説明

流体装置

【課題】装置構成を簡略化および小型化して、流体の送液方向を切り替え可能な、流体装置の提供を図る。
【解決手段】流体装置1は、双方向に通気または通液自在な内部流路を設けた筐体11の内部に、所定方向の流れを内部流路に発生させる圧電ポンプ12Aと、圧電ポンプ12Aの所定方向の流れとは逆向きの流れを内部流路に発生させる圧電ポンプ12Bと、を備える。これにより、圧電ポンプ12Aと圧電ポンプ12Bとのうちの一方を主体として動作させることで、流体の送液方向を切り替えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体の送液方向(または送気方向)を切り替え可能な流体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコンのような小型の電子機器において、流体制御を必要とする燃料電池や水冷装置などを設けることがある。流体制御を担う流体装置では、従来は流体の圧力源としてモーターポンプを採用することが一般的であったが、小型化や制振化、省電力化などの要望から圧電素子を利用したマイクロポンプを採用する例が増えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図1は、従来のマイクロポンプの構成例を説明する図である。マイクロポンプ201はハウジング210、導入フロート弁240、吐出フロート弁250、およびダイヤフラムアクチュエータ120A,120Bを備える。ダイヤフラムアクチュエータ120A,120Bはそれぞれ、上下に屈曲振動してマイクロポンプ201の内部空間の圧力を変化させ、導入フロート弁240から吐出フロート弁250への一方向の流れを生じさせる。
【0004】
また流体装置では、流体の送液方向(または送気方向、以下の説明では両者を統一して送液方向と称する)を切り替えることがある(例えば、特許文献2参照)。この場合、圧力源として正圧源または負圧源を用意し、両者を切り替えて使用する。そのため、使用する圧力源を切り替える接続切替弁が流体装置に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−092677号公報
【特許文献2】特開2002−103263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、流体装置において流体の送液方向を切り替えようとするならば、正負の流体圧源や接続切替弁、それらを接続する複数の配管が必要で、装置構成が複雑化、大型化していた。そこで本発明は、装置構成を簡略化および小型化して、流体の送液方向を切り替え可能な、流体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の流体装置は、双方向に通気または通液自在な内部流路を設けた筐体の内部に、所定方向の流れを内部流路に発生させる第1のポンプ部と、第1のポンプ部の所定方向の流れとは逆向きの流れを内部流路に発生させる第2のポンプ部と、を備える。
【0008】
例えば、第1および第2のポンプ部の流路導入口側を互いに連通させ、流路吐出口側を筐体外部に向ける場合、一方側に配置するポンプ部を主体的に駆動させることで、一方側のポンプ部に接続された送液対象(または送気対象、以下の説明では両者を統一して送液対象と称する)に流体を送ることができる。また,他方側のポンプ部を主体的に駆動させることで、他方側のポンプ部に接続された送液対象に流体を送ることができる。
【0009】
また例えば、第1および第2のポンプ部の流路吐出口側を互いに連通させ、流路導入口側を筐体外部に向ける場合、一方側のポンプ部を主体的に駆動させることで、他方側のポンプ部に接続された送液対象に流体を送ることができる。また,他方側のポンプ部を主体的に駆動させることで、一方側のポンプ部に接続された送液対象に流体を送ることができる。
【0010】
このように、本発明では主体的に駆動させるポンプ部を切り替えることで、流体の送液方向を切り替えられる。さらには、接続切替弁を設ける必要がなくなるとともに配管接続が簡略化でき、装置構成の簡略化と小型化とを進展させられる。
【0011】
本発明の第1および第2のポンプ部は、圧電ポンプを備えると好適である。圧電ポンプは、内部流路に連通するポンプ口を設けたポンプ室と、内部流路のポンプ口に対向する壁面に設けた流路吐出口と、ポンプ室のポンプ口に対向する壁面を構成するダイアフラムと、ダイアフラムを屈曲振動させる圧電素子と、を備え、ポンプ室の容積変化に基づいて内部流路に流れを発生させる。この構成によれば、ポンプ部自体の小型化と省電力化とを進展させられる。また、内部流路内にポンプ部の構成部材が介在せず、いずれかの圧電ポンプを非駆動としても内部流路内での圧力損失の発生を抑制できる。
【0012】
本発明の流体装置は、第1および第2のポンプ部を択一的に駆動させる制御部をさらに備えると好適である。これにより両者を同時駆動する場合よりも内部流路内での圧力損失を抑制できる。
【0013】
本発明の第1および第2のポンプ部はそれぞれ、複数の圧電ポンプを備えると好適である。この構成では、第1および第2のポンプ部がそれぞれ複数段の圧電ポンプで構成され、これにより流体圧を増加させることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、主体的に駆動させるポンプ部を切り替えることで、流体の送液方向を切り替えられる。さらには、接続切替弁を設ける必要がなくなるとともに配管接続が簡略化でき、装置構成の簡略化と小型化とを進展させられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のマイクロポンプの構成例を説明する図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る流体装置の構成例を説明する図である。
【図3】圧電ポンプの動作を説明する図である。
【図4】流体装置の動作制御を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る流体装置の構成例を説明する図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る流体装置の構成例を説明する図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る流体装置の構成例を説明する図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る流体装置の構成例を説明する図である。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る流体装置の構成例を説明する図である。
【図10】流体装置のP−Q特性を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
《第1の実施形態》
以下、本願発明の第1の実施形態に係る流体装置の構成を、流体として空気を用いる例に基づいて説明する。なお、流体として気体ではなく液体を用いたり、気液混合流、固液混合流、固気混合流などを用いたりしてもよい。
【0017】
図2(A)は、第1の実施形態に係る流体装置1の模式断面図である。
流体装置1は、圧電ポンプ12A,12Bと内部流路とが形成された筐体11を備える。筐体11は、吐出口形成板2A,2B、流路板3A,3B、ポンプ口形成板4A,4B、および壁面板5A,5Bを備える積層構造であり、筐体内部に振動板6A,6Bを収容している。積層構造を採用することにより装置構成を大幅に低背化できる。
図2(B)は、圧電ポンプ12Aの分解斜視図である。なお、圧電ポンプ12Bの構造は圧電ポンプ12Aと同様であり、その図示は省く。圧電ポンプ12Aは、吐出口形成板2A、流路板3A、ポンプ口形成板4A、壁面板5A、および、振動板6A(ダイアフラム20および圧電素子22)を備えて構成している。同様に圧電ポンプ12Bは、吐出口形成板2B、流路板3B、ポンプ口形成板4B、壁面板5B、および振動板6Bを備えて構成している。
【0018】
吐出口形成板2A,2Bは平面視してそれぞれ矩形外形のPETシートからなり、流路吐出口13A,13Bが中央に形成されている。流路板3A,3Bはそれぞれ平面視して矩形外形のPETシートからなり、内部流路となる溝15A,15Bが中央の開口部から端部手前まで設けられている。ポンプ口形成板4A,4Bはそれぞれ平面視して矩形外形のPETシートからなり、ポンプ口16A,16Bが中央に形成され、内部流路となる孔17A,17Bが端部手前に形成されている。壁面板5A,5Bはそれぞれ平面視して矩形外形、円形内形のPETシートからなり、内部流路となる孔18A,18Bが端部手前に形成され、内部空間19とポンプ室23A,23Bとになる空間が中央に形成されている。
【0019】
振動板6A,6Bはそれぞれ、ダイアフラム20、および圧電素子22を備える。ダイアフラム20は、内部空間19とポンプ室23A,23Bとの間を区画する位置で、全周にわたって壁面板5A,5Bに固定されている。圧電素子22は、ダイアフラム20に接合されており内部空間19に収容する。
【0020】
流路吐出口13Aは内部流路における下流側の端部に設けている。流路吐出口13Bは内部流路における上流側の端部に設けている。溝15A,15Bは流路吐出口13A,13Bと孔17A,17Bとに連通し、孔18A,18Bは孔17A,17Bと流路導入口14A,14Bとに連通する。流路導入口14A,14Bは内部空間19に露出する。これらが、流路吐出口13A,13B間の内部流路を構成している。また、ポンプ口16A,16Bは、流路吐出口13A,13Bに対向する位置で内部流路(溝15A,15B)に連通するとともに、ポンプ室23A,23Bに連通する。
【0021】
このような構成の流体装置1において、振動板6A,6Bの圧電素子22はそれぞれ交番電圧が印加されることで面方向に伸縮する。振動板6A,6Bは、圧電素子22の面方向伸縮に伴い図中上下に屈曲振動し、これによりポンプ室23A,23Bに容積変化が生じる。詳細な動作や制御の説明は後述するが、ポンプ室23A,23Bの容積変化により、圧電ポンプ12A,12Bそれぞれで流路導入口14A,14Bから流路吐出口13A,13Bへ流体が流れることになる。圧電素子22を利用することにより、従来のモータの回転振動よりも制振性、静音性、および省電力性を高められる。
【0022】
次に、圧電ポンプ12Aの駆動時動作の詳細について説明する。なお、圧電ポンプ12Bの駆動時動作の詳細については圧電ポンプ12Aと同様であり、その説明は省く。
【0023】
図3(A)は、圧電ポンプ12Aの初期状態(非電圧印加時)の拡大断面図である。このとき圧電素子22は伸縮せず、ダイアフラム20は平坦状である。
図3(B)は、交番電圧の最初の1/4周期での圧電ポンプ12Aの拡大断面図である。このとき圧電素子22は伸長し、ダイアフラム20は下に凸に屈曲する。これによりポンプ室23Aの容積が拡張して、ポンプ口16Aからポンプ室23Aに流体が吸い込まれ、溝15Aで端部から中央に向いた流れが生じる。
図3(C)は、交番電圧の次の1/4周期での圧電ポンプ12Aの拡大断面図である。このとき圧電素子22は初期状態に戻り、ダイアフラム20は平坦状に戻る。これによりポンプ室23Aの容積が縮小して、ポンプ室23Aからポンプ口16Aに流体がはき出され、溝15Aを流れてきた流体を一緒に巻き込みながら、流路吐出口13Aから流れ出る。
図3(D)は、交番電圧の次の1/4周期での圧電ポンプ12Aの拡大断面図である。このとき圧電素子22は短縮し、ダイアフラム20は上に凸に屈曲する。これによりポンプ室23Aの容積が縮小して、ポンプ室23Aからポンプ口16Aに流体がはき出され、溝15Aを流れてきた流体を一緒に巻き込みながら、流路吐出口13Aから流れ出る。
図3(E)は、交番電圧の次の1/4周期での圧電ポンプ12Aの拡大断面図である。このとき圧電素子22は初期状態に戻り、ダイアフラム20は平坦状に戻る。これによりポンプ室23Aの容積が拡張して、ポンプ口16Aからポンプ室23Aに流体が吸い込まれる。溝15Aを流れてきた流体は慣性により流れ続け、一部がポンプ口16Aに吸い込まれ、ほとんどが流路吐出口13Aから流れ出つづける。
【0024】
圧電ポンプ12Aは、駆動時に上述の交番電圧の各周期の状態(図3(B)〜(E))が繰り返され、流路吐出口13Aから流体を吐出しつづけることになる。
【0025】
図4は、流体装置1における圧電ポンプ12A,12Bの駆動制御の詳細について説明する図である。流体装置1を制御する制御部25は、圧電ポンプ12A,12Bと交番電圧源との間に設けた接続切替スイッチを切り替えて、圧電ポンプ12A,12Bのいずれか一方を交番電圧源に接続する。そのため圧電ポンプ12A,12Bは、交番電圧源とアースとの間に択一的に接続されて駆動する。
【0026】
すると、流体装置1の内部流路において、図2に示す圧電ポンプ12Aの流路導入口14Aから流路吐出口13Aへの流体の流れ、または、圧電ポンプ12Bの流路導入口14Bから流路吐出口13Bへの流体の流れが生じることになる。
【0027】
ここで、本実施形態の流体装置1では、流路吐出口13Aは流路導入口14A、内部空間19を介して流路導入口14Bから流路吐出口13Bまで連通しており、圧電ポンプ12A,12B共に高い吐出圧を有することから、いずれかを主体的に駆動させることで、流路吐出口13Aと流路吐出口13Bとの間で流体の流れが生じる。
圧電ポンプ12Aに接続された送液対象に流体を送る場合には、制御部25で下流側に配置する圧電ポンプ12Aを主体的に駆動させることにより、圧電ポンプ12Bの流路吐出口13B、流路導入口14B、内部空間19、圧電ポンプ12Aの流路導入口14Aを介して流路吐出口13Aから、送液対象に流体を送ることができる。
一方、圧電ポンプ12Bに接続された送液対象に流体を送る場合には、制御部25で上流側に配置する圧電ポンプ12Bを主体的に駆動させることにより、圧電ポンプ12Aの流路吐出口13A、流路導入口14A、内部空間19、圧電ポンプ12Bの流路導入口14Bを介して流路吐出口13Bから、送液対象に流体を送ることができる。
【0028】
以上、説明したように流体装置1は、主体的に駆動する圧電ポンプを選択することにより、流体の流れる方向を切り替えられる。この流体装置1を単一の圧力源とすることで正負2つの圧力源や接続切替弁が必要なくなるため、装置構成が簡略化、および小型化できる。また、内部流路での流体の流れを阻害する弁構造など、どのような構成部材も内部流路に介在しないので、圧電ポンプ12A,12Bのいずれかが非駆動であっても内部流路内での圧力損失の発生が小さいというメリットもある。
【0029】
また、この構成では、圧電ポンプ12A,12Bの構造が共通であるため、同一の2つの圧電ポンプを貼り合わせて流体装置1を製造できる。
【0030】
《第2の実施形態》
次に、本願発明の第2の実施形態に係る流体装置の構成を説明する。図5は、第2の実施形態に係る流体装置31の模式断面図である。なお、流体装置31において前述の流体装置1と同様な構成には同じ符号を付し、その説明を省く。
【0031】
この流体装置31は、圧電ポンプごとに設けていた壁面板を共通化した一つの壁面板35と、内部空間19に連通することなく孔17A,17B間を直接接続する孔38と、を設け、圧電ポンプ32A,32Bを構成している。
【0032】
この構成では、孔17A,17Bと内部空間19とを連通するためのスペースを省略でき、配管構造の簡略化と装置構成の低背化とを進展させられる。なお、この構成では内部空間19が完全に外部から遮断されることで、内部空間19内の密度などによっては振動板6A,6Bの抵抗が増え、振動板6A,6Bの振幅が抑制されてしまう。そのため、内部空間19を外部に連通させる連通口(不図示)を設けるようにすると好適である。
【0033】
《第3の実施形態》
次に、本願発明の第3の実施形態に係る流体装置の構成を説明する。図6(A)は、第3の実施形態に係る流体装置41の模式断面図である。なお、流体装置41において前述の流体装置1と同様な構成には同じ符号を付し、その説明を省く。
【0034】
この流体装置41は、第1の実施形態と同じ構成の圧電ポンプ12A,12B、圧電ポンプ12Aと同一の構成であり圧電ポンプ12Aに積層した圧電ポンプ42A、および、圧電ポンプ12Bと同一の構成であり圧電ポンプ12Bに積層した圧電ポンプ42B、を備える。
圧電ポンプ42A,42Bはそれぞれ、流路吐出口43A,43B、流路導入口44A,44B、および内部空間49A,49Bが形成されている。
【0035】
本実施形態の流体装置41では、圧電ポンプ42Aの内部空間49Aが圧電ポンプ12Aの流路吐出口13Aに連通する。また、圧電ポンプ42Bの内部空間49Bが圧電ポンプ12Bの流路吐出口13Bに連通する。そのため、圧電ポンプ42Aの流路吐出口43Aは、流路導入口44A、内部空間49A、圧電ポンプ12Aの流路吐出口13A、流路導入口14A、内部空間19、圧電ポンプ12Bの流路導入口14B、流路吐出口13B、圧電ポンプ42Bの内部空間49B、および流路導入口44Bを介して、圧電ポンプ42Bの流路吐出口43Bに連通する。したがって、内部流路の下流側に配置する圧電ポンプ12Aと圧電ポンプ42Aとのうちの一方または両方を主体的に駆動させることにより、圧電ポンプ42Bの流路吐出口43Bから圧電ポンプ42Aの流路吐出口43Aに流体が流れ、圧電ポンプ42Aの流路吐出口43Aに接続される送液対象に流体を送ることができる。
一方、内部流路の上流側に配置する圧電ポンプ42Aと圧電ポンプ12Bとのうちの一方または両方を主体的に駆動させることにより、圧電ポンプ42Aの流路吐出口43Aから圧電ポンプ42Bの流路吐出口43Bに流体が流れ、圧電ポンプ42Bの流路吐出口43Bに接続される送液対象に流体を送ることができる。
【0036】
このような構成で、圧電ポンプ12Aとともに圧電ポンプ42Aも駆動させることにより、または圧電ポンプ12Bとともに圧電ポンプ42Bも駆動させることにより、圧電ポンプ12A,12B単体を駆動するよりも流体圧を増幅することができる。
【0037】
図6(B)は、第3の実施形態の別の構成例に係る流体装置45の模式断面図である。なお、流体装置45において前述の流体装置31と同様な構成には同じ符号を付し、その説明を省く。
【0038】
この流体装置45は、第2の実施形態と同じ構成の圧電ポンプ32A,32B、圧電ポンプ32Aに積層した圧電ポンプ42A、および、圧電ポンプ32Bに積層した圧電ポンプ42B、を備える。
【0039】
本実施形態の流体装置45では、圧電ポンプ42Aの内部空間49Aが圧電ポンプ32Aの流路吐出口13Aに連通する。また、圧電ポンプ42Bの内部空間49Bが圧電ポンプ32Bの流路吐出口13Bに連通する。そのため、圧電ポンプ42Aの流路吐出口43Aは、流路導入口44A、内部空間49A、圧電ポンプ32Aの流路吐出口13A、圧電ポンプ32Bの流路吐出口13B、圧電ポンプ42Bの内部空間49B、および流路導入口44Bを介して、圧電ポンプ42Bの流路吐出口43Bに連通する。したがって、内部流路の下流側に配置する圧電ポンプ32Aと圧電ポンプ42Aとのうちの一方または両方を主体的に駆動させることにより、圧電ポンプ42Bの流路吐出口43Bから圧電ポンプ42Aの流路吐出口43Aに流体が流れ、圧電ポンプ42Aの流路吐出口43Aに接続される送液対象に流体を送ることができる。
一方、内部流路の上流側に配置する圧電ポンプ42Bと圧電ポンプ32Bとのうちの一方または両方を主体的に駆動させることにより、圧電ポンプ42Aの流路吐出口43Aから圧電ポンプ42Bの流路吐出口43Bに流体が流れ、圧電ポンプ42Bの流路吐出口43Bに接続される送液対象に流体を送ることができる。この構成でも、流体装置41と同様に流体圧を増幅することができる。
【0040】
《第4の実施形態》
次に、本願発明の第4の実施形態に係る流体装置の構成を説明する。図7は、第4の実施形態に係る流体装置51の模式断面図である。なお、流体装置51において前述の流体装置1と同様な構成には同じ符号を付し、その説明を省く。
【0041】
この流体装置51は、第1の実施形態と同じ構成の圧電ポンプ12A,12B、圧電ポンプ12Aに積層した側面連通カバー52A、および、圧電ポンプ12Bに積層した側面連通カバー52B、を備える。
側面連通カバー52A,52Bはそれぞれ、流路53A,53Bと流路口54A,54Bとを備える。
【0042】
本実施形態の流体装置51では、側面連通カバー52Aの流路53Aが圧電ポンプ12Aの流路吐出口13Aに連通する。また、側面連通カバー52Bの流路53Bが圧電ポンプ12Bの流路吐出口13Bに連通する。そのため、側面連通カバー52Aの流路口54Aは、流路53A、圧電ポンプ12Aの流路吐出口13A、流路導入口14A、内部空間19、圧電ポンプ12Bの流路導入口14B、流路吐出口13B、および側面連通カバー52Bの流路53Bを介して、側面連通カバー52Bの流路口54Bに連通する。したがって、内部流路の下流側に配置する圧電ポンプ12Aを主体的に駆動させることにより、側面連通カバー52Bの流路口54Bから側面連通カバー52Aの流路口54Aに流体が流れ、側面連通カバー52Aの流路口54Aに接続される送液対象に流体を送ることができる。
一方、内部流路の上流側に配置する圧電ポンプ12Bを主体的に駆動させることにより、側面連通カバー52Aの流路口54Aから側面連通カバー52Bの流路口54Bに流体が流れ、側面連通カバー52Bの流路口54Bに接続される送液対象に流体を送ることができる。
【0043】
この構成では、圧電素子をおおむね20kHz以上の難可聴周波数領域又は超音波領域の交番電圧で駆動し、ダイアフラムの振動によるポンプ室の圧力変化をほぼ一様に変化する大きさにすることで、側面連通カバー52A,52Bにおける側面開口までの流体の流れを得ることが可能になる。すると、この流体装置51の前後に配管を接続する場合であっても、全体構造を低背に保つことが可能になる。
【0044】
なお、第4の実施形態の流体装置31の両主面に、流体装置51と同一の側面連通カバー52A,52Bを設けてもよく、その場合にも本実施形態の流体装置51と同一の効果が得られることは言うまでもない。
【0045】
《第5の実施形態》
次に、本願発明の第5の実施形態に係る流体装置の構成を説明する。図8は、第5の実施形態に係る流体装置61の模式断面図である。なお、流体装置61において前述の流体装置51と同様な構成には同じ符号を付し、その説明を省く。
【0046】
この流体装置61は、第4の実施形態と同じ構成の圧電ポンプ12A,12B、側面連通カバー52B、および、圧電ポンプ12Aに積層したノズル62A、を備える。
ノズル62Aは内部空間69と複数のノズル口64とを備える。
【0047】
本実施形態の流体装置61では、ノズル62Aの内部空間69が圧電ポンプ12Aの流路吐出口13Aに連通する。そのため、ノズル62Aの複数のノズル口64は、内部空間69、圧電ポンプ12Aの流路吐出口13A、流路導入口14A、内部空間19、圧電ポンプ12Bの流路導入口14B、流路吐出口13B、および側面連通カバー52Bの流路53Bを介して、側面連通カバー52Bの流路口54Bに連通する。したがって、内部流路の下流側に配置する圧電ポンプ12Aを主体的に駆動させることにより、側面連通カバー52Bの流路口54Bからノズル62Aの複数のノズル口64に流体が流れ、複数のノズル口64から送液対象に流体を送ることができる。
一方、内部流路の上流側に配置する圧電ポンプ12Bを主体的に駆動させることにより、ノズル62Aの複数のノズル口64から側面連通カバー52Bの流路口54Bに流体が流れ、側面連通カバー52Bの流路口54Bに接続される送液対象に流体を送ることができる。
【0048】
この構成では、流体装置61にノズル62Aを直接設けることで、ノズル口64に対向する物体近傍に流体装置61の全体を配置することが可能になる。すると配管構造を限界まで短縮化でき、全体構造をより簡略化できる。また、複数の負荷に対して、同時に流体を送ることができる。
【0049】
《第6の実施形態》
次に、本願発明の第6の実施形態に係る流体装置の構成を説明する。図9(A)は、第6の実施形態に係る流体装置71の模式断面図である。なお、流体装置71において前述の流体装置1と同様な構成には同じ符号を付し、その説明を省く。
【0050】
この流体装置71は、第1の実施形態と同じ構成の圧電ポンプ12A,12Bを備える。ただし、圧電ポンプ12A,12Bはそれぞれ天地を逆にして、流路吐出口13A,13B同士を合わせ、流路導入口14A,14Bを筐体外部に連通させた構成である。
【0051】
この構成では、圧電ポンプ12A,12Bを択一的に接続して駆動することにより、流体装置71の内部流路において、圧電ポンプ12Aの流路導入口14Aから流路吐出口13Aへの流体の流れ、または、圧電ポンプ12Bの流路導入口14Bから流路吐出口13Bへの流体の流れが生じることになる。
【0052】
ここで、本実施形態の流体装置71では、圧電ポンプ12Aの流路吐出口13Aと、圧電ポンプ12Bの流路吐出口13Bとが連通する。そのため、圧電ポンプ12Aの流路導入口14Aは、流路吐出口13A,13Bを介して流路導入口14Bに連通する。これにより、内部流路の上流側に配置する圧電ポンプ12Bを主体的に駆動させることにより、圧電ポンプ12Bの流路導入口14B、流路吐出口13B、圧電ポンプ12Aの流路吐出口13Aを介して流路導入口14Aから、圧電ポンプ12Aに接続された送液対象に流体を送ることができる。
一方、内部流路の下流側に配置する圧電ポンプ12Aを主体的に駆動させることにより、圧電ポンプ12Aの流路導入口14A、流路吐出口13A、圧電ポンプ12Bの流路吐出口13Bを介して流路導入口14Bから、圧電ポンプ12Bに接続された送液対象に流体を送ることができる。
【0053】
図9(B)は、第6の実施形態の別の構成例に係る流体装置75の模式断面図である。なお、流体装置75において前述の流体装置51と同様な構成には同じ符号を付し、その説明を省く。
【0054】
この流体装置75は、流体装置51と同じ構成の圧電ポンプ12A,12B、側面連通カバー52A,52Bを備えるが、圧電ポンプ12A,12Bは互いが同方向を向くように平行に並べ、側面連通カバー52A,52Bは互いの流路口54A,54Bを連通させている。そのため、圧電ポンプ12Bを主体的に駆動させることにより、圧電ポンプ12Bの流路導入口14B、流路吐出口13B、側面連通カバー52Bの流路53B、流路口54B、側面連通カバー52Aの流路口54A、流路53A、圧電ポンプ12Aの流路吐出口13Aを介して流路導入口14Aから、圧電ポンプ12Aに接続された送液対象に流体を送ることができる。
一方、圧電ポンプ12Aを主体的に駆動させることにより、圧電ポンプ12Aの流路導入口14A、流路吐出口13A、側面連通カバー52Aの流路53A、流路口54A、側面連通カバー52Bの流路口54B、流路53B、および圧電ポンプ12Bの流路吐出口13Bを介して、流路導入口14Bから、圧電ポンプ12Bに接続された送液対象に流体を送ることができる。
【0055】
図10(A)は、本実施形態の流体装置71と第1の実施形態の流体装置1との性能を比較した実験データを示す図である。図中のグラフはP−Q特性を表し、横軸が流量で縦軸が流体圧となっている。実験では、各流体装置1,71で吐出と吸引とを切り換え、それぞれの流量を変化させた場合の流体圧の変化を測定した。実験によると、いずれの場合にも圧電ポンプ単体を駆動するより低い流体圧となったが、流量と流体圧との間に比例関係が見いだされ、各流体装置1,71の間でとP−Q特性の大きな差はなかった。このことから、いずれのバリエーションも実用可能であることを確認することができた。
【0056】
図10(B)は、直列に接続する圧電ポンプの数による性能の変化を比較した実験データを示す図である。図中のグラフはP−Q特性を表し、横軸が流量で縦軸が流体圧となっている。実験では、4つの圧電ポンプを直列に接続した場合(図中の×4)、8つの圧電ポンプを直列に接続した場合(図中の×8)、12の圧電ポンプを直列に接続した場合(図中の×12)、16の圧電ポンプを直列に接続した場合(図中の×16)、それぞれに対して流量を変化させた場合の流体圧の変化を測定した。なお、いずれの場合も第3の実施形態(図6(A)参照)と同様な接続構成を採用し、図中の×4として圧電ポンプ12A,12Bに圧電ポンプ42A,42Bをそれぞれ1つづつ積層した構成(流体装置41に相当)を採用し、図中の×8として圧電ポンプ12A,12Bに圧電ポンプ42A,42Bをそれぞれ3つづつ積層した構成を採用し、図中の×12として圧電ポンプ12A,12Bに圧電ポンプ42A,42Bをそれぞれ5つづつ積層した構成を採用し、図中の×16として圧電ポンプ12A,12Bに圧電ポンプ42A,42Bをそれぞれ7つづつ積層した構成を採用した。実験によると、どのような流量であっても、圧電ポンプの数に流体圧は比例した。このことから、圧電ポンプを直列に接続する数を増やすことによって、流体圧が圧電ポンプの数に比例して大きくなることが確認できた。
【0057】
以上の各実施形態で示すように本発明は実現できるが、圧電ポンプのほかのデバイスを使用してもよい。その場合にも、一方向に送液または送気を行うデバイス同士を反対方向に接続することで、本発明の作用効果を得ることができる。
【0058】
なお、以上の説明では流体装置として、送液方向を切り替えることが可能なデバイスの例を示したが、この流体装置は正圧と負圧とを切り替えて発生させることができ、対象物の吸着や離脱を行う用途などに利用することもできる。
【0059】
また、流体として気体を用いる例を説明したが、その他、液体や気液混合流体など、どのような流体を用いてもよい。
【0060】
また、図4で説明したようにポンプ部を択一的に動作させる他にも、それぞれのポンプ部の駆動電圧を異ならせるなどして非対称に動作させても、一方のポンプ部を主体的に動作させて流体を送ることが可能になる。このようにして送液量の調整を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1,31,41,45,51,61,71,75…流体装置
2A,2B…吐出口形成板
3A,3B…流路板
4A,4B…ポンプ口形成板
5A,5B,35…壁面板
6A,6B…振動板
11…筐体
12A,12B,32A,32B,42A,42B…圧電ポンプ
13A,13B,43A,43B…流路吐出口
14A,14B,44A,44B…流路導入口
15A,15B…溝
16A,16B…ポンプ口
17A,17B,18A,18B,38…孔
19,49A,49B,69…内部空間
20…ダイアフラム
22…圧電素子
23A,23B…ポンプ室
25…制御部
52A,52B…側面連通カバー
53A,53B…流路
54A,54B…流路口
62A…ノズル
64…ノズル口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向に通気または通液自在な内部流路を設けた筐体の内部に、所定方向の流れを前記内部流路に発生させる第1のポンプ部と、前記所定方向の流れとは逆向きの流れを前記内部流路に発生させる第2のポンプ部と、を備える流体装置。
【請求項2】
前記第1のポンプ部および前記第2のポンプ部は、前記内部流路に連通するポンプ口を設けたポンプ室と、前記内部流路の前記ポンプ口に対向する壁面に設けた流路吐出口と、前記ポンプ室の前記ポンプ口に対向する壁面を構成するダイアフラムと、前記ダイアフラムを屈曲振動させる圧電素子と、を備え、前記ポンプ室の容積変化に基づいて前記内部流路に流れを発生させる圧電ポンプを備える、請求項1に記載の流体装置。
【請求項3】
前記第1のポンプ部の流路吐出口と第2のポンプ部の流路吐出口とは、前記内部流路の内側で連通する、請求項2に記載の流体装置。
【請求項4】
前記第1のポンプ部の流路吐出口と第2のポンプ部の流路吐出口とは、前記内部流路の両端側となる、請求項2に記載の流体装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記流路吐出口からの流路を構成するノズルを備える、請求項4に記載の流体装置。
【請求項6】
前記第1のポンプ部と前記第2のポンプ部とを択一的に駆動させる制御部を備える、請求項1〜5のいずれかに記載の流体装置。
【請求項7】
前記第1のポンプ部および前記第2のポンプ部は、それぞれ、前記圧電ポンプを複数備える、請求項1〜6のいずれかに記載の流体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−241808(P2011−241808A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117447(P2010−117447)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】