説明

流体用ダイヤフラムポンプ

【課題】部品点数が少なく、組立が容易な流体用ダイヤフラムポンプを提供する。
【解決手段】軸心一方向L1に開口する椀型のダイヤフラム50と、ダイヤフラム50の開口縁部を軸心一方向L1に延設して形成した短円筒状の吐出弁膜部52と、複数のダイヤフラム50を円周等分配に一体状に連結する軸心直交平面状の横隔膜部54と、を有するダイヤフラム集合体と、軸心直交平面状の平板部24と、平板部24から円周等分配に軸心他方向L2に突設された複数の短円筒状の吸入弁膜22と、を有する吸入弁膜集合体2と、ダイヤフラム集合体5と吸入弁膜集合体2の間に介装され、吐出弁膜52が外周面に密着分離自在に接触する円筒状の吐出弁座部35と、吐出弁座部35と同心状に配設されて吸入弁膜22が外周面に密着分離自在に接触する円形状の吸入弁座部32と、を有する中蓋体3と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体用ダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイヤフラムポンプとしては、本願発明者が既に提案したように、ポンプ室を形成する複数のダイヤフラムを一体形成したダイヤフラム集合体と、複数の傘状弁体と、傘状弁体が取着される中蓋体を備えているものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−41538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、傘状弁体を用いると、部品点数が多くなるといった問題や、組立作業に手間がかかると共に、作業中に紛失や破損が発生する虞れが高いといった問題があった。さらに、製造コストが高くなってしまうという問題があった。また、ポンプ室内でダイヤフラムと傘状弁体の干渉を防止するためにポンプ室を大きくする必要があり、ダイヤフラムポンプ全体の小型化が困難といった問題があった。また、小型の複数個の傘状弁体を用いることで、故障が生じ易かったり、作動の信頼性が低いという問題や、開閉作動時の騒音の問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、小型で、部品点数が少なく組立が容易であり、開閉弁の安定性・信頼性に優れ、低騒音の寿命の長い流体用ダイヤフラムポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の流体用ダイヤフラムポンプは、軸心一方向に開口する椀型のダイヤフラムと、該ダイヤフラムの開口縁部を上記軸心一方向に延設して形成した短円筒状の吐出弁膜部と、複数の上記ダイヤフラムを円周等分配に一体状に連結する軸心直交平面状の横隔膜部と、を有するダイヤフラム集合体と、軸心直交平面状の平板部と、該平板部から円周等分配に軸心他方向に突設された複数の短円筒状の吸入弁膜と、を有する吸入弁膜集合体と、上記ダイヤフラム集合体と上記吸入弁集合体の間に介装され、上記吐出弁膜部が外周面に密着分離自在に接触する円筒状の吐出弁座部と、該吐出弁座部と同心状に配設されて上記吸入弁膜が外周面に密着分離自在に接触する円形状の吸入弁座部と、を有する中蓋体と、を備えたものである。
【0007】
また、上記円筒状の吐出弁座部と上記円形状の吸入弁座部の間に円環状凹溝を形成して、該円環状凹溝に上記吸入弁膜を差込状に収納したものである。
また、上記中蓋体に、上記吸入弁座部と同心状かつ上記軸心一方向に突設する円環状の位置決め凸部を設け、上記吸入弁膜集合体に、上記吸入弁膜と同心状に凹設され上記位置決め凸部が差し込まれる円環状の位置決め凹部を設けたものである。
また、上記吸入弁膜集合体の上記平板部に、上記中蓋体に密着して大気側と高圧側と低圧側とを密封状に区画する凸条部を設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の流体用ダイヤフラムポンプによれば、部品点数を少なく、部材の製造工数や組立工数を少なくでき、容易かつ迅速に製造でき、製造コストを削減できる。ポンプ全体の長手方向(軸心方向)の長さを短くでき小型化できる。また、騒音が低い流体用ダイヤフラムポンプを得ることができる。そして、ポンプとして作動の信頼性が高くなり、寿命も大きく延びる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す要部分解斜視図である。
【図3】ダイヤフラム集合体の一例を示す斜視図である。
【図4】中蓋体の一例を示す正面図である。
【図5】中蓋体の一例を示す背面図である。
【図6】吸入弁膜集合体の一例を他方向側から見た斜視図である。
【図7】蓋体の一例を示す背面図である。
【図8】本発明の実施の形態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
本発明の流体用ダイヤフラムポンプは、図1及び図2に於て、軸心一方向L1に突出する小円筒状の吸入口部10及び吐出口部15を有する蓋体1と、軸心他方向L2に突出する短円筒状の吸入弁膜22を3つ有する吸入弁膜集合体2と、軸心一方向L1に開口する3つの椀型ダイヤフラム50を有するダイヤフラム集合体5と、吸入弁膜集合体2とダイヤフラム集合体5の間に介装される中蓋体3と、軸心他方向L2側からダイヤフラム集合体5に接触して支持するリテーナ部材(支持部材)6と、を備えている。
【0011】
なお、本発明に於て、流体用ダイヤフラムポンプ全体の中心軸を軸心Lと呼ぶ。また、軸心Lに沿った矢印L1方向側を軸心一方向L1と呼ぶ。軸心一方向L1の反対方向を軸心他方向L2と呼ぶ。
【0012】
図2及び図3に於て、ダイヤフラム集合体5は、椀型のダイヤフラム50の開口縁部を軸心一方向L1に延設して形成した短円筒状の吐出弁膜部52と、軸心L廻りの円周方向に120度間隔で配設された3つのダイヤフラム50を一体状に連結する軸心直交平面状の横隔膜部54と、を有している。また、往復運動(ピストン運動)によってダイヤフラム50を圧縮・膨張可能なダイヤフラム駆動部53をダイヤフラム50から軸心他方向L2へ突設している。また、ダイヤフラム集合体5はゴム等の弾性部材から一体に形成されている。
【0013】
図3に於て、横隔膜部54は、軸心一方向L1側の面(表て面54a)に外周縁に沿って形成される密封用の膨出条部59を閉環状に有している。なお、図8に示すように、膨出条部59は、中蓋体3によって圧縮されるため、横隔膜部54と同じ厚みに弾性変形する。なお、図8は、図7に一点鎖線で示す切断線S−Sで切断した断面図である。
【0014】
図1と図6及び図8に於て、吸入弁膜集合体2は、軸心直交平面状の平板部(平膜部)24と、軸心Lを中心として平板部24に貫設された吐出孔26と、軸心L廻りの円周方向に120度間隔で平板部24に貫設された3つの吸入孔21と、吸入孔21の開口縁部から軸心他方向L2に延設される短円筒状の吸入弁膜22と、吸入弁膜22と同心状に(かつ軸心一方向L1に)凹設された円環状の位置決め凹部23と、を有している。また、吸入弁膜集合体2はゴム等の弾性部材から一体に形成されている。
【0015】
また、吸入弁膜集合体2の平板部24は、軸心他方向L2側の面(裏面24b)に、中蓋体3に密着して大気側と高圧側と低圧側とを密封状に区画する凸条部29を有している。
凸条部29は、平板部24の外周縁に沿って閉環状に形成され大気側と低圧側と高圧側を密封状に区画する外側凸条部29aと、吐出孔26を包囲するように円環状に形成され低圧側と高圧側を密封状に区画する内側凸条部29bと、から成る。なお、図8に示すように、凸条部29(29a,29b)は、中蓋体3によって圧縮され、平板部24と同じ厚みに弾性変形する。
【0016】
図1に於て、吸入弁膜集合体2の平板部24は、軸心一方向L1側の面(表て面24a)に、蓋体1に密着して大気側と高圧側と低圧側とを密封状に区画する突条部28を有している。
突条部28は、平板部24の外周縁に沿って閉環状に形成され大気側と低圧側を密封状に区画する外側突条部28aと、吐出孔26を包囲するように円環状に形成され低圧側と高圧側を密封状に区画する内側突条部28bと、から成る。なお、図8に示すように、突条部28(28a,28b)は、蓋体1によって圧縮されるため、平板部24と同じ厚みに弾性変形する。
【0017】
図4と図5及び図8に於て、中蓋体3は、短円柱状の樹脂成形品であって、軸心Lを中心として排出孔36を貫設している。また、軸心他方向L2側の面(裏面3b)に排出孔36と連通する円形状窪部の排出路39を設けている。
排出路39には、軸心L廻りの円周方向に120度間隔で配設されると共に、軸心一方向L1(表て面3a)に開口する3つの有底円筒部30が突設されている。
【0018】
有底円筒部30の円筒壁部を、吐出弁膜部52の内周面が密着分離自在に接触する吐出弁座部35としている。
また、有底円筒部30の底壁部30bから、軸心一方向L1に突出すると共に、横断面の外形状が円形状の突出部31を設けている。この突出部31を、吸入弁膜22の内周面が密着分離自在に接触する吸入弁座部32としている。なお、突出部31は、図示した円筒状に限らず円柱状とするも良い。
【0019】
吐出弁座部35と同心状に吸入弁座部32を配設して、軸心一方向L1に開口する円環状凹溝34を形成している。また、有底円筒部30の底壁部30bに、円環状凹溝34に連通する貫孔38を設けている。貫孔38は、吸入弁座部32の中心軸廻りの円周方向に120度間隔で例えば3つ配設される。
【0020】
また、中蓋体3は、表て面3aから軸心一方向L1に突出すると共に吸入弁座部32に同心状に形成され、吸入弁膜集合体2の位置決め凹部23に差し込まれる円環状の位置決め凸部33を有している。
【0021】
図1と図8に於て、蓋体1は、樹脂成形品であって、流体を排出するための吐出路16が、軸心Lを中心として貫設されている。小円筒状の吐出口部15に吐出路16の一部が形成されている。また、軸心Lに対して偏心位置に、流体を吸い込むため吸入路11が貫設されている。小円筒状の吸入口部10に吸入路11の一部が形成されている。
【0022】
また、図7に於て、蓋体1は、軸心他方向L2側の面(裏面1b)に、吸入路11と連通すると共に吐出路16を包囲するように環状に凹設された吸込路12が形成されている。吸込路12と吐出路16とは、円環状の区切壁部17によって区切られている。
【0023】
また、吸込路12には、軸心他方向L2へ突出して吸入弁膜集合体2を押さえる(支持する)C字状の支持壁部18が3つ突設されている。
支持壁部18は、組立状態で吸入弁膜集合体2の吸入孔21と同心状に形成した円環状壁部の一部を切り欠いてC字状に形成している。
【0024】
また、区切壁部17及び支持壁部18は、裏面1bと面一状となる位置まで突設している。つまり、吸込路12に流体を十分に送流可能な容積(流路)を確保しつつ、吸入弁膜集合体2の平板部24を確実に押さえ、吸入弁膜22の作動がより安定するように形成している。なお、図7に於て、区切壁部17と、3つの支持壁部18の軸心L寄りの壁部分と、を一体状に形成した(壁部を一部併用した)場合を図示したが、区切壁部17と、3つの支持壁部18と、を離間させて、吸込路12の容積を大きくするも望ましい。
【0025】
なお、支持壁部18を9つの円弧状に形成して、3つの支持壁部18,18,18で、1つの吸入孔21の開口周縁部近傍を押さえるように、3つの支持壁部18,18,18を1つの吸入孔21に同心状に配設し、かつ、吸入孔21の中心軸廻りの円周方向に120度間隔で配設するも良い。
【0026】
図1と図8に於て、リテーナ部材6は、樹脂成形品であって、ダイヤフラム集合体5の横隔膜部54の裏面54bに接触して支持する平坦状の表て面6aを有している。また、ダイヤフラム50が挿通する貫孔61を有している。
【0027】
また、ダイヤフラム駆動部53を保持するための係止孔70aを有する傾斜状の揺動板70と、円柱状小型直流用のモータ74と、モータ74の出力軸74a側に取着される有底円筒カップ状のケース部材73と、出力軸74aが中心部に挿入されると共に出力軸74aから偏心位置に配設される偏心孔72aを有する偏心回転体72と、一方が揺動板70の中心部に挿入されると共に他方が偏心孔72aに傾斜状に差し込まれる軸部材71と、を備えている。
【0028】
組立状態では、蓋体1と、吸入弁膜集合体2と、中蓋体3と、ダイヤフラム集合体5と、リテーナ部材6と、を順次ケース部材73に積み重ねると共にネジ部材75を串挿し状に貫通させケース部材73に螺着して内部空間を有する円柱状のケーシング9を形成する。また、ケース部材73内で、出力軸74aの回転により揺動板70が回転揺動運動を行って、ダイヤフラム駆動部53を往復運動させ、ダイヤフラム50と中蓋体3の有底円筒部30によって形成されるポンプ室7を圧縮膨張させるように構成している。
【0029】
上述した本発明の流体用ダイヤフラムポンプの作用について説明する。
組立工程に於て、蓋体1、吸入弁膜集合体2、中蓋体3、ダイヤフラム集合体5、リテーナ部材6、を順次積み重ね、ネジ部材75を串挿し状に挿通させてケース部材73に螺着することで、ケーシング9が形成される。また、ダイヤフラム50と中蓋体3に囲まれた3つのポンプ室7が形成される。また、リテーナ部材6より軸心一方向L1側に、吸入路11、吸込路12、吸入孔21、円環状凹溝34、貫孔38、から成る吸入流路が形成されると共に、吸入弁膜22と吸入弁座部32とから成る吸入弁が吸入流路に介設される。また、リテーナ部材6より軸心一方向L1側に、吐出路16、吐出孔26、排出孔36、排出路39、から成る吐出流路が形成されると共に、吐出弁膜部52と吐出弁座部35とから成る吐出弁が形成される。また、3つの円環状凹溝34は互いに連通しておらず、吸入弁を介して吸込路12と連通可能である。また、円環状凹溝34は、貫孔38を介して対応するポンプ室7と連通している。また、揺動板70、軸部材71、偏心回転体72、モータ74は、出力軸74aの回転により揺動板70が揺動し、ダイヤフラム駆動部53を往復運動させ、ダイヤフラム50を圧縮・膨張可能に組み立てられる。
【0030】
ここで、吸入弁膜集合体2と中蓋体3を重ね合わせる際に、吸入弁膜22の内周面を吸入弁座部32の外周面に沿わせつつ差し込むことで、円環状凹溝34に吸入弁膜22を容易かつスムーズに収納させる。そして、位置決め凹部23に位置決め凸部33が差し込まれる(嵌入される)ことで、吸入弁膜22と吸入弁座部32を同心状に配設すると共に、吸入弁膜22の内周面と吸入弁座部32の外周面を密着させ、吸入弁を確実に形成する。また、吸入弁膜22と吐出弁膜部52を同心状に配設する。つまり、吸入弁膜集合体2と中蓋体3が適切に位置決めされ組み立てられる。
【0031】
また、吸入弁膜集合体2の凸条部29が中蓋体3の表て面3aに圧縮され密着すると共に突条部28が蓋体1の裏面1bに圧縮され密着し、ダイヤフラム集合体5の膨出条部59が中蓋体3の裏面3bに圧縮され密着して、外部(大気側)とケーシング9内(低圧側と高圧側)とを密封状に区画すると共に、ケーシング9内を低圧側(吸入流路)と高圧側(吐出流路)とを密封状に区画する。
【0032】
組立後にモータ74を駆動すると揺動板70が回転揺動する。揺動板70の揺動に伴って、ダイヤフラム駆動部53が順次往復運動する。
そして、ポンプ室7が圧縮状態から膨張した場合は、ポンプ室7内が負圧となって、負圧によって引き寄せられる流体が吸入弁膜22を吸入弁座部32から拡径状に分離(離間)させ、吸込路12とポンプ室7とを開通状態にする。負圧作用により流体は吸入流路を流れポンプ室7に流入する。
また、吐出弁膜部52は、負圧により吐出弁座部35に吸い寄せられ圧接(密着)する。排出路39からポンプ室7への流体の浸入を防止する。
【0033】
次に、ダイヤフラム駆動部53の往復運動にて、ポンプ室7が圧縮した場合は、ポンプ室7内の流体が、吐出弁膜部52を、押圧して吐出弁座部35から拡径状に離間(分離)させ、排出路39とポンプ室7が開通状態となりポンプ室7内の流体が吐出路16から排出される。また、ポンプ室7の圧縮により、円環状凹溝34の流体が、吸入弁膜22を吸入弁座部32に圧接させる。吸入弁は吸入流路を遮断状態とし流体が吸込路12へ流出するのを防止する。
【0034】
なお、本発明は設計変更可能であって、4個のダイヤフラム50を円周方向に90度等間隔で配設してダイヤフラム集合体5を形成しても良い。その際、吸入弁膜集合体2の吸入弁膜22と、中蓋体3の吸入弁座部32及び吐出弁座部35と、を夫々4つ設ける。
【0035】
以上のように、本発明は、軸心一方向L1に開口する椀型のダイヤフラム50と、ダイヤフラム50の開口縁部を軸心一方向L1に延設して形成した短円筒状の吐出弁膜部52と、複数のダイヤフラム50を円周等分配に一体状に連結する軸心直交平面状の横隔膜部54と、を有するダイヤフラム集合体と、軸心直交平面状の平板部24と、平板部24から円周等分配に軸心他方向L2に突設された複数の短円筒状の吸入弁膜22と、を有する吸入弁集合体2と、ダイヤフラム集合体5と吸入弁膜集合体2の間に介装され、吐出弁膜部52が外周面に密着分離自在に接触する円筒状の吐出弁座部35と、吐出弁座部35と同心状に配設されて吸入弁膜22が外周面に密着分離自在に接触する円形状の吸入弁座部32と、を有する中蓋体3と、を備えたので、ダイヤフラムポンプとしての作動が安定して、信頼性(品質)に優れ、寿命も長い。かつ、(従来の小型部品の)傘状弁体を省略でき、部品点数を少なくできると共に組立が容易にできる。部材の製造工数や組立工数を少なくでき容易に製造できると共に製造コストを大幅に削減できる。傘状弁体のようにポンプ室7内で動作するような部材がない(部材同士の干渉を防止する必要がない)ために、ダイヤフラム50やポンプ室7を大きく形成する必要がなくなり、ポンプを小型化できる。また、傘状弁体が弁座部に密着する際に発生していた弁の叩き音よりも短円筒状の弁膜(吸入弁膜22や吐出弁膜部52)が弁座部(吸入弁座部32や吐出弁座部35)に密着する音のほうが静かであり、弁の叩き音が小さく静かな作動音の流体用ダイヤフラムポンプを得ることができる。また、複数の吸入弁部組立工程と、中蓋体3と蓋体1の間のシール部材配設工程と、を同時に行え、容易かつ迅速に組立てができると共に、組立工数を削減でき、作業効率を向上できる。また、吸入流路及び吐出流路を、蓋体1と吸入弁膜集合体2と中蓋体3側(ダイヤフラム50の駆動部53より軸心一方向L1側)に形成することができ、気体及び液体の圧送を可能にする。また、吐出側及び吸入側の弁体を短円筒状に形成したことで、コシが強くなり、破れや捲れ、折れが防止され、弁座との密着・分離(接触・離間)の作動がより安定し、確実に所定量の流体を圧送させることができる。
【0036】
また、円筒状の吐出弁座部35と円形状の吸入弁座部32の間に円環状凹溝34を形成して、円環状凹溝34に吸入弁膜22を差込状に収納したので、吸入弁膜22と吸入弁座部32から成る吸入弁を容易かつ迅速に形成(組立)できる。ポンプ全体の全長を短く、小型化できる。言い換えると、静かで作動が安定している(短円筒突出状に形成された吸入弁膜22を有する)流体用ダイヤフラムポンプを、大型化することなく得ることができる。
【0037】
また、中蓋体3に、吸入弁座部32と同心状かつ軸心一方向L1に突設する円環状の位置決め凸部33を設け、吸入弁膜集合体2に、吸入弁膜22と同心状に凹設され位置決め凸部33が差し込まれる円環状の位置決め凹部23を設けたので、吸入弁膜22と吸入弁座部32を同心状に容易に配設できる。また、吸入弁膜22の内周面と吸入弁座部32の外周面を確実に密着させて、漏れの発生する虞れの少ない吸入弁を形成でき、組立不良を防止できる。
【0038】
また、吸入弁膜集合体2の平板部24に、中蓋体3に密着して大気側と高圧側と低圧側とを密封状に区画する凸条部29を設けたので、平板部24を密封性の高いシール部とすることができる。漏れの発生を防止して、液体や気体をより効率良く圧送できる。吸入弁膜集合体2をパッキン部材として併用でき、部品点数を削減できるとともに組立工数を削減できる。
【符号の説明】
【0039】
2 吸入弁膜集合体
3 中蓋体
5 ダイヤフラム集合体
22 吸入弁膜
23 位置決め凹部
24 平板部
29 凸条部
32 吸入弁座部
33 位置決め凸部
34 円環状凹溝
35 吐出弁座部
50 ダイヤフラム
52 吐出弁膜部
54 横隔膜部
L1 軸心一方向
L2 軸心他方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心一方向(L1)に開口する椀型のダイヤフラム(50)と、該ダイヤフラム(50)の開口縁部を上記軸心一方向(L1)に延設して形成した短円筒状の吐出弁膜部(52)と、複数の上記ダイヤフラム(50)を円周等分配に一体状に連結する軸心直交平面状の横隔膜部(54)と、を有するダイヤフラム集合体と、
軸心直交平面状の平板部(24)と、該平板部(24)から円周等分配に軸心他方向(L2)に突設された複数の短円筒状の吸入弁膜(22)と、を有する吸入弁膜集合体(2)と、
上記ダイヤフラム集合体(5)と上記吸入弁膜集合体(2)の間に介装され、上記吐出弁膜部(52)が外周面に密着分離自在に接触する円筒状の吐出弁座部(35)と、該吐出弁座部(35)と同心状に配設されて上記吸入弁膜(22)が外周面に密着分離自在に接触する円形状の吸入弁座部(32)と、を有する中蓋体(3)と、を備えたことを特徴とする流体用ダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
上記円筒状の吐出弁座部(35)と上記円形状の吸入弁座部(32)の間に円環状凹溝(34)を形成して、該円環状凹溝(34)に上記吸入弁膜(22)を差込状に収納した請求項1記載の流体用ダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
上記中蓋体(3)に、上記吸入弁座部(32)と同心状かつ上記軸心一方向(L1)に突設する円環状の位置決め凸部(33)を設け、
上記吸入弁膜集合体(2)に、上記吸入弁膜(22)と同心状に凹設され上記位置決め凸部(33)が差し込まれる円環状の位置決め凹部(23)を設けた請求項1又は2記載の流体用ダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
上記吸入弁膜集合体(2)の上記平板部(24)に、上記中蓋体(3)に密着して大気側と高圧側と低圧側とを密封状に区画する凸条部(29)を設けた請求項1,2又は3記載の流体用ダイヤフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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