流体抵抗低減装置
【課題】排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させることができる流体抵抗低減装置を提供する。
【解決手段】流体抵抗低減装置10は、船舶1に搭載される熱機関11と、熱機関11を冷却する機関冷却材と、機関冷却材の熱を船舶1の喫水下船体12に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される熱を喫水下船体12に放熱する熱交換手段14とを備えたことを特徴とする。
【解決手段】流体抵抗低減装置10は、船舶1に搭載される熱機関11と、熱機関11を冷却する機関冷却材と、機関冷却材の熱を船舶1の喫水下船体12に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される熱を喫水下船体12に放熱する熱交換手段14とを備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載される熱機関の排熱を利用して摩擦抵抗を低減させることができる流体抵抗低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な舶用機関は、燃料を燃やして動力に変換する熱機関であり、また、電気推進船にあっても、電力を得るための動力源は、発電機に接続された熱機関である。燃料の燃焼によって得られる熱エネルギーの内、動力に変換し得た割合のことを熱効率と呼ぶが、舶用の熱機関の熱効率は、高性能なものであっても40〜50%であり、燃焼によって発生するエネルギーの半分以上が動力に変換されず排熱として捨てられている。
この排熱の内でも排ガスについては有効利用する方策が従来から採られており、広く採用されているものとしては、排気タービン過給器(ターボチャージャー)や排ガスエコノマイザがある。
排ガスエコノマイザは、排ガスの熱により水を加熱し蒸気を得て、船内の様々の用途に使用できるようにする装置である(例えば特許文献1)。
なお、ガスタービンやエンジンから排出される高温の排ガスによって船体を加熱することで船体の受ける摩擦抵抗を減少させることが既に提案されている(特許文献2、段落番号(0022)、特許文献3、段落番号(0082))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−148701号公報
【特許文献2】特開2003−252284号公報
【特許文献3】特開平10−318215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排ガスエコノマイザにおける蒸気の主な用途の一つとしては、高粘性燃料であるC重油の加熱による低粘度化である。
しかし、C重油には硫黄(S)分が含まれており、SOx規制等の問題から、硫黄を含有しないA重油(低粘度)への燃料転換がなされた場合、加熱が不要となり、得られる蒸気の使途が減少し、有効に利用されない熱エネルギーが今まで以上に増加する。
特許文献2では、排気管を主機関から下方に導いているため、排気熱ドラフト効果に逆らって排気を押し込む結果、排気抵抗が増し主機関の効率や排ガス特性に悪影響を及ぼしていた。また、排ガスを利用する場合には、排気管やダクトを大径、大断面積にする必要があり、大スペースが必要であった。更に、船が波の影響等で傾いた場合、排ガスのドラフト力により、管寄せ分で排ガスの偏在が生じ、船体外板の加熱にアンバランスを生じ、操縦性にも影響を及ぼしていた。
一方、熱機関は使用中に適切な冷却を行う必要があり、船用の熱機関では、主に水冷方式が採用されている。そして熱機関より熱を奪った冷却水は、船外から取り入れられた海水と熱交換を行うことで冷却している。すなわち、熱機関の冷却によって得られる熱は、有効利用されることなく船外に捨てることが多かった。加えて、冷却水の冷却用に用いられる海水は、船底に設けられたシーチェストから取水と排水が行われているため、船舶の抵抗に影響を及ぼしていると考えられる。
従って、有効利用が限られていた熱機関の冷却用の熱を回収し、かつ、船舶の抵抗を低減する用途に供することで、船舶の省エネルギー化を図ることができる。
【0005】
そこで本発明は、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させることができる流体抵抗低減装置を提供することを目的とする。
また本発明は、ウォータージェットダクトが受ける摩擦抵抗を低減し、船舶の推進力を高めることができる流体抵抗低減装置を提供することを目的とする。
また本発明は、ダクトプロペラ推進器のダクト部が受ける摩擦抵抗を低減し、船舶の推進力を高めることができる流体抵抗低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載に対応した流体抵抗低減装置においては、船舶に搭載される熱機関と、熱機関を冷却する機関冷却材と、機関冷却材の熱を船舶の喫水下船体に導く経路手段と、経路手段を経て供給される熱を喫水下船体に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする。請求項1に記載の本発明によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段、熱交換手段が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段への機関冷却材の供給を、船舶の熱機関に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。また、排ガスの場合に生じる船体の傾き等による影響がなく、所望通りに船体を加熱することができる。
請求項2記載に対応した流体抵抗低減装置においては、船舶を推進するウォータージェット推進器と、船舶に搭載される熱機関と、熱機関の排熱をウォータージェット推進器のウォータージェットダクトに導く経路手段と、経路手段を経て供給される排熱をウォータージェットダクトの内壁に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする。請求項2に記載の本発明によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ウォータージェットダクトで熱交換させて放熱を行うことにより、ウォータージェットダクトの摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ウォータージェットダクトを加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
請求項3記載に対応した流体抵抗低減装置においては、船舶を推進するダクトプロペラ推進器と、船舶に搭載される熱機関と、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段と、経路手段を経て供給される排熱をダクト部に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ダクトプロペラ推進器のダクト部で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器のダクト部を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
請求項4記載の本発明は、請求項2又は請求項3に記載の流体抵抗低減装置において、排熱として、熱機関を冷却する機関冷却材による熱を用いたことを特徴とする。請求項4に記載の本発明によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。
また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段、熱交換手段が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段への機関冷却材の供給を、船舶の熱機関に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。
請求項5記載の本発明は、請求項1又は請求項4に記載の流体抵抗低減装置において、機関冷却材を熱交換手段に導くことを特徴とする。請求項5に記載の本発明によれば、機関冷却材が液体であるため熱交換効率が高く、また二次熱媒体を用いないために熱ロスやエネルギー消費を低減でき、間接熱交換のための熱交換器、タンク、ポンプ等を設ける必要が無いために、小型化でき設置スペースや価格の上で有利である。
請求項6記載の本発明は、請求項1、請求項4及び請求項5のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、熱機関の冷却を熱交換手段による放熱だけで処理することを特徴とする。請求項6に記載の本発明によれば、冷却用の海水を船底において取水及び排水しないため、船舶の抵抗に影響を及ぼすことがない。
請求項7記載の本発明は、請求項1、請求項4、請求項5、及び請求項6のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、熱機関の起動時には熱交換手段による放熱開始を遅延させ、及び/又は熱機関の停止時には熱交換手段による放熱停止を遅延させたことを特徴とする。請求項7に記載の本発明によれば、起動時の熱機関温度の上昇を早めることで熱機関の起動までの時間を短縮でき、及び/又は停止後の熱機関の異常温度上昇を防止できるとともに停止後の熱機関の余熱を適切に処理することができる。また、熱機関の排熱を利用して有効に摩擦抵抗低減が行えるときに放熱を行うため、無駄なエネルギー消費を無くすことができる。
請求項8記載の本発明は、請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、及び請求項7のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、熱機関に流入する機関冷却材の温度を調整する温度調整手段を有したことを特徴とする。請求項8に記載の本発明によれば、熱機関の温度を所定温度に維持しつつ、余剰熱を摩擦抵抗低減に利用することができる。また、温度調整手段を利用して、起動時の温度上昇を早めたり、停止時の余熱管理を有効に行うことができる。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の流体抵抗低減装置において、温度調整手段が冷却材加熱器であり、少なくとも熱機関の起動時において冷却材加熱器によって機関冷却材を加熱することを特徴とする。請求項9に記載の本発明によれば、熱機関の立ち上げ準備時間を短縮することができる。また、例えば温度調整弁の故障や極寒、氷海等でのオーバークールなどの予想外の事態が生じた場合に、加熱により熱機関を適正な温度に保つことができる。
請求項10記載の本発明は、請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、及び請求項9のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、機関冷却材を冷却水としたことを特徴とする。請求項10に記載の本発明によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させることができる。
請求項11記載の本発明は、請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、及び請求項9のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、機関冷却材を潤滑油としたことを特徴とする。請求項11に記載の本発明によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用されていなかった潤滑油の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させることができる。
請求項12記載の本発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、排熱として、熱機関の排ガスにより得られる熱を用いたことを特徴とする。請求項12に記載の本発明によれば、排ガスにより得られる熱を利用することで熱機関の必要出力を更に減少させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段、熱交換手段が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段への機関冷却材の供給を、船舶の熱機関に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。また、排ガスの場合に生じる船体の傾き等による影響がなく、所望通りに船体を加熱することができる。
また本発明によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ウォータージェットダクトで熱交換させて放熱を行うことにより、ウォータージェットダクトの摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ウォータージェットダクトを加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
また本発明によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ダクトプロペラ推進器のダクト部で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器のダクト部を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
なお、ウォータージェットダクトの内壁に放熱する排熱として、熱機関を冷却する機関冷却材による熱を用いることで、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段、熱交換手段が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段への機関冷却材の供給を、船舶の熱機関に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。
また、ダクトプロペラ推進器のダクト部に放熱する排熱として、熱機関を冷却する機関冷却材による熱を用いることで、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段、熱交換手段が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段への機関冷却材の供給を、船舶の熱機関に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。
また、機関冷却材を熱交換手段に導くことで、機関冷却材が液体であるため熱交換効率が高く、また二次熱媒体を用いないために熱ロスやエネルギー消費を低減でき、間接熱交換のための熱交換器、タンク、ポンプ等を設ける必要が無いために、小型化でき設置スペースや価格の上で有利である。
また、熱機関の冷却を熱交換手段による放熱だけで処理することで、冷却用の海水を船底において取水及び排水しないため、船舶の抵抗に影響を及ぼすことがない。
また、熱機関の起動時には熱交換手段による放熱開始を遅延させ、起動時の熱機関温度の上昇を早めることで熱機関の起動までの時間を短縮できる。また、熱機関の排熱を利用して有効に摩擦抵抗低減が行えるときに放熱を行うため、無駄なエネルギー消費を無くすことができる。
また、熱機関の停止時には熱交換手段による放熱停止を遅延させることで、停止後の熱機関の異常温度上昇を防止できるとともに停止後の熱機関の余熱を適切に処理することができる。
また、熱機関に流入する機関冷却材の温度を調整する温度調整手段を有することで、熱機関の温度を所定温度に維持しつつ、余剰熱を摩擦抵抗低減に利用することができる。また、温度調整手段を利用して、起動時の温度上昇を早めたり、停止時の余熱管理を有効に行うことができる。
また、温度調整手段が冷却材加熱器であり、少なくとも熱機関の起動時において冷却材加熱器によって機関冷却材を加熱することで、熱機関の立ち上げ準備時間を短縮することができる。また、例えば温度調整弁の故障や極寒、氷海等でのオーバークールなどの予想外の事態が生じた場合に、加熱により熱機関を適正な温度に保つことができる。
また、機関冷却材を冷却水としたことで、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させることができる。
また、機関冷却材を潤滑油としたことで、排ガスと比較すると低温であり、従来利用されていなかった潤滑油の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させることができる。
また、熱機関の排ガスにより得られる排熱を利用又は併用することで、熱機関の必要出力を更に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図2】図1における喫水下船体を示す要部概略断面図
【図3】同流体抵抗低減装置の配管経路を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図5】本発明の第3の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図6】本発明の第4の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図7】本発明の第5の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図8】本発明の第6の実施形態を示す流体抵抗低減装置の配管経路を示す図
【図9】同流体抵抗低減装置の第1の制御方法による制御ブロック図
【図10】同流体抵抗低減装置の第2の制御方法による制御ブロック図
【図11】本発明の第7の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図12】同流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図
【図13】本発明の第8の実施形態を示す流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図
【図14】本発明の第9の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図15】本発明の第10の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図16】同流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図
【図17】本発明の第11の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図18】本発明の第12の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図19】本発明の第13の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の一実施形態について説明する。
図1は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図、図2は図1における喫水下船体を示す要部概略断面図、図3は同流体抵抗低減装置の配管経路を示す図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、船舶1に搭載され、推進器2の動力源となる熱機関11と、熱機関11を冷却する機関冷却材の熱を船舶1の喫水下船体12に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される熱を喫水下船体12に放熱する熱交換手段14とを備えている。本実施形態における機関冷却材は冷却水である。冷却水としては、純水の他、水に凍結防止剤などを添加した冷却液や液状の冷却剤を用いることができる。
経路手段13は、熱機関11で吸熱した機関冷却材を熱交換手段14に導く往路経路手段13aと、熱交換手段14で放熱した機関冷却材を熱機関11に導く復路経路手段13bと、往路経路手段13aを流れる機関冷却材の一部を復路経路手段13bにバイパスするバイパス経路手段13cと、バイパス経路手段13cを流れる機関冷却材の流量比を調整する温度調整弁13dとより構成されている。
熱機関11から排出される排ガスは、排気経路3を通り、排ガスエコノマイザ4で排熱が回収された後に煙突5より大気に放出される。排ガスエコノマイザ4では、排ガスの排熱によって熱媒体にエネルギーを与えるが、通常は水を用いて蒸気を発生させる。
図2に示すように、熱交換手段14は、喫水下船体12内の船底骨部材12aの上部に蓋12bを設けシールすることで機関冷却材が流れる流路14aを形成する。流路14aは、長手方向の船底中心線に対して左右対称に形成することが好ましい。また、機関冷却材を左右対称に流すことが好ましい。これらにより、船舶1の推進方向に対して摩擦抵抗の低減を左右等しくすることで、推進力及び推進方向を有効に得ることができる。
【0011】
図3に示すように、流体抵抗低減装置10は、経路手段13に機関冷却材を流通させる冷却材ポンプ15を備えており、冷却材ポンプ15によって、機関冷却材は熱機関11と熱交換手段14との間を循環する。流体抵抗低減装置10は、冷却材加熱器16を備えており、冷却材加熱器16によって少なくとも熱機関11の起動時において機関冷却材を加熱する。冷却材加熱器16は、開閉弁16aを有する導入配管と、開閉弁16bを有する導出配管とを復路経路手段13bに接続している。また、冷却材加熱器16に機関冷却材を導くために、復路経路手段13bには開閉弁16cが設けられている。開閉弁16a及び開閉弁16bを開、開閉弁16cを閉として、機関冷却材を冷却材加熱器16に導入して加熱することで、熱機関11の立ち上げ準備時間を短縮することができる。
また、図3に示すように、熱交換手段14への機関冷却材の導入を阻止する開閉弁14bを往路経路手段13aに、熱交換手段14からの機関冷却材の導出を阻止する開閉弁14cを往路経路手段13bに設けることが好ましい。そして、熱機関11の起動時からの所定時間は開閉弁14b及び開閉弁14cを閉とすることで、熱交換手段14による放熱開始を遅延させ、熱機関11の起動までの時間を短縮することができる。また、熱機関11の停止時からの所定時間は開閉弁14b及び開閉弁14cを開放した状態で冷却材ポンプ15を駆動して、熱交換手段14による放熱停止を遅延させることで、停止後の熱機関11の異常温度上昇を防止でき、停止後の熱機関の余熱を適切に処理することができる。
【0012】
また、図3に示すように、流体抵抗低減装置10は、熱機関11の出口における機関冷却材の温度を検出する第1の温度検出器17aを往路経路手段13aに、熱機関11の入口における機関冷却材の温度を検出する第2の温度検出器17bを復路経路手段13bに、温度調整弁13dの出口における機関冷却材の温度を検出する第3の温度検出器17cを復路経路手段13bにそれぞれ設けている。第1の温度検出器17a、第2の温度検出器17b、及び第3の温度検出器17cで機関冷却材の温度を検出することで、温度調整手段を制御して熱機関11に流入する機関冷却材の温度を調整することができる。温度調整弁13dは、温度調整手段の一つである。温度調整弁13dによってバイパス経路手段13cを流れる機関冷却材の流量比を調整することで、温度調整弁13dの出口における機関冷却材の温度を変更することができる。また本実施形態における開閉弁14b及び開閉弁14cも温度調整手段の一つである。開閉弁14b及び開閉弁14cの閉塞による熱交換手段14での放熱停止によっても熱機関11に流入する機関冷却材の温度を短時間で上昇させることができる。また本実施形態における冷却材加熱器16での加熱制御も温度調整手段の一つである。
【0013】
本実施形態によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関11の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段13、熱交換手段14が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段14への機関冷却材の供給を、船舶1の熱機関11に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。また、排ガスの場合に生じる船体の傾き等による影響がなく、所望通りに船体を加熱することができる。
また本実施形態によれば、熱機関11を冷却する機関冷却材を熱交換手段14に導くことで、機関冷却材が例えば冷却水のような液体であるため熱交換効率が高く、また二次熱媒体を用いないために熱ロスやエネルギー消費を低減でき、間接熱交換のための熱交換器、タンク、ポンプ等を設ける必要が無いために、小型化でき設置スペースや価格の上で有利である。
また本実施形態によれば、熱機関11の冷却を熱交換手段14による放熱だけで処理することで、冷却用の海水を船底において取水及び排水しないため、シーチェストが無くせ船舶1の抵抗に影響を及ぼすことがない。
また本実施形態によれば、温度調整手段によって、熱機関11に流入する機関冷却材の温度を調整することで、熱機関11の温度を所定温度に維持しつつ、余剰熱を摩擦抵抗低減に利用することができる。また、温度調整手段を利用して、起動時の温度上昇を早め、又は停止時の余熱管理を有効に行うことができる。
【0014】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の他の実施形態について説明する。
図4は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図4は図1に対応する構成図であり、本実施形態においても図2及び図3にて説明した構成が適用される。
【0015】
図4に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、喫水下船体12に放熱する熱交換手段14として、第1の熱交換手段14dと、第2の熱交換手段14eと、第3の熱交換手段14fとを備えている。第1の熱交換手段14d、第2の熱交換手段14e、及び第3の熱交換手段14fは、それぞれ熱交換経路として独立した構成となっている。本実施形態における第1の熱交換手段14dは、第1の実施形態における熱交換手段14に相当し、往路経路手段13aと復路経路手段13bとが接続され、機関冷却材として冷却水が用いられる。
第2の熱交換手段14eは、熱機関11を冷却する機関冷却材として潤滑油を用いたもので、経路手段13は、熱機関11で吸熱した潤滑油を第2の熱交換手段14eに導く往路経路手段13eと、第2の熱交換手段14eで放熱した潤滑油を熱機関11に導く復路経路手段13fと、往路経路手段13eを流れる潤滑油の一部を復路経路手段13fにバイパスするバイパス経路手段13gと、バイパス経路手段13gを流れる潤滑油の流量比を調整する温度調整弁13hとより構成されている。
第3の熱交換手段14fは、排ガスエコノマイザ4で生成される蒸気を用いたもので、経路手段13は、排ガスエコノマイザ4で生成される蒸気を第3の熱交換手段14fに導く往路経路手段4aと、第3の熱交換手段14fで放熱し液化した液体を排ガスエコノマイザ4に導く復路経路手段4bとより構成されている。
本実施形態によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、第1の熱交換手段14dによって船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することができるとともに、第2の熱交換手段14eを用いて潤滑油により得られる排熱を併用し、又は第3の熱交換手段14fを用いて熱機関11の排ガスにより得られる排熱を併用することができ、熱機関11の必要出力を更に減少させることができる。
【0016】
(第3の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の他の実施形態について説明する。
図5は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図5は図1に対応する構成図であり、本実施形態においても図2及び図3にて説明した構成が適用される。
【0017】
図5に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、喫水下船体12に放熱する熱交換手段14は、第1の実施形態における熱交換手段14と同様に、往路経路手段13aと復路経路手段13bとが接続され、機関冷却材として冷却水が用いられる。
本実施形態では、往路経路手段13aに第1の二次熱交換器18aと第2の二次熱交換器18bを備えている。第1の二次熱交換器18aは、熱機関11で吸熱した潤滑油を導入する往路経路手段13iと、放熱した潤滑油を熱機関11に導出する復路経路手段13jとが接続されている。熱機関11を冷却する潤滑油(機関冷却材)の熱を第1の二次熱交換器18aに導く経路手段13は、往路経路手段13iと、復路経路手段13jと、往路経路手段13iを流れる潤滑油の一部を復路経路手段13jにバイパスするバイパス経路手段13kと、バイパス経路手段13kを流れる潤滑油の流量比を調整する温度調整弁13mとより構成されている。第2の二次熱交換器18bは、排ガスエコノマイザ4で生成される蒸気を導入する経路手段13としては往路経路手段4cと、放熱し液化した液体を排ガスエコノマイザ4に導出する復路経路手段4dとが接続され、往路経路手段4cと復路経路手段4dとは経路手段13を構成している。
【0018】
本実施形態によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、熱交換手段14によって船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することができるとともに、第1の二次熱交換器18aを用いて潤滑油により得られる排熱を併用し、又は第2の二次熱交換器18bを用いて熱機関11の排ガスにより得られる排熱を併用することができ、熱機関11の必要出力を更に減少させることができる。
本実施形態のように、第1の二次熱交換器18aと第2の二次熱交換器18bとを用いて潤滑油及び蒸気の熱を往路経路手段13aに流れる冷却水に与えることで、熱交換手段14を第2の実施形態のように分割する必要がなく、第1の実施形態と比較すると、熱交換手段14での放熱量を増加させることができる。また、熱交換手段14の機関冷却材が流れる流路が1種類で済み、熱交換手段14の構成が簡素化できる。
なお、潤滑油の温度よりも蒸気温度が高いため、第1の二次熱交換器18aと第2の二次熱交換器18bとを同時に利用する場合には、第1の二次熱交換器18aよりも第2の二次熱交換器18bを往路経路手段13aの下流側に設けることが好ましいが、第1の二次熱交換器18aと第2の二次熱交換器18bとを選択的に利用する場合には、第1の二次熱交換器18aを第2の二次熱交換器18bよりも下流側に設けてもよい。
また、潤滑油の温度が冷却水の温度よりも低い場合は、復路経路手段13bに第1の二次熱交換器18aを設けてもよい。また、排ガスエコノマイザ4で作られた蒸気を他の用途にも利用した後、液化した液体を導く場合も温度によっては、第2の二次熱交換器18bを復路経路手段13bに設けてもよい。
【0019】
(第4の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の他の実施形態について説明する。
図6は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図6は図1に対応する構成図であり、本実施形態においても図2及び図3にて説明した構成が適用される。
【0020】
図6に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、第2の実施形態と同様に、喫水下船体12に放熱する熱交換手段14として、第1の熱交換手段14dと、第2の熱交換手段14eと、第3の熱交換手段14fとを備えている。第1の熱交換手段14d、第2の熱交換手段14e、及び第3の熱交換手段14fは、それぞれ熱交換経路として独立した構成となっている。本実施形態における第1の熱交換手段14dは、第1の実施形態における熱交換手段14に相当し、往路経路手段13aと復路経路手段13bとが接続され、機関冷却材として冷却水が用いられる。
第2の熱交換手段14eは、熱機関11を冷却する機関冷却材として潤滑油を用いたもので、経路手段13は、熱機関11で吸熱した潤滑油を第2の熱交換手段14eに導く往路経路手段13eと、第2の熱交換手段14eで放熱した潤滑油を熱機関11に導く復路経路手段13fと、往路経路手段13eを流れる潤滑油の一部を復路経路手段13fにバイパスするバイパス経路手段13gと、バイパス経路手段13gを流れる潤滑油の流量比を調整する温度調整弁13hとより構成されている。
第3の熱交換手段14fは、熱機関11から排出される排ガスの排熱を用いたもので、経路手段13は、排気経路3からの経路分岐手段3aと、経路分岐手段3aから分岐させた排ガスを第3の熱交換手段14fに導く往路経路手段3bと、第3の熱交換手段14fで放熱した排ガスを煙突5に導く復路経路手段3cとより構成されている。
本実施形態によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、第1の熱交換手段14dによって船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することができるとともに、第2の熱交換手段14eを用いて潤滑油により得られる排熱を併用し、又は第3の熱交換手段14fを用いて熱機関11の排ガスの熱を併用することができ、熱機関11の必要出力を更に減少させることができる。
なお、熱機関11から排出される排ガスは下方に導かれるが、その全量でなく分岐させた排ガスの一部が導かれる結果、排気抵抗や主機関の効率、排ガス特性に悪影響を及ぼさない範囲での制御が可能となっている。
【0021】
(第5の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の他の実施形態について説明する。
図7は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図7は図1に対応する構成図であり、本実施形態においても図2及び図3にて説明した構成が適用される。
【0022】
図7に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、喫水下船体12に放熱する熱交換手段14は、第1及び第3の実施形態における熱交換手段14と同様に、往路経路手段13aと復路経路手段13bとが接続され、機関冷却材として冷却水が用いられる。
本実施形態では、往路経路手段13aに第1の二次熱交換器18aと第3の二次熱交換器18cを備えている。第1の二次熱交換器18aは、第3の実施形態と同様に、熱機関11で吸熱した潤滑油(機関冷却材)を導入する往路経路手段13iと、放熱した潤滑油を熱機関11に導出する復路経路手段13jとが接続されている。熱機関11の潤滑油の熱を第1の二次熱交換器18aに導く経路手段13は、往路経路手段13iと、復路経路手段13jと、往路経路手段13iを流れる潤滑油の一部を復路経路手段13jにバイパスするバイパス経路手段13kと、バイパス経路手段13kを流れる潤滑油の流量比を調整する温度調整弁13mとより構成されている。
第3の二次熱交換器18cは、熱機関11から排出される排ガスの排熱を用いたもので、経路手段13は、排気経路3からの経路分岐手段3aと、経路分岐手段3aから分岐させた排ガスを第3の二次熱交換器18cに導く往路経路手段3bと、第3の二次熱交換器18cで放熱した排ガスを煙突5に導く復路経路手段3cとより構成されている。
【0023】
本実施形態によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、熱交換手段14によって船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することができるとともに、第1の二次熱交換器18aを用いて潤滑油により得られる排熱を併用し、又は第3の二次熱交換器18cを用いて熱機関11の排ガスにより得られる排熱を併用することができ、熱機関11の必要出力を更に減少させることができる。
本実施形態のように、第1の二次熱交換器18aと第3の二次熱交換器18cとを用いて潤滑油及び排ガスの熱を往路経路手段13aに流れる冷却水に与えることで、熱交換手段14を第2の実施形態のように分割する必要がなく、第1の実施形態と比較すると、熱交換手段14での放熱量を増加させることができる。
なお、潤滑油の温度よりも排ガス温度が高いため、第1の二次熱交換器18aと第3の二次熱交換器18cとを同時に利用する場合には、第1の二次熱交換器18aよりも第3の二次熱交換器18cを往路経路手段13aの下流側に設けることが好ましいが、第1の二次熱交換器18aと第3の二次熱交換器18cとを選択的に利用する場合には、第1の二次熱交換器18aを第3の二次熱交換器18cよりも下流側に設けてもよい。
また、潤滑油の温度が冷却水の温度よりも低い場合は、復路経路手段13bに第1の二次熱交換器18aを設けてもよい。
【0024】
(第6の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の他の実施形態について説明する。
図8は本実施形態による流体抵抗低減装置の配管経路を示す図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図8は図3に対応する構成図であり、本実施形態は、第1の実施形態から第5の実施形態に適用できる。
【0025】
図8に示すように、流体抵抗低減装置10は、熱交換手段14に並列に予備冷却器6を備えている。予備冷却器6には、熱機関11で吸熱した機関冷却材を導入する往路経路手段6aと、放熱した機関冷却材を復路経路手段13bに導出する復路経路手段6bとが接続されている。往路経路手段6aは、開閉弁6cを介して往路経路手段13aに接続され、復路経路手段6bは、開閉弁6dを介して温度調整弁13dの流出側の復路経路手段13bに接続されている。バイパス経路手段6eは、往路経路手段6aを流れる機関冷却材の一部を復路経路手段6bにバイパスし、温度調整弁6fはバイパス経路手段6eを流れる機関冷却材の流量比を調整する。
予備冷却器6は、海水ポンプ6gによって、取水シーチェスト6hから海水を導入し、熱交換後に海水を導出する。予備冷却器6から導出された海水は、排水シーチェスト6iから排出される。
本実施形態のように、熱機関11で吸熱した機関冷却材の熱をすべて熱交換手段14に用いることなく、機関冷却材の熱の一部を予備冷却器6によって排出してもよい。
【0026】
以下に、本発明の実施形態における流体抵抗低減装置の制御方法について説明する。
図9は同流体抵抗低減装置の第1の制御方法による制御ブロック図である。
図9に示す制御ブロック図は図3に示す構成を機能実現手段として備えており、同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
流体抵抗低減装置10は、運転設定器10aによって第1の温度検出器17a、第2の温度検出器17b、及び第3の温度検出器17cでの設定温度と、検出温度による制御を設定する。運転設定器10aは、状態表示器10bを備えている。
まず、運転設定器10aによって、主機関11及び流体抵抗低減装置10の運転開始が設定され、この設定に基づいて主機関11及び流体抵抗低減装置10が始動する。
第1の温度検出器17aが第1の設定温度(例えば60℃ )より低いことを検出することで、冷却材加熱器16を運転する。冷却材加熱器16の運転によって、早期に主機関11を始動温度に到達させることができる。
第1の温度検出器17aの検出温度が第1の設定温度より低い運転開始前初期状態では、開閉弁16a、開閉弁16b、及び開閉弁16cで構成される経路切替弁は、冷却材加熱器16を通過させる経路を選択しており、冷却材ポンプ15も運転を開始する。温度調整弁13dはバイパス経路手段13cだけに機関冷却材(冷却水、潤滑油等)が流れるように設定される。
第1の温度検出器17aで検出される温度が第1の設定温度(例えば60℃)に達したら、主機関11を実始動する。
第2の温度検出器17bの温度が設定温度(例えば75℃)に達したら、経路切替弁16a、16b、16cの切り替えによって冷却材加熱器16への機関冷却材の流入を停止し、冷却材ポンプ15から直接熱機関11に機関冷却材を流入させる。このとき冷却材加熱器16の運転も停止する。
第3の温度検出器17cで検出される温度が設定温度(例えば80℃)に達したら、温度調整弁13dを調整して熱交換手段14にも機関冷却材を流しはじめる。
第3の温度検出器17cで検出される温度が設定温度(例えば80℃ )を維持できるように、温度調整弁13dで往路経路手段13aとバイパス経路手段13cの流量比を調整する。
航行中は主機関11の負荷により変わる排熱量を温度調整弁13dで流量比を調整して第3の温度検出器17cの設定温度(例えば80℃ )に維持しつつ放熱することができる。
また、運転設定器10aによって、主機関11及び流体抵抗低減装置10の運転停止が設定され、この設定に基づいて主機関11及び流体抵抗低減装置10が停止する。
第3の温度検出器17cで検出される温度は徐々に低下し、これに伴い温度調整弁13dが徐々に往路経路手段13aを絞るとともにバイパス経路手段13cを徐々に開放し、最後は往路経路手段13aを閉塞することで熱交換手段14での放熱を停止する。
第1の温度検出器17aで検出される温度が、第2の設定温度(例えば50℃)以下になったら冷却材ポンプ15を停止することで予熱対策を行うことができる。
なお、冷却材ポンプ15を停止する前に経路切替弁16a、16b、16cは冷却材加熱器16を機関冷却材が流れるように切り替えを行うが、冷却材加熱器16の運転は行わない。
自然冷却によって機関冷却材が冷却され、経路切替弁16a、16b、16cが冷却材加熱器16側の経路選択を維持し、温度調整弁13dがバイパス経路手段13cの選択を維持し、次の始動に備える。
【0028】
図10は同流体抵抗低減装置の第2の制御方法による制御ブロック図である。同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態は、図9の機能実現手段と比較して第3の温度検出器17cを備えていない。従って、温度調整弁13dは、第1の温度検出器17aと第2の温度検出器17bによる検出温度によって制御される。
【0029】
まず、運転設定器10aによって、主機関11及び流体抵抗低減装置10の運転開始が設定され、この設定に基づいて主機関11及び流体抵抗低減装置10が始動する。
第1の温度検出器17aが第1の設定温度(例えば60℃ )より低いことを検出することで、冷却材加熱器16を運転する。冷却材加熱器16の運転によって、早期に主機関11を始動温度に到達させることができる。
第1の温度検出器17aの検出温度が第1の設定温度より低い運転開始前初期状態では、開閉弁16a、開閉弁16b、及び開閉弁16cで構成される経路切替弁は、冷却材加熱器16を通過させる経路を選択しており、冷却材ポンプ15も運転を開始する。温度調整弁13dはバイパス経路手段13cだけに機関冷却材(冷却水、潤滑油等)が流れるように設定される。
第1の温度検出器17aで検出される温度が第1の設定温度(例えば60℃)に達したら、主機関11を実始動する。
第2の温度検出器17bの温度が第1の設定温度(例えば75℃)に達したら、経路切替弁16a、16b、16cの切り替えによって冷却材加熱器16への機関冷却材の流入を停止し、冷却材ポンプ15から直接熱機関11に機関冷却材を流入させる。このとき冷却材加熱器16の運転も停止する。
第2の温度検出器17bで検出される温度が第2の設定温度(例えば80℃)に達したら、温度調整弁13dを調整して熱交換手段14にも機関冷却材を流しはじめる。
第2の温度検出器17bで検出される温度が第2の設定温度を維持できるように、温度調整弁13dで往路経路手段13aとバイパス経路手段13cの流量比を調整する。
主機関11の負荷が増し、第1の温度検出器17aで検出される温度が第2の設定温度(例えば80℃)を越える状況が所定時間以上続く場合は、冷却材ポンプ15での出力を増加させることで機関冷却材の流量を増加する。負荷が下がり、第1の温度検出器17aで検出される温度が第2の設定温度を下回ったら、冷却材ポンプ15での出力を減少させることで機関冷却材の流量を減少する。
航行中は主機関11の負荷により変わる排熱量を温度調整弁13dで流量比を調整して第2の温度検出器17bの検出温度が第2の設定温度(例えば80℃ )を維持して放熱することができる。
また、運転設定器10aによって、主機関11及び流体抵抗低減装置10の運転停止が設定され、この設定に基づいて主機関11及び流体抵抗低減装置10が停止する。
第2の温度検出器17bで検出される温度は徐々に低下し、これに伴い温度調整弁13dが徐々に往路経路手段13aを絞るとともにバイパス経路手段13cを徐々に開放し、最後は往路経路手段13aを閉塞することで熱交換手段14での放熱を停止する。
第1の温度検出器17aで検出される温度が、第2の設定温度(例えば50℃)以下になったら冷却材ポンプ15を停止することで予熱対策を行うことができる。
なお、冷却材ポンプ15を停止する前に経路切替弁16a、16b、16cは冷却材加熱器16を機関冷却材が流れるように切り替えを行うが、冷却材加熱器16の運転は行わない。
自然冷却によって機関冷却材が冷却され、経路切替弁16a、16b、16cが冷却材加熱器16側の経路選択を維持し、温度調整弁13dがバイパス経路手段13cの選択を維持し、次の始動に備える。
【0030】
(第7の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ウォータージェット推進器に適用した場合の実施形態について説明する。
図11は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図、図12は同流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図11は図1に対応する構成図であり、本実施形態においても図3にて説明した構成が適用される。
【0031】
図11に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、船舶1を推進するウォータージェット推進器20と、船舶1に搭載される熱機関11と、熱機関11の排熱をウォータージェット推進器20のウォータージェットダクト21に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される排熱をウォータージェットダクト21の内壁に放熱する熱交換手段24とを備えている。本実施形態における熱機関11の排熱には、例えば冷却水のような機関冷却材を用いている。冷却水としては、純水の他、水に凍結防止剤などを添加した冷却液や液状の冷却剤を用いることができる。また、機関冷却材として潤滑油を用いてもよい。
経路手段13は、熱機関11で吸熱した機関冷却材を熱交換手段24に導く往路経路手段13aと、熱交換手段24で放熱した機関冷却材を熱機関11に導く復路経路手段13bと、往路経路手段13aを流れる機関冷却材の一部を復路経路手段13bにバイパスするバイパス経路手段13cと、バイパス経路手段13cを流れる機関冷却材の流量比を調整する温度調整弁13dとより構成されている。
ウォータージェット推進器20は、ウォータージェットダクト21内にインペラ22を備えている。ウォータージェットダクト21は、海水を導入する上流側ダクト部と、インペラ22が配置されるインペラダクト部と、海水を噴出する下流側ダクト部とより構成され、熱交換手段24は、上流側ダクト部と下流側ダクト部とに分割して配置されている。従って、バイパス経路手段13cよりも下流側に配置される往路経路手段13aと、バイパス経路手段13cよりも上流側に配置される復路経路手段13bとは、それぞれ2系統に分岐しており、上流側ダクト部と下流側ダクト部とに分割された熱交換手段24に接続
されている。
熱機関11から排出される排ガスは、排気経路3を通り、排ガスエコノマイザ4で排熱が回収された後に煙突5より大気に放出される。
【0032】
図12に示すように、熱交換手段24はウォータージェットダクト21の上流側ダクト部及び下流側ダクト部の外周に同心円状に筒状部材を配置することで二重管構造をしている。なお、熱交換手段24はウォータージェットダクト21に対する放熱量を増加させるために、外周面は断熱材で覆われていることが好ましい。
本実施形態によれば、熱機関11を冷却し廃棄処理していた排熱を、ウォータージェットダクト21で熱交換させて放熱を行うことにより、ウォータージェットダクト21の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ウォータージェットダクト21を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
【0033】
(第8の実施形態)
以下に、本実施形態による流体抵抗低減装置の他の形態について説明する。
図13は同流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図である。なお、本実施形態は、第7の実施形態における熱交換手段の他の形態であり、本実施形態においては図11にて説明した構成が適用される。
図13に示すように、熱交換手段24の内部にはウォータージェットダクト21の長手方向に仕切部24aを複数設けることで、機関冷却材の流通路を複数に分割している。仕切部24aは、ウォータージェットダクト21の外周面に等間隔に放射状に設けている。なお、図示の仕切部24aは、各通路を完全に分割しているが、ウォータージェットダクト21の外周面に接合され、外筒には接合されていないフィンによって構成してもよい。
本実施形態のように仕切部24aを設けることで、ウォータージェットダクト21での放熱量を増加させることができるとともに、熱交換手段24の強度を高めることができる。
【0034】
(第9の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ウォータージェット推進器に適用した場合の他の実施形態について説明する。
図14は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、本実施形態においても図12又は図13にて説明した構成が適用される。
【0035】
図14に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、船舶1を推進するウォータージェット推進器20と、船舶1に搭載される熱機関11と、熱機関11の排熱(排ガス)をウォータージェット推進器20のウォータージェットダクト21に導く経路手段と、経路手段13を経て供給される排熱をウォータージェットダクト21の内壁に放熱する熱交換手段24とを備えている。
経路手段13は、排気経路3からの経路分岐手段3aと、経路分岐手段3aから分岐させた排ガスを熱交換手段24に導く往路経路手段3bと、熱交換手段24で放熱した排ガスを海水中に排出する排出経路手段3dとより構成されている。
ウォータージェット推進器20は、ウォータージェットダクト21内にインペラ22を備えている。ウォータージェットダクト21は、海水を導入する上流側ダクト部と、インペラ22が配置されるインペラダクト部と、海水を噴出する下流側ダクト部とより構成され、熱交換手段24は、上流側ダクト部と下流側ダクト部とに分割して配置されている。従って、往路経路手段3bと排出経路手段3dとは、それぞれ2系統に分岐しており、上流側ダクト部と下流側ダクト部とに分割された熱交換手段24に接続されている。
本実施形態によれば、熱機関11から排出される排ガスの熱を、ウォータージェットダクト21で熱交換させて放熱を行うことにより、ウォータージェットダクト21の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ウォータージェットダクト21を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
なお、ウォータージェット推進器を用いた船舶は、比較的小型の船舶であり、排ガスを直接海中に放出する形式のウォータージェット推進器もあるところから、排ガスの全量をウォータージェットダクトに導いても、排気抵抗や主機関の効率、排ガス特性に悪影響を及ぼさない。
【0036】
(第10の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ダクトプロペラ推進器に適用した場合の実施形態について説明する。
図15は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図、図16は同流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図である。なお、図15では、船舶に搭載される熱機関、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段、排気経路、排ガスエコノマイザ、煙突などの構成についての説明を省略するが、これらの構成については、図1及び図3の構成が適用される。
【0037】
図15に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置は、船舶1を推進するダクトプロペラ推進器30と、船舶1に搭載される熱機関(図示せず)と、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器30のダクト部31に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される排熱をダクト部31に放熱する熱交換手段34とを備えている。本実施形態における熱機関の排熱には、例えば冷却水のような機関冷却材を用いている。冷却水としては、純水の他、水に凍結防止剤などを添加した冷却液や液状の冷却剤を用いることができる。また、機関冷却材として潤滑油を用いてもよい。
経路手段13は、熱機関で吸熱した機関冷却材を熱交換器34に導く往路経路手段13aと、熱交換器34で放熱した機関冷却材を熱機関に導く復路経路手段13bと、往路経路手段13aを流れる機関冷却材の一部を復路経路手段13bにバイパスするバイパス経路手段(図示せず)と、バイパス経路手段を流れる機関冷却材の流量比を調整する温度調整弁(図示せず)とより構成されている。
ダクトプロペラ推進器30は、ダクト部31と、ダクト部31内に配置されるプロペラ32と、ダクト部31を船体に接続する柱部33とを備えている。ダクト部31は、筒状部材によって構成され、熱交換手段34はこの筒状部材の内周側に配置されている。また、往路経路手段13aと復路経路手段13bとは、柱部33内に配置されている。
図16に示すように、熱交換手段34は、ダクト部31の内周側に配置され、内部にリング状フィンを形成している。
本実施形態によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部31の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。なお、リング状フィンは螺旋状フィンとして構成してもよい。
【0038】
(第11の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ダクトプロペラ推進器に適用した場合の他の実施形態について説明する。
図17は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、図17では、船舶に搭載される熱機関、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段、排気経路、排ガスエコノマイザ、煙突などの構成についての説明を省略するが、これらの構成については、図1及び図3の構成が適用される。また、熱交換手段については図16の構成が適用される。
【0039】
図17に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置は、船舶1を推進するダクトプロペラ推進器30と、船舶1に搭載される熱機関(図示せず)と、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器30のダクト部31に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される排熱をダクト部31に放熱する熱交換手段34とを備えている。本実施形態における熱機関の排熱には、例えば冷却水のような機関冷却材を用いている。冷却水としては、純水の他、水に凍結防止剤などを添加した冷却液や液状の冷却剤を用いることができる。また、機関冷却材として潤滑油を用いてもよい。
経路手段13は、熱機関で吸熱した機関冷却材を熱交換器34に導く往路経路手段13aと、熱交換器34で放熱した機関冷却材を熱機関に導く復路経路手段13bと、往路経路手段13aを流れる機関冷却材の一部を復路経路手段13bにバイパスするバイパス経路手段(図示せず)と、バイパス経路手段を流れる機関冷却材の流量比を調整する温度調整弁(図示せず)とより構成されている。
ダクトプロペラ推進器30は、ダクト部31と、ダクト部31内に配置されるプロペラ32とを備え、ダクト部31は船舶1の船体に接続されている。ダクト部31は、筒状部材によって構成され、熱交換手段34はこの筒状部材の内周側に配置されている。
本実施形態によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部31の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
【0040】
(第12の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ダクトプロペラ推進器に適用した場合の他の実施形態について説明する。
図18は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、図18では、船舶に搭載される熱機関、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段、排ガスエコノマイザ、煙突などの構成についての説明を省略するが、これらの構成については、図1の構成が適用される。また、熱交換手段については図16の構成が適用される。
【0041】
図18に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置は、船舶1を推進するダクトプロペラ推進器30と、船舶1に搭載される熱機関(図示せず)と、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器30のダクト部31に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される排熱をダクト部31に放熱する熱交換手段34とを備えている。本実施形態における熱機関の排熱には、熱機関の排ガスを用いている。
経路手段13は、排気経路からの経路分岐手段(図示せず)と、経路分岐手段から分岐させた排ガスを熱交換手段34に導く往路経路手段3bと、熱交換手段34で放熱した排ガスを煙突(図示せず)に導く復路経路手段3cとより構成されている。
ダクトプロペラ推進器30は、ダクト部31と、ダクト部31内に配置されるプロペラ32とを備え、ダクト部31は船舶1の船体に接続されている。ダクト部31は、筒状部材によって構成され、熱交換手段34はこの筒状部材の内周側に配置されている。
本実施形態によれば、熱機関から排出される排ガスの熱を、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部31の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
なお、ダクトプロペラ推進器を用いた船舶は、比較的小型の船舶であり、排ガスのドラフト効果も少ないところから、例え排ガスの全量をウォータージェットダクトに導いても、排気抵抗や主機関の効率、排ガス特性に悪影響を及ぼさない。
【0042】
(第13の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ダクトプロペラ推進器に適用した場合の他の実施形態について説明する。
図19は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、図19では、船舶に搭載される熱機関、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段、排ガスエコノマイザ、煙突などの構成についての説明を省略するが、これらの構成については、図1の構成が適用される。また、熱交換手段については基本的に図16の構成が適用される。
【0043】
図19に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置は、船舶1を推進するダクトプロペラ推進器30と、船舶1に搭載される熱機関(図示せず)と、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器30のダクト部31に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される排熱をダクト部31に放熱する熱交換手段34とを備えている。本実施形態における熱機関の排熱には、熱機関の排ガスを用いている。
経路手段13は、排気経路からの経路分岐手段(図示せず)と、経路分岐手段から分岐させた排ガスを熱交換手段34に導く往路経路手段3bと、熱交換手段34で放熱した排ガスを海水中に排出する排出経路手段3dとより構成されている。
ダクトプロペラ推進器30は、ダクト部31と、ダクト部31内に配置されるプロペラ32とを備え、ダクト部31は船舶1の船体に接続されている。ダクト部31は、筒状部材によって構成され、熱交換手段34はこの筒状部材の内周側に配置されている。
本実施形態によれば、熱機関から排出される排ガスの熱を、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部31の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
【0044】
以上の各実施形態における熱機関11としては、ディーゼルエンジンのような内燃機関があるが、ボイラーでの燃焼による蒸気を利用する蒸気タービンがある。熱機関11の排ガスは、内燃機関の場合には燃焼によって生じる排ガスであるが、蒸気タービンの場合にはボイラーでの燃焼によって生じる排ガスとタービン通過後の蒸気ガスである。従って、蒸気タービンの場合には、タービン通過後の蒸気ガスを利用することもできる。一般的には、蒸気タービン船では、タービン通過後の蒸気ガスは復水器で海水により冷却されるため、この復水器の代わりに各実施の形態における熱交換器を用いることができる。
また、熱機関の排熱として熱機関に過給機を用いる場合、この過給機の圧縮空気の排熱も含むものとする。この場合の、機関冷却材としては空気あるいはインタークーラー等を介し空気と熱交換される各種熱媒体が相当する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、船体が受ける摩擦抵抗の低減に利用でき、特に熱機関の排熱を海水に放出している船舶に適している。
【符号の説明】
【0046】
10 流体抵抗低減装置
11 熱機関
12 喫水下船体
13 経路手段
14 熱交換手段
16 冷却材加熱器
20 ウォータージェット推進器
21 ウォータージェットダクト
24 熱交換手段
30 ダクトプロペラ推進器
31 ダクト部
34 熱交換手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に搭載される熱機関の排熱を利用して摩擦抵抗を低減させることができる流体抵抗低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な舶用機関は、燃料を燃やして動力に変換する熱機関であり、また、電気推進船にあっても、電力を得るための動力源は、発電機に接続された熱機関である。燃料の燃焼によって得られる熱エネルギーの内、動力に変換し得た割合のことを熱効率と呼ぶが、舶用の熱機関の熱効率は、高性能なものであっても40〜50%であり、燃焼によって発生するエネルギーの半分以上が動力に変換されず排熱として捨てられている。
この排熱の内でも排ガスについては有効利用する方策が従来から採られており、広く採用されているものとしては、排気タービン過給器(ターボチャージャー)や排ガスエコノマイザがある。
排ガスエコノマイザは、排ガスの熱により水を加熱し蒸気を得て、船内の様々の用途に使用できるようにする装置である(例えば特許文献1)。
なお、ガスタービンやエンジンから排出される高温の排ガスによって船体を加熱することで船体の受ける摩擦抵抗を減少させることが既に提案されている(特許文献2、段落番号(0022)、特許文献3、段落番号(0082))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−148701号公報
【特許文献2】特開2003−252284号公報
【特許文献3】特開平10−318215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排ガスエコノマイザにおける蒸気の主な用途の一つとしては、高粘性燃料であるC重油の加熱による低粘度化である。
しかし、C重油には硫黄(S)分が含まれており、SOx規制等の問題から、硫黄を含有しないA重油(低粘度)への燃料転換がなされた場合、加熱が不要となり、得られる蒸気の使途が減少し、有効に利用されない熱エネルギーが今まで以上に増加する。
特許文献2では、排気管を主機関から下方に導いているため、排気熱ドラフト効果に逆らって排気を押し込む結果、排気抵抗が増し主機関の効率や排ガス特性に悪影響を及ぼしていた。また、排ガスを利用する場合には、排気管やダクトを大径、大断面積にする必要があり、大スペースが必要であった。更に、船が波の影響等で傾いた場合、排ガスのドラフト力により、管寄せ分で排ガスの偏在が生じ、船体外板の加熱にアンバランスを生じ、操縦性にも影響を及ぼしていた。
一方、熱機関は使用中に適切な冷却を行う必要があり、船用の熱機関では、主に水冷方式が採用されている。そして熱機関より熱を奪った冷却水は、船外から取り入れられた海水と熱交換を行うことで冷却している。すなわち、熱機関の冷却によって得られる熱は、有効利用されることなく船外に捨てることが多かった。加えて、冷却水の冷却用に用いられる海水は、船底に設けられたシーチェストから取水と排水が行われているため、船舶の抵抗に影響を及ぼしていると考えられる。
従って、有効利用が限られていた熱機関の冷却用の熱を回収し、かつ、船舶の抵抗を低減する用途に供することで、船舶の省エネルギー化を図ることができる。
【0005】
そこで本発明は、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させることができる流体抵抗低減装置を提供することを目的とする。
また本発明は、ウォータージェットダクトが受ける摩擦抵抗を低減し、船舶の推進力を高めることができる流体抵抗低減装置を提供することを目的とする。
また本発明は、ダクトプロペラ推進器のダクト部が受ける摩擦抵抗を低減し、船舶の推進力を高めることができる流体抵抗低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載に対応した流体抵抗低減装置においては、船舶に搭載される熱機関と、熱機関を冷却する機関冷却材と、機関冷却材の熱を船舶の喫水下船体に導く経路手段と、経路手段を経て供給される熱を喫水下船体に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする。請求項1に記載の本発明によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段、熱交換手段が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段への機関冷却材の供給を、船舶の熱機関に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。また、排ガスの場合に生じる船体の傾き等による影響がなく、所望通りに船体を加熱することができる。
請求項2記載に対応した流体抵抗低減装置においては、船舶を推進するウォータージェット推進器と、船舶に搭載される熱機関と、熱機関の排熱をウォータージェット推進器のウォータージェットダクトに導く経路手段と、経路手段を経て供給される排熱をウォータージェットダクトの内壁に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする。請求項2に記載の本発明によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ウォータージェットダクトで熱交換させて放熱を行うことにより、ウォータージェットダクトの摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ウォータージェットダクトを加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
請求項3記載に対応した流体抵抗低減装置においては、船舶を推進するダクトプロペラ推進器と、船舶に搭載される熱機関と、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段と、経路手段を経て供給される排熱をダクト部に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする。請求項3に記載の本発明によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ダクトプロペラ推進器のダクト部で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器のダクト部を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
請求項4記載の本発明は、請求項2又は請求項3に記載の流体抵抗低減装置において、排熱として、熱機関を冷却する機関冷却材による熱を用いたことを特徴とする。請求項4に記載の本発明によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。
また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段、熱交換手段が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段への機関冷却材の供給を、船舶の熱機関に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。
請求項5記載の本発明は、請求項1又は請求項4に記載の流体抵抗低減装置において、機関冷却材を熱交換手段に導くことを特徴とする。請求項5に記載の本発明によれば、機関冷却材が液体であるため熱交換効率が高く、また二次熱媒体を用いないために熱ロスやエネルギー消費を低減でき、間接熱交換のための熱交換器、タンク、ポンプ等を設ける必要が無いために、小型化でき設置スペースや価格の上で有利である。
請求項6記載の本発明は、請求項1、請求項4及び請求項5のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、熱機関の冷却を熱交換手段による放熱だけで処理することを特徴とする。請求項6に記載の本発明によれば、冷却用の海水を船底において取水及び排水しないため、船舶の抵抗に影響を及ぼすことがない。
請求項7記載の本発明は、請求項1、請求項4、請求項5、及び請求項6のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、熱機関の起動時には熱交換手段による放熱開始を遅延させ、及び/又は熱機関の停止時には熱交換手段による放熱停止を遅延させたことを特徴とする。請求項7に記載の本発明によれば、起動時の熱機関温度の上昇を早めることで熱機関の起動までの時間を短縮でき、及び/又は停止後の熱機関の異常温度上昇を防止できるとともに停止後の熱機関の余熱を適切に処理することができる。また、熱機関の排熱を利用して有効に摩擦抵抗低減が行えるときに放熱を行うため、無駄なエネルギー消費を無くすことができる。
請求項8記載の本発明は、請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、及び請求項7のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、熱機関に流入する機関冷却材の温度を調整する温度調整手段を有したことを特徴とする。請求項8に記載の本発明によれば、熱機関の温度を所定温度に維持しつつ、余剰熱を摩擦抵抗低減に利用することができる。また、温度調整手段を利用して、起動時の温度上昇を早めたり、停止時の余熱管理を有効に行うことができる。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の流体抵抗低減装置において、温度調整手段が冷却材加熱器であり、少なくとも熱機関の起動時において冷却材加熱器によって機関冷却材を加熱することを特徴とする。請求項9に記載の本発明によれば、熱機関の立ち上げ準備時間を短縮することができる。また、例えば温度調整弁の故障や極寒、氷海等でのオーバークールなどの予想外の事態が生じた場合に、加熱により熱機関を適正な温度に保つことができる。
請求項10記載の本発明は、請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、及び請求項9のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、機関冷却材を冷却水としたことを特徴とする。請求項10に記載の本発明によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させることができる。
請求項11記載の本発明は、請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、及び請求項9のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、機関冷却材を潤滑油としたことを特徴とする。請求項11に記載の本発明によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用されていなかった潤滑油の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させることができる。
請求項12記載の本発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の流体抵抗低減装置において、排熱として、熱機関の排ガスにより得られる熱を用いたことを特徴とする。請求項12に記載の本発明によれば、排ガスにより得られる熱を利用することで熱機関の必要出力を更に減少させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段、熱交換手段が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段への機関冷却材の供給を、船舶の熱機関に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。また、排ガスの場合に生じる船体の傾き等による影響がなく、所望通りに船体を加熱することができる。
また本発明によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ウォータージェットダクトで熱交換させて放熱を行うことにより、ウォータージェットダクトの摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ウォータージェットダクトを加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
また本発明によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ダクトプロペラ推進器のダクト部で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器のダクト部を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
なお、ウォータージェットダクトの内壁に放熱する排熱として、熱機関を冷却する機関冷却材による熱を用いることで、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段、熱交換手段が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段への機関冷却材の供給を、船舶の熱機関に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。
また、ダクトプロペラ推進器のダクト部に放熱する排熱として、熱機関を冷却する機関冷却材による熱を用いることで、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段、熱交換手段が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段への機関冷却材の供給を、船舶の熱機関に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。
また、機関冷却材を熱交換手段に導くことで、機関冷却材が液体であるため熱交換効率が高く、また二次熱媒体を用いないために熱ロスやエネルギー消費を低減でき、間接熱交換のための熱交換器、タンク、ポンプ等を設ける必要が無いために、小型化でき設置スペースや価格の上で有利である。
また、熱機関の冷却を熱交換手段による放熱だけで処理することで、冷却用の海水を船底において取水及び排水しないため、船舶の抵抗に影響を及ぼすことがない。
また、熱機関の起動時には熱交換手段による放熱開始を遅延させ、起動時の熱機関温度の上昇を早めることで熱機関の起動までの時間を短縮できる。また、熱機関の排熱を利用して有効に摩擦抵抗低減が行えるときに放熱を行うため、無駄なエネルギー消費を無くすことができる。
また、熱機関の停止時には熱交換手段による放熱停止を遅延させることで、停止後の熱機関の異常温度上昇を防止できるとともに停止後の熱機関の余熱を適切に処理することができる。
また、熱機関に流入する機関冷却材の温度を調整する温度調整手段を有することで、熱機関の温度を所定温度に維持しつつ、余剰熱を摩擦抵抗低減に利用することができる。また、温度調整手段を利用して、起動時の温度上昇を早めたり、停止時の余熱管理を有効に行うことができる。
また、温度調整手段が冷却材加熱器であり、少なくとも熱機関の起動時において冷却材加熱器によって機関冷却材を加熱することで、熱機関の立ち上げ準備時間を短縮することができる。また、例えば温度調整弁の故障や極寒、氷海等でのオーバークールなどの予想外の事態が生じた場合に、加熱により熱機関を適正な温度に保つことができる。
また、機関冷却材を冷却水としたことで、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させることができる。
また、機関冷却材を潤滑油としたことで、排ガスと比較すると低温であり、従来利用されていなかった潤滑油の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関の必要出力を減少させることができる。
また、熱機関の排ガスにより得られる排熱を利用又は併用することで、熱機関の必要出力を更に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図2】図1における喫水下船体を示す要部概略断面図
【図3】同流体抵抗低減装置の配管経路を示す図
【図4】本発明の第2の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図5】本発明の第3の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図6】本発明の第4の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図7】本発明の第5の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図8】本発明の第6の実施形態を示す流体抵抗低減装置の配管経路を示す図
【図9】同流体抵抗低減装置の第1の制御方法による制御ブロック図
【図10】同流体抵抗低減装置の第2の制御方法による制御ブロック図
【図11】本発明の第7の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図12】同流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図
【図13】本発明の第8の実施形態を示す流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図
【図14】本発明の第9の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図15】本発明の第10の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図16】同流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図
【図17】本発明の第11の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図18】本発明の第12の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【図19】本発明の第13の実施形態を示す流体抵抗低減装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の一実施形態について説明する。
図1は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図、図2は図1における喫水下船体を示す要部概略断面図、図3は同流体抵抗低減装置の配管経路を示す図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、船舶1に搭載され、推進器2の動力源となる熱機関11と、熱機関11を冷却する機関冷却材の熱を船舶1の喫水下船体12に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される熱を喫水下船体12に放熱する熱交換手段14とを備えている。本実施形態における機関冷却材は冷却水である。冷却水としては、純水の他、水に凍結防止剤などを添加した冷却液や液状の冷却剤を用いることができる。
経路手段13は、熱機関11で吸熱した機関冷却材を熱交換手段14に導く往路経路手段13aと、熱交換手段14で放熱した機関冷却材を熱機関11に導く復路経路手段13bと、往路経路手段13aを流れる機関冷却材の一部を復路経路手段13bにバイパスするバイパス経路手段13cと、バイパス経路手段13cを流れる機関冷却材の流量比を調整する温度調整弁13dとより構成されている。
熱機関11から排出される排ガスは、排気経路3を通り、排ガスエコノマイザ4で排熱が回収された後に煙突5より大気に放出される。排ガスエコノマイザ4では、排ガスの排熱によって熱媒体にエネルギーを与えるが、通常は水を用いて蒸気を発生させる。
図2に示すように、熱交換手段14は、喫水下船体12内の船底骨部材12aの上部に蓋12bを設けシールすることで機関冷却材が流れる流路14aを形成する。流路14aは、長手方向の船底中心線に対して左右対称に形成することが好ましい。また、機関冷却材を左右対称に流すことが好ましい。これらにより、船舶1の推進方向に対して摩擦抵抗の低減を左右等しくすることで、推進力及び推進方向を有効に得ることができる。
【0011】
図3に示すように、流体抵抗低減装置10は、経路手段13に機関冷却材を流通させる冷却材ポンプ15を備えており、冷却材ポンプ15によって、機関冷却材は熱機関11と熱交換手段14との間を循環する。流体抵抗低減装置10は、冷却材加熱器16を備えており、冷却材加熱器16によって少なくとも熱機関11の起動時において機関冷却材を加熱する。冷却材加熱器16は、開閉弁16aを有する導入配管と、開閉弁16bを有する導出配管とを復路経路手段13bに接続している。また、冷却材加熱器16に機関冷却材を導くために、復路経路手段13bには開閉弁16cが設けられている。開閉弁16a及び開閉弁16bを開、開閉弁16cを閉として、機関冷却材を冷却材加熱器16に導入して加熱することで、熱機関11の立ち上げ準備時間を短縮することができる。
また、図3に示すように、熱交換手段14への機関冷却材の導入を阻止する開閉弁14bを往路経路手段13aに、熱交換手段14からの機関冷却材の導出を阻止する開閉弁14cを往路経路手段13bに設けることが好ましい。そして、熱機関11の起動時からの所定時間は開閉弁14b及び開閉弁14cを閉とすることで、熱交換手段14による放熱開始を遅延させ、熱機関11の起動までの時間を短縮することができる。また、熱機関11の停止時からの所定時間は開閉弁14b及び開閉弁14cを開放した状態で冷却材ポンプ15を駆動して、熱交換手段14による放熱停止を遅延させることで、停止後の熱機関11の異常温度上昇を防止でき、停止後の熱機関の余熱を適切に処理することができる。
【0012】
また、図3に示すように、流体抵抗低減装置10は、熱機関11の出口における機関冷却材の温度を検出する第1の温度検出器17aを往路経路手段13aに、熱機関11の入口における機関冷却材の温度を検出する第2の温度検出器17bを復路経路手段13bに、温度調整弁13dの出口における機関冷却材の温度を検出する第3の温度検出器17cを復路経路手段13bにそれぞれ設けている。第1の温度検出器17a、第2の温度検出器17b、及び第3の温度検出器17cで機関冷却材の温度を検出することで、温度調整手段を制御して熱機関11に流入する機関冷却材の温度を調整することができる。温度調整弁13dは、温度調整手段の一つである。温度調整弁13dによってバイパス経路手段13cを流れる機関冷却材の流量比を調整することで、温度調整弁13dの出口における機関冷却材の温度を変更することができる。また本実施形態における開閉弁14b及び開閉弁14cも温度調整手段の一つである。開閉弁14b及び開閉弁14cの閉塞による熱交換手段14での放熱停止によっても熱機関11に流入する機関冷却材の温度を短時間で上昇させることができる。また本実施形態における冷却材加熱器16での加熱制御も温度調整手段の一つである。
【0013】
本実施形態によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた機関冷却材の熱を、船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することで、熱機関11の必要出力を減少させ省エネルギーが達成できる。また、液体状態にある機関冷却材を用いるため、熱容量、熱伝達率が高く、経路手段13、熱交換手段14が小径、コンパクトに構成できる。また、熱交換手段14への機関冷却材の供給を、船舶1の熱機関11に従来から設けられている配管やポンプ等の経路を利用することができる。また、排ガスの場合に生じる船体の傾き等による影響がなく、所望通りに船体を加熱することができる。
また本実施形態によれば、熱機関11を冷却する機関冷却材を熱交換手段14に導くことで、機関冷却材が例えば冷却水のような液体であるため熱交換効率が高く、また二次熱媒体を用いないために熱ロスやエネルギー消費を低減でき、間接熱交換のための熱交換器、タンク、ポンプ等を設ける必要が無いために、小型化でき設置スペースや価格の上で有利である。
また本実施形態によれば、熱機関11の冷却を熱交換手段14による放熱だけで処理することで、冷却用の海水を船底において取水及び排水しないため、シーチェストが無くせ船舶1の抵抗に影響を及ぼすことがない。
また本実施形態によれば、温度調整手段によって、熱機関11に流入する機関冷却材の温度を調整することで、熱機関11の温度を所定温度に維持しつつ、余剰熱を摩擦抵抗低減に利用することができる。また、温度調整手段を利用して、起動時の温度上昇を早め、又は停止時の余熱管理を有効に行うことができる。
【0014】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の他の実施形態について説明する。
図4は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図4は図1に対応する構成図であり、本実施形態においても図2及び図3にて説明した構成が適用される。
【0015】
図4に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、喫水下船体12に放熱する熱交換手段14として、第1の熱交換手段14dと、第2の熱交換手段14eと、第3の熱交換手段14fとを備えている。第1の熱交換手段14d、第2の熱交換手段14e、及び第3の熱交換手段14fは、それぞれ熱交換経路として独立した構成となっている。本実施形態における第1の熱交換手段14dは、第1の実施形態における熱交換手段14に相当し、往路経路手段13aと復路経路手段13bとが接続され、機関冷却材として冷却水が用いられる。
第2の熱交換手段14eは、熱機関11を冷却する機関冷却材として潤滑油を用いたもので、経路手段13は、熱機関11で吸熱した潤滑油を第2の熱交換手段14eに導く往路経路手段13eと、第2の熱交換手段14eで放熱した潤滑油を熱機関11に導く復路経路手段13fと、往路経路手段13eを流れる潤滑油の一部を復路経路手段13fにバイパスするバイパス経路手段13gと、バイパス経路手段13gを流れる潤滑油の流量比を調整する温度調整弁13hとより構成されている。
第3の熱交換手段14fは、排ガスエコノマイザ4で生成される蒸気を用いたもので、経路手段13は、排ガスエコノマイザ4で生成される蒸気を第3の熱交換手段14fに導く往路経路手段4aと、第3の熱交換手段14fで放熱し液化した液体を排ガスエコノマイザ4に導く復路経路手段4bとより構成されている。
本実施形態によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、第1の熱交換手段14dによって船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することができるとともに、第2の熱交換手段14eを用いて潤滑油により得られる排熱を併用し、又は第3の熱交換手段14fを用いて熱機関11の排ガスにより得られる排熱を併用することができ、熱機関11の必要出力を更に減少させることができる。
【0016】
(第3の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の他の実施形態について説明する。
図5は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図5は図1に対応する構成図であり、本実施形態においても図2及び図3にて説明した構成が適用される。
【0017】
図5に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、喫水下船体12に放熱する熱交換手段14は、第1の実施形態における熱交換手段14と同様に、往路経路手段13aと復路経路手段13bとが接続され、機関冷却材として冷却水が用いられる。
本実施形態では、往路経路手段13aに第1の二次熱交換器18aと第2の二次熱交換器18bを備えている。第1の二次熱交換器18aは、熱機関11で吸熱した潤滑油を導入する往路経路手段13iと、放熱した潤滑油を熱機関11に導出する復路経路手段13jとが接続されている。熱機関11を冷却する潤滑油(機関冷却材)の熱を第1の二次熱交換器18aに導く経路手段13は、往路経路手段13iと、復路経路手段13jと、往路経路手段13iを流れる潤滑油の一部を復路経路手段13jにバイパスするバイパス経路手段13kと、バイパス経路手段13kを流れる潤滑油の流量比を調整する温度調整弁13mとより構成されている。第2の二次熱交換器18bは、排ガスエコノマイザ4で生成される蒸気を導入する経路手段13としては往路経路手段4cと、放熱し液化した液体を排ガスエコノマイザ4に導出する復路経路手段4dとが接続され、往路経路手段4cと復路経路手段4dとは経路手段13を構成している。
【0018】
本実施形態によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、熱交換手段14によって船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することができるとともに、第1の二次熱交換器18aを用いて潤滑油により得られる排熱を併用し、又は第2の二次熱交換器18bを用いて熱機関11の排ガスにより得られる排熱を併用することができ、熱機関11の必要出力を更に減少させることができる。
本実施形態のように、第1の二次熱交換器18aと第2の二次熱交換器18bとを用いて潤滑油及び蒸気の熱を往路経路手段13aに流れる冷却水に与えることで、熱交換手段14を第2の実施形態のように分割する必要がなく、第1の実施形態と比較すると、熱交換手段14での放熱量を増加させることができる。また、熱交換手段14の機関冷却材が流れる流路が1種類で済み、熱交換手段14の構成が簡素化できる。
なお、潤滑油の温度よりも蒸気温度が高いため、第1の二次熱交換器18aと第2の二次熱交換器18bとを同時に利用する場合には、第1の二次熱交換器18aよりも第2の二次熱交換器18bを往路経路手段13aの下流側に設けることが好ましいが、第1の二次熱交換器18aと第2の二次熱交換器18bとを選択的に利用する場合には、第1の二次熱交換器18aを第2の二次熱交換器18bよりも下流側に設けてもよい。
また、潤滑油の温度が冷却水の温度よりも低い場合は、復路経路手段13bに第1の二次熱交換器18aを設けてもよい。また、排ガスエコノマイザ4で作られた蒸気を他の用途にも利用した後、液化した液体を導く場合も温度によっては、第2の二次熱交換器18bを復路経路手段13bに設けてもよい。
【0019】
(第4の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の他の実施形態について説明する。
図6は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図6は図1に対応する構成図であり、本実施形態においても図2及び図3にて説明した構成が適用される。
【0020】
図6に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、第2の実施形態と同様に、喫水下船体12に放熱する熱交換手段14として、第1の熱交換手段14dと、第2の熱交換手段14eと、第3の熱交換手段14fとを備えている。第1の熱交換手段14d、第2の熱交換手段14e、及び第3の熱交換手段14fは、それぞれ熱交換経路として独立した構成となっている。本実施形態における第1の熱交換手段14dは、第1の実施形態における熱交換手段14に相当し、往路経路手段13aと復路経路手段13bとが接続され、機関冷却材として冷却水が用いられる。
第2の熱交換手段14eは、熱機関11を冷却する機関冷却材として潤滑油を用いたもので、経路手段13は、熱機関11で吸熱した潤滑油を第2の熱交換手段14eに導く往路経路手段13eと、第2の熱交換手段14eで放熱した潤滑油を熱機関11に導く復路経路手段13fと、往路経路手段13eを流れる潤滑油の一部を復路経路手段13fにバイパスするバイパス経路手段13gと、バイパス経路手段13gを流れる潤滑油の流量比を調整する温度調整弁13hとより構成されている。
第3の熱交換手段14fは、熱機関11から排出される排ガスの排熱を用いたもので、経路手段13は、排気経路3からの経路分岐手段3aと、経路分岐手段3aから分岐させた排ガスを第3の熱交換手段14fに導く往路経路手段3bと、第3の熱交換手段14fで放熱した排ガスを煙突5に導く復路経路手段3cとより構成されている。
本実施形態によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、第1の熱交換手段14dによって船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することができるとともに、第2の熱交換手段14eを用いて潤滑油により得られる排熱を併用し、又は第3の熱交換手段14fを用いて熱機関11の排ガスの熱を併用することができ、熱機関11の必要出力を更に減少させることができる。
なお、熱機関11から排出される排ガスは下方に導かれるが、その全量でなく分岐させた排ガスの一部が導かれる結果、排気抵抗や主機関の効率、排ガス特性に悪影響を及ぼさない範囲での制御が可能となっている。
【0021】
(第5の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の他の実施形態について説明する。
図7は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図7は図1に対応する構成図であり、本実施形態においても図2及び図3にて説明した構成が適用される。
【0022】
図7に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、喫水下船体12に放熱する熱交換手段14は、第1及び第3の実施形態における熱交換手段14と同様に、往路経路手段13aと復路経路手段13bとが接続され、機関冷却材として冷却水が用いられる。
本実施形態では、往路経路手段13aに第1の二次熱交換器18aと第3の二次熱交換器18cを備えている。第1の二次熱交換器18aは、第3の実施形態と同様に、熱機関11で吸熱した潤滑油(機関冷却材)を導入する往路経路手段13iと、放熱した潤滑油を熱機関11に導出する復路経路手段13jとが接続されている。熱機関11の潤滑油の熱を第1の二次熱交換器18aに導く経路手段13は、往路経路手段13iと、復路経路手段13jと、往路経路手段13iを流れる潤滑油の一部を復路経路手段13jにバイパスするバイパス経路手段13kと、バイパス経路手段13kを流れる潤滑油の流量比を調整する温度調整弁13mとより構成されている。
第3の二次熱交換器18cは、熱機関11から排出される排ガスの排熱を用いたもので、経路手段13は、排気経路3からの経路分岐手段3aと、経路分岐手段3aから分岐させた排ガスを第3の二次熱交換器18cに導く往路経路手段3bと、第3の二次熱交換器18cで放熱した排ガスを煙突5に導く復路経路手段3cとより構成されている。
【0023】
本実施形態によれば、排ガスと比較すると低温であり、従来利用が限られていた冷却水の熱を、熱交換手段14によって船体が受ける摩擦抵抗を低減することに利用することができるとともに、第1の二次熱交換器18aを用いて潤滑油により得られる排熱を併用し、又は第3の二次熱交換器18cを用いて熱機関11の排ガスにより得られる排熱を併用することができ、熱機関11の必要出力を更に減少させることができる。
本実施形態のように、第1の二次熱交換器18aと第3の二次熱交換器18cとを用いて潤滑油及び排ガスの熱を往路経路手段13aに流れる冷却水に与えることで、熱交換手段14を第2の実施形態のように分割する必要がなく、第1の実施形態と比較すると、熱交換手段14での放熱量を増加させることができる。
なお、潤滑油の温度よりも排ガス温度が高いため、第1の二次熱交換器18aと第3の二次熱交換器18cとを同時に利用する場合には、第1の二次熱交換器18aよりも第3の二次熱交換器18cを往路経路手段13aの下流側に設けることが好ましいが、第1の二次熱交換器18aと第3の二次熱交換器18cとを選択的に利用する場合には、第1の二次熱交換器18aを第3の二次熱交換器18cよりも下流側に設けてもよい。
また、潤滑油の温度が冷却水の温度よりも低い場合は、復路経路手段13bに第1の二次熱交換器18aを設けてもよい。
【0024】
(第6の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置の他の実施形態について説明する。
図8は本実施形態による流体抵抗低減装置の配管経路を示す図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図8は図3に対応する構成図であり、本実施形態は、第1の実施形態から第5の実施形態に適用できる。
【0025】
図8に示すように、流体抵抗低減装置10は、熱交換手段14に並列に予備冷却器6を備えている。予備冷却器6には、熱機関11で吸熱した機関冷却材を導入する往路経路手段6aと、放熱した機関冷却材を復路経路手段13bに導出する復路経路手段6bとが接続されている。往路経路手段6aは、開閉弁6cを介して往路経路手段13aに接続され、復路経路手段6bは、開閉弁6dを介して温度調整弁13dの流出側の復路経路手段13bに接続されている。バイパス経路手段6eは、往路経路手段6aを流れる機関冷却材の一部を復路経路手段6bにバイパスし、温度調整弁6fはバイパス経路手段6eを流れる機関冷却材の流量比を調整する。
予備冷却器6は、海水ポンプ6gによって、取水シーチェスト6hから海水を導入し、熱交換後に海水を導出する。予備冷却器6から導出された海水は、排水シーチェスト6iから排出される。
本実施形態のように、熱機関11で吸熱した機関冷却材の熱をすべて熱交換手段14に用いることなく、機関冷却材の熱の一部を予備冷却器6によって排出してもよい。
【0026】
以下に、本発明の実施形態における流体抵抗低減装置の制御方法について説明する。
図9は同流体抵抗低減装置の第1の制御方法による制御ブロック図である。
図9に示す制御ブロック図は図3に示す構成を機能実現手段として備えており、同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。
【0027】
流体抵抗低減装置10は、運転設定器10aによって第1の温度検出器17a、第2の温度検出器17b、及び第3の温度検出器17cでの設定温度と、検出温度による制御を設定する。運転設定器10aは、状態表示器10bを備えている。
まず、運転設定器10aによって、主機関11及び流体抵抗低減装置10の運転開始が設定され、この設定に基づいて主機関11及び流体抵抗低減装置10が始動する。
第1の温度検出器17aが第1の設定温度(例えば60℃ )より低いことを検出することで、冷却材加熱器16を運転する。冷却材加熱器16の運転によって、早期に主機関11を始動温度に到達させることができる。
第1の温度検出器17aの検出温度が第1の設定温度より低い運転開始前初期状態では、開閉弁16a、開閉弁16b、及び開閉弁16cで構成される経路切替弁は、冷却材加熱器16を通過させる経路を選択しており、冷却材ポンプ15も運転を開始する。温度調整弁13dはバイパス経路手段13cだけに機関冷却材(冷却水、潤滑油等)が流れるように設定される。
第1の温度検出器17aで検出される温度が第1の設定温度(例えば60℃)に達したら、主機関11を実始動する。
第2の温度検出器17bの温度が設定温度(例えば75℃)に達したら、経路切替弁16a、16b、16cの切り替えによって冷却材加熱器16への機関冷却材の流入を停止し、冷却材ポンプ15から直接熱機関11に機関冷却材を流入させる。このとき冷却材加熱器16の運転も停止する。
第3の温度検出器17cで検出される温度が設定温度(例えば80℃)に達したら、温度調整弁13dを調整して熱交換手段14にも機関冷却材を流しはじめる。
第3の温度検出器17cで検出される温度が設定温度(例えば80℃ )を維持できるように、温度調整弁13dで往路経路手段13aとバイパス経路手段13cの流量比を調整する。
航行中は主機関11の負荷により変わる排熱量を温度調整弁13dで流量比を調整して第3の温度検出器17cの設定温度(例えば80℃ )に維持しつつ放熱することができる。
また、運転設定器10aによって、主機関11及び流体抵抗低減装置10の運転停止が設定され、この設定に基づいて主機関11及び流体抵抗低減装置10が停止する。
第3の温度検出器17cで検出される温度は徐々に低下し、これに伴い温度調整弁13dが徐々に往路経路手段13aを絞るとともにバイパス経路手段13cを徐々に開放し、最後は往路経路手段13aを閉塞することで熱交換手段14での放熱を停止する。
第1の温度検出器17aで検出される温度が、第2の設定温度(例えば50℃)以下になったら冷却材ポンプ15を停止することで予熱対策を行うことができる。
なお、冷却材ポンプ15を停止する前に経路切替弁16a、16b、16cは冷却材加熱器16を機関冷却材が流れるように切り替えを行うが、冷却材加熱器16の運転は行わない。
自然冷却によって機関冷却材が冷却され、経路切替弁16a、16b、16cが冷却材加熱器16側の経路選択を維持し、温度調整弁13dがバイパス経路手段13cの選択を維持し、次の始動に備える。
【0028】
図10は同流体抵抗低減装置の第2の制御方法による制御ブロック図である。同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態は、図9の機能実現手段と比較して第3の温度検出器17cを備えていない。従って、温度調整弁13dは、第1の温度検出器17aと第2の温度検出器17bによる検出温度によって制御される。
【0029】
まず、運転設定器10aによって、主機関11及び流体抵抗低減装置10の運転開始が設定され、この設定に基づいて主機関11及び流体抵抗低減装置10が始動する。
第1の温度検出器17aが第1の設定温度(例えば60℃ )より低いことを検出することで、冷却材加熱器16を運転する。冷却材加熱器16の運転によって、早期に主機関11を始動温度に到達させることができる。
第1の温度検出器17aの検出温度が第1の設定温度より低い運転開始前初期状態では、開閉弁16a、開閉弁16b、及び開閉弁16cで構成される経路切替弁は、冷却材加熱器16を通過させる経路を選択しており、冷却材ポンプ15も運転を開始する。温度調整弁13dはバイパス経路手段13cだけに機関冷却材(冷却水、潤滑油等)が流れるように設定される。
第1の温度検出器17aで検出される温度が第1の設定温度(例えば60℃)に達したら、主機関11を実始動する。
第2の温度検出器17bの温度が第1の設定温度(例えば75℃)に達したら、経路切替弁16a、16b、16cの切り替えによって冷却材加熱器16への機関冷却材の流入を停止し、冷却材ポンプ15から直接熱機関11に機関冷却材を流入させる。このとき冷却材加熱器16の運転も停止する。
第2の温度検出器17bで検出される温度が第2の設定温度(例えば80℃)に達したら、温度調整弁13dを調整して熱交換手段14にも機関冷却材を流しはじめる。
第2の温度検出器17bで検出される温度が第2の設定温度を維持できるように、温度調整弁13dで往路経路手段13aとバイパス経路手段13cの流量比を調整する。
主機関11の負荷が増し、第1の温度検出器17aで検出される温度が第2の設定温度(例えば80℃)を越える状況が所定時間以上続く場合は、冷却材ポンプ15での出力を増加させることで機関冷却材の流量を増加する。負荷が下がり、第1の温度検出器17aで検出される温度が第2の設定温度を下回ったら、冷却材ポンプ15での出力を減少させることで機関冷却材の流量を減少する。
航行中は主機関11の負荷により変わる排熱量を温度調整弁13dで流量比を調整して第2の温度検出器17bの検出温度が第2の設定温度(例えば80℃ )を維持して放熱することができる。
また、運転設定器10aによって、主機関11及び流体抵抗低減装置10の運転停止が設定され、この設定に基づいて主機関11及び流体抵抗低減装置10が停止する。
第2の温度検出器17bで検出される温度は徐々に低下し、これに伴い温度調整弁13dが徐々に往路経路手段13aを絞るとともにバイパス経路手段13cを徐々に開放し、最後は往路経路手段13aを閉塞することで熱交換手段14での放熱を停止する。
第1の温度検出器17aで検出される温度が、第2の設定温度(例えば50℃)以下になったら冷却材ポンプ15を停止することで予熱対策を行うことができる。
なお、冷却材ポンプ15を停止する前に経路切替弁16a、16b、16cは冷却材加熱器16を機関冷却材が流れるように切り替えを行うが、冷却材加熱器16の運転は行わない。
自然冷却によって機関冷却材が冷却され、経路切替弁16a、16b、16cが冷却材加熱器16側の経路選択を維持し、温度調整弁13dがバイパス経路手段13cの選択を維持し、次の始動に備える。
【0030】
(第7の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ウォータージェット推進器に適用した場合の実施形態について説明する。
図11は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図、図12は同流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図11は図1に対応する構成図であり、本実施形態においても図3にて説明した構成が適用される。
【0031】
図11に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、船舶1を推進するウォータージェット推進器20と、船舶1に搭載される熱機関11と、熱機関11の排熱をウォータージェット推進器20のウォータージェットダクト21に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される排熱をウォータージェットダクト21の内壁に放熱する熱交換手段24とを備えている。本実施形態における熱機関11の排熱には、例えば冷却水のような機関冷却材を用いている。冷却水としては、純水の他、水に凍結防止剤などを添加した冷却液や液状の冷却剤を用いることができる。また、機関冷却材として潤滑油を用いてもよい。
経路手段13は、熱機関11で吸熱した機関冷却材を熱交換手段24に導く往路経路手段13aと、熱交換手段24で放熱した機関冷却材を熱機関11に導く復路経路手段13bと、往路経路手段13aを流れる機関冷却材の一部を復路経路手段13bにバイパスするバイパス経路手段13cと、バイパス経路手段13cを流れる機関冷却材の流量比を調整する温度調整弁13dとより構成されている。
ウォータージェット推進器20は、ウォータージェットダクト21内にインペラ22を備えている。ウォータージェットダクト21は、海水を導入する上流側ダクト部と、インペラ22が配置されるインペラダクト部と、海水を噴出する下流側ダクト部とより構成され、熱交換手段24は、上流側ダクト部と下流側ダクト部とに分割して配置されている。従って、バイパス経路手段13cよりも下流側に配置される往路経路手段13aと、バイパス経路手段13cよりも上流側に配置される復路経路手段13bとは、それぞれ2系統に分岐しており、上流側ダクト部と下流側ダクト部とに分割された熱交換手段24に接続
されている。
熱機関11から排出される排ガスは、排気経路3を通り、排ガスエコノマイザ4で排熱が回収された後に煙突5より大気に放出される。
【0032】
図12に示すように、熱交換手段24はウォータージェットダクト21の上流側ダクト部及び下流側ダクト部の外周に同心円状に筒状部材を配置することで二重管構造をしている。なお、熱交換手段24はウォータージェットダクト21に対する放熱量を増加させるために、外周面は断熱材で覆われていることが好ましい。
本実施形態によれば、熱機関11を冷却し廃棄処理していた排熱を、ウォータージェットダクト21で熱交換させて放熱を行うことにより、ウォータージェットダクト21の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ウォータージェットダクト21を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
【0033】
(第8の実施形態)
以下に、本実施形態による流体抵抗低減装置の他の形態について説明する。
図13は同流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図である。なお、本実施形態は、第7の実施形態における熱交換手段の他の形態であり、本実施形態においては図11にて説明した構成が適用される。
図13に示すように、熱交換手段24の内部にはウォータージェットダクト21の長手方向に仕切部24aを複数設けることで、機関冷却材の流通路を複数に分割している。仕切部24aは、ウォータージェットダクト21の外周面に等間隔に放射状に設けている。なお、図示の仕切部24aは、各通路を完全に分割しているが、ウォータージェットダクト21の外周面に接合され、外筒には接合されていないフィンによって構成してもよい。
本実施形態のように仕切部24aを設けることで、ウォータージェットダクト21での放熱量を増加させることができるとともに、熱交換手段24の強度を高めることができる。
【0034】
(第9の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ウォータージェット推進器に適用した場合の他の実施形態について説明する。
図14は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、上記実施形態と同一機能の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、本実施形態においても図12又は図13にて説明した構成が適用される。
【0035】
図14に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置10は、船舶1を推進するウォータージェット推進器20と、船舶1に搭載される熱機関11と、熱機関11の排熱(排ガス)をウォータージェット推進器20のウォータージェットダクト21に導く経路手段と、経路手段13を経て供給される排熱をウォータージェットダクト21の内壁に放熱する熱交換手段24とを備えている。
経路手段13は、排気経路3からの経路分岐手段3aと、経路分岐手段3aから分岐させた排ガスを熱交換手段24に導く往路経路手段3bと、熱交換手段24で放熱した排ガスを海水中に排出する排出経路手段3dとより構成されている。
ウォータージェット推進器20は、ウォータージェットダクト21内にインペラ22を備えている。ウォータージェットダクト21は、海水を導入する上流側ダクト部と、インペラ22が配置されるインペラダクト部と、海水を噴出する下流側ダクト部とより構成され、熱交換手段24は、上流側ダクト部と下流側ダクト部とに分割して配置されている。従って、往路経路手段3bと排出経路手段3dとは、それぞれ2系統に分岐しており、上流側ダクト部と下流側ダクト部とに分割された熱交換手段24に接続されている。
本実施形態によれば、熱機関11から排出される排ガスの熱を、ウォータージェットダクト21で熱交換させて放熱を行うことにより、ウォータージェットダクト21の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ウォータージェットダクト21を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
なお、ウォータージェット推進器を用いた船舶は、比較的小型の船舶であり、排ガスを直接海中に放出する形式のウォータージェット推進器もあるところから、排ガスの全量をウォータージェットダクトに導いても、排気抵抗や主機関の効率、排ガス特性に悪影響を及ぼさない。
【0036】
(第10の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ダクトプロペラ推進器に適用した場合の実施形態について説明する。
図15は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図、図16は同流体抵抗低減装置に用いる熱交換手段の概略断面図である。なお、図15では、船舶に搭載される熱機関、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段、排気経路、排ガスエコノマイザ、煙突などの構成についての説明を省略するが、これらの構成については、図1及び図3の構成が適用される。
【0037】
図15に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置は、船舶1を推進するダクトプロペラ推進器30と、船舶1に搭載される熱機関(図示せず)と、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器30のダクト部31に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される排熱をダクト部31に放熱する熱交換手段34とを備えている。本実施形態における熱機関の排熱には、例えば冷却水のような機関冷却材を用いている。冷却水としては、純水の他、水に凍結防止剤などを添加した冷却液や液状の冷却剤を用いることができる。また、機関冷却材として潤滑油を用いてもよい。
経路手段13は、熱機関で吸熱した機関冷却材を熱交換器34に導く往路経路手段13aと、熱交換器34で放熱した機関冷却材を熱機関に導く復路経路手段13bと、往路経路手段13aを流れる機関冷却材の一部を復路経路手段13bにバイパスするバイパス経路手段(図示せず)と、バイパス経路手段を流れる機関冷却材の流量比を調整する温度調整弁(図示せず)とより構成されている。
ダクトプロペラ推進器30は、ダクト部31と、ダクト部31内に配置されるプロペラ32と、ダクト部31を船体に接続する柱部33とを備えている。ダクト部31は、筒状部材によって構成され、熱交換手段34はこの筒状部材の内周側に配置されている。また、往路経路手段13aと復路経路手段13bとは、柱部33内に配置されている。
図16に示すように、熱交換手段34は、ダクト部31の内周側に配置され、内部にリング状フィンを形成している。
本実施形態によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部31の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。なお、リング状フィンは螺旋状フィンとして構成してもよい。
【0038】
(第11の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ダクトプロペラ推進器に適用した場合の他の実施形態について説明する。
図17は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、図17では、船舶に搭載される熱機関、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段、排気経路、排ガスエコノマイザ、煙突などの構成についての説明を省略するが、これらの構成については、図1及び図3の構成が適用される。また、熱交換手段については図16の構成が適用される。
【0039】
図17に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置は、船舶1を推進するダクトプロペラ推進器30と、船舶1に搭載される熱機関(図示せず)と、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器30のダクト部31に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される排熱をダクト部31に放熱する熱交換手段34とを備えている。本実施形態における熱機関の排熱には、例えば冷却水のような機関冷却材を用いている。冷却水としては、純水の他、水に凍結防止剤などを添加した冷却液や液状の冷却剤を用いることができる。また、機関冷却材として潤滑油を用いてもよい。
経路手段13は、熱機関で吸熱した機関冷却材を熱交換器34に導く往路経路手段13aと、熱交換器34で放熱した機関冷却材を熱機関に導く復路経路手段13bと、往路経路手段13aを流れる機関冷却材の一部を復路経路手段13bにバイパスするバイパス経路手段(図示せず)と、バイパス経路手段を流れる機関冷却材の流量比を調整する温度調整弁(図示せず)とより構成されている。
ダクトプロペラ推進器30は、ダクト部31と、ダクト部31内に配置されるプロペラ32とを備え、ダクト部31は船舶1の船体に接続されている。ダクト部31は、筒状部材によって構成され、熱交換手段34はこの筒状部材の内周側に配置されている。
本実施形態によれば、熱機関を冷却し廃棄処理していた排熱を、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部31の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
【0040】
(第12の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ダクトプロペラ推進器に適用した場合の他の実施形態について説明する。
図18は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、図18では、船舶に搭載される熱機関、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段、排ガスエコノマイザ、煙突などの構成についての説明を省略するが、これらの構成については、図1の構成が適用される。また、熱交換手段については図16の構成が適用される。
【0041】
図18に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置は、船舶1を推進するダクトプロペラ推進器30と、船舶1に搭載される熱機関(図示せず)と、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器30のダクト部31に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される排熱をダクト部31に放熱する熱交換手段34とを備えている。本実施形態における熱機関の排熱には、熱機関の排ガスを用いている。
経路手段13は、排気経路からの経路分岐手段(図示せず)と、経路分岐手段から分岐させた排ガスを熱交換手段34に導く往路経路手段3bと、熱交換手段34で放熱した排ガスを煙突(図示せず)に導く復路経路手段3cとより構成されている。
ダクトプロペラ推進器30は、ダクト部31と、ダクト部31内に配置されるプロペラ32とを備え、ダクト部31は船舶1の船体に接続されている。ダクト部31は、筒状部材によって構成され、熱交換手段34はこの筒状部材の内周側に配置されている。
本実施形態によれば、熱機関から排出される排ガスの熱を、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部31の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
なお、ダクトプロペラ推進器を用いた船舶は、比較的小型の船舶であり、排ガスのドラフト効果も少ないところから、例え排ガスの全量をウォータージェットダクトに導いても、排気抵抗や主機関の効率、排ガス特性に悪影響を及ぼさない。
【0042】
(第13の実施形態)
以下に、本発明の流体抵抗低減装置を、ダクトプロペラ推進器に適用した場合の他の実施形態について説明する。
図19は本実施形態による流体抵抗低減装置の概略構成図である。なお、図19では、船舶に搭載される熱機関、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段、排ガスエコノマイザ、煙突などの構成についての説明を省略するが、これらの構成については、図1の構成が適用される。また、熱交換手段については基本的に図16の構成が適用される。
【0043】
図19に示すように、本実施形態による流体抵抗低減装置は、船舶1を推進するダクトプロペラ推進器30と、船舶1に搭載される熱機関(図示せず)と、熱機関の排熱をダクトプロペラ推進器30のダクト部31に導く経路手段13と、経路手段13を経て供給される排熱をダクト部31に放熱する熱交換手段34とを備えている。本実施形態における熱機関の排熱には、熱機関の排ガスを用いている。
経路手段13は、排気経路からの経路分岐手段(図示せず)と、経路分岐手段から分岐させた排ガスを熱交換手段34に導く往路経路手段3bと、熱交換手段34で放熱した排ガスを海水中に排出する排出経路手段3dとより構成されている。
ダクトプロペラ推進器30は、ダクト部31と、ダクト部31内に配置されるプロペラ32とを備え、ダクト部31は船舶1の船体に接続されている。ダクト部31は、筒状部材によって構成され、熱交換手段34はこの筒状部材の内周側に配置されている。
本実施形態によれば、熱機関から排出される排ガスの熱を、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31で熱交換させて放熱を行うことにより、ダクト部31の摩擦抵抗を低減させることができ、推進効率が向上できる。また、船体の加熱でなく、ダクトプロペラ推進器30のダクト部31を加熱するため、船体の傾き時における操縦性への影響も無い。
【0044】
以上の各実施形態における熱機関11としては、ディーゼルエンジンのような内燃機関があるが、ボイラーでの燃焼による蒸気を利用する蒸気タービンがある。熱機関11の排ガスは、内燃機関の場合には燃焼によって生じる排ガスであるが、蒸気タービンの場合にはボイラーでの燃焼によって生じる排ガスとタービン通過後の蒸気ガスである。従って、蒸気タービンの場合には、タービン通過後の蒸気ガスを利用することもできる。一般的には、蒸気タービン船では、タービン通過後の蒸気ガスは復水器で海水により冷却されるため、この復水器の代わりに各実施の形態における熱交換器を用いることができる。
また、熱機関の排熱として熱機関に過給機を用いる場合、この過給機の圧縮空気の排熱も含むものとする。この場合の、機関冷却材としては空気あるいはインタークーラー等を介し空気と熱交換される各種熱媒体が相当する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、船体が受ける摩擦抵抗の低減に利用でき、特に熱機関の排熱を海水に放出している船舶に適している。
【符号の説明】
【0046】
10 流体抵抗低減装置
11 熱機関
12 喫水下船体
13 経路手段
14 熱交換手段
16 冷却材加熱器
20 ウォータージェット推進器
21 ウォータージェットダクト
24 熱交換手段
30 ダクトプロペラ推進器
31 ダクト部
34 熱交換手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載される熱機関と、前記熱機関を冷却する機関冷却材と、前記機関冷却材の熱を前記船舶の喫水下船体に導く経路手段と、前記経路手段を経て供給される前記熱を前記喫水下船体に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする流体抵抗低減装置。
【請求項2】
船舶を推進するウォータージェット推進器と、前記船舶に搭載される熱機関と、前記熱機関の排熱を前記ウォータージェット推進器のウォータージェットダクトに導く経路手段と、前記経路手段を経て供給される前記排熱を前記ウォータージェットダクトの内壁に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする流体抵抗低減装置。
【請求項3】
船舶を推進するダクトプロペラ推進器と、前記船舶に搭載される熱機関と、前記熱機関の排熱を前記ダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段と、前記経路手段を経て供給される前記排熱を前記ダクト部に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする流体抵抗低減装置。
【請求項4】
前記排熱として、前記熱機関を冷却する機関冷却材による熱を用いたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の流体抵抗低減装置。
【請求項5】
前記機関冷却材を前記熱交換手段に導くことを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の流体抵抗低減装置。
【請求項6】
前記熱機関の冷却を前記熱交換手段による放熱だけで処理することを特徴とする請求項1、請求項4、及び請求項5のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【請求項7】
前記熱機関の起動時には前記熱交換手段による放熱開始を遅延させ、及び/又は前記熱機関の停止時には前記熱交換手段による放熱停止を遅延させたことを特徴とする請求項1、請求項4、請求項5、及び請求項6のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【請求項8】
前記熱機関に流入する前記機関冷却材の温度を調整する温度調整手段を有したことを特徴とする請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、及び請求項7のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【請求項9】
前記温度調整手段が冷却材加熱器であり、少なくとも前記熱機関の起動時において前記冷却材加熱器によって前記機関冷却材を加熱することを特徴とする請求項8に記載の流体抵抗低減装置。
【請求項10】
前記機関冷却材を冷却水としたことを特徴とする請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、及び請求項9のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【請求項11】
前記機関冷却材を潤滑油としたことを特徴とする請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、及び請求項9のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【請求項12】
前記排熱として、前記熱機関の排ガスにより得られる熱を用いたことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【請求項1】
船舶に搭載される熱機関と、前記熱機関を冷却する機関冷却材と、前記機関冷却材の熱を前記船舶の喫水下船体に導く経路手段と、前記経路手段を経て供給される前記熱を前記喫水下船体に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする流体抵抗低減装置。
【請求項2】
船舶を推進するウォータージェット推進器と、前記船舶に搭載される熱機関と、前記熱機関の排熱を前記ウォータージェット推進器のウォータージェットダクトに導く経路手段と、前記経路手段を経て供給される前記排熱を前記ウォータージェットダクトの内壁に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする流体抵抗低減装置。
【請求項3】
船舶を推進するダクトプロペラ推進器と、前記船舶に搭載される熱機関と、前記熱機関の排熱を前記ダクトプロペラ推進器のダクト部に導く経路手段と、前記経路手段を経て供給される前記排熱を前記ダクト部に放熱する熱交換手段とを備えたことを特徴とする流体抵抗低減装置。
【請求項4】
前記排熱として、前記熱機関を冷却する機関冷却材による熱を用いたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の流体抵抗低減装置。
【請求項5】
前記機関冷却材を前記熱交換手段に導くことを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の流体抵抗低減装置。
【請求項6】
前記熱機関の冷却を前記熱交換手段による放熱だけで処理することを特徴とする請求項1、請求項4、及び請求項5のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【請求項7】
前記熱機関の起動時には前記熱交換手段による放熱開始を遅延させ、及び/又は前記熱機関の停止時には前記熱交換手段による放熱停止を遅延させたことを特徴とする請求項1、請求項4、請求項5、及び請求項6のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【請求項8】
前記熱機関に流入する前記機関冷却材の温度を調整する温度調整手段を有したことを特徴とする請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、及び請求項7のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【請求項9】
前記温度調整手段が冷却材加熱器であり、少なくとも前記熱機関の起動時において前記冷却材加熱器によって前記機関冷却材を加熱することを特徴とする請求項8に記載の流体抵抗低減装置。
【請求項10】
前記機関冷却材を冷却水としたことを特徴とする請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、及び請求項9のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【請求項11】
前記機関冷却材を潤滑油としたことを特徴とする請求項1、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8、及び請求項9のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【請求項12】
前記排熱として、前記熱機関の排ガスにより得られる熱を用いたことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の流体抵抗低減装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−63166(P2011−63166A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217088(P2009−217088)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【出願人】(502098178)社団法人日本中小型造船工業会 (3)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【出願人】(502098178)社団法人日本中小型造船工業会 (3)
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