説明

流体噴射装置

【課題】キャップを噴射ヘッドの正確な位置に当接可能としながらも、キャップを傾けて離間可能とする。
【解決手段】キャップを噴射ヘッドに位置決めするキャップガイドを備えておく。キャップを噴射ヘッドから離間させる際には、まずキャップガイドの離間を開始し、その後にキャップの離間を行う。キャップガイドにはキャップの一部に力を加えるキャップ離間部を設けておき、キャップガイドが離間を開始すると、キャップ離間部がキャップの一部に力を加えてキャップを傾かせる。こうすれば、キャップガイド自体を傾けなくてもキャップを傾けることができるので、キャップを離間させる際とは逆の動作を行うキャップの当接時にも、キャップガイドを傾ける必要がない。これにより、キャップを傾けながら離間可能としつつも、キャップガイドによってキャップを噴射ヘッドの正確な位置に当接させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射ヘッドから流体を噴射する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるインクジェットプリンターは、印刷媒体上にインクを噴射することによって画像を印刷する。インクを噴射する位置や噴射量は極めて精度良く制御することが可能であるため、高品質な画像を印刷することができる。また、この技術を応用して、各種の機能材料を含んだ流体を基板上に噴射することにより、電極やセンサーなどの各種機能部品を形成する流体噴射装置も考案されている。
【0003】
これらインクジェットプリンターあるは流体噴射装置では、インクなどの流体を適切に噴射するために専用の噴射ヘッドが搭載されており、噴射ヘッドに設けられた噴射ノズルから流体を噴射している。また、流体を噴射しない間に、噴射ノズルの開口面から流体の成分が揮発あるいは蒸発すると、流体の性状が変わって流体を適切に噴射することができなくなる。そこで、こうした流体噴射装置では、流体を噴射しない間は噴射ヘッドにキャップを押し付けておく。ここで、キャップを噴射ヘッドの適切な位置に押し付けられるように、キャップにはガイド機構が設けられている。このガイド機構によってキャップは噴射ノズルを取り囲む位置に装着され、これにより、噴射ノズルを密閉して流体の性状の変化を防ぐことが可能となっている。
【0004】
また、流体の噴射を再開する際にはキャップを噴射ヘッドから取り外せばよいが、このとき、キャップと噴射ヘッドとの間に流体が付着していると、キャップを外した際に付着していた流体が飛び散り、周辺の装置を汚してしまうことがある。そこで、キャップを斜めに傾けてキャップの端から徐々に外していくようにすることで、キャップと噴射ヘッドとの間に付着した流体が飛散してしまう事態を回避する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−283545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、提案されている技術では、キャップを斜めに傾けようとすると、今度は、ガイド機構の位置がズレてしまってキャップを正確な位置に導くことが困難になってしまうという問題があった。すなわち、キャップを装着する際には、キャップを外す際と逆の動作をしてキャップが装着されるので、キャップが斜めに傾いた状態で噴射ヘッドの表面に接近していき、初めに接触した箇所を支点としてキャップが回転しながら噴射ヘッドの表面に密着する。このとき、キャップが回転するのに伴ってガイド機構も回転するので、ガイド機構の位置が噴射ヘッドに対してズレてしまう。このため、ガイド機構の精度を保ちつつ、キャップを斜めに傾けて取り外すことは困難だという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、キャップを装着する際に、ガイド機構によって正確な位置にキャップを装着可能としながらも、キャップを取り外す際には、キャップを傾けて取り外すことを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の流体噴射装置は次の構成を採用した。すなわち、
噴射ヘッドに設けられた噴射ノズルから流体を噴射する流体噴射装置であって、
前記噴射ヘッドに当接して前記噴射ノズルの周囲に閉空間を形成するキャップと、
前記キャップが前記噴射ヘッドに当接する際に、該キャップよりも先行して該噴射ヘッドに接触することで該キャップを該噴射ヘッドに位置決めするキャップガイドと、
前記キャップの前記噴射ヘッドに対する当接および離間を行うキャップ駆動手段と
を備え、
前記キャップ駆動手段は、前記キャップを前記噴射ヘッドから離間させる際には、該噴射ヘッドからの前記キャップガイドの離間を開始した後に、該キャップの離間を開始する手段であり、
前記キャップガイドは、前記キャップ駆動手段によって前記噴射ヘッドからの離間が開始されると、該噴射ヘッドからの離間を開始する前の前記キャップの一部に力を加えることで、該キャップを傾かせて該キャップの少なくとも一部を該噴射ヘッドから離間させるキャップ離間部が設けられた部材であることを要旨とする。
【0009】
かかる本発明の流体噴射装置では、噴射ヘッドに当接して噴射ノズルを密閉するキャップを備えており、また、キャップの当接時にキャップに先行して噴射ヘッドに接触することにより、キャップを噴射ヘッドに対して位置決めするキャップガイドを備えている。そして、キャップを噴射ヘッドから離間させる際には、まずキャップガイドの離間を開始し、その後にキャップの離間を行う。ここでキャップガイドには、噴射ヘッドから離間する際にキャップの一部に力を加えるキャップ離間部が設けられており、キャップガイドが噴射ヘッドから離間を開始すると、キャップ離間部がキャップの一部に力を加えることによってキャップを傾かせる。
【0010】
キャップの一部に力を加えることでキャップを傾かせてやれば、キャップガイド自体を傾けなくても、キャップを傾かせることができる。このため、キャップガイドを傾けることなくキャップを噴射ヘッドに当接し、逆の動作を行ってキャップガイドを傾けることなく噴射ヘッドから離間させることで、キャップについては傾かせて離間させることが可能となる。これにより、キャップガイドによってキャップを噴射ヘッド上の正確な位置に当接可能としながらも、キャップを噴射ヘッドから離間する際には、キャップを傾かせて離間させ、キャップと噴射ヘッドとの間に付着した流体が飛散するのを防ぐことが可能となる。
【0011】
尚、キャップ離間部は、キャップガイドが噴射ヘッドから離間するのに伴ってキャップの一部に力を加えることができればよく、キャップに力を加える際には、どのような態様で力を加えてもよい。例えば、キャップ離間部をキャップの一部に当接させるなど、キャップを押すことでキャップに力を加えてもよいし、あるいは、キャップの一部にワイヤー等を接続しておき、キャップ離間部にワイヤーを引かせるなど、キャップを引っ張ることで力を加えてもよい。いずれの態様であっても、キャップガイドが噴射ヘッドから離間するのに伴ってキャップを傾けることができるので、キャップガイド自体を傾ける必要がない。これにより、キャップを装着する際には、キャップガイドを傾けることなくキャップを噴射ヘッド上の正確な位置に導くことが可能となる。
【0012】
また、上述した本発明の流体噴射装置では、キャップをキャップガイドに当接させた状態でキャップガイドを駆動することにより、キャップを噴射ヘッドに当接させるものとしてもよい。
【0013】
こうすれば、キャップガイドを噴射ヘッドに接触させる動作に伴ってキャップを噴射ヘッドに当接させることができるので、キャップを駆動するための装置構成を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】インクジェットプリンターを例にとって本実施例の流体噴射装置の構成を示した説明図である。
【図2】本実施例のインクジェットプリンターのメンテナンス機構の構成を示した説明図である。
【図3】本実施例のキャッピングユニットの構成を示した説明図である。
【図4】本実施例のキャッピングユニットを噴射ヘッドに装着する様子を示した説明図である。
【図5】本実施例のキャッピングユニットを噴射ヘッドから取り外す様子を示した説明図である。
【図6】従来のキャッピングユニットを噴射ヘッドに装着する様子を示した説明図である。
【図7】ガイド部を十分に下げてからキャップを傾かせるようにした変形例のキャッピングユニットを示した説明図である。
【図8】フラッシング動作を行うためにキャリッジをキャップの位置に移動させる様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.流体噴射装置の構成:
B.本実施例のキャッピングユニット:
C.変形例:
【0016】
A.流体噴射装置の構成 :
図1は、インクジェットプリンターを例にとって本実施例の流体噴射装置の構成を示した説明図である。図示されているように、インクジェットプリンター10は、主走査方向に往復動しながら印刷媒体2上にインクドットを形成するキャリッジ20と、キャリッジ20を往復動させる駆動機構30と、印刷媒体2の紙送りを行うためのプラテンローラー40などから構成されている。キャリッジ20には、インクを収容したインクカートリッジ26や、インクカートリッジ26が装着されるキャリッジケース22、キャリッジケース22の底面側(印刷媒体2に向いた側)に搭載されてインクを噴射する噴射ヘッド24などが設けられており、インクカートリッジ26内のインクを噴射ヘッド24に導いて、噴射ヘッド24の表面に設けられた噴射口から印刷媒体2に正確な分量だけインクを噴射することが可能となっている。
【0017】
キャリッジ20を往復動させる駆動機構30は、キャリッジ20に固定されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32に接続されたモーター34などから構成されており、モーター34を回転させると、タイミングベルト32を介してキャリッジ20を主走査方向に移動させることが可能となっている。こうした装置構成を用いて、インクジェットプリンター10は、プラテンローラー40によって紙送りを行うとともに、キャリッジ20を往復動しながら噴射ヘッド24よりインクを噴射することによって、印刷媒体2に画像を印刷する。
【0018】
このようなインクジェットプリンターでは、高品質な画像を印刷するためにインクを正確に噴射することが重要であり、そのためには、噴射ヘッド24に導いたインクについても、粘度などの性状を適切な範囲に保っておくことが重要である。そこで、本実施例のインクジェットプリンター10は、画像を印刷するための機構に加えて、噴射ヘッド24内のインクの性状を適切な範囲に保つためのメンテナンス機構100を備えている。メンテナンス機構100は、図1に示されている様に、プラテンローラー40が設けられた印刷範囲の外側の領域に設けられている。
【0019】
図2は、本実施例のインクジェットプリンターのメンテナンス機構の構成を示した説明図である。図示されている様に、メンテナンス機構100は、キャップ部112と、キャップ部112に接続された吸引ポンプ120と、吸引ポンプ120に接続された廃液タンク130などから構成されている。画像を印刷しない間は、キャリッジ20をメンテナンス機構100の位置に移動させ、キャップ部112を噴射ヘッド24に押し付けておく。こうすると、噴射ヘッド24の表面に設けられた噴射口をキャップ内に密閉することができるので、画像を印刷しない間にインクの揮発成分が蒸発してインクの性状が悪化するのを抑制することが可能となる。
【0020】
また、噴射ヘッド24内でインクの性状の悪化が進行してしまった場合には、吸引ポンプ120を駆動することによってキャップ内に負圧を印加し、性状が悪化したインクを噴射口から吸い出す動作(クリーニング動作)を行うことが可能となっている。クリーニング動作を行えば、噴射口から性状が悪化したインクを排出して新しいインクに入れ替えることができるので、たとえインクの性状が悪化した場合でも、噴射ヘッド24を正常な状態に回復させて再び印刷を行うことが可能となる。尚、クリーニング動作によって吸い出されたインクは、吸引ポンプ120を介して廃液タンク130へと排出され、吸収材に吸収された後に蒸発して処理される。
【0021】
このように本実施例のインクジェットプリンター10では、メンテナンス機構100にキャップ部112を備えており、噴射ヘッド24にキャップ部112を装着することによって、インクの性状が悪化するのを抑制したり、クリーニング動作を行って噴射ヘッドを正常な状態に回復させることが可能となっている。ここで、インクの性状の悪化を抑制し、あるいは、クリーニング動作を確実に行うためには、キャップが噴射口を確実に取り囲むように、キャップを正確な位置に装着することが重要である。このため、キャップにはガイド機構が設けられており、ガイド機構によってキャップと噴射ヘッドとを位置決めしながらキャップを噴射ヘッドに装着するようになっている。
【0022】
一方、噴射ヘッドからキャップを取り外す際には、噴射ヘッドとキャップとの間に付着した流体が飛び散るのを防ぐために、キャップを斜めに傾けてキャップの端から徐々に外していくのが好ましい。もっとも、キャップを斜めに傾けながら外すようにした場合、前述した様に、キャップを装着する際にはキャップを外す際と逆の動作を行うことから、キャップの装着時にもキャップが斜めに傾いてしまい、それに伴って、キャップに設けられたガイド機構も斜めに傾いてしまう。このため、ガイド機構によってキャップを噴射ヘッド24上の正確な位置に導くことが困難となる。こうした点に鑑みて、本実施例のインクジェットプリンター10は、次の様な構成のキャッピングユニット110を備えることにより、キャップを斜めに傾けて取り外し可能としながらも、キャップを噴射ヘッド上の正確な位置に装着可能としている。
【0023】
B.本実施例のキャッピングユニット :
図3は、本実施例のキャッピングユニットの構成を示した説明図である。図示されている様に、本実施例のキャッピングユニット110は、キャッププレート114およびキャッププレート114の上に設けられたキャップ部材116からなるキャップ部112と、キャップ部112を取り囲むように設けられたガイド部118とから構成されている。ガイド部118は図示しないカム機構に接続されており、カム機構を駆動させることによってガイド部118を上下に駆動させることが可能となっている。また、キャップ部112は、キャッププレート114の底面に接続されたバネ部材を介してカム機構に保持されており、バネ部材の弾性によってキャップ部112が自在に傾斜可能となっている。こうした構成のキャッピングユニット110を用いて、本実施例のインクジェットプリンター10は、キャップ部112を次のように噴射ヘッド24に装着する。
【0024】
図4は、本実施例のキャッピングユニットを噴射ヘッドに装着する様子を示した説明図である。図4(a)に示されている様に、キャッピングユニットを装着する際には、ガイド部118を噴射ヘッド24に向かって真っ直ぐに押し上げる。すると、ガイド部118の内側の底がキャッププレート114の底面に当接し、キャッププレート114がガイド部118の底に嵌り込んで、キャッププレート114とガイド部118とが一体となった状態になる(図4(b)を参照)。更にガイド部118を押し上げていくと、ガイド部118の傾斜部(図4(b)に「A」と示された部分を参照)が噴射ヘッド24に当接し、噴射ヘッド24が傾斜部に導かれてガイド部118の中に収まっていく。これにより、ガイド部118と噴射ヘッド24とが位置決めされる。このとき、ガイド部118の内側に嵌り込んだキャップ部112も、噴射ヘッド24に対して位置決めされた状態となる。したがって、そのままガイド部118を押し上げていけば、キャップ部112を噴射ヘッド24に対して位置決めした状態のまま押し付けることができ(図4(c)を参照)、噴射ヘッド24上の正確な位置にキャップ部112を装着することが可能となる。
【0025】
この様に、本実施例のキャッピングユニット110では、ガイド部118を真っ直ぐに押し上げていくことにより、キャップ部112を正確な位置に装着することが可能となっている。一方、噴射ヘッド24からキャップ部112を取り外す際には、次に説明する様に、ガイド部118を真っ直ぐに下げていくことにより、キャップ部112を斜めに傾けてキャップ部材116の端から徐々に剥がしていくことが可能となっている。
【0026】
図5は、本実施例のキャッピングユニットを噴射ヘッドから取り外す様子を示した説明図である。キャッピングユニット110を取り外す際には、図5(a)に示されている様に、まず、キャップ部112を噴射ヘッド24に装着した状態のまま、ガイド部118だけを下げていく。ガイド部118を下げていくと、キャッププレート114の底がガイド部118の底から離れ、キャップ部112とガイド部118とが分離した状態になる。この状態から更にガイド部118を下げていくと、図5(b)に示されている様に、ガイド部118の内側に設けられた突起部(図中「B」と示された部分を参照)がキャッププレート114の端に当接していく。
【0027】
ここで、図5(b)に示されている様に、突起部はガイド部118の内側の一方の側(図の右側)のみに設けられている。このため、ガイド部118を下げていけば、キャッププレート114の一方の端だけを押し下げて、キャップ部112を斜めに傾かせることができ、これにともなってキャップ部材116の端を噴射ヘッド24から剥がすことができる(図5(b)を参照)。そして、ガイド部118をさらに下げていけば、キャップ部材116を端から徐々に剥がしていき、キャップ部材116を噴射ヘッド24から取り外すことが可能となる(図5(c)を参照)。
【0028】
この様に、本実施例のキャッピングユニット110では、キャップを取り外す際にキャップ部112とガイド部118とが分離するようになっており、更に、ガイド部118がキャップ部112に片当りすることによってキャップ部112を傾かせるようになっている。このため、キャップ部112を傾かせるためにガイド部118を傾ける必要がなく、ガイド部118を噴射ヘッド24から真っ直ぐに下げていくだけで、キャップ部112を斜めに傾けながら取り外すことが可能となっている。
【0029】
そして、ガイド部118を真っ直ぐに下げればよいことから、ガイド部118を逆向きに駆動させるキャップの装着時にも、ガイド部118を傾ける必要がなく、ガイド部118を真っ直ぐに押し上げることが可能となっている。その結果、先に図4を用いて説明した様に、ガイド部118を真っ直ぐに押し上げて噴射ヘッド24とキャップ部112とを位置決めした状態のままで、噴射ヘッド24にキャップを押し付けることができる(図4(c)を参照)。これにより、本実施例のキャッピングユニット110は、キャップを傾けながら取り外してキャップ部材116と噴射ヘッド24との間に付着したインクが飛散するのを防ぐとともに、キャップ部112を噴射ヘッド24上の正確な位置に導いて噴射口を確実に密閉することが可能となっている。
【0030】
尚、参考までに、従来のキャッピングユニットを装着する場合にキャップの位置がズレてしまう様子について簡単に説明しておく。図6には、従来のキャッピングユニットを噴射ヘッドに装着する様子が示されている。従来のキャッピングユニット910では、キャップを噴射ヘッド24から取り外す際にキャッピングユニット910を傾けながら取り外すので、キャップを外す際と逆の動作を行うキャップの装着時には、図6(a)に示されている様に、キャッピングユニット910が傾いた状態で噴射ヘッド24に押し付けられていく。すると、図6(b)に示されている様に、キャップ部材914が噴射ヘッド24に初めに接触した部分を支点として、キャッピングユニット910が回転しながらキャップ部材914が噴射ヘッド24に押し付けられていく。その結果、図6(c)に示されている様に、ガイド部918と噴射ヘッド24とが離れてしまう(図6(c)で「C」と示した部分を参照)。このため、ガイド部918によってキャップを正確な位置に導くことが難しく、キャップの位置がどうしてもズレてしまう。
【0031】
これに対して、本実施例のキャッピングユニット110は、前述した様に、キャップを取り外す際にガイド部118を傾ける必要がないことから、キャップを装着する際にもガイド部118を傾ける必要がなく、ガイド部118を真っ直ぐに駆動させることが可能となっている(図4を参照)。このため、ガイド部118が噴射ヘッド24から離れてしまうことがなく、ガイド部118によって噴射ヘッド24とキャップ部112とを位置決めした状態のままでキャップ部112を押し付けることができるので、噴射ヘッド24上の正確な位置にキャップ部112を装着することが可能となっている。また、ガイド部118を傾けながら駆動させる必要がなく、真っ直ぐに駆動させればよいので、駆動機構の構成を簡素に保つことも可能となっている。
【0032】
尚、上述した説明では、キャップを外す際にガイド部118の突起部がキャッププレート114の片側の端に当接することによってキャッププレート114を傾けるものとして説明した(図5(b)を参照)。しかし、キャッププレート114の片側に力をかけることができればよく、必ずしもガイド部118とキャッププレート114とを当接させる必要はない。たとえば、ガイド部118の底と、キャッププレート114の一方の端とを紐で繋いでおき、ガイド部118が下がると、キャッププレート114の端が紐に引っ張られてキャッププレート114が傾くものとしてもよい。こうした場合も、キャップを傾けて端から徐々に剥がしていくことが可能である。もちろん、キャップの装着時には、紐がたるんでキャッププレート114をガイド部118に嵌め込むことができるので(図4(b)を参照)、キャップ部112をガイド部118と共に噴射ヘッド24に押し付けてキャップを正確な位置に装着することが可能である。
【0033】
C.変形例 :
前述した実施例では、ガイド部の内側に設けられた突起部とキャッププレートの位置とが近く(図5(a)を参照)、ガイド部を少し下げれば突起部とキャッププレートが当接してキャップ部が傾くものとして説明した。しかし、ガイド部とキャップ部とが当接する箇所を互いに離しておき、ガイド部を十分にさげた後にガイド部とキャップ部とが当接するようにしてもよい。
【0034】
図7は、ガイド部を十分にさげた後にガイド部とキャップ部とが当接するようにした変形例のキャッピングユニットを例示した説明図である。図7(a)に示されているように、変形例のキャッピングユニット110では、キャッププレート114の底にアーム部材122が設けられており、このアーム部材122とガイド部118の底(図7(c)で「D」と示された部分を参照)とが当接することによって、キャップ部112が傾くようになっている。
【0035】
ここで、図7(a)に示されている様に、変形例のキャッピングユニット110を装着した状態では、ガイド部118の底からアーム部材122までの距離(図中「K」と示した距離)が、噴射ヘッド24の表面からガイド部118の上端までの距離(図中「L」と示した距離)よりも長くなっている。このため、ガイド部118を下げていくと、まず、ガイド部118が噴射ヘッド24から離れた状態まで下がり(図7(b)を参照)、その後にガイド部118の底がアーム部材122に当接して、キャップ部112が外れていく(図7(c)を参照)。
【0036】
ガイド部118がキャップ部112に片当たりしながらキャップ部112を押している状態では、キャップ部112を押す反力がガイド部118にもかかっている。このため、ガイド部118が噴射ヘッド24に接していると、ガイド部118を介して噴射ヘッド24をこじる様な力がかかってしまう。そこで、図7(c)に示されている様に、ガイド部118を噴射ヘッド24から離した後にキャップを外してやれば、ガイド部118を介して噴射ヘッド24に力がかかってしまうことがない。
【0037】
これに対して、前述した実施例のキャッピングユニットの様に、ガイド部118を下げると突起部がすぐにキャッププレート114に当接するようにしておけば、ガイド部118を少し下げるだけでキャップ部112を取り外すことができるので、キャップ部112をより迅速に取り外すことが可能となる。また、ガイド部118を下げる距離が少なくてよいことから、ガイド部118の駆動機構を簡素化することも可能となる。
【0038】
尚、図7に示した変形例のキャッピングユニット110では、ガイド部118がキャップ部112を傾けるまでに移動する距離を長くするために、アーム部材122を設けていた。しかし、アーム部材122を設けるのではなく、他の種々の方法を用いてガイド部118の移動距離を長くすることも可能である。例えば、キャッププレート114に当接する突起部をガイド部118の上端部に設けておけば、ガイド部118の上端部がキャッププレート114の位置に下がるまでガイド部118を下げることができる。あるいは、ガイド部118の底とキャッププレート114の端とを長い紐で接続しておき、ガイド部118が下がると、キャッププレート114の端が紐で引っ張られてキャップが傾くものとしてもよい。こうすれば、紐の長さに相当する分だけガイド部118を下げることができる。そして、いずれの場合も、ガイド部118がキャップを傾かせるまでに下がる距離(図7(a)に「K」と示した距離を参照)を、噴射ヘッド24の表面からガイド部118の上端までの距離(図7(a)に「L」と示した距離を参照)よりも長くしておけば、ガイド部118を噴射ヘッド24から離した状態でキャップを取り外すことが可能となり、ガイド部118を介して噴射ヘッド24に力がかかってしまう事態を回避することが可能となる。
【0039】
また、変形例のキャッピングユニットでは、キャップ内にインクを噴射する動作(いわゆるフラッシング動作)の際に、インクがキャップの外に飛散してしまう事態を回避することも可能となっている。この点について、次の図8を参照しながら説明する。
【0040】
図8は、フラッシング動作を行うためにキャリッジをキャップの位置に移動させる様子を示した説明図である。フラッシング動作では、キャリッジ20をキャップの上に移動させ、キャップの中に向かってインクを噴射する動作を行う。ここで、変形例のキャッピングユニット110では、図8(a)に示されている様に、ガイド部118の上端をキャップ部材116の上端よりも下げることができるので、キャップ部材116と噴射ヘッド24との距離(図中「M」と示した部分を参照)を近づけることがきる。このため、噴射ヘッド24から噴射されたインクをキャップ内に確実に受けることができ、インクがキャップの外に飛散してしまう虞がない。
【0041】
更に、変形例のキャッピングユニット110では、前述した様に、ガイド部118をキャップ部材116の上端よりも下げた状態でも、ガイド部118がアーム部材122に当接しないので(図7(b)を参照)、ガイド部118を下げた状態でもキャップを噴射ヘッド24に対して並行に保つことができる。このため、噴射ヘッド24から噴射されたインクをキャップ内により確実に受けることが可能となっている。
【0042】
尚、従来のキャッピングユニット910では、図8(b)に示されている様に、ガイド部918を避けるために噴射ヘッド24をキャップ部材916から離す必要があった。また、キャップ部材916を傾けて取り外すことから、フラッシング動作の際にもキャップ部材916が傾いた状態になっていた。これに対して本変形例のキャッピングユニットは、上述した様に、ガイド部をキャップ部材116よりも下げることができることから、噴射ヘッド24をキャップ部材116により近づけることができ、また、キャップ部112を並行に保つことができるので、インクをキャップ内により確実に噴射することができ、インクが周囲に飛散する虞を確実に回避することが可能となっている。
【0043】
以上、本実施例の流体噴射装置をインクジェットプリンターを例にとって説明したが、本発明は上記すべての実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
10…インクジェットプリンター、 20…キャリッジ、
22…キャリッジケース、 24…噴射ヘッド、 26…インクカートリッジ、
30…駆動機構、 32…タイミングベルト、 34…モーター、
40…プラテンローラー、 100…メンテナンス機構、
110…キャッピングユニット、 112…キャップ部、
114…キャップ部材、 116…キャッププレート、 118…ガイド部、
120…吸引ポンプ、 122…アーム部材、 130…廃液タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ヘッドに設けられた噴射ノズルから流体を噴射する流体噴射装置であって、
前記噴射ヘッドに当接して前記噴射ノズルの周囲に閉空間を形成するキャップと、
前記キャップが前記噴射ヘッドに当接する際に、該キャップよりも先行して該噴射ヘッドに接触することで該キャップを該噴射ヘッドに位置決めするキャップガイドと、
前記キャップの前記噴射ヘッドに対する当接および離間を行うキャップ駆動手段と
を備え、
前記キャップ駆動手段は、前記キャップを前記噴射ヘッドから離間させる際には、該噴射ヘッドからの前記キャップガイドの離間を開始した後に、該キャップの離間を開始する手段であり、
前記キャップガイドは、前記キャップ駆動手段によって前記噴射ヘッドからの離間が開始されると、該噴射ヘッドからの離間を開始する前の前記キャップの一部に力を加えることで、該キャップを傾かせて該キャップの少なくとも一部を該噴射ヘッドから離間させるキャップ離間部が設けられた部材である流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記キャップ駆動手段は、前記キャップガイドを前記キャップに当接させた状態で該キャップガイドを駆動することにより、該キャップを前記噴射ヘッドに当接させる手段である流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−240938(P2010−240938A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90774(P2009−90774)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】