説明

流体注入システム

【課題】着衣をはだけることなく流体注入装置を操作する。
【解決手段】人体に装着され人体に流体を注入する流体注入装置3と、人体の手首に装着され流体注入装置3を遠隔操作する操作装置2と、を備え、操作装置2は、流体注入装置3に対する操作指令の入力を受け付ける入力受付部222と、操作指令を流体注入装置3へ送信する第一通信部221と、を有し、流体注入装置3は、操作指令を受信する第二通信部321と、流体を貯留する流体貯留部331と、操作指令に基づいて、流体貯留部331から流体を輸送して人体に注入する流体輸送部332と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に流体を注入する流体注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、人体に装着され、人体に流体を注入する流体注入装置に関する技術がある。この流体注入装置によれば、必要に応じて流体を人体に手軽に注入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−138775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、流体の注入を開始させ又は停止させる等の操作を行うために、着衣をはだけて流体注入装置を露出させる必要があった。すなわち、外出中に流体注入装置を操作するときには、人前で着衣をはだける必要があり、装着者にとって人目が気になる等精神的に苦痛であるという課題がある。
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、着衣をはだけることなく流体注入装置を操作することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための主たる発明は、
人体に装着され前記人体に流体を注入する流体注入装置と、前記人体の手首に装着され前記流体注入装置を遠隔操作する操作装置と、を備え、
前記操作装置は、
前記流体注入装置に対する操作指令の入力を受け付ける入力受付部と、
前記操作指令を前記流体注入装置へ送信する第一通信部と、を有し、
前記流体注入装置は、
前記操作指令を受信する第二通信部と、
前記流体を貯留する流体貯留部と、
前記操作指令に基づいて、前記流体貯留部から前記流体を輸送して人体に注入する流体輸送部と、を有することを特徴とする流体注入システムである。
【0006】
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】流体注入システム1を人体に装着した状態を示す図である。
【図2】流体注入システム1の機能を示すブロック構成図である。
【図3】流体注入システム1が薬液を注入するために実行する処理手順を示すフロー図である。
【図4】ある糖尿病患者が必要とするインスリンの注入量を時間軸において示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0009】
即ち、人体に装着され前記人体に流体を注入する流体注入装置と、前記人体の手首に装着され前記流体注入装置を遠隔操作する操作装置と、を備え、
前記操作装置は、
前記流体注入装置に対する操作指令の入力を受け付ける入力受付部と、
前記操作指令を前記流体注入装置へ送信する第一通信部と、を有し、
前記流体注入装置は、
前記操作指令を受信する第二通信部と、
前記流体を貯留する流体貯留部と、
前記操作指令に基づいて、前記流体貯留部から前記流体を輸送して人体に注入する流体輸送部と、を有することを特徴とする流体注入システムである。
このような流体注入システムによれば、流体注入システムの装着者が着衣をはだけることなく流体注入装置を操作することができる。
【0010】
かかる流体注入システムであって、
前記操作装置は、
前記人体の生体情報を検出する生体情報検出部と、
前記生体情報に基づいて、前記流体注入装置が注入する流体流量を算出する生体情報流量算出部と、を備え、
前記第一通信部は、前記生体情報流量算出部が算出した流体流量のデータを前記流体注入装置へ送信し、
前記第二通信部は、前記生体情報流量算出部が算出した流体流量のデータを受信し、
前記流体輸送部は、前記生体情報流量算出部が算出した流体流量のデータに基づいて、前記流体貯留部から前記流体を輸送して人体に注入することを特徴とする流体注入システムである。
このような流体注入システムによれば、生体情報に基づいて流体の輸送量を算出することができ、もって装着者に対して適切な量の流体を注入することができる。
【0011】
かかる流体注入システムであって、
前記操作装置は、
前記操作装置の加速度を検出する加速度検出部と、
前記加速度に基づいて、流体流量を算出する加速度流量算出部と、を備え、
前記第一通信部は、前記加速度流量算出部が算出した流体流量のデータを前記流体注入装置へ送信し、
前記第二通信部は、前記加速度流量算出部が算出した流体流量のデータを受信し、
前記流体輸送部は、前記加速度流量算出部が算出した流体流量のデータに基づいて、前記流体貯留部から前記流体を輸送して人体に注入することを特徴とする流体注入システムである。
このような流体注入システムによれば、装着者の運動状況に基づいて流体の輸送量を算出することができ、もって装着者に対して適切な量の流体を注入することができる。
【0012】
かかる流体注入システムであって、
前記流体注入装置は、
前記流体輸送部を制御するコントローラーと、
前記コントローラーを監視する第二監視部と、を備え、
前記操作装置は、
前記コントローラーを監視する第一監視部と、
前記第一監視部又は前記第二監視部が、前記コントローラーの異常を検知したときに、警告を発信する警告発信部と、
を備えることを特徴とする流体注入システムである。
このような流体注入システムによれば、流体注入装置のコントローラーに異常があれば、装着者にその異常を迅速に知らせることができ、使用上の安全性を高めることができる。
【0013】
かかる流体注入システムであって、
前記流体注入装置は、前記流体輸送部が輸送した流体流量を計測する輸送量計測部を備え、
前記操作装置は、
前記操作指令と前記流体流量のデータとに基づいて、前記流体輸送部に異常があるかないかを判定するポンプ異常判定部と、
前記ポンプ異常判定部が異常ありと判定したときに、アラームを発信するアラーム発信部と、を備えることを特徴とする流体注入システムである。
このような流体注入システムによれば、流体注入装置の流体輸送部に異常があれば、装着者にその異常を迅速に知らせることができ、使用上の安全性を高めることができる。
【0014】
かかる流体注入システムであって、
前記操作装置は、
前記輸送量計測部が計測した前記流体の輸送量と前記流体貯留部に当初貯留された前記流体の量に基づいて、前記流体貯留部における前記流体の残量を算出する残量算出部と、
前記残量算出部が算出した残量を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする流体注入システムである。
このような流体注入システムによれば、着衣をはだけることなく気軽に流体の残量を確認することができる。
【0015】
かかる流体注入システムであって、
前記流体は、前記人体の血糖値を低下させる薬液であり、
前記流体注入装置は、前記人体の血糖値を検出する血糖値検出部を備え、
前記操作装置は、前記血糖値が所定値未満であるときは低血糖であると判定し、前記流体注入装置へ前記流体の注入を停止する操作指令を、前記第一通信部を介して前記流体注入装置へ送信する前記血糖値判定部を備えることを特徴とする流体注入システムである。
このような流体注入システムによれば、装着者が低血糖となった場合でも薬液の注入を停止することができ、もって安全に使用できる。
【0016】
かかる流体注入システムであって、
前記血糖値判定部は、前記血糖値が所定値以上となったときは高血糖であると判定し、前記流体注入装置へ前記流体の注入量を増加する操作指令を、前記第一通信部を介して前記流体注入装置へ送信することを特徴とする流体注入システムである。
このような流体注入システムによれば、装着者が高血糖となった場合でも薬液の注入量を増加させることができ、もって安全に使用できる。
【0017】
===第1実施形態===
第1実施形態では、流体注入システム1を用いて糖尿病患者にインスリンを投与する場合について説明する。
【0018】
図1は、流体注入システム1を人体に装着した状態を示す図である。同図に示すように、流体注入システム1は操作装置2と流体注入装置3とを備え、操作装置2は手首に装着し、流体注入装置3は胴部に装着して用いる。具体的には、流体注入装置3にはインスリンが格納されており、食前に投薬開始の操作指令を操作装置2に入力すると、インスリンが流体注入装置3から人体へ注入される。
【0019】
<<流体注入システム1の構成>>
図2は、流体注入システム1の機能を示すブロック構成図である。操作装置2は、第一通信部221、入力受付部222、表示部223、加速度流量算出部231、生体情報流量算出部232、生体情報判定部233、血糖値判定部234、アラーム発信部235、第一監視部236、警告発信部237、ポンプ異常判定部238、計時部239、加速度検出部241、生体情報検出部242、電池判定部251、残量算出部252を備える。流体注入装置3は、第二通信部321、停止入力部322、流体貯留部331、流体輸送部332、第二監視部336を備える。なお、操作装置2は、操作装置2に設けられた第一コントローラー(不図示)によって、流体注入装置3は、流体注入装置3に設けられた第二コントローラー(不図示)によって、それぞれ制御される。
【0020】
第一通信部221は、流体注入装置3との無線通信及び外部のコンピューター100との無線通信を行う。
入力受付部222は、例えば操作ボタンなどであって、流体注入システム1を使用する患者からインスリンの投薬開始及び投薬中止の操作指令を受け付ける。
【0021】
加速度検出部241は、例えばジャイロセンサーであって、加速度を検出する。加速度流量算出部231は、加速度検出部241が検出した加速度に基づいて、装着者がエネルギーを多量に消費する運動(以下、「高活動」という)を行っているかどうかを判定する。そして、装着者が高活動を行っている場合にはその運動強度を判定し、運動強度に基づいてインスリンの注入量を算出する。すなわち、運動強度が強ければインスリンの注入量は少なくし、運動強度が弱ければインスリンの注入量は多くする。
【0022】
生体情報検出部242は、脈拍、血圧、体温などの生体情報を検出する。生体情報流量算出部232は、生体情報検出部242が検出した生体情報に基づいて、装着者が高活動を行っているかどうかを判定する。具体的には、脈拍、血圧、体温などが上昇した場合には高活動をはじめたと判定する。そして、装着者が高活動を行っている場合には、生体情報に基づいてその運動強度を判定し、運動強度に基づいてインスリンの注入量を算出する。すなわち、運動強度が強ければインスリンの注入量は少なくし、運動強度が弱ければインスリンの注入量は多くする。
【0023】
また、生体情報判定部233は、生体情報検出部242が検出した生体情報に基づいて、装着者の体調に異常があるかないかを判定する。すなわち、この判定は、脈拍と血圧と体温などがそれぞれ装着者の正常とみなせる下限値以上であるか否かによって行う。例えば、脈拍と血圧と体温などが下限値を下回った場合には、低血糖などの異常が体内で発生しているリスクがあり、このような異常の有無を判定する。
【0024】
血糖値判定部234は、後述する血糖値検出部344が検出した血糖値に基づいて、装着者が低血糖に陥っているかいないかを判定する。すなわち、この判定は、血糖値が装着者の通常の値の範囲以下であるか否かによって行う。
【0025】
アラーム発信部235は、加速度流量算出部231又は生体情報流量算出部232が装着者が高活動を行っている判定したとき、生体情報判定部233が装着者の身体に異常があると判定したとき、血糖値判定部234が低血糖であると判定したときに、それぞれアラーム音又は振動を発生させる。なお、アラーム発信部235は、各判定に対応したアラーム音又は振動を発信することとしてもよい。
【0026】
第一監視部236は、流体注入装置3を制御するコントローラー(不図示)が正常に作動しているかを監視する。具体的には、所定時間間隔で第一監視部236から流体注入装置3の第二コントローラーへ信号を送信し、その送信に対して第二コントローラーから第一監視部236へ返信があるか否かに基づいて、第二コントローラーが正常に作動しているか否かを判定する。このようにして、第一監視部236は第二コントローラーを監視する。
【0027】
警告発信部237は、第一監視部236が第二コントローラーに異常があると判定したときに、警告音又は振動を発生させる。また、後述する第二監視部336が第二コントローラーに異常があると判定したときにも、警告音又は振動を発生させる。なお、この警告音又は振動は、上述のアラーム音又は振動よりも激しいものであって、装着者に強く注意喚起するものである。
【0028】
ポンプ異常判定部238は、流体注入装置3の流体輸送部332に異常があるか否かを判定する。具体的には、入力受付部222が受けた操作指令と後述する輸送量計測部345が計測したインスリンの輸送量とが対応しているか否かに基づいて、流体輸送部332に異常があるか否かを判定する。
【0029】
計時部239は、時刻を計時する。
電池判定部251は、操作装置2及び流体注入装置3の電池残量が十分であるかどうかを判定する。
残量算出部252は、後述の輸送量計測部345が計測したインスリンの輸送量と後述の流体貯留部331に当初貯留されたインスリンの量に基づいて、流体貯留部331に貯留されたインスリンの残量を算出する。
【0030】
第二通信部321は、操作装置2との無線通信を行う。
停止入力部322は、流体注入装置3の作動を停止する停止ボタンである。この停止ボタンには蓋(不図示)が設けられ、停止ボタンを保護し、誤って押してしまうことを防止する。
流体貯留部331は、例えばタンクであり、内部にインスリンを貯留する。
流体輸送部332は、流体を輸送するポンプとチューブを有し、インスリンを流体貯留部331から装着者の体内へ輸送する。
【0031】
第二監視部336は、第二コントローラーとは別個独立の制御部であって、流体注入装置3の第二コントローラーとの間で定期的に通信を行い、第二コントローラーが正常に作動しているか否かを判定する。そして、第二コントローラーが正常に作動していないと判定したときは第一コントローラーに第二コントローラーが正常に作動していないとの情報を送信する。
【0032】
血糖値検出部344は、装着者の血糖値を定期的に検出する。血糖値検出部344が検出した血糖値は、第二通信部321を介して、操作装置2に送信される。
輸送量計測部345は、流体貯留部331から装着者の人体へ注入されたインスリンの輸送量を計測する。輸送量計測部345が計測したインスリンの輸送量は、第二通信部321を介して、操作装置2に送信される。
【0033】
表示部223は、例えば液晶ディスプレイであって、加速度検出部241が検出した加速度と、生体情報検出部242が検出した生体情報と、血糖値検出部344が検出した血糖値と、に加え、加速度流量算出部231と生体情報流量算出部232と生体情報判定部233と血糖値判定部234とが判定した結果とを表示する。表示部223は、流体注入装置3から送信される時刻毎のインスリンの輸送量のデータと、残量算出部252が算出した流体貯留部331におけるインスリンの残量とを表示する。表示部223は、流体注入装置3がインスリンを投与する際には、インスリンの投与が完了するまでの時間を表示する。
【0034】
<<薬液の注入操作>>
食事をすると糖分が体内に取り込まれ血糖値の増加要因となるので、糖尿病患者は食事時に多量のインスリンの投与を受けて血糖値を抑制する必要がある。一方、高活動を行うとエネルギーを消費し血糖値の低下要因となるので、糖尿病患者は高活動時にインスリンの投与量を減少又は停止させる必要がある。このような必要を満たすように、流体注入システム1は装着者に適量のインスリンを注入する。
【0035】
図3は、流体注入システム1が薬液を注入するために実行する処理手順を示すフロー図である。同図に基づいて、流体注入システム1の薬液注入処理手順について説明する。
【0036】
まず、入力受付部222において操作者からの入力操作がある(S301)と、インスリンの投薬量について、多量とする操作指示であったか、少量とする操作指示であったか、停止とする操作指示であったかを判別する(S302)。
【0037】
多量とする操作指示であった場合(S302:「多」)には、操作装置2の第一通信部221は、多量のインスリンを注入させる操作指令を流体注入装置3に送信し、流体注入装置3は多量のインスリンを装着者の人体に注入する(S303)。そして、所定時間が経過しなければ(S304:NO)、引き続きS303においてインスリンの注入を継続する。所定時間が経過すれば(S304:YES)、流体注入装置3は少量のインスリンを装着者の人体に継続的に注入する(S305)。
【0038】
停止とする操作指示であった場合(S302:「停」)には、第一通信部221は、流体注入装置3にインスリンの注入を停止させる操作指令を流体注入装置3に送信し、流体注入装置3はインスリンの注入を停止する(S306)。
【0039】
少量とする操作指示であった場合(S302:「少」)には、第一通信部221は、流体注入装置3に少量のインスリンを注入させる操作指令を流体注入装置3に送信し、流体注入装置3は少量のインスリンを装着者の人体に継続的に注入する(S307)。
【0040】
<<装着者の状態の監視>>
装着者が高活動を行っていると加速度流量算出部231が判定すると、加速度流量算出部231は、流体注入装置3にインスリンの注入を停止させる操作指令を、第一通信部221を介して流体注入装置3に送信し、流体注入装置3はインスリンの注入を停止する。また、アラーム発信部235はアラーム音又は振動を発信し、表示部223は高活動中によりインスリンの注入を停止した旨を表示する。
【0041】
装着者が高活動を行っていると生体情報流量算出部232が判定すると、生体情報流量算出部232は、流体注入装置3にインスリンの注入を停止させる操作指令を、第一通信部221を介して流体注入装置3に送信し、流体注入装置3はインスリンの注入を停止する。また、アラーム発信部235はアラーム音又は振動を発信し、表示部223は高活動中によりインスリンの注入を停止した旨を表示する。
【0042】
また、生体情報判定部233が異常を検出すれば、アラーム発信部235はアラーム音又は振動を発信し、表示部223は生体情報及び低血糖である旨を表示する。また、操作装置2は、外部コンピューター100に対して装着者に異常ありとの情報を送信する。
【0043】
血糖値判定部234が低血糖と判定すると、血糖値判定部234はインスリンの注入を停止させる操作指令を、第一通信部221を介して流体注入装置3に送信し、流体注入装置3はインスリンの注入を停止する。また、アラーム発信部235はアラーム音又は振動を発信し、表示部223は血糖値及びインスリン注入停止の旨を表示する。
【0044】
一方、血糖値判定部234が高血糖と判定すると、血糖値判定部234はインスリンの注入を増加させる操作指令を、第一通信部221を介して流体注入装置3に送信し、流体注入装置3はインスリンの注入を増加させる。また、アラーム発信部235はアラーム音又は振動を発信し、表示部223は血糖値及びインスリン注入量を増加した旨を表示する。
【0045】
<<流体注入装置の監視>>
第一監視部236は、所定時間間隔で流体注入装置3の第二コントローラーに信号を定期的に送信し、その送信に対して第二コントローラーから第一監視部236へ返信があるか否かに基づいて、第二コントローラーが正常に作動しているか否かを判定する。もし、第二コントローラーが正常に作動していないと第一監視部236が判定した場合には、警告発信部237は警告音又は振動を発生させる。
【0046】
第二監視部336は、第二コントローラーに信号を定期的に送信し、第二コントローラーが正常に作動しているか否かを判定する。もし、第二コントローラーが正常に作動していないと第二監視部336が判定した場合には、その旨を第二通信部321を介して操作装置2に送信し、警告発信部237は警告音又は振動を発生させる。
【0047】
ポンプ異常判定部238は、入力受付部222が受けた操作指令と後述する輸送量計測部345が計測したインスリンの輸送量とが対応しているか否かに基づいて、流体輸送部332に異常があるか否かを判定する。もし、流体輸送部332に異常があるとポンプ異常判定部238が判定した場合には、警告発信部237は警告音又は振動を発生させる。
【0048】
電池判定部251は、操作装置2及び流体注入装置3の電池残量が十分であるかどうかを判定する。例えば、電池残量が電池容量の所定割合を下回ったときには電池残量が十分でないと判定する。操作装置2又は流体注入装置3の電池残量が十分でないと電池判定部251が判定した場合には、警告発信部237は警告音又は振動を発生させる。
【0049】
<<、流体注入システムの有効性>>
図4は、ある糖尿病患者が必要とするインスリンの注入量を時間軸において示すグラフである。同図に示すように、食事中及びその前後に多量のインスリンを必要とし、睡眠時又は安静時には少量のインスリンでよい。また、運動などエネルギーを大量に消費する際にはインスリンは不要である。このように、装着者の生活状況によってインスリンの必要量が変化するので、このインスリン必要量に合わせて流体注入システム1の動作を操作し又は制御する必要がある。
【0050】
流体注入システム1によれば、人体の胴部に装着され人体に流体を注入する流体注入装置3と、人体の手首に装着され流体注入装置3を遠隔操作する操作装置2と、を備え、操作装置2は、流体注入装置3に対する操作指令の入力を受け付ける入力受付部222と、操作指令を流体注入装置3へ送信する第一通信部221と、を有し、流体注入装置3は操作指令を受信する第二通信部321と、流体を貯留する流体貯留部331と、操作指令に基づいて、流体貯留部331から流体を輸送して人体に注入する流体輸送部332と、を有することにより、流体注入システム1の装着者が着衣をはだけることなく流体注入装置を操作することができる。
【0051】
具体的には、従来の流体注入装置によれば、糖尿病患者は食事毎にインスリンを投薬する必要があり、投薬の度にその操作のために着衣をはだけて流体注入装置を直接操作していた。つまり、装着者にとって食事毎に着衣をはだけること自体が公衆マナーの点で苦痛であるだけでなく、周囲の人からは自身が糖尿病患者であることが知られる等精神的な苦痛があった。しかし、流体注入システム1によれば、装着者は、あたかも腕時計で時間を確認するようなそぶりで、手首に装着した操作装置2によって流体注入装置3を遠隔操作することができる。したがって、着衣をはだける必要がなくなるばかりか、糖尿病患者であることが周囲の人に知られることもなくなり、糖尿病患者を精神的苦痛から開放できる。
【0052】
また、流体注入システム1によれば、操作装置2は、人体の生体情報を検出する生体情報検出部242と、生体情報に基づいて、流体注入装置3が注入する流体流量を算出する生体情報流量算出部232と、を備えることにより、生体情報に基づいてインスリンの投薬量を算出することができ、もって装着者に対して適切な量のインスリンを投与することができる。
【0053】
具体的には、心拍数や血圧、体温が上がっている場合には、装着者が高活動などを行っていると判定できる。高活動を行っている場合には、体内の糖分などのエネルギーが消費されるので、インスリン注入の必要性が低下する。そこで、流体注入システム1によれば、心拍数や血圧、体温が上がっている場合には、インスリンの注入量を減少させ又はインスリンの注入を停止することができる。
【0054】
一方で、心拍数や血圧、体温が下がっている場合には、装着者が低血糖となり危険な状態に陥っていると判定できる。低血糖の場合には、インスリンを注入してはならない。そこで、流体注入システム1によれば、心拍数や血圧、体温が下がっている場合には、インスリンの注入を停止することができる。
【0055】
また、流体注入システム1によれば、操作装置2は、操作装置2の加速度を検出する加速度検出部241と、加速度に基づいて、流体流量を算出する加速度流量算出部231と、を備えることにより、装着者の運動状況に基づいてインスリンの投薬量を算出することができ、もって装着者に対して適切な量のインスリンを投与することができる。すなわち、高活動を行っている場合には、体内の糖分などのエネルギーが消費されるので、インスリン注入の必要性が低下する。そこで、流体注入システム1によれば、装着者が高活動を行っている場合には、インスリンの注入量を減少させ又はインスリンの注入を停止することができる。
【0056】
また、流体注入システム1によれば、流体注入装置3は、流体輸送部332を制御する第二コントローラーと、第二コントローラーを監視する第二監視部336と、を備え、操作装置2は、第二コントローラーを監視する第一監視部236と、第一監視部236又は第二監視部336が、第二コントローラーの異常を検知したときに、警告を発信する警告発信部237と、を備えることにより、流体注入装置3の第二コントローラーに異常があれば、装着者にその異常を迅速に知らせることができる。第二コントローラーに異常があっても、見ただけでは異常があるかの判別は困難であるが、第二コントローラーに異常があって不適切な量のインスリンが注入されると生命に危険が及ぶ。しかし、流体注入システム1によれば、流体注入装置3の内部における第二監視部336と、流体注入装置3の外部からの第一監視部236とによる二重の監視体制となっており、使用上の安全性を高めることができる。
【0057】
また、流体注入システム1によれば、流体注入装置3は、流体輸送部332が輸送した流体流量を計測する輸送量計測部345を備え、操作装置2は、操作指令と流体流量のデータとに基づいて、流体輸送部332に異常があるかないかを判定するポンプ異常判定部238と、ポンプ異常判定部238が異常ありと判定したときに、アラームを発信するアラーム発信部235と、を備えることにより、流体注入装置3の流体輸送部332に異常があれば、装着者にその異常を迅速に知らせることができ、使用上の安全性を高めることができる。流体輸送部332が故障により作動しなければインスリンが適切に注入されず、装着者の命にかかわる問題となる。また、流体輸送部332が故障により大量注入を続ければ、装着者の命にかかわる問題となる。しかし、流体注入システム1によれば、ポンプ異常判定部238により流体輸送部332の異常を発見でき、大事に至る前に装着者に知らせることができる。
【0058】
また、流体注入システム1によれば、流体注入装置3は、人体の血糖値を検出する血糖値検出部344を備え、操作装置2は、血糖値が所定値未満であるときは低血糖であると判定し、流体注入装置3へ流体の注入を停止する操作指令を、第一通信部221を介して流体注入装置3へ送信する血糖値判定部234と、を備えることにより、装着者が低血糖となった場合でもインスリンの注入を停止することができ、もって安全に使用できる。例えば、装着者の自覚症状がないままに低血糖となった場合や、又は装着者が低血糖などにより意識を失った場合などであっても、インスリンの注入を停止することができる。
【0059】
また、流体注入システム1によれば、血糖値判定部234は、血糖値が所定値以上となったときは高血糖であると判定し、流体注入装置へ流体の注入量を増加する操作指令を、第一通信部221を介して流体注入装置3へ送信することにより、装着者が高血糖となった場合でもインスリンの注入量を増加させることができ、もって安全に使用できる。例えば、食事の際に、装着者がインスリン注入の操作を失念した場合であっても、インスリンの注入量を増加させることによって血糖値の上昇を抑制できる。
【0060】
また、流体注入システム1によれば、手首に装着した操作装置2の表示部223においてインスリンの残量が表示されるので、着衣をはだけることなく気軽にインスリンの残量を確認することができる。
【0061】
また、流体注入システム1によれば、流体注入システム1に蓄積されたインスリン注入に関するデータを外部のコンピューター100に送信することができる。これにより、装着者を担当する医師が、自分のコンピューターにインスリン注入状況とそれに対応した血糖値や脈拍、体温、血圧のデータを取得することができ、装着者の治療に用いることができる。
【0062】
また、流体注入システム1によれば、流体注入装置3の停止入力部322は蓋によって保護されているので、誤って停止入力部322を操作してしまう危険が小さい。
【0063】
===その他の実施の形態===
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0064】
第一実施形態においては、流体注入装置3は胴部に装着して用いることとしたが、胴部に限らず、上腕部や脚部に装着して用いることとしてもよい。
【0065】
また、第一実施形態においては、流体は、インスリンとしたが、インスリンに限らず、薬液や生理食塩水などで流動性を有するものであって人体に注入するものであれば何でもよい。
【0066】
図3では、インスリンの注入量は、大量、少量、停止の3段階としたが、さらに3段階以上の段階を設けて木目細かく調整できるようにしてもよい。例えば、食事時のインスリン注入量は、装着者が食事の量に応じてインスリン注入量を決定できるようにしてもよい。これにより、より適切な量のインスリンを注入することができる。
【0067】
加速度流量算出部231又は生体情報流量算出部232での算出結果に基づいて、流体注入装置3がインスリンの注入を停止することした。しかし、インスリンの注入を停止せず、アラーム発信部235がアラーム音又は振動を発信して、装着者に異常を知らせることとしてもよい。すなわち、インスリンの注入量の操作は、最終的には装着者の判断に基づくこととしてもよい。これにより、インスリン注入し忘れを防止することができる一方で、装着者は自分の承知しないところでインスリンが注入されることがなく、安心して使用できる。
【0068】
操作装置2は流体注入システム1の操作マニュアルにかかるデータを記憶してもよく、また表示部223は、その操作マニュアルを表示してもよい。これにより、装着者は、操作マニュアルを手軽に閲覧することができ、もって流体注入システム1を的確に操作することができる。
【0069】
表示部223は、計時部239が計時した時刻を表示してもよい。また、アラーム発信部235は、予め指定された時刻にアラーム音を発信してインスリン注入時刻である旨を装着者に知らせることとしても良い。例えば、食事の時刻を操作装置2に予め登録しておけば、食事の際にインスリン注入の操作を失念していても、アラーム音により装着者はインスリン注入操作を思い出して操作することができる。
【0070】
加速度検出部241は、操作装置2内に設けることとしたが、流体注入装置3に設けてもよく、両方に設けてもよい。操作装置2と流体注入装置3との両方に加速度検出部241を設けた場合には、装着者の加速度をより正確に検出することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 流体注入システム、2 操作装置、3 流体注入装置、100 コンピューター、221 第一通信部、222 入力受付部、223 表示部、231 加速度流量算出部、232 生体情報流量算出部、233 生体情報判定部、234 血糖値判定部、235 アラーム発信部、236 第一監視部、237 警告発信部、238 ポンプ異常判定部、239 計時部、241 加速度検出部、242 生体情報検出部、251 電池判定部、252 残量算出部、321 第二通信部、322 停止入力部、331 流体貯留部、332 流体輸送部、336 第二監視部、344 血糖値検出部、345 輸送量計測部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体に装着され前記人体に流体を注入する流体注入装置と、前記人体の手首に装着され前記流体注入装置を遠隔操作する操作装置と、を備え、
前記操作装置は、
前記流体注入装置に対する操作指令の入力を受け付ける入力受付部と、
前記操作指令を前記流体注入装置へ送信する第一通信部と、を有し、
前記流体注入装置は、
前記操作指令を受信する第二通信部と、
前記流体を貯留する流体貯留部と、
前記操作指令に基づいて、前記流体貯留部から前記流体を輸送して人体に注入する流体輸送部と、を有することを特徴とする流体注入システム。
【請求項2】
請求項1に記載の流体注入システムであって、
前記操作装置は、
前記人体の生体情報を検出する生体情報検出部と、
前記生体情報に基づいて、前記流体注入装置が注入する流体流量を算出する生体情報流量算出部と、を備え、
前記第一通信部は、前記生体情報流量算出部が算出した流体流量のデータを前記流体注入装置へ送信し、
前記第二通信部は、前記生体情報流量算出部が算出した流体流量のデータを受信し、
前記流体輸送部は、前記生体情報流量算出部が算出した流体流量のデータに基づいて、前記流体貯留部から前記流体を輸送して人体に注入することを特徴とする流体注入システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体注入システムであって、
前記操作装置は、
前記操作装置の加速度を検出する加速度検出部と、
前記加速度に基づいて、流体流量を算出する加速度流量算出部と、を備え、
前記第一通信部は、前記加速度流量算出部が算出した流体流量のデータを前記流体注入装置へ送信し、
前記第二通信部は、前記加速度流量算出部が算出した流体流量のデータを受信し、
前記流体輸送部は、前記加速度流量算出部が算出した流体流量のデータに基づいて、前記流体貯留部から前記流体を輸送して人体に注入することを特徴とする流体注入システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の流体注入システムであって、
前記流体注入装置は、
前記流体輸送部を制御するコントローラーと、
前記コントローラーを監視する第二監視部と、を備え、
前記操作装置は、
前記コントローラーを監視する第一監視部と、
前記第一監視部又は前記第二監視部が、前記コントローラーの異常を検知したときに、警告を発信する警告発信部と、
を備えることを特徴とする流体注入システム。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の流体注入システムであって、
前記流体注入装置は、前記流体輸送部が輸送した流体流量を計測する輸送量計測部を備え、
前記操作装置は、
前記操作指令と前記流体流量のデータとに基づいて、前記流体輸送部に異常があるかないかを判定するポンプ異常判定部と、
前記ポンプ異常判定部が異常ありと判定したときに、アラームを発信するアラーム発信部と、を備えることを特徴とする流体注入システム。
【請求項6】
請求項5に記載の流体注入システムであって、
前記操作装置は、
前記輸送量計測部が計測した前記流体の輸送量と前記流体貯留部に当初貯留された前記流体の量に基づいて、前記流体貯留部における前記流体の残量を算出する残量算出部と、
前記残量算出部が算出した残量を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする流体注入システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の流体注入システムであって、
前記流体は、前記人体の血糖値を低下させる薬液であり、
前記流体注入装置は、前記人体の血糖値を検出する血糖値検出部を備え、
前記操作装置は、前記血糖値が所定値未満であるときは低血糖であると判定し、前記流体注入装置へ前記流体の注入を停止する操作指令を、前記第一通信部を介して前記流体注入装置へ送信する前記血糖値判定部を備えることを特徴とする流体注入システム。
【請求項8】
請求項7に記載の流体注入システムであって、
前記血糖値判定部は、前記血糖値が所定値以上となったときは高血糖であると判定し、前記流体注入装置へ前記流体の注入量を増加する操作指令を、前記第一通信部を介して前記流体注入装置へ送信することを特徴とする流体注入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−200628(P2011−200628A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234242(P2010−234242)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【分割の表示】特願2010−71024(P2010−71024)の分割
【原出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】