説明

流体試料中の分析物の存在または量を検出するための装置およびその方法

流体試料中の分析物の存在または量を検出するための装置および方法は、受取カップ内で試料コレクタを受け取りさらに保持するための試料コレクタおよび受取カップを有する。試料コレクタは、流体試料を収集するための可縮性の吸収部材を含み、第1の位置と、受取カップ内の第2のロック位置とを有する。吸収部材は、第1の位置では圧縮されず、第2のロック位置で圧縮される。試料コレクタまたは受取カップは、流体試料中の分析物の存在または量を検出するための試薬を有する少なくとも1つの検査素子を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体試料中の分析物の存在および量を検出するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の本発明の背景は、読者が本発明を理解するのを助けることを意図しており、これらを従来技術であると是認するものではない。
【0003】
臨床的にまたは家庭で使用するための種々の試料収集用および検査用装置が利用可能であり、これらは文献に記載されている。例えば、米国特許第5,376,337号明細書が、1枚のろ紙が被験者の口から唾液を収集してその唾液をインジケータに移送するのに使用される唾液採取装置を開示している。米国特許第5,576,009号明細書および米国特許第5,352,410号明細書が、それぞれ、シリンジタイプの流体採取装置を開示している。これらの装置では、収集された流体試料は、初期結果が得られた後のもっと遅い時点における確認検査のために保存されることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他の多くの試料収集用および検査用装置は、収集装置から試料を抽出することにおいて非効率的である。これらの装置の多くはまた、その設計および製造が非常に複雑であり、比較的高価な材料の使用を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、液体試料中の分析物の存在または量を検出するための装置および方法を提供する。一実施形態では、液体試料は唾液であり、分析物はエタノールまたは乱用薬物である。この装置は、試料コレクタおよび受取カップを含んでよい。試料コレクタは吸収材料を含んでよく、被験者の口の中に都合よく配置されることができるように構成される。吸収材料に唾液が充填されると、試料コレクタが装置の受取カップに挿入されてロック位置に位置される(例えば、試料コレクタを受取カップ内に螺合することにより)。これにより、吸収材料が圧縮され、試料が抽出されて検査素子上に移動させられ、検査素子が対象の分析物の存在または量を検出する。
【0006】
したがって、第1の態様では、本発明は、流体試料中の分析物の存在または量を検出するための装置を提供する。この装置は、流体試料を収集するための可縮性の吸収部材を含む試料コレクタを有する。この装置はまた、中で試料コレクタを受け取りさらに保持するための受取カップを含む。試料コレクタは、第1の位置、および、受取カップ内の第2のロック位置を有しており、吸収部材は第1の位置では圧縮されず第2のロック位置ではカップ内で圧縮されて保持される。試料コレクタまたは受取カップはまた、流体試料中の分析物の存在または量を検出するための試薬を有する少なくとも1つの検査素子を含む。検査素子は、試料コレクタが第2のロック位置にあるときに吸収部材と流体連通する。
【0007】
一実施形態では、試料コレクタは、検査素子を収容する検査素子ホルダを含む。検査素子は、吸収部材と検査素子とを連結する試料コレクタ内の通路を通して吸収部材と流体連通することができる。一実施形態では、吸収パッドが、通路と検査素子との間に配置される。試料コレクタは円周方向のねじ山を有してよく、受取カップは円周方向の受けねじ山を有してよい。一実施形態では、ねじ山および受けねじ山は、試料コレクタが第2のロック位置にあるときに係合される。
【0008】
一実施形態では、受取カップは、試料コレクタが第2のロック位置にあるときに外部との流体連通から密封される。別の実施形態では、試料コレクタおよび受取カップは、試料コレクタが第2のロック位置にあるときにスナップ嵌め接続によって接合される。吸収部材は被験者の口に配置するのに適したスポンジであってよく、流体試料は唾液であってよい。
【0009】
一実施形態では、試料コレクタは試料コレクタを手動で掴むための平坦なハンドルを有し、受取カップは検査素子を含む。吸収部材は、試料コレクタが第2のロック位置にあるときに受取カップ内の通路を通して検査素子と流体連通することができる。
【0010】
別の態様では、本発明は、流体試料中の分析物の存在または量を検出するための装置を提供する。この装置は、ねじ山と、流体試料を収集するための可縮性の吸収部材とを有する試料コレクタを含む。この装置はまた、中で試料コレクタを受け取りさらに保持するための受取カップを有しており、受取カップは受けねじ山を含む。試料コレクタは、受取カップ内の第1の位置と、ねじ山と受けねじ山が係合するときの受取カップ内の第2のロック位置とを有する。吸収部材は、第1の位置では圧縮されず、第2のロック位置ではカップ内で圧縮されて保持される。受取カップは、流体試料中の分析物の存在または量を検出するための試薬を有する少なくとも1つの検査素子を含む検査素子ホルダと直接に連結される。検査素子は、試料コレクタが第2のロック位置にあるときに吸収部材と流体連通する。
【0011】
別の態様では、本発明は、流体試料中の分析物の存在または量を検出するための方法を提供する。この方法は、本明細書で開示する装置を使用するステップを含む。このステップは、ある量の流体試料を吸収部材内に配置するステップと、試料コレクタを受取カップに挿入してさらに試料コレクタを第2のロック位置に移動させるステップと、流体試料中の分析物の存在または量を判断するステップとを含む。
【0012】
一実施形態では、流体試料は唾液であり、唾液は、被験者の口の中に試料コレクタを配置することにより吸収部材内に配置される。
【0013】
上述した発明の開示は限定するものではなく、本発明の他の特徴および利点が以下の詳細な説明ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態による、流体試料中の分析物の存在または量を検出するための小型装置100が、組み立てられた状態で示されている。これらの図で示した実施形態では、装置は、装置を掴むための平坦なハンドル102と、流体試料を収集するための可縮性の吸収部材を含む試料コレクタ部104とを含む。ハンドルは任意の好都合な形態または形状であってよい。また、試料コレクタを受け取りさらに保持するための受取カップ106が示されている。図1の実施形態は組み立てられた状態で示されており、試料コレクタが受取カップ内のロック位置に固定されている。装置の構成要素は成形プラスチック部品から好都合に形成されるが、任意の適当な材料が使用されてよい。「可縮性」は材料の特性を示しており、この場合は、材料が流体を保持しているときに材料から流体を絞り取るために、材料の形状が機械的圧力によって変形されることができる。
【0015】
図2では、試料コレクタ102が分解図で示されている。中で試料コレクタ102を受け取りさらに保持するための受取カップ106が示されている。試料コレクタ102は、下側ケーシング203および上側ケーシング205を有する。この実施形態では、検査素子207は、好都合には、試料コレクタ102の内側に配置される。視界窓223が、検査結果の観察を容易にするために上側ケーシング205に含まれてよい。示した実施形態では、吸収性の材料225(例えば、ろ紙)が通路503の出口と検査素子207との間に配置される。吸収性の材料205は、吸収部材211によって放出された流体を吸収してそれを検査素子(複数可)207に移動させ、それにより、通路と検査素子との間の流体連通を実現する。装置は、吸収性の材料225が検査素子をあふれさせることなく検査素子に付与されることができる流体より多くの流体を吸収および移送しないように、設計される。吸収性の材料225に到達した余分な流体は、通路503の出口を通過し、検査素子207へ流れないようにされ、検査素子207があふれるのを防止する。「流体連通」である構造により、一方の構造体から移動する流体が、その流体と流体連通している他方の構造体へ移動することになる。したがって、通路が検査素子と流体連通している場合、通路を通過する流体は吸収性の材料を通って検査素子へと移動する。通路、吸収性の材料、および、検査素子は、直接に物理的接触することができる、あるいはこれらの間にギャップがあってよいが、流体連通して維持される。吸収部材は、流体を吸収して維持する任意の材料で作られてよい。一実施形態では吸収部材はスポンジであるが、別の実施形態では、吸収部材は、吸収紙、ナイロン、綿、または、流体を吸収および保持することができる他の任意の材料であってよい。「吸収性の材料」は、吸収する、ならびに、流体の毛細管移送を可能にする材料である。例には、限定しないが、ろ紙または他のタイプの吸収紙、特定のナイロン、ニトロセルロース、および、定められた特性を有する他の材料が含まれる。当業者であれば、本開示を参照することにより、これらの構造体を形成するのに適切な追加の材料を思いつくであろう。
【0016】
図示した実施形態では、試料コレクタ102は、上側ケーシング205と下側ケーシング203とを一体に連結することによって形成され、検査素子207および吸収性の材料205がケーシングの内側に収容される。別の実施形態では、試料コレクタは、単一の独立ユニットとして形成される、あるいはここで示した以外の他の部品で形成されてよい。図示した実施形態では、スナップタブ219が試料コレクタベース209に設けられており、これは、検査素子ホルダ102に設けられた受取孔211と嵌合し、それにより、この実施形態ではこの2つの部品が一体に固定される。試料コレクタ102の組立てでは、試料コレクタ102の近位端が試料コレクタベース209の開口端に挿入され、スナップタブ219が対応する受取孔221と係合する。別の実施形態では、スナップタブおよび受取孔は、例えば、ねじ込み式接続、接続を固定するために所定の位置にスナップする相補的な部品、または、接着、あるいは、他の任意の方法といった、構成要素を接合する他の任意の方法と置き換えられる、あるいは、それらによって補われてよい。この実施形態では、上側ケーシング205および下側ケーシング207は、試料コレクタ201を手動で掴むための平坦なハンドルを形成するように組み立てられる。また、装置の種々の部品が、任意の好都合な手段によって一体に嵌合されることができる。種々の実施形態では、部品は、上述したように、スナップタブ、または、一体にぴったりと嵌合する他の部品を使用することによって、あるいは、接着、熱融着、または、他の任意の方法によって嵌合されることができる。
【0017】
「検査素子」は、検出可能な結果をもたらす任意のアッセイ装置であってよい。いくつかの実施形態では、検査素子は試験ストリップ(例えば、側方フローの試験ストリップ)である。試験ストリップは、試験ストリップ上に固定された特定の結合分子と側方フローアッセイなどの免疫定量法を実行するための試薬とを有してよい。しかし、別の様々な実施形態において、試験ストリップは、化学検査、生物学に基づく検査(例えば、酵素またはELISAアッセイ)、または、蛍光ベースのアッセイで構成される。しかし、別の実施形態においては、検査素子は、検出可能な結果をもたらす任意の適当な検査を行うのに必要な他の試薬を有してよい。一実施形態では、検査素子は、乱用薬物の存在を検出するための試薬を含む。しかし、別の実施形態では、検査素子は、アッセイの結果のインジケータを形成する任意の素子であってよい。例えば、化学的または生物学的インジケータが使用されてよい。
【0018】
検査素子が試験ストリップである場合、検査素子は、吸収性のマトリックス(例えば、ニトロセルロース)および/または他の適当な材料から構成されてよい。マトリックスは、試料負荷領域、試薬またはラベル領域、および、検出領域を有してよい。これらのタイプの試験ストリップは当技術分野では知られており、当業者であれば、本開示を参照することにより、本発明に有用な様々の試験ストリップを思いつくであろう。いくつかの実施形態では、試料負荷領域は、試験ストリップに試料を適用するために試験ストリップの一方の端部に存在する。また、アッセイの実施または試料の調整を行うための試薬は試料負荷領域に存在してよく、あるいは、試薬は試験ストリップ上の分離した試薬領域またはラベル領域に存在してよい。これらの試薬は、例えば、特定の結合分子との最適結合のための試料を調製すること、または、対象の分析物の安定性を改善することといった、様々な用途に役立つことができる。
【0019】
装置によって検出される分析物を含む試料は、任意の流体試料であってよい。本発明を用いた検査に適した流体試料の例には、口腔液、唾液、全血、血清、血漿、尿、脊髄液、生物学的なスワブ、粘液、および、組織が含まれる。「唾液」は、唾腺の排出物を指す。「口腔液」は、口腔内に存在する任意の流体である。
【0020】
存在または量が検出される分析物は、それのために検査素子が作られることができる任意の分析物であってよい。一実施形態では、分析物は乱用薬物である。対象となる分析物の他の例には、ホルモン、蛋白質、ペプチド、核酸分子、病因学的因子、および、特定の結合対のメンバーが含まれる。「乱用薬物(drug of abuse)」(DOA)とは、非医学的な理由(通常は、精神状態を変化させる目的)で摂取される薬物である。そのような薬物の乱用は、肉体的および精神的障害につながる可能性があり、(いくつかの物質については)依存性、中毒、およびさらには死につながる可能性がある。DOAの例としては、コカイン、アンフェタミン(例えば、ブラックビューティー(black beauties)、ホワイトベニー(white bennies)、デキストロアンフェタミン(dextroamphetamines)、デキセドリン(dexies)、ビーンズ(beans))、メタンフェタミン(クランク(crank)、メタドン(meth)、クリスタル(crystal)、スピード(speed))、バルビツレート(ニュージャージー(New Jersey)州、ナットレー(Nutley)のロシュファーマシューティカル(Roche Pharmaceuticals)社のバリウム(Valium)(商標))、鎮静剤(sedatives)(すなわち、睡眠補助薬)、リセルグ酸ジエチルアミド(LSD)、抑制剤(depressants)((鎮静剤(downers)、精神安定剤(goofballs)、バルビツール剤(barbs)、ブルーデビル(blue devils)、イエロージャケット(yellow jackets)、ルード(ludes))、三環系抗鬱薬(TCA、例えばイミプラミン(imipramine)、アミトリプチリン(amitriptyline)、およびドクサピン(doxepin))、フェンサイクリジン(PCP)、テトラヒドロカナビノール(THC、ポット(pot)、ドープ(dope)、大麻(hash)、マリファナ(weed)など)、および麻酔剤(例えば、モルヒネ(morphine)、アヘン(opium)、コデイン(codeine)、ヘロイン(heroin)、オキシコドン(oxycodone))が挙げられる。
【0021】
図に示す実施形態では、試料コレクタ102はまた、試料コレクタベース209を含む。この実施形態では、試料コレクタベース209は、受取カップ106内のロック位置に試料コレクタ102を固定するのを容易にするねじ山211を有する。この実施形態では、試料コレクタ102はまた、吸収部材213を試料コレクタ102に固定するためのプランジャヘッド211と、被験者の口の中に無理なく保持されるような位置に吸収部材を取り付けるためのエキステンダ215とを有する。吸収部材213は、スポンジまたはスポンジ状の材料などの吸収材料、あるいは、液体試料を吸収して保持する収容力を有する他の材料で作られてよい。吸収材料がスポンジである場合、吸収材料は自然起源または合成起源であってよい。示した実施形態では、吸収部材213は、唾液を収集するために被験者の口の中に配置するのに適した円柱形のスポンジ材料である。しかし、別の実施形態では、吸収部材は、任意の好適および好都合な形状であってよい。ある実施形態では、吸収部材213は、唾液分泌を促進するために化学成分(例えば、クエン酸または他の化学物質)を用いて処理される。吸収部材213は、例えば、接着剤、エポキシ、熱接着、あるいは、堅固な結合を実現するあるいはそうでない場合は吸収部材をエキステンダの遠位端に固定する他の任意の手段といった任意の適当な手段によりエキステンダ215の遠位端に取り付けられることができる。エキステンダ215はまた、吸収部材211が結合されるプランジャヘッド217を有してよい。
【0022】
示した実施形態では、試料コレクタベース209は、実質的にバレルまたは円柱形状であり、検査素子ホルダ102の近位端を受けるためにその遠位端が開いている。試料コレクタベース209の部品および検査素子ホルダ102は、好都合には、相補的になるように設計され、一体にスナップすることによって、あるいは、接着または他の任意の適当な方法によってなどの任意の適当な手段により一体に嵌合される。
【0023】
示した実施形態では、受取カップ106は、底部501および張り出しの円周側壁502を有した実質的なバレル形状である。図5〜図7に示すように、底部501は吸収部材213を受けるのに適しており、側壁502は試料コレクタベース209を受けるのに適している。この実施形態では、受けねじ山505が側壁502の開口端の内側に設けられており、これは、試料コレクタ102のベース209上のねじ山227と嵌合する。したがって、一実施形態では、試料コレクタ102は、受取カップ106内にねじ込まれ、試料コレクタベースのねじ山と受取カップの受けねじ山とを係合させることによりロック位置に配置される。
【0024】
「ねじ山」および「受けねじ山」を使用する実施形態では、ねじ山は受けねじ山に挿入されることができ、ロック位置において2つの構成要素を一体に固定する。別法として、受取カップがねじ山を有することができ、試料コレクタが受けねじ山を有することができる。しかし、別の実施形態では、試料コレクタおよび受取カップをロック位置に固定するために別の方法が使用されてよい。例えば、試料コレクタおよび受取カップをロック位置に配置するスナップ嵌め接続または他の構造が使用されることができる。別の実施形態では、受取カップは、試料コレクタのベース上にぴったりと嵌合することができ、それにより、流体試料が装置から漏出することがないような密封状態を形成する。Oリングなどの密封構造はいくつかの実施形態において使用されるが、流体試料が漏出することがないような密封状態は、このような構造を使用することなく形成されることができる。いくつかの実施形態では、試料コレクタおよび受取カップは可逆的に固定され、装置がロック位置に配置されてその後で非ロック位置に移動されることができるようにする。しかし、別の実施形態では、固定は可逆的である必要はなく、試料が確認検査のために装置から好都合に引き抜かれることができることのみを必要とする。
【0025】
装置のロック位置の一実施形態を図6に示す。受取カップ106の開口端は、ロック位置にあるとき、試料コレクタベース209によって覆われるまたは遮られる。流体を貯蔵するための囲まれた空間601が受取カップ内に存在し、一実施形態では、プランジャヘッド217の内側面603と試料コレクタベース209の内面605との間に画定される。一実施形態では、受取カップは、試料コレクタベース209の円周外側面と側壁502の内側面との間に設けられるOリング607などの密封手段によって装置の外部との流体連通から密封される。しかし、別の実施形態では、装置を密封するための機構が、装置の内部と外部との間の流体の移動を遮断することによって(例えば、プラスチック、ゴム材料)あるいはプランジャヘッドの円周外側面と側壁の内側面との間などの別の位置に設けられるOリングによって密封を実現する他の材料と一体にぴったりと嵌合する別の部品であってよい。
【0026】
「ロック」位置により、流体試料が装置から漏出しないようにするために試料コレクタおよび受取カップが単一の装置内に一体に固定され、装置が確認検査のために安全ならびに好都合に移送されることができるようになる。一実施形態では、試料コレクタがねじ山を有し、さらに、受取カップが、試料コレクタと受取カップとを接合して装置内に流体試料を密封するために係合される受けねじ山を有する。別の実施形態では、試料コレクタが受けねじ山を有し、受取カップがねじ山を有してよい。別の実施形態では、ロック位置は他の構造によって実現されてよい。例えば、2つの構成要素を接合するために一体にスナップするタブ、あるいは、2つの構成要素と一体にぴったりと嵌合してそれらを保持する他の部品である。一実施形態では、装置の吸収部材は、試料コレクタがロック位置にあるときに圧縮される。
【0027】
図5に関して、受取カップ106に挿入された状態の組み立てられた試料コレクタを示した。図5はまた、この実施形態では、エキステンダ215はその中央領域が中空であり、吸収部材から検査素子まで(吸収性の材料による)の流体の通路503を形成している、ことを示している。通路503は、吸収部材213から流体を受けるための入口507と、検査素子へ流体を放出するための出口509とを有する。別の実施形態では、別の構造が、サンプルが検査素子へ入るのを可能にするために使用されてよい。例えば、吸収性の材料が装置内の試料まで達するように延長されてよく、あるいは、別のチャネルが試料流体を検査素子まで移送するのに利用されてよい。
【0028】
一実施形態では、採取用孔229が受取カップの側壁に存在し、試料の検査および装置の移送の間はプラグ231によって覆われてそれによって密封されることができる。装置が臨床試験施設で受け取られるとき、プラグ231は取り外されることができ、オペレータは確認検査のために試料を取り出すことができる。一実施形態では、試料は、好都合に、プラグが開いているときにピペットまたは他の採取装置を使用してオペレータによって取り出される。装置は、好都合に、ロック位置にとどまるが、それでもやはり試料流体を引き抜くことは可能である。一実施形態では、複数のリブ233が側壁の周りに形成されて側壁を補強し、装置の受取カップ部分を掴むのを容易にしている。
【0029】
図1〜図7に図示した本発明の実施形態の使用を説明するにあたり、試料コレクタ102の吸収部材213は被験者の口の中に配置されており、プランジャヘッド217を使用することにより口の中で容易に支持される。それにより、吸収部材に唾液が充填される。その後、図5に示すように、試料コレクタ102は受取カップに挿入されて、吸収部材が圧縮されずに唾液試料が充填する受取カップ内の第1の位置に配置される。その近位端301は、受取カップの底面511に当接していても当接していなくてもよい。試料コレクタ102は、受取カップ内へ軸方向に移動させられて第2のロック位置まで回転させられる。この実施形態では、装置がロック位置にあるとき、吸収部材が圧縮されて試料コレクタベース209のねじ山227が受取カップ106の受けねじ山505に係合する。ロック位置において試料コレクタが受取カップ内へ固定されて、流体が装置から漏出しないようになる。吸収部材に収集された流体試料は、試料コレクタがロック位置内に配置されているときに、吸収部材を圧縮する機械的圧力によって抽出される。これにより、流体試料の一部が、通路503を通って検査素子207の吸収性の材料225上へ流れる。アッセイを完了するのに必要な数分間の時間後、流体試料中の分析物の存在または量が判断される。吸収材料213が圧縮されると、流体試料の別の部分が、例えば臨床試験施設での検査といった後の確認検査のために閉じられた空間内601に押し出される。確認検査においては、プラグ235が取り外されて、貯蔵されている流体試料がピペット401を使用して採取用孔229を通して容易に回収される。
【0030】
図8および図9において、本発明の別の実施形態を示した。この実施形態では、検査素子ホルダが受取カップ106に直接に連結されており、試料コレクタには取り付けられていない。図9を参照すると、装置100は、試料コレクタ102および受取カップ106を有しており、検査素子ホルダ801が受取カップから延在している。試料コレクタ102は吸収部材213を含む。一実施形態では、試料コレクタ102を手動で掴むためのハンドル803が検査素子ホルダ上に存在する。この実施形態では、エキステンダは中空ではないため、流体は検査素子へ到達するためにエキステンダ内の通路を通過することはない。その代わり、流体試料は、受取カップ106の底部501内のチャネル807を通過する。2つの構造体が「直接に連結される」ということは、2つの構造体の少なくとも一部の間に接触が生じていることを意味する。
【0031】
別の実施形態では、検査素子ハンドル805がやはり検査素子ホルダ801上に存在してよい。図9の断面図では、チャネル807が受取カップ106の底部501内に存在する。一実施形態では、ソケット809が受取カップ上に存在しており、このソケット809は、底部501に設けられた受取カップ上の定位置に検査素子ホルダ801を取り付けて保持するのに適している。図9を参照すると、使用中、検査素子ホルダ801はソケット809に挿入されて定位置に固定され、吸収材料213が、吸収性の材料225と流体連通するようにさらにそれによりチャネル807を通して少なくとも1つの検査素子207とも流体連通するように配置されるようになる。
【実施例1】
【0032】
本明細書に記載した試料コレクタを使用して、試料コレクタに唾液が充填するまで被験者の口の中に試料コレクタを配置することにより、130人の被験者から130個の唾液試料を収集した。試料を充填した後、試料コレクタを装置の受取カップ内に配置して吸収部材を圧縮し、試料を抽出した。30個の試料に、アンフェタミン、コカイン、メタンフェタミン、麻酔剤、THC、および、フェンサイクリジンを含む乱用薬物の混合物をスパイクした。試料コレクタがねじ山を有し、受取カップが受けねじ山を有する。その後、装置内に試料を保持するために装置をロック位置に配置して、アッセイを自動的に開始した。10分後、結果を陽性または陰性として記録した。各装置は2つの試験ストリップで構成され、それぞれが3つの乱用薬物に対して検査された。2つの試験ストリップ間で、以下の6つの乱用薬物を検査した:アンフェタミン(amphetamines(AMP))、コカイン(cocaine(COC))、メタンフェタミン(methamphetamine(MET))、麻酔剤(opiates(OPI))、テトラハイドロカナビノール(tetra−hydrocannabinol(THC))、および、フェンサイクリジン(phencyclidine(PCP))。
【0033】
乱用薬物をスパイクしていない100個の試料のすべてが陰性を示した。30個の試料のうちの28個のみがTHCに対して陽性を示したことを除くと、薬物の混合物をスパイクした30個のサンプルのすべてが6つの薬物のそれぞれに対して陽性結果を示した。
【0034】
その後、一般に十分認められている手順を使用してこれらの試料に対して確認検査を行った。確認検査では、30個すべての試料が6つの薬物すべてに対して陽性を示した。
【0035】
本明細書において例として説明した本発明は、本明細書において具体的には開示しなかった任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定事項がなくても、実施されることができる。使用した用語および表現は、説明のための用語として使用され、限定のための用語として使用されてはおらず、これらの用語および表現の使用には、図示および説明した特徴のあらゆる均等物またはその一部を排除しようとする意図はなく、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲において、様々な修正形態が可能であると理解される。したがって、本発明を、種々の実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示したが、本明細書に開示した概念の修正形態および変形形態が当業者によって報告されることができ、これらの修正形態および変形形態は添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるとみなされることを、理解されたい。
【0036】
本明細書にて言及または引用した論文、特許および特許出願、ならびに他のすべての文献および電子的に入手可能な情報の内容は、あたかも個々の刊行物のそれぞれが参照により組み込まれることを具体的かつ個々に示されているような場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願人は、これらの任意の論文、特許、特許出願、または他の文献からの任意かつすべての題材および情報を、本出願へと物理的に取り入れる権利を留保する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】流体試料中の分析物の存在または量を検出するための本発明の装置の斜視図である。
【図2】本発明の装置の分解図である。
【図3】試料コレクタが第1の位置にあってさらに試料コレクタと受取カップが分離しているときの本発明の装置の斜視図である。
【図4】第2のロック位置にある本発明の装置の斜視図である。示しているのは、試料が予め付与されている装置から試料を抽出する手順である。この実施形態では、試料は、ピペットを使用して採取用孔から抽出される。
【図5】吸収材料(ここではスポンジ)が圧縮されない第1の位置にある本発明の装置の断面図である。
【図6】吸収材料が圧縮される第2のロック位置にある本発明の装置の断面図である。
【図7】装置内の試料貯蔵領域を示す、本発明の装置の断面図である。
【図8】吸収材料(ここではスポンジ)が圧縮されない第1の位置にある試料コレクタを示す、本発明の装置の断面図である。
【図9】吸収材料(ここではスポンジ)が圧縮される第2のロック位置にある試料コレクタを示す、本発明の装置の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料中の分析物の存在または量を検出するための装置であって、
流体試料を収集するための可縮性の吸収部材を含む試料コレクタと、
中で試料コレクタを受け取りさらに保持するための受取カップであって、試料コレクタが第1の位置および受取カップ内の第2のロック位置を有し、吸収部材が第1の位置では圧縮されず第2のロック位置ではカップ内で圧縮されて保持される、受取カップとを有し、
試料コレクタが、流体試料中の分析物の存在または量を検出するための試薬を有する少なくとも1つの検査素子を有し、検査素子が、試料コレクタが第2のロック位置にあるときに吸収部材と流体連通する、装置。
【請求項2】
試料コレクタが、検査素子を収容する検査素子ホルダを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
検査素子が、吸収部材と検査素子とを連結する試料コレクタ内の通路を通して吸収部材と流体連通している、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
吸収パッドが、通路と検査素子との間に配置され、流体を通路から検査素子へ移送する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
試料コレクタが円周方向のねじ山を有し、受取カップが円周方向の受けねじ山を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
ねじ山および受けねじ山が、試料コレクタが第2のロック位置にあるときに係合される、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
受取カップが、試料コレクタが第2のロック位置にあるときに外部との流体連通から密封される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
試料コレクタおよび受取カップが、試料コレクタが第2のロック位置にあるときにスナップ嵌め接続によって接合される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
吸収部材が被験者の口に配置するのに適したスポンジであり、流体試料が唾液である、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
試料コレクタが、試料コレクタを手動で掴むための平坦なハンドルを有する、請求項2に記載の装置。
【請求項11】
流体試料中の分析物の存在または量を検出するための装置であって、
ねじ山、および、流体試料を収集するための可縮性の吸収部材を含む試料コレクタと、
中で試料コレクタを受け取りさらに保持するための受取カップであって、受けねじ山を有する受取カップとを備え、
試料コレクタが、受取カップ内の第1の位置、および、ねじ山と受けねじ山が係合する受取カップ内の第2のロック位置を有し、吸収部材が、第1の位置では圧縮されず、第2のロック位置ではカップ内で圧縮されて保持され、
受取カップが、流体試料中の分析物の存在または量を検出するための試薬を有する少なくとも1つの検査素子を含む検査素子ホルダと直接に連結され、検査素子が、試料コレクタが第2のロック位置にあるときに吸収部材と流体連通する、装置。
【請求項12】
吸収部材が、試料コレクタが第2のロック位置にあるときに受取カップ内のチャネルを通して検査素子と流体連通する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
受取カップが、試料コレクタが第2のロック位置にあるときに外部との流体連通から密封される、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
吸収部材が被験者の口に配置するのに適したスポンジであり、流体試料が唾液である、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
検査素子ホルダが、試料コレクタを手動で掴むための平坦なハンドルを有する、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
請求項1に記載の装置を使用して流体試料中の分析物の存在または量を検出するための方法であって、
ある量の流体試料を吸収部材内に配置するステップと、
試料コレクタを受取カップ内に挿入してさらに試料コレクタを第2のロック位置に移動させるステップと、
流体試料中の分析物の存在または量を判断するステップと
を含む、方法。
【請求項17】
流体試料が唾液であり、唾液が、被験者の口の中に試料コレクタを配置することにより吸収部材に配置される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−524799(P2009−524799A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542577(P2008−542577)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【国際出願番号】PCT/CN2006/003028
【国際公開番号】WO2007/062575
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(302044591)インバーネス・メデイカル・スウイツツアーランド・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (38)
【Fターム(参考)】