説明

流動的な活性成分を含有する油性組成物

特に抗酸化性の流動的な活性成分を含有する油性組成物であって、主に食品の調製のための油の添加物として用いられる油性組成物であって、その組成物の粘度が活性成分の粘度と油の粘度の間にあるところの組成物が記載される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、特に抗酸化性の流動的な活性成分を含有する油性組成物であって、特に食品の調製に用いられる組成物に関する。さらに該組成物の製法にも関する。
【0002】
食品調製の、あるいは軟膏または他の化粧品の調製に供する油には、その一部として、組成物が添加される。多少軽い植物油、例えば、菜種油、ヒマワリ油、サフラワー油またはミグライオールなどの中鎖トリグリセリドも油として考慮される。油に可溶性の早期老化に拮抗する活性成分、特に、例えばEP1338271にあるように、乳化剤(約9と18の間のHLB値)で可溶化とされたアスコルビン酸などの酸化防止剤がこれらの油に添加される。もう一つ別の考えられる活性成分が米国特許出願10/470749にあるようにミセル化されたアルファリポ酸である。しかし、該油の添加された活性成分を吸収する能力は制限され、多くの場合、十分でない。例えば、純粋なアスコルビン酸の油中の濃度は、ミグライオールで約1200ppmを上回ることはない。パン生地の添加物(化合物)には油が使用されており、例えば、アスコルビン酸などの活性成分が油中にて利用できることが望ましい。
【0003】
したがって、本発明の目的は活性成分の食品調製等に適する油中の含有量を増加させることである。
本発明によれば、組成物の粘度は、油の粘度と活性成分の粘度の間にある。こうして、油中の活性成分の含量を実質的に増加させることが可能である。この目的のために、本発明によれば、活性成分をまずプレミックスと混合し、その組成物が活性成分の粘度と油の粘度の間にある粘度を有するように組成物を形成し;その後で該組成物を油中に添加する。本発明の利点は、活性成分を油中に直接添加する場合よりも、実質的により高い割合の活性成分が油中に配合されうることである。活性成分が上記したアスコルビン酸可溶化物(ascorbic acid solubilisate)である場合、純粋なアスコルビン酸の油中の割合は本発明では約10倍に増加する。
【0004】
プレミックスに適する脂肪は、例えば、油中および/またはリノール酸中に富む脂肪、魚油または中鎖トリグリセリドである。これらは、脂肪様化合物、高級脂肪酸および一価高級パラフィンアルコール(ミリシルアルコール、セチルアルコール、デリルアルコール、メリシルアルコール)、例えば羊毛脂(E913)、蜜ロウまたは植物ワックス(カルナバロウ、カンデリラロウ、サトウキビロウまたは合成ワックスであっても)からなるワックスである。羊毛ワックス、羊毛脂、人工ワックスまたは代替物と称される合成ワックスなどの種々のワックスが高濃度でのみ可溶化物と油の間の所望の粘度調節作用を示す。カルナバロウの場合、混合物の均質性は苦労しなければ得ることができない。冷却する過程で可変的に大きな粒子が形成される。したがって、蜜ロウが本発明の目的を達成するための都合のよい物質であることが分かるが、本発明はこのワックス単独での使用に限定されるものではない。上記したいずれのワックスのプレミックスの脂肪への添加も、一般に、プレミックスのわずかな重量%を占めるにすぎない。ワックスの脂肪中での溶解をよりよくするために、プレミックスを少し加熱して、例えば、40℃ないし約60℃にて調製することが推奨されうる。活性成分は、1部の活性成分と複数部のプレミックスとからなる組成物の形態の油に添加される。上記したミセル化されたアスコルビン酸の場合、該組成物は、便宜上、1部のアスコルビン酸可溶化物と、約9部のプレミックスとからなる。
【0005】
本発明の組成物の製法は組成物の粘度が活性成分の粘度と油の粘度の間にあるように調整するものであり、該方法で油性組成物と攪拌されうる活性成分が得られる。
本発明の組成物の好ましい具体例および本発明の都合のよい方法を従属的方法にて特定する。
次に本発明の油を製造する方法の一例を示す:個々の混合物のRT(20℃)での粘度を、3mmのフローオリフィスからなる、FORDカップを用いる、DIN53211に従ってフロー時間(秒)として測定する。以下の実施例にて使用されるミグライオール812のフロー時間は31.5秒に達する。
【0006】
実施例1
第一の工程において、蜜ロウ(cera alba(CA))と、軽い、とりわけ、例えば、ヒマワリ油、菜種油またはサフラワー油もしくは別に中性油(ミグライオール812)などの植物油とからなる、プレミックスB1を調製する。このために、(100重量%のプレミックスに対して)約97.8重量%の脂肪を2.2重量%のCAと相互に混合し、約40℃ないし約60℃に加熱し、蜜ロウのプレートが完全に脂肪に溶解するまで攪拌する。ついで、該混合物を常にかつゆっくりと攪拌することで室温にまで冷却する。このプレミックスのフロー時間は146.5秒に達する。
【0007】
第二の工程において、別個に、アスコルビン酸と、水と、ポリソルベート20とからなるアスコルビン酸可溶化物A1を調製する。このために、(100重量%の可溶化物に対して)10重量%のアスコルビン酸を10重量%の蒸留水に加熱条件下(40℃ないし60℃)で溶かし、特定の温度で連続して攪拌しながら、10重量%のミグライオール812に添加する。混合物の均質性が得られたならば、70重量%の加熱したポリソルベート20を配合し、透明かつ均質になるまで該混合物を攪拌する。このアスコルビン酸可溶化物のフロー時間は867.0秒に達する。
【0008】
その後、第三の工程において、90重量%のプレミックスB1および10重量%のアスコルビン酸可溶化物A1を混合し、連続して攪拌し、その結果として得られた組成物は1重量%(=10000ppm)の純粋なアスコルビン酸を含有する。この組成物のフロー時間は70.5秒に達する。
【0009】
実施例2
プレミックスB2の調製:
実施例1に示されたプレミックスB1は、グリセリドの付加物、例えば、モノグリセリドおよびジグリセリドのモノおよびジアセチル酒石酸エステルである、ラメジンDWP2000(Cognis)を含有する。詳細には、(得られるプレミックス=100%に対して)20重量%のラメジンを70重量%のプレミックスB1に加え、均質になるまで攪拌する。フロー時間は78.0秒に達する。
【0010】
ついで、(組成物=100重量%に言及して)10重量%のアスコルビン酸可溶化物A1を90重量%のプレミックスB2と、均質になるまで攪拌することで組成物を得る。この組成物は1重量%(=10000ppm)の純粋なアスコルビン酸を含有する。該組成物のフロー時間は85.0秒に達する。
【0011】
実施例3
プレミックスB3:(プレミックス=100重量%に対して)3.5重量%の蜜ロウを96.5重量%のミグライオール812に約40℃ないし約60℃にて添加し、蜜ロウプレートが完全に溶解するまで、加熱下にて攪拌する。その熱い混合物を連続して攪拌しながらゆっくりとRTに冷却する。フロー時間:115.5秒。
【0012】
可溶化物A3:(可溶化物=100%に対して)約20重量%のアスコルビン酸を約20重量%の蒸留水に約45℃にて完全に溶解させる。約60重量%のポリソルベート80を該溶液に攪拌しながら加え、約80℃に加熱する。該溶液を可溶化物が透明かつ均質になるまで攪拌する。
【0013】
組成物:約5重量%の可溶化物A3を約95重量%のプレミックスB3と該組成物が均質になるまで攪拌する。その場合、該組成物は約1重量%の純粋なアスコルビン酸を含有する。フロー時間:179.5秒。
【0014】
実施例4
プレミックスB4:(プレミックス=100%に対して)約96重量%のミグライオール812を、加熱下(実施例3)、4重量%の蜜ロウと一緒に、その蜜ロウプレートが完全に溶解するまで攪拌する。該混合物を攪拌しながらゆっくりとRTに冷却する。
【0015】
約10重量%の可溶化物A3を約90重量%のプレミックスB4と一緒に均質になるまで攪拌することで組成物を得る。該組成物は全体として約2重量%の純粋なアスコルビン酸を含有する。フロー時間は131.5秒に達する。
【0016】
フロー時間で示される個々の組成物の粘度は可溶化物の粘度と組成物と混合される油の粘度の間にあることは上記した実施例から明らかである。従って、A3のフロー時間がRTでのA3の粘度のため本明細書に記載の方法に従って決定されえないことを考慮することが重要である。しかしながら、少なくともA1の粘度と同じ程度であると推定されうる。
【0017】
上記の実施例を基礎とする本発明の付加的な利点は、油と本発明の組成物との沈殿物不含混合をRTで行い得ることである。しかし、本発明は具体的に数値で示されたデータおよび上記した出発物質に限定されるものではない。すなわち、該組成物の油への付加が少ない加熱(約30℃ないし約60℃)で起こると容認できるならば、選択される温度での組成物の粘度が可溶化物の粘度と油の粘度の間にある限り、たとえ他のプレミックス、可溶化物および組成物であるとしても考慮に入れることができる。
【0018】
したがって、以下の操作も可能である:(組成物=100%に対して)約88.5重量%の、植物油、魚油または中鎖トリグリセリドとすることのできる油を約80℃に加熱する。約1.5重量%のビーズワックス(蜜ロウ)を熱油に加えて攪拌する。該ワックスが溶解した後、約10重量%の上記したアスコルビン酸可溶化物を該熱混合物に添加する。組成物が室温に冷却されるまで、攪拌を続け、加熱を止める。
【0019】
本発明の組成物は、長期間の貯蔵(室温でまたはそれ以下)の後でも確実に均質および沈殿物不含を保持し、約1重量%または10000ppmの純粋な化学的に変換されていないアスコルビン酸(ビタミンC)を含有する。このアスコルビン酸の油中の濃度は、例えば油中のアスコルビルパルミタート(これまでのところ、非フェノール性抗酸化剤変種)などの誘導されたアスコルビン酸変種で得られる濃度の約20倍である。
本発明はまた、ポリソルベート20をポリソルベート80の変わりに用いるところの、アスコルビン酸可溶化物を用いて行うこともできる。
【0020】
上記したトリグリセリドの代わりに、通常、十分な含量のカプリル酸およびカプリン酸を含む、中鎖トリグリセリドを用いて、アスコルビン酸可溶化物を誘導化させることもできる。さらには、アスコルビン酸可溶化物はまた、ポリソルベート80の代わりにポリソルベート20を用いて、上記した重量比が実質的に維持されているところの、アスコルビン酸可溶化物を調製することもできる。ポリソルベート20で調製されるアスコルビン酸可溶化物のフロー時間は15.5分であると測定される。
【0021】
本発明の組成物は要件(25重量%まで)に合う量にて油に添加することができる。かくして、この目的のためにさらなる方策(付加物の添加または特別な攪拌機の使用)を必要とすることなく、アスコルビン酸の油中の部分を自由に調整することができる。
【0022】
本明細書に記載されるように、該組成物は油の保持に適するものである。加えて、該組成物はパン生地またはパン生地の混合物の調製における主たる成分(酸化化合物)として用い、それからベーカリー製品を調製することもできる。さらには、魚製品、特に缶詰の魚の調製において、抗酸化添加物としての組成物の使用が推奨される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に抗酸化性の流動的な活性成分を含有する、とりわけ食品の調製に用いられる油の添加物としての油性組成物であって、その粘度が活性成分の粘度とその油の粘度の間にあるところの、油性組成物。
【請求項2】
活性成分が9ないし18のHLB値を有する乳化剤によりミセル化されている形態にて存在するところの、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
活性成分がアスコルビン酸であり、ポリソルベート20またはポリソルベート80を用いてミセル化されているところの、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
組成物の油性部分が、組成物が添加される油と同じ油であるところの、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
少量部のワックスを含有する油性プレミックスと、そのプレミックスと攪拌される活性成分とからなる、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
蜜ロウ(cera alba)がワックスとして用いられるところの、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
ワックスの含有量がプレミックスの重量のわずかな重量割合を占めるにすぎないところの、請求項5または6記載の組成物。
【請求項8】
約1部の活性成分と、複数部の、とりわけ9部のプレミックスとからなる、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
プレミックスが約1重量%ないし約4重量%のワックス、特に蜜ロウを含むところの、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
活性成分を油性プレミックスと一緒に攪拌し、組成物の粘度が活性成分の粘度と、その組成物が添加される油の粘度の間にあるように調節される、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項11】
プレミックスが少量部のワックスを含有するところの、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ワックスが、加熱条件下、例えば約40℃ないし約60℃でプレミックスの油性部分と一緒に攪拌されるところの、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ラメジン(lamegin)または類似する乳化剤をプレミックスに添加するところの、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
蜜ロウがワックスとして用いられるところの、請求項11ないし13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
プレミックスの油性部分が約1重量%ないし約4重量%のワックス、特に蜜ロウと攪拌されるところの、請求項11ないし14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
約1部の活性成分が、複数部の、とりわけ9部のプレミックスと一緒に攪拌されるところの、請求項10ないし15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
パン生地、ベーカリー製品または魚製品、あるいは化粧品に添加されるべき、油の添加物としての、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2007−511213(P2007−511213A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538821(P2006−538821)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012945
【国際公開番号】WO2005/046349
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(502435638)アクヴァノヴァ・ジャーマン・ソリュービリセイト・テクノロジーズ・(アーゲーテー)・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (6)
【氏名又は名称原語表記】AQUANOVA German Solubilisate Technologies (AGT) GmbH
【Fターム(参考)】