説明

流体相における圧力下での(メタ)アクリル酸オリゴマーの分割

【課題】金属触媒を使用することなく効果的にオリゴマーを分割することができる方法を提供すること。
【解決手段】構造Iで表される(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するための方法であって、
【化1】


で表される分割剤の存在下で、(メタ)アクリル酸オリゴマーを少なくとも1バールの圧力で少なくとも50℃の温度に加熱する方法。また、水と必要に応じてプロトン性化合物の(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するための分割剤としての使用、(メタ)アクリル酸を合成するための装置、この装置の(メタ)アクリル酸の製造における使用、この装置を使用して製造された(メタ)アクリル酸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体相において(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するための方法、水と必要に応じてプロトン性化合物の(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するための分割剤としての使用、(メタ)アクリル酸を合成するための装置、この装置の(メタ)アクリル酸の製造における使用、この装置を使用して製造された(メタ)アクリル酸に関する。
【0002】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」という用語は、「メタクリル酸」及び「アクリル酸」という命名法上の名称を有する化合物について使用する。これらの化合物のうち、本発明ではアクリル酸が好ましい。また、本明細書において、「オリゴマー」という用語は、1分子中に原子配列の2以上の繰り返しを含む化合物について使用する。特に、この用語は少なくとも2つのモノマーからなる分子、特に(メタ)アクリル酸を含む。
【背景技術】
【0003】
アクリル酸は、通常は酸素含有ガスによるプロピレンの接触気相酸化によって得る。二段階プロセスでは、プロピレンを触媒によってアクロレインに酸化させ、第2の工程において同様に触媒を使用してアクロレインをアクリル酸に転化させる。得られたアクリル酸は、水により吸収によって水溶液として気体反応混合物から取り除く。アクリル酸の精製は、精留塔でのアクリル酸溶液の蒸留、適当な抽出剤による抽出または結晶化によって行われる。また、メタクリル酸は、気相でのイソブチレン、t−ブタノール、メタクロレインまたはイソブチルアルデヒドの接触酸化によって合成する。
【0004】
しかし、(メタ)アクリル酸は非常に急速にオリゴマーを形成したり、重合する傾向があるため、上述した出発化合物の酸化時だけではなく、(メタ)アクリル酸溶液の蒸留時にも、例えば(メタ)アクリル酸二量体または(メタ)アクリル酸三量体などの(メタ)アクリル酸オリゴマーが望ましくない副生成物として形成される場合が多い。これらの化合物の形成によって、(メタ)アクリル酸の製造における(メタ)アクリル酸モノマーの収率が著しく減少する。(メタ)アクリル酸の合成だけではなく、触媒の存在下での加熱による適当なアルコールを使用した(メタ)アクリル酸の転化による(メタ)アクリル酸エステルの製造でも(メタ)アクリル酸オリゴマー(この場合にはエステルとして存在する)が形成される。
【0005】
(メタ)アクリル酸オリゴマーの存在は、特に吸収性ポリマーの製造や、それによって得られる吸収性ポリマーにとって不利である。(メタ)アクリル酸オリゴマーの含有量が増加すると、製造後に吸収性ポリマーに残留するモノマーの量が増加する。このことは、特に吸収性ポリマーを赤ちゃん用の衛生用品に使用する場合に不利である。これは、おむつに使用されるポリマーには特に高い純度が求められるためである。
【0006】
しかし、(メタ)アクリル酸オリゴマーを廃棄することは非経済的である。特に、(メタ)アクリル酸オリゴマーを廃棄すると、(メタ)アクリル酸が大量に失われてしまう。そこで、(メタ)アクリル酸オリゴマーを(メタ)アクリル酸モノマーに分割し、(メタ)アクリル酸を回収する多くの方法が開示されている。気相または流体相において、通常は高温・加圧下で触媒の存在下または非存在下で(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割する連続的及び非連続的なプロセスが使用されている。
【0007】
米国特許第4,317,926号は、20〜500mmHgの圧力及び120〜220℃の温度で、液相においてアクリル酸二量体を触媒を使用せずに分割することを開示している。分割反応器における二量体の滞留時間は3〜8時間が必要である。この文献に記載された方法では、無機銅化合物が分割に有利である。
【0008】
米国特許第5,734,075号は、140〜260℃の温度で気相においてアクリル酸二量体を触媒を使用せずに分割することを開示している。この文献に記載された方法では、アクリル酸の合成とアクリル酸エステルの合成からの残渣の混合物を使用した場合にモノマーの回収率が向上する。分割反応器における二量体の滞留時間は0.5〜3時間であり、二量体の80重量%以下が分割される。この文献は、高圧で分割を行うことは開示していない。
【0009】
米国特許第3,086,046号は、5〜150mmHgの圧力及び350〜650℃の温度で、触媒を使用せずに連続的にアクリル酸を分割することを開示している。分割管における二量体の滞留時間は0.5〜2分間である。しかし、この文献に記載された方法は、低い分子量(アクリル酸二量体まで)を有するアクリル酸残渣にのみ適している。
【0010】
米国特許第3,868,410号は、アルコールを使用したアクリル酸モノマーのエステル化時に形成されるオリゴマーの分割を開示している。分割は、適当な酸触媒によるエステル化反応で形成された塔底生成物の転化によって行われる。分割反応における水の使用は開示されていない。
【0011】
欧州特許出願公開第0 751 759号は、100〜250mmHgの圧力及び200〜400℃の温度で、固定層を有するサイクル反応器を使用して気相においてアクリル酸二量体を触媒を使用して分割することを開示している。触媒としては、例えばMgOなどのアルカリまたはアルカリ土類金属の酸化物を使用している。
【特許文献1】米国特許第4,317,926号
【特許文献2】米国特許第5,734,075号
【特許文献3】米国特許第3,086,046号
【特許文献4】米国特許第3,868,410号
【特許文献5】欧州特許出願公開第0 751 759号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来技術に開示された方法と比較して改善された、(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するための方法を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、金属触媒を使用することなく効果的にオリゴマーを分割することができる方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の別の目的は、(メタ)アクリル酸オリゴマーから(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸アミドを選択的に得ることができる方法を提供することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、(メタ)アクリル酸へのオリゴマーの分割を容易にするだけではなく、オリゴマーを分割して(メタ)アクリル酸エステルモノマーを形成することができる、(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的は、以下に詳細に説明する方法、装置、(メタ)アクリル酸、繊維、成型品、フィルム、発泡体、超吸収性ポリマーまたは衛生用品によって達成される。さらなる有利な実施形態とさらなる形態は各独立請求項の主題であり、単独または組み合わせて適用することができる。
【0017】
上記目的は、特に、構造Iで表される(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するための方法であって、
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、Rは水素原子またはC−C10アルキル基、好ましくはC−Cアルキル基、特に好ましくはC−Cアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、nは1〜20、好ましくは1〜15、特に好ましくは1〜10の整数である)
(メタ)アクリル酸オリゴマーを、少なくとも1バール、好ましくは少なくとも10バール、さらに好ましくは少なくとも80バールであって、1000バール以下、特に好ましくは800バール以下、さらに好ましくは600バール以下の圧力で、少なくとも50℃、特に好ましくは少なくとも150℃、さらに好ましくは少なくとも250℃であって、500℃以下、特に好ましくは400℃以下、さらに好ましくは300℃以下の温度に加熱する方法によって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る方法の特定の実施形態によれば、(メタ)アクリル酸オリゴマーの分割を分割剤の存在下で行う。従って、本発明は、構造IIまたは構造IIIで表される分割剤を使用して構造Iで表される(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するための方法であって、
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、Rは水素原子またはC−C10アルキル基、好ましくはC−Cアルキル基、特に好ましくはC−Cアルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、nは1〜20、好ましくは1〜15、特に好ましくは1〜10の整数である)
【0023】
−O−H II
【0024】
(R−N−H III
【0025】
(式中、Rは水素原子、C−C12アルキル基、好ましくはC−Cアルキル基、さらに好ましくはC−Cアルキル基、または−C2x−OH基(xは1〜12、好ましくは2〜8、特に好ましくは2〜4の整数である)であり、Rは水素原子またはC−C12アルキル基、好ましくはC−Cアルキル基、さらに好ましくはC−Cアルキル基であり、ただし残基Rの両方が水素原子であることはない)
少なくとも50℃、特に好ましくは少なくとも150℃、さらに好ましくは少なくとも250℃であって、500℃以下、特に好ましくは400℃以下、さらに好ましくは300℃以下の温度及び少なくとも1バール、好ましくは少なくとも10バール、さらに好ましくは少なくとも80バールであって、1000バール以下、特に好ましくは800バール以下、さらに好ましくは600バール以下の圧力で、好ましくは流体相で(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割剤と接触させる方法にも関する。
【0026】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、構造IIで表される化合物を分割剤として使用し、構造IIで表される分割剤は、少なくとも2種の構造的に異なる構造IIで表される化合物の混合物であることが特に好ましく、上記混合物は、分割剤の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも50重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも95重量%まで水(R=H)からなる。本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、純水を分割剤として使用する。特に好ましい構造IIで表される分割剤は、水(R=H)以外に、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、t−ブタノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、sec−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のジオール等のアルコールである。さらに好ましい構造IIで表される分割剤は、上記分割剤の少なくとも2種の混合物、特に水とエタノールの混合物または水とブタノールの混合物である。
【0027】
純水及び少なくとも2種の構造的に異なる構造IIで表される化合物の混合物以外に、上に定義した構造IIで表される分割剤とその他のプロトン性化合物、特に構造IIIで表される分割剤またはポリオールとの混合物も使用することができる。
【0028】
本発明に係る方法の一態様では、分割反応時の圧力及び温度条件は、分割反応に関与する全ての反応物質が少なくとも部分的に流体として存在するように選択することが好ましい。
【0029】
予期せぬことではあるが、有利なことに、上述した方法によって、構造IIまたは構造IIIで表される水またはその他の分割剤を任意に使用して、高温・高圧下で(メタ)アクリル酸オリゴマーまたはそのエステルを分割し、(メタ)アクリル酸(分割剤として水を使用した場合)、(メタ)アクリル酸エステル(分割剤としてアルコールを使用した場合)または(メタ)アクリル酸アミド(分割剤として第一級または第二級アミンを使用した場合)を形成することができる。
【0030】
好ましくは、(メタ)アクリル酸二量体(n=1、R=HまたはCH)、(メタ)アクリル酸三量体(n=2、R=HまたはCH)またはこれらの2種類の化合物の混合物を(メタ)アクリル酸オリゴマーとして使用し、残基Rは、水素、アルコール基、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチルまたはイソブチルから好ましくは選択される。特に好ましくは、(メタ)アクリル酸二量体(n=1、R=HまたはCH)、(メタ)アクリル酸三量体(n=2、R=HまたはCH)またはこれらの混合物を(メタ)アクリル酸オリゴマーとして使用し、残基Rは水素原子である。
【0031】
分割剤の存在下で分割を行う本発明に係る方法の実施形態では、分割剤の(メタ)アクリル酸オリゴマーとの接触は、構造IIまたは構造III、好ましくは構造IIで表され、水とは異なるプロトン性化合物の存在下で行うことが好ましい。本発明に係る方法の実施形態によれば、プロトン性化合物を水の代わりに使用することができ、本発明に係る方法の別の実施形態によれば、プロトン性化合物を水とともに使用することができ、後者の実施形態が好ましい。
【0032】
構造IIまたは構造IIIで表される化合物を添加することによって、構造Iで表される(メタ)アクリル酸オリゴマーの分割により、分割剤として水を使用した場合に形成される(メタ)アクリル酸(R=H)に加えて、対応する(メタ)アクリル酸エステルモノマー(R=炭素数1〜12の有機残基)または(メタ)アクリル酸アミド(R=炭素数1〜12の有機残基)を選択的に得ることもできる。エステル化されたオリゴマーを(メタ)アクリル酸オリゴマー(R=アルキル基またはアルコール基)として使用した場合には、所望の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを形成するための(メタ)アクリル酸オリゴマーの対応するモノマーのエステル交換反応を、構造IIで表される化合物を使用することによって選択的に行うことができる。
【0033】
分割剤を使用する場合には、分割剤と(メタ)アクリル酸オリゴマーを、分割剤:(メタ)アクリル酸オリゴマー=0.01:1〜10:1、好ましくは0.1:1〜8:1、さらに好ましくは0.5:1〜6:1の重量比で使用する。
【0034】
分割剤の添加後に分割が発生する本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、(メタ)アクリル酸オリゴマーにおいてオリゴマーとして結合している(メタ)アクリル酸(例えば、二量体では2つの(メタ)アクリル酸分子、三量体では3つの(メタ)アクリル酸分子)のモル量の90%以下、好ましくは80%以下、より好ましくは50%以下のモル量で分割剤を使用する。
【0035】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、(メタ)アクリル酸オリゴマーにおいてオリゴマーとして結合している(メタ)アクリル酸のモル量の少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%のモル量で分割剤を使用する。
【0036】
通常、(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するために分割剤を添加する必要がある場合には、当業者は適当な試験を行って分割に必要な分割剤の量を決定することができる。例えば、純水を分割剤として使用する場合には、(メタ)アクリル酸オリゴマーを(メタ)アクリル酸モノマーに転化させるために、選択された圧力と温度条件において、できるだけ分割が完全に発生するまで、または水をさらに添加しても(メタ)アクリル酸モノマーがそれ以上形成されなくなるまで水を添加し続けることができる。構造IIで表されるアルコールを分割剤として使用する場合には、(メタ)アクリル酸オリゴマーを対応する(メタ)アクリル酸エステルモノマーに転化させるために、できるだけ分割が完全に発生するまで、またはアルコールをさらに添加しても(メタ)アクリル酸モノマーまたは(メタ)アクリル酸エステルモノマーがそれ以上形成されなくなるまでアルコールを添加することができる。
【0037】
構造IIまたは構造IIIで表される化合物を使用して(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割することによって、好ましくは構造IVまたは構造Vで表されるモノマー化合物を分離する。
【0038】
【化3】

【0039】
【化4】

【0040】
(式中、Rは水素原子またはC−C12アルキル基、好ましくはC−Cアルキル基、特に好ましくはC−Cアルキル基であり、ただしR基の両方が水素原子であることはなく、Rは水素原子、C−C12アルキル基、好ましくはC−Cアルキル基、さらに好ましくはC−Cアルキル基、または−C2x−OH基(xは1〜12、好ましくは2〜8、特に好ましくは2〜4の整数である)であり、Rは水素原子またはメチル基である。)
【0041】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、(メタ)アクリル酸オリゴマーは、以下の工程を含む(メタ)アクリル酸の合成方法の工程iii)において(メタ)アクリル酸溶液の蒸留による塔底生成物として得られる組成物として使用される。
i)気相でのCまたはC出発化合物の接触酸化
ii)水中での(メタ)アクリル酸の吸収または凝縮またはその両方
iii)得られた(メタ)アクリル酸水溶液の蒸留による処理
【0042】
また、上記(メタ)アクリル酸の合成方法において、iv)結晶化工程を工程iii)の代わりに設けることができる。一実施形態によれば、結晶化工程iv)では、(メタ)アクリル酸オリゴマーなどの不純物を(メタ)アクリル酸水溶液から取り除くことができる。別の実施形態によれば、結晶化工程iv)では、蒸留によって精製された(メタ)アクリル酸を、(メタ)アクリル酸オリゴマーなどの不純物を分離することによってさらに精製することができる。これらの実施形態に共通なことは、(メタ)アクリル酸オリゴマーなどの不純物が母液と結晶化工程の流出物に蓄積し、本発明に係る(メタ)アクリル酸オリゴマーを分離するための方法に供給することができることである。
【0043】
また、精製と分離工程時に(メタ)アクリル酸合成における異なる位置の塔底に廃物として蓄積する組成物を、本発明に係る(メタ)アクリル酸オリゴマーを分離するための方法に供給することができる。
【0044】
この組成物及び/又は塔底生成物は、好ましくは以下の成分を含む。
(α1)0.1〜70重量%、特に好ましくは5〜60重量%、さらに好ましくは10〜50重量%の(メタ)アクリル酸モノマー(α1−化合物)、
(α2)1〜90重量%、特に好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは20〜30重量%の(メタ)アクリル酸二量体(α2−化合物)、
(α3)1〜25重量%、特に好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは5〜15重量%の(メタ)アクリル酸三量体(α3−化合物)、
(α4)0〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは2〜8重量%の水(α4−化合物)、
(α5)1〜92重量%、特に好ましくは10〜75重量%、さらに好ましくは40〜57重量%の(メタ)アクリル酸三量体よりも大きなオリゴマー(α5−化合物)、
(α6)1〜20重量%、特に好ましくは2〜15重量%、さらに好ましくは5〜10重量%のα1−化合物、α2−化合物、α3−化合物、α4−化合物、α5−化合物とは異なる化合物(副生成物)、
ここで、(α1)〜(α6)の合計は100重量%である。
【0045】
副生成物(α6)は、好ましくは、気相中での酸素によるプロピレンの接触酸化時に主生成物であるアクリル酸に加えて生成する副生成物またはイソブテン、イソブタン、t−ブタノールまたはメタクロレインなどのC出発化合物の酸化時にメタクリル酸に加えて生成する副生成物である。プロピレンからアクリル酸を製造する場合には、副生成物としては、アクロレイン、酢酸またはホルムアルデヒドなどのアクリル酸よりも低い沸点を有する低沸点有機化合物や、マレイン酸、マレイン酸無水物、フルフリルアルデヒドまたはべンズアルデヒドなどのアクリル酸よりも高い沸点を有する高沸点有機化合物が挙げられる。メタクリル酸を製造する場合には、酢酸、プロピオン酸、アルデヒド、マレイン酸無水物を副生成物として挙げることができる。
【0046】
(メタ)アクリル酸オリゴマーを上述した組成物として使用する場合には、連続的操作及び非連続的操作を行うことができ、連続的操作が好ましい。従って、(メタ)アクリル酸水溶液の蒸留時に蓄積する塔底生成物は連続的に取り除かれ、分割に分割剤の添加が必要な場合には、好ましくはポンプを使用して混合装置に供給する。本発明において、塔底流体の連続的な除去とは、一定または一定ではない時間間隔で、連続的に一定の速度で複数の部分において流体が除去されることを意味する。
【0047】
また、分割剤も好ましくはポンプによって混合装置に導入する。少なくとも2種の構造的に異なる分割剤を含む分割剤混合物を使用する場合には、各分割剤を別々に(メタ)アクリル酸オリゴマーを含む組成物と混合するか、混合物として本発明に係る方法に使用する。
【0048】
混合装置内で成分を混合後、少なくとも50℃、特に好ましくは少なくとも150℃、さらに好ましくは少なくとも250℃であって、500℃以下、特に好ましくは400℃以下、さらに好ましくは300℃以下の温度に成分を加熱する。加熱は、少なくとも1バール、好ましくは少なくとも10バール、さらに好ましくは少なくとも80バールであって、1000バール以下、特に好ましくは800バール以下、さらに好ましくは600バール以下の圧力で行う。好ましくは、混合した成分は熱交換器を使用して加熱する。また、上記圧力で各成分を最初に加熱し、次に各成分を混合することもできる。
【0049】
次に、混合・加熱した成分を分割装置内で分割する。分割装置は混合装置と空間的に分離されていることができる。また、成分の混合とそれに続く(メタ)アクリル酸オリゴマーの分割を同一の装置内で行うことができる。
【0050】
分割剤を添加しない場合には、分割剤と混合することなく、(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割装置内で上記圧力で上記温度に加熱して分割する。
【0051】
(メタ)アクリル酸オリゴマーの分割は上記温度と圧力で行うことが好ましい。これによって、経済的に有利な収率を得ることができる。
【0052】
分割反応器における(メタ)アクリル酸オリゴマーの滞留時間は、好ましくは0.1秒〜20分間、特に好ましくは1秒〜15分間、さらに好ましくは1〜10分間である。使用される(メタ)アクリル酸オリゴマーの好ましくは少なくとも30重量%、特に好ましくは少なくとも60重量%、さらに好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%は、分割装置を出た後に構造IVまたはVで表される化合物として存在する。
【0053】
従来技術では、アクリル酸を気体反応混合物から水に吸収させることによって蒸留時に得られる粗(メタ)アクリル酸を結晶化工程によってさらに精製することができることが知られている。(メタ)アクリル酸の結晶化後に得られる母液は、上述した方法を使用することによって分割することができる(メタ)アクリル酸オリゴマーをかなり含んでいる。
【0054】
本発明に係る方法の別の好ましい実施形態では、(メタ)アクリル酸オリゴマーは、以下の工程を含む(メタ)アクリル酸の合成方法の工程IV)の結晶化による精製時に母液として得られる組成物として使用される。
I)気相でのCまたはC出発化合物の接触酸化
II)水中での(メタ)アクリル酸の吸収または凝縮またはその両方による吸収生成物の生成
III)得られた(メタ)アクリル酸水溶液の蒸留による任意の処理
IV)吸収生成物または蒸留によって得られた濃縮(メタ)アクリル酸溶液または双方の結晶化による精製
【0055】
本発明に係る方法の一実施形態では、工程III)を必要な工程として含む。
【0056】
母液は、65重量%以下の(メタ)アクリル酸を好ましくは含む。母液における(メタ)アクリル酸オリゴマーの量は、組成物の総重量の0.1〜50重量%、特に好ましくは0.5〜50重量%、さらに好ましくは1〜30重量%である。
【0057】
この場合、連続的な操作と非連続的な操作を行うことができるが、連続的な操作が好ましい。従って、(メタ)アクリル酸水溶液の蒸留時に蓄積する母液を連続的に取り除き、分割剤を添加する場合には、ポンプを使用して混合装置に供給する。母液は、本発明に係る方法を連続して行う場合には、一定または一定ではない時間間隔で、連続的に一定の速度で複数の部分において除去することができる。この方法のさらなる工程及び好ましい態様は、本発明に係る(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するための方法の出発材料としてのアクリル酸水溶液の蒸留による塔底生成物の使用に関して説明した工程及び態様に対応する。
【0058】
本発明によれば、(メタ)アクリル酸オリゴマーの分割は触媒の存在下で行うことが好ましい。好ましい触媒は、アンチモン、コバルトまたはマンガン系触媒などの金属触媒、酸性塩、硫酸または塩酸などの無機酸触媒、p−トルエンスルホン酸またはメタンスルホン酸などの有機酸触媒、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンチモン、水酸化コバルト、水酸化マンガンまたは水酸化鉛などの水酸化物、塩化亜鉛などの金属塩、またはそれらの少なくとも2種の混合物である。触媒は、純粋な形態または基体(好ましくは耐水性のゼオライトまたはイオン交換樹脂との組み合わせ)に固定して使用することができる。触媒は、(メタ)アクリル酸オリゴマーに対して1〜5,000ppm、特に好ましくは10〜2,000ppm、さらに好ましくは100〜1,000ppmの量で使用することが好ましい。
【0059】
また、本発明は、構造IIまたは構造III、好ましくは構造IIで表される化合物(R及びRは上に定義した通りである)の、構造Iで表される(メタ)アクリル酸オリゴマーを流体相において少なくとも50℃、特に好ましくは少なくとも150℃、さらに好ましくは少なくとも250℃であって、500℃以下、特に好ましくは400℃以下、さらに好ましくは300℃以下の温度及び少なくとも1バール、好ましくは少なくとも10バール、さらに好ましくは少なくとも100バールであって、1000バール以下、特に好ましくは800バール以下、さらに好ましくは600バール以下の圧力で分割するための分割剤としての使用にも関する。特に、本発明は、水、エタノールまたはブタノールなどのアルコール、水とエタノールまたは水とブタノールの混合物の、上述した圧力及び温度条件における構造Iで表される化合物を分割するための分割剤としての使用に関する。
【0060】
また、本発明は、(メタ)アクリル酸を製造するための装置であって、流体を輸送するように接続された構成要素として、(メタ)アクリル酸合成装置、冷却吸収装置または凝縮装置、蒸留装置及び/又は結晶化装置及び(メタ)アクリル酸オリゴマー分割装置を含み、(メタ)アクリル酸オリゴマー分割装置が、分割剤貯槽と、第1及び第2の搬送装置と、混合装置と、加熱装置と、高合金鋼、好ましくはニッケル系鋼からなる分割反応器と、少なくとも第1〜第5の導管と、を含み、
(β1)第1の搬送装置が上に定義した(メタ)アクリル酸オリゴマーを含む組成物を供給する供給ラインを含み、
(β2)分割剤貯槽が第1の導管によって第2の搬送装置に接続され、
(β3)第1及び第2の搬送装置が第1及び第3の導管によって混合装置に接続され、
(β4)混合装置が第4の導管によって加熱装置に接続され、
(β5)加熱装置が第5の導管によって分割反応器に接続されている装置にも関する。
【0061】
本発明によれば、「流体を輸送するように」とは、気体、液体またはそれらの混合物が対応するラインを介して輸送されることを意味する。特に、パイプ、ポンプ等を使用することができる。
【0062】
分割反応器としては、上記圧力・温度条件で作動させることができる当業者に公知のあらゆる反応器を使用することができる。好ましい加熱装置は、パイプ反応器と、パイプバンドル反応器、テイラー反応器(Taylor reactor)である。
【0063】
本発明に係るオリゴマー分割装置の好ましい実施形態では、混合装置、加熱装置、分割反応器から選択される少なくとも2つが空間ユニット(spatial unit)を形成している。混合装置、加熱装置、分割反応器が空間ユニットを形成していることがさらに好ましい。この場合、空間ユニットとは、混合装置と加熱装置がある部分にともに存在しており、混合・加熱工程が同じ位置で行われることを意味する。加熱装置と分割反応器がある部分にともに存在していることが特に好ましい。
【0064】
本発明に係るオリゴマー分割装置では、(β6)分割反応器において凝縮装置が第6の導管を介して取り付けられていることがさらに好ましい。この凝縮装置によって(メタ)アクリル酸を高沸点不純物から分離することが好ましい。凝縮装置は分割反応器よりも低い圧力で作動させることがさらに好ましい。好ましくは、分割反応器内で形成される粗生成物を凝縮装置内で膨張させる。この操作は、好ましくは窒素またはアルゴンなどの保護ガスの存在下で行う。また、凝縮装置と分離された膨張装置内において、凝縮装置に達する前に分割反応器で生じた粗生成物を膨張させ、膨張後に得られた流体相を膨張装置内に存在する気相から分離することもでき、気相からの流体相の分離は、当業者に公知の分離装置(例えばサイクロン)を使用して行うことができる。(メタ)アクリル酸オリゴマーを依然として大量に含む液相は、圧縮後に分割装置に供給することができる。(メタ)アクリル酸モノマーに加えて(メタ)アクリル酸オリゴマーを依然として大量に含む気相は、さらなる精製のために凝縮装置または蒸留塔などの別の精製装置に供給することができる。凝縮装置内で分離された高沸点不純物を第1の搬送装置に再び供給することが好ましい。この操作は、好ましくはオリゴマーの不完全な分割によって行う。一方で、モノマーを含まない高沸成分はリサイクルしないことが好ましい。また、凝縮装置によって分離された(メタ)アクリル酸は、水に含まれる場合には、さらなる精製のための結晶化に供給することが好ましい。
【0065】
アクリル酸を製造するための装置は、アクリル酸を合成するための(メタ)アクリル酸合成装置と冷却吸収装置を含む領域に、以下の構成を含むことが好ましい。すなわち、プロピレン及び窒素などの任意の不活性ガスまたはCOまたは窒素酸化物などの燃焼ガスを、第1の反応器につながる反応物質供給ラインによって第1の接触酸化のための第1の反応器に供給する。第1の反応器は別のラインによって第2の反応器に接続され、第1の反応器からの第1の接触酸化による生成物を第2の接触酸化のために第2の反応器に供給する。第2の接触酸化によるアクリル酸含有生成物は、第2の反応器と冷却吸収装置の間に位置する供給ラインを介して冷却吸収装置の下側半分に供給される。冷却吸収装置では、第2の接触酸化による生成物を水と接触させ、水は第2の接触酸化による生成物の供給ラインの上方で冷却吸収装置に導入される。一方、アクリル酸と水を含む第1の相(=アクリル酸水溶液)を第2の接触酸化による生成物の供給ラインよりも下方で冷却吸収装置から排出させる。第1の相は、少なくとも部分的に冷却吸収装置に戻すことができる。冷却吸収装置に再供給されない第1の相は、例えば共沸分離のために蒸留装置に供給され、アクリル酸を濃縮・精製する。また、冷却吸収装置に再供給されない第1の相を、同様にアクリル酸を精製する結晶化装置に供給することもできる。さらに、冷却吸収装置に再供給されない第1相をまず蒸留装置に供給し、蒸留装置によって精製・濃縮されたアクリル酸を結晶化装置に供給することもできる。アクリル酸と水を含む第2の相を、第1の相の戻しラインよりも上方かつ冷却吸収装置への水供給ラインよりも下方で冷却吸収装置から排出することができる。第2の相は、第1の相と同様に蒸留装置または結晶化装置に供給することができる。冷却吸収装置から排出される排ガスは、接触燃焼に供給することができる。接触燃焼による燃焼ガスは、不活性ガスとして第1の反応器に供給することができる。アクリル酸の濃縮から回収された水は、冷却吸収装置に戻すことができる。アクリル酸の製造に関するさらなる詳細はドイツ特許出願第197 40 252 A1号に開示されており、その開示内容を本明細書の開示内容の一部として援用する。
【0066】
(メタ)アクリル酸を製造するための装置は、(メタ)アクリル酸合成装置と冷却吸収装置を含み、C出発化合物と酸素の接触気相酸化によって(メタ)アクリル酸を合成する。(メタ)アクリル酸は、イソブテン、イソブタン、t−ブタノール、イソブチルアルデヒド、メタクロレインまたはメチル−t−ブチルエーテルの接触気相酸化によって得ることが特に好ましい。さらなる詳細は欧州特許第0 092 097 B1号、欧州特許第0 058 927号、欧州特許第0 608 838号に開示されており、これらの開示内容を本明細書の開示内容の一部として援用する。
【0067】
本発明に係る装置の好ましい実施形態では、供給ラインを介して第1の搬送装置に供給される組成物は、(メタ)アクリル酸溶液の蒸留によって塔底生成物として得られる組成物に対応する。
【0068】
本発明に係る装置の好ましい実施形態では、供給ラインを介して第1の搬送装置に供給される組成物は、結晶化による蒸留液の精製時に母液として得られる組成物に対応する。
【0069】
また、本発明は、上述した装置の(メタ)アクリル酸の製造のための使用に関する。
【0070】
また、本発明は、上述した装置を使用して得られる(メタ)アクリル酸の、繊維、成型品、フィルム、発泡体、革添加剤、紙添加剤、洗剤、超吸収性ポリマーまたは衛生用品における使用に関する。
【0071】
以下、非限定的な図面によって本発明をさらに詳しく説明する。
【0072】
図1に係る反応物質タンク1に保持された(メタ)アクリル酸オリゴマーを含む組成物を、反応物質弁3によって調節される反応物質ライン2を介して、第1の搬送装置としての反応物質圧力ポンプ4に供給する。反応物質圧力ポンプ4によって(メタ)アクリル酸オリゴマーを含む組成物を圧縮し、混合装置5に供給する。分割剤を使用しない場合には、混合装置を省略することができる。分割剤貯槽6の分割剤を、分割剤弁8によって調節される分割剤ライン7を介して、分割剤圧力ポンプ9に供給する。分割剤圧力ポンプ9は第2の搬送装置として分割剤を圧縮し、分割剤を混合装置5に供給する。混合装置5内の反応物質と分割剤の混合物は、分割反応器を含む加熱装置10に供給される。加熱装置10は、熱交換器11によって加熱される。加熱装置10内で分割された(メタ)アクリル酸オリゴマーの分割反応器内の生成物は、圧力解放弁12によって圧力から解放され、凝縮器13に供給される。保護ガス供給ライン14によって保護ガスを凝縮器13に供給する。凝縮器13は冷却剤供給ライン15と冷却剤排出ライン16によって冷却され、高沸成分は凝縮器13の下部領域で凝縮される。凝縮器ヘッド17では、任意に水を含む(メタ)アクリル酸が純粋生成物ライン18によって結晶化装置19に供給され、(メタ)アクリル酸を水と分離してさらに精製する。結晶化装置19は、蒸留または凝縮装置であってもよい。凝縮器13の下部領域では、高沸成分は高沸成分タンク20に供給され、反応物質タンク1に戻すか、高沸成分処理装置22に供給することができる。
【0073】
図2は、以下の実施例で使用した実験構造を示す。オリゴマー分割装置の各部に関しては、図1の詳細を参照するものとする。
【0074】
図3は本発明に係る分割装置の特定の実施形態を示しており、分割生成物の圧力解放が図1に示すように凝縮器13内では行われず、凝縮器と分離された膨張装置23(フラッシュ装置)内で行われる。圧力解放後、フラッシュ装置23内で液相P1と気相P2が得られる(図3を参照)。(メタ)アクリル酸モノマーに加えて少量の(メタ)アクリル酸オリゴマーを含む気相は、例えば蒸発器または蒸留塔である精製装置13に導入することができ、導入前に任意に気相P2の成分を凝縮させることができる。(メタ)アクリル酸オリゴマーを依然として大量に含む液相P1は、高沸成分処理装置22に供給する(25)か、分割のために加熱装置10に戻すことができる。分割のために分割剤を使用する場合には、加熱装置への液相P1の供給は、図3に示すように混合装置5を介して行うことができる。分割される組成物に分割剤を添加しない場合には、対応する圧縮後に液相P1を加熱装置10に直接供給することができる(図示せず)。
【0075】
非限定的な実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例)
図2に示す装置を使用した。分割反応器の前に2つのHPLCポンプを搬送装置として使用し、80×15.5mmのSULZER社製スタティックミキサーを使用した。分割反応器としては、Marlotherm浴中のコイル状チューブ反応器を使用した。分割反応器で得られた圧力下の生成物の圧力は、圧力解放弁としてHoke社製ばね弁を介して解放し、インテンシブクーラーDN50を有するフラッシュ蒸留ヘッドでの凝縮に生成物を供給した。フラッシュ蒸留ヘッドの下部で回収された生成物の成分を、GCとカール−フィッシャー滴定によって調べた。このようにして得られた組成から分割率(%)を決定した。分割率は以下の通り定義される。
【0076】
分割率=100×(分割された二量体のモル数/使用した組成物に含まれる二量体のモル数)
【0077】
(メタ)アクリル酸オリゴマーは、アクリル酸水溶液の蒸留時の塔底生成物として得られた組成物として使用した。組成は以下の実施例に記載している。
【0078】
分割に対する温度の影響の調査
【0079】
実施例1〜3
0.1重量%の水、54重量%のアクリル酸、31重量%のアクリル酸二量体を含み、アクリル酸水溶液の蒸留によって得られた塔底生成物を、上述した装置内において異なる温度で分割した。分割率を決定した。
【0080】
分割率について以下の値が得られた。
【0081】
【表1】

【0082】
表1から明らかなように、分割率は温度の上昇に伴って増加する。
【0083】
分割に対する水の量の影響の調査
【0084】
実施例4〜7
0.1重量%の水、54重量%のアクリル酸、31重量%のアクリル酸二量体を含み、アクリル酸水溶液の蒸留によって得られた塔底生成物を、上述した装置内において水の量を変えて分割した。分割率を決定した。
【0085】
分割率について以下の値が得られた。
【0086】
【表2】

【0087】
表2から明らかなように、分割率は水の量と温度の上昇に伴って増加する。
【0088】
分割に対する滞留時間の影響の調査
【0089】
実施例8及び9
2重量%の水、59重量%のアクリル酸、26重量%のアクリル酸二量体を含み、アクリル酸水溶液の蒸留によって得られた塔底生成物を、上述した装置内において滞留時間を変化させて分割した。分割率を決定した。
【0090】
分割率について以下の値が得られた。
【0091】
【表3】

【0092】
表3から明らかなように、反応は実質的に自発的に発生し、(280℃では)3分後に終了する。
【0093】
分割に対するブタノールの添加の影響の調査
【0094】
実施例10
0.1重量%の水、60重量%のアクリル酸、22重量%のアクリル酸二量体を含み、アクリル酸水溶液の蒸留によって得られた塔底生成物を、ブタノールを分割剤として使用して分割した。分割率を決定した。
【0095】
分割率について以下の値が得られた。
【表4】

【0096】
表4から明らかなように、本発明に係る分割方法によって、約5分間以内で95%の分割率を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係るオリゴマー分割装置の概略を示す。
【図2】実施例で使用したオリゴマー分割装置の概略構造を示す。
【図3】本発明に係るオリゴマー分割装置の特定の設計の概略を示す。
【符号の説明】
【0098】
1 反応物質タンク
2 反応物質ライン
3 反応物質弁
4 反応物質圧力ポンプ
5 混合装置
6 分割剤貯槽
7 分割剤ライン
8 分割剤弁
9 分割剤圧力ポンプ
10 加熱装置
11 熱交換器
12 圧力解放弁
13 凝縮器、任意の蒸留装置
14 保護ガス供給ライン
15 冷却剤供給ライン
16 冷却剤排出ライン
17 凝縮器ヘッド
18 純粋生成物ライン
19 結晶化装置
20 高沸成分タンク
21 高沸成分リサイクルライン
22 高沸成分処理装置
23 フラッシュ装置
24 液相P1の排出ライン
25 気相P2の排出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造Iで表される(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するための方法であって、
【化1】

(式中、Rは水素原子またはC−C10アルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、nは1〜200の整数である)
前記(メタ)アクリル酸オリゴマーを少なくとも1バールの圧力で少なくとも50℃の温度に加熱する方法。
【請求項2】
構造IIまたは構造IIIで表される分割剤を使用して、構造Iで表される(メタ)アクリル酸オリゴマーを分割するための方法であって、
【化2】

(式中、Rは水素原子またはC−C10アルキル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、nは1〜200の整数である)
−OH II
(R−N−H III
(式中、Rは水素原子、C−C12アルキル基または−C2x−OH基(xは1〜12の整数である)であり、Rは水素原子またはC−C12アルキル基であり、ただしR基の両方が水素原子であることはない)
前記(メタ)アクリル酸オリゴマーを少なくとも50℃の温度及び少なくとも1バールの圧力で前記分割剤と接触させる方法。
【請求項3】
前記分割剤と前記(メタ)アクリル酸オリゴマーを、分割剤:(メタ)アクリル酸オリゴマー=0.01:1〜10:1の重量比で使用する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分割剤が、水、エタノール、n−ブタノールまたはこれらの化合物の少なくとも2種の混合物である請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記分割によって、構造IVまたは構造Vで表される化合物を分離する前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【化3】

【化4】

(式中、Rは水素原子またはC−C12アルキル基であり、ただしR基の両方が水素原子であることはなく、Rは水素原子、C−C12アルキル基または−C2x−OH基(xは1〜12の整数である)であり、Rは水素原子またはメチル基である。)
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸オリゴマーを、以下の工程を含む(メタ)アクリル酸の合成方法の工程iii)において、(メタ)アクリル酸溶液の蒸留時の塔底生成物として得られる組成物として使用する前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
i)気相中でのCまたはC出発化合物の接触酸化
ii)水中での形成された(メタ)アクリル酸の吸収または凝縮またはその両方
iii)得られた(メタ)アクリル酸水溶液の蒸留による処理
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸オリゴマーを、以下の工程を含む(メタ)アクリル酸の合成方法の工程IV)の結晶化による精製時に母液として得られる組成物として使用する前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
I)気相中でのCまたはC出発化合物の接触酸化
II)水中での(メタ)アクリル酸の吸収または凝縮またはその両方による吸収生成物の生成
III)得られた(メタ)アクリル酸水溶液の蒸留による任意の処理
IV)吸収生成物または蒸留によって得られた濃縮(メタ)アクリル酸溶液または双方の結晶化による精製
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸オリゴマーを少なくとも250℃の温度及び少なくとも10バールの圧力で前記分割剤と接触させる請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記分割を触媒の存在下で行う前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の構造IIまたは構造IIIで表される化合物の、構造Iで表される(メタ)アクリル酸オリゴマーを少なくとも50℃の温度及び少なくとも1バールの圧力で分割するための分割剤としての使用。
【請求項11】
(メタ)アクリル酸を製造するための装置であって、流体を輸送するように接続された構成要素として、(メタ)アクリル酸合成装置、冷却吸収装置、蒸留装置及び/又は結晶化装置及び(メタ)アクリル酸オリゴマー分割装置を含み、前記(メタ)アクリル酸オリゴマー分割装置が、分割剤貯槽と、第1及び第2の搬送装置と、混合装置と、加熱装置と、分割反応器と、少なくとも第1〜第5の導管と、を含み、
(β1)前記第1の搬送装置が、請求項1に記載の(メタ)アクリル酸オリゴマーを含む組成物を供給する供給ラインを含み、
(β2)前記分割剤貯槽が第1の導管によって前記第2の搬送装置に接続され、
(β3)前記第1及び第2の搬送装置が第2及び第3の導管によって前記混合装置に接続され、
(β4)前記混合装置が第4の導管によって前記加熱装置に接続され、
(β5)前記加熱装置が第5の導管によって前記分割反応器に接続されている装置。
【請求項12】
前記供給ラインを介して前記第1の搬送装置に供給される前記組成物が請求項1に記載の組成物に対応する請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記供給ラインを介して前記第1の搬送装置に供給される前記組成物が請求項6または7に記載の組成物に対応する請求項11に記載の装置。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の装置の(メタ)アクリル酸の製造のための使用。
【請求項15】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の装置を使用して得られる(メタ)アクリル酸の、繊維、成型品、フィルム、発泡体、革添加剤、紙添加剤、洗剤、超吸収性ポリマーまたは衛生用品における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−523120(P2007−523120A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−553550(P2006−553550)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/001705
【国際公開番号】WO2005/080308
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(504341139)ストックハウゼン ゲーエムベーハー (35)
【Fターム(参考)】