説明

流体試料を処理するシステムおよび装置

使い捨て流体導管と、再利用可能な導管支持システム(20)とを備える流体試薬(12、14、16、18)の処理システムおよび装置(10)が提供される。流体導管は、少なくとも1つの流体供給源と、ろ過などの少なくとも1つの単位操作(22)に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年8月2日付け出願の米国特許仮出願第60/963,015号の優先権を主張するものであり、この全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、使い捨て流体導管を利用して流体試薬を処理するシステムおよび装置に関する。特に、本発明は、再利用可能な導管支持システムおよび装置を利用する、そのようなシステムおよび装置に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明以前では、流体試料は、ステンレス鋼製流路などの剛性の流路と、試料と試薬との流体反応などの単位操作が行われる領域に接続された、ポンプなどの動作ユニットを含むシステムで処理されていた。これらのシステムの配管設計や配管配置は、確実にシステムが滞流を最小限に抑え、排液や排気を容易に行えるようにしている。これらの特徴によれば、利用者は、何度も生成物を製造し、何度もシステムを適切な衛生基準に再生させることができる。
【0004】
これらのシステムは、比較的少容量のシステムが採用される実験室試験によって開発される。その後、これらの少容量システムは、比較的大容量の商業用単位にスケールアップされる。実験室規模のシステムは、最終的な商業規模のシステムとは似ていないことが多い。このことは、実験室規模のシステムから得られたデータに基づいた商業用システムに誤りを発生させるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造の自由度を高めるとともに、有効な再生を実現するのに必要な時間を短縮するため、製造業者らは、生成物バッチごとに組み立てられて使用される使い捨て配管や袋類からなる使い捨てシステムを利用し始めている。しかしながら、配管や袋類が可とう性を有するため、システム組み立てが時間のかかる作業になり、生成物回収を難しくする場合がある。また、これらの可とう性のシステムは、処理を現在のステンレス鋼システムの規模に適合させるため、10リットルから1000リットルなどの中規模で使用されている。これらのシステムは、時として配管の強度のために圧力が制限されることがあり、回路全体を通して流れと分配を一体化する統一的な方式を持っていない。
【0006】
米国特許第7,001,513号明細書には、少なくとも1つの流体供給源と廃棄容器とに取り付けられた流体導管系を収容するカセットが開示されている。カセットは流体導管系を内蔵している。カセットは固定式の装置であり、流体導管系は使い捨て式である。カセットによれば、流体導管系の圧力性能を高めることができ、統一的かつ一体的で一定の順序に基づく流体分配法がもたらされる。この方法は、現在採用されている個々のポンプやバルブに取って代わり、それらをカセット内に混載させることができる。
【0007】
したがって、商業用システムおよび装置まで容易にスケールアップできる、流体試薬処理プロセス試験用実験室システムおよび装置を提供することが望ましい。さらに、実験室規模様式と商業規模様式が互いによく似ている、そのようなシステムおよび装置を提供することが望ましい。そのようなシステムおよび装置は、商業用システムおよび装置によく当てはまる実験室データを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、使い捨て流体導管と再利用可能な導管支持システムおよび装置を利用したシステムおよび装置を提供する。システムおよび装置は、1つの導管支持システム、またはそれぞれ容量が異なるが同じ流体経路を有する複数の導管支持システムを備える。導管支持システムは、これまで使用されていた導管系を未使用の導管系に交換できるように開閉可能になっている。未使用の導管系は、少なくとも1つの流体流入口および少なくとも1つの流体流出口のほか、ろ過、クロマトグラフィ、液−液抽出などの、流体が処理される少なくとも1つの単位操作を含む。また、システムおよび装置には、1つ以上のポンプ、例えばぜん動ポンプなど、導管系内部で流体流れを発生させる手段も設けられている。単位操作は、導管系を交換した際に、新しい単位操作と取り替えられてもよい。本質的に同じ設計でありながらそれぞれサイズの異なる導管経路を有して、様々なサイズの導管に対応できる再利用可能な一群の導管支持システム(カセット)および装置が提供されてもよい。そのような一群の導管支持システムおよび装置によれば、少容量の実験室用システムから比較的大容量の商業用システムへのスケールアップを正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の導管支持システムの閉じた状態の斜視図である。
【図2】導管、単位操作装置および導管支持装置を示す、図1のシステムの断面図である。
【図3】図1の導管支持システムの開いた状態の斜視図である。
【図4】図1のシステムの背面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、使い捨て式の可とう性導管系を支持する再利用可能な導管支持装置およびシステムを提供する。適切な可とう性導管材料の代表例としては、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PTFE樹脂、C−Flex(R)樹脂などがある。支持装置およびシステムは、内部の流体が加圧される使用時に導管系の支持を可能にする直径と形状を有する流体導管経路を含む。流体に対する所望の単位操作が完了すると、導管支持装置が開かれ、可とう性導管系を露出させて取り外しできるようにする。その後、使用済みの可とう性導管系は、試薬供給源、試薬回収系および少なくとも1つの単位操作に接続された新しい可とう性導管系と交換される。
【0011】
図示の流体経路は例示に過ぎないことが理解されるべきである。いかなる流体経路であっても利用可能である。
【0012】
図1および図2に示すように、本発明のマニホールドシステムおよび装置10は、流入口11、13、15、17に接続された試薬供給源12、14、16、18と、マニホールド20内に収容された可とう性導管系を含む。可とう性導管系には、流出口24において、ろ過22などの単位操作も接続されている。試薬回収容器28およびマニホールド20からの流出口30には、フィルタ26が接続されている。マニホールド20からの流出口34には、第2の回収容器32が接続されている。マニホールド20からバルブ39(図2)を介した流出口38には、廃棄物用の第3の回収ユニット36が接続されており、第3の回収ユニット36は、導管41(図2)によって、バルブ43(図2)を介した可とう性導管系への廃棄物リサイクル用流入口40にも接続されている。回収ユニット36には、ガス抜き孔32が設けられている。
【0013】
マニホールドシステム10はマニホールド部品42を備えており、両者間に可とう性導管系を内蔵したマニホールド部品42a、42bなど、2個の半部品を有するものが示されている。場合によっては、追加の部品を使用し、必要に応じてシステムを細分化することを選択してもよい。あるいは、必要性も要望もない場合は、保護や耐圧のために、第2の部品を設けることなく単一の部品のみを使用してもよい。図2には、マニホールド部品42b内に配置された可とう性流体導管が黒線で示されている。流体導管と動作ユニットは、マニホールド部品42bの適切に成形された凹部内に配置されている。1つ以上の試薬供給源12、14、16、18からの試薬は、それぞれバルブ44、46、48、50を通過してポンプ52内に入る。ポンプ52からの流体は、フィルタ54およびバルブ56、57、58を順に通過してポンプ60に入る。
【0014】
流体は、ポンプ60を出て、バルブ61および流出口24を通過し、ろ過ユニット22に導入される。ろ過ユニット22は、その内部圧力を監視するため、圧力変換器64、66に接続されていてもよい。ろ過ユニット22からの透過液は、バルブ70が開状態でバルブ72が閉状態のとき、導管68を通過し、導管34を通って回収ユニット32に出て行く。回収ユニット32は容器として図示されているが、必要があればプラスチック袋であってもよい。
【0015】
ろ過ユニット22を迂回させたい場合は、バルブ74が開かれ、流体は、導管76を通過した後、pH、導電性、UV濃度または光学濃度などを測定する記録計78、80を通過する。バルブ61を閉、バルブ82を開の状態にしながらバルブ56およびバルブ57を開の状態にすると、流体をフィルタ26を介して回収ユニット28に導くことができる。必要があれば、バルブ31を開状態にすると、試料を容器84に回収することができる。
【0016】
気体の流体導管系のガス抜きをしたい場合は、バルブ86が開かれ、気体は、フィルタ88を通過して、マニホールド部品42bから出て行く。処理サイクルの終了時には、バルブ59を大気に開放して、空気をマニホールド42内に入れる。マニホールド42から廃棄物を除去したい場合は、バルブ55が開かれる。
【0017】
図3に示すように、マニホールド部品42aは、マニホールド部品42b(図2)内に収容された動作ユニット、導管およびバルブを含む凹部と対合する凹部を有する。凹部は、導管が内部の流体の圧力によって拡張することができる一方、導管が破裂するよりも低い圧力まで拡張を制限するサイズに形成されている。図3において、マニホールド部品42aの凹部は、文字aを含む指示番号で示されている。これらの凹部は、aを含まない同じ番号で指示された、マニホールド部品42b内の導管、バルブ、動作ユニットおよび流体試料容器を収容している。マニホールド部品42a、42bは、ヒンジ90、92によって接続されている。
【0018】
図4に示すように、スイッチ95を有する電気アウトレット94が、マニホールド部品42aまたはマニホールド部品42bの壁を貫いてポンプ60(図2)に接続されており、スイッチ97を有する電気アウトレット96が、同じくマニホールド部品42aまたはマニホールド部品42bの壁を貫いてポンプ52(図2)に接続されている。図4には、図3に示すバルブの空気動力源が、それが接続されているバルブと同じ番号で文字bを後に付した形で表されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の流体試薬を処理する装置であって、
相互に接続された使い捨て流体導管群と、
前記流体導管群に接続された少なくとも1種類の流体試薬の供給源と、
前記少なくとも1種類の流体試薬の流れを前記流体導管内に導く手段と、
前記少なくとも1種類の流体試薬を処理する少なくとも1つの単位操作と、
前記少なくとも1つの単位操作による流体生成物を回収する手段と、
前記流体導管群と前記少なくとも1種類の流体試薬の流れを導く前記手段のための再利用可能なハウジングとを備える、装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置を複数個備える少なくとも1種類の流体試薬を処理するシステムであって、相互に接続された流体導管群を複数個有し、前記各流体導管群が前記他の相互に接続する流体導管群とは異なる管径を有しており、前記各装置が、前記複数個の流体導管群のうちの1つの流体導管群を収容するサイズに形成された、前記流体導管を収容する再利用可能なハウジングを有する、システム。
【請求項3】
相互に接続された導管群と、少なくとも1種類の流体を前記導管群内に導く手段とを収容するよう構成され、カセットに内蔵される配管マニホールドの圧力性能を高めるとともに前記導管群の拡張を抑制するよう機能する、再利用可能なハウジングカセット。
【請求項4】
前記単位操作がろ過である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記単位操作がろ過である、請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記単位操作がクロマトグラフィである、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記単位操作がクロマトグラフィである、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記単位操作が液−液抽出である、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
流れを導く前記手段が少なくとも1つのぜん動ポンプを備える、請求項1、3および5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
流れを導く前記手段が少なくとも1つのぜん動ポンプを備える、請求項2、4および7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
複数の流体試薬供給源を含む、請求項1、3および6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
複数の流体試薬供給源を含む、請求項2、5および7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
複数の流体試薬供給源を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項14】
複数の流体試薬供給源を含む、請求項8に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−535339(P2010−535339A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519203(P2010−519203)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/008838
【国際公開番号】WO2009/017614
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】