説明

流体識別装置および流体識別方法

【課題】長寿命の流体識別装置を提供する。
【解決手段】感温体及び発熱体の双方を備えた液種検知部を少なくとも2つ使用し、いずれかの発熱体に対する通電を選択し、それに応じて通電を選択された発熱体を含まない流体検知部に具備された感温体による流体温度検知信号と流体種検知回路の出力とに基づき被識別流体の識別を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などの炭化水素系液体、エタノール、メタノールなどのアルコール系液体、尿素水溶液液体、気体、粉粒体などの流体について、流体の熱的性質を利用して、被識別流体について、流体種識別、濃度識別、流体の有無識別、流体の温度識別、流量識別、流体の漏れ識別、流体レベル識別、アンモニア発生量などの識別を行う流体識別装置、ならびに、流体識別装置を用いた流体識別方法に関する。
【0002】
本発明の流体識別装置、ならびに、流体識別装置を用いた流体識別方法は、例えば、自動車の内燃エンジンなどから排出される排ガスを浄化するシステムにおいて、窒素酸化物(NOx)の分解のために排ガス浄化触媒に対し、所定濃度の尿素水溶液であるとして噴霧される液体が、真に所定濃度の尿素水溶液であるか否かを識別するのに利用することができる。
【背景技術】
【0003】
自動車の内燃エンジンではガソリンや軽油などの化石燃料が燃焼される。これに伴って発生する排ガス中には、水や二酸化炭素などと共に、未燃焼の一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC)や、硫黄酸化物(SOx)や、窒素酸化物(NOx)等の環境汚染物質が含まれる。近年、特に環境保護および生活環境の汚染防止のため、これら自動車の排ガスを浄化すべく各種の対策が講じられている。
【0004】
このような対策の1つとして、排ガス浄化触媒装置の使用が挙げられる。これは、排気系の途中に排ガス浄化用三元触媒を配置し、ここで、CO、HC、NOx等を酸化還元反応により分解して、無害化を図るものである。触媒装置でのNOxの分解を継続的に維持するために、排気系の触媒装置のすぐ上流側から触媒に対して尿素水溶液が噴霧される。この尿素水溶液は、NOx分解の効果を高めるためには特定の尿素濃度範囲にあることが必要とされ、特に尿素濃度32.5%が最適であるとされている。
【0005】
尿素水溶液は、自動車に積載される尿素水溶液タンクに収容されるのであるが、経時的に濃度変化が生ずることがあり、また、タンク内において局所的に濃度分布の不均一が発生することもある。タンクからポンプにより供給管を介して噴霧ノズルへと供給される尿素水溶液は、一般にタンクの底部に近い出口から採取されるので、この領域のものが所定の尿素濃度であることが触媒装置の効率を高めるためには重要である。
【0006】
また、尿素水溶液タンクに誤って尿素水溶液以外の液体が収容されることも現実にはあり得る。このような場合、液体が所定の尿素濃度の尿素水溶液以外であることを素早く検知して警告を発することが、触媒装置の機能発揮のためには必要である。
【0007】
ところで、本発明者等は、特開平11−153561号公報(特許文献1)(特に、段落[0042]〜段落[0049]参照)において、既に、通電により発熱体を発熱させ、この発熱により感温体を加熱し、発熱体から感温体への熱伝達に対し被識別流体により熱的影響を与え、感温体の電気抵抗に対応する電気的出力に基づき、被識別流体の種類を判別する流体識別方法であって、発熱体への通電を周期的に行う方法を提案している。
【0008】
しかしながら、この流体識別方法では、発熱体への通電を周期的に行う(多パルスで行う)必要があるので、識別に時間を要することになり、瞬時に流体を識別することは困難である。また、この方法は、例えば、水と空気と油などの性状のかなり異なる物質に対し
て、代表値によって流体識別を行うことが可能であるが、上記のような尿素溶液の尿素濃度の識別を正確で迅速に行うことは困難である。
【0009】
このような目的のために、特開2005−337969号公報(特許文献2)には、被測定液体が所定のものであるか否かの識別を行う液種識別装置として、発熱体および感温体を含んでなる傍熱型液種検知部と被測定液体の温度を検知する液温検知部とを有し且つ被測定液体の流通経路に臨んで配置された識別センサー部を備えたものが記載されている。この液種識別装置では、傍熱型液種検知部の発熱体に対して単一パルス電圧を印加して発熱体を発熱させ、傍熱型液種検知部の感温体と液温検知部とを含んでなる液種検知回路の出力に基づき被測定液体の識別を行う識別演算部を備えている。
【特許文献1】特開平11−153561号公報
【特許文献2】特開2005−337969号公報
【特許文献3】特開平11−118566号公報
【特許文献4】特開2003−185522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献2に記載されている液種識別装置においては、液温検知部では発熱体を作用させることなく感温体のみを作用させて温度検知を行うようにしている。即ち、液温検知部と液種検知部とは明確に機能分担がなされている。従って、液種検知の際には常に液種検知部の発熱体が使用されるので、この発熱体の経時劣化の進行が早く、液種識別装置の寿命が短いという難点がある。
【0011】
本発明は、以上のような現状に鑑みて、長寿命の液種識別装置を提供することにある。
一方、従来、各種流体特に液体の流量(あるいは流速)を測定する流量計[流量センサー](あるいは流速計[流速センサー])としては、種々の形式のものが使用されているが、低価格化が容易であるという理由で、いわゆる熱式(特に傍熱型)の流量計が利用されている。
【0012】
この傍熱型流量計としては、基板上に薄膜技術を利用して薄膜発熱体と薄膜感温体とを絶縁層を介して積層してなるセンサーチップを配管内の流体との間で熱伝達可能なように配置したものが使用されている。
【0013】
発熱体に通電することにより感温体を加熱し、該感温体の電気的特性例えば電気抵抗の値を変化させる。この電気抵抗値の変化(感温体の温度上昇に基づく)は、配管内を流れる流体の流量(流速)に応じて変化する。
【0014】
これは、発熱体の発熱量のうちの一部が流体中へと伝達され、この流体中へ拡散する熱量は流体の流量(流速)に応じて変化し、これに応じて感温体へと供給される熱量が変化して、該感温体の電気抵抗値が変化するからである。
【0015】
この感温体の電気抵抗値の変化は、流体の温度によっても異なり、このため、上記感温体の電気抵抗値の変化を測定する電気回路中に温度補償用の感温素子を組み込んでおき、流体の温度による流量測定値の変化をできるだけ少なくすることも行われている。
【0016】
このような、薄膜素子を用いた傍熱型流量計に関しては、例えば、特開平11−118566号公報(特許文献3)に記載がある。この流量計においては、流体の流量に対応する電気的出力を得るためにブリッジ回路を含む電気回路(検知回路)を使用している。
【0017】
以上のような流量計においては、流体の熱的性質が異なると、実際の流量が同一であっ
ても検知回路の出力が異なるので、一般に、流量測定される流体の種類が既知であるものとして、その流体に関する検量線を用いて検知回路の出力を流体流量値に換算している。
【0018】
しかしながら、近年、流量測定される流体の供給源として流体を小分けした小分け供給源を用い、同種の流体について複数の小分け供給源を順次取り替えて流量測定を行うことがなされている。
【0019】
例えば、高純度試薬の合成や医薬の合成や化学分析などにおいては、原材料流体や試薬流体が収容されている小型可搬式容器と反応装置や分析装置とを測定部により接続して、該測定部において流量測定を行いながら、反応装置内へと原材料流体や試薬流体を供給することがなされることがある。
【0020】
原材料流体や試薬流体の補充の際には、空の可搬式容器に替えて原材料流体や試薬流体の充填された新たな可搬式容器を反応装置や分析装置と接続する。
また、生体に医療用薬液を注入する場合においても、携行が可能な量ごとに医療用薬液を小分けしてパックに詰め、この薬液パックと生体の例えば血管とを測定部により接続して、該測定部において流量測定を行いながら生体内へと薬液を注入することがなされる。薬液の補充の際には、空のパックに替えて薬液の充填された新たなパックを生体と接続するようになっている。
【0021】
また、このような生体に医療用薬液を注入する場合において、小分け供給源の使用は実際上の大きな利点を有するが、その反面、流体供給源の取り替えの際に過って所要の流体以外の流体を収容した供給源と接続する可能性がある。
【0022】
そのような場合に、そのことに気づかずに流体供給を行うと、所要の流体と実際に供給される流体との熱的性質の相違に基づき正確な流量測定ができなくなるばかりでなく、過った流体を供給することで製造や分析の不良や事故あるいは医療事故を引き起こす原因になる。
【0023】
そこで、本発明は、このような過った流体の流通を避けるべく、簡単な構成で、流体が所要のものであるか否かの判別機能をもつ熱式流量計として使用できる流体識別装置を提供することを目的とするものである。
【0024】
一方、燃料油や各種液体化学品などはタンク内に貯蔵されている。例えば、近年では、集合住宅における集中給油システムが提案されており、このシステムでは集中灯油タンクから配管を通じて各住戸に燃料用灯油が供給される。
【0025】
タンクは経時劣化により亀裂を生ずることがあり、この場合にはタンク内液体がタンク外へと漏れ出す。このような事態をいち早く検知して適切に対処することは、引火爆発または周囲環境汚染または有毒ガス発生などを防止するために重要である。
【0026】
タンク内液体の漏れをできるだけ早く検知する装置として、特開2003−185522号公報(特許文献4)には、タンク内の液体が導入される測定管と該測定管の下方に位置する測定細管とを備え、該測定細管に付設したセンサー部を用いて測定細管内の液体の流量を測定することで、タンク内液体の微小な液面変動すなわち液位変化を検知するようにしたものが開示されている。
【0027】
この漏れ検知装置では、測定細管に付設されたセンサーとして傍熱式流量計が使用されている。この流量計では、通電により発熱体を発熱させ、その発熱量のうちの一部を液体に吸収させ、この液体の吸熱量が液体の流量に応じて異なることを利用し、この吸熱の影
響を感温体の温度変化による電気的特性値例えば抵抗値の変化により検知している。
【0028】
しかしながら、上記特許文献4に記載の漏れ検知装置に使用されている傍熱式流量計は、流量値が例えば1ミリリットル/h以下の極微量の領域では流量変化に対する電気回路出力の変化が小さくなるため、流量測定値の誤差が大きくなる傾向にある。このため、漏れ検知の精度の向上には限界があった。
【0029】
ところで、上記の漏れ検知に際しては、発熱体への通電のための電源として外部商用電源を使用すると、外部から漏れ検知装置のセンサーへと電源配線を敷設することが必要となる。このような電源配線は、長期使用のうちには、特に漏れ検知装置の構造部への取り入れ部分において漏電を生ずる可能性がある。液体が可燃性のものである場合または電気伝導性を持つものである場合には、漏れ検知装置の構造部に付着した液体に対して漏電に基づく引火またはショートなどを引き起こすことがある。
【0030】
このような観点からは、特に液体が可燃性または電気伝導性のものである場合には、センサーの発熱体の電源として漏れ検知装置の構造部内に内蔵された電池を利用するのが好ましい。その場合、できるだけ長い期間にわたって電池交換することなく漏れ検知を実施するためには、漏れ検知装置の消費電力の低減が望ましい。
【0031】
さらに、タンク内液体の漏れは液位変動の大きさに基づき検知することができる。この液位変動の測定には、圧力センサーを用いることができる。ところで、圧力センサーによる液位検知は、検知される液圧を液面から圧力センサーまでの深さに換算するものであるため、その換算の際には被測定液体の比重が関与する。
【0032】
従って、比重が一定の被測定流体(例えば、水)のみについて漏れ検知を行う場合には、予め当該液体の比重値を換算プログラムに入力しておくことで、圧力センサーの出力に基づき直ちに液位値を得ることができ、これに基づき精度よく漏れ検知を行うことができる。
【0033】
しかしながら、被測定液体が燃料油(ガソリン、ナフサ、灯油、軽油または重油)等の多数の有機化合物の混合組成物である場合には、同種の燃料油、例えば灯油であっても、精製時の灯油留出条件によって化合物組成が異なり従って比重の異なる(例えば、比重差0.05)数多くの灯油が存在する。
【0034】
従って、タンクに収容された、例えば、灯油について漏れ検知を行う場合には、漏れ検知装置において液圧から液位への換算プログラムに液体比重値として標準的な灯油の比重値を使用していても、実際にタンク内に収容されている灯油が標準的灯油とは異なる比重のものであるときには、換算による誤差が生ずる。
【0035】
タンク内の灯油の残量が少なくなると、新たに灯油を補充するが、その際の補充灯油は様々なものであり、従って、タンク内灯油の比重は灯油補充の度に変化することもある。かくして、灯油などの混合組成物の漏れ検知の場合には、以上のような換算誤差を含んで液位測定がなされることが多くなり、漏れ検知の精度が低下する傾向にある。
【0036】
従って、本発明の目的は、圧力センサーにより測定される液位の変動によりタンク内液体の漏れを検知する際の検知精度の高められたタンク内液体の漏れ検知装置を提供することにある。
【0037】
また、本発明の目的は、極微量の漏れを検知することの可能なタンク内液体の漏れ検知装置として使用できる流体識別装置を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、漏れ検知を継続して実施でき且つ消費電力低減の可能な漏れ検知装置として使用できる流体識別装置を提供することにある。
【0038】
一方、特許文献1(特開平11−153561号公報)に記載の流体識別方法は、例えば、水と空気と油などの性状のかなり異なる流体について、代表値によって識別を行うことが可能であるが、上記の様なガソリンのうちの互いに異なる種類のものの識別に適用して正確で迅速な識別を行うには十分とはいえない。
【0039】
また、この方法を自動車などの移動体に搭載されるガソリン種類識別に適用する場合には、さらに別の技術的課題が生ずる。
すなわち、この場合、鉛直方向(重力の方向)に対する自動車の傾き角度(傾角)が必ずしも一定に維持されるとは限らず、例えば、傾斜地に停車した場合等には平地に停車した場合に比べて傾角が大きくなり、これに従って識別装置が種々の角度に傾くことにより、発熱体から感温体への熱伝達に対して被識別流体たるガソリンにより与えられる熱的影響が変化して、識別の精度が低下することがある。
【0040】
さらに、自動車の移動中に熱伝達部材の周囲のガソリンに外的要因に基づき強制流動が生ずることがあり、これにより発熱体から感温体への熱伝達に対して被識別流体により与えられる熱的影響が変化して、識別の精度が低下することがある。
【0041】
従って、本発明は、種々の角度に傾いた場合または移動中であっても、正確且つ迅速にガソリンの種類を識別することの可能なガソリン種類識別装置として使用できる流体識別装置を提供することを目的とする。
【0042】
また、燃料の材料組成を一定にし最適燃焼条件が変化しないようにするために、化石燃料の成分である個々の炭化水素例えば、ペンタン、シクロヘキサン、オクタン等、または、個々のアルコール、例えば、メタノール、エタノール等を、それぞれ単独でまたはせいぜい2種程度を混合して燃料として使用することが考えられている。この種の燃料には、大別して、炭化水素系燃料とアルコール系燃料とがある。
【0043】
しかしながら、このような各種の燃料が市中において並行して用いられるようになると、燃料タンクへの燃料補給の際に誤って所定のもの以外の燃料が補給されるおそれがある。内燃エンジンへと供給される燃料が所定のものと異なる場合には、エンジンの出力効率が極端に低下することがあり、そのような事態の発生は避けなければならない。
【0044】
このため、自動車の側でも、燃料タンクから内燃エンジンへと供給される燃料の種類を実際に検知して、その種類が所定のものであることの確認を行うことが望ましい。
また、検知された燃料の種類が所定のものと類似のものである場合には、検知された燃料の種類に応じて内燃エンジンの燃焼条件の最適化を図ることが望ましい。
【0045】
すなわち、内燃エンジンに実際に供給される燃料の種類を識別し、その識別結果に応じて内燃エンジンの燃焼条件を適宜設定することで、実際に燃焼に供される燃料の種類に応じた好適な燃焼状態(すなわち、内燃エンジンの出力トルクを高め、排気ガス中の不完全燃焼生成物の量を低減する燃焼状態)を実現することが望ましい。
【0046】
このように、炭化水素系燃料とアルコール系燃料とでは互いに燃焼特性および物性が大きく異なるので、先ず被測定液体(燃料)がこれらのうちのいずれに属するかを判別することが必要である。また、被測定液体(燃料)が、炭化水素系燃料またはアルコール系燃料のうちのどのようなものであるかを識別することが好ましい。
【0047】
しかしながら、特許文献1(特開平11−153561号公報)に記載の流体識別方法は、例えば、水と空気と油などの性状のかなり異なる流体について、代表値によって識別を行うことが可能であるが、上記の様な炭化水素系液体とアルコール系液体との峻別を正確且つ迅速に行うことは十分良好にはなし得ない。
【0048】
従って、本発明は、特に燃料として使用され得る炭化水素系液体とアルコール系液体とを正確且つ迅速且つ簡易に識別することの可能な識別装置を提供することを目的とするものである。
【0049】
また、本発明は、被測定液体が炭化水素系液体またはアルコール系液体のうちのどのようなものであるかを正確且つ迅速且つ簡易に識別することの可能な識別装置を提供することを目的とするものである。
【0050】
一方、特許文献1(特開平11−153561号公報)に記載の傍熱型の熱式センサーにおいては、被測定流体が液体である場合には、その中に溶存する空気等が温度上昇などにより気化して気泡となり、この気泡がセンサーの外面に付着することがある。
【0051】
また、同様に被測定流体が液体である場合には、例えば、液体がタンク内に収容されていて、このタンク内に液体の自由表面があると、このタンク内液体が揺動することで液面が波立って、該液面に接する空気などの気体が液体中に巻き込まれて液体中に気泡となって残留し、この気泡がセンサー外面に付着することもある。
【0052】
特に、上記自動車に搭載されるタンク中の尿素水溶液の場合には、自動車走行時に外力に基づく激しい揺動が繰り返されるので、上記センサー外面への気泡の付着は著しい。
センサーに気泡が付着すると、センサーの発熱体から発せられる熱が熱伝達部材を介して液体に良好に伝達されなくなり、また液体から熱伝達部材を介して感温体に良好に熱伝達がなされなくなる。このように、センサーと被測定液体との間の熱伝達が正常になされなくなると、被測定液体の濃度測定値に大きな誤差が発生して測定の信頼性が著しく低下するおそれがある。
【0053】
従って、本発明は、特に、被測定物が水性液体である場合において、センサー外面への気泡の付着が低減され、測定精度の向上が可能な熱式センサーとして使用できる流体識別装置識別センサーモジュールおよびそれを用いた測定装置として使用できる流体識別装置を提供することを目的とするものである。
【0054】
さらに、本発明は、圧力センサーを用いて液体の液位を検知するに際して、当該液体の密度による補正を行って高い精度で液位を検出することを企図した液位検出方法として使用できる流体識別方法、および液位検出装置として使用できる流体識別装置を提供することを目的とする。
【0055】
一方、前述したように、排ガス浄化触媒装置において、触媒装置でのNOxの分解を継続的に維持するために、排気系の触媒装置のすぐ上流側から触媒に対して尿素水溶液が噴霧されるが、特に尿素濃度32.5%が最適であるとされている。
【0056】
しかしながら、この場合、尿素水溶液は、凝固点が比較的高く、尿素濃度32.5%の尿素水溶液の場合には、−11℃で凍結してしまうので、例えば、日本においては稚内、アラスカ、五大湖周辺、カナダ、ロシアなどの極寒冷地では、上記の排ガス浄化触媒装置において、触媒装置でのNOxの分解を継続的に維持することができなくなってしまう。
【0057】
このため、米国などでは、尿素水溶液にギ酸アンモニウム溶液を混合した混合溶液を、
上記の排ガス浄化触媒装置において、尿素水溶液の代わりに使用することによって、凝固点、すなわち、凍結温度を低下させることが行われている。
【0058】
ところで、このような混合溶液の場合には、混合溶液が固化せずに、触媒装置の上流側で還元反応が効率良く発生するためには、例えば、尿素20重量%、ギ酸アンモニウム26重量%、H2Oが54重量%とするのが好適であるが、このような好適な混合割合を把
握する方法は従来何ら提供されていないのが実情である。
【0059】
従って、本発明は、尿素水溶液にギ酸アンモニウム溶液を混合した混合溶液を、排ガス浄化触媒装置において、尿素水溶液の代わりに使用する場合に、尿素タンク中の混合溶液の濃度、アンモニア発生量を正確にかつ迅速に把握でき、その結果、混合溶液を所定の濃度に保つことができるので、排気ガス中のNOxを還元して極めて低減することができるアンモニア発生量の測定装置およびアンモニア発生量の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0060】
本発明は、前述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明されたものであって、本発明のセンサーモジュールは、感温体、及び該感温体の近傍に配置された発熱体を備えた流体検知部を少なくとも2つ、容器内に収容したことを特徴とする。
【0061】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記少なくとも2つの流体検知部と接続された流体検知回路と、
前記流体検知回路の出力に基づいて、被識別流体の識別を行う識別演算部とを備えたことを特徴とする。
【0062】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記識別演算部が、前記少なくとも2つの流体検知部のいずれか一つに具備された発熱体に対する通電を選択し、それに応じて、通電を選択された発熱体を含まない流体検知部のいずれか一つに具備された感温体による流体温度検知信号を選択し、選択された流体温度検知信号と前記流体検知回路の出力とに基づいて、前記被識別流体の識別を行うことを特徴とする。
【0063】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記少なくとも2つの流体検知部に具備された発熱体に対する通電経路にそれぞれスイッチが存在し、
前記識別演算部は、前記少なくとも2つの流体検知部に具備されたスイッチのいずれか一つの閉状態を選択することで、前記少なくとも2つの流体検知部に具備された発熱体のいずれか一つに対する通電を選択することを特徴とする。
【0064】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記識別演算部が、前記少なくとも2つの流体検知部のいずれか一つに具備された発熱体に対する通電を選択し、かつ、通電を選択された発熱体を含まない流体検知部のいずれか一つに具備された感温体による液温検知信号を選択して、前記被測定流体の識別を行う流体識別を、複数の発熱体に対する通電の選択を順番に行うことを特徴とする。
【0065】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記識別演算部が、前記少なくとも2つの流体検知部のいずれか一つに具備された発熱体に対する通電を選択し、かつ、通電を選択された発熱体を含まない流体検知部のいずれか一つに具備された感温体による液温検知信号を選択したときの、前記液種検知回路の出力に基づき算出される特性値群を、複数の発熱体に対する通電の選択と感温体による液温検知信号の選択との組み合わせにおいて得、
対応するもの同士を平均して得られる平均特性値群を用いて前記被測定液体の識別を行うことを特徴とする。
【0066】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記識別演算部が、前記少なくとも2つの流体検知部のいずれか一つに具備された発熱体に対する通電を選択し、かつ、通電を選択された発熱体を含まない流体検知部のいずれか一つに具備された感温体による液温検知信号を選択したときの、前記液種検知回路の出力に基づき算出される特性値群を複数の発熱体に対する通電の選択と感温体による液温検知信号の選択との組み合わせにおいて得、
対応するもの同士の和をとることで得られる和特性値群を用いて前記被測定液体の識別を行うことを特徴とする。
【0067】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記識別演算部が、前記少なくとも2つの流体検知部のいずれか一つに具備された発熱体に対する通電を選択し、かつ、通電を選択された発熱体を含まない流体検知部のいずれか一つに具備された感温体による液温検知信号を選択したときの、前記液種検知回路の出力に基づき算出される特性値群を複数の発熱体に対する通電の選択と感温体による液温検知信号の選択との組み合わせにおいて得、
対応するもの同士の差をとることで得られる差特性値群のうち少なくとも一つに基づき、前記少なくとも2つの流体検知部のうち少なくとも一つの欠陥の有無を判別することを特徴とする。
【0068】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記流体検知部が、容器から被識別流体側に露出しないように、容器の被識別流体側に接して配置されていることを特徴とする。
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記容器から、被識別流体側に、流体検知部の少なくとも一部が露出するように配置されていることを特徴とする。
【0069】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記流体検知部の露出部分が、親水性膜またはフィルターで覆われていることを特徴とする。
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記容器が、被識別流体側に位置する容器本体と、被識別流体側と反対側に位置する蓋部とから構成されていることを特徴とする。
【0070】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記容器本体が、金属製であることを特徴とする。
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記流体検知回路の一部と、識別演算部とが、ICによって構成されていることを特徴とする。
【0071】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記流体検知部が、チップ基板上に流体検知用感温体を薄膜により形成した流体検知用薄膜チップを、その一面が露出するようにして合成樹脂モールドに埋め込んで構成したものであって、
前記流体検知用薄膜チップの一面が、前記容器の被識別流体側に位置するように配置されていることを特徴とする。
【0072】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記少なくとも2つの流体検知部が、
第1の感温体、及び該第1の感温体の近傍に配置された第1の発熱体を備えた第1の流体検知部と、
第2の感温体、及び該第2の感温体の近傍に配置された第2の発熱体を備えた第2の流体検知部によって構成されていることを特徴とする。
【0073】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記識別演算部が、前記第1の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第2の感温体による液温検知信号を選択して前記被測定流体の識別を行う第1の流体識別と、前記第2の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第1の感温体による液温検知信号を選択して前記被測定流体の識別を行う第2の液種識別とを交互に実行することを特徴とする。
【0074】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記識別演算部が、前記第1の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第2の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第1の特性値群と、前記第2の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第1の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第2の特性値群との、対応するもの同士を平均して得られる平均特性値群を用いて前記被測定流体の識別を行うことを特徴とする。
【0075】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記識別演算部が、前記第1の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第2の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第1の特性値群と、前記第2の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第1の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第2の特性値群との、対応するもの同士の和をとることで得られる和特性値群を用いて前記被測定流体の識別を行うことを特徴とする。
【0076】
また、本発明の識別センサーモジュールは、前記識別演算部が、前記第1の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第2の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第1の特性値群と、前記第2の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第1の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第2の特性値群との、対応するもの同士の差をとることで得られる差特性値群のうちの少なくとも1つに基づき、前記第1及び第2の流体検知部のいずれかにおける欠陥の有無を判別することを特徴とする。
【0077】
また、本発明の流体識別装置は、前述のいずれかに記載の識別センサーモジュールを備えることを特徴とする。
また、本発明の流体識別装置は、前記識別センサーモジュールが、防水ケースに取り付けられており、
前記防水ケースから、被識別流体側に、容器の流体検知部側が露出するように配置されていることを特徴とする。
【0078】
また、本発明の流体識別装置は、前記防水ケースから、被識別流体側に、容器の流体検知部側が突出するように配置されていることを特徴とする。
また、本発明の流体識別装置は、前記容器が、被識別流体側に位置する容器本体と、被識別流体側と反対側に位置する蓋部とから構成され、
前記容器本体と蓋部との接合部が、防水ケース内に配置されていることを特徴とする。また、本発明の流体識別装置は、前記防水ケースが、前記容器の被識別流体側を覆うカバー部材を備えるとともに、
前記カバー部材内部には、被識別流体の流通通路が形成されていることを特徴とする。
【0079】
また、本発明の流体識別装置は、前記防水ケースに、被識別流体の流体レベルを検知する流体レベルセンサーモジュールが取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明の流体識別装置は、前記防水ケース内には、電源回路部が収容されていることを特徴とする。
【0080】
また、本発明の流体識別装置は、前記防水ケースから防水配線が延出していることを特徴とする。
また、本発明の流体識別装置は、前記被識別流体の識別が、流体種識別、濃度識別、流体の有無識別、流体の温度識別、流量識別、流体の漏れ識別、流体レベル識別のうち、少なくとも一つの識別であることを特徴とする。
【0081】
また、本発明の流体識別装置は、前記被識別流体が、炭化水素系液体、アルコール系液体、尿素水溶液のいずれかであることを特徴とする。
また、本発明の流体識別装置は、前記少なくとも2つの流体検知部に具備された感温体のそれぞれの電気的特性値に基づいて、
前記流体の流量の検知を行うとともに、前記少なくとも2つの流体検知部のそれぞれの間の導通性の測定を行うことによって、流体種の判別を行うように構成したことを特徴とする。
【0082】
また、本発明の流体識別装置は、前記流体識別装置を、流体種識別室内に配置して、
前記流体検知部の発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記流体検知部の発熱体によって、流体種識別室内に一時滞留した被識別流体を加熱し、
前記流体検知部の感温体の初期温度とピーク温度との間の温度差に対応する電圧出力差によって、被識別流体の流体種を識別するように構成したことを特徴とする。
【0083】
また、本発明の流体識別装置は、被識別流体が流通する主流路と、
前記主流路から分岐した副流路と、
前記副流路に設けられた前記流体識別装置と、
前記副流路に設けられ、前記流体識別装置への被識別流体の流通を制御する副流路開閉弁と、
前記流体識別装置と副流路開閉弁を制御する制御装置を備え、
前記制御装置が、
前記被識別流体の識別を行う際には、前記副流路開閉弁を弁閉して、被識別流体を流体識別装置に一時滞留させて、被識別流体の識別を行うとともに、
前記被識別流体の流量を検知する際には、前記副流路開閉弁を弁開して、被識別流体を流体識別装置に流通させて、被識別流体の流量を検知するように制御するように構成されていることを特徴とする。
【0084】
また、本発明の流体識別装置は、被識別流体を一時滞留させる流体識別検知室と、
前記流体識別検知室内に配設された前記流体識別装置の識別センサーモジュールと、
前記流体識別検知室内に配設され、前記識別センサーモジュールを囲繞する流れ制御板とを備えることを特徴とする。
【0085】
また、本発明の流体識別装置は、前記流体識別装置を、流体種識別室内に配置して、
前記流体検知部の発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記流体検知部の発熱体によって、流体種識別室内に一時滞留した被識別流体を加熱し、
前記流体検知部の感温体の初期温度とピーク温度との間の温度差に対応する電圧出力差によって、被識別流体の濃度を識別するように構成したことを特徴とする。
【0086】
また、本発明の流体識別装置は、タンク内の被識別流体が下端から導入出される測定細管に、前記流体識別装置が配設され、
前記少なくとも2つの流体検知部の感温体によって感知される温度の差に対応する出力を得て、
前記出力を用いて算出される被識別流体の流量に対応する流量対応値に基づいて、タンク内の被識別流体の比重を検知し、
得られた比重値を用いて、前記流体レベルセンサーモジュールによる被識別流体の流体レベルの測定を行い、流体レベルの時間変化率の大きさに基づいて、タンク内の被識別流体の漏れを検知することを特徴とする。
【0087】
また、本発明の流体識別装置は、前記流体レベルセンサーモジュールにより、被識別流体の流体圧を検出し、流体圧に基づき被識別流体が所定密度の流体であるとした場合の仮
の流体レベル値を算出し、
前記流体検知部の発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記流体検知部の発熱体によって、被識別流体を加熱し、
前記流体検知部の感温体の初期温度とピーク温度との間の温度差に対応する電圧出力差によって、被識別流体の濃度を識別し、
識別された被識別流体の濃度と密度の関係とに基づいて、被識別流体の密度値を得て、
前記仮の流体レベル値と密度値とに基づいて、被識別流体の流体レベルを算出するように構成したことを特徴とする。
【0088】
また、本発明のアンモニア発生量の測定装置は、前述のいずれかに記載の流体識別装置を備え、尿素水、蟻酸アンモニウム水、または、それらの混合水からなる被識別液体から発生するアンモニアの量を測定するアンモニア発生量の測定装置であって、
発熱体と該発熱体の近傍に配置された感温体とを備えたセンサーを用いて、
前記発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記発熱体によって、被測定液体を加熱し、前記感温体の電気抵抗に対応する電気的出力によって、
前記被測定液体の熱伝導率に依存する感温体の電気的出力である熱伝導率対応出力値を測定するとともに、
差圧センサーを用いて、被測定液体の密度に依存する電気的出力である密度対応出力値を測定して、
前記熱伝導率対応出力値と密度対応出力値の関係から、被測定液体に含まれる尿素濃度X重量%、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%をそれぞれ算出して、
前記被測定液体中に含まれる尿素量A、蟻酸アンモニウム量Bを濃度と被測定液体の量から算出して、
下記の式、すなわち、
アンモニア発生量=X×A+Y×B
からアンモニア発生量を測定することを特徴とする。
【0089】
また、本発明のアンモニア発生量の測定装置は、前述のいずれかに記載の流体識別装置を備え、尿素水、蟻酸アンモニウム水、または、それらの混合水からなる被識別液体から発生するアンモニアの量を測定するアンモニア発生量の測定装置であって、
発熱体と該発熱体の近傍に配置された感温体とを備えたセンサーを用いて、
前記発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記発熱体によって、被測定液体を加熱し、前記感温体の電気抵抗に対応する電気的出力によって、
前記被測定液体の熱伝導率に依存する感温体の電気的出力である熱伝導率対応出力値を測定するとともに、
差圧センサーを用いて、被測定液体の密度に依存する電気的出力である密度対応出力値を測定して、
前記熱伝導率対応出力値と密度対応出力値の関係から、被測定液体に含まれる尿素濃度X重量%、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%をそれぞれ算出して、
前記被測定液体中に含まれる尿素量A、蟻酸アンモニウム量Bを濃度と被測定液体の量から算出して、
下記の式、すなわち、
アンモニア発生量=X×A+Y×B
からアンモニア発生量を測定することを特徴とする
また、本発明のアンモニア発生量の測定方法は、前述のいずれかに記載の流体識別装置を用いて、尿素水、蟻酸アンモニウム水、または、それらの混合水からなる被識別液体から発生するアンモニアの量を測定するアンモニア発生量の測定方法であって、
発熱体と該発熱体の近傍に配置された感温体とを備えたセンサーを用いて、
前記発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記発熱体によって、被測定液体を加熱し、前記感温体の電気抵抗に対応する電気的出力によって、
前記被測定液体の熱伝導率に依存する感温体の電気的出力である熱伝導率対応出力値を測定するとともに、被測定液体の動粘度に依存する感温体の電気的出力である動粘度対応出力値を測定して、
前記熱伝導率対応出力値と動粘度対応出力値の関係から、被測定液体に含まれる尿素濃度X重量%、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%をそれぞれ算出して、
前記被測定液体中に含まれる尿素量A、蟻酸アンモニウム量Bを濃度と被測定液体の量から算出して、
下記の式、すなわち、
アンモニア発生量=X×A+Y×B
からアンモニア発生量を測定することを特徴とする。
【0090】
また、本発明のアンモニア発生量の測定方法は、前述のいずれかに記載の流体識別装置を用いて、尿素水、蟻酸アンモニウム水、または、それらの混合水からなる被識別液体から発生するアンモニアの量を測定するアンモニア発生量の測定方法であって、
発熱体と該発熱体の近傍に配置された感温体とを備えたセンサーを用いて、
前記発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記発熱体によって、被測定液体を加熱し、前記感温体の電気抵抗に対応する電気的出力によって、
前記被測定液体の熱伝導率に依存する感温体の電気的出力である熱伝導率対応出力値を測定するとともに、
差圧センサーを用いて、被測定液体の密度に依存する電気的出力である密度対応出力値を測定して、
前記熱伝導率対応出力値と密度対応出力値の関係から、被測定液体に含まれる尿素濃度X重量%、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%をそれぞれ算出して、
前記被測定液体中に含まれる尿素量A、蟻酸アンモニウム量Bを濃度と被測定液体の量から算出して、
下記の式、すなわち、
アンモニア発生量=X×A+Y×B
からアンモニア発生量を測定することを特徴とする。
【0091】
また、本発明の流体識別方法は、前述のいずれかに記載の流体識別装置を用いて、被識別流体の識別を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0092】
本発明によれば、感温体及び発熱体の双方を備えた液種検知部を少なくとも2つ使用し、いずれかの発熱体に対する通電を選択し、それに応じて通電を選択された発熱体を含まない流体検知部に具備された感温体による流体温度検知信号と流体種検知回路の出力とに基づき被識別流体の識別を行うので、複数の発熱体を順番に使用することができ、発熱体の経時劣化の進行を緩慢にするので、長寿命の流体識別装置を提供することができる。
【0093】
また、本発明によれば、流体検知部の露出部分、流体温度検知部の露出部分が、親水性膜またはフィルターで覆われているので、特に、被測定物が水性液体である場合において、識別センサーモジュール外面への気泡の付着が低減されるとともに、フィルターで覆われているので、被識別流体に、外的要因に基づく強制流動が生じにくく、測定精度の向上が可能な識別センサーモジュールおよびそれを用いた流体識別装置を提供することができる。
【0094】
また、本発明によれば、防水ケースが、前記容器の被識別流体側を覆うカバー部材を備えるとともに、カバー部材内部には、被識別流体の流通通路が形成されているので、熱伝達部材の周囲のガソリンなどの被識別流体に、外的要因に基づく強制流動が生じにくく、さらに、識別装置の傾きの如何によらず、発熱体から感温体への熱伝達に対するガソリン
などの被識別流体による熱的影響の変化は少なく、従って、ガソリンなどの被識別流体の種類などの識別の精度を向上させることができる。
【0095】
また、本発明によれば、流量検知に利用される流体検知用感温体と流体温度検知用感温体との間の流体の導電性の測定を行うことで流体種の判別を行うようにしているので、簡単な構成で、所要の測定対象の被識別流体と導電性の明らかに異なる流体を過って流通させるのを防止することが可能となる。
【0096】
また、本発明によれば、流体検知部の発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、流体検知部の発熱体によって、流体種識別室内に一時滞留した被識別流体を加熱し、流体検知用感温体の初期温度とピーク温度との間の温度差に対応する電圧出力差によって、被識別流体の流体種を識別するように構成したので、パルス電圧を所定時間印加するだけで良いので、短時間の加熱で、しかも、例えば、軽油などの被識別流体を引火する温度に加熱することなく、正確かつ迅速に被識別流体の種類、蒸留性状を識別することが可能である。すなわち、被識別流体の動粘度とセンサー出力との相関関係を利用し、自然対流を利用しており、しかも、1パルスの印加電圧を利用しているので、正確かつ迅速に被識別流体の種類を識別することが可能である。
【0097】
また、本発明によれば、被識別流体の、例えば、流体種検知、濃度検知などを行う際には、被識別流体の識別を行う際には、副流路開閉弁を弁閉して、被識別流体を流体識別装置に一時滞留させて、被識別流体の識別を正確かつ迅速に行うことができる。
【0098】
一方、被識別流体の流量を検知する際には、副流路開閉弁を弁開して、被識別流体の流量を検知する際には、副流路開閉弁を弁開して、被識別流体を流体識別装置に流通させて、被識別流体の流量を検知することができる。
【0099】
従って、流体の流量を検知すると同時に、流体の、例えば、流体種検知、濃度検知なども検知することが、正確にしかも迅速に可能であり、しかも、1つの流体識別装置で、流体の流量を検知すると同時に、流体の流体種、濃度なども検知することが可能であるので、コンパクトであり、例えば、自動車システムに適用すれば、システム全体をコンパクトにすることが可能である。
【0100】
本発明によれば、流体識別検知室内で被識別流体を一時滞留させた際に、流体識別検知室内での被識別流体の流れが、流れ制御板によって抑制されて、この流れ制御板に囲繞された流れ制御板内部に位置する識別センサーモジュールの周囲の被識別流体の流れが、瞬時に停止することになる。
【0101】
従って、識別センサーモジュールによる流体識別の際に、被識別流体の流れが生じず、また、振動による被識別流体の乱れが生じることがないので、被識別流体の、例えば、流体種、濃度の検知への影響を防止することができ、正確な被識別流体の識別を行うことが可能である。
【0102】
しかも、流体識別検知室を設けているので、被識別流体が滞留する量が多くなるので、被識別流体の液種、濃度などの検知の際に、外部の温度などの周囲影響に影響されることなく、正確な検知を実施することができる。
【0103】
従って、例えば、自動車のガソリン、軽油などの流体に適用した場合に、信号待ちなどで自動車を停止させた際に、ガソリンなどのポンプを停止して、瞬時に被識別流体の液種、濃度を検知することができ、検知終了後に、ポンプを始動して自動車を再び始動できるので、自動車の走行に支障をきたすことがない。
【0104】
また、本発明によれば、流体検知部の発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、流体検知部の発熱体によって、流体種識別室内に一時滞留した被識別流体を加熱し、流体検知用感温体の初期温度とピーク温度との間の温度差に対応する電圧出力差によって、被識別流体の濃度を識別するように構成したので、パルス電圧を所定時間印加するだけで良いので、短時間の加熱で、しかも、正確かつ迅速に、被識別流体の濃度、例えば、尿素溶液の尿素濃度を識別することが可能である。
【0105】
すなわち、被識別流体の動粘度とセンサー出力との相関関係を利用し、自然対流を利用しており、しかも、1パルスの印加電圧を利用しているので、正確かつ迅速に尿素溶液の尿素濃度を識別することが可能である。
【0106】
また、本発明によれば、1パルスの印加電圧に対して、所定回数のサンプリングの平均値に基づいて、電圧出力差を正確に得ることができるので、正確かつ迅速に被識別流体の濃度を識別することが可能である。
【0107】
また、本発明によれば、タンク内の被識別流体が下端から導入出される測定細管に、流体識別装置が配設され、流体検知部の流体検知用感温体と流体温度検知部の流体温度検知用感温体によって感知される温度の差に対応する出力を得て、出力を用いて算出される被識別流体の流量に対応する流量対応値に基づいて、タンク内の被識別流体の比重を検知し、得られた比重値を用いて、流体レベルセンサーモジュールによる被識別流体の流体レベルの測定を行い、流体レベルの時間変化率の大きさに基づいて、タンク内の被識別流体の漏れを検知するので、タンク内液体の比重の如何に関わらず、流体レベルセンサーモジュールにより測定される流体レベルの変動によりタンク内の流体の漏れを検知する際の検知精度を高めることができる。
【0108】
また、本発明によれば、流体レベルセンサーモジュールにより、被識別流体の流体圧を検出し、流体圧に基づき被識別流体が所定密度の流体であるとした場合の仮の流体レベル値を算出し、流体検知部の発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記流体検知部の発熱体によって、被識別流体を加熱し、流体検知用感温体の初期温度とピーク温度との間の温度差に対応する電圧出力差によって、被識別流体の濃度を識別し、識別された被識別流体の濃度と密度の関係とに基づいて、被識別流体の密度値を得て、仮の流体レベル値と密度値とに基づいて、被識別流体の流体レベルを算出するようにしたので、流体の密度による検出誤差の発生を防止した高精度の流体レベル検出が可能となる。
【0109】
また、本発明によれば、発熱体と該発熱体の近傍に配置された感温体とを備えたセンサーを用いて、
前記発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記発熱体によって、被測定液体を加熱し、前記感温体の電気抵抗に対応する電気的出力によって、
前記被測定液体の熱伝導率に依存する感温体の電気的出力である熱伝導率対応出力値を測定するとともに、被測定液体の動粘度に依存する感温体の電気的出力である動粘度対応出力値を測定して、
前記熱伝導率対応出力値と動粘度対応出力値の関係から、被測定液体に含まれる尿素濃度X重量%、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%をそれぞれ算出して、
前記被測定液体中に含まれる尿素量A、蟻酸アンモニウム量Bを濃度と被測定液体の量から算出して、
下記の式、すなわち、
アンモニア発生量=X×A+Y×B
からアンモニア発生量を測定するように構成したものであるので、尿素水溶液にギ酸アンモニウム溶液を混合した混合溶液を、排ガス浄化触媒装置において、尿素水溶液の代わ
りに使用する場合に、尿素タンク中の混合溶液の濃度、アンモニア発生量を正確にかつ迅速に把握でき、その結果、混合溶液を所定の濃度に保つことができる、排気ガス中のNOxを還元して極めて低減することができるアンモニア発生量の測定装置およびアンモニア発生量の測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0110】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明による流体識別装置の一例として、液種識別装置に用いた実施例を示す模式的断面図であり、図2はその識別センサーモジュールの模式的断面図であり、図3はその液種検知部を示す模式的断面図である。また、図4は、本実施形態の液種識別装置の使用状態を示す模式的断面図である。本実施形態では、所定の液体として尿素濃度が所定範囲内にある尿素水溶液が想定されている。
【0111】
図4に示されているように、液種識別装置1は、たとえば自動車に搭載された排ガス浄化システムを構成するNOx分解用の尿素水溶液タンク100の内部に配置されたドージングパイプユニット部を構成する壁部材101に取り付けられる。この取り付けは、ネジ止めまたはバンド締めにより行うことができる。図1および図4に示されているように、液種識別装置1は、識別センサーモジュール2、液位センサーモジュール3、防水ケース4および防水配線5を備えている。
【0112】
図2に示されているように、識別センサーモジュール2は、容器20内に、第1の液種液温検知部(流体検知部)21、第2の液種液温検知部22、液種検知回路の基板(液種検知回路基板)25およびカスタムIC(ASIC)26を収容してなる。容器20は、例えば耐腐食性材料たとえばステンレススチール等の金属からなる一体ものの本体部20Aに、同様にステンレススチール等の金属からなる一体ものの蓋体部20Bを適合させたものからなる。この適合は、例えばカシメにより行うことができる。図1に示されているように、容器の本体部20Aと蓋体部20Bとの適合箇所は防水ケース4内にある。
【0113】
容器本体部20Aの底部(図1および図2では右側の部分:図3では下側の部分)には、図2に示されているように、2つの膨出部20A1,20A2が形成されており、これらの膨出部に対応する容器内側の陥凹部にはそれぞれ上記の第1の液種液温検知部21および第2の液種液温検知部22が配置されている。第1の液種液温検知部21と第2の液種液温検知部22とは、上下方向に一定距離隔てて配置されている。図3に示されているように、第1の液種液温検知部21は、後述のようにしてチップ基板上に第1の感温体を薄膜により形成した第1の液種液温検知用チップ(液種液温検知用薄膜チップ)21aを、その一面が露出するようにして合成樹脂モールド23に埋め込んでなる。合成樹脂モールド23は、例えばエポキシ樹脂からなる。第1の液種液温検知部の薄膜チップ21aの露出した一面(図2では右側の面:図3では下側の面)が、容器本体部20Aの陥凹部の内面に当接している。
【0114】
図5に第1の液種液温検知部21の第1の液種液温検知用薄膜チップ21aの分解斜視図を示す。第1の液種液温検知用薄膜チップ21aは、たとえばAl23からなるチップ基板21a1と、Ptからなる第1の感温体21a2と、SiO2からなる層間絶縁膜2
1a3と、TaSiO2からなる第1の発熱体21a4及びNiからなる発熱体電極21
a5と、SiO2からなる保護膜21a6と、Ti/Auからなる電極パッド21a7と
を、順に適宜積層したものからなる。第1の感温体21a2は、図示はされていないが蛇行パターン状に形成されている。
【0115】
第1の感温体21a2および発熱体電極21a5に接続された電極パッド21a7は、図3に示されるように、ボンディングワイヤ21dを介して外部電極端子(リード)21
eに接続されている。図3に示されているように、リード21eの一方の端部(図3では下側の端部)は、合成樹脂モールド23に接続されており即ち合成樹脂モールド23内に入り込んでおり、且つボンディングワイヤ21dを介して第1の液種液温検知用チップ21aに電気的に接続されている。リード21eの他方の端部(図3では上側の端部)は、図2に示されているように液種検知回路基板25に接続されており即ち液種検知回路基板25に固定されている。この接続は、例えば半田付けによりなされ、機械的接続と共に液種検知回路基板25に形成されている回路に対する所要の電気的接続をもってなされている。
【0116】
尚、第2の液種液温検知部22も第1の液種液温検知部21と同様な構成とすることができる。即ち、第2の液種液温検知部22においては、第1の発熱体及び第1の感温体とそれぞれ同様な第2の発熱体及び第2の感温体が使用される。図2において、第2の液種液温検知部22の第2の液種液温検知用薄膜チップ及び外部電極端子(リード)が、それぞれ符号22a,22eで指示されている。
【0117】
図2に示されているように、液種液温検知部21の外部電極端子21eおよび液種液温検知部22の外部電極端子22eは、液種検知回路基板25の回路に接続されている。液種検知回路基板25には端子ピン27が取り付けられている。該端子ピン27は、容器蓋体部20Bを貫通して容器外へと延出している。カスタムIC26は、後述のように、液種検知回路の一部および識別演算部が組み込まれているものである。
【0118】
液位センサーモジュール3は、従来公知の圧力センサーからなり、タンク内液体から受ける水圧を検知し、その検知信号(液位に対応する)を端子ピン31から出力する。
図1に示されているように、防水ケース4内には電源回路部41が配置されており、該電源回路部41は不図示の支持手段により支持されている。電源回路部41は、回路基板41aに所要の回路素子を搭載してなるものであり、外部電源から供給される例えば直流24Vに基づき、液種識別装置1の各回路部分の駆動に適した例えば直流5Vを作るものである。回路基板41aの回路には、上記識別センサーモジュール2の端子ピン27および液位センサーモジュール3の端子ピン31がそれぞれ接続されている。
【0119】
図1および図4に示されるように、防水ケース4には、該防水ケースから突出して露出する容器本体部20Aを囲むようにカバー部材2dが付設されている。このカバー部材2dにより、液種液温検知部21及び液種液温検知部22に近接し容器本体部20Aの外側に位置する領域を通って上下方向(鉛直方向)に延びた上下両端開放の被測定液体導入路24が形成される。
【0120】
防水配線5は防水ケース4から上方へと延びており、タンク100の天板を貫通して端部がタンク外に位置している。防水配線5の端部には、外部回路との接続のためのコネクター51が付されている。防水配線5は、電源回路部41への給電線、並びに回路基板41aを介しての識別センサーモジュール2および液位センサーモジュール3のそれぞれからの出力信号線を含んでいる。
【0121】
図6に、本実施形態における液種識別ための回路の構成を示す。上記の第1の種液温検知部21の第1の感温体21a2、第2の液種液温検知部22の第2の感温体22a2、及び2つの抵抗体64,66によりブリッジ回路(液種検知回路)68が形成されている。このブリッジ回路68の出力が差動増幅器70に入力され、該差動増幅器の出力(液種検知回路出力またはセンサー出力ともいう)が不図示のA/D変換器を介して識別演算部を構成するマイコン(マイクロコンピュータ)72に入力される。また、マイコン72には、第1の液種液温検知部21の第1の感温体21a2及び第2の液種液温検知部22の第2の感温体22a2から、それぞれ液温検知増幅器71を経て被測定液体の温度に対応
する第1及び第2の液温対応出力値が入力される。一方、マイコン72からは、第1の液種液温検知部21の第1の発熱体21a4への通電経路に位置する第1のスイッチ74aに対してその開閉を制御するヒーター制御信号が出力され、更に第2の液種液温検知部22の第2の発熱体22a4への通電経路に位置する第2のスイッチ74bに対してその開閉を制御するヒーター制御信号が出力される。
【0122】
本実施形態においては、図6にて一点鎖線で囲まれる部分がカスタムIC26に作り込まれている。
図6には、簡単のために、スイッチ74a,74bのそれぞれが単なる開閉を行うものとして記載されているが、カスタムIC26に作り込む際に、互いに異なる電圧の印加が可能な複数の電圧印加経路を形成しておき、ヒーター制御に際していずれかの電圧印加経路を選択できるようにしてもよい。このようにすることで、液種液温検知部21,22の発熱体21a4,22a4の特性の選択の幅が大幅に広がる。すなわち、発熱体21a4,22a4の特性に応じて識別に最適な電圧を印加することが可能となる。即ち、発熱体21a4,22a4に製作誤差に基づく特性の差があったとしても、発熱体21a4,22a4にて同等の発熱を行わせることが可能となる。また、ヒーター制御に際して互いに異なる複数の電圧の印加を行うことができるので、識別対象液体の種類を広げることが可能となる。
【0123】
また、図6には、簡単のために、抵抗体64,66が抵抗値一定のものとして記載されているが、カスタムIC26に作り込む際に、これら抵抗体64,66のそれぞれを抵抗値可変なものに形成しておき、識別に際して抵抗体64,66の抵抗値を適宜変更できるようにしてもよい。同様に、カスタムIC26に作り込む際に、差動増幅器70および液温検知増幅器71について特性調節が可能なようにしておき、識別に際して増幅器特性を適宜変更できるようにしてもよい。このようにすることで、液種検知回路の特性を最適なものに設定することが容易になり、第1の液種液温検知部21および第2の液種液温検知部22の製造上の個体ばらつきとカスタムIC26の製造上の個体ばらつきとに基づき発生する識別特性のばらつきを低減することができ、製造歩留まりが向上する。
【0124】
以下、本実施形態における液種識別動作につき説明する。
タンク100内に被測定液体USが収容されると、識別センサーモジュール2を覆うカバー部材2dにより形成される被測定液体導入路24内にも被測定液体USが満たされる。尿素水溶液導入路24内を含めてタンク100内の被測定液体USは実質上流動しない。
【0125】
本実施形態においては、第1の発熱体21a4に対する通電を選択し且つ第2の感温体22a2による液温検知信号を選択して被測定液体USの識別を行う第1の液種識別と、第2の発熱体22a4に対する通電を選択し且つ第1の感温体21a2による液温検知信号を選択して被測定液体USの識別を行う第2の液種識別とが実行される。以下、先ず、第1の液種識別について説明する。
【0126】
マイコン72から第1のスイッチ74aに対して出力されるヒーター制御信号(スイッチ閉信号)により、該スイッチ74aを所定時間(たとえば8秒間)閉じることで、発熱体21a4に対して所定高さ(たとえば10V)の単一パルス電圧Pを印加して該発熱体を発熱させる。この時の差動増幅器70の出力電圧(センサー出力)Qは、図7に示されるように、発熱体21a4への電圧印加中は次第に増加し、発熱体21a4への電圧印加終了後は次第に減少する。
【0127】
尚、この動作時には、マイコン72から第2のスイッチ74bに対してはヒーター制御信号(スイッチ閉信号)が出力されない。即ち、マイコン72は第1及び第2のスイッチ
74a,74bのいずれか一方の閉状態を選択することで第1及び第2の発熱体21a4,22a4のいずれか一方に対する通電を選択する。
【0128】
マイコン72では、図7に示されているように、発熱体21a4への電圧印加の開始前の所定時間(たとえば0.1秒間)センサー出力を所定回数(たとえば256回)サンプリングし、その平均値を得る演算を行って平均初期電圧値V1を得る。この平均初期電圧値V1は、感温体21a2の初期温度に対応する。
【0129】
また、図7に示されているように、発熱体への電圧印加の開始から比較的短い時間である第1の時間(例えば単一パルスの印加時間の1/2以下であって0.5〜3秒間;図7では2秒間)経過時(具体的には第1の時間の経過の直前)にセンサー出力を所定回数(たとえば256回)サンプリングし、その平均値をとる演算を行って平均第1電圧値V2を得る。この平均第1電圧値V2は、感温体21a2の単一パルス印加開始から第1の時間経過時の第1温度に対応する。そして、平均初期電圧値V1と平均第1電圧値V2との差V01(=V2−V1)を液種対応第1電圧値として得る。
【0130】
また、図7に示されているように、発熱体への電圧印加の開始から比較的長い時間である第2の時間(例えば単一パルスの印加時間;図7では8秒間)経過時(具体的には第2の時間の経過の直前)にセンサー出力を所定回数(たとえば256回)サンプリングし、その平均値をとる演算を行って平均第2電圧値V3を得る。この平均第2電圧値V3は、感温体21a2の単一パルス印加開始から第2の時間経過時の第2温度に対応する。そして、平均初期電圧値V1と平均第2電圧値V3との差V02(=V3−V1)を液種対応第2電圧値として得る。
【0131】
ところで、以上のような単一パルスの電圧印加に基づき発熱体21a4で発生した熱の一部は被測定液体を介して感温体21a2へと伝達される。この熱伝達には、パルス印加開始からの時間に依存して異なる主として2つの形態がある。即ち、パルス印加開始から比較的短い時間(例えば3秒とくに2秒)内の第1段階では、熱伝達は主として伝導が支配的である(このため、液種対応第1電圧値V01は主として液体の熱伝導率による影響を受ける)。これに対して、第1段階後の第2段階では、熱伝達は主として自然対流が支配的である(このため、液種対応第2電圧値V02は主として液体の動粘度による影響を受ける)。これは、第2段階では、第1段階で加熱された被測定液体による自然対流が発生し、これによる熱伝達の比率が高くなるからである。
【0132】
上記のように、排ガス浄化システムにおいて使用される尿素水溶液の濃度[重量パーセント:以下同様]は32.5%が最適とされている。従って、尿素水溶液タンク100に収容されるべき尿素水溶液の尿素濃度の許容範囲を、たとえば32.5%±5%と定めることができる。この許容範囲の幅±5%は、所望により適宜変更可能である。即ち、本実施形態では、所定の液体として、尿素濃度が32.5%±5%の範囲内の尿素水溶液を定めている。
【0133】
上記液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02は、尿素水溶液の尿素濃度が変化するにつれて変化する。従って、尿素濃度32.5%±5%の範囲内の尿素水溶液に対応する液種対応第1電圧値V01の範囲(所定範囲)及び液種対応第2電圧値V02の範囲(所定範囲)が存在する。
【0134】
ところで、尿素水溶液以外の液体であっても、その濃度によっては、上記の液種対応第1電圧値V01の所定範囲内及び液種対応第2電圧値V02の所定範囲内の出力が得られる場合がある。即ち、液種対応第1電圧値V01または液種対応第2電圧値V02がそれぞれ所定範囲内であったとしても、その液体が所定の尿素水溶液であるとは限らない。例
えば、図8に示されているように、尿素濃度が所定範囲内32.5%±5%の尿素水溶液で得られる液種対応第1電圧値V01の範囲内(即ち、センサー表示濃度値に換算して32.5%±5%の範囲内)には、砂糖濃度が25%±3%程度の範囲内の砂糖水溶液の液種対応第1電圧値が存在する。
【0135】
しかしながら、この砂糖濃度範囲内の砂糖水溶液から得られる液種対応第2電圧値V02の値は、所定の尿素濃度範囲内の尿素水溶液で得られる液種対応第2電圧値V02の範囲とはかけ離れたものとなる。即ち、図9に示されているように、25%±3%程度の砂糖濃度範囲を包含する15%〜35%の砂糖濃度範囲内の砂糖水溶液では、液種対応第1電圧値V01が所定の尿素濃度範囲内の尿素水溶液と重複するものがあるが、液種対応第2電圧値V02は所定の尿素濃度範囲内の尿素水溶液とは大きく異なる。尚、図9では、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02の双方が、尿素濃度30%の尿素水溶液のものを1.000とした相対値で示されている。かくして、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02の双方についてそれぞれの所定範囲内にあることを所定の液体であるか否かの判定基準とすることで、上記砂糖水溶液が所定の液体ではないと確実に識別することができる。
【0136】
また、液種対応第2電圧値V02が所定の液体のものと重複する場合もあり得る。しかし、この場合には、液種対応第1電圧値V01が所定の液体のものと異なるので、上記判定基準により当該液体が所定のものではないと確実に識別することができる。
【0137】
本発明は、以上のように液種対応第1電圧値V01と液種対応第2電圧値V02との関係が溶液の種類により異なることを利用して、液種の識別を行うものである。即ち、液種対応第1電圧値V01と液種対応第2電圧値V02とは液体の互いに異なる物性即ち熱伝導率と動粘度との影響を受け、これらの関係は溶液の種類により互いに異なるので、以上のような液種識別が可能となる。尿素濃度の所定範囲を狭くすることで、更に識別の精度を高めることができる。
【0138】
即ち、本発明の実施形態では、尿素濃度既知の幾つかの尿素水溶液(参照尿素水溶液)について、温度と液種対応第1電圧値V01との関係を示す第1検量線及び温度と液種対応第2電圧値V02との関係を示す第2検量線を予め得ておき、これらの検量線をマイコン72の記憶手段に記憶しておく。第1及び第2の検量線の例を、それぞれ図10及び図11に示す。これらの例では、尿素濃度c1(例えば27.5%)及びc2(例えば37.5%)の参照尿素水溶液について、検量線が作成されている。
【0139】
図10及び図11に示されているように、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02は温度に依存するので、これらの検量線を用いて被測定液体を識別する際には、第2の液種液温検知部22の第2の感温体22a2から液温検知増幅器71を介して入力される液温対応出力値Tをも用いる。液温対応出力値Tの一例を図12に示す。このような検量線をもマイコン72の記憶手段に記憶しておく。
【0140】
液種対応第1電圧値V01の測定に際しては、先ず、測定対象の被測定液体について得た液温対応出力値Tから図12の検量線を用いて温度値を得る。得られた温度値をtとして、次に、図10の第1の検量線において、温度値tに対応する各検量線の液種対応第1電圧値V01(c1;t),V01(c2;t)を得る。そして、測定対象の被測定液体について得た液種対応第1電圧値V01(cx;t)のcxを、各検量線の液種対応第1電圧値V01(c1;t),V01(c2;t)を用いた比例演算を行って、決定する。即ち、cxは、V01(cx;t),V01(c1;t),V01(c2;t)に基づき、以下の式(1)
cx=c1+
(c2−c1)[V01(cx;t)−V01(c1;t)]
/[V01(c2;t)−V01(c1;t)]・・・・(1)
から求める。
【0141】
同様にして、液種対応第2電圧値V02の測定に際しては、図11の第2の検量線において、以上のようにして被測定液体について得た温度値tに対応する各検量線の液種対応第2電圧値V02(c1;t),V02(c2;t)を得る。そして、被測定液体について得た液種対応第2電圧値V02(cy;t)のcyを、各検量線の液種対応第2電圧値V02(c1;t),V02(c2;t)を用いた比例演算を行って、決定する。即ち、cyは、V01(cy;t),V01(c1;t),V01(c2;t)に基づき、以下の式(2)
cy=c1+
(c2−c1)[V02(cy;t)−V02(c1;t)]
/[V02(c2;t)−V02(c1;t)]・・・・(2)
から求める。
【0142】
尚、図10及び図11の第1及び第2の検量線として温度の代わりに液温対応出力値Tを用いたものを採用することで、図12の検量線の記憶及びこれを用いた換算を省略することもできる。
【0143】
以上のように、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02のそれぞれについて、温度に応じて変化する所定範囲を設定することができる。上記のようにc1を27.5%とし、且つc2を37.5%とすることで、図10及び図11のそれぞれにおける2つの検量線で囲まれた領域が、所定の液体(即ち尿素濃度32.5%±5%の尿素水溶液)に対応するものとなる。
【0144】
図13は、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02の組み合わせによる所定液体識別の判定基準が温度に応じて変化することを模式的に示すグラフである。温度がt1,t2,t3と上昇するにつれて、所定の液体と判別される領域AR(t1),AR(t2),AR(t3)が移動する。
【0145】
図14は、マイコン72での液種識別プロセスを示すフロー図である。
先ず、ヒーター制御による発熱体21a4へのパルス電圧印加の前に、マイコン内にN=1を格納し(S1)、次いでセンサー出力をサンプリングし平均初期電圧値V1を得る(S2)。次に、ヒーター制御を実行し、発熱体21a4への電圧印加の開始から第1の時間経過時にセンサー出力をサンプリングし、平均第1電圧値V2を得る(S3)。次に、V2−V1の演算を行って、液種対応第1電圧値V01を得る(S4)。次に、発熱体21a4への電圧印加の開始から第2の時間経過時にセンサー出力をサンプリングし、平均第2電圧値V3を得る(S5)。次に、V3−V1の演算を行って、液種対応第2電圧値V02を得る(S6)。
【0146】
次に、被測定液体について得た温度値tを参照して、液種対応第1電圧値V01が当該温度での所定範囲内にあり且つ液種対応第2電圧値V02が当該温度での所定範囲内にあるという条件が満たされるか否かを判断する(S7)。S7において液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02のうちの少なくとも一方がそれぞれの所定範囲内にない(NO)と判断された場合には、上記格納値Nが3であるか否かを判断する(S8)。S8においてNが3ではない[即ち現測定ルーチンが3回目ではない(具体的には1回目または2回目である)](NO)と判断された場合には、続いて格納値Nを1だけ増加させ(S9)、S2へと戻る。一方、S8においてNが3である[即ち現測定ルーチンが3回目である](YES)と判断された場合には、被測定流体が所定のものではないと判
定する(S10)。
【0147】
一方、S7において液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02の双方がそれぞれの所定範囲内にある(YES)と判断された場合には、被測定流体が所定のものであると判定する(S11)。
【0148】
本実施形態においては、S11に続いて、尿素水溶液の尿素濃度を算出する(S12)。この濃度算出は、液温検知部22の出力即ち被測定液体について得た温度値tと、液種対応第1電圧値V01と、図10の第1の検量線とに基づき、上記式(1)を用いて行うことができる。或いは、濃度算出は、液温検知部22の出力即ち被測定液体について得た温度値tと、液種対応第2電圧値V02と、図11の第2の検量線とに基づき、上記式(2)を用いて行うこともできる。
【0149】
一方、第2の液種識別は、上記第1の液種識別における第1の液種液温検知部21及び第1のスイッチ74aの動作と第2の液種液温検知部22及び第2のスイッチ74bの動作とを交代させることで、同様にしてなされる。
【0150】
以上のような第1の液種識別と第2の液種識別とを交互に実行することができる。これにより、第1の液種液温検知部21の発熱体21a4及び第2の液種液温検知部22の発熱体22a4は、それぞれ発熱の頻度が半分になり、このため識別装置の寿命が大幅に延長される。
【0151】
本発明においては、別法として、マイコン72において以下のような液種識別動作を行うようにすることができる。
(1)第1の発熱体21a4に対する通電を選択し且つ第2の感温体22a2による液温検知信号を選択し、その際にセンサー出力に基づき第1の特性値群(上記液種対応第1電圧値V01-1及び液種対応第2電圧値V02-1)を算出する。次いで、第2の発熱体22a4に対する通電を選択し且つ第1の感温体21a2による液温検知信号を選択し、その際にセンサー出力に基づき第2の特性値群(上記液種対応第1電圧値V01-2及び液種対応第2電圧値V02-2)を算出する。これに基づき、第1の特性値群と第2の特性値群との対応するもの同士(液種対応第1電圧値同士及び液種対応第2電圧値同士)を平均することで、平均特性値群(平均化された液種対応第1電圧値V01A=(V01-1−V01-2)/2及び平均化された液種対応第2電圧値V02A=(V02-1−V02-2)/2)を得る。そして、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02として上記平均化された液種対応第1電圧値V01A及び平均化された液種対応第2電圧値V02Aを用いて、上記のようにして被測定液体USの識別を行う。
【0152】
(2)第1の発熱体21a4に対する通電を選択し且つ第2の感温体22a2による液温検知信号を選択し、その際にセンサー出力に基づき第1の特性値群(上記液種対応第1電圧値V01-1及び液種対応第2電圧値V02-1)を算出する。次いで、第2の発熱体22a4に対する通電を選択し且つ第1の感温体21a2による液温検知信号を選択し、その際にセンサー出力に基づき第2の特性値群(上記液種対応第1電圧値V01-2及び液種対応第2電圧値V02-2)を算出する。これに基づき、第1の特性値群と第2の特性値群との対応するもの同士(液種対応第1電圧値同士及び液種対応第2電圧値同士)の和をとることで、和特性値群(液種対応第1電圧値の和V01S=(V01-1+V01-2)及び液種対応第2電圧値の和V02S=(V02-1+V02-2))を得る。そして、液種対応第1電圧値V01及び液種対応第2電圧値V02に代えて上記液種対応第1電圧値の和V01S及び液種対応第2電圧値の和V02Sを用いて、上記のようにして被測定液体USの識別を行う。但し、この識別の際には、上記図10及び図11の検量線に代えて、液種対応第1電圧値の和V01S及び液種対応第2電圧値の和V02Sに対応するものを使用
する。
【0153】
以上のようにして液種の識別を正確に且つ迅速に行うことができる。この液種識別のルーチンは、自動車のエンジン始動時に、或いは定期的に、或いは運転者または自動車(後述のECU)側からの要求時に、或いは自動車のキーOFF時等に、適宜実行することができ、所望の様式にて尿素タンク内の液体が所定の尿素濃度の尿素水溶液であるか否かを監視することができる。このようにして得られた液種を示す信号(所定のものであるか否か、更には所定のもの[所定の尿素濃度の尿素水溶液]である場合の尿素濃度を示す信号)が不図示のD/A変換器を介して、図6に示される出力バッファ回路76へと出力され、ここから端子ピン27、電源回路基板41aおよび防水配線5を介して、アナログ出力として不図示の自動車のエンジンの燃焼制御などを行うメインコンピュータ(ECU)へと出力される。液温対応のアナログ出力電圧値も同様な経路でメインコンピュータ(ECU)へと出力される。一方、液種を示す信号は、必要に応じてデジタル出力として取り出して、同様な経路で表示、警報その他の動作を行う機器へと入力することができる。
【0154】
更に、液種液温検知部22,21から入力される液温対応出力値Tに基づき、尿素水溶液が凍結する温度(−13℃程度)の近くまで温度低下したことが検知された場合に警告を発するようにすることができる。
【0155】
また、次のようにして第1及び第2の液種液温検知部21,22のいずれかにおける欠陥の有無を判別することができる。即ち、先ず、第1の発熱体21a4に対する通電を選択し且つ第2の感温体22a2による液温検知信号を選択し、その際にセンサー出力に基づき第1の特性値群(上記液種対応第1電圧値V01-1及び液種対応第2電圧値V02-1)を算出する。次いで、第2の発熱体22a4に対する通電を選択し且つ第1の感温体21a2による液温検知信号を選択し、その際にセンサー出力に基づき第2の特性値群(上記液種対応第1電圧値V01-2及び液種対応第2電圧値V02-2)を算出する。これに基づき、第1の特性値群と第2の特性値群との対応するもの同士(液種対応第1電圧値同士及び液種対応第2電圧値同士)の差をとることで、差特性値群(液種対応第1電圧値の差V01R=(V01-1−V01-2)及び液種対応第2電圧値の差V02S=(V02-1−V02-2))を得る。そして、これらの差特性値群のうちの少なくとも1つ例えば液種対応第2電圧値の差V02Rと予め設定されたその許容限界値REFとの比較を行い、V02R≦REFの場合には第1及び第2の液種液温検知部21,22のいずれにも欠陥がないものと判定し、V02R>REFの場合には第1及び第2の液種液温検知部21,22のいずれかにおいて欠陥があると判定する。この判定において欠陥ありとされた場合には、不図示の表示手段に対して警告表示を行うよう指示することができる。この判定は、定期的に、または予め設定された回数の液種識別を行うごとに、実行することができる。
【0156】
なお、以上の液種識別は、自然対流を利用しており、尿素水溶液等の被測定液体の動粘度とセンサー出力とが相関関係を有するという原理を利用している。このような液種識別の精度を高めるためには、第1の液種液温検知部21および第2の液種液温検知部22と被測定液体との間の熱伝達がなされる容器本体部20Aの周囲の被測定液体にできるだけ外的要因に基づく強制流動が生じにくくするのが好ましく、この点からカバー部材2dとくに上下方向(鉛直方向)の被測定液体導入路を形成するようにしたものの使用は好ましい。尚、カバー部材2dは、異物の接触を防止する保護部材としても機能する。
【0157】
以上の実施形態では所定の流体として所定の尿素濃度の尿素水溶液が用いられているが、本発明では、所定の液体は溶質として尿素以外を用いた水溶液その他の液体であってもよい。
【0158】
また、上記の実施例では、被識別流体として、被測定液体を用いたが、後述するように
、例えば、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油などの炭化水素系液体、エタノール、メタノールなどのアルコール系液体、尿素水溶液液体、気体、粉粒体などの流体について、流体の熱的性質を利用して、被識別流体について、流体種識別、濃度識別、流体の有無識別、流体の温度識別、流量識別、流体の漏れ識別、流体レベル識別、アンモニア発生量などの識別を行うことができる。
【0159】
図15に示した実施例は、カバー部材2dを適用した流体識別装置として、ガソリン識別装置に適用した実施例を示している。
この場合には、上記の実施例と同様に、ガソリン種類識別を、自然対流を利用してガソリンの動粘度とセンサー出力とが相関関係を有するという原理を利用すれば良い。このようなガソリン種類識別の精度を高めるためには、ガソリン種類検知部用フィン21cおよび液温検知部用フィン22cの周囲のガソリンにできるだけ外的要因に基づく強制流動が生じにくくするのが好ましく、この点からカバー部材2d、特に、上下方向のガソリン導入路を形成するようにしたものの使用は好ましい。なお、カバー部材2dは、異物の接触を防止する保護部材としても機能する。
【0160】
カバー部材2dは、さらに、測定部40、特に、識別センサーモジュール2の鉛直方向に対する傾角が変化する場合において、カバー部材が存在しない場合に比べガソリン種類識別の精度を向上させるという機能をも発揮する。即ち、カバー部材が存在しない場合には、傾角の変化に対して、発熱体から発せられた熱が上記自然対流により感温体に伝達される形態の変化が大きく、従って、同一ガソリンのガソリン種類対応電圧値V0の変化が大きく、このため他種類のガソリンの場合の出力値との混同を生じない傾角範囲は比較的狭くなる。
【0161】
これに対して、カバー部材2dが存在する場合には、傾角の変化に対して、発熱体から発せられた熱が、上記自然対流により感温体に伝達される形態の変化が小さく(即ち、自然対流は、常に、主として、カバー部材2d内のガソリン導入路に沿ってなされる)、従って、同一ガソリンのガソリン種類対応電圧値V0の変化が小さく、このため他種類のガソリンの場合の出力値との混同を生じない傾角範囲は比較的広い。
【0162】
図16に、図15の実施例(カバー部材2dあり)の流体識別装置で、測定部の傾角を変化させた時に得られたガソリン種類対応電圧値V0の変化を示し、図17にカバー部材を除去したこと以外は、上記本発明実施例のものと同一のもの(比較形態)で測定部の傾角を変化させた時に得られたガソリン種類対応電圧値V0の変化を示す。
ガソリンとしてはT50の異なる2種類のもの(試料1[T50=99℃]および試料2[T50=87℃])を使用し、傾きの方向を図15(a)に示されるX方向および図15(b)に示されるY方向の2種類とした。
【0163】
比較形態では、図17に示されるように、傾角θが±30°の範囲内では試料1と試料2とでガソリン種類対応電圧値V0が重複する場合があるが、本発明実施例では、図16に示されるように、傾角θが±30°の範囲では試料1と試料2とでガソリン種類対応電圧値V0が重複する場合がない。これにより、カバー部材2dを付することで広い傾角範囲での高精度のガソリン種類識別が可能になることが分かる。
【0164】
図18は、図6の並列回路の代わりに、直列回路を用いた実施例について、その回路の構成概略図を示している。なお、図6の回路図と同一の構成部分には、同一の参照番号を付してその詳細な説明は省略する。
【0165】
図18において、符号13は、抵抗体であり、14は、液温検知用の切替えスイッチである。図示されている様に、液温検知部22の両端における電圧が出力Aとして出力され
る。
【0166】
この実施例においては、切替えスイッチ14をa側にすると、液体温度検知の出力Aが得られる。一方、液種識別などの識別の際には、切替えスイッチ14をb側にすると、液種識別のための出力Aが得られるようになっている。そして、上記の実施例と同様な原理により、液種識別と液温を検知することができるようになっている。
う。
【0167】
図19は、図18に示される切替えスイッチ14を、a側に接続した状態で得られる出力A(すなわち、液体温度検知結果)の一例を示すグラフである。液体温度と出力Aとは1:1の対応関係にある。この特性は予め測定することができるので、得られる出力Aの値から、液体温度を検知することができる。
【0168】
図20は、本発明の別の実施例の識別センサーモジュールの断面図、図21(A)は、図20の内部を示す概略図、図21(B)は、図20のA方向から見た部分拡大断面図である。
【0169】
図20および図21に示されているように、金属製フィン21c,22cの一部は樹脂モールド23から露出して露出表面部を形成しており、該露出表面部に親水性膜50が付されている。更に好ましくは、金属製フィン21c,22cの露出表面部の周囲に位置する樹脂モールド23の表面部分にも親水性膜50が付されている。即ち、親水性膜50は、金属製フィン21c,22cの露出表面部及びその周囲の樹脂モールド23の表面部分にわたって形成されている。
【0170】
親水性膜50は、例えば酸化シリコン膜である。該酸化シリコン膜50の厚さは、例えば0.01μm〜1μmである。酸化シリコン膜50は、金属製フィン21c,22c及び樹脂モールド23の双方との密着性が良好であり、膜強度も高い。また、酸化シリコン膜50の表面は、金属製フィン21c,22c及び樹脂モールド23のいずれの表面よりも親水性の程度が高い。
【0171】
親水性の程度は対水接触角で表すことができ、一般に対水接触角40°程度以下を親水性としている。酸化シリコン膜50の対水接触角は、40°以下とすることができ、酸化シリコン膜50は親水性を示す。本発明においては、親水性膜50の対水接触角は、好ましくは35°以下であり、より好ましくは30°以下であり、更に好ましくは25°以下であり、特に好ましくは20°以下である。
【0172】
酸化シリコン膜50は、例えばスパッタ、CVD(化学的気相成長法)または塗布剤塗布により形成することができる。このうち、スパッタ及びCVDは、実処理時間が長くかかり、大きな厚さの膜は形成が困難であり、膜形成のための装置構成が大型化する。これに対して塗布剤塗布は、処理が簡単であり、放置時間を別にすれば実処理時間は比較的短くて済むなど、実用上の利点が多い。塗布剤としては、有機珪素化合物を含み、塗布後の反応で酸化シリコン膜が形成されるものを使用することができる。
【0173】
このような塗布剤としては、ポリシラザン例えばパーヒドロポリシラザンと必要に応じて添加されるシランカップリング剤と有機溶媒と必要に応じて使用されるパラジウム触媒またはアミン触媒とを含むもの(例えば、クラリアントジャパン株式会社より入手可能なアクアミカ[登録商標])が例示される。塗布剤塗布及びそれに関連する前後処理の具体的な工程の一例を示せば、次の通りである:
(1)エタノール洗浄工程(塗布剤を塗布すべき表面部分の汚れ除去のため)
(2)キシレン洗浄工程(表面部分の脱脂のため)
(3)乾燥工程(表面部分の水分除去のため:100℃程度、1時間程度)
(4)塗布剤塗布工程(スプレー塗布、刷毛またはウエスによる塗布、フローコート、浸漬塗布などにより行う)
(5)加熱工程(溶媒除去及び酸化シリコン転化のため:125〜200℃、1時間程度)
(6)加熱加湿工程(酸化シリコン転化のため:50〜90℃、80〜95%、3時間程度)
(7)放冷工程
尚、洗浄工程としては、洗浄溶剤として上記のようなエタノールやキシレンを使用するものの他に、洗浄溶剤としてアセトン、イソプロピルアルコールまたはヘキサン等の有機溶剤を使用するものが例示される。
【0174】
上記加熱工程及び加熱加湿工程では、周囲大気中の水(自然に存在するもの又は加湿によるもの)と以下のような転化反応を生じて、酸化シリコン膜が形成される:
-(-SiH2NH-)-+2H2O→-(-SiO2-)-+NH3+2H2
加熱加湿工程を使用することで、加熱工程の加熱温度を低下させることができる。例えば、加熱加湿工程を使用しない場合には、加熱工程の加熱温度は250℃程度となる。
【0175】
形成される酸化シリコン膜の厚さは、上記のように例えば0.01μm〜1μmであるが、厚すぎると剥離が生じやすくなり、一方薄すぎると親水性の長期にわたる維持が困難になることがあるので、更に好ましくは0.05μm〜0.8μmである。
【0176】
図22(A)は、本発明の別の実施例の識別センサーモジュールの斜視図、図22(B)は、図22(A)の識別センサーモジュールの取り付け状態を示す概略図、図23は、図22の識別センサーモジュールをB方向から見た縦断面図である。
【0177】
図22および図23に示したように、この実施例の識別センサーモジュール2では、密閉状態に構成され、被識別流体212が内部に浸入しない状態となっている容器20を備えている。この容器20内の被識別流体側に、センサーホルダー6が配置され、容器20を密閉状態とするように取り付けされている。
【0178】
そして、図23で示したように、センサーホルダー6の中央のセンサー装着孔6aに、液種液温検知用薄膜チップ21aが、図3の実施例と同様に、合成樹脂モールド23で埋め込んだ状態となっている。
【0179】
また、この液種検知用薄膜チップ21aは、合成樹脂モールド23の突端側から、被識別流体212側に突出した状態であるとともに、その被識別流体212側に突出した部分が、合成樹脂23aで覆われた状態となるように構成されている。
【0180】
また、図22(B)に示したように、この実施例の識別センサーモジュール2は、固定用部材206を介して、防水ケース4に固定ネジ208を締め付けることにより固定されるようになっている。なお、図22(B)中、符号210は、パッキンを示している。
【0181】
このセンサーホルダー6に、固定ネジ7を介して、フィルターホルダー8が固定され、このフィルターホルダー8に、金属製フィン21cを囲繞するように、断面略コ字形状のフィルター9が固定されている。なお、図中、符号200は、ASIC基板、202は、パッキン、204は、コネクターを示している。
【0182】
このようなフィルターとしては、特に限定されるものではなく、例えば、フィルターの材料としては、ポリエチレン、ポリエステル等の樹脂、ジルコニア、アルミナなどのセラ
ミックがあり、それらの多孔質体であればフィルターとして使用可能である。識別センサーモジュール2の露出部分が、親水性膜またはフィルターで覆われているので、特に、被被測定物が水性液体である場合において、識別センサーモジュール2の外面への気泡の付着が低減されるとともに、被識別流体に、外的要因に基づく強制流動が生じにくく、測定精度の向上が可能となる。
【0183】
図24および図25は、本発明の流体識別装置を用いた別の実施例を説明するグラフである。
ところで、燃料の材料組成を一定にし最適燃焼条件が変化しないようにするために、上記化石燃料の成分である個々の炭化水素たとえばペンタン、シクロヘキサン、オクタン等、或いは個々のアルコールたとえばメタノール、エタノール等を、それぞれ単独でまたはせいぜい2種程度を混合して燃料として使用することが考えられている。この種の燃料には、大別して、炭化水素系燃料とアルコール系燃料とがある。
【0184】
以下に、これらの炭化水素系燃料とアルコール系燃料を用いた流体識別方法について説明する。
前述した図7の実施例と同様にして、マイコン72では、図6に示されているように、発熱体21a4への電圧印加の開始前の所定時間(たとえば0.1秒間)センサー出力を所定回数(たとえば256回)サンプリングし、その平均値を得る演算を行って平均初期電圧値V1を得る。この平均初期電圧値V1は、感温体21a2の初期温度に対応する。
【0185】
また、図7に示されているように、発熱体への電圧印加の開始から比較的短い時間である第1の時間(例えば単一パルスの印加時間の1/2以下であって0.5〜1.5秒間;図7では1秒間)経過時(具体的には第1の時間の経過の直前)にセンサー出力を所定回数(たとえば256回)サンプリングし、その平均値をとる演算を行って平均第1電圧値V2を得る。この平均第1電圧値V2は、感温体21a2の単一パルス印加開始から第1の時間経過時の第1温度に対応する。
そして、平均初期電圧値V1と平均第1電圧値V2との差V01(=V2−V1)を液種対応第1電圧値として得る。
【0186】
また、図7に示されているように、発熱体への電圧印加の開始から比較的長い時間である第2の時間(例えば単一パルスの印加時間;図7では4秒間)経過時(具体的には第2の時間の経過の直前)にセンサー出力を所定回数(たとえば256回)サンプリングし、その平均値をとる演算を行って平均第2電圧値V3を得る。この平均第2電圧値V3は、感温体21a2の単一パルス印加開始から第2の時間経過時の第2温度に対応する。そして、平均初期電圧値V1と平均第2電圧値V3との差V02(=V3−V1)を液種対応第2電圧値として得る。
【0187】
ところで、以上のような単一パルスの電圧印加に基づき発熱体21a4で発生した熱の一部は被測定液体を介して感温体21a2へと伝達される。この熱伝達には、パルス印加開始からの時間に依存して異なる主として2つの形態がある。即ち、パルス印加開始から比較的短い時間(例えば1.5秒)内の第1段階では、熱伝達は主として伝導が支配的である。
【0188】
これに対して、第1段階後の第2段階では、熱伝達は主として自然対流が支配的である。これは、第2段階では、第1段階で加熱された被測定液体による自然対流が発生し、これによる熱伝達の比率が高くなるからである。
【0189】
第1段階での伝導による熱伝達には被測定液体の熱伝導率の関与が大きく、第2段階での自然対流による熱伝達には被測定液体の動粘度の関与が大きい。炭化水素系液体及びア
ルコール系液体に属する既知の幾つかの被測定液体(炭化水素系液体としてシクロヘキサン、ペンタン、オクタン、トルエン、o−キシレン、及び、アルコール系液体としてメタノール、エタノール、プロパノール)について、本実施例の装置で上記第1の時間を1.5秒として得られた液種対応第1電圧値V01(=V2−V1)と被測定液体の熱伝導率との関係を、図24に示す。また、同一の被測定液体について、本実施例の装置で上記第2の時間を5秒として得られた液種対応第2電圧値V02(=V3−V1)と被測定液体の動粘度との関係を、図25に示す。
【0190】
図24から、液種対応第1電圧値V01と被測定液体の熱伝導率とにかなりの相関があり、しかもアルコール系液体は液種対応第1電圧値V01が境界値Vsより小さい領域に位置し且つ炭化水素系液体は境界値Vsより大きい領域に位置することがわかる。また、図25から、液種対応第2電圧値V02と炭化水素系液体の動粘度及びアルコール系液体の動粘度とにそれぞれ独立にかなりの相関があることがわかる。
【0191】
図26は、本発明の流体識別装置を、流量計として用いる実施例の回路構成図である。
電源回路90から供給される安定化直流は、ブリッジ回路(検知回路)73に供給される。ブリッジ回路73は、流量検知用感温体32aと温度補償用感温体32bと抵抗体92及び可変抵抗体94とを含んでなる。ブリッジ回路73のa,b点の電位Va,Vbが増幅率可変の差動増幅回路75に入力される。該差動増幅回路75の出力は積分回路77に入力される。
【0192】
一方、電源回路90の出力は、上記薄膜発熱体33へ供給される電流を制御するための電界効果型トランジスタ81を介して、薄膜発熱体33へと供給される。即ち、流量検知部42において、薄膜発熱体33の発熱に基づき、フィンプレート44を介して被検知流体による吸熱の影響を受けて、薄膜感温体32aによる感温が実行される。
【0193】
そして、該感温の結果として、図26に示すブリッジ回路73のa,b点の電位Va,Vbの差が得られる。
(Va−Vb)の値は、流体の流量に応じて流量検知用感温体32aの温度が変化することで、変化する。予め可変抵抗体94の抵抗値を適宜設定することで、基準となる所望の流体流量の場合において(Va−Vb)の値を零とすることができる。この基準流量では、差動増幅回路75の出力は零であり、積分回路77の出力が一定(基準流量に対応する値)となる。尚、積分回路77の出力は、最小値が0Vとなるようにレベル調整がなされている。
【0194】
積分回路77の出力はV/F変換回路78に入力され、ここで電圧信号に対応する周波数(例えば最大5×10-5)のパルス信号が形成される。このパルス信号は、パルス幅(時間幅)が一定(例えば1〜10マイクロ秒の所望値)である。例えば、積分回路77の出力が1Vの場合には周波数0.5kHzのパルス信号を出力し、積分回路77の出力が4Vの場合には周波数2kHzのパルス信号を出力する。
【0195】
V/F変換回路78の出力は、トランジスタ81のゲートへと供給される。このように、ゲートへとパルス信号が入力されたトランジスタ81を介して薄膜発熱体33に電流が流れる。
【0196】
従って、薄膜発熱体33には、トランジスタを介して、電源回路90の出力電圧の分圧が、積分回路77の出力値に対応する周波数にてパルス状に印加され、該薄膜発熱体33を電流が間欠的に流れる。これにより薄膜発熱体33が発熱する。V/F変換回路78の周波数は、基準周波数発生回路80で温度補償型水晶振動子79の発振に基づき設定される高精度クロックに基づき設定される。
【0197】
そして、V/F変換回路78から出力されるパルス信号は、パルスカウンター82により計数される。マイクロコンピュータ83は、基準周波数発生回路80で発生される周波数を基準としてパルス計数した結果(パルス周波数)に基づき、対応する流量(瞬時流量)に換算し、該流量を時間に関して積算することで積算流量を算出する。
【0198】
この流量への換算は、メモリ84に予め記憶されている流量検知に係る所要の流体の検量線を用いて行われる。即ち、流体の各流量ごとにパルスカウンター82から出力されるパルス周波数を測定することで得られたデータテーブルが、検量線としてメモリ84に記憶されている。マイクロコンピュータ83は、流量測定の際にパルスカウンター82から出力されるパルス周波数に対応する検量線上の流量値を測定値として特定する。
【0199】
以上のようにして得られた瞬時流量及び積算流量の値は、表示部85により表示されると共に、電話回線その他のネットワークからなる通信回線を介して外部へと伝送される。また、所望により、瞬時流量や積算流量のデータをメモリ84に記憶させておくことができる。
【0200】
流体流量が増減すると、差動増幅回路75の出力は(Va−Vb)の値に応じて極性(流量検知用感温体32aの抵抗−温度特性の正負により異なる)及び大きさが変化し、これに応じて積分回路77の出力が変化する。積分回路77の出力の変化の速さは差動増幅回路75の増幅率設定により調節することができる。これら積分回路77と差動増幅回路75とにより、制御系の応答特性が設定される。
【0201】
流体流量が増加した場合には、流量検知用感温体32aの温度が低下するので、薄膜発熱体33の発熱量を増加させる(即ちパルス周波数を増加させる)ような積分回路77の出力(より高い電圧値)が得られ、この積分回路出力が流体流量に対応した電圧となった時点で、ブリッジ回路73が平衡状態となる。
【0202】
他方、流体流量が減少した場合には、流量検知用感温体32aの温度が上昇するので、薄膜発熱体33の発熱量を減少させる(即ちパルス周波数を減少させる)ような積分回路77の出力(より低い電圧値)が得られ、この積分回路出力が流体流量に対応した電圧となった時点で、ブリッジ回路73が平衡状態となる。
【0203】
即ち、本実施例の制御系では、ブリッジ回路73が平衡状態となるように薄膜発熱体33へと供給するパルス状電流の周波数(熱量に対応する)が設定され、このような平衡状態の実現(制御系の応答)は例えば0.1秒以内とすることが可能である。
【0204】
また、他方において、電源回路90の出力は高抵抗値(例えば10kΩ程度)の抵抗体62及び電極端子49aを介して流体温度検知用フィンプレート44aへと供給され、流量検知用フィンプレート44は電極端子49を介して接地されている。抵抗体62の両端には電圧計63が接続されている。
【0205】
この電圧計63により測定される電圧は、測定部内に流体が導入された時に2つのフィンプレート44,44a間で流体を通って流れる電流の大きさに対応し、これはフィンプレート44,44a間の流体の抵抗値に対応している。これらを含んで、流量検知用フィンプレート44と流体温度検知用44aとの間の導電性測定のための回路が構成されている。
【0206】
電圧計63の出力はA/Dコンバータ65を介して上記マイクロコンピュータ83へと入力される。上記メモリ84には、所要の測定対象流体について上記導電性測定回路によ
り測定されるべき電圧計63の出力値範囲(以下、「該当範囲」という)のデータが記憶されている。
【0207】
この該当範囲は、予め、所要の測定対象流体を測定部内に導入し、導電性測定回路の電圧計63の出力値を実測し、所要の検知誤差範囲を考慮して適宜設定することができる。
一例を挙げれば、所要の測定対象流体が生理食塩水である場合において、該当範囲として3.2〜3.6Vを設定することが可能な導電性測定回路では、市水についての電圧計63の出力値は0.8〜1.2Vであり、アルコールやアセトンについての電圧計63の出力値は0.05V以下であり、これら所要の測定対象流体でない流体が過って導入された場合には所要の測定対象流体との判別が可能である。
【0208】
この実施例においては、流体流量の検知に先立って、先ず、流量計の測定部内にまで流体を導入した上で、流体の流通を停止した状態で測定部内の流体の導電性(具体的には電圧計63の出力電圧値)を測定する。
【0209】
そして、マイクロコンピュータ83では、A/Dコンバータ65から入力される電圧値がメモリ84に記憶されている該当範囲に属するか否か(即ち、該当範囲内であるか該当範囲外であるか)の判定を行う。
【0210】
この判定で電圧計63の出力電圧値が該当範囲内であると判定された場合には、測定部内に導入された流体は所定の測定対象流体であるとみなし、続いて測定部内へと流体供給源から流体を供給し、上記のような流量検知を行いながら流体を流通させる。
【0211】
逆に、上記判定で電圧計63の出力電圧値が該当範囲外であると判定された場合には、続いて測定部内への流体供給源からの流体供給を行うことなく、表示部85に警告表示をしたり、不図示の警報手段により警報音を発したりすることができる。
【0212】
従って、本実施例においては、流体供給源の取り替えの度に上記の流体判別を行うようにすることで、所要の測定対象流体のものと明らかに異なる導電性をもつ流体(これは明らかに所要の測定対象流体ではない)を過って流通させるのを防止することが可能となる。
【0213】
また、以上の実施例によれば、流量測定のためにV/F変換回路78で作成されたパルス信号を用いており、このパルス信号は温度変化による誤差を十分に小さくすることが容易であるので、パルス周波数に基づき得られる流量値及び積算流量値の誤差を小さくすることが可能である。また、この実施例では、薄膜発熱体33への通電の制御は、V/F変換回路78で作成されたパルス信号によるON−OFFによりなされるので、温度変化に基づく制御誤差の発生は極めて小さい。
【0214】
また、この実施例では、流量検知部として薄膜発熱体及び薄膜感温体を含む微小チップ状のものを用いているので、以上のような高速応答性が実現され、流量測定の精度を良好なものとすることができる。
【0215】
また、この実施例では、被検知流体の流量の如何にかかわらず、薄膜発熱体33の周囲の流量検知用感温体32aの温度がほぼ一定に維持されるので、流量センサーユニットの経時劣化が少なく、また可燃性の被検知流体の着火爆発の発生を防止することができる。
【0216】
以上説明したように、本発明の流量計によれば、流量検知に利用される流量検知用熱伝達部材と流体温度検知用熱伝達部材との間の流体の導電性の測定を行うことで流体の判別を行うようにしているので、簡単な構成で、所要の測定対象流体のものと導電性の明らか
に異なる流体を過って流通させるのを防止することが可能となる。
【0217】
図27に示したように、本発明の軽油の液種識別装置1は、液種識別装置本体12と、液種識別装置本体12の内部に形成された第1の流路436と、第2の流路438とを備えている。
【0218】
図27の矢印で示したように、軽油流入口18から第1の流路436を経て、軽油液種識別室400に一時滞留するように構成されている。この軽油液種識別室400には、その上部の略トラック形状の液種識別センサー用開口部402が形成されている。
【0219】
この液種識別センサー用開口部402には、図27に示したように、液種識別センサー404が装着されている。
なお、図27において、符号36はフィン、54は軽油排出口、408はリード電極、410は液温センサー、412はモールド樹脂である。
【0220】
そして、好適な実施例としては、液種識別センサーヒーター405のヒーターに50〜400mW、好ましくは、250mWで発熱させて、1〜50秒後、好ましくは、10秒後の識別用液温センサーの温度変化を、電圧出力差V0で計測することによって、軽油の性状の違いを識別することができる。
【0221】
すなわち、図28のグラフで明らかなように、10秒後の電圧出力差V0は、
本州の軽油A…1.20V
ヨーロッパの標準軽油B…1.21V
米国の標準軽油C…1.20V
スウェーデンの標準軽油D…1.18V
それぞれ上記のように相違している。
【0222】
従って、予め、識別制御部を構成するコンピュータに記憶させたデータに基づいて、軽油の液種識別および蒸留性状を認識することが可能である。
なお、以上の軽油の液種識別方法は、自然対流を利用して、軽油の動粘度とセンサー出力が相関関係を有している原理を利用しているものである。
【0223】
すなわち、図29に示したように、動粘度とセンサー出力との間には、相関関係があり、図30に示したように、動粘度と留出温度との間も相関関係がある。その結果、図31に示したように、センサー出力と留出温度に相関関係があることになる。本発明の液種識別装置では、このような関係を利用して、上記のように、軽油の液種識別および軽油の蒸留性状を認識することができるようになっている。
【0224】
さらに、このような軽油の液種識別および軽油の蒸留性状を、より正確にかつ迅速に行うには、下記のような方法に基づけばよい。
すなわち、図32に示したように、予め所定の参照軽油について、例えば、この実施例では、最も重質な(蒸発しにくい)本州の軽油Aと、最も軽質な(蒸発し易い)スウェーデンの標準軽油Dについて、温度に対する電圧出力差の相関関係である検量線データを得ておき、これを、識別制御部を構成するコンピュータに記憶させておく。
【0225】
そして、この検量線データに基づいて、コンピュータにおいて比例計算を行い、被識別軽油について得られた電圧出力差V0によって、軽油の種別を識別するように構成されている。
【0226】
具体的には、図示しないが、上記の実施例と同様にして、被識別軽油の測定温度Tにお
ける電圧出力差V0についての液種電圧出力Voutを、所定の閾値参照軽油(この実施例では、本州の軽油Aとスウェーデンの標準軽油D)についての測定温度における電圧出力差についての出力電圧と相関させて補正するようになっている。
【0227】
すなわち、図示しないが、検量線データに基づいて、温度Tにおいて、本州の軽油Aの電圧出力差V0−A、スウェーデンの標準軽油Dの電圧出力差V0−D、被識別軽油の電圧出力差V0−Sが得られる。
【0228】
そして、この際の閾値参照軽油の液種出力を、所定の電圧となるように、すなわち、この実施例では、本州の軽油Aの液種出力を3.5V、スウェーデンの標準軽油Dの液種出力を0.5Vとして、被識別軽油の液種電圧出力Voutを得ることによって、軽油の性状と相関を持たせることができるようになっている。
【0229】
この被識別軽油の液種電圧出力Voutを、予め検量線データに基づいて、コンピュータに記憶されたデータと比較することによって、軽油の液種識別を正確にかつ迅速に(瞬時に)行うことが可能となる。
【0230】
また、このような軽油の液種識別方法においては、図33に示した軽油の蒸留性状において、蒸留性状T30〜T70で行うとより相関関係があることがわかっており、望ましいものである。
【0231】
このように構成される軽油の液種識別装置1を、図示しないが、自動車システムに適用することができる。
この自動車システムにおいて、軽油タンク内または軽油ポンプの上流側に、軽油の液種識別装置10を配設すればよい。
【0232】
この軽油の液種識別装置1によって、軽油タンク内または軽油ポンプの上流側または下流側の軽油の液種識別を行って軽油の種類に応じて、制御装置の制御によって、着火タイミング制御装置によって、着火タイミングを調整することができるように構成することができる。
【0233】
すなわち、例えば、軽質な(蒸発し易い)スウェーデンの標準軽油Dが識別された場合には、着火タイミングを早め、逆に、重質な(蒸発しにくい)本州の軽油Aが識別された場合には、着火タイミングを遅めるように制御される。
【0234】
これによって、特にエンジン、触媒装置が暖まっていないエンジン始動時においても、トルクが減少することなく、排気ガス中のHCの量も低減でき、しかも燃費の向上も図ることができる。
【0235】
また、この軽油の液種識別装置1によって、軽油タンク内または軽油ポンプの上流側または下流側の軽油の液種識別を行って軽油の種類に応じて、制御装置の制御によって、軽油圧縮制御装置によって、軽油の圧縮率を調整するように構成することもできる。
【0236】
すなわち、例えば、軽質な(蒸発し易い)スウェーデンの標準軽油Dが識別された場合には、圧縮率を低くし、逆に、重質な(蒸発しにくい)本州の軽油Aが識別された場合には、圧縮率を高めるように制御される。
【0237】
これによって、特にエンジン、触媒装置が暖まっていないエンジン始動時においても、トルクが減少することなく、排気ガス中のHCの量も低減でき、しかも燃費の向上も図ることができる。
【0238】
図34は、本発明の流体識別装置を、流量・液種検知装置として用いる場合の別の実施例の概略図、図35は、図34の流量・液種検知装置を用いた流量検知方法を示す検量線を示すグラフである。
【0239】
図34において、420は、全体で本発明の流量・液種検知装置を示している。流量・液種検知装置420は、例えば、ガソリン、軽油、尿素溶液などの被検知流体が流通する主流路422を備えている。また、この主流路422から分岐して、副流路424が設けられている。
【0240】
副流路424には、流量・液種検知センサー装置11が設けられるとともに、その上流側には、流量・液種検知センサー装置11への被検知流体の流通を制御する副流路開閉弁426が設けられている。さらに、この副流路424には、流量・液種検知センサー装置11の下流側には、逆支弁416が配設されている。
【0241】
一方、主流路422には、主流路への被検知流体の流通を制御する主流路開閉弁417が設けられるとともに、その下流側にオリフィス418が配設されている。
さらに、これらの流量・液種検知センサー装置11、副流路開閉弁426、主流路開閉弁417を制御するための通信装置を含んだセンサー制御装置419が設けられている。なお、自動車に適用する場合には、このセンサー制御装置419に、ECU(electroniccircuitunit)428が接続されている。
【0242】
なお、この場合、これらの副流路開閉弁426、主流路開閉弁417としては、特に限定されるものではないが、例えば、電磁弁などを採用することができる。
また、オリフィス418としても、特に限定されるものではなく、例えば、フランジタップオリフィス、可変オリフィス、複数の細管を備えたオリフィスなどが採用することができる。
【0243】
このように構成される流量・液種検知装置420は、下記のように作動される。
被検知流体の液種検知、濃度検知のいずれか、またはその両方を行う際には、センサー制御装置419(またはECU428)の制御によって、副流路開閉弁426を弁開した後、副流路開閉弁426を弁閉して、被検知流体を流量・液種検知センサー装置11内に一時滞留させて、液種検知、濃度検知のいずれか、またはその両方を行うように制御されるようになっている。
【0244】
一方、被検知流体の流量を検知する際には、センサー制御装置419(またはECU428)の制御によって、副流路開閉弁426を弁開して、被検知流体を流量・液種検知センサー装置11内に流通させて、この状態で流量を検知するように制御されるようになっている。
【0245】
この場合、センサー制御装置419(またはECU428)は、被検知流体の流量が小さい場合に、主流路開閉弁417を弁閉し、逆に、被検知流体の流量が大きい場合に、主流路開閉弁417を弁開するように制御するように構成されている。
【0246】
すなわち、このように被検知流体の流量が小さい場合に、主流路開閉弁417を弁閉することによって、副流路424に被検知流体を流して、流量・液種検知センサー装置11における検知に必要な流体の流量を確保すことができる。
【0247】
逆に、被検知流体の流量が大きい場合に、主流路開閉弁417を弁開することによって、主流路422に流体を流すことによって、副流路424を流れる流体の流量を低下させ
て、流量・液種検知センサー装置11における検知に必要なだけの流体の流量を確保すことができる。
【0248】
従って、流量のダイナミックレンジが広い場合にも対応することが可能であり、感度範囲が広くなる。
なお、副流路424の流量・液種検知センサー装置11の下流側に逆支弁416を配設することによって、例えば、流体を流通させる送液装置であるポンプの種類、駆動系の種類によって、脈流が発生して逆流が生じる場合に、この逆流を抑えることができる。
【0249】
従って、流量・液種検知センサー装置11内での流体の逆流が防止できるので、液種検知、濃度検知、および流量の検知の際に、流体の逆流によって影響されることなく、これらの検知を正確かつ迅速に行うことができる。
【0250】
さらに、主流路422にオリフィス418が配設されているので、主流路422内の圧力損失が小さく、副流路424内を流体が流れにくい場合において、オリフィス418によって主流路422の圧力損失を上昇することができ、これによって、副流路424内に検知に必要な一定の流量の流体を流すことができ、確実に検知を行うことが可能である。
【0251】
この状態で、上記の液種検知と同様にして、被検知流体の電圧出力Voutを得て、図35に示したような予め測定しておいた流量に関する検量線データに基づいて、コンピュータに記憶されたデータと比較することによって、ガソリンの流量検知を正確にかつ迅速に(瞬時に)行うことが可能となる。
【0252】
図36は、本発明の流体識別装置を液種検知装置として用いた場合の別の実施例の全体の分解斜視図、図37は、図36の液種検知装置の液種検知室の分解斜視図、図38は、図36の液種検知装置の液種検知室の検知状態を説明する概略図である。
【0253】
図36において、430は、全体で本発明の液種検知装置を示している。液種検知装置430は、例えば、ガソリン、軽油、尿素溶液などの被検知流体が流通する略箱体形状の液種検知装置本体432を備えている。
【0254】
図36に示したように、この液種検知装置本体432には、その内部に、略円管形状の液種検知室434が設けられている。また、液種検知装置本体432には、第1の流路436と、第2の流路438とを備えている。
【0255】
この第1の流路436は、液種検知室434に設けられた流体導入口440に接続されている。また、第2の流路438は、液種検知室434に設けられた流体排出口442に接続されている。
【0256】
そして、図37の矢印で示したように、液種検知装置本体432に導入された被検知流体は、第1の流路436から流体導入口440を経て、液種検知室434に一時滞留するように構成されている。
【0257】
この液種検知室434には、その上部の液種検知室用蓋部材444が装着されており、この液種検知室用蓋部材444に、略トラック形状の液種検知センサー用開口部446が形成されている。
【0258】
この液種検知センサー用開口部446には、液種検知センサー448が装着されている。
なお、図37において、符号472は液温センサー、473は液温センサーヒーター、
474はリード電極である。
【0259】
また、図36に示したように、液種検知センサー448には、回路基板部材450と、これを被う外蓋部材452が備えられている。なお、図37においては、説明の便宜上、これらの回路基板部材450、外蓋部材452を省略して示している。
【0260】
なお、図36中、454a、454bは、液種検知装置本体432に設けられた、液種検知装置430を、例えば、自動車などの取り付けるための取り付けフランジである。
一方、液種検知室434には、図37に示したように、液種検知室434内に突設する液種検知センサー448を囲繞するように、流れ制御板456が、液種検知室用蓋部材444の内側に形成されている。
【0261】
この流れ制御板456は、断面略コ字形状の板部材458から構成されており、この板部材458は、液種検知センサー448を両側から囲み、液種検知室434の流体導入口440から流体排出口442に向かって延設された一対の側板部材460、462と、これらの側板部材460、462に接続された被覆板部材464とを備えている。
【0262】
そして、この流れ制御板456には、液種検知室434の流体導入口440と対峙する流体流入口466と、液種検知室434の流体排出口442と対峙する流体流出口468が形成されている。
【0263】
この液種検知室434の流体導入口440と、流れ制御板456の流体流入口466とは、所定距離L1、離間するとともに、液種検知室434の流体排出口442と、流れ制御板456の流体流出口468とが、所定距離L2、離間している。
【0264】
このように構成することによって、液種検知装置本体432内への被検知流体の導入を停止して、液種検知室434内で被検知流体を一時滞留させた際に、液種検知室434内での被検知流体の流れが、流れ制御板456によって抑制されて、この流れ制御板456に囲繞された流れ制御板456の内部に位置する液種検知センサー448の周囲の被検知流体の流れが、瞬時に停止することになる。
【0265】
すなわち、液種検知室434の流体導入口440から、流れ制御板456の流体流入口466を介して、流れ制御板456に囲繞された流れ制御板456の内部に、被検知流体が、流れ制御板456の内部に位置する液種検知センサー448の周囲に確実に浸入して、液種検知センサー448によって、被検知流体の液種、濃度の検知を行うことができる。
【0266】
そして、液種検知センサー448によって、被検知流体の液種、濃度の検知を行った後、流れ制御板456の流体流出口468を介して、液種検知室434の流体排出口442から検知後の被検知流体を確実に排出することができるので、順次正確な被検知流体の検知を実施することができる。
【0267】
従って、液種検知センサー448による液種、濃度の検知の際に、被検知流体の流れが生じず、また、振動による被検知流体の乱れが生じることがないので、被検知流体の液種、濃度の検知への影響を防止することができ、正確な被検知流体の液種、濃度の測定を行うことが可能である。
【0268】
しかも、液種検知室434を設けているので、被検知流体が滞留する量が多くなるので、被検知流体の液種、濃度の検知の際に、外部の温度などの周囲影響に影響されることなく、正確な検知を実施することができる。
【0269】
従って、例えば、自動車のガソリン、軽油などの流体に適用した場合に、信号待ちなどで自動車を停止させた際に、ガソリンなどのポンプを停止して、瞬時に被検知流体の液種、濃度を検知することができ、検知終了後に、ポンプを始動して自動車を再び始動できるので、自動車の走行に支障をきたすことがない。
【0270】
さらに、図38の矢印Bで示したように、この検知の際に、被検知流体に混入した空気が、流れ制御板456の流体流出口468を介して、液種検知室434の流体排出口442から、この空気を確実に排出することができるので、液種検知センサー448の周囲に空気が滞留することがないので、検知への影響を防止することができ、正確な検知を行うことができる。
【0271】
さらに、このように液種検知室434の流体導入口440と、流れ制御板456の流体流入口466とが、所定距離L1、離間するので、図38の矢印Aで示したように、これらの隙間から、被検知流体に混入した空気が、流れ制御板456の外側に移動して、液種検知室434の流体排出口442から外部に排出されることになる。
【0272】
従って、流れ制御板456の内部に空気が浸入することがないので、液種検知センサー448の周囲に空気が滞留することがないので、検知への影響を防止することができ、正確な検知を行うことができる。
【0273】
しかも、万一、流れ制御板456の内部に空気が浸入したとしても、図38の矢印Cで示したように、流れ制御板456の流体流出口468を介して、液種検知室434の流体排出口442から、この空気を確実に排出することができるので、液種検知センサー448の周囲に空気が滞留することがないので、検知への影響を防止することができ、正確な検知を行うことができる。
【0274】
さらに、図38の矢印Bに示したように、液種検知室434の流体排出口442の近傍の側壁が略円管形状であり、略円弧状に形成されているので、この略円弧状の液種検知室434の側壁470に沿って、被検知流体に混入した空気が、液種検知室434の流体排出口442へと内側に導かれて排出されることになる。
【0275】
従って、液種検知室434の流体排出口442の近傍に空気が溜まることがなく、液種検知センサー448の周囲に空気が滞留することがないので、検知への影響を防止することができ、正確な検知を行うことができる。
【0276】
なお、このような作用効果を奏するためには、図38に示したように、上記の所定距離L1、L2としては、1.5mm〜5mm、好ましくは、2mm〜3.5mmとするのが望ましい。また、流れ制御板456の一対の側板部材460、462と液種検知センサー448との距離L3としては、5mm〜10mm、好ましくは、6mm〜8mmとするのが望ましい。
【0277】
また、液種検知室434の大きさとしては、特に限定されるものではない。
さらに、液種検知室434を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、SUS304などのステンレスなどの金属、ポリアセタール(POM)などの合成樹脂、FRPなどの繊維強化樹脂などが使用可能である。
【0278】
また、流れ制御板456を構成する材料としても、特に限定されるものではないが、SUS304などのステンレスなどの金属、ポリアセタール(POM)などの合成樹脂、FRPなどの繊維強化樹脂、セラミックなどが使用可能である。
【0279】
さらに、本発明の液種検知装置430では、上述した図6の実施例に示したような回路構成と同様な回路構成となっている。
この実施例では、図示しないが、上述した図6の回路構成において、液種検知センサー448の液種検知センサーヒーター406の液種検知用液温センサーと、液温センサー472とが、二つの抵抗を介して接続されて、ブリッジ回路を構成している。そして、このブリッジ回路の出力が、増幅器の入力に接続されて、この増幅器の出力が、検知制御部を構成するコンピュータの入力に接続されている。
【0280】
また、液種検知センサーヒーター406のヒーターが、コンピュータの制御によって印加電圧が制御されるようになっている。
このように構成される液種検知装置430では、以下のようにして、例えば、ガソリンの液種検知が行われる。
【0281】
先ず、図示しない制御装置の制御によって、被検知流体を液種検知装置本体432に導入することによって、第1の流路436から流体導入口440を経て、液種検知室434に被検知流体を流入させた後、この被検知流体の流入を停止することによって、液種検知室434に一時滞留させた状態とする。
【0282】
この状態では、液種検知装置本体432内への被検知流体の導入を停止して、液種検知室434内で被検知流体を一時滞留させた際に、液種検知室434内での被検知流体の流れが、流れ制御板456によって抑制されて、この流れ制御板456に囲繞された流れ制御板456の内部に位置する液種検知センサー448の周囲の被検知流体の流れが、瞬時に停止することになる。
【0283】
なお、本発明の流体識別装置を、尿素溶液の尿素濃度識別方法に用いることができる。この場合にも上記の実施例と同様にしては、自然対流を利用して、尿素の動粘度とセンサー出力が相関関係を有している原理を利用すればよい。
【0284】
図39は、このように構成される尿素溶液の尿素濃度識別装置482を、自動車システム480に適用した実施例概略図である。
なお、図39において、符号130は尿素溶液供給機構、140と142はNOxセンサーである。
【0285】
この自動車システム480では、尿素溶液タンク132内または尿素ポンプの上流側に、尿素溶液の尿素濃度識別装置482を配設している。
この尿素溶液の尿素濃度識別装置482によって、尿素溶液タンク132内または尿素ポンプの上流側または下流側(なお、この実施例では、説明の便宜上、上流側の場合を示した)の尿素溶液の尿素濃度識別を行って、触媒装置116の上流側に噴霧される尿素の濃度を、尿素溶液が固化せずに、触媒装置116の上流側で還元反応が効率良く発生するために、例えば、尿素32.5重量%、H2Oが67.5重量%と一定の状態とするよう
になっている。
【0286】
従って、尿素タンク中の尿素溶液の尿素濃度を所定の濃度に保つことができるので、排気ガス中のNOxを還元して極めて低減することができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0287】
図40は、本発明の流体識別装置を、タンク内液体の漏れ検知装置に用いた実施例を説明するための一部破断斜視図であり、図41は、この実施例の漏れ検知装置の一部省略断面図である。
【0288】
タンク490は、計量口492及びタンク内へ液体を注入する際に使用される注液口494が形成された天板496と、タンク内からタンク外へと液体を供給する際に使用される給液口498が形成された側板500と、底板502とを有する。図40に示されている様に、タンク490内には、液体(例えばガソリン、軽油または灯油その他であって、多数の有機化合物の混合組成物からなる可燃性液体)Lが収容されている。LSはその液面を示す。
【0289】
漏れ検知装置504は、タンク490の天板496に形成された計量口492を通って、一部がタンク490内へと挿入されており、全体として鉛直方向に配置されている。漏れ検知装置504は、液体導入出部506、流量測定部508、液溜め部510、キャップ16及び回路収容部15を備えている。液体導入出部506、流量測定部508及び液溜め部510はタンク490の内部に位置しており、液面LSは液溜め部510の高さ範囲内に位置する。流量測定部508及び液溜め部510は、これらにわたって鉛直方向に延びた鞘管512を含んで構成されている。
【0290】
流量測定部508では、図41に示すように、鞘管512内にセンサーホルダー13aが配置されており、該センサーホルダーにより鉛直方向の測定細管13bが固定保持されている。測定細管13bには、第1の温度センサー133、ヒーター135及び第2の温度センサー134が上側からこの順に配置されて取り付けられている。ヒーター135は第1の温度センサー133及び第2の温度センサー134から等距離の位置に配置されている。
【0291】
センサーホルダー13aは、外側が鞘管512により覆われているので、第1の温度センサー133、ヒーター135及び第2の温度センサー134は、液体Lによる腐食から保護される。測定細管13bは、液溜め部510と液体導入出部506との間での液体の流通経路として機能する。また、第1の温度センサー133、ヒーター135及び第2の温度センサー134により測定細管13b内の液体の流量を測定するための流量センサー部が構成される。
【0292】
流量測定部508には、測定細管13bの下端の近傍においてセンサーホルダー13aに取り付けられた圧力センサー137が設けられている。この圧力センサー137は、タンク内液体Lの液位を測定するためのものであり、例えばピエゾ素子やコンデンサータイプの圧力検知素子を利用することができ、液体の液位に対応した電気信号例えば電圧信号を出力する。
【0293】
液体導入出部506では、図41に示されるように、フィルタカバー12bがフィルター12aをセンサーホルダー13aの下部に対して固定している。フィルター12aは、タンク内の液体に浮遊または沈殿するスラッジなどの異物を除去して、液体のみを測定細管13bを介して液溜め部510へと導入する機能を有する。また、フィルタカバー12bの側壁には開口部が設けられており、タンク490内の液体Lは液体導入出部506のフィルター12aを介して測定細管13bへと導入される。
【0294】
液溜め部510は、流量測定部508の上方に位置しており、鞘管512により囲まれた空間Gを有し、この空間G内に測定細管13bから導入される液体を溜めるように構成されている。この空間G内の液体の温度を測定するための第3の温度センサー136が、センサーホルダー13aに取り付けられている。
【0295】
鞘管512の上部にはキャップ16が固定されており、該キャップには液溜め部510内と検知装置外のタンク内空間とを連通させる通気路16aが形成されている。キャップ
16には、通気路16aを開状態及び閉状態となすための開閉弁138が配置されている。
該開閉弁の弁体138aは上下移動可能であり、最下位置では通気路16aが閉状態(開閉弁を開いた状態)とされ、それより上の位置では通気路16aが開状態(開閉弁を閉じた状態)とされる。
【0296】
キャップ16には回路収容部15が取り付けられており、該回路収容部には漏れ検知制御部15aが収容されている。上記鞘管512内にはセンサーホルダー13aの上部とキャップ16とを接続するように延びたガイド管Pgが配置されており、流量測定部508の第1の温度センサー133、ヒーター135及び第2の温度センサー134並びに圧力センサー137及び第3の温度センサー136と漏れ検知制御部15aとを接続する配線17がガイド管Pg内を通って延びている。尚、開閉弁138は漏れ検知制御部15aに接続されている。
【0297】
液溜め部510における鞘管512が本発明の測定管を構成する。測定細管13bの断面積は、鞘管512の断面積(但し、ガイド管Pgの断面積を除く)に対して十分小さく(例えば1/50以上、1/100以下、更には1/300倍以下)設定しておくことで、僅かな液体漏れの際の僅かな液位変化にも測定細管13b内に流量測定可能な液体流通を生ぜしめることができる。
【0298】
鞘管512、センサーホルダー13a、フィルタカバー12b、キャップ16及びガイド管Pgは、タンク490を構成する素材に近似した熱膨張係数を有する金属からなるのが好ましく、鋳鉄又はステンレス鋼などのタンク490の素材と同一の金属からなるのがより好ましい。
【0299】
以上の様な漏れ検知装置504を、開閉弁138による通気路16aの開閉状態を開状態として、タンク490の計量口492に取り付けると、上記のようにタンク内液体Lの液面LSは、液溜め部510の高さ範囲内に位置する。従って、圧力センサー137は液体導入出部506のフィルター12aにより濾過されたタンク内液体Lに浸漬され、また、タンク内液体Lは、流量測定部508の測定細管13bを通って上昇し、液溜め部510の空間G内へと導入され、ついには液溜め部510内の液体の液面が漏れ検知装置外のタンク内液体の液面LSと同一の高さになる。そして、タンク内液体の液面LSが変動すると、これに追従して液溜め部510内の液体の液面も変動し、この液面変動即ち液位変化に伴い測定細管13b内で液体の流動が生ずる。
【0300】
以下、この実施例における漏れ検知動作即ちCPUの動作につき説明する。本実施例では、タンク内液体として灯油が使用されている。
図42は、パルス電圧発生回路から薄膜発熱体に印加される電圧Qと漏れ検知回路の電圧出力Sとの関係を示すタイミング図である。
CPUからは、クロックに基づき、幅t1の単一パルス状電圧が所定の時間間隔t2で印加される。この単一パルス状電圧は、例えば、パルス幅t1が2〜10秒であり、パルス高Vhが1.5〜4Vである。
【0301】
これにより薄膜発熱体で生じた熱は、測定細管13b及びその内部の液体を加熱し、周囲に伝達される。この加熱の影響は薄膜感温体に到達し、これら薄膜感温体の温度が変化する。ここで、測定細管13b内での液体の流量が零の場合には、対流による温度伝達の寄与を無視すれば、2つの感温体での温度変化は同等である。
【0302】
しかし、タンク内液体がタンクから漏れた時のようにタンク内液体の液面が低下した場合には、液溜め部510から測定細管13bを通じて液体が検知装置外のタンク内へと液
体導入出部506から導出されるので、測定細管13b内の液体は上から下へと流動する。
これにより、薄膜発熱体からの熱は上側の温度センサーの薄膜感温体よりも下側の温度センサー134の薄膜感温体の方へと多く伝達される。
【0303】
このように、2つの薄膜感温体が検知する温度には差が生じて、これら薄膜感温体の抵抗値変化は互いに異なるものとなる。図42には、温度センサー133の薄膜感温体に印加される電圧VT1及び温度センサー134の薄膜感温体に印加される電圧VT2の変化が示されている。このように、差動増幅器の出力即ち漏れ検知回路の電圧出力Sは、図42に示されるように、変化する。
【0304】
図43に、パルス電圧発生回路から薄膜発熱体に印加された電圧Qと漏れ検知回路の電圧出力Sとの関係の具体例を示す。この例では、単一パルス状電圧はパルス高Vhが2Vでありパルス幅t1が5秒であり、液位変化速度F[mm/h]を変化させて電圧出力S[F]を得た。
【0305】
CPUでは、パルス電圧発生回路によるヒーター135の薄膜発熱体への単一パルス電圧の印加に応じて、単一パルス電圧印加の開始後の所定時間t3において、漏れ検知回路の電圧出力Sとその当初値(即ち、単一パルス電圧印加開始時)S0との差(S0−S)を積分する。この積分値∫(S0−S)dtは、図42で斜線を付した領域に相当し、測定
細管13b内の液体の流量に対応する流量対応値である。所定時間t3は、例えば20〜150秒である。
【0306】
図44に、測定細管13b内の液体の流量Fに対応する液位変化速度と上記積分値∫(S0−S)dtとの関係の具体例を示す。
この例では、積分値を得るための所定時間t3を30秒とし、互いに異なる3つの温度での関係を得た。液位変化速度1.5mm/h以下の領域において、液位変化速度と積分値∫(S0−S)dtとの間に良好な直線的関係があることが分かる。
【0307】
尚、この例では液位変化速度1.5mm/h以下の領域で良好な直線的関係が示されたが、測定管断面積に対する測定細管断面積の比や測定細管の長さなどを適宜設定することで、液位変化速度20mm/h以下の領域で良好な直線的関係が得られるようにすることが可能である。
【0308】
このような積分値∫(S0−S)dtと液位変化速度との代表的な関係は、予めメモリ
に検量線として記憶させておくことができる。従って、漏れ検知回路の出力を用いて算出される流量対応値である積分値∫(S0−S)dtに基づき、メモリの記憶内容を参照し
て換算することにより、タンク内液体の漏れを液位変化速度として得ることができる。但し、或る値(例えば0.01mm/h)より小さな液位変化速度が得られた場合には、測定誤差範囲内であるとみなして、漏れなしと判定することができる。
【0309】
積分値∫(S0−S)dtと液位変化速度との関係は、図44に示されるように厳密に
は液体の温度に応じて異なる。そこで、複数の温度毎に上記積分値∫(S0−S)dtと
液位変化速度との関係を示す検量線をメモリに記憶しておき、第3の温度センサー136により測定される温度(実測温度)に基づき、メモリに記憶されている実測温度に最も近い温度の検量線を用いて、または複数の温度の検量線を用いた内挿または外挿により、積分値∫(S0−S)dtから液位変化速度への換算を行うようにすることができる。これ
によれば、より高い精度の漏れ検知が可能となる。
【0310】
この漏れ検知(微小漏れ検知)は、適宜の時間t2の間隔をおいて繰り返し実行される
。時間t2は、例えば40秒〜5分(但し、上記積分時間t3より長い時間)である。
更に、CPUでは、圧力センサー137からA/Dコンバータを介して入力される液位対応出力Pを直ちに液位pに換算することができる。この換算は、液体の比重ρに関連しており、圧力センサー137により測定される圧力値をPとし、圧力センサー137の高さ位置を基準とした液位をpとし、重力の加速度をgとして、
式(1)
p=P/(ρg) ・・・(1)
を用いて行うことができる。この液位pの値は圧力センサー137の高さを基準としたものであるが、タンク490の計量口492の高さと漏れ検知装置の該計量口への取り付け部分から圧力センサー137迄の距離とを勘案することでタンク自体に対する液位値に変換することができる。これらの液位検知の結果を示す液位検知信号がCPUから出力される。
【0311】
液体の比重ρは、次のようにして検知される。尚、この比重検知のフローを図46に示す。
液体の比重検知は、タンク内に液体が補充のために注入される度に行われ、この液体注入の後に、液面が静定する適宜の時間をおいて、外部入力等によりスタートする。この時、流量センサー部のヒーター135に対し上記のパルス通電が開始される(既にパルス通電が実行されている場合には、それを継続する)。
【0312】
そして、開閉弁138により通気路16aを閉状態となし(S1)、液面が静定する適宜の期間(例えば2〜5分間)静止させ(S2)た後に、上記のような積分値∫(S0−
S)dtの測定を複数回(例えば5回)実施し(S3)、得られた複数の積分値∫(S0
−S)dtの平均値を算出し(S4)、これにより得られた平均値から比重検量線を用いて比重ρを算出する(S5)。
【0313】
比重検量線は予め比重の知られた種々の比重の同種液体(例えば灯油を含む燃料油)について同様に積分値∫(S0−S)dtの測定を行うことで得ることができ、これをメモ
リに記憶しておく。尚、S3において積分値∫(S0−S)dtの測定を1回のみ実施し
、S4を省略し、S5において平均値として上記1回の測定により得られた値を使用してもよい。
【0314】
次に、以上のようにして得られた比重ρが0.7以上且つ0.95以下の範囲内にあるか否かの判定を行う(S6)。この判定は、液体が燃料油であるか否かを判定するものであり、ここで0.7≦ρ≦0.95であると判定された場合には、液体が燃料油であるとして、このρの値を現在のタンク内液体の比重としてメモリに記憶する(S7)。
【0315】
一方、S6で0.7≦ρ≦0.95以外であると判定された場合には、S3〜S5が3サイクル連続して実行したかどうかを判定し(S8)、3サイクル連続して実行したと判定された場合には、液体が燃料油ではないと最終確認するエラー処理を行う(S9)。CPUは、これに基づき、外部に対して適宜の警告信号を発することができる。一方、S8で3サイクル連続して実行していないと判定された場合には、S3以降を実行する。尚、S8を省略して、S6から直ちにS9へと移行してもよい。
【0316】
次に、S7またはS9の後に、開閉弁138により通気路16aを開状態となし(S10)、比重検知を終了する。
また、CPUでは、一定時間tt例えば2〜10秒毎に、以上のようにして得られた液位pの値をメモリに記憶し、この記憶のたびに前回の記憶値との差分を算出し、これを液位の時間変化率p’の値としてメモリに記憶する。
【0317】
図45に、液位変化速度と液位対応出力Pの時間変化率P’との関係の具体例を示す。液位変化速度150mm/h以下の領域において、液位変化速度と液位対応出力の時間変化率P’との間に良好な直線的関係があり、従って液位変化速度と液位時間変化率p’とが良好に対応することが分かる。尚、この例では液位変化速度150mm/h以下の領域で良好な直線的関係が示されたが、更に液位変化速度200mm/hまでの領域で良好な直線的関係が得られるようにすることが可能である。
【0318】
従って、圧力センサー137により測定される液位pの時間変化率p’の大きさとして、タンク内液体の漏れを得ることができる。
ところで、上記液体の比重ρは、厳密には液体の温度に応じて異なる。そこで、これに対応して、以上説明した比重検知の際には、次のような処理を行うことができる。
【0319】
即ち、比重検量線として標準温度TR(例えば15℃)におけるもの(標準温度比重検量線)を使用する。この標準温度比重検量線の作成に際しては、液体温度TAで検出された比重がρ[TA]であったとして、これに基づき、標準温度TRでの比重値ρ[TR]を式(2)
ρ[TR]=ρ[TA]+0.00071(TA−TR) ・・・(2)
を用いて算出することができる。尚、この式(2)中の係数0.00071は、液体が燃料油である場合のものである。
【0320】
そして、被検知液体について上記図46を参照して説明した比重検知を行った際に、第3の温度センサー136により測定された温度がTXで、標準温度比重検量線を使用して換算された比重値がρ[TX]であったとして、現在の温度TXでの補正された比重値ρ’[TX]を式(3)
ρ’[TX]=ρ[TX]−0.00071(TX−TR)・・・(3)
を用いて算出することができる。尚、この式(3)中の係数0.00071は、液体が燃料油である場合のものである。
【0321】
以上のようにして得られた補正された比重値ρ’[TX]を上記式(1)の比重値ρとして用いて液位への換算を行うことで、より高い精度の漏れ検知が可能となる。
以上のような圧力センサーを用いた漏れ検知は上記微小漏れ検知に比べて広い液位変化速度範囲をカバーすることができる。一方、微小漏れ検知は圧力センサーを用いた漏れ検知に比べて微小な液位変化速度領域を高い精度で測定することができる。
【0322】
ところで、タンク490内での液位変化は、注液口494からタンク内への液体の注入がなされる時あるいは給液口498から外部への液体供給がなされる時にも発生する。しかし、これらの場合のタンク490内の液位の上昇または下降の速度は、漏れの場合の液位変化速度または液位時間変化率よりかなり大きいのが一般的である。
【0323】
そこで、CPUでは、漏れに関して、以下のような処理を行う。
(1)圧力センサーを用いた漏れ検知において液位時間変化率p’の大きさが所定範囲(例えば10〜100mm/h)内の時には、当該圧力センサーを用いた漏れ検知の結果を漏れ検知信号として出力する。
(2)圧力センサーを用いた漏れ検知において液位時間変化率p’の大きさが上記所定範囲の下限より小さい(例えば10mm/hより小さい)時には、微小漏れ検知の結果を漏れ検知信号として出力する。
(3)圧力センサーを用いた漏れ検知において液位時間変化率p’の大きさが上記所定範囲の上限を越える(例えば100mm/hより大きい)時には、漏れ以外の原因例えば液体注入あるいは液体供給によるものと判定し、漏れ検知信号を出力しない。
更に、本実施例では、上記(3)の状態に至った場合即ち圧力センサーを用いた漏れ検知
において液位時間変化率p’の大きさが所定範囲の上限を越えた場合には、CPUは、以後の所定時間tmの間第1の漏れ検知を停止することができる。
【0324】
この漏れ検知停止の上記所定時間tmは、上記外部からタンク内への液体注入あるいはタンク内から外部への液体供給の後の液面LSの静定時間より若干長い時間とするのが好ましく、例えば10〜60分とすることができる。とくに、この所定時間tm中、CPUは、パルス電圧発生回路及び漏れ検知回路の動作を停止させることができる。これによれば、電力消費量が低減される。
【0325】
液位変化速度または液位時間変化率は漏れ量(単位時間あたりの漏れの量)と関係している。即ち、液位変化速度または液位時間変化率に当該液位でのタンク内部の水平断面積を乗じたものが液体の漏れ量に相当する。従って、予めタンクの形状(即ち高さ位置とタンク内部の水平断面積との関係)をメモリに記憶しておき、このメモリの記憶内容を参照して、上記のようにして検知された液位及び漏れ(液位変化速度または液位時間変化率)に基づき、タンク内液体の漏れ量を算出することができる。
【0326】
尚、タンクの形状が図40に示される縦型円筒形状などのようにタンク内部の水平断面積が高さによらず一定のものである場合には、液位変化速度または液位時間変化率と漏れ量とは単純な比例関係にあり、従って液位の値自体とは無関係に液位変化速度または液位時間変化率にタンク内部の水平断面積に応じた比例定数を乗ずることで容易に漏れ量を算出することができる。即ち、この場合には、この実施例の装置により検知される漏れは漏れ量に基づくものと実質上同等である。
【0327】
図47は、本発明の流体識別装置を液位検出装置として用いた別の実施例を示す分解斜視図であり、図48はその一部省略断面図であり、図49はそのタンクへの取り付け状態を示す図である。本実施例では、液体として尿素水溶液が想定されている。
【0328】
図49に示されているように、たとえば自動車に搭載された排ガス浄化システムを構成するNOx分解用の尿素水溶液タンク520の上部には開口部522が設けられており、該開口部に本発明による液位検出装置523が取り付けられている。尿素水溶液タンク520には、尿素水溶液が注入される入口配管524及び尿素水溶液が取り出される出口配管526が設けられている。
【0329】
出口配管526は、尿素水溶液タンク520の底部に近い高さ位置にてタンクに接続されており、尿素水溶液供給ポンプ110を介して不図示の尿素水溶液噴霧器に接続されている。排気系において排ガス浄化用触媒装置の直前に配置された上記尿素水溶液噴霧器により触媒装置に対する尿素水溶液の噴霧が行われる。
【0330】
液位検出装置は、識別センサー部528と圧力センサー530と支持部532とを備えている。支持部532の一方の端部(下端部)に識別センサー部528が取り付けられており、支持部532の他方の端部(上端部)にはタンク開口部522へ取り付けるための取り付け部4aが設けられている。
【0331】
なお、図47および図48において、符号2aは基体、2bと2cはOリング、4aは取り付け部、21は傍熱型濃度検知部、21cと22cは金属製フィン、21eと22eは外部電極端子、24は被測定液体導入路、540は回路基板、542は蓋部材、544と546と548は配線、550はコネクター、532は支持部である。
【0332】
図50は、マイコンでの液位検出プロセスを示すフロー図である。
圧力センサー530により尿素水溶液の液圧Pが検出され、その検出液圧値がマイコン
に入力され、これに基づきマイコンでは、尿素水溶液が所定密度のもの例えば尿素濃度が零で密度が1の水であるとした場合の仮の液位値Hを算出する(ST1)。
【0333】
この算出に際しては、予め圧力センサー530により測定された水の液圧P[kPa]と液位(仮の液位値)H[cm]との関係(図13に示す)から得られる以下の関係式(3)
H=0.0041・P2+10.181・P・・・・(3)
を用いることができる。
【0334】
一方、上記のようにして識別センサー部528を用いて得られる尿素濃度値Cがマイコンに入力される。これに基づきマイコンでは、当該尿素濃度値Cの尿素水溶液の密度値ρを算出する(ST2)。尿素濃度C[wt%]の変化に対する尿素水溶液の密度ρ[g/cm3]の変化の関係は、これから得られる以下の関係式(4)
ρ=7.450E(−6)・C2+2.482E(−3)・C+1.000・・・・(4)
を用いて密度ρを算出することができる。
【0335】
次に、以上のようにして得られた仮の液位値Hと尿素水溶液の密度ρとから、液位H’[cm]を、以下の関係式(5)
H’=ρ・H・・・・(5)
を用いて算出する(ST3)。
【0336】
以上のようにして液圧の検出及び濃度の識別並びにこれらに基づく液位の算出を正確に且つ迅速に行うことができる。この濃度識別に基づく液位検出のルーチンは、自動車のエンジン始動時に、或いは定期的に、或いは運転者または自動車(後述のECU)側からの要求時に、或いは自動車のキーOFF時等に、適宜実行することができ、所望の様式にて尿素タンク内の尿素水溶液の液位を監視することができる。
【0337】
このようにして得られた濃度及び液位を示す信号が不図示のD/A変換器を介して、図6の実施例に示したと同様に、出力バッファ回路へと出力され、ここからアナログ出力として不図示の自動車のエンジンの燃焼制御などを行うメインコンピュータ(ECU)へと出力される。液温対応のアナログ出力電圧値もメインコンピュータ(ECU)へと出力される。一方、濃度及び液位を示す信号は、必要に応じてデジタル出力として取り出して、表示、警報その他の動作を行う機器へと入力することができる。
【0338】
更に、液温検知部534から入力される液温対応出力値Tに基づき、尿素水溶液が凍結する温度(−13℃程度)の近くまで温度低下したことが検知された場合に警告を発するようにすることができる。
【0339】
図51は、本発明による流体識別装置を、アンモニア発生量の測定装置に用いた実施例を示す模式的断面図である。
なお、図51に示したアンモニア発生量の測定装置1は、基本的には図1から図14に示した実施例における液種識別装置1と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明は省略する。なお、符号301は端子ピンである。
【0340】
上述したように、液種対応第1電圧値V01は主として液体の熱伝導率による影響を受け、液種対応第2電圧値V02は主として液体の動粘度による影響を受ける。よって、以下、液種対応第1電圧値を熱伝導率対応電圧値V01、液種対応第2電圧値を動粘度対応電圧値V02と呼ぶ。
【0341】
上記熱伝導率対応電圧値V01および動粘度対応電圧値V02は、被測定液体USの尿素濃度および蟻酸アンモニウム濃度が変化するにつれて変化する。
本実施例は、熱伝導率対応電圧値V01と動粘度対応電圧値V02との関係が、混合溶液の尿素濃度および蟻酸アンモニウム濃度により異なることを利用して、尿素濃度および蟻酸アンモニウム濃度を測定することによって、混合溶液から発生するアンモニアの量を測定するものである。すなわち、熱伝導率対応電圧値V01と動粘度対応電圧値V02とは液体の互いに異なる物性、すなわち熱伝導率と動粘度との影響を受け、これらの関係は混合溶液の尿素濃度および蟻酸アンモニウム濃度により互いに異なるので、以上のような濃度検知が可能となる。
【0342】
すなわち、本発明の実施例では、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%と尿素濃度X重量%の比率Y/X=0、すなわち、蟻酸アンモニウム濃度0%であり尿素濃度既知の幾つかの尿素水溶液(参照尿素水溶液)について、熱伝導率対応電圧値V01と動粘度対応電圧値V02との関係を示す第1検量線と、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%と尿素濃度X重量%の比率Y/X=c0(一定)である幾つかの混合溶液について、熱伝導率対応電圧値V01と動粘度対応電圧値V02との関係を示す第2検量線を予め得ておき、これらの検量線をマイコン72の記憶手段に記憶しておく。第1および第2の検量線の例を、図52に示す。
【0343】
ここで、尿素濃度Xa%、蟻酸アンモニウム濃度Ya%の混合溶液である被測定液体USに対し、熱伝導率対応電圧値V01aおよび動粘度対応電圧値V02aが得られたとする。
【0344】
もし、尿素のみが含まれる溶液(尿素水溶液)であるならば、図52のように熱伝導率対応電圧値がV01aの時、動粘度対応電圧値はV02bとなるはずである。このように
、熱伝導率対応電圧値V01と動粘度対応電圧値V02の組み合わせが第1検量線と適合しないということは、溶液中に尿素だけでなく、蟻酸アンモニウムも混在していることを示している。
【0345】
予め得ている第1および第2の検量線から、熱伝導率対応電圧値がV01aの時、Y/X=0の場合の仮の第1動粘度対応電圧値はV02b、Y/X=c0の場合の仮の第2動粘度対応電圧値はV02cとなることがわかる。
【0346】
そして、熱伝導率対応電圧値がV01aかつ動粘度対応電圧値がV02aとなる、Y/X=cの値を比例演算を用いて算出する。すなわち、
c=c0(V02a−V02b)/ V02c
から求める。
【0347】
なお、図52の第1および第2の検量線は、液温によって変化するので、複数の液温に応じた検量線を予め得ておき、マイコン72の記憶手段に記憶しておき、使用する検量線を液温に応じて適宜変更する必要がある。
【0348】
Y/X=cであることが判明されると、あらかじめ記憶しておいたY/X=cの場合における、熱伝導率対応電圧値V01と尿素濃度Xの検量線(比較曲線)から、熱伝導率対応電圧値V01がV01aとなるXの値を決定することができる。さらに、決定されたXに応じて、Yの値も決定するものである。
【0349】
なお、Y/X=cにおける熱伝導率対応電圧値V01と尿素濃度Xの検量線(比較曲線)は、あらかじめ記憶していたいくつかのcの値に対する検量線から補間計算を行って設定してもよい。
【0350】
そして、算出された尿素濃度X重量%と蟻酸アンモニウム濃度Y重量%と混合溶液の量Qとから混合溶液中の尿素量A=Q×X/100および蟻酸アンモニウム量B=Q×Y/100を算出する。なお、混合溶液の量Qは質量(単位:kgやgなど)としてもよいし、容量(単位:ccやlなど)としてもよい。
【0351】
そして、尿素濃度X重量%、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%、尿素量A、蟻酸アンモニウム量Bの4つのパラメータから以下の式、
アンモニア発生量G=X×A+Y×B
によって、アンモニア発生量を算出することができる。
【0352】
図53は、本発明による流体識別装置を、アンモニア発生量の測定装置に用いた別の実施例を示す模式的断面図であり、識別センサーモジュール2の他に差圧センサー300を備えている。ここで、差圧センサー300は従来から用いられている差圧センサーを利用することができる。
【0353】
なお、図53に示したアンモニア発生量の測定装置1は、基本的には図1から図14に示した実施例における液種識別装置1と同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明は省略する。
【0354】
図53に示されているように、回路基板41aの回路には、上記差圧センサー300の端子ピン31が接続されている。
差圧センサー300の第1の導入口300aにおける液圧をp1、第2の導入口300bにおける液圧をp2、第1の導入口300aと第2の導入口300bとの高低差をL、被識別液体の密度をρとしたときに、p1−p2=ρ×Lの関係があるため、差圧センサー300によってρに依存した電気的出力である密度対応電圧値V03を測定することができる。
【0355】
ここで、上述したのと同様に、識別センサーモジュール2を用いて、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%と尿素濃度X重量%の比率Y/X=0、すなわち、蟻酸アンモニウム濃度0%であり尿素濃度既知の幾つかの尿素水溶液(参照尿素水溶液)について、熱伝導率対応電圧値V01を測定し、熱伝導率対応電圧値V01と密度対応電圧値V03との関係を示す第3検量線と、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%と尿素濃度X重量%の比率Y/X=c0(一定)である幾つかの混合溶液について、熱伝導率対応電圧値V01を測定し、熱伝導率対応電圧値V01と密度対応電圧値V03との関係を示す第4検量線を予め得ておき、これらの検量線をマイコン72の記憶手段に記憶しておく。第3および第4の検量線の例を、図54に示す。
【0356】
なお、本実施例においては、動粘度対応電圧値V02を得る必要がないため、発熱体への電圧印加の開始から比較的短い時間である第1の時間経過時において、パルス電圧の印加を終了してもよい。すなわち、第1の時間がパルス電圧の印加時間としてもよい。これによって、測定時間を短縮することができる。
【0357】
ここで、尿素濃度Xa%、蟻酸アンモニウム濃度Ya%の混合溶液である被測定液体USに対し、熱伝導率対応電圧値V01aおよび密度対応電圧値V03aが得られたとする。
【0358】
もし、尿素のみが含まれる溶液(尿素水溶液)であるならば、図54のように熱伝導率対応電圧値がV01aの時、密度対応電圧値はV03bとなるはずである。このように、
熱伝導率対応電圧値V01と密度対応電圧値V03の組み合わせが第3検量線と適合しな
いということは、溶液中に尿素だけでなく、蟻酸アンモニウムも混在していることを示している。
【0359】
予め得ている第3および第4の検量線から、熱伝導率対応電圧値がV01aの時、Y/X=0の場合は密度対応電圧値はV03b、Y/X=c0の場合は密度対応電圧値はV03cとなることがわかる。
【0360】
そして、熱伝導率対応電圧値がV01aかつ密度対応電圧値がV03aとなる、Y/X=cの値を比例演算を用いて算出する。すなわち、
c=c0(V03a−V03b)/ V03c
から求める。
【0361】
なお、図54の第3および第4の検量線は、液温によって変化するので、複数の液温に応じた検量線を予め得ておき、使用する検量線を液温に応じて適宜変更する必要がある。
そして、Y/X=cの値から、熱伝導率対応電圧値V01がV01aとなるXの値及びYの値が決定することにより、上述したのと同様に、アンモニア発生量を算出することができる。
【0362】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、パルス電圧P、サンプリング回数などは適宜変更することができるなど本発明の
目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0363】
【図1】図1は本発明による流体識別装置を一例として、液種識別装置に用いた実施例を示す模式的断面図である。
【図2】図1の液種識別装置の識別センサーモジュールの模式的断面図である。
【図3】図1の液種識別装置の液種検知部を示す模式的断面図である。
【図4】図1の液種識別装置の使用状態を示す模式的断面図である。
【図5】傍熱型液種検知部の薄膜チップの分解斜視図である。
【図6】液種識別ための回路の構成図である。
【図7】発熱体に印加される単一パルス電圧Pとセンサー出力Qとの関係を示す図である。
【図8】尿素濃度が所定範囲内の尿素水溶液で得られる液種対応第1電圧値V01の範囲内には、或る砂糖濃度範囲内の砂糖水溶液の液種対応第1電圧値が存在することを示す図である。
【図9】尿素水溶液および砂糖水溶液および水についての液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02を、尿素濃度30%の尿素水溶液のものを1.000とした相対値で示す図である。
【図10】第1の検量線の例を示す図である。
【図11】第2の検量線の例を示す図である。
【図12】液温対応出力値Tの一例を示す図である。
【図13】液種対応第1電圧値V01および液種対応第2電圧値V02の組み合わせによる所定液体識別の判定基準が温度に応じて変化することを模式的に示すグラフである。
【図14】液種識別プロセスを示すフロー図である。
【図15】図15は、カバー部材2dを適用した流体識別装置として、ガソリン識別装置に適用した実施例を示す断面図である。
【図16】図16に、図15の実施例(カバー部材2dあり)の流体識別装置で、測定部の傾角を変化させた時に得られたガソリン種類対応電圧値V0の変化を示すグラフである。
【図17】図17は、比較形態で傾角を変化させた時に得られたガソリン種類対応電圧値V0の変化を示すグラフである。
【図18】図18は、図6の並列回路の代わりに、直列回路を用いた実施例について、その回路の構成概略図である。
【図19】図19は、図18に示される切替えスイッチ14を、a側に接続した状態で得られる出力A(すなわち、液体温度検知結果)の一例を示すグラフである。
【図20】図20は、本発明の別の実施例の識別センサーモジュールの断面図である。
【図21】図21は、図20の実施例の識別センサーモジュールを示しており、図21(A)は、図20の内部を示す概略図、図21(B)は、図20のA方向から見た部分拡大断面図である。
【図22】図22は、本発明の別の実施例の識別センサーモジュールを示しており、図22(A)は、本発明の別の実施例の識別センサーモジュールの斜視図、図22(B)は、図22(A)の識別センサーモジュールの取り付け状態を示す概略図である。
【図23】図23は、図22の識別センサーモジュールをB方向から見た縦断面図である。
【図24】図24は、本発明の流体識別装置を用いた別の実施例を説明するグラフである。
【図25】図25は、本発明の流体識別装置を用いた別の実施例を説明するグラフである。
【図26】図26は、本発明の流体識別装置を、流量計として用いる実施例の回路構成図である。
【図27】図27は、本発明の軽油の液種識別装置の実施例の概略断面図である。
【図28】図28は、本発明の軽油の液種識別装置を用いた液種識別方法を示す時間−電圧の関係を示すグラフである。
【図29】図29は、動粘度とセンサー出力の関係を示すグラフである。
【図30】図30は、動粘度と留出温度の関係を示すグラフである。
【図31】図31は、センサー出力と留出温度の関係を示すグラフである。
【図32】図32は、本発明の軽油の液種識別装置を用いた液種識別方法を示す検量線を示すグラフである。
【図33】図33は、軽油の蒸留性状を示すグラフである。
【図34】図34は、本発明の流体識別装置を、流量・液種検知装置として用いる場合の別の実施例の概略図である。
【図35】図35は、図34の流量・液種検知装置を用いた流量検知方法を示す検量線を示すグラフである。
【図36】図36は、本発明の流体識別装置を液種検知装置として用いた場合の別の実施例の全体の分解斜視図である。
【図37】図37は、図36の液種検知装置の液種検知室の分解斜視図である。
【図38】図38は、図36の液種検知装置の液種検知室の検知状態を説明する概略図である。
【図39】図39は、本発明の尿素溶液の尿素濃度識別装置を、自動車システムに適用した実施例概略図である。
【図40】図40は、本発明の流体識別装置を、タンク内液体の漏れ検知装置に用いた実施例を説明するための一部破断斜視図である。
【図41】図41は、この実施例の漏れ検知装置の一部省略断面図である。
【図42】図42は、パルス電圧発生回路から薄膜発熱体に印加される電圧Qと漏れ検知回路の電圧出力Sとの関係を示すタイミング図である。
【図43】図43は、薄膜発熱体に印加された電圧Q と漏れ検知回路の電圧出力Sとの関係の具体例を示す図である。
【図44】図44は、液位変化速度と積分値∫(S0−S)dtとの関係の具体例を示す図である。
【図45】図45は、液位変化速度と液位対応出力の時間変化率P’との関係の具体例を示す図である。
【図46】図46は、比重検知のフロー図である。
【図47】図47は、本発明の流体識別装置を液位検出装置として用いた別の実施例を示す分解斜視図である。
【図48】図48は、図47の一部省略断面図である。
【図49】図49は、本発明の流体識別装置のタンクへの取り付け状態を示す図である。
【図50】図50は、マイコンでの液位検出プロセスを示すフロー図である。
【図51】図51は、本発明による流体識別装置を、アンモニア発生量の測定装置に用いた実施例を示す模式的断面図である。
【図52】図52は、第1と第2の検量線の例を示す図である。
【図53】図53は、本発明による流体識別装置を、アンモニア発生量の測定装置に用いた別の実施例を示す模式的断面図であり、識別センサーモジュール2の他に差圧センサー300を備えた場合の、アンモニア発生量の測定装置を示す模式的断面図である。
【図54】図54は、第3と第4の検量線の例を示す図である。
【符号の説明】
【0364】
1 液種識別装置
2 識別センサーモジュール
2a 基体
2b Oリング
2c Oリング
2d カバー部材
3 液位センサーモジュール
4 防水ケース
4a 取り付け部
5 防水配線
6 センサーホルダー
6a センサー装着孔
7 固定ネジ
8 フィルターホルダー
9 フィルター
11 流量・液種検知センサー装置
12 液種識別装置本体
12a フィルター
12b フィルタカバー
13 抵抗体
13a センサーホルダー
13b 測定細管
14 切替えスイッチ
15 回路収容部
15a 漏れ検知制御部
16 キャップ
16a 通気路
17 配線
18 軽油流入路
20 容器
20A 容器本体部
20A1 膨出部
20A2 膨出部
20B 容器蓋体部
21 第1の液種液温検知部
21a 第1の液種液温検知用薄膜チップ
21a1 チップ基板
21a2 第1の感温体
21a3 層間絶縁膜
21a4 第1の発熱体
21a5 発熱体電極
21a6 保護膜
21a7 電極パッド
21c 金属製フィン
21d ボンディングワイヤ
21e 外部電極端子
22 第2の液種液温検知部
22a 第2の液種液温検知用薄膜チップ
22a2 第2の感温体
22a4 第2の発熱体
22c 金属製フィン
22e 外部電極端子
23 合成樹脂モールド
23a 合成樹脂
24 被測定液体導入路
25 液種検知回路基板
26 カスタムIC
27 端子ピン
31 端子ピン
32 流量検知用感温体
32a 温度補償用感温体
33 薄膜発熱体
36 フィン
40 測定部
41 電源回路部
41a 回路基板
42 流量検知部
44 流量検知用フィンプレート
44a 流体温度検知用フィンプレート
49 電極端子
49a 電極端子
50 親水性膜
51 コネクター
54 軽油排出口
62 抵抗体
63 電圧計
64 抵抗体
65 A/Dコンバータ
66 抵抗体
68 ブリッジ回路
70 差動増幅回路
71 液温検知増幅器
72 マイコン
73 ブリッジ回路
74a 第1のスイッチ
74b 第2のスイッチ
75 差動増幅回路
76 出力バッファ回路
77 積分回路
78 V/F変換回路
79 温度補償型水晶振動子
80 基準周波数発生回路
81 トランジスタ
82 パルスカウンター
83 マイクロコンピュータ
84 メモリ
85 表示部
90 電源回路
92 抵抗体
94 可変抵抗体
100 タンク
101 壁部材
110 尿素水用液供給ポンプ
116 触媒装置
130 尿素溶液供給機構
132 尿素溶液タンク
133 第1の温度センサー
134 第2の温度センサー
135 ヒーター
136 第3の温度センサー
137 圧力センサー
138 開閉弁
138a 弁体
140 NOxセンサー
142 NOxセンサー
200 ASIC基板
202 パッキン
204 コネクター
206 固定用部材
208 固定ネジ
210 パッキン
212 被識別流体
300 差圧センサー
300a 第1の導入路
300b 第2の導入路
301 端子ピン
400 軽油液種識別室
402 液種識別センサー用開口部
404 液種識別センサー
405 液種識別センサーヒーター
406 液種検知センサーヒーター
408 リード電極
410 液温センサー
412 モールド樹脂
416 逆支弁
417 主流路開閉弁
418 オリフィス
419 センサー制御装置
420 流量・液種検知装置
422 主流路
424 副流路
426 副流路開閉弁
428 ECU
430 液種検知装置
432 液種検知装置本体
434 液種検知室
436 第1の流路
438 第2の流路
440 流体導入路
442 流体排出口
444 液種検知室用蓋部材
446 液種検知センサー用開口部
448 液種検知センサー
450 回路基板部材
452 外蓋部材
454a 取り付けフランジ
454b 取り付けフランジ
456 流れ制御板
458 板部材
460 側板部材
462 側板部材
464 被覆板部材
466 流体流入口
468 流体流出口
470 側壁
472 液温センサー
473 液温センサーヒーター
474 リード電極
480 自動車システム
482 尿素濃度識別装置
490 タンク
492 計量口
494 注液口
496 天板
498 給液口
500 側板
502 底板
504 漏れ検知装置
506 液導入出部
508 流量測定部
510 液溜め部
512 鞘管
520 尿素水用液タンク
522 開口部
523 液位検出装置
524 入口配管
526 出口配管
528 識別センサー部
530 圧力センサー
532 支持部
540 回路基板
542 蓋部材
544 配線
546 配線
548 配線
550 コネクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温体、及び該感温体の近傍に配置された発熱体を備えた流体検知部を少なくとも2つ、容器内に収容したことを特徴とする識別センサーモジュール。
【請求項2】
前記少なくとも2つの流体検知部と接続された流体検知回路と、
前記流体検知回路の出力に基づいて、被識別流体の識別を行う識別演算部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の識別センサーモジュール。
【請求項3】
前記識別演算部は、前記少なくとも2つの流体検知部のいずれか一つに具備された発熱体に対する通電を選択し、それに応じて、通電を選択された発熱体を含まない流体検知部のいずれか一つに具備された感温体による流体温度検知信号を選択し、選択された流体温度検知信号と前記流体検知回路の出力とに基づいて、前記被識別流体の識別を行うことを特徴とする請求項2に記載の識別センサーモジュール。
【請求項4】
前記少なくとも2つの流体検知部に具備された発熱体に対する通電経路にそれぞれスイッチが存在し、
前記識別演算部は、前記少なくとも2つの流体検知部に具備されたスイッチのいずれか一つの閉状態を選択することで、前記少なくとも2つの流体検知部に具備された発熱体のいずれか一つに対する通電を選択することを特徴とする請求項2から3のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項5】
前記識別演算部は、前記少なくとも2つの流体検知部のいずれか一つに具備された発熱体に対する通電を選択し、かつ、通電を選択された発熱体を含まない流体検知部のいずれか一つに具備された感温体による液温検知信号を選択して、前記被測定流体の識別を行う流体識別を、複数の発熱体に対する通電の選択を順番に行うことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項6】
前記識別演算部は、前記少なくとも2つの流体検知部のいずれか一つに具備された発熱体に対する通電を選択し、かつ、通電を選択された発熱体を含まない流体検知部のいずれか一つに具備された感温体による液温検知信号を選択したときの、前記液種検知回路の出力に基づき算出される特性値群を、複数の発熱体に対する通電の選択と感温体による液温検知信号の選択との組み合わせにおいて得、
対応するもの同士を平均して得られる平均特性値群を用いて前記被測定液体の識別を行うことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項7】
前記識別演算部は、前記少なくとも2つの流体検知部のいずれか一つに具備された発熱体に対する通電を選択し、かつ、通電を選択された発熱体を含まない流体検知部のいずれか一つに具備された感温体による液温検知信号を選択したときの、前記液種検知回路の出力に基づき算出される特性値群を複数の発熱体に対する通電の選択と感温体による液温検知信号の選択との組み合わせにおいて得、
対応するもの同士の和をとることで得られる和特性値群を用いて前記被測定液体の識別を行うことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項8】
前記識別演算部は、前記少なくとも2つの流体検知部のいずれか一つに具備された発熱体に対する通電を選択し、かつ、通電を選択された発熱体を含まない流体検知部のいずれか一つに具備された感温体による液温検知信号を選択したときの、前記液種検知回路の出力に基づき算出される特性値群を複数の発熱体に対する通電の選択と感温体による液温検知信号の選択との組み合わせにおいて得、
対応するもの同士の差をとることで得られる差特性値群のうち少なくとも一つに基づき
、前記少なくとも2つの流体検知部のうち少なくとも一つの欠陥の有無を判別することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項9】
前記流体検知部が、容器から被識別流体側に露出しないように、容器の被識別流体側に接して配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項10】
前記容器から、被識別流体側に、流体検知部の少なくとも一部が露出するように配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項11】
前記流体検知部の露出部分が、親水性膜またはフィルターで覆われていることを特徴とする請求項10に記載の識別センサーモジュール。
【請求項12】
前記容器が、被識別流体側に位置する容器本体と、被識別流体側と反対側に位置する蓋部とから構成されていることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項13】
前記容器本体が、金属製であることを特徴とする請求項12に記載の識別センサーモジュール。
【請求項14】
前記流体検知回路の一部と、識別演算部とか、ICに組み込まれていることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項15】
前記流体検知部が、チップ基板上に流体検知用感温体を薄膜により形成した流体検知用薄膜チップを、その一面が露出するようにして合成樹脂モールドに埋め込んで構成したものであって、
前記流体検知用薄膜チップの一面が、前記容器の被識別流体側に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1から14のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項16】
前記少なくとも2つの流体検知部が、
第1の感温体、及び該第1の感温体の近傍に配置された第1の発熱体を備えた第1の流体検知部と、
第2の感温体、及び該第2の感温体の近傍に配置された第2の発熱体を備えた第2の流体検知部によって構成されていることを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項17】
前記識別演算部は、前記第1の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第2の感温体による液温検知信号を選択して前記被測定流体の識別を行う第1の流体識別と、前記第2の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第1の感温体による液温検知信号を選択して前記被測定流体の識別を行う第2の液種識別とを交互に実行することを特徴とする請求項16に記載の識別センサーモジュール。
【請求項18】
前記識別演算部は、前記第1の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第2の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第1の特性値群と、前記第2の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第1の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第2の特性値群との、対応するもの同士を平均して得られる平均特性値群を用いて前記被測定流体の識別を行うことを特徴とする請求項16に記載の識別センサーモジュール。
【請求項19】
前記識別演算部は、前記第1の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第2の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第1の特性値群と、前記第2の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第1の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第2の特性値群との、対応するもの同士の和をとることで得られる和特性値群を用いて前記被測定流体の識別を行うことを特徴とする請求項16に記載の識別センサーモジュール。
【請求項20】
前記識別演算部は、前記第1の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第2の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第1の特性値群と、前記第2の発熱体に対する通電を選択し且つ前記第1の感温体による液温検知信号を選択したときの前記流体検知回路の出力に基づき算出される第2の特性値群との、対応するもの同士の差をとることで得られる差特性値群のうちの少なくとも1つに基づき、前記第1及び第2の流体検知部のいずれかにおける欠陥の有無を判別することを特徴とする請求項16から19のいずれかに記載の識別センサーモジュール。
【請求項21】
請求項1から20のいずれかに記載の識別センサーモジュールを備えることを特徴とする流体識別装置。
【請求項22】
前記識別センサーモジュールが、防水ケースに取り付けられており、
前記防水ケースから、被識別流体側に、容器の流体検知部側が露出するように配置されていることを特徴とする請求項21に記載の流体識別装置。
【請求項23】
前記防水ケースから、被識別流体側に、容器の流体検知部側が突出するように配置されていることを特徴とする請求項22に記載の流体識別装置。
【請求項24】
前記容器が、被識別流体側に位置する容器本体と、被識別流体側と反対側に位置する蓋部とから構成され、
前記容器本体と蓋部との接合部が、防水ケース内に配置されていることを特徴とする請求項22から23のいずれかに記載の流体識別装置。
【請求項25】
前記防水ケースが、前記容器の被識別流体側を覆うカバー部材を備えるとともに、
前記カバー部材内部には、被識別流体の流通経路が形成されていることを特徴とする請求項22から24のいずれかに記載の流体識別装置。
【請求項26】
前記防水ケースに、被識別流体の流体レベルを検知する流体レベルセンサーモジュールが取り付けられていることを特徴とする請求項22から25のいずれかに記載の流体識別装置。
【請求項27】
前記防水ケース内には、電源回路部が収容されていることを特徴とする請求項22から26のいずれかに記載の流体識別装置。
【請求項28】
前記防水ケースから防水配線が延出していることを特徴とする請求項22から27のいずれかに記載の流体識別装置。
【請求項29】
前記被識別流体の識別が、流体種識別、濃度識別、流体の有無識別、流体の温度識別、流量識別、流体の漏れ識別、流体レベル識別のうち、少なくとも一つの識別であることを特長とする請求項21から28のいずれかに記載の流体識別装置。
【請求項30】
前記被識別流体が、炭化水素系液体、アルコール系液体、尿素水溶液のいずれかであることを特徴とする請求項21から29のいずれかに記載の流体識別装置。
【請求項31】
前記少なくとも2つの流体検知部に具備された感温体のそれぞれの電気的特性値に基づいて、
前記流体の流量の検知を行うとともに、前記少なくとも2つの流体検知部のそれぞれの間の導通性の測定を行うことによって、流体種の判別を行うように構成したことを特徴とする請求項29に記載の流体識別装置。
【請求項32】
前記流体識別装置を、流体種識別室内に配置して、
前記流体検知部の発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記流体検知部の発熱体によって、流体種識別室内に一時滞留した被識別流体を加熱し、
前記流体検知部の感温体の初期温度とピーク温度との間の温度差に対応する電圧出力差によって、被識別流体の流体種を識別するように構成したことを特徴とする請求項29に記載の流体識別装置。
【請求項33】
被識別流体が流通する主流路と、
前記主流路から分岐した副流路と、
前記副流路に設けられた前記流体識別装置と、
前記副流路に設けられ、前記流体識別装置への被識別流体の流通を制御する副流路開閉弁と、
前記流体識別装置と副流路開閉弁を制御する制御装置を備え、
前記制御装置が、
前記被識別流体の識別を行う際には、前記副流路開閉弁を弁閉して、被識別流体を流体識別装置に一時滞留させて、被識別流体の識別を行うとともに、
前記被識別流体の流量を検知する際には、前記副流路開閉弁を弁開して、被識別流体を流体識別装置に流通させて、被識別流体の流量を検知するように制御するように構成されていることを特徴とする請求項29に記載の流体識別装置。
【請求項34】
被識別流体を一時滞留させる流体識別検知室と、
前記流体識別検知室内に配設された前記流体識別装置の識別センサーモジュールと、
前記流体識別検知室内に配設され、前記識別センサーモジュールを囲繞する流れ制御板とを備えることを特徴とする請求項29に記載の流体識別装置。
【請求項35】
前記流体識別装置を、流体種識別室内に配置して、
前記流体検知部の発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記流体検知部の発熱体によって、流体種識別室内に一時滞留した被識別流体を加熱し、
前記流体検知部の感温体の初期温度とピーク温度との間の温度差に対応する電圧出力差によって、被識別流体の濃度を識別するように構成したことを特徴とする請求項29に記載の流体識別装置。
【請求項36】
タンク内の被識別流体が下端から導入出される測定細管に、前記流体識別装置が配設され、
前記少なくとも2つの流体検知部の感温体によって感知される温度の差に対応する出力を得て、
前記出力を用いて算出される被識別流体の流量に対応する流量対応値に基づいて、タンク内の被識別流体の比重を検知し、
得られた比重値を用いて、前記流体レベルセンサーモジュールによる被識別流体の流体レベルの測定を行い、流体レベルの時間変化率の大きさに基づいて、タンク内の被識別流体の漏れを検知することを特徴とする請求項29に記載の流体識別装置。
【請求項37】
前記流体レベルセンサーモジュールにより、被識別流体の流体圧を検出し、流体圧に基
づき被識別流体が所定密度の流体であるとした場合の仮の流体レベル値を算出し、
前記流体検知部の発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記流体検知部の発熱体によって、被識別流体を加熱し、
前記流体検知部の感温体の初期温度とピーク温度との間の温度差に対応する電圧出力差によって、被識別流体の濃度を識別し、
識別された被識別流体の濃度と密度の関係とに基づいて、被識別流体の密度値を得て、
前記仮の流体レベル値と密度値とに基づいて、被識別流体の流体レベルを算出するように構成したことを特徴とする請求項29に記載の流体識別装置。
【請求項38】
請求項21から28のいずれかに記載の流体識別装置を備え、尿素水、蟻酸アンモニウム水、または、それらの混合水からなる被識別液体から発生するアンモニアの量を測定するアンモニア発生量の測定装置であって、
発熱体と該発熱体の近傍に配置された感温体とを備えたセンサーを用いて、
前記発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記発熱体によって、被測定液体を加熱し、前記感温体の電気抵抗に対応する電気的出力によって、
前記被測定液体の熱伝導率に依存する感温体の電気的出力である熱伝導率対応出力値を測定するとともに、
差圧センサーを用いて、被測定液体の密度に依存する電気的出力である密度対応出力値を測定して、
前記熱伝導率対応出力値と密度対応出力値の関係から、被測定液体に含まれる尿素濃度X重量%、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%をそれぞれ算出して、
前記被測定液体中に含まれる尿素量A、蟻酸アンモニウム量Bを濃度と被測定液体の量から算出して、
下記の式、すなわち、
アンモニア発生量=X×A+Y×B
からアンモニア発生量を測定することを特徴とするアンモニア発生量の測定装置。
【請求項39】
請求項21から28のいずれかに記載の流体識別装置を備え、尿素水、蟻酸アンモニウム水、または、それらの混合水からなる被識別液体から発生するアンモニアの量を測定するアンモニア発生量の測定装置であって、
発熱体と該発熱体の近傍に配置された感温体とを備えたセンサーを用いて、
前記発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記発熱体によって、被測定液体を加熱し、前記感温体の電気抵抗に対応する電気的出力によって、
前記被測定液体の熱伝導率に依存する感温体の電気的出力である熱伝導率対応出力値を測定するとともに、
差圧センサーを用いて、被測定液体の密度に依存する電気的出力である密度対応出力値を測定して、
前記熱伝導率対応出力値と密度対応出力値の関係から、被測定液体に含まれる尿素濃度X重量%、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%をそれぞれ算出して、
前記被測定液体中に含まれる尿素量A、蟻酸アンモニウム量Bを濃度と被測定液体の量から算出して、
下記の式、すなわち、
アンモニア発生量=X×A+Y×B
からアンモニア発生量を測定することを特徴とするアンモニア発生量の測定装置。
【請求項40】
請求項21から28のいずれかに記載の流体識別装置を用いて、尿素水、蟻酸アンモニウム水、または、それらの混合水からなる被識別液体から発生するアンモニアの量を測定するアンモニア発生量の測定方法であって、
発熱体と該発熱体の近傍に配置された感温体とを備えたセンサーを用いて、
前記発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記発熱体によって、被測定液体を加熱
し、前記感温体の電気抵抗に対応する電気的出力によって、
前記被測定液体の熱伝導率に依存する感温体の電気的出力である熱伝導率対応出力値を測定するとともに、被測定液体の動粘度に依存する感温体の電気的出力である動粘度対応出力値を測定して、
前記熱伝導率対応出力値と動粘度対応出力値の関係から、被測定液体に含まれる尿素濃度X重量%、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%をそれぞれ算出して、
前記被測定液体中に含まれる尿素量A、蟻酸アンモニウム量Bを濃度と被測定液体の量から算出して、
下記の式、すなわち、
アンモニア発生量=X×A+Y×B
からアンモニア発生量を測定することを特徴とするアンモニア発生量の測定方法。
【請求項41】
請求項21から28のいずれかに記載の流体識別装置を用いて、尿素水尿素水、蟻酸アンモニウム水、または、それらの混合水からなる被測定液体から発生するアンモニアの量を測定するアンモニア発生量の測定方法であって、
発熱体と該発熱体の近傍に配置された感温体とを備えたセンサーを用いて、
前記発熱体にパルス電圧を所定時間印加して、前記発熱体によって、被測定液体を加熱し、前記感温体の電気抵抗に対応する電気的出力によって、
前記被測定液体の熱伝導率に依存する感温体の電気的出力である熱伝導率対応出力値を測定するとともに、
差圧センサーを用いて、被測定液体の密度に依存する電気的出力である密度対応出力値を測定して、
前記熱伝導率対応出力値と密度対応出力値の関係から、被測定液体に含まれる尿素濃度X重量%、蟻酸アンモニウム濃度Y重量%をそれぞれ算出して、
前記被測定液体中に含まれる尿素量A、蟻酸アンモニウム量Bを濃度と被測定液体の量から算出して、
下記の式、すなわち、
アンモニア発生量=X×A+Y×B
からアンモニア発生量を測定することを特徴とするアンモニア発生量の測定方法。
【請求項42】
請求項21から28のいずれかに記載の流体識別装置を用いて、被識別流体の識別を行うことを特徴とする流体識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【公開番号】特開2007−292730(P2007−292730A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−32627(P2007−32627)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】