説明

流動乾燥装置

【課題】 乾燥室内に設けた遠赤外線放射体に高圧空気を噴射して、乾燥機内の被乾燥物から飛散する微粒子を含む塵埃が遠赤外線放射体の表面に焼き付いたり、火災の発生を防止することができる流動乾燥装置を提供する。
【解決手段】 流動乾燥装置1は、水平方向に終始端に渡って凹溝構成で、底面が小孔開口した気体噴出面5からなる被乾燥物aを通風しながら搬送する乾燥物搬送体2と、乾燥物搬送体2の始端側には乾燥物搬送体上に被乾燥物を連続的に投入する供給装置9と、乾燥物搬送体2の上部には被乾燥物に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体10と、送風装置11を備えている。遠赤外線放射体10の表面に高圧空気を噴射して塵埃を吹き飛ばす高圧空気噴射ダクト23を、遠赤外線放射体の近傍位置に設ける。高圧空気噴射ダクト23は、遠赤外線放射体10の長手方向に沿う狭幅長孔からなる高圧空気噴射口24を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に終始端に渡って凹溝構成で、底面が小孔開口した気体噴出面からなる被乾燥物を通風しながら搬送する乾燥物搬送体に被乾燥物を連続的に投入し、その被乾燥物に遠赤外線を照射しながら被乾燥物に通風し、被乾燥物が通風を受け浮上、沈降を繰り返しながら乾燥物搬送体の終端で表層の被乾燥物が順次横溢する流動乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面状をなした流動盤を乾燥機本体内に敷設して上部に流動室を、下部に送風室を構成すると共に流動盤の表面には乾燥風が噴気する噴気孔を多数開口させ、流動盤上に供給された乾燥物を噴気孔から一斉に噴気する乾燥風で一定厚さの流動層を形成させながら排出側へ移行する間に乾燥を終了させる流動乾燥機は既に公知である。
【0003】
また、乾燥室内の空気を減圧状態に保持しながら乾燥機室内に多量の遠赤外線を放射し、この乾燥室内の空気を大量に循環させながら乾燥室内に配設された通気性のある搬送装置上の籾を層状に分散状態で搬送し、循環空気流を籾層の下方から上方に貫通させて籾と循環空気流とを十分に接触させて籾を乾燥させる方法は特開平11―172997号公報に記載されている。
【0004】
さらに特開2002―22362公報では、乾燥室内部の水平方向に設けられた穀粒保持体の穀粒支持面を多数の小孔を開口した気体噴出面で形成し、気体噴出面の一方に堰部材を、他方の上流から穀粒を供給して穀粒層を形成し、この穀粒層の上方に遠赤外線ヒータを配置して穀粒に遠赤外線を放射しながら、穀粒保持体の支持面の小孔を開口した気体噴出面から気体を貫入して撹拌、流動化させながら気体噴出面の堰部材の高さによって穀粒の厚さを調節しながら穀粒を乾燥する構成も既に公知である。なお、特開2001−50665公報は、穀物乾燥機における遠赤外線放射体の表面に塵埃が付着堆積するのを防止する手段として、遠赤外線放射体の上部に山形状の覆いを設けることを紹介している。
【0005】
【特許文献1】特開平11―172997号公報
【特許文献2】特開2002―22362公報
【特許文献3】特開2001−50665公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
底面が小孔開口した気体噴出面上の被乾燥物を下方から上方に向けて乾燥風を通風し搬送しながら乾燥する流動乾燥機では、乾燥風が被乾燥物に十分に接触するために被乾燥物から大量の微粒子を含む塵埃が乾燥風に乗り、機外に放出されている。
【0007】
現在多くの流動乾燥装置においては、被乾燥物から乾燥風に乗って排出される微粒子はそのまま機外に排出されるか、乾燥風と同等の風量を処理できる能力をもった集塵装置によって微粒子を回収しており、集塵装置の設置面積、稼動動力、稼動時の騒音、設備のコスト、集塵装置のメンテナンス等が問題となっている。
【0008】
また、乾燥風を循環して被乾燥物に通風している流動乾燥装置においては、被乾燥物に含まれる微粒子を含む塵埃が循環風に乗って乾燥機内を周回するのを防止する装置が備わっていないため、機内に微粒子を含む塵埃が、高温となる遠赤外線放射体の表面に付着して焦げ付いて遠赤外線の放射を妨げたり、火災の発生の危険性が問題となっている。なお、特開2001−50665公報が紹介するように、遠赤外線放射体の上部に山形の覆いを施したものでは、遠赤外線放射体の表面に、浮遊するような塵埃の付着を防止することは困難である。
【0009】
そこで、本発明は、被乾燥物の下方から上方に通気し、また遠赤外線を被乾燥物に照射することで被乾燥物を流動状態として均一にしかも早く乾燥させることができるとともに、遠赤外線放射体に高圧空気を噴射する高圧空気噴射ノズルを設けたことにより、乾燥機内の被乾燥物から飛散する微粒子を含む塵埃が遠赤外線放射体の表面に焼き付いたり、火災の発生を防止することができる流動乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は請求項1ないし請求項6に係わる流動乾燥装置を提案するものである。
【0011】
即ち、請求項1に係わる流動乾燥装置は、水平方向に終始端に渡って凹溝構成で、底面が小孔開口した気体噴出面からなる被乾燥物を通風しながら搬送する乾燥物搬送体と、乾燥物搬送体の始端側には乾燥物搬送体上に被乾燥物を連続的に投入する供給装置と、乾燥物搬送体の上部には被乾燥物に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体を備え、送風装置で乾燥物搬送体の気体噴出面から被乾燥物に通風させ、被乾燥物が通風を受け浮上、沈降を繰り返しながら乾燥物搬送体の終端側の横溢口から表層の被乾燥物が順次横溢する流動乾燥装置であって、前記遠赤外線放射体の表面に高圧空気を噴射して塵埃を吹き飛ばす高圧空気噴射ダクトを、遠赤外線放射体の近傍位置に設けたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に係わる流動乾燥装置は、請求項1記載の流動乾燥装置において、高圧空気噴射ダクトは、遠赤外線放射体の長手方向に沿う狭幅長孔または列状の多数の小孔からなる高圧空気噴射口を有していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に係わる流動乾燥装置は、請求項1または2記載の流動乾燥装置において、高圧空気噴射ダクトは、遠赤外線放射体の周方向に沿って対向する面を有し、かつその対向面に複数条または列状の高圧空気噴射口を有していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に係わる流動乾燥装置は、請求項2記載の高圧空気噴射ダクトにおいて、高圧空気噴射ダクトは、遠赤外線放射体に対してその周方向に高圧空気噴射口の対向位置変更可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に係わる流動乾燥装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の流動乾燥装置において、高圧空気噴射ダクトには、流動乾燥装置内における暖気発生空間から暖気を供給して遠赤外線放射体に暖気を噴射することを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に係わる流動乾燥装置は請求項1ないし5のいずれかに記載の流動乾燥装置において遠赤外線放射体の表面に高圧空気を噴射するタイミングは乾燥開始時と乾燥終了時と乾燥中の一定時間毎に又はそのいずれかの時に行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被乾燥物の下方から上方に通気し、また遠赤外線を被乾燥物に照射することで被乾燥物を流動状態として均一にしかも早く乾燥させることができるとともに、遠赤外線放射体に高圧空気を噴射する高圧空気噴射ノズルを設けたことにより、乾燥機内の被乾燥物から飛散する微粒子を含む塵埃が遠赤外線放射体の表面に焼き付いたり、火災の発生を防止することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1および図2において、1は流動乾燥装置である。この流動乾燥装置1は、乾燥物搬送体2を備えており、その上部は乾燥室3、下部が送風室4となっている。乾燥物搬送体2は、水平方向に終始端に渡って凹溝構成で底面が小孔開口した気体噴出面体(多孔面体)5からなっている。乾燥物搬送体2の始端側6には乾燥物搬送体2上に被乾燥物aを連続的に投入するバルブ7とホッパ8からなる供給装置9が設けられている。また乾燥物搬送体2の上部には被乾燥物aに遠赤外線を照射する遠赤外線放射体10を備えており、送風装置11で乾燥物搬送体2の気体噴出面5から被乾燥物aに通風するとともに、遠赤外線放射体10により遠赤外線を照射する構成となっている。
【0019】
被乾燥物aは供給装置9より連続的に乾燥物搬送体2の始端6側に供給され、乾燥物搬送体2上で遠赤外線放射体10からの遠赤外線を被乾燥物aに照射されながら、送風装置11からの通風を受けて浮上、沈降を繰り返し、乾燥物搬送体2の終端12で表層の乾燥終了した被乾燥物aが横溢口13から順次横溢されるものである。なお、図2に示すように、乾燥物搬送体2上に被乾燥物aを撹拌するための撹拌機14を設けているが、この撹拌機14は必ずしも備えていなくてもよい。
【0020】
以上のように構成された流動乾燥装置1には、乾燥物搬送体2の一端側に塵埃収集室15が設けられており、乾燥物搬送体2と平行に凹形状の塵埃収集路16が設けられていて、塵埃収集路16の内部にはスクリューコンベア17が設けられている。塵埃収集室15には集塵機18が接続されている。19はモータ室であって、前記送風装置11を駆動するモータ20その他所要の機器を装備している。21はバーナであって遠赤外線放射体10の一端に装備されている。遠赤外線放射体10の他端には排気筒22が取り付けられている。
【0021】
乾燥室3内には、遠赤外線放射体10の近傍位置にその表面に高圧空気を噴射して塵埃を吹き飛ばす高圧空気噴射ダクト23が設けられている。この高圧空気噴射ダクト23は、図3に詳細を示すように、遠赤外線放射体10の長手方向に沿う狭幅長孔からなる高圧空気噴射口24を有している。この高圧空気噴射口24は、列状の多数の小孔または細長楕円孔を列状としたものなどであってもよい。
【0022】
また、高圧空気噴射ダクト23は、図4に示すように、遠赤外線放射体10の周方向に沿って対向する面25を有し、かつその対向面に複数条の高圧空気噴射口26を有するものとすることができる。この高圧空気噴射口26は狭幅長孔または列状の多数の小孔または細長楕円孔を列状としたものなどであってもよい。
【0023】
高圧空気噴射ダクト23は、図5に示すように、遠赤外線放射体10に対してその周方向に高圧空気噴射口の対向位置変更可能に構成すれば、遠赤外線放射体10表面に広く高圧空気を噴射することができるので、塵埃の除去効果を向上させることができる。図示の実施態様では、高圧空気噴射ダクト23を揺動軸27を軸心として揺動させる構成としている。
【0024】
本発明の実施の形態では、図1および図2に示すように、高圧空気噴射ダクト23に、流動乾燥装置1内における暖気発生空間であるモータ室19内の空気を高圧送風機28により吸引して供給して、遠赤外線放射体10に暖気を噴射するようになっている。このように、遠赤外線放射体10に暖気を噴射することにより、遠赤外線放射体10の表面温度の低下を抑制して、被乾燥物aに対する遠赤外線照射の効率低下を防止することができる。
【0025】
また、遠赤外線放射体の表面に高圧空気を噴射するタイミングは乾燥開始時と乾燥終了時と乾燥中の一定時間毎に又はそのいずれかの時に所用時間噴射することにより遠赤外線放射の効率低下を防止するとともに塵埃の付着による焦げ付きや発火を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係わる遠赤外線放射体10に対する塵埃吹き飛ばし手段は、遠赤外線放射体を備えた穀物乾燥機にもそのまま実施することができる。すなわち、穀物取り出し室内または熱風室内に配置した遠赤外線放射体に対向させて、高圧空気噴射ダクト23を設けることによりその実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係わる流動乾燥装置の概要を示す一部破断斜視図である。
【図2】同上断面図である。
【図3】高圧空気噴射ノズルと遠赤外線放射体との関係を示す詳細断面図である。
【図4】同上他の実施の形態を示す詳細断面図である。
【図5】同上さらに他の実施の形態を示す詳細断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 流動乾燥装置
2 乾燥物搬送体
3 乾燥室
4 送風室
5 気体噴出面体
6 乾燥物搬送体の始端側
7 バルブ
8 ホッパ
9 供給装置
10 遠赤外線放射体
11 送風装置
12 乾燥物搬送体の終端側
13 横溢口
14 撹拌機
15 塵埃収集室
16 塵埃収集路
17 スクリューコンベア
18 集塵機
19 モータ室
20 モータ
21 バーナ
22 排気筒
23 高圧空気噴射ダクト
24 高圧空気噴射口
25 遠赤外線放射体の周方向に沿って対向する面
26 高圧空気噴射口
27 揺動軸
28 高圧送風機
a 被乾燥物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に終始端に渡って凹溝構成で、底面が小孔開口した気体噴出面からなる被乾燥物を通風しながら搬送する乾燥物搬送体と、乾燥物搬送体の始端側には乾燥物搬送体上に被乾燥物を連続的に投入する供給装置と、乾燥物搬送体の上部には被乾燥物に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体を備え、送風装置で乾燥物搬送体の気体噴出面から被乾燥物に通風させ、被乾燥物が通風を受け浮上、沈降を繰り返しながら乾燥物搬送体の終端側の横溢口から表層の被乾燥物が順次横溢する流動乾燥装置であって、
前記遠赤外線放射体の表面に高圧空気を噴射して塵埃を吹き飛ばす高圧空気噴射ダクトを、遠赤外線放射体の近傍位置に設けたことを特徴とする流動乾燥装置。
【請求項2】
高圧空気噴射ダクトは、遠赤外線放射体の長手方向に沿う狭幅長孔または列状の多数の小孔からなる高圧空気噴射口を有していることを特徴とする請求項1記載の流動乾燥装置。
【請求項3】
高圧空気噴射ダクトは、遠赤外線放射体の周方向に沿って対向する面を有し、かつその対向面に複数条または列状の高圧空気噴射口を有していることを特徴とする請求項1または2記載の流動乾燥装置。
【請求項4】
請求項2記載の高圧空気噴射ダクトにおいて、高圧空気噴射ダクトは、遠赤外線放射体に対してその周方向に高圧空気噴射口の対向位置変更可能に構成されていることを特徴とする流動乾燥装置。
【請求項5】
高圧空気噴射ダクトには、流動乾燥装置内における暖気発生空間から暖気を供給して遠赤外線放射体に暖気を噴射することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の流動乾燥装置。
【請求項6】
遠赤外線放射体の表面に高圧空気を噴射するタイミングは乾燥開始時と乾燥終了時と乾燥中の一定時間毎に又はそのいずれかの時に行うことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の流動乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−71217(P2006−71217A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257178(P2004−257178)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】