説明

流路遮断弁

【課題】異物の侵入による影響を有効に抑制し、異常発生時の緊急動作の信頼性を向上することが可能な流路遮断弁を提供する。
【解決手段】流路遮断弁10Aは、ガス等の流体が流入する管状の流入部21、および、当該流体が流出する管状の流出部22を有する本体部11と、流出部22内に、軸方向に進退移動可能に設けられる弁体12とを備えている。そして、流入部21および流出部22の位置関係は、流入軸および流出軸の方向がねじれの位置となる関係にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路遮断弁に関し、特に、互いに異なる方向に配置される流入口および流出口を有する流路遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス配管等の流体が流れる配管、あるいは、これら流体の流量を計測する流量計(ガスメータ)等には、流体が漏洩する異常が発生したときに、配管内の流体の流れを遮断するための流路遮断弁が設けられている。
【0003】
一般的な流路遮断弁の構成について一例を挙げて説明する。例えば、特許文献1に開示される流路遮断弁(特許文献1では「遮断弁」)は、ガスメータに設けられており、当該ガスメータのハウジングの一部に設けられる弁座部と、この弁座部に対して移動可能に設けられる弁体と、この弁体を移動させるための電磁駆動機構とを備えている。
【0004】
弁体には弁受けが設けられており、電磁駆動機構が弁受けを引き込むことにより弁体が弁座部から離脱する。この状態が流路遮断弁の開状態である。また、電磁駆動機構が弁受けを押し出すことにより弁体は弁座部に当接する。この状態が流路遮断弁の閉状態である。弁体における弁座部に当接する部位には弁ゴムが設けられている。この弁ゴムの当接面が、弁座部の表面(弁座部の当接面)に圧着されることにより、流路遮断弁の閉状態が気密に維持される。
【0005】
特許文献1においては、弁体の移動は電磁駆動機構により行われるが、例えば、特許文献2に開示されるように、電磁駆動機構に代えてモータ等の電動機、ダイヤフラム等の空力機構、スプリング等で構成される駆動機構を用いることもできる。
【0006】
流路遮断弁はガスメータの上部の一端側に設けられており、ガスはガスメータの上側から遮断弁を介して当該ガスメータ内部に流入する。したがって、遮断弁におけるガスの流入口はガスメータの上方を向いており、流出口はガスメータの内部側すなわち流出口の方向に対して折れ曲がった方向に向いている。言い換えれば、ガスの流入側流路と流出側流路とが交差する位置に遮断弁の要部(弁体および弁座部)が設けられることになる。
【0007】
ところで、配管または流量計等を設置したり交換したりする工事に伴って、配管内に異物が残存することがある。このような異物は、ガス等の流体の流れとともに配管内を移動し、配管につながる各種の弁または機器に損傷を与えるおそれがある。そこで、例えば、特許文献3には、弁棒を保護する保護部材を備える流路遮断弁が開示されている。
【0008】
この流路遮断弁(特許文献3では流体遮断弁)は、弁棒(特許文献3ではリードシャフト)を筒状体に挿入して弁棒の雄ねじ部と筒状体の雌ねじ部とを螺合させ、これら弁棒と筒状体とを駆動機構(特許文献3では電動アクチュエータ)により相対的に螺進させて、弁体を開閉動作させる構成となっており、保護部材は、筒状体の開口端部を弁棒の雄ねじ部とともに内包するよう設けられている。これにより、弁棒の雄ねじ部、および、当該雄ねじ部と筒状体の雌ねじ部との螺合部分が、流路内で常に剥き出しにならないため、異物の侵入による動作不良を防止することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−205434号公報
【特許文献2】特許3006288号公報
【特許文献3】特開平11−173430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜3に開示される流路遮断弁は、前述したように、ガス漏れ等の異常発生時に確実にガスの流通を遮断する必要がある。ここで、流路遮断弁に異物が侵入したときには、弁受けの動作部分に異物が接触して残存する等して弁体が適切に移動できないだけでなく、弁座部に異物が接触して残存する等して、流路遮断弁の閉状態が適切に保持されない可能性もある。
【0011】
一般的な商用ガス(天然ガス、プロパンガス等)の配管には、異物を除去するためのストレーナが設けられたり、各種工事において異物が残存しないように工夫されたりしているため、流路遮断弁の動作不全が発生する可能性は、通常、極めて低いものとなっている。ところが、例えば、環境保護の観点から近年開発が進んでいるバイオガスプラントでは、一般的な商用ガスに比べてガス中に異物が含まれる可能性が高くなっている。これは、バイオガスプラントは廃棄物を発酵させてメタンガス等を生産するものであるが、廃棄物中には様々な異物が含まれるためである。
【0012】
特許文献3に開示の技術は、弁棒を保護する保護部材を備える構成であるため、弁体の開閉動作の信頼性を向上させることができる。ただし、保護部材は、筒状体と同心円状の円筒形となっており、駆動機構により弁棒が正逆回転すると、筒状体は、保護部材の内周面に摺接しながら弁体と一体に往復動するよう構成されている。したがって、異物混入の可能性が高ければ、保護部材と筒状体との間に異物が侵入する可能性は否定しきれず、また、弁座部への異物の接触等も有効に回避できない可能性がある。
【0013】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、異物の侵入による影響を有効に抑制し、異常発生時の緊急動作の信頼性を向上することが可能な流路遮断弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る流路遮断弁は、前記の課題を解決するために、流体が流入する管状の流入部、および、前記流体が流出する管状の流出部を有する本体部と、前記流出部内で当該流出部の中心軸方向に進退移動可能に設けられる弁体と、前記流出部の中心軸方向に沿って配置され、前記弁体を支持する弁棒と、前記流出部の流出口に設けられ、前記弁体が当接した状態で前記流体を遮断する弁座部と、を備え、前記流入部および前記流出部は、それぞれの中心軸がねじれの位置となる状態で、互いに接続されている構成である。
【0015】
前記流路遮断弁においては、前記流入部の中心軸は、前記流出部の中心軸と外周面との間に位置している構成であってもよい。
【0016】
前記流路遮断弁においては、前記流出部に対する前記流入部の接続位置は、前記流入部の流入口から前記弁体の一端のみが目視できる位置である構成であってもよい。
【0017】
前記流路遮断弁においては、前記本体部内には、前記流出部内に形成される流体の旋回流の強さを緩和する旋回流緩和部材が設けられている構成であってもよい。
【0018】
前記流路遮断弁においては、前記旋回流緩和部材は、前記流体の流入方向に沿って配置される板状部材である構成であってもよい。
【0019】
前記流路遮断弁においては、開状態にあるときの前記弁体の位置を基準位置とし、前記流入口の直径をDとしたときに、当該弁体は、基準位置から0.46D〜0.63Dの範囲内で前進させたときに、前記旋回流緩和部材として機能する構成であってもよい。
【0020】
前記流路遮断弁においては、前記旋回流緩和部材は、前記流出部の内周面に、軸方向に沿って延設される複数のリブ部材である構成であってもよい。
【0021】
前記流路遮断弁においては、前記旋回流緩和部材は、前記弁体の流出側の面に、当該面の中心から放射状に延設される複数のリブ部材である構成であってもよい。
【0022】
前記流路遮断弁においては、前記弁棒を進退移動させる駆動機構をさらに備え、当該駆動機構は、前記流出部の流出口の反対側となる端部に位置している構成であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明では、異物の侵入による影響を有効に抑制し、異常発生時の緊急動作の信頼性を向上することが可能な流路遮断弁を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1に係る流路遮断弁の構成の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示す流路遮断弁の内部構成を示す縦断面図である。
【図3】(a)は、図1に示す流路遮断弁の開状態を上方から示す模式的平面図であり、(b)は、図1に示す流路遮断弁の閉状態を上方から示す模式的平面図である。
【図4】図1に示す流路遮断弁の流出部内に旋回流が生じている状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る流路遮断弁の構成を、前記実施の形態1に係る流路遮断弁の構成と対比して示す断面図である。
【図6】図5に示す流路遮断弁を上方から見た状態を示す平面図である。
【図7】(a)は、図5および図6に示す流路遮断弁の開状態を上方から示す模式的平面図であり、(b)は、(a)に示す流路遮断弁の開状態における流体の流れを示す模式的断面図である。
【図8】図5に示す流路遮断弁における弁体の位置と流体の圧力損失との関係の一例を示すグラフである。
【図9】図8に示すグラフにおける弁体の基準位置と前進位置の下限値および上限値とを対比して示す模式図である。
【図10】(a)は、本発明の実施の形態3に係る流路遮断弁が備える本体部の構成の一例を示す斜視図であり、(b)は、図1または図5に示す流路遮断弁が備える本体部の構成の一例を示す斜視図である。
【図11】図10(a)に示す流路遮断弁の流出部内に生じる旋回流が緩和されている状態を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係る流路遮断弁の他の構成の一例を示す縦断面図である。
【図13】図12に示す流路遮断弁が備える弁体の構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0026】
(実施の形態1)
[流路遮断弁の構成]
まず、本発明の実施の形態1に係る流路遮断弁の構成の一例について図1、図2および図3(a)、(b)、並びに図5を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態1に係る流路遮断弁10Aは、流入部21および流出部22を有する本体部11と、弁体12と、弁受け13と、弁座部14と、駆動機構15と、付勢バネ16と、コネクタ部17とを備えている。本実施の形態では、流路遮断弁10Aに流入および流出する流体は、天然ガスまたは液化石油ガス(LPガス)等の公知のガスである。本体部11は、互いに異なる方向に配置され、ガスを流入するための流入口21aとガスを流出させるための流出口22aとを有している。
【0028】
本体部11は、内部に流路遮断弁10Aの要部である弁体12および弁受け13を収容する弁箱と、弁箱内部にガスを流入および流出させる流路とを構成するものである。流入部21は、本体部11においてガスを流路遮断弁10A内に流入させるための部位であって、円筒形の管状となっている。また、流出部22は、本体部11において流路遮断弁10A内に流入したガスを流出させるための部位であって、流入部21と同様に円筒形の管状となっている。さらに、流出部22の内部には弁体12および弁受け13が配置されている。したがって、流出部22は、ガスを流出させるための流路を構成する部位であるとともに、弁体12および弁受け13を収容する弁箱でもある。
【0029】
流入部21は、図1に示すように、流路遮断弁10Aの上下方向に沿って設けられており、流出部22は、図2に示すように、流路遮断弁10Aの前後方向に沿って設けられている。そして流入部21および流出部22は、少なくともその一端が開口となっている。具体的には、流入部21の一端(上流端)は、図2に示すように、ガスを流入させる流入口21aとなっており、他端(下流端)は、流入したガスを流出部22の上部側方から導入する流出部導入口21bとなっている。また、流出部22の一端(下流端)は、図2に示すように、流入したガスを流出させる流出口22aとなっているが、他端は開口ではなく閉じられた閉塞部となっており、この閉塞部には駆動機構15が設けられている。また、流出部22の上流端は、流入部21の下流端(流出部導入口21b)と実質的に一致している。
【0030】
なお、本実施の形態(並びに後述する他の実施の形態)では、流出部22の開口側すなわち流出口22aの側を前方、その反対側である流出部22の閉塞側、すなわち駆動機構15が設けられている側を後方とする。また、流出部22を水平方向に沿って配置させたときに、本実施の形態では、流入部21は垂直方向に配置されるので、流入部21の開口側すなわち流入口21aの側を上方、その反対側である流出部導入口21bの側をした方とする。さらに、流路遮断弁10Aの前後方向を縦方向とし、上下方向を高さ方向とし、前後方向に対して水平面に直交する方向を横方向とする。
【0031】
したがって、図1は、流路遮断弁10Aを前方から見た平面図(正面図)であり、図2は、流路遮断弁10Aの縦断面図である。また、本体部11においては、図1に示すように、流出部22における向かって左横側に流入部21が設けられている。さらに、図1に示すように、管状の流入部21の中心軸を流入軸X1とし、管状の流出部22の中心軸を流出軸X2とすれば、本発明では、流入軸X1と流出軸X2とは交差せず、それぞれの軸方向がねじれの位置となっている。この点については後に詳述する。
【0032】
流入部21および流出部22は互いに直接接続されている。具体的には、前述したように、流出部22の上流端は、流入部21の下流端(流出部導入口21b)と実質的に一致しているため、図1に示すように、外観上では、流出部22の左上部の外周に、流入部21の右下部が食い込むような構成となっている。図2に示すように、流入部21と流出部22とは、流出部導入口21bにより接続されているが、この流出部導入口21bは、円管(流入部21)の右下部を切り欠くことにより形成される開口と同様の形状を有しており、この開口が流出部22の左上部にも形成されていることになる。
【0033】
流出部22内に設けられる弁体12は、流出部22の断面形状に応じた円板形状を有しており、図2に示すように、その後面に弁受け13が取り付けられている。弁体12の具体的な構成は特に限定されないが、少なくとも前面の周縁部はゴム等の弾性部材で形成されていることが好ましい。これは、後述するように、弁体12の周縁部が弁座部14に当接することによって流出口22aを閉止するためである。周縁部が弾性部材であれば、弁座部14に当接したときに気密性を向上させることができるので、ガスを遮断する作用の信頼性を高めることができる。
【0034】
弁体12を支持する弁受け13は、流出部22の流出軸X2に沿って配置される円筒状の部材である。弁受け13の前端は図2に示すように弁体12を支持し、その後端は図5の下図に示すように駆動機構15のリードシャフト18につながっている。リードシャフト18の外周面には雄ネジが形成されており、弁受け13の内周面には雌ネジが形成されている。それゆえ、弁受け13はリードシャフト18に螺合した状態にあるので、駆動機構15の動作によりリードシャフト18が回転して弁受け13が進退移動する。なお、本実施の形態では、弁受け13およびリードシャフト18により弁体12を支持する弁棒が構成されている。
【0035】
駆動機構15は、本実施の形態では、公知のステッピングモータおよびギヤ機構(リードシャフト18を含む)で構成され、ステッピングモータの回転により弁受け13を進退移動させる。それゆえ、弁受け13の前端で支持される弁体12は、弁受け13の進退移動に応じて流出部22内で流出軸X2方向に進退移動可能となっている。
【0036】
なお、弁受け13の構成は特に限定されず、弁体12を支持できる材質で構成され、駆動機構15のリードシャフト18に螺合可能な筒状体であればよい。本実施の形態では、弁受け13は弁体12の背面を支持する円板状部位とともに樹脂成型により一体的に構成されている。また、弁棒の構成は、本実施の形態における弁受け13およびリードシャフト18に限定されず、公知の他の構成であってもよい。
【0037】
本実施の形態では、図2に示すように、弁受け13は、本体部11の一部である筒状部23内に挿入されている。この筒状部23は、弁受け13と同様に流出部22の流出軸X2に沿って位置しており、その先端側(弁体12側)には付勢バネ16が設けられている。この付勢バネ16は、弁体12が弁座部14に当接した状態(流出口22aを閉止した状態)で、弁体12が弁座部14から離れないように弁座部14に向かって弁体12を付勢するための部材である。なお、付勢バネ16の構成は特に限定されず、公知のバネ部材を好適に用いることができる。
【0038】
駆動機構15は、コネクタ部17を介して図示されない電源に接続される。具体的には、図示されないリード線により電源とコネクタ部17とを接続することにより、駆動機構15に電源が供給される。また、駆動機構15は、図示されない制御部の制御により動作する。制御部は、公知のマイクロプロセッサ等により構成され、本実施の形態に係る流路遮断弁10Aが設けられる機器またはシステムの指令信号に応じて、駆動機構15を動作させる。したがって、弁体12の進退移動(後述する弁体12の開状態または閉状態)は制御部により制御されることになる。
【0039】
本実施の形態では、駆動機構15は、流出部22における開口側の反対側となる閉塞した端部に位置しているが、本発明はこれに限定されず、駆動機構15は弁受け13を進退移動することが可能な公知のさまざま位置に設けることができる。また、本実施の形態では、図1に示すように、コネクタ部17は、流路遮断弁10Aの前側から見て向かって右上に位置しているが、コネクタ部17の位置もこれに限定されず、公知のさまざまな位置に設けることができる。
【0040】
流出部22の開口側すなわち流出口22aには、弁体12に当接する弁座部14が設けられている。弁座部14は、図2に示すように、流出口22aに嵌合する円環状の枠体となっており、当該枠体の外径は流出部22の内径よりも小さくなっている。この枠体は、流出口22aから見て流出部22の後方(すなわち弁体12側)に突出している。弁体12の前面の周縁部は、弁座部14に当接する弁体当接面12aとなっており、弁座部14の弁体12に対向する面は、弁体当接面12aに当接する弁座当接面14aとなっている。なお、図1は、特に流入軸X1および流出軸X2を説明する流出部22に設けられる弁座部14を取り外した状態を示している。
【0041】
ここで、図3(a)および(b)において流路遮断弁10Aを平面視した構成を模式的に示す。図3(a)に示すように、弁体12と弁座部14とが当接していない状態は、弁体12が開いている開状態である。なお、図3(a)に示す模式図は、図2に示す断面図の状態に対応する。この開状態では、図3(a)および図2において矢印F1で示すように、ガスは流入口21aから流入部21内に流入し、図2に示す流出部導入口21bを介して流出部22内に流入し、弁体12と弁座部14との間を経て、図3(a)および図2において矢印F2で示すように流出口22aから流出する。
【0042】
一方、図3(b)に模式的に示すように、弁体12と弁座部14とが当接している状態は、弁体12が閉じた閉状態である。この状態では、図2に示す弁体12の弁体当接面12aが弁座部14の弁座当接面14aに接触するので、流出口22aは弁体12によって閉じられる。それゆえ、流入口21aからガスが流入しても本体部11からガスが流出できないため、ガスが遮断される。なお、図3(b)では、説明の便宜上、流出口22aからガスが流出しないので、流出方向を示す矢印F2は点線で示してガスの流出が無いことを表している。
【0043】
[流入軸および流出軸の位置関係]
次に、前記構成の流路遮断弁10Aにおいて、流入軸X1および流出軸X2の位置関係について、図1ないし図4を参照して具体的に説明する。
【0044】
本実施の形態では、前述したように、流入部21の流入軸X1と流出部22の流出軸X2とがねじれの位置となるように、これら流入部21および流出部22が本体部11に設けられている。具体的には、図1に示すように、流路遮断弁10Aを前方から見たときに、流出部22は、その中心軸(流出軸X2)が前後方向(縦方向)に沿って配置しており、流入部21は、その中心軸(流入軸X1)が上下方向(高さ方向)に沿って配置しているが、流入部21は、流出部22における向かって左上部につながるように位置している。
【0045】
この状態では、流出軸X2は図1において紙面の法線方向に沿って位置しているのに対して、流入軸X1は、流出軸X2に交差することなく、流出軸X2に対して直角をなして紙面方向に位置している。つまり、流入軸X1および流出軸X2は、同一平面内で平行にも交差するようにも配置しておらず、ねじれの位置(skew position)にある。このとき、図3(a)に模式的に示すように、流入口21aから流出部22内を見れば、弁体12の一端のみが目視できる。
【0046】
このように、流入軸X1および流出軸X2が平行でない状態で交差せずにずれた状態にあれば、図4に示すように、流入部21から流入したガスは弁箱を兼ねる流出部22に勢い良く流入することがなく、流出部22の側方(図4および図1では左上方)から比較的緩やかに流入することになる。言い換えれば、ガスは流出軸X2に直交(または交差)する方向から直接的に流れ込むのではなく、流出軸X1の方向からいったん折れ曲がった上で流出軸X2に交差する方向に流れ込むことになる。それゆえ、ガスに異物が含まれており、弁箱である流出部22内に異物が侵入しても、弁受け13に異物が接触した状態で残存する可能性を低減することができる。
【0047】
さらに、弁箱を兼ねる流出部22内では、流出部22の上部側方からガスが流入するため、図4に示すように、流出部22内では矢印F3で示す旋回流が形成される。この旋回流は、流出部22の断面方向、すなわち、流出部22の内周面に沿って流出軸X2を中心に周回する方向に沿った流れとなっている。弁体12は弁座部14に対向するように位置しているため、ガスに異物が含まれていても、当該ガスは弁座部14に向かって強く流れることがなく弁体12の前側で旋回流となって流れるので、異物が弁座部14に接触した状態で残存する可能性を有効に低減することができる。
【0048】
異物の接触および残存に関してより具体的に説明する。前述した弁受け13または弁座部14等は、本体部11内において流路内に位置したり流路の中心に向かって突出したりする部材または部位である。このような部材または部位を便宜上、流路内突出部位と称すると、ガスに異物が含まれていれば、当該異物が流路内突出部位に接触したときに、ガスの圧力によって流れ方向に向かって押し付けられて、流路内突出部位に残存するおそれがある。また、ガスの圧力により押し付けられないとしても、異物の種類によっては、流路内突出部位に異物が接触することで、その表面に異物が付着する可能性があり、流路内突出部位の構造によっては、当該流路内突出部位に異物が接触することで引っかかる可能性もある。
【0049】
これに対して、本実施の形態では、流入軸X1および流出軸X2がねじれの位置にあるので、前述したように流出部22に流入するガスの勢いが緩和される。さらに、流出部22の内部では旋回流が形成されるので、当該流出部22内では、流出軸X2に沿った単純な流れではなく旋回流を含む多様な流れが生じ得る。そのため、ガスに含まれる異物が流出部22内に侵入しても、当該異物は弁受け13または弁座部14に接触して押さえつけられるような状態で維持される可能性を低くすることができる。
【0050】
しかも、流出部22内に異物が侵入しても、旋回流が形成されることにより当該異物は流出部22の中心部付近に集まりやすくなる。そのため、流出部22内に異物が侵入していても、ガスが矢印F2方向に流出する際に、当該異物が流出口22aの外周に位置する弁座部14に接触する可能性をより低くすることができる。その結果、流路遮断弁10A内において、異物の侵入による影響を有効に抑制し、異常発生時の緊急動作の信頼性を向上することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、前述したように、弁受け13は筒状部23により保護されているので、弁受け13のうち筒状部23内に収納されている部位については、異物の接触を実質的に防止することができる。さらに、弁受け13を覆う筒状部23も流路突出部位ということができるが、この筒状部23に対しても異物が接触して残存する可能性を低減することができる。開状態から閉状態に移行する過程で弁受け13は筒状部23から露出することになるが、筒状部23に異物が残存していなければ、露出した弁受け13が筒状部23内に戻るときに、弁受け13と筒状部23との隙間に異物が入るおそれを実質的に回避することができる。
【0052】
さらに、流入軸X1および流出軸X2がねじれの位置となっていれば、流路遮断弁10Aの取り付けの自由度を高めることができる。例えば、既存のガスメータ内部に流路遮断弁に取り付ける場合に、一般的な構造(流入軸X1および流出軸X2が交差している構成)の流路遮断弁を取り付けることができない部位であっても、本実施の形態に係る流路遮断弁10Aであれば、流入軸X1および流出軸X2のねじれの位置関係を設置場所に合わせて適宜設定することで設置が可能となる。
【0053】
ここで、流入軸X1および流出軸X2はねじれの位置にあればよく、流入部21および流出部22の具体的な位置関係は特に限定されない。例えば、本実施の形態では、図1に示すように、流出部22の左上方に流入部21がつながるような位置関係にあるが、右上方につながるような位置関係にあってもよいし、左下方または右下方につながるような位置関係であってもよい。言い換えれば、流出口導入部21bから流出部22内に導入されるガスの流れ方向(導入方向)は、流入軸X1に対して直交しないように交差していればよい。
【0054】
また、流入部21は、図1に示すように、流出部22の左右の上部側方につながっていることが好ましい。言い換えれば、前記導入方向が前記流出軸X1に対して鈍角を成すように交差していることが好ましい。これにより、流入部21と流出部22とをつなぐ流出部導入口21bは、流出部22の側部の上方に偏在することになるため、本体部11の容積の増大を回避できるとともに、流出部22内に旋回流を形成させやすくなる。
【0055】
さらに、流出部22に対する流入軸X1の位置は、図1に示すように、流出部22における流出軸X2(図1の位置P1)から流出部22の外周面(図1の位置P2)の間であることが好ましい。流入部21および流出部22がこのような位置関係で本体部11に設けられていれば、本体部11の容積の増大を抑制できるとともに旋回流の過剰な増大も抑制することができるので、旋回流の発生によるガスの流出しにくさ(圧力損失)を有効に抑制することができ、流路遮断弁10A内で円滑なガスの流れを形成することができる。
【0056】
[変形例]
本実施の形態に係る流路遮断弁10Aは前述した構成のみに限定されるものではない。例えば、本体部11は、流入部21および流出部22を有し、流出部22が弁箱を兼ねている構成に限定されず、流入部21および流出部22以外に、他の機能を有する部位が設けられてもよい。具体的には、図2に示すように、弁受け13を覆う筒状部23、あるいは、図1および図2に示すように、本体部11の上部に設けられるフランジ部24等を挙げることができる。
【0057】
筒状部23は、図2に示すように、弁体12が開状態にあるとき、弁受け13を覆うように流出部22の後端から前方に延伸するよう設けられている。これにより、開状態で弁受け13を保護することができる。フランジ部24は、流路遮断弁10Aを所定の位置に取り付けるための平板状の枠体であり、ボルト、ネジ、ピン部材、リベット等の固定部材を挿入できる貫通孔が設けられている。筒状部23およびフランジ部24の具体的な構成は特に限定されず、流路遮断弁10Aの具体的な構成に応じて公知の種々の構成を採用することができる。例えば、フランジ部24は上面ではなく下面に設けられてもよい。
【0058】
また、本実施の形態では、流入部21および流出部22は円管状(円筒状)であるが、流入部21および流出部22の形状はこれに限定されず、断面が楕円状の管構造であってもよいし、流体の種類によっては、断面が矩形や多角形等であってもよい。さらに、本実施の形態では、流入部21と流出部22とは流出部導入口21bを介して直接つながっているが、流入部21および流出部22の間に短い管構造(流出部導入管)が設けられてもよい。
【0059】
なお、本実施の形態では、流入口21aから弁体12の一端のみが目視できる位置に、流入部21が流出部22に接続されていることが好ましい。この接続位置は、流入軸X1の位置が、流出軸X2から流出部22の外周面の間である条件と重なるが、流入口21aから弁体12を平面視したときに、略長方形状に見える弁体12の両端が見えるのではなく、一端のみが見えるような状態であれば、弁体12を基準として流入部21の位置は左右のいずれかの方向に偏っていることになる。それゆえ、流入部21の接続位置は、流出部22内で旋回流を形成するような位置であり、かつ、本体部11の容積の増大を抑制し得る位置に規定することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る流路遮断弁10Aは、天然ガスまたは液化石油ガス(LPガス)等の燃料ガスを遮断するために用いられるが、本発明はこれに限定されず、燃料以外の種々のガスを遮断する用途にも用いることができ、あるいは、他の液状の流体、もしくは流体状の挙動を示す物体を遮断する用途にも好適に用いることができる。また、本実施の形態に係る流路遮断弁10Aは、例えば、ガスメータ等に取り付けられるが、本発明はこれに限定されず、ガスメータ等の流量計以外の機器に取り付けることができ、あるいは、必要に応じて配管に直接設けることができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、流入軸X1と流出軸X2とはねじれの状態で直交する位置関係となっているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、流入軸X1と流出軸X2とで形成される角度は直角に限定されず、ねじれの位置関係にあって平行とならない限りどのような角度にも設定することができる。このように各軸で形成される角度を適宜設定することができれば、流路遮断弁10Aの設置の自由度をより一層向上させることができる。
【0062】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る流路遮断弁は、前記実施の形態1に係る流路遮断弁10Aと基本的に同じ構成を有しているが、開状態における弁体12の位置が異なっている。この点について、図5ないし図9を参照して具体的に説明する。
【0063】
図5および図6の下図に示すように、本実施の形態に係る流路遮断弁10Bは、前記実施の形態1に係る流路遮断弁10A(図5および図6の上図に示す)とほぼ同一の構成を有しているが、開状態において弁体12が前方に偏在している。具体的には、前記実施の形態1に係る流路遮断弁10Aにおいて、開状態における弁体12の前面の位置をP3とすれば、本実施の形態に係る流路遮断弁10Bにおいては、開状態における弁体12の前面の位置が位置P3よりも前側(流出口22a側)に移動した位置P4になっている。なお、図5は、前記実施の形態1で説明した図2と同様に縦断面図となっているが、図6は、流路遮断弁10Aまたは流路遮断弁10Bを上方から示す平面図(上面図)となっている。
【0064】
弁体12の位置P3およびP4についてより具体的に説明すると、図7(a)に模式的に示すように、流路遮断弁10Aにおける弁体12の位置P3は、流入口21aの後方の内周に近接する位置となっている。これに対して、流路遮断弁10Bにおける弁体12の位置P4は、例えば流入口21aから流出部22の内部を目視したときの投影図を基準として、当該流入口21aの略中央部の位置となっている。
【0065】
ここで前記実施の形態1で説明したように、流入軸X1および流出軸X2がねじれの位置関係にあれば、流出部22内に流入したガスは旋回流を形成するが、この旋回流が強すぎるとガスの流れにおける圧力損失が増大し、ガスが流れにくくなる。旋回流の発生は、弁座部14に対する異物の接触を抑制する上で有効であるが、旋回流が強すぎれば圧力損失の増大によりガスが良好に流れなくなってしまう。
【0066】
これに対して、開状態で弁体12が位置P4にあれば、図7(b)に示すように、ガスが流入口21aから流入部21内に流入すると(図中矢印F1)、流出部導入口21bから流出部22に流入するガスの流れは、流出部導入口21bの中央付近に配置される弁体12によって矢印F11および矢印F12で示されるように、略等分に分割されることになる。これにより、流出部22内に形成される旋回流の強さを抑制できるので、矢印F2で示されるように、流出口22aからガスが良好に流出される。それゆえ、ガスの流れの圧力損失を低減することができる。
【0067】
また、本実施の形態では、前記実施の形態1で説明したように、流入軸X1および流出軸X2がねじれの位置関係にあるので、ガスの流れが弁体12および弁受け13を直撃しにくい。本実施の形態では、図6下図に示すように、流入口21aから流出部22内を目視すると、弁受け13の一部が筒状部23から露出している状態にあるが、ガスに異物が含まれていても、当該異物が弁受け13に接触する等して弁体12の円滑な進退移動を妨げるおそれを軽減することができる。
【0068】
さらに、流入軸X1および流出軸X2がねじれの位置関係にあれば、駆動機構15の制御を変更することで弁体12の位置を標準的な位置P3から前方の位置P4に移動させることができる。それゆえ、特に本体部11等の構成を変えることなく、容易に旋回流の強さを緩和することができる。なお、弁受け13への異物の接触をより有効に回避するために、筒状部23と弁体12の後面との間に、別途、筒状の保護部材を取り付けてもよいし、本体部11の筒状部23をより長く設計してもよい。
【0069】
本実施の形態において、弁体12の位置は、図6の下図または図7(a)に示すような流入口21aの略中央部に限定されず、旋回流の強さを抑制して流出口22aからガスを良好に流出できる位置であればよい。言い換えれば、弁体12の位置は、実際に発生する旋回流の強さに応じて適宜変更することができるので、弁体12の位置は、流入口21aから見て略中央部に限定されるわけではなく、中央部よりも多少前寄りまたは後寄りに偏在してもよいことはいうまでもない。
【0070】
旋回流の強さを抑制し得る弁体12の位置は、流入口21aから目視したときの位置として規定することもできるし、前述したように、流出部導入口21bの前方の位置として規定することもできる。いずれにせよ、本実施の形態では、弁体12は、開状態で、流入したガスの流れ(矢印F1)を二つの流れ(矢印F11および矢印F12)に分割して流出部22内に流入できるように、当該流出部22内に配置されていればよく、前記二つの流れは、略同程度の流量であってもよいし、一方の流量が多くなってもよい。
【0071】
ここで、流出部22内における弁体12のより好ましい位置は特に限定されないが、例えば、図8に示すように、弁体12の位置と圧力損失の大きさとの間には、極小値を有する放物線状に変化する関係が見出される。
【0072】
流入部21の直径D=28mmであるときに、弁体12が開状態(図5および図6における位置P3に相当)にあるときの弁体12の位置を、図9に示すように基準位置とする。この基準位置から弁体12が前進した位置P4を0.5mmずつ変化させて圧力損失を計測したところ、図8に示すように、位置P4=0.0mm(基準位置P3)では約18.0Paであった圧力損失は徐々に小さくなり、位置P4=2.5mmでは約17.0Pa近くまで低下する。さらに、位置P4=5.0〜5.5mmでは圧力損失は極小値を示すが、それ以降は徐々に増加し、位置P4=7.0mmに達した時点で約17.0Paに及ぶ。位置P4=7.0mmを超えると圧力損失は比較的急速に増加していく。
【0073】
この実施例では、圧力損失が約17.0Pa以下であれば、旋回流を有効に抑制できるものと判定することができる。図8に示す結果では、前進位置P4=2.5〜7.0mmの範囲内となる。そして、弁体12の前進位置P4に対する圧力損失の低減は、流入口21aの直径に依存すると判断される。そこで、本実施の形態においては、流入口21aの直径をDとしたときに、前進位置P4を直径Dの少数倍で表すものとする。
【0074】
具体的には、図9に示すように、基準位置P3は、流入口21aから目視できる位置にあり、流入口21aの内周から見て10.6mmの位置にある。それゆえ、基準位置P4の下限値である2.5mm前進の位置は、流入口21aの内周から見て13.1mmの位置となるので、直径Dの少数倍で表せば下限値は0.46Dとなる。また、上限値である7.0mm前進の位置は、流入口21aの内周から見て17.6mmの位置となるので、直径Dの少数倍で表せば上限値は0.63Dとなる。
【0075】
このように、本実施の形態においては、弁体12を基準位置から0.46D〜0.63Dの範囲内で前進させたときに、当該弁体12は、旋回流を有効に緩和する部材として機能できる緩和部材として機能させることもできる。
【0076】
なお、基準位置から前進させた弁体12は、流出部22内に形成されるガスの旋回流の強さを緩和させる部材ということができる。このような部材を「旋回流緩和部材」と称すれば、当該旋回流緩和部材は、弁体12以外の独立した部材として設けることもできる。例えば、弁体12とは別体として、流入部21からの流入方向に沿って板状部材を設けることができる。板状部材の設置場所は特に限定されず、本体部11内であって弁体12の進退移動を妨げない位置であればよい。例えば、流入部21における流出部導入口21b側に流入部21内を二分するような板状部材が設けられる構成を挙げることができる。
【0077】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る流路遮断弁は、前記実施の形態2に係る流路遮断弁10Bと同様に、旋回流緩和部材を備えているが、当該旋回流緩和部材は、基準位置から前進した弁体12等ではなく、流出部22または弁体12の前面に設けられる複数のリブ部材となっている。この点について、図10(a),(b)ないし図13を参照して具体的に説明する。
【0078】
本実施の形態に係る流路遮断弁10Cは、図10(a)に示すように、流出部22の内周面に複数の内周リブ部材25が設けられている本体部31を備えている。前記実施の形態1に係る流路遮断弁10A(または前記実施の形態2に係る流路遮断弁10B)が備える本体部11は、図10(b)に示すように、流出部22の内周面には突出部等は特に設けられていない。これに対して、本実施の形態に係る流路遮断弁10Cにおいては、流出部22の内周面には、流出軸X2方向に沿って延伸する内周リブ部材25が、当該内周面の周方向に等間隔に設けられている。
【0079】
この内周リブ部材25の具体的な構成は特に限定されず、本体部31に対して一体的に設けられてもよいし、独立したリブ部材を流出部22の内周面に公知の方法で固定される構成であってもよい。内周リブ部材25の高さ、すなわち流出部22の内周面から突出した高さは、弁体12の開閉を妨げない高さであればよく特に限定されない。同様に、内周リブ部材25の幅(厚み)も特に限定されない。また、内周リブ部材25の長さも特に限定されないが、一端が流出部22の閉塞部に接し、他端が流出口22aに設けられる弁座部14に接触しない位置となる長さであればよい。
【0080】
このように、内周リブ部材25が設けられていれば、図11に示すように、本実施の形態に係る流路遮断弁10Cにおいては、流出部22内に形成される旋回流(矢印F3)が内周リブ部材25により部分的に妨げられるので、当該旋回流の強さが緩和される。それゆえ、前記実施の形態2と同様に、流出口22aから矢印F2で示されるようガスが良好に流出されるので、ガスの流れの圧力損失を有効に低減することができる。なお、本体部31以外の流路遮断弁10Cの構成は、前述した流路遮断弁10Aまたは流路遮断弁10Bと同様であるので、その説明は省略する。
【0081】
なお、弁受け13を覆う筒状部23の外周にも、当該筒状部23の軸方向(流出軸X2方向)に沿って延伸する筒状部リブ部材26が、外周面の周方向に等間隔に設けられている。この筒状部リブ部材26は、前述した付勢バネ16を筒状部23の外周で保持するために設けられるものである。筒状部リブ部材26の「リブ部材」としての構成は、内周リブ部材25と同様であればよく、特に限定されない。
【0082】
あるいは、本実施の形態に係る他の流路遮断弁10Dは、図12および図13に示すように、弁体32が弁体リブ部材32bを有する構成であってもよい。流路遮断弁10Dの基本的な構成は、図12に示すように、前述した流路遮断弁10Aまたは流路遮断弁10Bと同様であり、前記弁体12に代えて弁体リブ部材32bを備える弁体32が弁受け13により支持されている。
【0083】
弁体リブ部材32bは、図13に示すように、弁体32の前面において、当該弁体32の中心から放射状に延伸して設けられている。弁体リブ部材32bは、弁体32の中心側の端部の高さが大きく、弁体32の周縁側の高さは小さくなるように、傾斜した形状を有している。弁体リブ部材32bの周縁側の端部よりも外側には、前記弁体12と同様に、弁体当接面32aが設けられている。
【0084】
弁体リブ部材32bは、弁体32に一体的に設けられてもよいし、弁体12の前面に後から公知の方法で取り付けられる構成であってもよい。弁体リブ部材32bの形状は、側方から見れば略三角形状となっているが、直角台形状であってもよいし、他の形状であってもよい。また、弁体リブ部材32bの幅(厚み)も特に限定されず、弁体リブ部材32bの数も特に限定されない。
【0085】
このように、弁体32の前面に弁体リブ部材32bが設けられている構成であっても、前記内周リブ部材25と同様に、流出部22内に形成される旋回流の強さを緩和できるので、流出口22aから矢印F2で示されるようガスが良好に流出され、ガスの流れの圧力損失を有効に低減することができる。
【0086】
本実施の形態における旋回流緩和部材の具体的構成は、前述した各構成のみに限定されず、内周リブ部材25と弁体リブ部材32bとが併用されてもよいし、前述したように、前記実施の形態2の構成と弁体リブ部材32bとが併用されてもよいし、内周リブ部材25、弁体リブ部材32b、および前記実施の形態2の構成のいずれもが併用されてもよい。
【0087】
また、内周リブ部材25および弁体リブ部材32bには、穴またはスリット等が設けられてもよい。これら穴またはスリットを適宜設けることにより、これら旋回流緩和部材による旋回流の阻害機能を調節することができる。これら穴またはスリットの寸法、形状、個数等の構成は特に限定されず、想定される圧力損失または流出口22aからの流出量等に応じて適宜設定することができる。
【0088】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、ガス等の各種流体を遮断する流体遮断弁の分野に広く好適に用いることができ、さらには、流体遮断弁を備える各種機器または設備等の分野にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0090】
10A〜10D 流路遮断弁
11 本体部
12 弁体
13 弁受け(弁棒)
14 弁座部
15 駆動機構
16 コネクタ部
18 リードシャフト(弁棒)
21 流入部
21a 流入口
21b 流出部導入口
22 流出部
25 内周リブ部材
31 本体部
32 弁体
32b 弁体リブ部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する管状の流入部、および、前記流体が流出する管状の流出部を有する本体部と、
前記流出部内で当該流出部の中心軸方向に進退移動可能に設けられる弁体と、
前記流出部の中心軸方向に沿って配置され、前記弁体を支持する弁棒と、
前記流出部の流出口に設けられ、前記弁体が当接した状態で前記流体を遮断する弁座部と、を備え、
前記流入部および前記流出部は、それぞれの中心軸がねじれの位置となる状態で、互いに接続されていることを特徴とする、
流路遮断弁。
【請求項2】
前記流入部の中心軸は、前記流出部の中心軸と外周面との間に位置していることを特徴とする、
請求項1に記載の流路遮断弁。
【請求項3】
前記流出部に対する前記流入部の接続位置は、前記流入部の流入口から前記弁体の一端のみが目視できる位置であることを特徴とする、
請求項1に記載の流路遮断弁。
【請求項4】
前記本体部内には、前記流出部内に形成される流体の旋回流の強さを緩和する旋回流緩和部材が設けられていることを特徴とする、
請求項1に記載の流路遮断弁。
【請求項5】
前記旋回流緩和部材は、前記流体の流入方向に沿って配置される板状部材であることを特徴とする、
請求項4に記載の流路遮断弁。
【請求項6】
開状態にあるときの前記弁体の位置を基準位置とし、前記流入口の直径をDとしたときに、
当該弁体は、基準位置から0.46D〜0.63Dの範囲内で前進させたときに、前記旋回流緩和部材として機能することを特徴とする、請求項3に記載の流路遮断弁。
【請求項7】
前記旋回流緩和部材は、前記流出部の内周面に、軸方向に沿って延設される複数のリブ部材であることを特徴とする、
請求項4に記載の流路遮断弁。
【請求項8】
前記旋回流緩和部材は、前記弁体の流出側の面に、当該面の中心から放射状に延設される複数のリブ部材であることを特徴とする、
請求項4に記載の流路遮断弁。
【請求項9】
前記弁棒を進退移動させる駆動機構をさらに備え、
当該駆動機構は、前記流出部の流出口の反対側となる端部に位置していることを特徴とする、
請求項1に記載の流路遮断弁。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−15172(P2013−15172A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147301(P2011−147301)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】