説明

流水式洗浄装置

【課題】本発明は、洗浄漕部の下流側から洗浄液を排出するに当たり、泡の発生を防止し、従来のように排液漕部から洗浄漕部に逆流した泡が洗浄能力を低下させることがないだけでなく、洗浄漕部内の洗浄水の流れ分布の調整をより容易に行うことができる流水式洗浄装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の流水式洗浄装置1においては、洗浄漕部3の最下流側に設けられている排水プレート41には一方が洗浄漕部3に向かって開口する複数の排水パイプ45が取り付けられている。排水パイプ45のそれぞれは各流量調整弁51を備えた流量調整装置5を通った後、まとめられてポンプPの吸入口に接続されている。ポンプPの吐出口側には、ポンプPから吐出された洗浄液の汚染物を取り除いて給液漕部へ循環供給するために洗浄液フィルターFが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや磁気ディスク基板、あるいはその他の電子部品、光学部品、又は精密機械部品のような、高精度の清浄度を必要とするワークを精密洗浄するための流水式洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一様な流れの洗浄液中にワークを浸漬させて洗浄する流水式洗浄装置は従来より各種のものが提案されている。この種の洗浄装置においては、ワークから剥離した汚染物質が洗浄液の乱流に乗って逆流してワークに再付着するのを防止する。このため、一般に、多孔状の整流板を流路の上流側と下流側とに設置し、これらの整流板を通すことによって洗浄液の流れを乱れのない一様な流れ(層流)になるように整流している。
【0003】
上記洗浄液の流速は、例えば5〜20mm/sec程度といった非常にゆっくりしたもので、その流速は主として洗浄液の供給量と排出量とのバランスによって決められ、ワークの種類や洗浄液の種類、洗浄精度等によって最適流速が相違する。
【0004】
流速は、整流板の通水孔の位置、直径、孔数の調整により、更に、不織布等の別の整流板を設けるあるいは加圧する等により調整される。更に、下流側、整流板上部から洗浄液を流下させることにより、水面にも積極的に流れを生じさせ、全体として逆方向の速度成分を持たない一様な流れを作るように努力が払われている。
【0005】
ところが、洗浄水として、洗剤などの界面活性剤を用いる場合、非常に泡立ちしやすく、蒸留水を使用するときには生じない問題が生じる。図3は、このような従来の流水式洗浄装置の一例を示す図である。この図において、図3(1)は、洗浄水として界面活性剤を用いている場合における、初期の状態を示し、図3(2)は泡立ちが進んだ時の状態を示す図である。
【0006】
流水式洗浄装置1において、洗浄液は、給液漕部2から整流板21を通って整流され、図面左側から洗浄漕部3に流れ込む。このとき洗浄液は一様な流れとなって右側に向かって流れる。洗浄漕部3と排液漕部4は、排水プレート41によって隔離されている。排水プレート41には複数の通水孔42が備えられている。洗浄されるワークWは洗浄漕部3内に浸漬された状態で、通常は、洗浄液の流れとは反対向き、つまり、下流から上流に向かってゆっくりと移動させられる。
【0007】
整流板21、この通水孔42の位置、直径、孔数の調整、あるいは排液漕部4の水位の調整によって一様な流れを作り出すものであるが、通水孔42を通った、あるいは、排水プレート41の上部からあふれ出た排液は、排液漕部4の水面に落下する。これにより排液漕部4の水面には泡bが立つ。
【0008】
界面活性剤の場合、自然に消泡することはまれで、発生した泡は排液漕部4内にそのままとどまるため、時間が経過すると泡の大きな塊となり、図3(2)に示すように一部の泡bが押し出され、洗浄漕部3の上部にまで侵入することになる。侵入した泡bは、洗浄漕部3の液面に接触し、液面上を泡のままあるいは破裂した泡の成分が広がる。
【0009】
この泡は、洗い流した汚れが多量に含まれている排液が発泡したものであるため、泡自体に不純物が含まれているだけでなく、泡の表面にも多量の汚れが吸着されている。このため、上記のように洗浄漕部3に泡が侵入するのでは、洗浄液自体が汚染されることになるので、流水式洗浄装置1の洗浄能力が維持できなくなる。
【0010】
【特許文献1】特開平05−253410号公報
【特許文献2】特開平07−302777号公報
【特許文献3】特開平09−090643号公報
【特許文献4】特開平09−285767号公報
【特許文献5】特開平11−076956号公報
【特許文献6】特開2000−058499号公報
【特許文献1】特開2002−222790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、洗浄漕部の下流側から洗浄液(排液)を排出するに当たり、泡の発生を防止し、従来のように排液漕部から洗浄漕部に逆流した泡が洗浄能力を低下させることのない流水式洗浄装置を提供することを課題とする。更に、従来必要であった排液漕部を実質的に不要とすることができ、従来よりも狭い設置面積で済む、あるいは、反対により広い洗浄漕部をもてるような流水式洗浄装置を提供することを課題とする。更に、洗浄漕部内の洗浄水の流れ分布の調整をより容易に行うことができる流水式洗浄装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、以下の手段によって解決される。すなわち、第1番目の発明の流水式洗浄装置は、洗浄液を供給するための給液漕部、整流板を介して上記給液漕部と区分けされた洗浄漕部であって、上記整流板を通して上流側から下流側へと下る洗浄液の流れの中でワークを洗浄するための洗浄漕部、上記洗浄漕部の下流側に設けられた排水プレート、上記排水プレートに設けられ、一方が上記洗浄漕部に向かって開口する複数の排水パイプ、上記複数の排水パイプの他方に設けられ、排水パイプ内の洗浄液を吸入口から吸い込んで吐出口から吐出するポンプ、上記それぞれの排水パイプの途中に設けられ、それぞれの排水パイプ内を通過する洗浄液の流量を調整する流量調整装置、及び、上記ポンプの吐出口側に設けられ、吐出された洗浄液を上記給液漕部へ供給するための流路中に設けられた洗浄液フィルターを備えたことを特徴とする流水式洗浄装置である。
【0013】
第2番目の発明の流水式洗浄装置は、第1番目の発明の流水式洗浄装置において、上記流量調整装置は、調整可能な流量調整弁であることを特徴とする流水式洗浄装置である。
【0014】
第3番目の発明の流水式洗浄装置は、第1番目の発明の流水式洗浄装置において、上記流量調整装置は、交換可能なオリフィスであることを特徴とする流水式洗浄装置である。
【0015】
第4番目の発明の流水式洗浄装置は、第1番目から第3番目までの発明の流水式洗浄装置において、上記排水プレートは、その上部からも洗浄液が流れ出ることができ、ここから流れ出た洗浄液はこの排水プレート上部に形成された樋体に流れ込み、この樋体から上記排水パイプの一つによって上記ポンプに導かれることを特徴とする流水式洗浄装置である。
【0016】
第5番目の発明の流水式洗浄装置は、第1番目から第3番目までの発明の流水式洗浄装置において、上記排水プレートは、その上部からも洗浄液が流れ出ることができ、ここから流れ出た洗浄液はこの排水プレートによって区画された排液漕部に流れ込み、この排液漕部から上記排水パイプの一つによって上記ポンプに導かれることを特徴とする流水式洗浄装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の流水式洗浄装置によれば、洗浄漕部の下流側から洗浄液(排液)を排出するに当たって泡の発生が防止され、従来のように排液漕部から洗浄漕部に逆流した泡が洗浄能力を低下させることがないという効果がある。更に、従来必要であった排液漕部を実質的に不要とし、従来よりも狭い設置面積で済む、あるいは、反対により広い洗浄漕部をもてるようになるという効果がある。更に、洗浄漕部内の洗浄水の流れ分布の調整をより容易に行うことができるという効果がある。
【0018】
第2番目の発明によれば、特に、流量調整を排水パイプの途中に設けられた流量調整弁によって行うので、従来のような排水プレートの孔調整に比べて流量調整が遙かに容易となるという効果がある。
【0019】
第3番目の発明によれば、特に、流量調整を排水パイプの途中に設けられたオリフィスの交換によって行うので、従来のような排水プレートの孔調整に比べて流量調整が遙かに容易となるという効果がある。
【0020】
第4番目の発明によれば、排水プレート上部からも洗浄液を排出する必要があるときでも、水面部分の洗浄液は、落差のない排水プレート上部に形成された樋体に流れ込むため、泡がほとんど立たず、また、仮に泡が立った場合でも、流れ込んだ洗浄液と共に排水パイプによって吸引されるので、洗浄漕部へ逆流するようなことがないという効果が生じる。
【0021】
第5番目の発明によれば、排液漕部の水位は、洗浄漕部内の流速に影響を及ぼさないため、排液漕部の水位を、洗浄漕部の水位の下であって、この水位にきわめて近い水位にまで上げることができる。このため、洗浄漕部から排液漕部に洗浄液が流れ込むとき、ほとんど泡を発生しないようにすることができる。そして、それでも泡が発生した場合でも、水面近くに開口する排水パイプから容易に吸引されるので、この泡が洗浄漕部に移動し、これを汚染することがないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づき本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の実施例1の流水式洗浄装置1の説明図である。先の従来技術の説明において使用した符号は、類似の機能を果たす部材に対しては、図1においても同じ符号が使用されているが、これは便宜的であって、同じ符号が厳密に同じ機能を果たすとは限らない。
【0023】
流水式洗浄装置1は、洗浄液を供給するための給液漕部2、及び、整流板21を介して給液漕部2と区分けされた洗浄漕部3を備えている。洗浄液は給液漕部2から洗浄漕部3内へと整流板21を通して流れ出て、更に洗浄漕部3内を上流側から下流側へ(図中左から右へ)と下る。ワークWは、この洗浄液内に浸漬され、洗浄液の流れの中を反対向きに下流から上流へとゆっくりと移動されて洗浄される。
【0024】
洗浄漕部3の最下流側には、排水プレート41が設けられている。この排水プレート41には一方が洗浄漕部3に向かって開口する複数の排水パイプ45が取り付けられている。排水パイプ45は、それぞれが流量調整装置5(後述)を通った後、まとめられてポンプPの吸入口に接続されている。ポンプPの吐出口側には、ポンプPから吐出された洗浄液の汚染物を取り除いて給液漕部へ循環供給するために洗浄液フィルターFが設けられている。
【0025】
流量調整装置5は、複数の排水パイプ45のそれぞれについて、そこを流れる流量を調整することができるものである。図2は流量調整装置5のパネル面50を示す。ここでは、流量計52付きの流量調整弁51を使用したものを示している。この流量調整弁51は、それぞれ排水パイプ45の途中に取り付けられているので、排水パイプ45の数だけ存在することになる。
【0026】
流量調整弁51では、ダイヤル53によってニードルの侵入量を調整することにより、その絞り量が調整される。洗浄漕部3から来た流れは、流量調整弁51下側であってダイヤル53の背後から流量調整弁51に入って絞られ、流量計52を通って上側、背後から抜け出す。各流量調整弁51の排出側が合流してポンプPへと流れる。
【0027】
流量計52は、上広がりのテーパーをもった目盛り付きガラス管に下から流体を流し、目印となる目印玉521の位置が流量によって変わることから、流量を測定するものである。流量調整装置5は、図2に示されるようにパネルにまとめられているため、洗浄漕部3内の流速分布の調整を容易に行うことができるが、このようにパネルとしてまとめることは必ずしも必要ではない。
【0028】
従来と同様に、排水プレート41の上部からも洗浄液が流れ出るようにすることができる。この場合、排水プレート41の上部に傾斜面をもった樋体6を設け、この樋体6に流れ出た洗浄液をここから排水パイプ45の一つによってポンプPに導くようにすることができる。この排水パイプ45が他の排水パイプ45と同様に流量調整装置5を通ることは言うまでもない。
【0029】
落差がほとんど無いことと傾斜面とによって、流れ出た洗浄水が樋体6内で泡立つことはほとんど無いが、泡だった場合でも、排水パイプ45により樋体6からすぐに強制的に排除されるので溜まった泡が洗浄漕部3に逆流するようなことはない。
【0030】
また、従来と同様に、排水プレート41の後部(図1において排水プレート41の右側)に排液漕部4を形成することができるが、この場合の排液漕部4は、従来のような通水孔42を介して洗浄漕部3と結ばれているものではない。つまり、従来のように洗浄漕部3と排液漕部4とが通水孔42を挟んでそこの圧力差によって流量を調整しなければならないものではない。このため、排液漕部4の水位は自由に設定することができる。
【0031】
したがって、排液漕部4の水位を洗浄漕部3の水位に限りなく近づけることができるので、排水プレート41上部から排液漕部4に流れ落ちる時の落差を泡が立たない程度の非常に小さい落差にすることができる。落差をほとんど無くすことができるので、泡立ちが抑えられるばかりでなく、仮に泡だった場合でも、排液漕部4の上部に排水パイプ45を設けて泡を強制的に排除できるので、溜まった泡が洗浄漕部3に逆流するようなことはない。
【0032】
上で説明した流量調整装置5は、流量調整弁を使用するものとして説明したが、管路中に交換可能に挿入されるオリフィスとすることもできる。オリフィスはそれ自体では流量調整ができるものではないが、多数のオリフィスを用意しておき、これを交換することによって流量調整を行うことができる。同じ型の流水式洗浄装置を多数製造する場合、オリフィスの同じ組み合わせを共通して使用することができ、コストダウンが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例の流水式洗浄装置1の説明図である。
【図2】流量調整装置5のパネル面50を示す説明図である。
【図3】従来の流水式洗浄装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 流水式洗浄装置
2 給液漕部
21 整流板
3 洗浄漕部
4 排液漕部
41 排水プレート
42 通水孔
45 排水パイプ
5 流量調整装置
50 パネル面
51 流量調整弁
52 流量計
53 ダイヤル
521 目印玉
6 樋体
b 泡
F 洗浄液フィルター
P ポンプ
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を供給するための給液漕部、
整流板を介して上記給液漕部と区分けされた洗浄漕部であって、上記整流板を通して上流側から下流側へと下る洗浄液の流れの中でワークを洗浄するための洗浄漕部、
上記洗浄漕部の下流側に設けられた排水プレート、
上記排水プレートに設けられ、一方が上記洗浄漕部に向かって開口する複数の排水パイプ、
上記複数の排水パイプの他方に設けられ、排水パイプ内の洗浄液を吸入口から吸い込んで吐出口から吐出するポンプ、
上記それぞれの排水パイプの途中に設けられ、それぞれの排水パイプ内を通過する洗浄液の流量を調整する流量調整装置、及び、
上記ポンプの吐出口側に設けられ、吐出された洗浄液を上記給液漕部へ供給するための流路中に設けられた洗浄液フィルター
を備えたことを特徴とする流水式洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載された流水式洗浄装置において、
上記流量調整装置は、調整可能な流量調整弁であること
を特徴とする流水式洗浄装置。
【請求項3】
請求項1に記載された流水式洗浄装置において、
上記流量調整装置は、交換可能なオリフィスであること
を特徴とする流水式洗浄装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載された流水式洗浄装置において、
上記排水プレートは、その上部からも洗浄液が流れ出ることができ、ここから流れ出た洗浄液はこの排水プレート上部に形成された樋体に流れ込み、この樋体から上記排水パイプの一つによって上記ポンプに導かれること
を特徴とする流水式洗浄装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載された流水式洗浄装置において、
上記排水プレートは、その上部からも洗浄液が流れ出ることができ、ここから流れ出た洗浄液はこの排水プレートによって区画された排液漕部に流れ込み、この排液漕部から上記排水パイプの一つによって上記ポンプに導かれること
を特徴とする流水式洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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