説明

流体噴射装置

【課題】線状の受容部材をノズルから噴射された流体を受容可能な受容位置まで移動させて停止させる場合であっても、その受容部材でノズルから噴射された流体を迅速且つ容易に受容することができる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】インクを噴射するノズルを有する記録ヘッド25A〜25Eと、ノズルから噴射されたインクを受容可能な糸部材39と、糸部材39を線状に延びるように支持する繰り出し部41及び巻き取り部42と、糸部材39を受容位置に位置させる一方、糸部材39を退避位置に位置させる第1,第2の移動機構43,44と、糸部材39に対して糸部材39の延びる方向と交差する方向に相対移動して糸部材39に当接する可動部材31A〜31Cとを備え、可動部材31A〜31Cは、第1,第2の移動機構43,44が繰り出し部41及び巻き取り部42を第2の位置から第1の位置に移動させた際に糸部材39に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、流体噴射ヘッドに形成されたノズルからターゲットに対して流体を噴射させる流体噴射装置としてインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」ともいう。)が知られている。このようなプリンターにおいては、印刷中に特定のノズルからインク(流体)が噴射されない状態が長時間に亘ると、インクの増粘や固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などにより、インクの噴射不良が生じてしまう虞があった。そのため、通常、プリンターでは、印刷とは無関係の制御信号に基づいてノズルからインクを噴射させるフラッシングを行うようになっている。
【0003】
すなわち、例えば記録ヘッドを主走査方向に走査して印刷を行うシリアル型のプリンターでは、記録ヘッドを印刷領域から外れた位置に移動させ、その直下に配置されたフラッシングボックスに向けてインクを噴射させていた。また、用紙幅に対応する大型の記録ヘッドを用いるラインヘッド型のプリンターでは、特許文献1に記載されるように、用紙を搬送する搬送ベルトに吸収部材(受容部材)を設け、該吸収部材に対してインクを噴射させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−119284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のプリンターの場合には、フラッシング時に吸収部材とノズルとを直接対向させる必要がある。そのため、連続紙などの長尺状の用紙に対して印刷を行う場合には、フラッシングを行うことができなかった。さらに、用紙間に配置されて搬送される吸収部材が記録ヘッドと対向するタイミングで噴射しなければならず、用紙のサイズや搬送速度に制約が生じてしまうという問題もあった。また、特許文献1のプリンターは、平面形状の吸収部材に対してフラッシングを行うため、インクの噴射に伴う風圧によってミスト状のインクが散ってプリンター内を汚してしまう虞もある。
【0006】
これに対して、線状の吸収部材を用紙と記録ヘッドとの間となる空域内を移動させてノズルと対向させ、その対向位置で停止した吸収部材にノズルからインクを噴射してフラッシングを簡易に素早く行う方法が提案されている。
【0007】
ところが、吸収部材を線状とした場合には、吸収部材におけるインクを受けることが可能な面積が平面形状である場合と比較して減少する。これに加えて用紙と記録ヘッドとの間となる空域内を移動させた線状の吸収部材は、ノズルと対向する対向位置で停止するときに平面形状の吸収部材と比較して振動しやすい。
【0008】
このため、吸収部材を線状とした場合には、吸収部材が振動することによって、吸収部材がインクを受けることが可能な領域から外れる虞があり、プリンター内を汚す虞がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、線状の受容部材をノズルから噴射された流体を受容可能な受容位置まで移動させて停止させる場合であっても、その受容部材でノズルから噴射された流体を迅速且つ容易に受容することができる流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の流体噴射装置は、流体を噴射するノズルを有する流体噴射ヘッドと、前記ノズルから噴射された流体を受容可能な線状の受容部材と、該受容部材を線状に延びるように支持する支持部材と、該支持部材を第1の位置と第2の位置との間で移動させ、前記第1の位置では前記受容部材を前記ノズルから噴射される前記流体を受容可能な受容位置に位置させる一方、前記第2の位置では前記受容部材を前記受容位置から外れた退避位置に位置させる支持部材移動手段と、前記支持部材により線状に延びるように支持された状態にある前記受容部材に対して該受容部材の延びる方向と交差する方向に相対移動して該受容部材に当接する当接部材とを備え、該当接部材は、前記支持部材移動手段が前記支持部材を前記第2の位置から前記第1の位置に移動させた際に前記受容部材に当接する。
【0011】
第2の位置から第1の位置に向けて移動した支持部材が第1の位置で停止する際、その支持部材に支持された線状の受容部材は、移動方向への慣性力と受容部材自身の復元力とにより受容位置で振動する虞がある。その点、この構成によれば、受容部材は、支持部材の第2の位置から第1の位置への移動に伴い受容位置に移動したとき、当接部材と当接することにより、受容位置での振動を抑制することができる。したがって、線状の受容部材をノズルから噴射された流体を受容可能な受容位置まで移動させて停止させる場合であっても、その受容部材でノズルから噴射された流体を迅速且つ容易に受容することができる。
【0012】
本発明の流体噴射装置において、前記受容部材が前記当接部材に当接する当接位置と前記受容位置との距離は、前記当接位置と前記退避位置との距離よりも短い。
受容部材の振動は、ゆっくり移動する場合に比べて素早く移動した方が大きくなる。その点、この構成によれば、退避位置から当接位置までの長い距離を素早く移動させたとしても、当接位置において受容部材が他部材に当接して振動が抑制される。したがって、受容部材の振動を抑制しつつ、退避位置から受容位置への移動を速やかに行うことができる。
【0013】
本発明の流体噴射装置において、前記当接部材は、前記受容部材が前記受容位置に到達する前及び到達した後の少なくとも一方において、前記受容部材に当接する。
この構成によれば、受容部材が受容位置に到達する前に当接部材と当接する場合は、受容部材の振動を抑制した状態で該受容部材を受容位置に到達させることができる。また、受容部材が受容位置に到達した後に当接部材と当接する場合は、受容位置に位置した受容部材の振動を減衰させることができる。したがって、受容位置に到達した受容部材に対して速やかに流体を噴射することができる。
【0014】
本発明の流体噴射装置において、前記当接部材は、前記受容部材との相対移動方向において移動不能に配置された固定部材及び移動可能に配置された可動部材の少なくとも一方により構成されており、固定部材で構成される場合は、前記受容部材が前記退避位置から前記受容位置に向けて移動する途中で該受容部材の移動方向を前記固定部材に向かう方向に変更させる移動方向変更手段を更に備える。
【0015】
この構成によれば、移動方向変更手段により受容部材の移動方向を変更して固定部材で構成された当接部材に当接させる場合でも、可動部材で構成された当接部材を移動させて受容部材に当接させる場合でも、同様に受容部材の振動を抑制することができる。
【0016】
本発明の流体噴射装置において、前記移動方向変更手段は、前記受容部材の移動経路と交差する斜面を有する。
この構成によれば、支持部材を移動させると、受容部材は斜面に沿って移動方向を変更される。そのため、受容部材の移動方向を容易に変更して受容部材と当接部材とを当接させることができる。
【0017】
本発明の流体噴射装置において、前記当接部材は、前記受容位置において前記受容部材と当接する。
この構成によれば、受容位置に停止後の受容部材に対して、当接部材を当接させることができるため、受容部材の振動を減衰することができる。
【0018】
本発明の流体噴射装置において、前記当接部材は、前記可動部材であって前記受容部材の移動経路に出没自在に設けられている。
この構成によれば、可動部材からなる当接部材を受容部材の移動経路に出没自在に移動させることにより、受容部材と当接部材とを当接させて受容部材の振動を抑制することができる。さらに、受容位置において流体を受容した受容部材を退避位置へ移動させる場合には、受容部材の移動経路と交差しない位置へ移動させることにより、受容部材と当接部材との接触を抑制して当接部材に流体が付着する虞を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態のプリンターの正面模式図。
【図2】ノズル形成面の模式図。
【図3】当接部材の斜視図。
【図4】制御部のブロック図。
【図5】第2の位置に位置するフラッシングユニットの模式図。
【図6】第1の位置に位置するフラッシングユニットの模式図。
【図7】糸部材がノズル形成面に当接する場合の正面模式図。
【図8】糸部材がノズル形成面に当接する場合の側面模式図。
【図9】糸部材が可動部材と当接する場合の正面模式図。
【図10】糸部材が可動部材と当接する場合の側面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の流体噴射装置をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は図1及び図2に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。
【0021】
図1に示すように、流体噴射装置としてのインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」ともいう。)11は、用紙12を搬送するための搬送ユニット13と、用紙12に印刷を施すための記録ヘッドユニット15とを備えている。
【0022】
搬送ユニット13は左右方向に長い矩形板状のプラテン17を備えている。プラテン17の右側には前後方向に延びる駆動ローラー18が駆動モーター19によって回転駆動可能に配置される一方、プラテン17の左側には前後方向に延びる従動ローラー20が回転可能に配置されている。さらに、プラテン17の下側には前後方向に延びるテンションローラー21が回転可能に配置されている。
【0023】
駆動ローラー18、従動ローラー20、及びテンションローラー21には、プラテン17を囲むように、多数の貫通孔(図示略)を有する無端状の搬送ベルト22が巻き回されている。この場合、テンションローラー21は、図示しないばね部材によって下側に向かって付勢されており、搬送ベルト22にテンションを付与することで該搬送ベルト22の弛みを抑制するようになっている。
【0024】
そして、駆動ローラー18を前側から見て時計方向に回転駆動することで、搬送ベルト22が駆動ローラー18、テンションローラー21、及び従動ローラー20の外側を前側から見て時計方向に周回移動されるようになっている。また、用紙12は、プラテン17の上面と対向する位置にある場合、図示しない吸引手段によって搬送ベルト22越しにプラテン17側に吸引され、上流側である左側から下流側である右側に向かって搬送されるようになっている。
【0025】
また、従動ローラー20の左斜め上側には、未印刷の複数の用紙12を1枚ずつ順次搬送ベルト22上に給紙するための上下1対の給紙ローラー23が設けられている。一方、駆動ローラー18の右斜め上側には、印刷後の用紙12を1枚ずつ搬送ベルト22上から排紙するための上下1対の排紙ローラー24が設けられている。
【0026】
図1及び図2に示すように、記録ヘッドユニット15には、複数個(本実施形態では5個)の流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド25(25A〜25E)が、用紙12の幅方向(前後方向)に亘って千鳥状の配置態様となるように支持板27に支持されて設けられている。そして、各記録ヘッド25の下面となるノズル形成面25aには、多数のノズル29により前後方向に沿う複数列(本実施形態では8列)のノズル列30(30A〜30H)が左右方向に所定間隔をおいて規則的に形成されている。そして、このように構成された各ノズル列30には、2列ずつ同じ種類のインク(流体)が供給され、ノズル29から噴射されるようになっている。
【0027】
すなわち、例えば、第1,第2のノズル列30A,30Bには、ブラックのインクが供給されるようになっている。また、同様に第3,第4のノズル列30C,30Dにはシアン、第5,第6のノズル列30E,30Fにはマゼンタ、第7,第8のノズル列30G,30Hにはイエローの各色のインクが供給されるようになっている。
【0028】
また、図2及び図3に示すように、記録ヘッドユニット15には、少なくとも1つ(本実施形態では3つ)の当接部材としての第1〜第3の可動部材31A〜31Cが、前後方向において各記録ヘッド25の間に位置するように支持板27に支持されている。そして、可動部材31A〜31Cの下面31aには、ノズル列30と同数(本実施形態では8つ)の凹条32が前後方向に亘って形成されている。すなわち、凹条32は、側面視半凹球面状(図9参照)をなし、前後方向においてそれぞれ第1〜第8のノズル列30A〜30Hと対応するように形成されている。そして、各可動部材31A〜31Cは、昇降装置33(図4参照)の駆動に応じて上下動可能に設けられている。
【0029】
すなわち、図4に示すように、プリンター11には、プリンター11の稼働状態を統括制御する制御部35が設けられている。この制御部35は、中央処理装置として機能することにより各種の演算を実行するCPU36と、各種プログラムを記憶する記憶部37を備えたデジタルコンピュータにて構成されている。そして、CPU36は、記憶部37に記憶されたプログラムに基づいて各記録ヘッド25を制御して各ノズル29からのインクの噴射制御を行うと共に、昇降装置33の駆動を制御して可動部材31A〜31Cを上下移動させるようになっている。
【0030】
また、図5に示すように、プリンター11は、フラッシングに伴ってノズル29から噴射されるインク(流体)を線状の受容部材としての糸部材39で受容するフラッシングユニット40を備えている。
【0031】
フラッシングユニット40は、前後方向において記録ヘッドユニット15を挟むように設けられ、少なくとも1本(本実施形態では2本)の糸部材39を着脱可能に支持する繰り出し部41と巻き取り部42とを備えている。すなわち、繰り出し部41と巻き取り部42は、受容部材としての糸部材39を線状に延びるように支持する支持部材として機能している。
【0032】
そして、繰り出し部41と巻き取り部42は、支持部材移動手段としての1対の移動機構43,44によりそれぞれ左右方向に往復移動可能に設けられている。そのため、両端が繰り出し部41と巻き取り部42とに支持された糸部材39は、繰り出し部41及び巻き取り部42と共に左右方向に往復移動可能になっている。
【0033】
第1の移動機構43は、第1の移動モーター46の駆動力に基づいて回転可能な第1の駆動歯車47と、第1の駆動歯車47と噛合する第1の従動歯車48とを備えている。第1の従動歯車48の中心から右方に延設された第1の軸49の外周面には雄ねじが形成されており、この雄ねじに対して第1の移動台50に貫通形成されたねじ孔の雌ねじが噛合している。そして、この第1の移動台50に対して繰り出し部41が固定されている。そのため、第1の移動モーター46が駆動されて第1の軸49が回転すると、第1の移動台50と共に繰り出し部41が左右方向へ往復移動するようになっている。
【0034】
同様に、第2の移動機構44は、第2の移動モーター52、第2の駆動歯車53、第2の従動歯車54、雄ねじ付きの第2の軸55、雌ねじ孔付きの第2の移動台56を備えている。そして、第2の移動モーター52の駆動力に基づいて第2の軸55が回転することにより、第2の移動台56に固定された巻き取り部42が左右方向へ往復移動するようになっている。
【0035】
さて、繰り出し部41は、第1の移動台50に固定された第1のステージ58を備えている。そして、第1のステージ58上には、1対の巻き軸59が送出モーター60(図4参照)の駆動に伴って回転自在に設けられていると共に、各1対の第1〜第3のローラー61〜63が回転自在に設けられている。各巻き軸59には、糸部材39がそれぞれ一体回転可能に巻き付けられている。さらに糸部材39は、第1のローラー61、第2のローラー62、及び第3のローラー63に順次巻き掛けられた後、それぞれ繰り出し部41から繰り出されるようになっている。
【0036】
また、第2のローラー62は、巻き軸59を中心として揺動自在とされた1対のアーム64の前端側に回転可能な状態で支持されている。一方、アーム64の後端側には、引っ張りばね65が設けられており、糸部材39に対して張力を付与している。
【0037】
一方、巻き取り部42は、第2の移動台56に固定された第2のステージ67を備えている。そして、第2のステージ67上には、1対の巻き取り軸68が回収モーター69(図4参照)の駆動に伴って回転自在に設けられていると共に、各1対の第4のローラー70、第5のローラー71が回転自在に設けられている。そして、繰り出し部41から繰り出された1対の糸部材39は、それぞれ第4のローラー70、第5のローラー71に順次巻きかけられると共に、巻き取り軸68に巻き取られるようになっている。
【0038】
なお、1対の第3のローラー63同士の左右方向における間隔と、1対の第4のローラー70同士の左右方向における間隔は、ノズル列30の左右方向の間隔と等しくなっている。すなわち、本実施形態では、1対の糸部材39の左右方向における間隔は、同じインクを噴射するノズル列(例えば、第1のノズル列30A,第2のノズル列30B)の左右方向における間隔と等しくなっている。
【0039】
さらに、糸部材39の径(太さ)は、ノズル形成面25aと用紙12との隙間よりも小さく、且つノズル29の口径よりも大きく設定されている。すなわち、例えば記録ヘッド25におけるノズル形成面25aと用紙12との隙間が約2mm、ノズル29の口径が約0.02mmである場合には、糸部材39の直径を0.2〜1mm(ノズル29の直径の10〜50倍)に設定するのが好ましい。糸部材39の直径がノズル29の口径の10倍程度あれば部品の製造誤差やノズル29と糸部材39の位置の精度を考慮しても糸部材39によってインクを受容することができる。また、糸部材39の直径がノズル29の口径の50倍程度であれば、ノズル形成面25aと用紙12との間となる空間域を通過させることができる。
【0040】
また、図5に示すように、記録ヘッドユニット15の前後両側には、カムモーター73(図4参照)の駆動に伴って糸部材39の移動経路に出没自在なカム面74(図7参照)を有する1対のカム部材75が回転自在に設けられている。すなわち、カム部材75は、第1の角度(図7参照)の場合にカム面74が糸部材39の移動経路と交差すると共に、第2の角度(図9参照)の場合にカム面74が糸部材39の移動経路と交差しないようになっている。
【0041】
そして、図4に示すように、CPU36は、記憶部37に記憶されたプログラムに基づいて第1,第2の移動モーター46,52、送出モーター60、回収モーター69、カムモーター73の駆動制御を行うようになっている。
【0042】
すなわち、図5に示すように、繰り出し部41と巻き取り部42が記録ヘッドユニット15よりも左側に位置した状態で、制御部35が第1,第2の移動モーター46,52を正転駆動すると、繰り出し部41と巻き取り部42は、右方向へ移動して第1の位置に位置する。
【0043】
なお、第1の位置とは、図6に示すように、各糸部材39を上下方向において各ノズル列30と対向させる位置である。すなわち、繰り出し部41と巻き取り部42とが第1の位置に位置する場合には、糸部材39はノズル29から噴射されたインクを受容可能な受容位置に位置する。なお、第1の位置及び受容位置は、ノズル列30と糸部材39の本数によって設定され、本実施形態では8箇所(左右方向において位置の異なるノズル列30の数を糸部材39の本数で割った商)設定される。
【0044】
具体的には、図7に示すように、記録ヘッドユニット15において、左側に配置された第1〜第3の記録ヘッド25A〜25Cの第1,第2のノズル列30A,30Bと対向した二点鎖線で示す位置が第1の受容位置P1となっている。同様に、第3,第4のノズル列30C,30Dと対向する位置が第2の受容位置P2、第5、第6のノズル列30E,30Fと対向する位置が第3の受容位置P3、第7,第8のノズル列30G,30Hと対向する位置が第4の受容位置P4となっている。
【0045】
さらに、記録ヘッドユニット15において、右側に配置された第4、第5の記録ヘッド25D、25Eの第1〜第8のノズル列30A〜30Hとそれぞれ対向する位置が第5〜第8の受容位置(図示略)となっている。なお、図6には、糸部材39が第6の受容位置に位置している状態を図示している。
【0046】
そして、繰り出し部41と巻き取り部42が第1の位置に位置した状態で、制御部35が第1、第2の移動モーター46,52を逆転駆動すると、繰り出し部41と巻き取り部42は、左方向へ移動し第2の位置に位置する。なお、第2の位置とは、図5に示すように各糸部材39を上下方向においてノズル列30と非対向にさせる位置である。すなわち、繰り出し部41と巻き取り部42とが第2の位置に位置した場合には、糸部材39は第1〜第4の受容位置P1〜P4及び第5〜第8の受容位置から外れた退避位置P5(図7参照)に位置する。
【0047】
次に、以上のように構成されたプリンター11における作用について、特にフラッシング時における作用に着目して以下説明する。なお、繰り出し部41及び巻き取り部42はフラッシング時以外は第2の位置に位置しているものとする。すなわち、糸部材39はフラッシング時以外は退避位置P5に位置している。また、カム部材75の回動角度は、カム面74を糸部材39の移動経路と交差する位置に配置する第1の角度にされているものとする。
【0048】
さて、プリンター11において印刷が開始されると、制御部35は印刷データに基づいて各ノズル29毎にインクの噴射タイミングを作成すると共に、該噴射タイミングに基づいてインクを噴射する。すると、搬送ベルト22に支持されて搬送される用紙12には、印刷が施される。
【0049】
ところで、ノズル29からインクが噴射されない時間が長くなると、ノズル29内のインクが増粘し、噴射不良を起こす虞がある。そのため、制御部35は、所定時間毎に印刷とは異なる噴射タイミングでインクを噴射するフラッシングを行う。
【0050】
具体的には、制御部35は、第1,第2の移動モーター46,52を正転駆動して繰り出し部41と巻き取り部42とを右方向へ移動させる。すると、繰り出し部41及び巻き取り部42に支持される糸部材39も右方向へ移動する。
【0051】
このとき、図7及び図8に示すように、カム部材75は第1の角度となっているため、糸部材39の移動経路とカム面74とが交差している。そのため、糸部材39は、カム面74の斜面に乗り上げるようにして糸部材39の延びる前後方向と交差する上下方向に相対移動し、第1〜第3の記録ヘッド25A〜25Cのノズル形成面25aに当接する。すなわち、糸部材39は、前後方向においてノズル列30が形成される範囲であって、ノズル列30と対向してインクを受容可能な受容領域R(図5参照)がノズル形成面25aに当接する。この点で、記録ヘッド25は、固定部材及び当接部材として機能すると共に、カム部材75は移動方向変更手段として機能している。なお、糸部材39がカム面74に乗り上げて移動経路が変化した場合であっても、引っ張りばね65に付勢された第2のローラー62が変位するため、糸部材39に過剰な張力が付与される虞が低減されている。
【0052】
そして、図7に示すように、カム部材75によって移動方向が変更された糸部材39がノズル形成面25aに当接する当接位置P6は、当接位置P6と退避位置P5との距離L1よりも、当接位置P6と第1の受容位置P1との距離L2の方が短くなるように設定されている。
【0053】
その後、制御部35は、フラッシングを行う第1,第2のノズル列30A,30Bに対応する第1の受容位置P1に糸部材39を位置させるように第1,第2の移動モーター46,52の駆動を停止して繰り出し部41と巻き取り部42を第1の位置に位置させる。さらに制御部35は、カムモーター73を駆動してカム部材75を第2の角度に回転させる。すると、カム面74が糸部材39の移動経路と交差しない位置に退避する。
【0054】
また、制御部35は、昇降装置33を駆動制御して可動部材31A〜31Cを降下させ、糸部材39の延びる前後方向と交差する上下方向に相対移動させる。すると、図9,図10に示すように、第1,第2の可動部材31A,31Bは、下面31aに形成された凹条32が第1の受容位置P1に位置する糸部材39と接触するように当接する。すなわち、可動部材31A〜31Cは、各記録ヘッド25間に設けられて糸部材39と当接するため、両端が繰り出し部41及び巻き取り部42に支持された糸部材39の中央部分に位置する受容領域Rにおいて当接することになる。なお、第1,第2の可動部材31A,31Bと糸部材39とが第1の受容位置P1において当接する場合には、当接位置P6と第1の受容位置P1とが同じ位置となる。そのため、当接位置P6と退避位置P5との距離よりも、当接位置P6と第1の受容位置P1との方が短くなっている。
【0055】
さらに、制御部35は、記録ヘッド25を制御して第1,第2のノズル列30A,30Bからインクを噴射する。なお、糸部材39は、第1の受容位置P1に到達する前にノズル形成面25aに当接して振動の発生が抑制されると共に、第1の受容位置P1に停止した後には可動部材31A〜31Cと当接して振動が減衰されている。そのため、第1,第2のノズル列30A,30Bから噴射されたインクは、第1,第2のノズル列30A,30Bの下方に位置する糸部材39に受容される。
【0056】
その後、制御部35は、昇降装置33を駆動制御して可動部材31A〜31Cを上昇させると共に、第1,第2の移動モーター46,52を逆転駆動して第1の位置に位置する繰り出し部41と巻き取り部42を左方向へ移動させて第2の位置へ移動させる。そのため、第1の受容位置P1に位置する糸部材39は、退避位置P5へ移動する。なお、このときカム部材75は第2の角度となっているため、カム面74は糸部材39の移動経路から退避している。したがって、糸部材39はその移動方向を変更されることなく維持した状態で退避位置へ移動する。退避位置P5に移動し停止したとき、糸部材39は振動するが、退避位置P5ではインクを受容しないので振動しても特に問題はない。そして、制御部35は、送出モーター60と回収モーター69とを駆動してインクを受容した糸部材39の受容領域Rを巻き取り軸68に巻き取ると共に、巻き軸59から糸部材39の新たな受容領域Rとなる部分を繰り出す。
【0057】
また、全てのノズル列30のフラッシングを行う場合には、制御部35は、糸部材39が第1の受容位置P1に位置している状態からさらに第1,第2の移動モーター46,52を正転駆動し、糸部材39を第2の受容位置P2へ移動させる。さらに制御部35は、昇降装置33を駆動制御して可動部材31A〜31Cを降下させて、糸部材39と第1,第2の可動部材31A,31Bとを当接させる。そして、制御部35は、第1〜第3の記録ヘッド25A〜25Cを制御して第3,第4のノズル列30C,30Dからインクを噴射する。すると、インクは、振動が抑制された状態で第3,第4のノズル列30C,30Dの下方に位置する糸部材39に受容される。その後、可動部材31A〜31Cを上昇させる。
【0058】
以下、同様に、制御部35は、第1,第2の移動モーター46,52を制御して糸部材39を第3,第4の受容位置P3,P4及び第5〜第8の受容位置に順に位置させると共に、昇降装置33を駆動制御して可動部材31A〜31Cを当接させる。そして、制御部35は、記録ヘッド25を制御して糸部材39と対向するノズル列30からインクを噴射してフラッシングを行う。
【0059】
そして、全てのノズル列30のフラッシングを行うと、制御部35は第1,第2の移動モーター46,52を逆転駆動して繰り出し部41及び巻き取り部42を第2の位置へ移動させると共に、糸部材39を退避位置P5へ位置させる。
【0060】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第2の位置から第1の位置に向けて移動した繰り出し部41及び巻き取り部42が第1の位置で停止する際、その繰り出し部41及び巻き取り部42に支持された糸部材39は、移動方向への慣性力と糸部材39自身の復元力とにより受容位置で振動する虞がある。その点、糸部材39は、繰り出し部41及び巻き取り部42の第2の位置から第1の位置への移動に伴い第1の受容位置P1に移動したとき、記録ヘッド25及び第1,第2の可動部材31A,31Bと当接することにより、第1の受容位置P1での振動を抑制することができる。したがって、糸部材39をノズル29から噴射されたインクを受容可能な受容位置まで移動させて停止させる場合であっても、その糸部材39でノズル29から噴射されたインクを迅速且つ容易に受容することができる。
【0061】
(2)糸部材39の振動は、ゆっくり移動する場合に比べて素早く移動した方が大きくなる。その点、退避位置P5から当接位置P6までの長い距離を素早く移動させたとしても、当接位置P6において糸部材39が記録ヘッド25と可動部材31A〜31Cに当接して振動が抑制される。したがって、糸部材39の振動を抑制しつつ、退避位置P5から第1の受容位置P1への移動を速やかに行うことができる。
【0062】
(3)糸部材39が第1の受容位置P1に到達する前に記録ヘッド25と当接することにより、糸部材39の振動を抑制した状態で糸部材39を第1の受容位置P1に到達させることができる。また、糸部材39が第1の受容位置P1に到達した後に可動部材31A〜31Cと当接することにより、第1の受容位置P1に位置した糸部材39の振動を減衰させることができる。したがって、第1の受容位置P1に到達した糸部材39に対して速やかにインクを噴射することができる。
【0063】
(4)カム部材75により糸部材39の移動方向を変更して記録ヘッド25に当接させることにより、糸部材39の振動を抑制することができる。また、可動部材31A〜31Cを移動させて糸部材39に当接させることにより、糸部材39の振動を抑制することができる。
【0064】
(5)繰り出し部41及び巻き取り部42を移動させると、糸部材39はカム面74に沿って移動方向を変更される。そのため、糸部材39の移動方向を容易に変更して糸部材39と記録ヘッド25とを当接させることができる。
【0065】
(6)第1の受容位置P1に停止後の糸部材39に対して、可動部材31A〜31Cを当接させることができるため、糸部材39の振動を減衰することができる。
(7)可動部材31A〜31Cを糸部材39の移動経路に出没自在に移動させることにより、糸部材39と可動部材31A〜31Cとを当接させて糸部材39の振動を抑制することができる。さらに、第1の受容位置P1においてインクを受容した糸部材39を退避位置P5へ移動させる場合には、可動部材31A〜31Cを糸部材39の移動経路と交差しない位置へ移動させることにより、糸部材39と可動部材31A〜31Cとの接触を抑制して可動部材31A〜31Cにインクが付着する虞を低減することができる。
【0066】
(8)糸部材39の移動経路に対してカム面74を出没自在に位置させることにより、糸部材39の移動経路を切り替えることができる。すなわち、例えば、糸部材39を退避位置P5から第1の受容位置P1へ移動させる場合には、カム部材75を第1の角度としてカム面74を糸部材39の移動経路と交差する位置に位置させる。すると、糸部材39の移動方向を変更し、糸部材39と記録ヘッド25とを当接させることができる。一方、糸部材39を第1の受容位置P1から退避位置P5へ移動させる場合には、カム部材75を第2の角度としてカム面74を糸部材39の移動経路とは交差しない位置に位置させる。すると、糸部材39を記録ヘッド25に当接させることなく退避位置P5へ移動させることもできる。したがって、糸部材39を退避位置P5から第1の受容位置P1へ移動させる場合には、記録ヘッド25に当接させて振動を抑制することができる。さらに、第1の受容位置P1においてインクを受容した糸部材39を退避位置P5へ移動させる場合には、カム面74との接触を抑制してカム面74にインクが付着する虞を低減することができる。
【0067】
(9)糸部材39が振動した場合の振幅は、繰り出し部41及び巻き取り部42からの距離が離れるほど大きくなる。その点、記録ヘッド25及び可動部材31A〜31Cは、糸部材39の受容領域Rと当接するため、振幅が大きくなる糸部材39の中央付近で糸部材39と当接する。したがって、糸部材39の振動を効率よく減衰させることができる。
【0068】
(10)可動部材31A〜31Cは、糸部材39と接触する部分に凹条32を形成しているため、平面部分と当接する場合に比べて糸部材39との接触面積が大きくなる。したがって、糸部材39を凹条32と当接させることにより、振動の減衰効果を高めることができる。さらに、糸部材39の停止位置がずれていた場合であっても、可動部材31A〜31Cと当接した糸部材39は凹条32に沿うように移動して各ノズル列30と対向させることができる。したがって、第1,第2の移動モーター46,52の精度を粗くしても糸部材39を受容位置に位置させることができる。
【0069】
(11)糸部材39は、ノズル形成面25aと用紙12との間となる空間域を移動するため、用紙12の搬送タイミングに関わらずフラッシングを行うことができる。また、連続して供給される長尺の連続紙に印刷を行う場合であってもフラッシングを行うことができる。
【0070】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・インクを受容した糸部材39の洗浄を行うクリーニング機構を設け、一旦巻き取り部42に巻き取れられた糸部材39を再び繰り出し部41側に繰り出してフラッシングを行うようにしてもよい。
【0071】
・糸部材39の退避位置P5を記録ヘッド25のノズル形成面25aと上下方向で対向する位置で、用紙12の搬送経路より下方に設定してもよい。すなわち、ノズル29から吐出されたインクはミスト状となるため、糸部材39がノズル形成面25aから離れて位置している場合には、ノズル列30と対向してもインクを受容することができない。そのため、糸部材39を、用紙12の搬送経路より下方の退避位置に位置と、用紙12の搬送経路よりも上方の受容位置との間を移動させるようにしてもよい。なお、糸部材39を用紙12の搬送経路よりも下方に配置可能なプリンターとしては、例えば搬送ベルト22を用いずに給紙ローラー23及び排紙ローラー24で用紙12を搬送するようにしてもよい。また、搬送ベルト22やプラテン17に収容溝や収容孔を設けて糸部材39を収容するようにしてもよい。なお、糸部材39は、記録ヘッドユニット15の前後方向に亘って設けられている必要はなく、例えば各記録ヘッド25に対応する幅としてもよい。
【0072】
・可動部材31A〜31Cとカム部材75は、少なくとも一方を備えていればよい。すなわち、糸部材39が退避位置P5から受容位置へ移動する場合には、可動部材31A〜31Cと記録ヘッド25のうち、少なくとも一方と当接すれば、受容位置に位置する糸部材39の振動を抑制することができる。糸部材39が記録ヘッド25と当接した状態から受容位置P1への移動距離は短いため、糸部材39が移動して振動したとしても、その振幅は小さなものであって、インクを受容するのには問題がない。
【0073】
・制御部35は、退避位置P5から受容位置P1へ移動する場合にのみ昇降装置33を制御して可動部材31A〜31Cを糸部材39に当接させ、各受容位置間では可動部材31A〜31Cは糸部材39と当接しないようにしてもよい。すなわち、糸部材39は、記録ヘッド25もしくは可動部材31A〜31Cに当接して振動が抑制された状態で受容位置に位置している。さらに、各受容位置間の距離L3(図7参照)は、退避位置P5と当接位置P6との距離L1に比べて短いため、糸部材39が受容位置間を移動して振動したとしても、その振幅は小さなものであって退避位置P5から受容位置へ移動させる場合に比べて速やかに減衰する。
【0074】
・可動部材31A〜31Cは、各ノズル列30毎、もしくはフラッシングを行う単位(例えば2列)毎に上下動可能に設けてもよい。また、可動部材31A〜31Cは、少なくとも1つのノズル列30に対応するように設けていればよい。すなわち、例えば、可動部材31A〜31Cを繰り出し部41と巻き取り部42のうち少なくとも一方に固定し、移動可能に設けてもよい。
【0075】
・可動部材31A〜31Cに凹条32を形成せず、平面部分を糸部材39に当接させるようにしてもよい。また、凹条32の形状は、側面視U字型、V字型など任意に変更できるが、糸部材39との接触面積が大きいほど振動の減衰効果を高めることができる。また、糸部材39と当接する当接部を、下面31aから突出するように設けてもよい。
【0076】
・可動部材31A〜31Cは、糸部材39に対して当接状態と非当接状態とを切り換え可能であれば、上下,左右,前後方向において任意の方向に移動させることができる。
・カム部材75を複数設け、フラッシングを行うノズル列30に合わせて当接位置P6を変更してもよい。
【0077】
・カム部材75は、糸部材39の移動経路を下方に変更し、糸部材39と用紙12もしくは搬送ベルト22とを当接させるようにしてもよい。すなわち、糸部材39の移動経路を変更する斜面をカム面74として設けたため、糸部材39が退避位置P5から受容位置へ移動する経路と受容位置から退避位置P5へ移動する経路とを異ならせることができる。したがって、インクを受容する前のきれいな糸部材39の移動方向を下側へ変更して用紙12もしくは搬送ベルト22に当接させることにより、糸部材39の振動を抑制した状態で該糸部材39を受容位置に位置させることができる。また、糸部材39を受容位置から退避位置P5へ移動させる場合には、カム面74を糸部材39の移動経路と交差しない位置に退避させることにより、インクが付着した糸部材39が用紙12と搬送ベルト22を汚す虞を低減することができる。
【0078】
・糸部材39は、該糸部材39が延びる方向において記録ヘッド25よりも繰り出し部41もしくは巻き取り部42側となる受容領域R以外の領域で当接部材と当接させるようにしてもよい。すなわち、カム部材75を当接部材として機能させた場合であっても、糸部材39の振動を抑制することができる。また、カム部材75は、各記録ヘッド25の間となる位置に設けてもよい。
【0079】
・繰り出し部41及び巻き取り部42を上下動させることにより、糸部材39を当接させるようにしてもよい。すなわち、上記実施形態では、カム部材75が糸部材39に当接して糸部材39の移動方向を変更したが、例えばカム部材75を繰り出し部41及び巻き取り部42の下方に設けてフラッシングユニット40ごと上下動させるようにしてもよい。
【0080】
・記録ヘッド25のノズル形成面25aに糸部材39の移動経路と交差する凸部を形成し、糸部材39が移動に伴って凸部と当接するようにしてもよい。
・可動部材31A〜31Cを退避位置P5と受容位置との間になる位置に設け、移動途中の糸部材39に対して当接させるようにしてもよい。
【0081】
・カム部材75は、受容位置に位置して停止した糸部材39と当接して該糸部材39の位置を変更し、記録ヘッド25と当接させるようにしてもよい。
・移動方向変更手段は、少なくとも1つの面が糸部材39の移動経路と斜めに交差するように固定された板部材や棒部材であってもよい。
【0082】
・糸部材39を受容領域Rと対応する長さだけ設け、繰り出し及び巻き取り機能を有さない支持部材に左右方向へ移動可能に支持されるようにしてもよい。
・繰り出し部41及び巻き取り部42を固定配置とし、第3のローラー63および第4のローラー70を左右方向へ移動可能としてもよい。すなわち、第3のローラー63と第4のローラー70が右方へ移動すると、第3のローラー63と第4のローラー70と共に糸部材39も右方へ移動する。さらに第3のローラー63と第4のローラー70の制御に加えて送出モーター60もしくは回収モーター69とが回転制御されるのが好ましい。すなわち、送出モーター60と回収モーター69とが回転制御されることにより張力が調整されて、糸部材39が第3のローラー63と第4のローラー70から離間する虞を抑制できると共に、過剰な張力が付与されることによる糸部材39が損傷する虞を抑制することができる。この場合、第3のローラー63と第4のローラー70が支持部材として機能する。また、第3,第4のローラー63,70や繰り出し部41、巻き取り部42を移動させる支持部材移動機構としては、ラックとピニオン、ソレノイド、カム機構などを用いることができる。
【0083】
・糸部材39は、例えば、絹、綿などの繊維や、ポリアミド(例えばナイロン)やポリエステルなどの合成繊維、ステンレスなどの金属などを用いて形成することができる。すなわち、例えば、親水性コートを施したナイロン、アラミド、超高分子量ポリエチレン、ポリアリレート、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、商品名:ザイロン)などの繊維、あるいはこれらの複数を含む複合繊維から形成することができる。より詳細には、上記繊維あるいは複合繊維から形成される繊維束が、複数本、撚り合わされるあるいは束ねられることによって糸部材39が形成可能である。そして、複数の繊維束が撚り合わされて糸部材39が形成される場合には、繊維束の間にもインクを保持することが可能となってインクの受容可能量を増加させることができる。また、糸部材39は、伸縮性に優れた例えばゴムなどの弾性部材を用いて形成してもよく、例えば螺旋状に形成することにより伸縮性を得るようにしてもよい。さらに、糸部材39は、付着したインクを繊維間に吸収するだけではなく、表面張力や静電気力によってインクを受容するものであってもよい。
【0084】
・記録ヘッドユニット15は、複数の記録ヘッド25を千鳥状に配置するものだけではなく、用紙12の幅方向に対応する長尺の1つの記録ヘッドを備えるものとしてもよい。また、プリンター11は、ライン方式に限らず、記録ヘッド25を移動可能に有するシリアル方式のプリンターやラテラル方式のプリンターに適用することもできる。すなわち、記録ヘッド25をフラッシングユニット40の位置へ移動させてフラッシングを行うようにしてもよい。
【0085】
・上記実施形態では、流体噴射装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相もしくは気相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。
【0086】
次に、上記実施形態及び変形例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記斜面は、回転可能なカム部材に設けられたカム面であることを特徴とする請求項5に記載の流体噴射装置。
【0087】
この構成によれば、受容部材の移動経路に対して斜面を出没自在に位置させることにより、受容部材の移動経路を切り替えることができる。すなわち、例えば、受容部材を退避位置から受容位置へ移動させる場合には、斜面を移動経路と交差する位置に位置させて受容部材の移動方向を変更し、受容部材と当接部材とを当接させることができる。一方、受容部材を受容位置から退避位置へ移動させる場合には、斜面を移動経路とは交差しない位置に位置させることにより、受容部材を当接部材に当接させることなく退避位置へ移動させることもできる。したがって、受容部材を退避位置から受容位置へ移動させる場合には、当接部材に当接させて振動を抑制することができる。さらに、受容位置において流体を受容した受容部材を退避位置へ移動させる場合には、カム面との接触を抑制してカム面に流体が付着する虞を低減することができる。
【0088】
(ロ)前記当接部材は、前記受容部材が前記受容位置に位置した場合に前記ノズルと対向して流体を受容可能な前記受容部材の受容領域と当接することを特徴とする請求項1〜請求項7及び技術的思想(イ)のうち何れか一つに記載の流体噴射装置。
【0089】
受容部材が振動した場合の振幅は、支持部材からの距離が離れるほど大きくなる。その点、この構成によれば、当接部材は、受容部材の受容領域と当接するため、振幅が大きくなる受容部材の中央付近で受容部材と当接する。したがって、受容部材の振動を効率よく減衰させることができる。
【符号の説明】
【0090】
11…プリンター(流体噴射装置)、25…記録ヘッド(流体噴射ヘッド、当接部材、固定部材)、29…ノズル、31A〜31C…可動部材(当接部材)、39…糸部材(受容部材)、41…繰り出し部(支持部材)、42…巻き取り部(支持部材)、43…第1の移動機構(支持部材移動手段)、44…第2の移動機構(支持部材移動手段)、75…カム部材(移動方向変更手段)、L1,L2…距離、P1〜P4…受容位置、P5…退避位置、P6…当接位置、R…受容領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射するノズルを有する流体噴射ヘッドと、
前記ノズルから噴射された流体を受容可能な線状の受容部材と、
該受容部材を線状に延びるように支持する支持部材と、
該支持部材を第1の位置と第2の位置との間で移動させ、前記第1の位置では前記受容部材を前記ノズルから噴射される前記流体を受容可能な受容位置に位置させる一方、前記第2の位置では前記受容部材を前記受容位置から外れた退避位置に位置させる支持部材移動手段と、
前記支持部材により線状に延びるように支持された状態にある前記受容部材に対して該受容部材の延びる方向と交差する方向に相対移動して該受容部材に当接する当接部材とを備え、
該当接部材は、前記支持部材移動手段が前記支持部材を前記第2の位置から前記第1の位置に移動させた際に前記受容部材に当接することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記受容部材が前記当接部材に当接する当接位置と前記受容位置との距離は、前記当接位置と前記退避位置との距離よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記当接部材は、前記受容部材が前記受容位置に到達する前及び到達した後の少なくとも一方において、前記受容部材に当接することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記当接部材は、前記受容部材との相対移動方向において移動不能に配置された固定部材及び移動可能に配置された可動部材の少なくとも一方により構成されており、固定部材で構成される場合は、前記受容部材が前記退避位置から前記受容位置に向けて移動する途中で該受容部材の移動方向を前記固定部材に向かう方向に変更させる移動方向変更手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記移動方向変更手段は、前記受容部材の移動経路と交差する斜面を有することを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記当接部材は、前記受容位置において前記受容部材と当接することを特徴とする請求項4に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記当接部材は、前記可動部材であって前記受容部材の移動経路に出没自在に設けられていることを特徴とする請求項4〜請求項6のうち何れか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−131193(P2011−131193A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295640(P2009−295640)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】