。圧力室31は、各々のノズル13に対応して設けられている。各々の圧力室31は、共通インク室14と反対側の端部においてノズル13に接続されている。
【0029】
振動板19は、例えばステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムがラミネート加工された構成になっている。振動板19のうち圧力室31に対応する部分には島部32が形成されている。島部32は、例えばエッチングなどにより支持板を環状に除去することで、圧電素子25の下端に接合されている。
【0030】
島部32はダイヤフラム部として機能する。振動板19は、圧力室31上において、島部32の周囲の弾性フィルムの部分が圧電素子25の駆動に応じて弾性変形し、島部32が上下動するようになっている。振動板19と内部流路28の下端近傍との間にも、支持板の一部を除去して弾性フィルムのみとした部分が設けられており、この部分が共通インク室14内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33となっている。
【0031】
流路基板20は、内部流路28の下端とノズル13とを接続する共通インク室14、インク供給口30、及び圧力室31などのインク流通室を形成するための凹部を有する。これらの凹部は、流路基板20の基材となるシリコン単結晶基板を異方性エッチングすることで形成されている。
【0032】
ノズル基板21は、所定方向に所定間隔(ピッチ)で形成された複数のノズル13を有する。本実施形態のノズル基板21は、例えばステンレス鋼等の金属で形成された板状の部材である。ノズル基板21の外面が噴射面11Aである。
【0033】
このように構成された噴射ヘッド11は、ケーブル27を介して圧電素子25に駆動信号が入力されることで、圧電素子25が伸縮するようになっている。圧電素子25の伸縮は、振動板19の変形(キャビティに接近する方向及び離れる方向への変形)として伝達されるようになっている。振動板19の変形により、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動するようになっている。この圧力の変動によって、ノズル13から、インクが噴射されるようになっている。
【0034】
また、噴射ヘッド11には、加圧機構38が設けられている。圧電素子25の伸縮の他に、当該加圧機構38によって圧力を加えることで、ノズル13からインクが噴射されるようになっている。したがって、噴射ヘッド11には、自己封止弁となる例えばサブタンクなどは設けられていない構成になっている。
【0035】
図1に戻って、インク供給部12は、インク噴射機構IJの一側に配置され、噴射ヘッド11の各共通インク室14Y、14M、14C、14Kに接続されている。このインク供給部12は、上記4色のインクを貯蔵するインクタンク12Y、12M、12C、12Kを有している。インク供給部12は、不図示のインク供給機構を有しており、当該インク供給機構を用いてインクを噴射ヘッド11へと供給するようになっている。
【0036】
搬送機構CRは、紙送りローラ35、排出ローラ36などを有している。紙送りローラ35、排出ローラ36は、不図示のモータ機構によって回転駆動されるようになっている。搬送機構CRは、インク噴射機構IJによるインク滴の噴射動作に連動させて記録媒体Mを搬送経路MRに沿って搬送するようになっている。
【0037】
図5は、メンテナンス機構MNの構成を示す斜視図である。
【0038】
メンテナンス機構MNは、噴射ヘッド11のメンテナンスを行う。図1及び図5に示すように、メンテナンス機構MNは、回転体40、プラテン部材41、キャップ部材42、吸引機構45及びインク排出タンク46を有している。なお、図5では、メンテナンス機構MNのうち回転体40、プラテン部材41及びキャップ部材42の構成を中心に示されており、吸引機構45やインク排出タンク46、プラテン部材41、キャップ部材42の内部構成などの他の構成は省略している。
【0039】
回転体40は、噴射ヘッド11の−Z側に配置された六角柱状部材である。回転体40は、六角柱の高さ方向がY軸方向に一致するように配置されている。回転体40は、不図示の回転機構を有しており、当該回転機構によってθY方向(Y軸周りの方向)に回転可能に設けられている。
【0040】
回転体40は、例えば金属などの導電性を有する材料によって形成された回転軸部材47を有している。回転軸部材47は、電源部60(図1参照)に接続されており、所定の電位が維持される電極として機能するようになっている。回転軸部材47は、開口部40aによって回転体40の表面に露出している。開口部40aは、回転体40の側面の1つに形成されている。開口部40aの底部40bは、回転体40の表面に対して回転軸部材47よりも深い位置まで形成されている。
【0041】
プラテン部材41は、噴射ヘッド11の−Z方向上で記録媒体Mを支持する媒体支持部である。プラテン部材41は、回転体40の一側面上に設けられている。プラテン部材41は、噴射ヘッド11の噴射領域15よりも広い領域をカバーするように形成されている。プラテン部材41は、回転体40がθY方向に回転することにより、回転体40の外周上を移動するようになっている。
【0042】
プラテン部材41上には、プラテン電極48が設けられている。プラテン電極48は、プラテン部材41上のほぼ全体に亘って形成されている。プラテン電極48は、回転体40の内部を貫通して設けられる配線部材48aなど介して回転軸部材47に電気的に接続されている。このため、回転軸部材47とプラテン電極48との間は等電位となっている。
【0043】
キャップ部材42は、噴射ヘッド11の噴射領域15をキャッピングするトレイ状部材である。キャップ部材42は、ノズル13内で粘度が高くなったインクを排出させる排出動作を行う際、排出されるインクを受ける部分でもある。キャップ部材42は、回転体40上の側面のうち、例えばプラテン部材41の反対面に設けられている。したがって、プラテン部材41とキャップ部材42とは、各回転体40上で回転方向に180°ずれた位置に配置されていることになる。キャップ部材42とプラテン部材41とをこのように離れた位置に配置させることにより、キャップ部材42からインクが溢れるような場合であっても、インクがプラテン部材41に到達しにくい構成となっている。
【0044】
キャップ部材42は、トレイ内部にインク吸収材42sを有している。キャップ部材42の底部には、開口部42hが設けられている。開口部42hは、回転体40に形成された貫通孔40hに連通されている。キャップ部材42は、噴射ヘッド11の噴射領域15よりも広い領域をカバーするように形成されている。
【0045】
フラッシング受部43は、噴射ヘッド11のフラッシング動作を行う際にインクの受部となる部分である。フラッシング受部43は、回転体40の側面のうち例えばプラテン部材41に隣接する面に設けられている。フラッシング受部43の位置については、これに限られることは無く、例えばキャップ部材42に隣接する面に設けるようにしても勿論構わない。
【0046】
フラッシング受部43上には、フラッシング電極49が設けられている。フラッシング電極49は、フラッシング受部43のほぼ全面に亘って形成されている。フラッシング電極49は、回転体40の内部を貫通して設けられる配線部材49aなどを介して回転軸部材47に電気的に接続されている。このため、回転軸部材47とフラッシング電極49との間は等電位となっている。
【0047】
吸引機構45は、例えばポンプなどの吸引源を有しており、キャップ部材42の開口部42hに接続されている。吸引機構45は、キャップ部材42の内部を吸引すると共に、当該キャップ部材42内部に溜まったインクを吸引する。
【0048】
インク排出タンク46は、キャップ部材42内に溜まったインクを排出する部分である。インク排出タンク46は、例えばプリンタ装置PRTの−Z側端部に配置されており、着脱可能に設けられている。インク排出タンク46は、例えば吸引機構45の下流側に接続されている。
【0049】
図6は、インク滴センサ50の構成を模式的に示す図である。
同図に示すように、インク滴センサ50は、噴射ヘッド11に所定の電圧を印加する電圧印加装置51と、噴射ヘッドから噴射されたインクを配置させる電極52と、電極52の電圧を検出する電圧検出装置53と、電圧検出装置53の検出結果を処理する処理装置54とを有している。
【0050】
インク滴センサ50は、噴射ヘッド11の噴射面11Aと電極52との間に電界を与え、ノズル13から電極52にインクが移動するときの静電誘導に基づく電圧値の時間的変化を検出波形として処理装置54に出力する。処理装置54は、インク滴センサ50から出力された検出波形に基づいて、インクの重量に関する情報を取得可能となっている。当該重量に関する情報は、例えば制御装置CONTに送信されるようになっている。
【0051】
インク滴センサ50の原理、すなわち静電誘導によって誘導電圧が生じる原理について図面を参照しながら説明する。図7は、静電誘導によって誘導電圧が生じる原理を説明する模式図である。図中矢印の上側は、インク滴Dが吐出された直後の状態を示し、矢印の下側はインクLQが電極52に着弾した状態を示している。
【0052】
図8は、インク滴センサ50から出力される検出信号(インク1滴分)の波形の一例を示す図である。ノズル基板21(負極側)と電極52(正極側)との間に電圧を印加した状態で、吐出パルスを用いて圧電振動子25を駆動させて、任意の一つノズル13からインクLQを吐出させるときの波形を示している。
【0053】
インクLQが吐出されるとき、ノズル基板21は負極となっているため、ノズル基板21の一部の負電荷がインクLQに移動し、吐出されたインクLQは負に帯電する。負に帯電したインクLQが電極52に対して近づくに連れ、静電誘導によって電極52の表面では正電荷が増加する。ノズル基板21と電極52との間の電圧は、静電誘導によって生じる誘導電圧により、インクLQを吐出しない状態における当初の電圧値よりも高くなる。
【0054】
インクLQが電極52に着弾すると、インクLQの負電荷により電極52の正電荷が中和される。このため、ノズル基板21と電極52との間の電圧は当初の電圧値を下回る。その後、ノズル基板21と電極52との間の電圧は当初の電圧値に戻る。
【0055】
したがって、図8に示すように、インク滴センサ50から出力される検出波形は、一旦電圧が上昇した後に、当初の電圧値を下回るまで下降し、その後当初の電圧値に戻る波形となる。このようにして、インク滴センサ50により各ノズル13からインクLQを吐出した際の電圧変化が検出される。本実施形態では、電極52として、例えば回転軸部材47、プラテン電極48、フラッシング電極49などを挙げることができる。
【0056】
図9は、プリンタ装置PRTの電気的な構成を示すブロック図である。
本実施形態におけるプリンタ装置PRTは、全体の動作を制御する制御装置CONTを備えている。制御装置CONTには、プリンタ装置PRTの動作に関する各種情報を入力する入力装置59と、プリンタ装置PRTの動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60とが接続されている。
【0057】
制御装置CONTには、インク噴射機構IJ、搬送機構CR、メンテナンス機構MNなど、プリンタ装置PRTの各部が接続されている。プリンタ装置PRTは、圧電素子25を含む駆動ユニットに入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。
【0058】
駆動信号発生器62には、噴射ヘッド11の圧電素子25に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて吐出パルス等の駆動信号を発生する。
【0059】
次に、上記のように構成されたプリンタ装置PRTの動作を説明する。
噴射ヘッド11による印刷動作を行う場合、制御装置CONTは、図10に示すように、プラテン部材41が回転体40の+Z側に配置されるように回転体40の回転位置を調整する。このとき制御装置CONTは、プラテン部材41の支持面がXY平面に平行になるように、プラテン部材41の姿勢を微調整する。
【0060】
プラテン部材41の位置合わせを行った後、制御装置CONTは、搬送機構CRによって記録媒体Mをプラテン部材41の支持面上に配置させる。記録媒体Mを配置させた後、制御装置CONTは、記録媒体MのY方向の寸法に応じて、印刷動作に用いるノズル13を決定する。使用するノズル13を決定したのち、制御装置CONTは、印刷する画像の画像データに基づいて、当該ノズル13に係る駆動信号発生器62から圧電素子25に駆動信号を入力する。
【0061】
圧電素子25に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。圧電素子25の伸縮により、振動板19が圧力室31に近接する方向および離れる方向に変形(移動)する。振動板19の変形に伴い、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル13からインクが噴射される。ノズル13から噴射されたインクによって、記録媒体Mに所望の画像が形成される。
【0062】
噴射ヘッド11のメンテナンス動作としては、例えばキャッピング動作や吸引動作、キャップ部材42内のインクの排出動作、インクの吐出不良の検査、フラッシング動作などを行う。
【0063】
キャッピング動作を行う場合、制御装置CONTは、図11に示すように、キャップ部材42が回転体40の+Z側に配置されるように回転体40の回転位置を調整する。このとき制御装置CONTは、キャップ部材42が噴射ヘッド11の噴射面11Aに平行になるようにキャップ部材42の姿勢を微調整する。同時に、制御装置CONTは、カム部材44を回転させることにより、キャップ部材42を噴射ヘッド11側へ押圧する。この動作により、キャップ部材42と噴射ヘッド11との間が密閉状態となる。
【0064】
吸引動作を行う場合には、制御装置CONTはキャップ部材42内を密閉させた状態で吸引機構45を作動させ、キャップ部材42内を吸引させる。この動作により、キャップ部材42内が負圧となる。この負圧により、図12に示すように、噴射ヘッド11の各ノズル13からインクLQが噴射され、ノズル13内のインクLQの粘度が適正に保持されることになる。ノズル13から噴射されたインクは、キャップ部材42内のインク吸収材によって吸収される。
【0065】
キャップ部材42内のインク吸収材に吸収されたインクを排出する際には、制御装置CONTは、吸引機構45を作動させる。この動作により、キャップ部材42の開口部42hからインクLQが排出される。排出されたインクLQは、インク排出タンク46内に収容される。
【0066】
インクの吐出不良の検査を行う場合、制御装置は、図13に示すように、回転体40に形成された開口部40aが回転体40の+Z側に配置されるように回転体40の回転位置を調整する。回転位置の調整後、制御装置CONTは、噴射ヘッド11の各ノズル13からインクLQを噴射させ、回転軸部材47に直接的にインクLQを着弾させる。
【0067】
このとき、回転軸部材47は図6に示す電極52として機能する。したがって、回転軸部材47によって検出された電圧に基づいてインクLQの重量に関する情報が検出され、制御装置CONTに送信される。制御装置CONTは、当該インクLQの重量に関する情報に基づいて、インクLQの吐出量が適正か否かを判断する。回転軸部材47に着弾されたインクLQは、開口部40aの底部40bに収容されることとなる。このため、開口部40aの底部40bは、吐出不良の検査に用いられたインクLQを収容する収容部となる。
【0068】
フラッシング動作を行う場合、制御装置CONTは、図14に示すように、フラッシング受部43が回転体40の+Z側に配置されるように回転体40の回転位置を調整する。回転位置の調整後、制御装置CONTは、噴射ヘッド11の各ノズル13からインクLQを噴射させる。噴射されたインクLQは、フラッシング受部43内に着弾する。本実施形態では、フラッシング受部43の表面にフラッシング電極49が設けられているため、当該フラッシング電極49を上記の電極52として、インクLQの吐出不良を検出することもできる。
【0069】
以上のように、本実施形態によれば、回転体40の回転軸部材47が電源部60に接続された電極として設けられているので、ノズル13からのインクLQの噴射状態(吐出不良)を検出する際の電極とすることができる。これにより、回転体40を用いてノズル13の噴射状態の検出を行うことができるので、高いメンテナンス性を確保することができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、回転体40が回転軸部材47を露出させる開口部40aを有することとしたので、インクLQを回転軸部材47上に直接噴射させてノズルの噴射状態の検出を行うことができる。また、回転軸部材47に電気的に接続されたフラッシング電極が回転体40のフラッシング受部43上に設けられているので、フラッシング動作を行う際にもノズルの噴射状態を検出することができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、ノズル13の吐出不良の検出に用いたインクLQを収容する収容部(開口部40aの底部40b)が回転体に設けられているので、当該インクLQがプリンタ装置PRT内に飛散するのを防ぐことができる。
【0072】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態においては、回転軸部材47又はフラッシング電極49にインクLQを着弾させることでノズル13の吐出不良の検査を行う例を説明したが、この他、例えば図15に示すように、プラテン部材41上に設けられたプラテン電極48上にインクLQを着弾させることで、各ノズル13とプラテン電極48との距離を検出させることも可能である。
【0073】
例えば、噴射ヘッド11が傾いている場合、各ノズル13とプラテン電極48との間の距離は均一にはなっていない状態となる。この状態において、各ノズル13からインクLQを吐出すると、吐出されるインクLQは噴射ヘッド11の傾き角度分だけZ軸方向に対して傾いて落下することになる。このため、ノズル13から吐出されたインクLQのうちプラテン電極48に着弾しないインクLQが存在することとなる。これをもとにすると、各ノズル13とプラテン電極48プラテン電極48にインクLQが着弾するか否かを検出することで、ノズル13とプラテン電極48との間の距離を検出することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、回転体40の形状を六角柱形状であるとして説明したが、これに限られることは無く、例えば円柱状、四角柱状など、他の形状に形成しても勿論構わない。
【0075】
上記実施例は、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置と、その液体を収容した液体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および液体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
PRT…プリンタ装置 M…記録媒体 IJ…インク噴射機構 CR…搬送機構 MN…メンテナンス機構 CONT…制御装置 LQ…インク 11…噴射ヘッド 40…回転体 41a…開口部 41b…収容部 41…プラテン部材 42…キャップ部材 44…回転機構 45…吸引機構 46…インク排出タンク 50…インク滴センサ 52(47、48、49)…電極 60…電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体へ流体を噴射する複数のノズルを有する流体噴射ヘッドと、
前記流体の噴射方向上に設けられ、回転可能な回転体と、
複数の前記回転体上にそれぞれ設けられ、前記媒体を支持する媒体支持部と、
複数の前記回転体上であって前記媒体支持部に対して回転方向にずれた位置にそれぞれ設けられ、前記噴射領域をキャッピングするキャップ部と、
前記回転体の軸部分に設けられ、電源部に接続された電極と
を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記回転体は、前記電極を露出させる開口部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記回転体上には、前記電極に電気的に接続された第2電極が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記回転体は、複数の前記ノズルのフラッシング動作に用いるフラッシング受部を有し、
前記第2電極は、前記フラッシング受部に設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記第2電極は、前記媒体支持部に設けられている
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記回転体は、前記ノズルの噴射状態の検出に用いた前記流体を収容する収容部を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−167603(P2010−167603A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10364(P2009−10364)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】