説明

流動床ガス化炉の流動媒体分離装置、及び該装置を備えた流動媒体循環機構

【課題】目詰まり等の不具合を生じさせることなく流動媒体と不燃物の分離が可能で、分級効率を高く保ち流動媒体の歩留まり向上を図ることができる流動床ガス化炉の流動媒体分離装置及び該装置を備えた流動媒体循環機構を提案する。
【解決手段】流動床ガス化炉の不燃物排出装置より排出された不燃物と流動媒体の混合物から該流動媒体を分離する流動媒体分離装置であって、ケーシング内に分級板25が配設され、該分級板25に斜め方向の振動を加えることにより前記混合物を移送するとともに流動媒体の分離を行うようにし、前記分級板に流動媒体を分級する多数の孔25aが穿設され、該分級板25の略全面若しくは部分的に、近接する2つの孔25aに架橋させた針金状部材25bを取り付けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解して熱分解ガスを発生させ、該熱分解ガスの燃焼熱で灰分を溶融するガス化溶融システムにおける流動床ガス化炉の技術に関し、特に該流動床ガス化炉より排出される不燃物と流動媒体の混合物から流動媒体を分離する流動媒体分離装置と、該分離装置を備えた流動媒体循環機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、都市ごみを始めとして不燃ごみ、焼却残渣、汚泥、埋立ごみ等の廃棄物まで幅広く処理できる技術としてガス化溶融システムが知られている。ガス化溶融システムは、廃棄物を熱分解してガス化するガス化炉と、該ガス化炉の下流側に設けられ、ガス化炉にて生成された熱分解ガスを高温燃焼し、ガス中の灰分を溶融スラグ化する溶融炉と、該溶融炉から排出される排ガスを燃焼する二次燃焼室とを備えており、廃棄物の資源化、減容化及び無害化を図るために、溶融炉からスラグを取り出して路盤材等の土木資材として再利用したり、二次燃焼室から排出される排ガスから廃熱を回収して発電を行うなどしている。
【0003】
このようなガス化溶融システムのガス化炉には、流動床ガス化炉が多く用いられている。流動床ガス化炉は、炉底に燃焼空気の供給により流動媒体を流動化させた流動層が形成され、該流動層内に投入した廃棄物を部分燃焼させ、該燃焼熱により高温に維持される流動層内で廃棄物を熱分解する装置である。廃棄物中に混入した不燃物は、炉底に蓄積して流動不良を引き起こすため、燃焼空気にて浮遊させ炉底に設けられた不燃物排出部より排出するようになっている。
しかし、不燃物排出部からは不燃物とともに流動媒体も排出されてしまうため、流動層の層高を補うために流動媒体を追加供給しなければならず、ランニングコストが増大してしまう。従って、流動媒体を不燃物から分離してガス化炉に戻す流動媒体循環機構を構築することが求められており、この循環機構に関する技術が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2003−207114号公報)では、流動炉から抜き出した不燃物と夾雑物を分級機で分級し、粗大夾雑物を分離した後、流動媒体中に混入している鉄粉を磁選機で除去した上で流動炉内に戻す構成を提案している。このように、流動媒体と不燃物の分級に加えて磁選機やアルミ選別機を備えた構成も多く提案されている。また、特許文献2(特開平10−185113号公報)には、複数の分級器を用いる循環方法が開示されている。この方法は、まずトロンメル付き分級器により大サイズの不燃物を分離し、次いで振動篩分級器により中サイズ以上の不燃物と固形カーボンを分離し、中サイズ以下の固形カーボンと流動媒体を流動層ガス化炉に戻すものである。これにより可燃分である固形カーボンも同時に流動層内に戻すようにしている。
【0005】
また、特許文献3(特開2001−241627号公報)には、小粒径の流動媒体を振動篩により分級し、該流動媒体をバケットコンベアにより搬送してシール装置を介して流動層内に戻す構成が開示されている。
これらの先行文献に記載されるように、流動媒体の分級においては振動篩等の篩分け分級方式が多く用いられている。篩分け分級方式は、遠心分級や重力分級などに比べて分級精度が高く流動媒体の分級に適している。振動篩を用いた流動媒体分離装置として、特許文献4(特開2001−276740号公報)には、流動床式焼却炉における流動媒体分離装置の構成が記載されている。この装置は、所定幅の流動媒体通過間隙を有するスクリーン板を備え、該流動媒体通過間隙が流動媒体流れ方向に直交して配置され、さらにスクリーン板の下側に、流動媒体流れ方向に対して斜め若しくは千鳥状に支持部材を配置する構成となっている。これは、スクリーン板に支持部材を配置することにより、不燃物の落下を防止するようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−207114号公報
【特許文献2】特開平10−185113号公報
【特許文献3】特開2001−241627号公報
【特許文献4】特開2001−276740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献4に記載されるようなスリット状の間隙を有するスクリーン板を用いる場合、針金等の不燃物がスリットに引っかかり、蓄積してしまうためこれを除去するためにメンテナンスを頻繁に行わなければならず、稼動効率が悪い。また、スリット状のスクリーン板を用いる場合には、流動媒体と同時に不燃物も落下してしまうという問題は避けられない。
そこで、より分級能力の高い多孔状の分級板を用いる方法も知られているが、この場合分級板の孔径より大きい流動媒体などにより目詰まりが発生し易く、やはりメンテナンス頻度は高くなってしまう。
【0008】
一方、このような分級装置を備えた特許文献1乃至3に記載される流動媒体循環系においては、流動媒体循環量の変動が問題となっている。即ち、流動媒体の循環量は、廃棄物に含まれた砂が循環系に混入することにより増大したり、分級装置により流動媒体と略同径の不燃物が循環系に混入することにより増大したり、逆に流動媒体が熱分解ガスに同伴してガス処理側へ抜けてしまい減少してしまうことがあり、流動媒体の循環量が安定しないという問題がある。
【0009】
また、流動媒体及び不燃物は流動床ガス化炉から高温状態で排出されるため、これを受け入れる装置類には耐熱性の高い材料を使用しなければならず、コストが嵩むという問題もあった。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、目詰まり等の不具合を生じさせることなく流動媒体と不燃物の分離が可能で、分級効率を高く保ち流動媒体の歩留まり向上を図ることができる流動床ガス化炉の流動媒体分離装置を提案することを目的とする。さらに、該分離装置を備えた流動媒体循環機構における不具合を解消して循環の安定化を図ることができる流動床ガス化炉の流動媒体循環機構を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、流動床ガス化炉の不燃物排出装置より排出された不燃物と流動媒体の混合物から該流動媒体を分離する流動媒体分離装置であって、ケーシング内に分級板が配設され、該分級板に斜め方向の振動を加えることにより前記混合物を移送するとともに前記流動媒体の分離を行う流動床ガス化炉の流動媒体分離装置において、
前記分級板に前記流動媒体を分級する多数の孔が穿設され、該分級板の略全面若しくは部分的に、近接する2つの孔に架橋させた針金状部材を取り付けたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、分級板の孔に針金状部材を架橋させることにより、孔に流動媒体や小径の不燃物が詰まることを防止し、また孔が目詰まりした場合であっても、分級板の振動に伴い揺動する針金状部材により目詰まりした物が弾き飛ばされて除去されるため、メンテナンス頻度を大幅に低減することができ、分級効率を向上することができる。
【0012】
また、前記混合物の移送方向に前記分級板が2以上設けられ、上流側に位置する分級板の孔径が、下流側に位置する分級板の孔径よりも小であることを特徴とする。
本発明によれば、上流側の孔径を小として下流側の孔径を大とし、上流側で流動媒体を積極的に落下させ、不燃物密度が大きくなった下流側で流動媒体の落下し易い大径の孔から残りの流動媒体を落下させるようにしている。これにより、流動媒体の分級効率を向上させることができる。
【0013】
さらに、前記分級板が、前記混合物の移送方向に対して上流側から下流側に向かって上方に傾斜するように配設されることを特徴とする。
さらにまた、前記分級板の直前に段差部が存在することを特徴とする。
このように、分級板に傾斜、段差部を設けることにより、流動媒体の分級が容易に行えるようになり、分級効率が向上する。
【0014】
また、前記流動媒体分離装置を備え、該流動媒体分離装置にて分離された流動媒体を前記流動床ガス化炉に循環させる流動床ガス化炉の流動媒体循環機構であって、
前記流動媒体分離装置と前記不燃物排出装置とが連結されるとともに、前記流動媒体分離装置側が大気開放され、
前記不燃物排出装置の上部空間が後段に配設された集塵装置に接続され、該集塵装置側に設けられた吸引手段により前記上部空間をガス吸引し、前記流動媒体分離装置から前記不燃物排出装置を介して前記集塵装置に向かう空気流れを形成することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、不燃物排出装置では微小不燃物や流動媒体が飛散し易いため、これを集塵装置にて除去するようにした。さらに、不燃物排出装置の上部空間に接続した集塵装置側からガス吸引することにより、大気開放された流動媒体分離装置から不燃物排出装置を介して集塵装置へ向けて空気流れが形成される。この空気流れにより流動媒体分離装置から不燃物排出装置までが空冷されることとなり、高温で排出される不燃物や流動媒体が冷却される。従って、流動媒体分離装置を含む循環ラインの各種機器に耐熱性の高い材料を使用しなくてもよく、コスト低減が図れる。
【0016】
また、前記流動媒体分離装置を備え、該流動媒体分離装置にて分離された流動媒体を前記流動床ガス化炉に循環させる循環ラインを備えた流動床ガス化炉の流動媒体循環機構であって、
前記循環ライン上に流動媒体貯留槽を設け、前記流動媒体を前記流動床ガス化炉に戻すラインと、前記流動媒体を前記流動媒体貯留槽に送給するラインとを適宜選択する流動媒体切替装置を設けたことを特徴とする。
本発明によれば、循環ライン上に流動媒体貯留槽を設けることにより、流動床ガス化炉内の流動媒体量の増減を平滑化することができ、流動床ガス化炉の安定運転が可能となる。
【0017】
さらに、前記流動媒体を前記流動床ガス化炉に戻すライン上にガス逆流防止手段を設けたことを特徴とする。
これにより、流動床ガス化炉のシール性を高く保ち、原則的に負圧制御される流動床ガス化炉から流動媒体循環機構へガスが逆流することを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
以上記載のごとく本発明によれば、流動媒体分離装置においては、分級板の孔に針金状部材を架橋させることにより、目詰まり等の不具合を生じさせることなく流動媒体と不燃物の分離が可能で、且つ分級効率を高く保ち流動媒体の歩留まり向上を図ることができる。同様に、2以上設けた分級板の孔径を異ならせることにより、分級効率を向上させることができる。同様に、分級板に段差部、傾斜を設けることにより、分級効率を向上させることが可能となる。
【0019】
また、該分離装置を備えた流動媒体循環機構においては、流動媒体分離装置から不燃物排出装置を介して集塵装置へ向けて空気流れを形成することにより、流動媒体及び不燃物を冷却することができ、流動媒体分離装置を含む循環ラインの各種機器に耐熱性の高い材料を使用しなくてもよく、コスト低減が図れる。
さらに、流動媒体の循環ライン上に流動媒体貯留槽を設けることにより、流動床ガス化炉内の流動媒体量の増減を平滑化することができ、流動床ガス化炉の安定運転が可能となる。
さらにまた、ガス逆流防止手段を設けることにより、流動床ガス化炉のシール性を高く保ち、流動床ガス化炉から循環機構へのガスの逆流を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例に係る砂循環機構を備えた流動床ガス化炉の概略を示す構成図、図2は本発明の実施例に係る砂分級装置の構成図、図3は図2の砂分級装置が備える分級板を示す図で、(a)は上流側分級板の平面図、(b)は下流側分級板の平面図、図4は図2の砂分級装置が備える分級板の要部拡大図、図5は図4の分級板のX−X線断面を示す図、図6はガス化溶融システムの概略を示す全体構成図である。
【0021】
まず、図6を参照して、本実施例に係るガス化溶融システムの概略構成を説明する。
廃棄物投入ホッパ2から投入された廃棄物48は、必要に応じて破砕、乾燥された後に給じん機3を介して流動床式ガス化炉1へ定量供給される。流動床ガス化炉1では、温度約120〜230℃、空気比0.2〜0.7程度の燃焼空気49が炉下部から風箱9を介して炉内に吹き込まれ、流動層温度が500〜650℃程度に維持されている。
廃棄物48は流動床ガス化炉1で熱分解ガス化され、ガス、タール、チャー(炭化物)に分解される。タールは、常温では液体となる成分であるが、ガス化炉内ではガス状で存在する。
チャーは流動層内で徐々に微粉化され、ガス及びタールに同伴して溶融設備13の旋回溶融炉13aへ導入される。以下、旋回溶融炉13aへ導入されるこれらの成分を総称して熱分解ガス50と呼ぶ。また、溶融設備13は、旋回溶融炉13aと、旋回溶融炉13aの上方に連結された二次燃焼室13bと、該二次燃焼室13bの下流側に連結されるボイラ部13cと、から構成される。
【0022】
前記流動床ガス化炉1の炉頂部より排出された熱分解ガス50は、ライニングダクトを経て旋回溶融炉13aの熱分解ガスバーナへ導入される。該熱分解ガスバーナで、熱分解ガス50は燃焼空気と混合されて炉内に導入され、旋回流を形成する。このとき、燃焼空気は空気比0.9〜1.1、好ましくは1.0程度であると良い。
前記旋回溶融炉13aでは、熱分解ガス50と燃焼空気の混合ガスが燃焼することにより炉内温度が1300〜1500℃に維持され、熱分解ガス50中の灰分が溶融、スラグ化される。溶融したスラグは、旋回溶融炉13aの内壁面に付着、流下し、炉底部のスラグ出滓口から排出される。旋回溶融炉13aから排出されたスラグは、水砕水槽71で急冷され、スラグコンベア72により搬出されて水砕スラグとして回収される。回収された水砕スラグは、路盤材等に有効利用することが可能である。
【0023】
一方、旋回溶融炉13aから排出された燃焼排ガスは二次燃焼室13bへ導入される。二次燃焼室13bでは、燃焼空気が空気比1.2〜1.5となるように供給され、前記燃焼排ガス中の未燃分はここで完全燃焼される。
燃焼排ガスは、ボイラ部13cで熱回収されて、200〜250℃程度まで冷却される。ボイラ部13cから排出された燃焼排ガスは、減温塔14へ導入され、直接水噴霧により150℃程度まで冷却される。減温塔14から排出された燃焼排ガスは、必要に応じて煙道で消石灰、活性炭が噴霧され、反応集塵装置15に導入される。反応集塵装置15では、燃焼排ガス中の煤塵、酸性ガス、DXN類等が除去される。反応集塵装置15から排出された集塵灰は薬剤処理して埋立処分され、燃焼排ガスは蒸気式加熱器16で再加熱され、触媒反応装置17でNOが除去された後、誘引ファン18を介して煙突19より大気放出される。
【0024】
次に、本実施例の主要構成である砂循環機構を備えた流動床ガス化炉につき、図1を参照して説明する。
図1に示されるように、流動床ガス化炉1は、角筒状のガス化炉本体4を有し、廃棄物投入ホッパ2及び給塵機3からなる廃棄物投入手段が炉本体4の一側壁側に設けられるとともに、該廃棄物投入手段と対面する側壁に配置された流動砂供給口6が設けられ、該側壁の下部には不燃物排出口7が設けられている。また、炉本体4の頂部には、炉内で発生した熱分解ガス50が排出される熱分解ガス排出口5が設けられている。尚、ガス化炉本体4の形状、及び廃棄物供給手段、流動砂供給口6、熱分解ガス排出口5の取り付け位置は上記した構成に限定されるものではない。
【0025】
ガス化炉本体4の底部8は、廃棄物供給手段側から不燃物排出口7側へ向けて下方に傾斜しており、該底部8には複数の散気管(不図示)が設けられている。底部8の下方には複数の風箱9が設けられている。該風箱9、炉底8の傾斜方向に複数並設されている。各風箱9には、押し込みファン10により燃焼空気49が供給される。燃焼空気49は、好適には温度約120〜230℃、空気比0.2〜0.7程度とし、必要に応じて水蒸気を加えてもよい。風箱9には圧力センサが設けられており、該圧力センサにより各風箱の圧力を検出するようになっている。
【0026】
ガス化炉本体4には、流動砂供給口6から供給された流動砂が充填され、風箱9を介して底部8から供給される燃焼空気49により該流動砂が流動化した流動層11が形成されている。尚本実施例では、流動媒体として珪砂を用いる構成としているが、廃棄物やこれの構成物質及び燃焼生成分と反応しない材料或いは炉の操作温度よりも充分に高い融点をもつ材料であれば何れでもよく、珪砂の他に、粒状アルミナ、粒状ゼオライト、粒状酸化鉄、粒状コランダム等を用いることもできる。
流動床ガス化炉内の不燃物は、燃焼空気49により浮遊状態で傾斜面を移送され、不燃物排出口7を経て不燃物排出装置12より排出される。このとき、流動砂も同時に排出される。
【0027】
排出された不燃物と流動砂の混合物51は、砂分級装置20、砂循環エレベータ30、砂切替装置31を備えた流動砂循環機構を介して流動砂のみが流動床ガス化炉1に戻される。
この流動砂循環機構は、不燃物排出装置51に接続された砂分級装置20と、該砂分級装置20にて分離された流動砂52を所定高さまで搬送する砂循環エレベータ30と、該砂循環エレベータ30の下流側端に接続され、排出側が二又に分岐した砂切替装置31と、該砂切替装置31の一の排出側から流動床ガス化炉1の流動砂供給口6へ繋がる砂供給ライン上に設けられたダブルフラップダンパ32と、を備える。
【0028】
また流動砂循環機構は、前記砂切替装置31の他の排出側と接続される砂貯留槽33と、該砂貯留槽33のホッパ部下端に設けられ、流動砂を定量切り出しするロータリーバルブ34と、砂貯留槽33の排出部側に接続され、排出側が二又に分岐した砂切替装置35と、一の排出側から砂循環エレベータ30に循環砂58を送給する砂送給ラインと、他の排出側から砂コンベア36に循環砂57を送給する砂送給ラインと、該砂コンベア36からの流動砂を廃棄する前に一時的に貯留する砂貯留ヤード37と、を備える。
さらに流動砂循環機構は、前記砂分級装置20にて分離された不燃物53の磁選を行う磁選機39と、磁選機39にて鉄が分離された不燃物のアルミ選別を行うアルミ選別機42と、不燃物コンベア38、41と、選別された鉄、アルミ、不燃物を夫々貯留する鉄貯留ヤード40、アルミ貯留ヤード43、不燃物貯留ヤード44とを備える。
【0029】
ここで、砂分級装置20の具体的構成につき、図2乃至図5を参照して説明する。
図2に示されるように、砂分級装置20は、カバー29で密閉されたケーシング21の内部に砂移送路23を有し、該ケーシング21の一端側上部には混合物51が供給される投入シュート22が設けられ、他端側下部には分級後の不燃物53を排出する不燃物出口28が設けられている。砂移送路23の砂移送方向中間部には、所定間隔を隔てて上流側分級板25、下流側分級板26が設けられている。これらの分級板25、26には多数の孔25a、26aが穿孔されており、ここから流動砂のみが下方に落下するようになっている。好適には、該分級板としてパンチングメタルを用いる。
【0030】
分級板の孔25a、26aの孔径は同一であってもよいが、孔25a、26aの孔径を異ならせることが好ましい。図3(a)は上流側分級板25、(b)は下流側分級板26を示す。図示されるように、上流側分級板25の孔25aの径を、下流側分級板26の孔26aの径より小さくする。このように、上流側の孔径を小とし、下流側の孔径を大とし、上流側で流動砂を積極的に落下させ、不燃物密度が大きくなった下流側で、流動砂が落下し易い大径の孔26aから残りの流動砂を落下させるようにしている。これにより、流動砂の分級効率を向上させることができる。
分級板25、26に分級板25、26の下方には、落下した流動砂52が排出される流動砂出口27が設けられている。また、ケーシング21には、砂移送路23に対して斜め方向の振動を加える振動モータ24が取り付けられており、これにより砂を移送させるようになっている。振動モータ24の振動方向は図中矢印で示される方向であり、鉛直方向よりも砂移送方向に傾くとともに、水平よりも上向きに傾く方向となっている。
【0031】
また、本実施例の特徴的構成として、図4及び図5に示されるように分級板25の孔25aにおいて、近接する2つの孔25a、25aに針金状部材25bを架橋させて取り付けている。針金状部材25bは、分級板の振動により揺動する程度に隙間をもって架橋させるようにする。針金状部材25bは、略全ての孔25aに取り付けることが好ましいが、部分的に取り付けるようにしてもよい。また、針金状部材は、上流側分級板25及び下流側分級板26の両方に取り付けることが好ましいが、何れか一の分級板にのみ取り付けるようにしてもよい。
本構成によれば、針金状部材25b、26bにより分級板25、26の目詰まりを防止でき、孔25a、26aが目詰まりした場合であっても、分級板の振動により揺動する針金状部材25bにより目詰まりした物が弾き飛ばされて除去されるため、メンテナンス頻度を大幅に低減することができ、稼働率を向上させることができる。
【0032】
また、分級板25、26のうち少なくとも何れかの分級板を、混合物の移送方向に対して上流側から下流側に向かって上方に傾斜するように配設することが好ましい。
さらに好ましくは、分級板25、26の少なくとも何れかの分級板の直前に段差部を設け、分級板25aを砂移送路23より僅かに低い位置とする。
このように、分級板に傾斜及び段差部を設けることにより、流動媒体の分級が容易に行えるようになり、分級効率が向上する。
【0033】
さらに、本実施例の特徴的な構成として、砂循環機構の循環ライン上に設けた砂貯留槽33が挙げられる。分級装置20にて分離された流動砂52は、砂循環エレベータ30により所定高さだけ上方に搬送された後、砂切替装置31を介して流動床ガス化炉1に戻されるか、若しくは砂循環槽33に貯留される。
一般に、流動床ガス化炉1の流動層11の層高は、廃棄物48の水分蒸発負荷に応じて設定される。しかしながら、廃棄物に含有される砂による流動砂の増加、若しくは熱分解ガスに同伴されて排出されることによる流動砂の減少などにより、運転に伴い流動砂が増減してしまう。
【0034】
従って、本構成のごとく砂貯留槽33を設け、砂切替装置31により流動砂の供給先を適宜選択することにより、流動砂の循環量を調節するようにする。即ち、砂切替装置31により、系内に流動砂が多い場合には流動砂を砂貯留槽33に供給するようにし、定常運転時若しくは流動砂が少ない場合には流動床ガス化炉1に流動砂を戻すようにする。砂切替装置31の切替は、流動層11の層高に基づき行うことが好ましく、層高が所定値より高い場合には砂貯留槽33側へ供給されるように切替える。尚、流動層11の層高は、風箱9の圧力により求められる。
また、循環系内の流動砂が不足する場合には、砂貯留槽33に貯留していた流動砂を流動床ガス化炉1内へ供給する。この場合、砂貯留槽33からの流動砂は、砂切替装置35を経て砂循環エレベータ30に送られ、分級装置20からの流動砂52とともに流動床ガス化炉1内に戻される。
【0035】
砂貯留槽33が充溢した場合、若しくは流動砂の交換時期には、砂切替装置35を砂貯留ヤード37側へ切替て、系外へ排出する。
本構成によれば、流動砂循環ライン上に砂貯留槽33を設けて流動砂のバッファリングを行うことにより、流動砂の増減を平滑化することができ、流動床ガス化炉を安定運転することが可能となる。
砂切替装置31から流動床ガス化炉1の流動砂供給口6へ繋がる砂供給ライン上にはダブルフラップダンパ32が設けられており、これにより原則的に負圧に制御される流動床ガス化炉1から循環機構へガスが逆流することを防止できる。尚、ダブルフラップダンパ32の他に、スライドゲートなどのシール性の高い逆流防止手段も用いることができる。
【0036】
さらにまた、本実施例では不燃物排出装置12に接続される分級装置20側を大気開放するとともに、該不燃物排出装置12上部空間をバグフィルタ45に接続し、バグフィルタ45後段の誘引ファン46により該上部空間のガスを吸引する構成としている。該上部空間より吸引された引抜排ガス65は、バグフィルタ45により集塵され、塵埃等を除去された後に大気放出される。バグフィルタ45にて捕集された塵埃66は、不燃物集塵コンベア47を介して不燃物貯留ヤード44に送られる。
このように、不燃物排出装置12の上部空間より装置内のガスを吸引する構成とすることにより、大気開放された分級装置20側から該上部空間に空気が流入し、流動砂や不燃物が冷却される。不燃物排出装置12を強制的に空冷することにより、分級装置に耐熱性の高い材料を使用しなくてもよく、コストを低減することができる。また、本構成によれば不燃物排出装置12内に飛散する塵埃を集塵することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例に係る砂循環機構を備えた流動床ガス化炉の概略を示す構成図である。
【図2】本発明の実施例に係る砂分級装置の構成図である。
【図3】図2の砂分級装置が備える分級板を示す図で、(a)は上流側分級板の平面図、(b)は下流側分級板の平面図である。
【図4】図2の砂分級装置が備える分級板の要部拡大図である。
【図5】図4の分級板のX−X線断面を示す図である。
【図6】ガス化溶融システムの概略を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 流動床ガス化炉
4 ガス化炉本体
6 流動砂供給口
7 不燃物排出口
12 不燃物排出装置
13 溶融設備
20 砂分級装置
24 振動モータ
25 上流側分級板
25a、26a 孔
25b、26b 針金状部材
26 下流側分級板
30 砂循環エレベータ
31 砂切替装置
32 ダブルフラップダンパ
33 砂貯留槽
45 不燃物集塵装置
46 誘引ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床ガス化炉の不燃物排出装置より排出された不燃物と流動媒体の混合物から該流動媒体を分離する流動媒体分離装置であって、ケーシング内に分級板が配設され、該分級板に斜め方向の振動を加えることにより前記混合物を移送するとともに前記流動媒体の分離を行う流動床ガス化炉の流動媒体分離装置において、
前記分級板に前記流動媒体を分級する多数の孔が穿設され、該分級板の略全面若しくは部分的に、近接する2つの孔に架橋させた針金状部材を取り付けたことを特徴とする流動床ガス化炉の流動媒体分離装置。
【請求項2】
前記混合物の移送方向に前記分級板が2以上設けられ、上流側に位置する分級板の孔径が、下流側に位置する分級板の孔径よりも小であることを特徴とする請求項1記載の流動床ガス化炉の流動媒体分離装置。
【請求項3】
前記分級板が、前記混合物の移送方向に対して上流側から下流側に向かって上方に傾斜するように配設されることを特徴とする請求項1若しくは2記載の流動床ガス化炉の流動媒体分離装置。
【請求項4】
前記分級板の直前に段差部が存在することを特徴とする請求項1若しくは2記載の流動床ガス化炉の流動媒体分離装置。
【請求項5】
請求項1記載の流動媒体分離装置を備え、該流動媒体分離装置にて分離された流動媒体を前記流動床ガス化炉に循環させる流動床ガス化炉の流動媒体循環機構であって、
前記流動媒体分離装置と前記不燃物排出装置とが連結されるとともに、前記流動媒体分離装置側が大気開放され、
前記不燃物排出装置の上部空間が後段に配設された集塵装置に接続され、該集塵装置側に設けられた吸引手段により前記上部空間をガス吸引し、前記流動媒体分離装置から前記不燃物排出装置を介して前記集塵装置に向かう空気流れを形成することを特徴とする流動床ガス化炉の流動媒体循環機構。
【請求項6】
請求項1記載の流動媒体分離装置を備え、該流動媒体分離装置にて分離された流動媒体を前記流動床ガス化炉に循環させる循環ラインを備えた流動床ガス化炉の流動媒体循環機構であって、
前記循環ライン上に流動媒体貯留槽を設け、前記流動媒体を前記流動床ガス化炉に戻すラインと、前記流動媒体を前記流動媒体貯留槽に送給するラインとを適宜選択する流動媒体切替装置を設けたことを特徴とする流動床ガス化炉の流動媒体循環機構。
【請求項7】
前記流動媒体を前記流動床ガス化炉に戻すライン上にガス逆流防止手段を設けたことを特徴とする請求項6記載の流動床ガス化炉の流動媒体循環機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−271202(P2007−271202A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99146(P2006−99146)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】