説明

流体回転機及び流体回転機用ロータリバルブ

【課題】ロータリバルブと環状摺動面との隙間の寸法管理を簡略化可能とする。
【解決手段】シリンダ21とピストン8との組合せによって流体圧室25が構成され、流体圧室に流入通路2b及び流出通路1bが連通され、流入通路及び流出通路は環状の摺動面1d、2d上に開口され、ピストンの直線往復運動に連動して環状の摺動面内でロータリバルブ23,24が回転することにより、ピストンが流体圧室内に流体を流入するときは流入通路を開くと共に流出通路を閉じ、ピストンが流体圧室内の流体を流出するときは流出通路を開くと共に流入通路を閉じる。ロータリバルブは、環状の摺動面に内接しながら流入通路及び流出通路を開閉する環状の弁体を有し、弁体の樹脂板23c、24cは外周方向に常時バイアスされ、環状の摺動面との隙間に応じて外径を変化可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気送ポンプ、液送ポンプ、真空ポンプ、気送コンプレッサー、多段圧縮機、流体モータなどの流体回転機及び流体回転機用ロータリバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
かかる流体回転機として、出願人は、両頭ピストンを2組十字状に配置してなるポンプに使用される流体回転機を開発し、平成22年8月2日付けで特願2010−173522号として特許出願した。但し、この流体回転機は未だ一般には公開されていない。
この流体回転機は、両頭のピストン間に各ピストンを駆動するためのシャフトを配置し、このシャフトによって回転されるようにロータリバルブを配置したもので、各ピストンの流入通路及び流出通路をロータリバルブの外周面に臨む位置、即ち環状の摺動面まで導き、ロータリバルブの回転に伴って各通路が開閉制御されるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の流体回転機を効率的に作動させるためには、各通路における流体がロータリバルブとの間で漏洩しないようにする必要がある。そのため、ロータリバルブと環状摺動面との隙間を相対回転のために必要最小限の寸法とする必要がある。
しかし、そのためには隙間の寸法管理を厳格に行う必要があり、その結果、ロータリバルブを含む流体回転機全体の製造コストが高価となってしまう。
本発明は、このような問題に鑑み、上記隙間に応じてロータリバルブの径を変化可能とすることにより、上記隙間の寸法管理を簡略化可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1発明は、シリンダとピストンとの組合せによって流体圧室が構成され、該流体圧室に流入通路及び流出通路の各一端が連通され、該流入通路及び流出通路の各他端は環状の摺動面上に開口され、ピストンの直線往復運動に連動して前記環状の摺動面内でロータリバルブが回転することにより、ピストンが流体圧室内に流体を流入するときは流入通路を開くと共に流出通路を閉じ、ピストンが流体圧室内の流体を流出するときは流出通路を開くと共に流入通路を閉じられる流体回転機であって、前記ロータリバルブは、前記環状の摺動面に内接しながら前記流入通路及び流出通路を開閉する環状の弁体を有し、該弁体は外周方向に常時バイアスされ、前記環状の摺動面との隙間に応じて外径を変化可能とされていることを特徴とする流体回転機である。
第1発明によれば、ロータリバルブの弁体は外周方向に常時バイアスされ、環状の摺動面との隙間に応じて外径を変化可能とされているので、環状の摺動面とロータリバルブとの隙間の寸法精度を高くしなくても弁体は常時、環状の摺動面に内接され、しかも弁体が各通路を閉じた状態では、通路から流体が漏れることを抑制することができる。
なお、取り扱われる流体が非圧縮性流体の場合は、流体圧室内の流体を流出するためピストンが流体圧室の容積を縮小するとき、流入通路を閉じると同時に流出通路を開くが、取り扱われる流体が圧縮性流体(空気等の気体)の場合は、流体圧室内の流体を流出するためピストンが流体圧室の容積を縮小するとき、流入通路を先に閉じ、流出通路は流体圧室内の流体圧が高まってから開かれる。このように圧縮性流体の場合に流入通路を閉じるのと流出通路を開くのに時間差を設けている理由は、流体圧室の圧力が高まる前に流出通路を開くことにより流出通路側の流体が流体圧室側へ逆流してしまうのを防止するためである。
【0005】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記弁体は、回転体の外周面から突出して固定されたカップ体であり、該カップ体は樹脂、ゴム、又は樹脂とゴムの混合体から成ることを特徴とする流体回転機である。
第2発明によれば、回転体の外周面から突出してカップ体を固定することで弁体が構成されるため、弁体を簡単に構成することができる。
【0006】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記環状の摺動面は、前記ロータリバルブの回転軸方向から被せられるケース体により形成され、該ケース体の開放面を閉じて閉空間を形成するように前記弁体が配置されていることを特徴とする流体回転機である。
第3発明によれば、ケース体をロータリバルブの回転軸方向から被せ、その開放面を閉じるように弁体を配置することにより、環状の摺動面に流入通路及び流出通路に通じる閉空間を形成できるので、ロータリバルブの弁体の構造を簡素化することができる。
【0007】
本発明の第4発明は、上記第2発明において、前記弁体は、前記ピストンに連動して回転される円筒状のドラムと、該ドラムの一端に被せられ、ドラム外周面に流れる流体が他に漏れないように保持する保持部、及び前記環状の摺動面に内接して前記流入通路及び流出通路を閉じる弁機能部を一体に形成された第一のカップ体と、前記ドラムの他端に被せられ、ドラム外周面に流れる流体が他に漏れないように保持する保持部を形成された第二のカップ体と、前記第一及び第二のカップ体を前記ドラムに対して固定する第一及び第二の固定具とを備えることを特徴とする流体回転機である。
第4発明によれば、ドラムに対して第一及び第二のカップ体を第一及び第二の固定具によって固定することで、第一及び第二のカップ体をドラム上に簡単な構成で固定することができる。
【0008】
本発明の第5発明は、上記第1〜4発明のいずれかにおいて、前記流体圧室は、往復動作する一つのピストンロッドの両側にそれぞれ設けられ、これを一つの両頭ピストンとし、該両頭ピストンが二つ十字状に組合わされて成り、該流体圧室は前記環状の摺動面の周囲に位置して、前記ロータリバルブの回転に同期して各流体圧室に対応するピストンが動作されることを特徴とする流体回転機である。
第5発明によれば、各流体圧室に連通する流入通路及び流出通路を集約することができ、流体回転機の構造を簡略化し、設置面積を減らすことができる。
【0009】
本発明の第6発明は、シリンダとピストンとの組合せによって構成される流体圧室に流入通路及び流出通路の一端が配置され、ピストンが流体圧室内に流体を流入するときは流入通路を開くと共に流出通路を閉じ、ピストンが流体圧室内の流体を流出するときは流出通路を開くと共に流入通路を閉じるように、ピストンの動作に連動して、環状の摺動面上に各他端が配置された流入通路及び流出通路を開閉するロータリバルブであって、前記環状の摺動面に内接しながら前記流入通路及び流出通路を開閉する環状の弁体を有し、該弁体は外周方向に常時バイアスされ、前記環状の摺動面との隙間に応じて外径を変化可能とされていることを特徴とする流体回転機用ロータリバルブである。
第6発明によれば、第1発明と同様の作用効果を達成する流体回転機用ロータリバルブを提供することができる。
【0010】
本発明の第7発明は、上記第6発明において、前記弁体は、回転体の外周面から突出して固定されたカップ体であり、該カップ体は樹脂、ゴム、又は樹脂とゴムの混合体から成ることを特徴とする流体回転機用ロータリバルブである。
第7発明によれば、第2発明と同様の作用効果を達成する流体回転機用ロータリバルブを提供することができる。
【0011】
本発明の第8発明は、上記第7発明において、前記環状の摺動面は、前記ロータリバルブの回転軸方向から被せられるケース体により形成され、該ケース体の開放面を閉じて閉空間を形成するように前記弁体が配置されていることを特徴とする流体回転機用ロータリバルブである。
第8発明によれば、ケース体をロータリバルブの回転軸方向から被せ、その開放面を閉じるように弁体を配置することにより、環状の摺動面に流入通路及び流出通路に通じる閉空間を形成できるので、ロータリバルブの弁体の構造を簡素化することができる。
【0012】
本発明の第9発明は、上記第7発明において、前記弁体は、前記ピストンに連動して回転される円筒状のドラムと、該ドラムの一端に被せられ、ドラム外周面に流れる流体が他に漏れないように保持する保持部、及び前記環状の摺動面に内接して前記流入通路及び流出通路を閉じる弁機能部を一体に形成された第一のカップ体と、前記ドラムの他端に被せられ、ドラム外周面に流れる流体が他に漏れないように保持する保持部を形成された第二のカップ体と、前記第一及び第二のカップ体を前記ドラムに対して固定する第一及び第二の固定具とを備えることを特徴とする流体回転機用ロータリバルブである。
第9発明によれば、第4発明と同様の作用効果を達成する流体回転機用ロータリバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る流体回転機の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】上記第1の実施形態の平面図である。
【図3】上記第1の実施形態の正面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図4におけるB部の拡大図である。
【図6】上記第1の実施形態の一部切欠き断面図である。
【図7】図3のC−C断面図である。
【図8】上記第1の実施形態における第一及び第二ロータリバルブの斜視図である。
【図9】上記第一及び第二ロータリバルブの背面図である。
【図10】上記第1の実施形態における第一及び第二ロータリバルブの左側面図である。
【図11】上記第1の実施形態における第一及び第二ロータリバルブの正面図である。
【図12】上記第1の実施形態における第一及び第二ロータリバルブの右側面図である。
【図13】上記第1の実施形態における第一及び第二ロータリバルブの分解斜視図である。
【図14】上記第1の実施形態における第一及び第二ロータリバルブにおける弁体の分解斜視図である。
【図15】上記第1の実施形態における第一及び第二ロータリバルブにおける弁体の組立斜視図である。
【図16】上記第1の実施形態の動作説明図である。
【図17】上記第一及び第二ロータリバルブの動作の移り変わりを示す模式図である。
【図18】上記第一及び第二ロータリバルブの動作の移り変わりを示す模式図である。
【図19】上記第1の実施形態の分解斜視図である。
【図20】本発明に係る流体回転機の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図21】上記第2の実施形態の平面図である。
【図22】上記第2の実施形態の正面図である。
【図23】上記第2の実施形態の底面図である。
【図24】図21のD−D拡大断面図である。
【図25】図22のE−E断面図である。
【図26】上記第2の実施形態における第一及び第二ロータリバルブの斜視図である。
【図27】上記第2の実施形態における第一及び第二ロータリバルブの左側面図である。
【図28】上記第2の実施形態における第一及び第二ロータリバルブの正面図である。
【図29】上記第2の実施形態における第一及び第二ロータリバルブの右側面図である。
【図30】上記第2の実施形態における第一及び第二ロータリバルブの背面図である。
【図31】図28のF−F断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、非圧縮性の流体に用いられる流体回転機、例えば液送ポンプについて説明する。
図1において、第一ケース体1と第二ケース体2とで構成されるケース体3にシャフト4が回転可能に軸支されている。第一ケース体1と第二ケース体2とは、後述のようにボルト3aにより四隅をねじ嵌合されて一体に組み付けられている(図19参照)。このケース体3内には、図6、7に示すように、クランク軸5を中心に回転可能な偏芯筒体6(図7、19参照)と該偏芯筒体6に軸受を介して組み付けられた第一両頭ピストン7及び第二両頭ピストン8(以下、これらを「ピストン複合体P」という;図6参照)が十字状に交差して回転可能に収容されている。以下、具体的に説明する。
【0015】
図7、13において、クランク軸5は、シャフト4の軸芯に対して偏芯して連結される。本実施形態では、シャフト4は、第一バランスウェイト9と一体に形成されている。尚、第二バランスウェイト10側にもシャフト4と対称的にシャフトが一体に形成されている。第一,第二バランスウェイト9,10はクランク軸5の両軸端部に各々挿入組み付けられている。クランク軸5の両軸端部には軸方向にスリット5aが各々形成されている。各スリット5aには、クランク軸5と直交する向きにピン孔5bが設けられている。ピン孔5bの孔径はスリット5aの幅より大きく、ピン孔5bはスリット5aの一部に重なり合うように形成されている。
【0016】
図13のように、第一,第二バランスウェイト9,10の軸部にはボルト孔9b,10b及びピン孔9a,10aが各々設けられている。このピン孔9a,10aとクランク軸5のピン孔5bを連通するように位置合わせして第一,第二バランスウェイト9,10がクランク軸5に嵌め込まれ、ピン11aを互いに連通するピン孔9a,5bに、ピン11bを互いに連通するピン孔10a,5bに各々嵌め込む。そして、ボルト孔9b,10bにボルト12a,12bを各々嵌め込んでスリット5a及びピン孔5bの幅を狭めることで、ピン11a,11bが抜け止めされて第一,第二バランスウェイト9,10がクランク軸5の両端部に一体に組み付けられる(図8参照)。これにより、クランク軸5の両軸端部に連結する第一,第二バランスウェイト9,10の軸直角方向の組み付け精度を向上させることができる。
【0017】
図7において、第一バランスウェイト9に一体形成されたシャフト4は第一バランスウェイト9と第一ケース体1との間に組み付けられた第一軸受13aにより回転可能に軸支されており、第二バランスウェイト10に形成されたシャフト4と同軸状の軸部10cは第二バランスウェイト10と第二ケース体2との間に組み付けられた第二軸受13bにより回転可能に軸支されている。第一,第二バランスウェイト9,10は、例えば扇型などのブロック形状をしており、シャフト4を中心として組み付けられるクランク軸5及びピストン複合体Pを含む回転部品間の回転バランスを取るために設けられている。
このように、第一,第二バランスウェイト9,10の少なくとも一方にシャフト4が一体に形成されていると部品点数が少ないうえに、シャフト4とクランク軸5を結ぶ第二仮想クランクアームの長さを例えば第一,第二バランスウェイト9,10の回転半径rにより調整して、シャフト4を中心としてクランク軸5を軸方向及び径方向にコンパクトに組み付けることができる。
【0018】
図7,19に示すように、第一,第二両頭ピストン7,8が互いに十字状に交差してクランク軸5を中心に回転する偏芯筒体6に組み付けられている。具体的には、偏芯筒体6は、回転中心となるクランク軸5が挿通する第一筒体6aを備えると共に、該第一筒体6aの軸芯方向両側に第二筒体6bが各々連続して形成されている。第一筒体6aにはクランク軸5が嵌め込まれており、偏芯筒体6の回転中心となっている。また、第二筒体6bの軸芯は、クランク軸5(第一筒体6a)の軸芯に対して偏芯した第二仮想クランク軸(図示せず)と一致するようになっている。
【0019】
第二筒体6bの内周側には内側軸受15a,15bが保持されており、外周側には外側軸受16a,16bが各々保持されている。内側軸受15a,15bはクランク軸5に対して偏芯筒体6を回転可能に支持している。また、第一,第二両頭ピストン7,8は外側軸受16a,16bを介して第二筒体6bに第二仮想クランク軸と軸直角方向に十字状に交差して嵌め込まれたままそれぞれの方向に摺動可能に支持されている。
これにより、クランク軸5と第二仮想クランク軸を結ぶ第二仮想クランクアームの長さを第二筒体6bの回転半径rにより調整して、クランク軸5を中心として偏芯筒体6を含むピストン複合体Pを軸方向及び径方向にコンパクトに組み付けることができる。
【0020】
また、第一,第二両頭ピストン7,8の長手方向両端部に設けられた第一ピストンヘッド部7a,第二ピストンヘッド部8aにはリング状のシールカップ17a,17b、シールカップ押さえ部材18a,18bが各々ボルト19により組み付けられている。シールカップ17a,17bは、オイルフリーのシール材(例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂材等)が用いられる。シールカップ17a,17bの外周縁部にはピストン摺動方向に沿って起立部17cが起立形成されている。流体回転機においては、起立部17cは第一,第二ピストンヘッド部7a,8aの摺動方向外側に向けて組み付けられる。第一,第二両頭ピストン7,8は、シールカップ17a,17b(起立部17c)によって、シリンダ21の内壁面とのシール性を保ちながら摺動するようになっている。尚、シールカップ17a,17bは、他の回転部品に比べて質量が無視できるほど軽量であるため、第一,第二バランスウェイト9,10によるバランス取りに影響を与えない。
図1乃至図6において、ケース体3(第一ケース体1及び第二ケース体2)の側面部(4面)に設けられた開口部20には、シリンダ21がボルト22により組み付けられている。
【0021】
図7において、各シリンダ室に対する流体の流入動作と流出動作の切り換えを行なう第一ロータリバルブ23(流出バルブ)と第二ロータリバルブ24(流入バルブ)が、シャフト4と同軸状にケース体3内に回転可能に組み付けられている。
具体的には、図8,13において、第一ロータリバルブ23は、第一バランスウェイト9と一体に形成されており、第二ロータリバルブ24は第二バランスウェイト10と一体に形成されている。第一ロータリバルブ23と第二ロータリバルブ24はクランク軸5の軸端側に形成されている。
【0022】
第一ロータリバルブ23と第二ロータリバルブ24は、クランク軸5を中心に上下で点対称に構成されており、各バランスウェイト9、10と一体のシャフト4、軸部10cに対して第一軸受13a、第二軸受13bと共に弁体を組み付けることによって構成されている。弁体は、ドラム23d、24d(回転体)の上下に第一及び第二のカップ体23c、23e、24c、24eをそれぞれ被せ、第一及び第二の固定具23b、23f、24b、24fによって上下から固定することによって構成されている。各弁体は、ナット23a、24aをシャフト4、軸部10cの先端部に螺合することにより固定されている。
【0023】
第一及び第二のカップ体23c、23e、24c、24eは、弾性を備えると共に、第一及び第二ケース体1、2の内面に形成された環状の摺動面1d、2dと摺動する際の摺動抵抗が小さくなるように材料選択されており、例えばフッ素系樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)によって形成されている。また、第一及び第二のカップ体23c、23e、24c、24eは、ゴム系の材料、ゴムと樹脂を混合した材料によって形成されても良い。
これらの第一及び第二のカップ体23c、23e、24c、24eは、平板状の樹脂を打ち抜いて得られた円板の周縁を曲げ成形して椀状とし、更に縁部を必要形状にカットして形成されている。
【0024】
このように形成された第一及び第二のカップ体23c、23e、24c、24eがドラム23d、24dの上下に組み付けられて弁体が構成されることによって、第一のカップ体23c、24cがケース体1、2の環状の摺動面1d、2d上を摺動し、摺動面1d、2d上に開口する連通路1b、2bを開閉可能としている。第一のカップ体23c、24cが大きく形成された部分23h,24hが連通路1b、2b上に位置したときは、その連通路1b、2bを閉じるが、当該部分23h,24hが連通路1b、2bから離れたとき、即ち当該部分23h,24hがカットされて形成されるスペース23i、24iが連通路1b、2bと対向するときは、連通路1b、2bは開放される。一方、流出通路1a及び流入通路2aは、第一のカップ体23c、24cが大きく形成された部分23h,24hよりシャフト4の軸方向に離れた位置にあり、即ちスペース23g、24gに対応する位置にあり、弁体の回転角度に係らず常時開放されている。
【0025】
このように連通路1b、2bの開放時には、この連通路1b、2bが常時開放の流出通路1a及び流入通路2aと連通され、流入通路から流入された流体はドラム23d、24dの表面上に流入する。このとき第一及び第二のカップ体23c、23e、24c、24eにはドラム表面上の流体が環状の摺動面1d、2dから他に漏れないように保持する保持部が形成されている。即ち、保持部は湾曲されたカップ体の先端が環状の摺動面1d、2dと接触することによりドラム表面と環状の摺動面1d、2dとの間に環状の密閉空間を形成している。
【0026】
第一のカップ体23c、24cの大きく形成された部分23h,24hは、円周上の半分(回転角で180度)に形成されており、第一のカップ体23cと第一のカップ体24cとでは180度位相がずれるように形成されている(図9〜12参照)。
【0027】
一方、第一及び第二ケース体1、2の環状の摺動面1d、2dに設けられた連通路1b、2bは、各シリンダ21の上下位置にそれぞれ設けられ、4方のシリンダ21の上下で合計8個の連通路が、第一のカップ体23c、24cの大きく形成された部分23h,24hに対応する高さ位置に設けられ、更に流入用と流出用の各配管接続部26a、26bに連通された流出通路1a及び流入通路2aが第一及び第二ロータリバルブ23、24のスペース23g、24gに対応する高さ位置に設けられている。8個の連通路1b、2bは、第一及び第二ケース体1、2の外壁面と内側の環状の摺動面1d、2dとを貫通して設けられているが、各連通路ともケース体の外壁面部にはそれぞれ止めねじ27が嵌め込まれて閉塞されている。連通路1b,2bはシリンダ21に設けられた連通路21a,21bを通じてシリンダ室(流体圧室)25と各々連通するようになっている。
【0028】
このように、例えば流出通路1a及び流入通路2aを外部流路への流出・流入流路とし、連通路1b,2bを各シリンダへの流路として共用することで、配管を省略して構造を簡素化することができる。よって、図6に示すように四ヘッドの流体回転機において、通常八箇所必要な配管接続部を最少で二箇所に減らすことが可能になる。
各シリンダ室25から流出通路1aに連通された連通路1bは、本発明における流出通路であり、各シリンダ室25から流入通路2aに連通された連通路2bは、本発明における流入通路である。
【0029】
次に、流体回転機の組立構成の一例について図19を参照して説明する。
偏芯筒体6の第一筒体6a内に内側軸受15a,15bを組み付ける。また、内側軸受15a,15bが組み付けられた第一筒体6aの中心孔にクランク軸5を嵌め込む(図7参照)。また、第一,第二ピストンヘッド部7a,8aにシールカップ17a,17b、シールカップ押さえ18a,18bをねじ19によって組み付けられた第一,第二両頭ピストン7,8を、第二筒体6bの外側に外側軸受16a,16bを介して十字状に交差するように嵌め込む。
【0030】
また、クランク軸5の両端部に第1,第2バランスウェイト9,10を嵌め込んで、ピン11a,11bをピン孔5bに嵌め込み、ボルト12a,12bを締付けて第一,第二バランスウェイト9,10(第一ロータリバルブ23,第二ロータリバルブ24)をクランク軸5に一体に組み付ける。また、第一,第二バランスウェイト9,10の軸受保持部に第1軸受13a、第2軸受13bを嵌め込む。そして、第一ケース体1と第2ケース体2を組み合わせる。これにより、クランク軸5、第1,第2バランスウェイト9,10、及びピストン複合体P(図6参照)をケース体3(図7参照)内に収容する。そして、第一ケース体1のボルト孔(図示せず)と第2ケース体2の貫通孔2cを位置合わせして重ね合わせた状態で、ボルト3aを嵌め込んで本体ケース3が組み立てられる。最後に、本体ケース3の側面(4面)に形成される開口部20(図6参照)にシリンダ21を嵌め込んで、第一ピストンヘッド部7a,第二ピストンヘッド部8aがシリンダ21の開口部内に各々摺動可能に嵌め込まれて(図6参照)、流体回転機が組み立てられる。また、第一ケース体1の流出孔となる流出通路1aおよび第二ケース体2の流入孔となる通路2bには配管接続部26a,26bが各々設けられる。
【0031】
上述のように組み立てられた流体回転機は、第一,第二両頭ピストン組7,8の第二仮想クランク軸(図示せず)を中心とした第1の回転バランス、ピストン複合体Pのクランク軸5を中心とする第二の回転バランス、及びクランク軸5及びピストン複合体Pのシャフト4を中心とする第三の回転バランスが、第一,第二バランスウェイト9,10によりバランス取りされて組み立てられている。
【0032】
これにより、後述するようにシャフト4を中心とするクランク軸5の回転運動と、クランク軸5を中心とするピストン複合体Pの回転運動により、第二筒体6bに組み付けられた第一,第二両頭ピストン7,8がシャフト4を中心とする第二仮想クランク軸の半径2rの転がり円の径方向に沿って(内サイクロイドの軌跡に沿って)直線往復運動を行なっても、第一,第二両頭ピストン7,8の直線往復運動により発生する偏重心量を含めたバランス取りをすることによって回転による振動を抑えて静音化を図ることができる。また、回転による振動を低減することで、第一,第二両頭ピストン7,8は従来のレシプロタイプに比べてピストンヘッドの往復運動による機械的な損失を防いでエネルギー変換効率を高めることができ、しかもダンパー等の防振構造を簡略化することができる。
【0033】
ここで第一,第二ロータリバルブ23,24の開閉動作について、図16(a)〜(e)に示す第一両頭ピストン7の一方側(右側)のシリンダ室25と第二両頭ピストン8の他方側(手前側)のシリンダ室の流入動作と流出動作の状態図を参照して説明する。
図16(a)において、第一ロータリバルブ23はその第一のカップ体23cが連通路1bを閉じた状態にあり、第二ロータリバルブ24はその第一のカップ体24cが連通路2bに対向する位置から外れるためバルブが閉じた状態から開放状態となる。よって、図16(b)に示すようにシリンダ室25には、配管接続部26bから流入通路2aを通じてスペース24iに流体が流入まれ、スペース24i、連流路2b、連通路21bを通じてシリンダ室25へ流体の流入動作が行なわれる。
【0034】
図16(c)において、シリンダ室25への流体の流入動作が完了すると、第二ロータリバルブ24の第一のカップ体24cが連通路2bに対向する位置へと回転するためバルブが閉じられ、第一ロータリバルブ23は、その第一のカップ体23cが連通路1bに対向する位置から外れるためバルブが閉じた状態から開放状態となる。よって、図16(d)に示すようにシリンダ室25から連通路21a、連通路1b、スペース23i、スペース23g、流出通路1aを通じて配管接続部26aより流体が流出される。
【0035】
図16(e)において、シリンダ室25からの流体の流出動作が完了すると、第一ロータリバルブ23の第一のカップ体23cが連通路1bに対向する位置へと回転するためバルブが閉じられ、第二ロータリバルブ24の第一のカップ体24cが連通路2bに対向する位置から外れ、スペース24iが連通路2bと対向する位置に切り替わるため、バルブが閉じた状態から開放状態となって流入動作を開始する。
【0036】
以上のように、第一ロータリバルブ23と第二ロータリバルブ24は、スペース23i,スペース24iが連通路1b,2bと対向位置にある間だけシリンダ室25に対して流体の流入流出動作が交互に行なわれるようになっている。
【0037】
図17及び図18は、第一、第二両頭ピストン7,8の位置と第一,第二ロータリバルブ23,24の流入流出動作の状態説明図である。
上段は第一ロータリバルブ23の動作説明図、中段はピストン位置(横方向を第一両頭ピストン7、縦方向を第二両頭ピストン8とする)の説明図、下段は第二ロータリバルブ24の動作説明図である。各状態図は第一,第二ロータリバルブ23,24が45°ずつ回転した状態を示す。四箇所に形成されるシリンダ室25を右端より反時計回り方向に25a〜25dとして説明する。
【0038】
図17(a)において、第一両頭ピストン7は右方向に移動する途中位置であり、第二両頭ピストン8は下端位置にある。このとき、第一ロータリバルブ23を通じて、シリンダ室25aより流体の流出動作が行なわれ、第二ロータリバルブ24を通じて、シリンダ室25cへ流体の流入動作が行なわれている。
【0039】
図17(b)では、第一両頭ピストン7は右端に到達する直前位置であり、第二両頭ピストン8は、上方へ向かって移動し始めた位置にある。このとき、第一ロータリバルブ23を通じてシリンダ室25a,25bより流体の流出動作が行われており、第二ロータリバルブ24を通じて、シリンダ室25c,25dへ流体の流入動作が行われている。
【0040】
図17(c)では、第一両頭ピストン7は右端位置であり、第二両頭ピストン8は、上方へ向かって移動途中の中間位置にある。このとき、第一ロータリバルブ23を通じて、シリンダ室25bより流体の流出動作が行なわれ、第二ロータリバルブ24を通じて、シリンダ室25dへ流体の流入動作が行なわれている。
【0041】
図17(d)では、第一両頭ピストン7は左端に向かって移動し始めた位置であり、第二両頭ピストン8は、上端に到達する直前位置にある。このとき、第一ロータリバルブ23を通じてシリンダ室25b及び25cより流体の流出動作が行なわれており、第二ロータリバルブ24を通じて、シリンダ室25d,25aへ流体の流入動作が行なわれている。
【0042】
図18(a)では、第一両頭ピストン7は左端に向かって移動途中の中間位置であり、第二両頭ピストン8は上端位置にある。このとき、第一ロータリバルブ23を通じてシリンダ室25cより流体の流出動作が行なわれており、第二ロータリバルブ24を通じて、シリンダ室25aへ流体の流入動作が行なわれている。
【0043】
図18(b)では、第一両頭ピストン7は左端到達する直前位置にあり、第二両頭ピストン8は下端に向かって移動し始めた位置にある。このとき、第一ロータリバルブ23を通じてシリンダ室25c,25dより流体の流出動作が行なわれており、第二ロータリバルブ24を通じて、シリンダ室25a,25bへ流体の流入動作が行なわれている。
【0044】
図18(c)では、第一両頭ピストン7は左端位置であり、第二両頭ピストン8は、下方へ向かって移動途中の中間位置にある。このとき、第一ロータリバルブ23を通じて、シリンダ室25dより流体の流出動作が行なわれ、第二ロータリバルブ24を通じて、シリンダ室25bへ流体の流入動作が行なわれている。
【0045】
図18(d)では、第一両頭ピストン7は右端に向かって移動し始めた位置であり、第二両頭ピストン8は、下端に到達する直前位置にある。このとき、第一ロータリバルブ23を通じてシリンダ室25d,25aより流体の流出動作が行なわれており、第二ロータリバルブ24を通じて、シリンダ室25b,25cへ流体の流入動作が行なわれている。
【0046】
以降は、図18(a)へ戻って同様な流体の流入動作及び流出動作を繰り返す。尚、第一ロータリバルブ23を流出用、第二ロータリバルブ24を流入用として用いているが、第一ロータリバルブ23を流入用、第二ロータリバルブ24を流出用として用いることも可能である。
【0047】
以上説明したように、シャフト4の回転によって第一,第二両頭ピストン7,8が直線往復運動して、シャフト4と同軸上にケース体3内に回転可能に組み付けられている第一,第二ロータリバルブ23,24によって、各シリンダ室25a〜25dに対する流体の流入動作と流出動作の切り換えが行なわれる。よって、各シリンダ室25a〜25dに連通する配管接続部26a,26bを一つに集約することが可能になり、部品点数を減らしてバルブ構造を簡略化し、流体の流入及び流出が行われる外部接続管路を減らすことで設置面積を減らすことが可能になる。
【0048】
尚、流体として例えば冷凍用の気液混合ガスを用いるポンプにおいては、流路接続部のシール性を高める必要がある。そこで、例えば図4〜5に示すようにケース体3(2)とシリンダ21との接続部にガスケット28を設けることが望ましい。
【0049】
上述した流体回転機は液送ポンプのように、主として非圧縮性の流体を想定していたが、流体が空気,ガスなどの圧縮性の流体を用いる場合には、ロータリバルブ23,24の第一のカップ体23cの大きく形成された部分23hの周長を大きくし、スペース23i、24iの周方向の角度を狭めることで、高圧流体を流出することができる。所定圧タンクへ高圧流体を流出する場合、流出開始からバルブが開かれるとタンクから高圧流体が逆流しピストン流出動作の損失が大きくなるためである。また、第二のロータリバルブ24における第一のカップ体24cが高圧を受けて変形することを防止するため、図5に示すように、連通路21bの途中には逆止弁として機能する板ばね21cが設けられている。板ばね21cは板ばね固定部品21d及びビス21eによって第二ケース体2に固定され、高圧流体がピストン21側から第二のロータリバルブ24側へ逆流して漏れないようにしている。
【0050】
以上説明したように、シャフト4と同軸状にケース体3内に回転可能に組み付けられて
いるロータリバルブ23,24によって、各シリンダ室25に対する流体の流入動作と
流出動作の切り換えを行なわれるので、各シリンダ室25に連通する流入口及び流出口に
接続する配管を一つに集約することが可能になり、部品点数を減らしてバルブ構造を簡略
化し、流体の流入及び流出が行われる外部接続管路を減らすことで設置面積を減らすこと
が可能になる。
また、ロータリバルブ23.24の弁体は外周方向に常時バイアスされ、環状の摺動面1d,2dとの隙間に応じて外径を変化可能とされているので、環状の摺動面1d,2dとロータリバルブ23.24との隙間の寸法精度を高くしなくても弁体は常時、環状の摺動面1d,2dに内接され、しかも弁体が各連通路を閉じた状態では、連通路から流体が漏れることを抑制することができる。
更に、弁体はドラム23d,24dの外周面上に第一のカップ体23c,24cを固定することで構成されるため、簡単に構成することができる。
しかも、ドラム23d,24dに対して第一及び第二のカップ体23c,24c、23e,24eを第一及び第二の固定具23b,24b、23f,24fによって固定することで、第一及び第二のカップ体23c,24c、23e,24eをドラム23d,24d上に簡単な構成で固定することができる。
【0051】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、上述の第1の実施形態における、ケース体3に対する第一及び第二ロータリバルブ23、24の固定構造、及び第一及び第二ロータリバルブ23、24の弁体構造自体を簡素化すると共に、ケース体3に対する連通路21a、21bの形成を容易にしたことを特徴とする。
第2の実施形態を示す図20〜31において、第1の実施形態と同一若しくは対応する部分には、第1の実施形態を示す図1〜19の符号の数字に「100」を加えた数字を符号として付している。以下、第1の実施形態に対して第2の実施形態において変更された部分のみを説明し、同一部分についての説明は割愛する。
第一及び第二ロータリバルブ123、124は、第一及び第二バランスウェイト109、110の上に直接カップ体123c、124cがビス123k、123l、124k、124lにより固定されて構成されている。第一及び第二バランスウェイト109、110は、シャフト104に対して偏心した偏心部109d、110dを備えると共に、カップ体123c、124cと結合される部分に、シャフト104と同心円の円板部109e、110e(回転体)を備えている。カップ体123c、124cは、円板部109e、110eの外周に沿って円環状路を形成するように構成され、カップ体123c、124cは、各バランスウェイト109、110の偏心方向に直交する方向の約半周分の外周側片の高さを高くして大きく形成されている。この大きく形成された部分123h、124hは、第一ロータリバルブ123と第二ロータリバルブ124とで互いに逆位相となるように形成されている。カップ体123c、124cは、第1の実施形態における第一及び第二のカップ体23c、24cと同様の材料によって形成されている。図31から明らかなように、カップ体123c、124cのビス123k、123l、124k、124lによる固定は、円環状の座金123j、124jを介して行われている。
【0052】
第一及び第二ロータリバルブ123、124は、クランク軸105により互いに連結され、第一及び第二ケース体101、102により挟持されている。第一及び第二ケース体101、102は、第一及び第二ロータリバルブ123、124の円環状のカップ体123c、124cに対向するように円環状の第一及び第二空間101f、102fが形成されており、この空間101f、102fの外周側の四方には各シリンダ121に対応するように連通路101b、102bが形成されている。第一及び第二ロータリバルブ123、124のカップ体123c、124cの外周側片と第一及び第二空間101f、102fの外周面との間には、第一及び第二シールリング101e、102eが介挿されている。第一及び第二シールリング101e、102eにも第一及び第二ケース体101、102に形成された連通路101b、102bを延長するように連通路101g、102gが形成されており、この第一及び第二シールリング101e、102eの連通路101g、102gをカップ体123c、124cの大きく形成された部分123h、124hで開閉することによりバルブの開閉が行われている。
【0053】
第一及び第二ケース体101、102の外側四方に外側からそれぞれシリンダ121が嵌合され、これらのシリンダ121の外側に蓋体129が被せられている。蓋体129のシリンダ121側の上下部には、それぞれシリンダ121内を連通する連通路129a、129bが形成されており、この連通路129a、129bは、各シリンダ121の連通路121a、121bを介して第一及び第二ケース体101、102の連通路101b、102bと連通されている。
この結果、各シリンダ室125は、各連通路129a、129b、121a、121b、101b、102b、101g、102gを介して第一及び第二ケース体101、102の第一及び第二空間101f、102fと連通されており、その連通状態が第一及び第二ロータリバルブ123、124によって開閉されるようになっている。
第一ケース体101の空間101fは、第一ケース体101の上面に形成された連通路(不図示)を介して配管接続部126aに導かれている。また、第二ケース体102の空間102fは第二ケース体102の下面に形成された連通路(不図示)を介して配管接続部126bに導かれている。
この結果、第一及び第二ロータリバルブ123、124の回転に同期して各シリンダ121内で第一及び第二両頭ピストン107、108が往復動作されると、配管接続部126bから流入した流体が第二ケース体102の第二空間102f及び各連通路102g、102b、121b、129bを介して、シリンダ内容積を拡大するように移動するピストンのシリンダ室125に吸入される。次に、シリンダ内容積を縮小するように移動するピストンのシリンダ室125から押し出される流体は、各連通路129a、121a、101b、101g及び第一ケース体101の第一空間101fを介して配管接続部126aから吐出される。
【0054】
第2の実施形態では、第一及び第二ケース体101、102を第一及び第二ロータリバルブ123、124の回転軸方向から被せ、その開放面を閉じるように第一及び第二ロータリバルブ123、124のカップ体123c、124cを配置することにより、流入通路及び流出通路に通じる第一及び第二空間101f、102fを形成できるので、第一及び第二ロータリバルブ123、124の固定構造、及び第一及び第二ロータリバルブ123、124の弁体の構造を簡素化することができる。
また、シリンダ121の蓋体129に連通路129a、129bを形成したので、第1の実施形態のように、シリンダ21の軸方向に直交する連通路21a、21bを第一及び第二ケース体1、2に形成するのに比べて製造コストを低減することができる。
【0055】
本発明は、上記実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、
1.シリンダとピストンとの組合せによって構成される流体圧室は一つのみでも良い。
【符号の説明】
【0056】
1、101 第一ケース体
1a 流出通路
2a 流入通路
1b,2b、101b,102b 連通路
2、102 第二ケース体
3、103 ケース体
3a、12a、12b、19、22、103a、112a、112b、119、122
ボルト
4、104 シャフト
5、105 クランク軸
5a スリット
5b、9a、10a ピン孔
6、106 偏芯筒体
6a、106a 第一筒体
6b、106b 第二筒体
7、107 第一両頭ピストン
8、108 第二両頭ピストン
P ピストン複合体
9、109 第一バランスウェイト
9b、10b、109b、110b ボルト孔
109d、110d 偏心部
109e、110e 円板部(回転体)
10、110 第二バランスウェイト
10c 軸部
11a、11b ピン
13a、113a 第一軸受
13b、113b 第二軸受
15a、15b、115a、115b 内側軸受
16a、16b、116a、116b 外側軸受
17a、17b、117a、117b シールカップ
17c 起立部
18a、18b、118a、118b シールカップ押さえ部材
20 開口部
21、121 シリンダ
21a、21b、121a、121b 連通路
23、123 第一ロータリバルブ
24、124 第二ロータリバルブ
23a、24a ナット
23b、24b 第一の固定具
23c、24c 第一のカップ体(弁体)
123c、124c カップ体(弁体)
23d、24d ドラム(回転体)
23e、24e 第二のカップ体
23f、24f 第二の固定具
23g、24g スペース
23h、24h、123h、124h 第一のカップ体が大きく形成された部分
23i、24i スペース
25、25a、25b、25c、25d、125 シリンダ室(流体圧室)
26a、26b、126a、126b 配管接続部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダとピストンとの組合せによって流体圧室が構成され、該流体圧室に流入通路及び流出通路の各一端が連通され、該流入通路及び流出通路の各他端は環状の摺動面上に開口され、ピストンの直線往復運動に連動して前記環状の摺動面内でロータリバルブが回転することにより、ピストンが流体圧室内に流体を流入するときは流入通路を開くと共に流出通路を閉じ、ピストンが流体圧室内の流体を流出するときは流出通路を開くと共に流入通路を閉じられる流体回転機であって、前記ロータリバルブは、前記環状の摺動面に内接しながら前記流入通路及び流出通路を開閉する環状の弁体を有し、該弁体は外周方向に常時バイアスされ、前記環状の摺動面との隙間に応じて外径を変化可能とされていることを特徴とする流体回転機。
【請求項2】
請求項1の流体回転機において、前記弁体は、回転体の外周面から突出して固定されたカップ体であり、該カップ体は樹脂、ゴム、又は樹脂とゴムの混合体から成ることを特徴とする流体回転機。
【請求項3】
請求項1又は2の流体回転機において、前記環状の摺動面は、前記ロータリバルブの回転軸方向から被せられるケース体により形成され、該ケース体の開放面を閉じて閉空間を形成するように前記弁体が配置されていることを特徴とする流体回転機。
【請求項4】
請求項1又は2の流体回転機において、前記弁体は、前記ピストンに連動して回転される円筒状のドラムと、該ドラムの一端に被せられ、ドラム外周面に流れる流体が他に漏れないように保持する保持部、及び前記環状の摺動面に内接して前記流入通路及び流出通路を閉じる弁機能部を一体に形成された第一のカップ体と、前記ドラムの他端に被せられ、ドラム外周面に流れる流体が他に漏れないように保持する保持部を形成された第二のカップ体と、前記第一及び第二のカップ体を前記ドラムに対して固定する第一及び第二の固定具とを備えることを特徴とする流体回転機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの流体回転機において、前記流体圧室は、往復動作する一つのピストンロッドの両側にそれぞれ設けられ、これを一つの両頭ピストンとし、該両頭ピストンが二つ十字状に組合わされて成り、該流体圧室は前記環状の摺動面の周囲に位置して、前記ロータリバルブの回転に同期して各流体圧室に対応するピストンが動作されることを特徴とする流体回転機。
【請求項6】
シリンダとピストンとの組合せによって構成される流体圧室に流入通路及び流出通路の一端が配置され、ピストンが流体圧室内に流体を流入するときは流入通路を開くと共に流出通路を閉じ、ピストンが流体圧室内の流体を流出するときは流出通路を開くと共に流入通路を閉じるように、ピストンの動作に連動して、環状の摺動面上に各他端が配置された流入通路及び流出通路を開閉するロータリバルブであって、前記環状の摺動面に内接しながら前記流入通路及び流出通路を開閉する環状の弁体を有し、該弁体は外周方向に常時バイアスされ、前記環状の摺動面との隙間に応じて外径を変化可能とされていることを特徴とする流体回転機用ロータリバルブ。
【請求項7】
請求項6の流体回転機用ロータリバルブにおいて、前記弁体は、回転体の外周面から突出して固定されたカップ体であり、該カップ体は樹脂、ゴム、又は樹脂とゴムの混合体から成ることを特徴とする流体回転機用ロータリバルブ。
【請求項8】
請求項6又は7の流体回転機用ロータリバルブにおいて、前記環状の摺動面は、前記ロータリバルブの回転軸方向から被せられるケース体により形成され、該ケース体の開放面を閉じて閉空間を形成するように前記弁体が配置されていることを特徴とする流体回転機用ロータリバルブ。
【請求項9】
請求項6又は7の流体回転機用ロータリバルブにおいて、前記弁体は、前記ピストンに連動して回転される円筒状のドラムと、該ドラムの一端に被せられ、ドラム外周面に流れる流体が他に漏れないように保持する保持部、及び前記環状の摺動面に内接して前記流入通路及び流出通路を閉じる弁機能部を一体に形成された第一のカップ体と、前記ドラムの他端に被せられ、ドラム外周面に流れる流体が他に漏れないように保持する保持部を形成された第二のカップ体と、前記第一及び第二のカップ体を前記ドラムに対して固定する第一及び第二の固定具とを備えることを特徴とする流体回転機用ロータリバルブ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate


【公開番号】特開2012−229688(P2012−229688A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165093(P2011−165093)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000227711)日邦産業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】