流量制御弁
【課題】流体制御弁において弁体からの流体漏れ防止対策。
【解決手段】室外側膨張弁(15)は、冷媒が流れる膨張弁用溝(45)が形成された第2可動弁体(42)を備えている。膨張弁用溝(45)は、軸心方向に第2可動弁体(42)を貫通し、第2可動弁体(42)における軸心方向の両端面と所定の隙間を有して対向する第2固定弁体(41)及び第3固定弁体(48)と、第2可動弁体(42)における軸心方向の両端面に設けられ、隙間を密閉するように各固定弁体(41,48)に密着して膨張弁用溝(45)の周囲に配置される第1シール部材(46a)及び第2シール部材(46b)とを備え、第2固定弁体(41)には、接続ポート(A,B)が形成される一方、第1シール部材(46a)は、第2可動弁体(42)の回転に応じて接続ポート(B)を閉塞可能な大きさに形成された閉塞部(49)を有している。
【解決手段】室外側膨張弁(15)は、冷媒が流れる膨張弁用溝(45)が形成された第2可動弁体(42)を備えている。膨張弁用溝(45)は、軸心方向に第2可動弁体(42)を貫通し、第2可動弁体(42)における軸心方向の両端面と所定の隙間を有して対向する第2固定弁体(41)及び第3固定弁体(48)と、第2可動弁体(42)における軸心方向の両端面に設けられ、隙間を密閉するように各固定弁体(41,48)に密着して膨張弁用溝(45)の周囲に配置される第1シール部材(46a)及び第2シール部材(46b)とを備え、第2固定弁体(41)には、接続ポート(A,B)が形成される一方、第1シール部材(46a)は、第2可動弁体(42)の回転に応じて接続ポート(B)を閉塞可能な大きさに形成された閉塞部(49)を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御弁に関し、特に、流体の漏れ防止対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、図8に示すように、冷凍機等に用いられる冷媒回路(a)には、圧縮機(b)、四路切換弁(c)、室外熱交換器(d)、電子膨張弁(e)、電磁弁(f)、室内側膨張弁(g)及び室内熱交換器(h)が順に接続されている。この冷媒回路(a)は、上記四路切換弁(c)、電子膨張弁(e)、及び電磁弁(f)等の弁機構によって流体(冷媒)の流れを切り換えている。
【0003】
先ず、上記冷媒回路(a)における四路切換弁(c)は、図9に示すように、高圧ガス冷媒(P)中に設けられ、且つ左右に移動可能に構成された弁体(i)を備え、流体通路(j)が形成された弁座(k)に取り付けられている。この弁体(i)の内側及び流体通路(j)は、圧縮機(b)へ吸入される低圧冷媒が流れている。四路切換弁(c)は、弁体(i)が高圧ガス冷媒(P)によって弁座(k)へ押圧されることで弁体(i)と弁座(k)とが密着し、これにより弁体(i)の内側の低圧冷媒が外部へ漏れるのを防止している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−317839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図10に示すように、上記冷媒回路(a)における電子膨張弁(e)では、弁体(l)の内側に膨張室(m)が形成されている。このため、例えば、室外熱交換器(d)で凝縮された高圧液冷媒が膨張室(m)内へ導入されると、この高圧液冷媒は膨張室(m)で減圧され、低圧二相冷媒として導出される。この高圧液冷媒は、上述した高圧ガス冷媒(P)よりも低圧であって、低圧冷媒よりも高圧である。つまり、弁体(l)の外側に存在する高圧ガス冷媒(P)と、弁体(l)の内側に存在する高圧液冷媒との差圧が小さいため、弁体(l)と弁座(n)との密着性が確保できず、その結果、膨張室(m)の冷媒が、弁体(l)の外部へ漏れるという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、流量制御弁において、弁体から流体が漏れるのを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、流体が流れる連通路(45)が形成された可動弁体(42)を備え、該可動弁体(42)が所定の軸心周りに回転して、上記連通路(45)に開口する複数の弁孔(A,B)間の連通状態を制御する流量制御弁であって、上記連通路(45)は、上記軸心方向に可動弁体(42)を貫通し、上記可動弁体(42)における上記軸心方向の両端面と所定の隙間を有して対向する第1弁座(41)、及び第2弁座(48)と、上記可動弁体(42)における上記軸心方向の両端面に設けられ、上記隙間を密閉するように上記各弁座(41,48)に密着して上記連通路(45)の周囲に配置される第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)とを備え、上記第1弁座(41)には、上記複数の弁孔(A,B)が形成される一方、上記第1シール部材(46a)は、上記可動弁体(42)の回転に応じて上記複数の弁孔(A,B)のうち少なくとも一の弁孔(B)を閉塞可能な大きさに形成された閉塞部分(49)を有している。
【0008】
上記第1の発明では、可動弁体(42)が上記軸心周りに回転することによって、複数の弁孔(A,B)間の連通状態が制御され、各弁孔(A,B)を流れる流体量が制御される。
【0009】
ここで、第1シール部材(46a)は、第1弁座(41)と可動弁体(42)との間の隙間に設けられて該隙間を密閉する。第2シール部材(46b)は、第2弁座(48)と可動弁体(42)との間の隙間に設けられて該隙間を密閉する。これらによって、可動弁体(42)の連通路(45)を流れる流体が上記隙間から外部へ漏れることはない。
【0010】
また、第1シール部材(46a)は、閉塞部分(49)を有しており、該閉塞部分(49)は、可動弁体(42)の回転に応じて複数の弁孔(A,B)のうち少なくとも一の弁孔(B)を閉塞可能である。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記可動弁体(42)には、弾性体で形成されて上記第1シール部材(46a)を上記第1弁座(41)側へ押圧する第1押圧部材(47a)と、弾性体で形成されて上記第2シール部材(46b)を上記第2弁座(48)側へ押圧する第2押圧部材(47b)とを備えている。
【0012】
上記第2の発明では、第1押圧部材(47a)が第1シール部材(46a)を第1弁座(41)側へ押圧すると、第1シール部材(46a)と第1弁座(41)との間の密着力が増加する。これにより、可動弁体(42)と第1弁座(41)との間の隙間がより密閉される。第2押圧部材(47b)が第2シール部材(46b)を第2弁座(48)側へ押圧すると、第2シール部材(46b)と第2弁座(48)との間の密着力が増加する。これにより、可動弁体(42)と第2弁座(48)との間の隙間がより密閉される。
【0013】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記可動弁体(42)には、上記第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)をそれぞれ収容する第1溝(42a)、及び第2溝(42b)がそれぞれ形成され、上記第1押圧部材(47a)、及び第2押圧部材(47b)は、それぞれ上記第1溝(42a)、及び第2溝(42b)に収容されている。
【0014】
上記第3の発明では、第1溝(42a)は、内部に第1押圧部材(47a)と第1シール部材(46a)とを収容している。そして、第1押圧部材(47a)は、第1溝(42a)内において、第1シール部材(46a)を第1弁座(41)側へ押圧する。第2溝(42b)は、内部に第2押圧部材(47b)と第2シール部材(46b)とを収容している。そして、第2押圧部材(47b)は、第2溝(42b)内において、第2シール部材(46b)を第2弁座(48)側へ押圧する。
【0015】
第4の発明は、上記第1〜第3の発明の何れか1つにおいて、上記第1弁座(41)は、上記弁孔(A,B)として第1弁孔(A)と第2弁孔(B)とを有し、上記第1弁孔(A)、及び第2弁孔(B)は、上記第1弁座(41)上の同一仮想円上に配置され、上記連通路(45)は、平面視で上記可動弁体(42)の回転方向に沿って溝幅を漸減させた絞り溝(45)に形成され、上記可動弁体(42)の回転に応じて上記絞り溝(45)が第1弁孔(A)または第2弁孔(B)の絞り量を制御するよう構成されている。
【0016】
上記第4の発明では、可動弁体(42)を回転させると、回転に応じて絞り溝(45)が第1弁孔(A)又は第2弁孔(B)の絞り量を漸次、全閉から全開まで制御する。
【発明の効果】
【0017】
上記第1の発明によれば、第1弁座(41)、及び第2弁座(48)と可動弁体(42)との間に第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)を設けたため、可動弁体(42)と第1弁座(41)、及び第2弁座(48)との間をシール(密閉)することができる。これにより、流量制御弁において、可動弁体(42)と両弁座(41,48)との間の摺動摩擦を低減させると共に、可動弁体(42)の連通路(45)から流体が外部へ漏れるのを確実に防止することができる。また、第1シール部材(46a)に閉塞部分(49)を設けたため、可動弁体(42)の回転に応じて一の弁孔(B)を閉塞することができる。これらにより、複数の弁孔(A,B)間の連通状態を切り換えることができる。
【0018】
上記第2の発明によれば、第1押圧部材(47a)、及び第2押圧部材(47b)がそれぞれ第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)を押圧するようにしたため、第1シール部材(46a)と第1弁座(41)との密着性、及び第2シール部材(46b)と第2弁座(48)との密着性をそれぞれ向上させることができる。これにより、可動弁体(42)と両弁座(41,48)との間の隙間をより密閉することができる。この結果、流量制御弁において、可動弁体(42)の連通路(45)から流体が外部へ漏れるのを確実に防止することができる。
【0019】
上記第3の発明によれば、可動弁体(42)に第1溝(42a)、及び第2溝(42b)を設けたため、第1押圧部材(47a)、及び第1シール部材(46a)を第1溝(42a)に収容すると共に、第2押圧部材(47b)、及び第2シール部材(46b)を第2溝(42b)に収容することができる。
【0020】
上記第4の発明によれば、平面視で上記可動弁体(42)の回転方向に沿って溝幅を漸減させた絞り溝(45)を形成したため、可動弁体(42)の回転に応じて絞り溝(45)が第1弁孔(A)又は第2弁孔(B)の絞り量を調節することができる。これにより、両弁孔(A,B)間を流れる流体流量を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態1に係る冷媒回路を示す配管系統図である。
【図2】本実施形態1に係る複合弁の縦断面構造を模式的に表した図である。
【図3】(A)が第1固定弁体と第1可動弁体の構成を示す平面図、(B)が第2固定弁体と第2可動弁体の構成を示す平面図である。
【図4】接続ポート(B)を全開させた状態において、(A)が膨張弁用溝の構造を模式的に表した図、(B)が室外側膨張弁の構造を模式的に表した図である。
【図5】接続ポート(B)を半閉させた状態において、(A)が膨張弁用溝の構造を模式的に表した図、(B)が室外側膨張弁の構造を模式的に表した図である。
【図6】接続ポート(B)を全閉させた状態において、(A)が膨張弁用溝の構造を模式的に表した図、(B)が室外側膨張弁の構造を模式的に表した図である。
【図7】本実施形態2に係る複合弁の構成を説明する図である。
【図8】従来例に係る冷媒回路を示す配管系統図である。
【図9】従来例に係る四路切換弁の構造を模式的に表した図である。
【図10】従来例に係る電子膨張弁の構造を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
〈発明の実施形態1〉
〈概要〉
本発明の実施形態1として、冷房運転及び暖房運転が可能な空気調和機(冷凍装置)の例を説明する。この空気調和機は、冷媒回路において冷媒を循環させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。図1は、本発明の実施形態1に係る空気調和機(10)における冷媒回路(11)の冷媒配管系統図である。同図に示すように、冷媒回路(11)は、圧縮機(12)、四路切換弁(13)、室外熱交換器(14)(熱源側熱交換器)、室外側膨張弁(15)(熱源側膨張弁)、開閉弁(16)、室内側膨張弁(17)(利用側膨張弁)、及び室内熱交換器(18)(利用側熱交換器)を備えている。そして、本実施形態1では、四路切換弁(13)、室外側膨張弁(15)、及び開閉弁(16)が一体化されて複合弁(30)として形成されている。尚、圧縮機(12)、室外熱交換器(14)、及び複合弁(30)は室外機(19)に収容され、室内熱交換器(18)と室内側膨張弁(17)は室内機(20)に収容されている。この室外機(19)と室内機(20)は連絡配管で接続されている。以下では、はじめに冷媒回路(11)の各構成要素について概説し、その後に複合弁(30)の構成について説明する。尚、以下の説明において、四路切換弁(13)、室外側膨張弁(15)、開閉弁(16)等の弁についての「連通状態の制御」とは、接続ポートの接続関係を切り換える制御、弁を開状態及び閉状態の2段階に制御、流体の流量を連続的に変更する制御等の種々の制御を含む概念である。尚、室外側膨張弁(15)は、本発明に係る流量制御弁を構成している。
【0024】
《圧縮機(12)、各熱交換器(14,18)》
本実施形態1の圧縮機(12)は、電動式のスクロール式圧縮機である。尚、圧縮機(12)には、スクロール式圧縮機に限らず種々の形式の圧縮機(例えば、ロータリー式圧縮機)を採用できる。また、室外熱交換器(14)および室内熱交換器(18)は、この空気調和機(10)では、クロス・フィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器を採用している。室外熱交換器(14)では、冷媒回路(11)を循環する冷媒が、室外ファン(図示は省略)により取り込まれた室外空気と熱交換する。また、室内熱交換器(18)では、冷媒回路(11)を循環する冷媒が、室内ファン(図示は省略)によって取り込まれた室内空気と熱交換する。
【0025】
《四路切換弁(13)》
四路切換弁(13)は、空気調和機(10)の運転状態を冷房運転と暖房運転の何れかに切り換える際に使用する弁である。この四路切換弁(13)は、配管を接続する4つの接続ポート(C,D,E,S)を備えている。そして、四路切換弁(13)は、接続ポート(C,D)が互いに連通し、且つ接続ポート(E,S)が互いに連通する第1の連通状態と、接続ポート(D,E)が互いに連通し、且つ接続ポート(C,S)が互いに連通する第2の連通状態の2段階に切り換えられるようになっている。
【0026】
この空気調和機(10)では、接続ポート(C)は、室外熱交換器(14)の一端に接続され、接続ポート(D)は、圧縮機(12)の吐出ポートと接続されている。また、接続ポート(E)は、室内熱交換器(18)の一端に接続され、接続ポート(S)は、圧縮機(12)の吸入ポートに接続されている。そして、空気調和機(10)で冷房運転が行われる場合に第1の連通状態に切り換えられ、暖房運転が行われる場合に第2の連通状態に切り換えられる。
【0027】
《室外側、室内側膨張弁(15,17)、開閉弁(16)》
室外側膨張弁(15)は、冷媒回路(11)における冷媒の流量を調整する弁であり、開度調整を連続的に行えるようになっている。この室外側膨張弁(15)は、暖房運転が行われる際の流量調整に主に使用される。なお、この例の室外側膨張弁(15)は、複合弁(30)として形成されているが、従来の空気調和機ではこの部位には、開度調整を連続的に行える、いわゆる電動弁が採用されることが多い。
【0028】
また、開閉弁(16)は、全開状態と全閉状態の2段階に切り換え可能な弁である。開閉弁(16)は、室外側膨張弁(15)と並列に接続されている。開閉弁(16)も複合弁(30)として形成されているが、従来の空気調和機ではこの部位には、いわゆる電磁弁が採用されることが多い。冷媒回路(11)においては、室外側膨張弁(15)と開閉弁(16)とは、室外熱交換器(14)の一端(四路切換弁(13)とは反対側)と、室内側膨張弁(17)の一端とにそれぞれ接続されている。
【0029】
また、室内側膨張弁(17)も、冷媒回路(11)における冷媒の流量を調整する弁であり、一端が室内熱交換器(18)に接続されている。この室内側膨張弁(17)は、冷房運転が行われる際の冷媒の流量調整に主に使用される。そのため室内側膨張弁(17)は、開度調整を連続的に行えるようになっており、具体的には電動弁を採用している。
【0030】
《複合弁(30)の構成》
図2は、本実施形態に係る複合弁(30)の縦断面構造を模式的に表した図である。この例では、複合弁(30)は、第1固定弁体(31)と第2固定弁体(41)と第3固定弁体(48)と第1可動弁体(33)と第2可動弁体(42)とケーシング(50)とを備えている。第1固定弁体(31)、第2固定弁体(41)、第3固定弁体(48)、第1可動弁体(33)、及び第2可動弁体(42)は、ケーシング(50)に収容されている。このケーシング(50)は、密閉ドーム型の圧力容器である。また、ケーシング(50)には、図示はしないが、第1可動弁体(33)及び第2可動弁体(42)を駆動するためのモータが収容され、このモータは、駆動軸(51)を介して第1可動弁体(33)及び第2可動弁体(42)に接続されている。
【0031】
この複合弁(30)は、既述の通り、四路切換弁(13)、室外側膨張弁(15)、及び開閉弁(16)を一体化したものであり、第1可動弁体(33)と第1固定弁体(31)とで四路切換弁(13)の機能を果たすロータリー弁を構成し、第2可動弁体(42)と第2固定弁体(41)と第3固定弁体(48)とで、室外側膨張弁(15)及び開閉弁(16)の機能を果たすロータリー弁を構成している。以下では、これらの構成要素について説明する。
【0032】
〈第1固定弁体(31)〉
図3(A)は、第1固定弁体(31)と第1可動弁体(33)の構成を示す平面図である。第1固定弁体(31)は、円盤状の形態をしていて、ケーシング(50)内に固定されている(図2を参照)。図3(A)に示すように、この第1固定弁体(31)には、四路切換弁(13)用の4つの接続ポート(C,D,E,S)が形成されている。
【0033】
これらの接続ポート(C,D,E,S)は、何れも同一直径の円形穴であり、第1固定弁体(31)の外周縁の近傍に配置されている。詳しくは、これらの接続ポート(C,D,E,S)は、同一の仮想円上に、それぞれの穴中心が位置するように、所定の角度間隔(α)で配置されている。この例では、接続ポート(C,D,E,S)は、α=90°である。そして、第1固定弁体(31)は、前記仮想円の中心がの駆動軸(51)の軸心と一致するように、ケーシング(50)内に固定されている。
【0034】
〈第1可動弁体(33)〉
第1可動弁体(33)は、平面形状が扇形(この例では概ね半円形)をしていて、第1固定弁体(31)の上面(図3(A)における上)側に該第1固定弁体(31)と摺接するように配置される一方、第2固定弁体(41)の下面側に該第2固定弁体(41)と摺接するように配置されている。第1可動弁体(33)の中心(M)には、の駆動軸(51)が取り付けられている。これにより、第1可動弁体(33)は、モータで回転駆動されて、第1固定弁体(31)に対して回転方向に相対変位する。なお、第1固定弁体(31)には、ピン状のストッパー(32)が設けてあり、第1可動弁体(33)の回転方向位置を一定範囲に規制している。
【0035】
この第1可動弁体(33)には切換弁用溝(34)(連通溝)が形成されている。切換弁用溝(34)は、第1固定弁体(31)の所定の接続ポート(C,D,E,S)間の連通状態の切換に使用する。例えば、図3(A)は、切換弁用溝(34)が接続ポート(C,S)上に位置して、接続ポート(C,S)間を連通させている状態を例示している。尚、第1可動弁体(33)の上下面には、切換弁用溝(34)の周縁に沿った所定幅の溝が形成され、該溝にはシール部材(35,35)が収容されている。このシール部材(35,35)により、切換弁用溝(34)内の空間とケーシング(50)内の空間とをシールしている。
【0036】
接続ポート(C,S)間が連通した状態では、第1可動弁体(33)は接続ポート(C,S)にのみ重なり、接続ポート(D,E)には重ならないようになっている。これにより、接続ポート(D,E)は、ケーシング(50)内の空間に開放され、接続ポート(D,E)間は、ケーシング(50)内の空間で互いに連通する(図3(A)参照)。すなわち、図3(A)に示した状態は四路切換弁(13)の第2の連通状態に対応している。
【0037】
この状態から、第1可動弁体(33)が時計回りに回転して、切換弁用溝(34)が接続ポート(E,S)上に来ると、該接続ポート(E,S)間が連通される。
【0038】
接続ポート(E,S)間が連通した状態では、第1可動弁体(33)は、接続ポート(E,S)にのみ重なり、接続ポート(C,D)には重ならないようになっている。これにより、接続ポート(C,D)は、ケーシング(50)内の空間に開放され、接続ポート(C,D)間は、ケーシング(50)内の空間で互いに連通する(図3(A)参照)。すなわち、第1の連通状態に対応している。このように、第1固定弁体(31)と第1可動弁体(33)(詳しくは切換弁用溝(34))によって、四路切換弁(13)が構成されるのである。
【0039】
〈第2固定弁体(41)〉
図3(B)は、第2固定弁体(41)と第2可動弁体(42)の構成を示す平面図である。第2固定弁体(41)は、円盤状の形態をしていて、ケーシング(50)内に固定されている(図2を参照)。尚、第2固定弁体(41)は、本発明に係る第1弁座を構成している。
図3(B)に示すように、第2固定弁体(41)には、2つの接続ポート(A,B)が形成されている。接続ポート(A,B)は、何れも同一直径の円形穴であり、同一の仮想円上に所定の間隔で配置されている。尚、この接続ポート(A,B)は、本発明に係る弁孔を構成している。また、接続ポート(A)は第1弁孔を構成し、接続ポート(B)は第2弁孔を構成している。また、第2固定弁体(41)は、この仮想円の中心がの駆動軸(51)の軸心上に来るように、ケーシング(50)に取り付けられている。
【0040】
〈第2可動弁体(42)〉
第2可動弁体(42)は、平面形状が扇形(この例では概ね半円形)をしていて、第2固定弁体(41)の上面(図3(B)における上)側に該第2固定弁体(41)と摺接するように配置される一方、第3固定弁体(48)の下面側に該第3固定弁体(48)と摺接するように配置されている。尚、第2可動弁体(42)は、本発明に係る可動弁体を構成している。第2可動弁体(42)の中心には駆動軸(51)が取り付けられている。これにより、第2可動弁体(42)は、モータで回転駆動されて、第2固定弁体(41)に対して回転方向に相対変位する。すなわち、第2可動弁体(42)は第1可動弁体(33)と一体的に回転駆動される。
【0041】
また、第2可動弁体(42)には、開閉弁用溝(43)と膨張弁用溝(45)が形成されている。開閉弁用溝(43)は、接続ポート(A,B)とともに開閉弁(16)を構成し、膨張弁用溝(45)は、接続ポート(A,B)とともに室外側膨張弁(15)を構成している。以下、開閉弁用溝(43)と膨張弁用溝(45)について説明する。
【0042】
-開閉弁用溝(43)-
開閉弁用溝(43)は、平面形状が円弧状で幅が一定の溝である。複合弁(30)では、第1可動弁体(33)が第1の連通状態の位置に設定されると、第2可動弁体(42)では開閉弁用溝(43)が接続ポート(A,B)に対向して接続ポート(A,B)間を連通させるようになっている。具体的には本実施形態では、以下のように開閉弁用溝(43)の位置や幅が設定されている。
【0043】
すなわち、開閉弁用溝(43)は、その溝中心を通る円弧(以下、中心円弧という。図3(B)を参照)が、接続ポート(A,B)の位置を定める仮想円(前述)と同曲率かつ同心に設定されている。そして、開閉弁用溝(43)の溝幅は、接続ポート(A,B)の穴径と同じ、若しくはやや大きめに設定されている。また、開閉弁用溝(43)の中心円弧長、すなわち中心円弧の中心角は、接続ポート(A,B)の間隔に合わせてある。そして、第2可動弁体(42)と第2固定弁体(41)は、四路切換弁(13)が第1連通状態の場合に開閉弁用溝(43)が接続ポート(A,B)と対向するように、回転方向の相対位置を設定してある。尚、第2可動弁体(42)の上下面には、それぞれに開閉弁用溝(43)の周縁に沿った所定幅の溝が形成され、該溝にはシール部材(図示なし)が収容されている。このシール部材により、開閉弁用溝(43)内の空間とケーシング(50)内の空間とをシールしている。
【0044】
上記構成により、四路切換弁(13)が第1連通状態の場合に、接続ポート(A,B)間が連通状態になり、その他の場合には接続ポート(A,B)は開閉弁用溝(43)では連通しない。すなわち、第2可動弁体(42)(開閉弁用溝(43))と第2固定弁体(41)とによって、接続ポート(A,B)を開閉制御する開閉弁(16)が構成されている。
【0045】
-膨張弁用溝(45)-
膨張弁用溝(45)は、その長さ方向に向かって幅が変化する溝であって、本発明に係る連通路及び絞り溝を構成している。第1可動弁体(33)がモータで回転駆動されて、四路切換弁(13)の第2の連通状態に対応した位置に設定されると、第2可動弁体(42)ではこの膨張弁用溝(45)が接続ポート(A,B)に対向し、接続ポート(A,B)間を連通させるようになっている。
【0046】
膨張弁用溝(45)は、具体的には、図3(B)に示すように溝の中心線が円弧状であり、該円弧(以下、中心円弧という)は、開閉弁用溝(43)の中心円弧と同曲率かつ同心である。そして、膨張弁用溝(45)は、第2可動弁体(42)の変位方向(すなわち、回転方向)に沿って溝幅が漸減している。図3(B)の例では、溝幅が最も大きい部分は接続ポート(A,B)の直径とほぼ同じ大きさである。そして、膨張弁用溝(45)の中心円弧の中心角は、接続ポート(A,B)の間隔よりも大きく設定されている。
【0047】
次に、本発明の特徴部分である第2可動弁体(42)の周辺の構造について詳細に説明する。
【0048】
図4は、第2可動弁体(42)の周辺の構造を模式的に表した図である。図4(B)に示すように、第2可動弁体(42)は、第2固定弁体(41)と第3固定弁体(48)との間に所定幅の隙間を有して設けられている。本実施形態では、隙間は約0.5mm程度に形成される。そして、第2可動弁体(42)の上下面には、それぞれに膨張弁用溝(45)の周縁に沿った所定幅の溝(第1溝(42a)、第2溝(42b))が形成されている。
【0049】
上記第1溝(42a)は、第2可動弁体(42)における第2固定弁体(41)と対向する面で膨張弁用溝(45)の周縁に沿って形成される溝である。この第1溝(42a)の内部には、下側Oリング(47a)と第1シール部材(46a)とが収容されている。
【0050】
上記第1シール部材(46a)は、図4(A)に示すように、平面視で扇形の形態をしており、膨張弁用溝(45)の周縁に沿って設けられている。第1シール部材(46a)は、第1溝(42a)の内部に収容され、下側Oリング(47a)によって第2固定弁体(41)側へ押圧されている。この下側Oリング(47a)は、本発明に係る第1押圧部材を構成している。つまり、下側Oリング(47a)が第1シール部材(46a)を押圧することで、第1シール部材(46a)と第2固定弁体(41)とを密着させている。そして、第1シール部材(46a)により膨張弁用溝(45)内の空間とケーシング(50)内の空間とをシールしている。第1シール部材(46a)は、第2可動弁体(42)の回転方向の一端側(図4(A)における左側)の端部に、接続ポート(A,B)の穴径と同じ、若しくはやや大きめの閉塞部(49)が形成されている。つまり、第1シール部材(46a)は、第2可動弁体(42)の回転に応じて閉塞部(49)が接続ポート(B)を閉塞可能に構成されている。
【0051】
上記第2溝(42b)は、第2可動弁体(42)における第3固定弁体(48)と対向する面で膨張弁用溝(45)の周縁に沿って形成される溝である。この第2溝(42b)の内部には、上側Oリング(47b)と第2シール部材(46b)とが収容されている。
【0052】
上記第2シール部材(46b)は、図4(A)に示すように、平面視で扇形の形態をしており、膨張弁用溝(45)の周縁に沿って設けられている。第2シール部材(46b)は、第2溝(42b)の内部に収容され、上側Oリング(47b)によって第3固定弁体(48)側へ押圧されている。この上側Oリング(47b)は、本発明に係る第2押圧部材を構成している。つまり、上側Oリング(47b)が第2シール部材(46b)を押圧することで、第2シール部材(46b)と第3固定弁体(48)とを密着させている。そして、第2シール部材(46b)により膨張弁用溝(45)内の空間とケーシング(50)内の空間とをシールしている。
【0053】
したがって、例えば空気調和機(10)で暖房運転を行う際に、上記室内熱交換器(18)で凝縮した高圧の液冷媒は、膨張弁用溝(45)内の空間へ導入される。膨張弁用溝(45)に形成される空間は、高圧冷媒が充填されているケーシング(50)内の空間よりも低い圧力で、且つ膨張後の低圧冷媒よりも高い圧力に形成されているため、両空間の差圧は小さい。
【0054】
しかしながら、両シール部材(45a,46b)は、両Oリング(47a,47b)によって押圧されているため、第1シール部材(46a)と第2固定弁体(41)との間、及び第2シール部材(46b)と第3固定弁体(48)との間の密着性が向上している。これにより、膨張弁用溝(45)内の冷媒(高圧液冷媒)がケーシング(50)内の空間へ漏れることはない。
【0055】
図5の例は、第2可動弁体(42)が回転して接続ポート(A)と接続ポート(B)の一部が膨張弁用溝(45)に対向し、接続ポート(B)の残りの部分は膨張弁用溝(45)の対向位置から外れるように、膨張弁用溝(45)の円周方向位置等が設定されている。この位置では、接続ポート(B)は第1シール部材(46a)によって、その一部が閉塞された状態となっているため、室外側膨張弁(15)を通過する冷媒流量が制限される。
【0056】
図6の例は、第2可動弁体(42)が回転して接続ポート(A)のみが膨張弁用溝(45)に対向し、接続ポート(B)は膨張弁用溝(45)との対向位置から外れるように、膨張弁用溝(45)の円周方向位置等が設定されている。この位置では、接続ポート(B)は第1シール部材(46a)によって閉塞されており、接続ポート(A,B)間は閉状態に制御されることになる。
【0057】
《空気調和機(10)の運転動作》
〈冷房運転〉
空気調和機(10)で冷房運転を行う場合には、四路切換弁(13)を第1の連通状態(図1に実線で示す状態)に切り換える。また、開閉弁(16)を開状態にする。このとき、室外側膨張弁(15)は閉状態になる。
【0058】
すなわち、この空気調和機(10)において、四路切換弁(13)を第1の連通状態に設定するには、第1可動弁体(33)の切換弁用溝(34)で接続ポート(E,S)間が連通し、かつ開閉弁(16)の開閉弁用溝(43)で接続ポート(A,B)間が連通するようにモータを制御する。このとき、室外側膨張弁(15)を構成する膨張弁用溝(45)は、接続ポート(A,B)からは外れた位置に来る。すなわち、複合弁(30)では、冷媒は室外側膨張弁(15)を通過することなく、開閉弁(16)を通過する。この空気調和機(10)では、開閉弁(16)を設けて、これを冷房運転時に開状態にすることで、冷房運転時に室外側膨張弁(15)が冷媒の流通の抵抗になるのを防止しているのである。
【0059】
そして、この空気調和機(10)では、空気調和機(10)が発揮すべき能力に応じて、室内側膨張弁(17)の開度を調整する。この状態で圧縮機(12)を運転すると、冷媒回路(11)では、室外熱交換器(14)、室内側膨張弁(17)、室内熱交換器(18)の順に冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。詳しくは、圧縮機(12)が吐出した冷媒は四路切換弁(13)を介して室外熱交換器(14)に流入する。室外熱交換器(14)へ流入した冷媒は、室外空気へ放熱して凝縮し、開閉弁(16)を介して室内側膨張弁(17)に流入する。その冷媒は、室内側膨張弁(17)を通過する際に減圧され、室内熱交換器(18)へ流入する。室内熱交換器(18)へ流入した冷媒は、室内熱交換器(18)から吸熱して蒸発する。これにより室内機(20)では、室内熱交換器(18)で冷媒によって冷却された室内空気を室内へ供給する。そして、室内熱交換器(18)で蒸発した冷媒は、四路切換弁(13)を通って圧縮機(12)へ吸入される。圧縮機(12)は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。以下、同様の動作が繰り返されて室内の冷房が行われる。
【0060】
〈暖房運転〉
暖房運転時には、四路切換弁(13)が第2の連通状態(図1に破線で示す状態)に切り換えられる。また、空気調和機(10)が発揮すべき能力に応じて、室外側膨張弁(15)の開度を調整する(図4〜図6参照)。このとき開閉弁(16)は、閉状態になる。また、室内側膨張弁(17)は全開状態にしておく。
【0061】
すなわち、この空気調和機(10)において、四路切換弁(13)を第2の連通状態に設定するには、モータで第1可動弁体(33)を、接続ポート(C,S)間が連通する位置に回転駆動させる。この第1可動弁体(33)の回転に伴って第2可動弁体(42)も一体的に回転し、第2可動弁体(42)の膨張弁用溝(45)が接続ポート(A,B)に対向する。これにより、接続ポート(A,B)間は膨張弁用溝(45)で連通させられる。つまり、接続ポート(A,B)間は室外側膨張弁(15)によって連通する。このとき、第2可動弁体(42)の開閉弁用溝(43)は、接続ポート(A,B)からは外れた位置に来る。すなわち、複合弁(30)では、冷媒は開閉弁(16)を通過することなく室外側膨張弁(15)側を通過する。
【0062】
そして、この状態で圧縮機(12)を運転すると、冷媒回路(11)では、室内熱交換器(18)、室内側膨張弁(17)(全開状態)、室外側膨張弁(15)、室外熱交換器(14)の順に冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。詳しくは、圧縮機(12)から吐出された冷媒は、四路切換弁(13)を介して室内熱交換器(18)へ流入する。室内熱交換器(18)へ流入した冷媒は、室内空気へ放熱して凝縮する。これにより、室内機(20)では、室内熱交換器(18)で冷媒によって加熱された室内空気を室内へ供給する。室内熱交換器(18)で凝縮した冷媒は、全開状態の室内側膨張弁(17)を通過し、室外側膨張弁(15)へ送られる。そして、冷媒は室外側膨張弁(15)を通過する際に減圧され、室外熱交換器(14)へ流入する。室外熱交換器(14)へ流入した冷媒は、室外空気から吸熱して蒸発し、四路切換弁(13)を通って圧縮機(12)へ吸入される。圧縮機(12)は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。以下、同様の動作が繰り返されて室内の暖房が行われる。
【0063】
−実施形態1の効果−
上記本実施形態1によれば、第2固定弁体(41)、及び第3固定弁体(48)と第2可動弁体(42)との間に第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)を設けたため、第2可動弁体(42)と第2固定弁体(41)、及び第3固定弁体(48)との間を密閉することができる。また、下側Oリング(47a)が第1シール部材(46a)を押圧し、上側Oリング(47b)が第2シール部材(46b)を押圧するようにしたため、第1シール部材(46a)と第2固定弁体(41)との密着性、及び第2シール部材(46b)と第3固定弁体(48)との密着性を向上させることができる。したがって、第2可動弁体(42)と両固定弁体(41,48)との間の隙間をより密閉することができる。これらにより、室外側膨張弁(15)において、第2可動弁体(42)と両固定弁体(41,48)との間の摺動摩擦を低減させると共に、第2可動弁体(42)の膨張弁用溝(45)から冷媒がケーシング(50)内の空間へ漏れるのを確実に防止することができる。
【0064】
また、第1シール部材(46a)に閉塞部(49)を設けたため、第2可動弁体(42)の回転に応じて接続ポート(B)を閉塞することができる。これらにより、接続ポート(A,B)間の連通状態を切り換えることができる。
【0065】
さらに、第2可動弁体(42)に第1溝(42a)、及び第2溝(42b)を設けたため、下側Oリング(47a)、及び第1シール部材(46a)を第1溝(42a)に収容すると共に、上側Oリング(47b)、及び第2シール部材(46b)を第2溝(42b)に収容することができる。
【0066】
一方、平面視で第2可動弁体(42)の回転方向に沿って溝幅を漸減させた膨張弁用溝(45)を形成したため、第2可動弁体(42)の回転に応じて膨張弁用溝(45)が接続ポート(A,B)の絞り量を調節することができる。これにより、両接続ポート(A,B)間を流れる冷媒流量を調節することができる。この結果、室外側膨張弁(15)の開度を調節することができる。
【0067】
《発明の実施形態2》
図7は、本発明の実施形態2に係る複合弁の構成を説明する図である。この複合弁は、2つの接続ポート(A,B)の何れの側で流量を絞るかを、冷房運転か暖房運転かに応じて切換できるようになっている。なお、この複合弁には、実施形態1の複合弁(30)で設けられていた開閉弁(16)は存在しない。また、この複合弁を用いた冷媒回路では、室内側膨張弁(17)を設けていない。
【0068】
具体的に実施形態2に係る複合弁では、室外側膨張弁の構成が実施形態1と異なっており、この室外側膨張弁(55)は可動弁体(第2可動弁体(56))の構成に特徴がある。なお、本実施形態では、図3に示すように、第1固定弁体(31)における接続ポート(C,D,E,S)の並び順が実施形態1とは異なっているが、これらの接続ポートの形状や間隔等は実施形態1と同様である。
【0069】
〈第2可動弁体(56)〉
本実施形態2の第2可動弁体(56)は、平面形状が扇形(この例では概ね半円形)をしていて、第2固定弁体(41)の上面(図7における上)側に該第2固定弁体(41)と摺接するように配置されている。そして、第2可動弁体(56)には、膨張弁用溝(57)が形成されている。膨張弁用溝(57)は、接続ポート(A,B)とともに室外側膨張弁(15)を構成している。
【0070】
この膨張弁用溝(57)は、図7に示すように、平面形状が三日月状に形成されている。第1可動弁体(33)がモータで回転駆動されて、四路切換弁(13)の第2の連通状態に対応した位置に設定されると、第2可動弁体(56)ではこの膨張弁用溝(57)が接続ポート(A,B)に対向し、接続ポート(A,B)間を連通させるようになっている。
【0071】
具体的には、膨張弁用溝(57)は、その溝中心を通る円弧(以下、中心円弧という。図7を参照)が、接続ポート(A,B)の位置を定める仮想円と同心かつ同径である。図7の例では、溝幅が最も大きい部分の溝幅は接続ポート(A,B)の直径とほぼ同じ大きさである。そして、膨張弁用溝(57)の中心円弧における中心角は、接続ポート(A,B)の間隔よりも大きく設定されている。詳しくは、四路切換弁(13)が第1の連通状態を維持できる範囲で第2可動弁体(56)が回転移動した場合に、膨張弁用溝(57)の左半分(図7参照)が、接続ポート(A,B)の両方若しくは接続ポート(B)のみと対向し、第2の連通状態を維持できる範囲で第2可動弁体(56)が回転移動した場合には、膨張弁用溝(57)の右半分が接続ポート(A,B)の両方若しくは接続ポート(A)のみと対向ように、中心円弧長が設定されている。
【0072】
上記第2可動弁体(56)の上下面には、膨張弁用溝(57)の周縁に沿った所定幅の溝(第1溝、及び第2溝)が形成され、該溝には第1シール部材(図示なし)、及び第2シール部材(58)が収容されている。尚、第1シール部材及び第2シール部材の構成は、実施形態1と同様である。これらのシール部材により、膨張弁用溝(57)内の空間とケーシング(50)内の空間とをシールしている。
【0073】
上記の構成により、第1の連通状態(すなわち冷房運転時)には、接続ポート(A)側に膨張弁用溝(57)の先端側が位置し、接続ポート(A)の開口量が調整する。これにより、接続ポート(A,B)間の冷媒流量が制御されることになる。すなわち、本実施形態では、冷媒の圧力が大きい側の接続ポートの開口面積が他方よりも大きく設定されている。一方、第2の連通状態(すなわち暖房運転時)では、接続ポート(B)側に膨張弁用溝(57)の先端側が位置し、接続ポート(B)の開口量が調整される。これにより、第2の連通状態でも接続ポート(A,B)間の冷媒流量が制御される。この場合も冷媒の圧力が大きい側の接続ポートの開口面積が他方よりも大きく設定されている。
【0074】
《複合弁の動作》
図7では(A)が冷房運転時、(B)が暖房運転時の第2可動弁体(56)等の動作をそれぞれ例示している。
【0075】
〈冷房運転時〉
例えば、冷房運転時には、図7(A)の(1)〜(3)に示すように、四路切換弁(13)側では、接続ポート(E,S)間が切換弁用溝(34)で連通し、接続ポート(C,D)間は、ケーシング(50)内の空間を介して互いに連通している。
【0076】
一方、室外側膨張弁(15)側では、(1)の段階では、膨張弁用溝(57)の一端側(先端側)が接続ポート(B)上にあり、接続ポート(A)は、第2可動弁体(56)の下に隠れている。すなわち、接続ポート(A,B)間は連通していない。そして、第2可動弁体(56)が時計回りに回転して(2)の段階になると、膨張弁用溝(57)の先端側は接続ポート(A)上にあり、接続ポート(A)の流路が絞られている。一方、接続ポート(B)は、膨張弁用溝(57)の中央に近い部分が面していて、全開状態に制御されている。さらに第2可動弁体(56)が時計回りに回転して(3)の段階になると、接続ポート(A)は、(2)の段階と比べ、膨張弁用溝(57)のより幅が広い部分と対向する。したがって、(3)の段階は、(2)の段階よりも接続ポート(A)の絞り量は小さい。
【0077】
〈暖房運転時〉
また、暖房運転時には、図7(B)の(4)〜(6)に示すように、四路切換弁(13)側では、接続ポート(C,S)間が切換弁用溝(34)で連通し、接続ポート(D,E)間は、ケーシング(50)内の空間を介して互いに連通している。
【0078】
一方、室外側膨張弁(15)は、(4)の段階では、膨張弁用溝(57)の他の一端側(図7(4)における膨張弁用溝(57)の右先端側)が接続ポート(B)のやや右にあり、接続ポート(A)は、膨張弁用溝(57)の中央に近い部分が面している。すなわち、(4)の段階では全接続ポート(A)は開状態であり、接続ポート(B)は流路が絞られている。さらに第2可動弁体(56)が時計回りに回転して(5)の段階になると、接続ポート(A)の流路も絞られてくるが、接続ポート(B)側の流路の方が絞り量は大きい。そして、(6)の段階になると、接続ポート(B)は、第2可動弁体(56)の下に隠れている。すなわち、接続ポート(A,B)間は連通していない。その他の構成・作用及び効果は、実施形態1と同様である。
【0079】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態1及び2について、以下のような構成としてもよい。
【0080】
本実施形態1及び2では、本発明の構成を室外側膨張弁(15)に適用したが、本発明の構成は、開閉弁(16)についても同様に適用することができる。
【0081】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明は、流体制御弁の流体の漏れ防止対策について有用である。
【符号の説明】
【0083】
41 第2固定弁体
42 第2可動弁体
42a 第1溝
42b 第2溝
45 膨張弁用溝
46a 第1シール部材
46b 第2シール部材
47a 下側Oリング
47b 上側Oリング
48 第3固定弁体
49 閉塞部
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御弁に関し、特に、流体の漏れ防止対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、図8に示すように、冷凍機等に用いられる冷媒回路(a)には、圧縮機(b)、四路切換弁(c)、室外熱交換器(d)、電子膨張弁(e)、電磁弁(f)、室内側膨張弁(g)及び室内熱交換器(h)が順に接続されている。この冷媒回路(a)は、上記四路切換弁(c)、電子膨張弁(e)、及び電磁弁(f)等の弁機構によって流体(冷媒)の流れを切り換えている。
【0003】
先ず、上記冷媒回路(a)における四路切換弁(c)は、図9に示すように、高圧ガス冷媒(P)中に設けられ、且つ左右に移動可能に構成された弁体(i)を備え、流体通路(j)が形成された弁座(k)に取り付けられている。この弁体(i)の内側及び流体通路(j)は、圧縮機(b)へ吸入される低圧冷媒が流れている。四路切換弁(c)は、弁体(i)が高圧ガス冷媒(P)によって弁座(k)へ押圧されることで弁体(i)と弁座(k)とが密着し、これにより弁体(i)の内側の低圧冷媒が外部へ漏れるのを防止している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−317839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図10に示すように、上記冷媒回路(a)における電子膨張弁(e)では、弁体(l)の内側に膨張室(m)が形成されている。このため、例えば、室外熱交換器(d)で凝縮された高圧液冷媒が膨張室(m)内へ導入されると、この高圧液冷媒は膨張室(m)で減圧され、低圧二相冷媒として導出される。この高圧液冷媒は、上述した高圧ガス冷媒(P)よりも低圧であって、低圧冷媒よりも高圧である。つまり、弁体(l)の外側に存在する高圧ガス冷媒(P)と、弁体(l)の内側に存在する高圧液冷媒との差圧が小さいため、弁体(l)と弁座(n)との密着性が確保できず、その結果、膨張室(m)の冷媒が、弁体(l)の外部へ漏れるという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、流量制御弁において、弁体から流体が漏れるのを確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、流体が流れる連通路(45)が形成された可動弁体(42)を備え、該可動弁体(42)が所定の軸心周りに回転して、上記連通路(45)に開口する複数の弁孔(A,B)間の連通状態を制御する流量制御弁であって、上記連通路(45)は、上記軸心方向に可動弁体(42)を貫通し、上記可動弁体(42)における上記軸心方向の両端面と所定の隙間を有して対向する第1弁座(41)、及び第2弁座(48)と、上記可動弁体(42)における上記軸心方向の両端面に設けられ、上記隙間を密閉するように上記各弁座(41,48)に密着して上記連通路(45)の周囲に配置される第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)とを備え、上記第1弁座(41)には、上記複数の弁孔(A,B)が形成される一方、上記第1シール部材(46a)は、上記可動弁体(42)の回転に応じて上記複数の弁孔(A,B)のうち少なくとも一の弁孔(B)を閉塞可能な大きさに形成された閉塞部分(49)を有している。
【0008】
上記第1の発明では、可動弁体(42)が上記軸心周りに回転することによって、複数の弁孔(A,B)間の連通状態が制御され、各弁孔(A,B)を流れる流体量が制御される。
【0009】
ここで、第1シール部材(46a)は、第1弁座(41)と可動弁体(42)との間の隙間に設けられて該隙間を密閉する。第2シール部材(46b)は、第2弁座(48)と可動弁体(42)との間の隙間に設けられて該隙間を密閉する。これらによって、可動弁体(42)の連通路(45)を流れる流体が上記隙間から外部へ漏れることはない。
【0010】
また、第1シール部材(46a)は、閉塞部分(49)を有しており、該閉塞部分(49)は、可動弁体(42)の回転に応じて複数の弁孔(A,B)のうち少なくとも一の弁孔(B)を閉塞可能である。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記可動弁体(42)には、弾性体で形成されて上記第1シール部材(46a)を上記第1弁座(41)側へ押圧する第1押圧部材(47a)と、弾性体で形成されて上記第2シール部材(46b)を上記第2弁座(48)側へ押圧する第2押圧部材(47b)とを備えている。
【0012】
上記第2の発明では、第1押圧部材(47a)が第1シール部材(46a)を第1弁座(41)側へ押圧すると、第1シール部材(46a)と第1弁座(41)との間の密着力が増加する。これにより、可動弁体(42)と第1弁座(41)との間の隙間がより密閉される。第2押圧部材(47b)が第2シール部材(46b)を第2弁座(48)側へ押圧すると、第2シール部材(46b)と第2弁座(48)との間の密着力が増加する。これにより、可動弁体(42)と第2弁座(48)との間の隙間がより密閉される。
【0013】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記可動弁体(42)には、上記第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)をそれぞれ収容する第1溝(42a)、及び第2溝(42b)がそれぞれ形成され、上記第1押圧部材(47a)、及び第2押圧部材(47b)は、それぞれ上記第1溝(42a)、及び第2溝(42b)に収容されている。
【0014】
上記第3の発明では、第1溝(42a)は、内部に第1押圧部材(47a)と第1シール部材(46a)とを収容している。そして、第1押圧部材(47a)は、第1溝(42a)内において、第1シール部材(46a)を第1弁座(41)側へ押圧する。第2溝(42b)は、内部に第2押圧部材(47b)と第2シール部材(46b)とを収容している。そして、第2押圧部材(47b)は、第2溝(42b)内において、第2シール部材(46b)を第2弁座(48)側へ押圧する。
【0015】
第4の発明は、上記第1〜第3の発明の何れか1つにおいて、上記第1弁座(41)は、上記弁孔(A,B)として第1弁孔(A)と第2弁孔(B)とを有し、上記第1弁孔(A)、及び第2弁孔(B)は、上記第1弁座(41)上の同一仮想円上に配置され、上記連通路(45)は、平面視で上記可動弁体(42)の回転方向に沿って溝幅を漸減させた絞り溝(45)に形成され、上記可動弁体(42)の回転に応じて上記絞り溝(45)が第1弁孔(A)または第2弁孔(B)の絞り量を制御するよう構成されている。
【0016】
上記第4の発明では、可動弁体(42)を回転させると、回転に応じて絞り溝(45)が第1弁孔(A)又は第2弁孔(B)の絞り量を漸次、全閉から全開まで制御する。
【発明の効果】
【0017】
上記第1の発明によれば、第1弁座(41)、及び第2弁座(48)と可動弁体(42)との間に第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)を設けたため、可動弁体(42)と第1弁座(41)、及び第2弁座(48)との間をシール(密閉)することができる。これにより、流量制御弁において、可動弁体(42)と両弁座(41,48)との間の摺動摩擦を低減させると共に、可動弁体(42)の連通路(45)から流体が外部へ漏れるのを確実に防止することができる。また、第1シール部材(46a)に閉塞部分(49)を設けたため、可動弁体(42)の回転に応じて一の弁孔(B)を閉塞することができる。これらにより、複数の弁孔(A,B)間の連通状態を切り換えることができる。
【0018】
上記第2の発明によれば、第1押圧部材(47a)、及び第2押圧部材(47b)がそれぞれ第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)を押圧するようにしたため、第1シール部材(46a)と第1弁座(41)との密着性、及び第2シール部材(46b)と第2弁座(48)との密着性をそれぞれ向上させることができる。これにより、可動弁体(42)と両弁座(41,48)との間の隙間をより密閉することができる。この結果、流量制御弁において、可動弁体(42)の連通路(45)から流体が外部へ漏れるのを確実に防止することができる。
【0019】
上記第3の発明によれば、可動弁体(42)に第1溝(42a)、及び第2溝(42b)を設けたため、第1押圧部材(47a)、及び第1シール部材(46a)を第1溝(42a)に収容すると共に、第2押圧部材(47b)、及び第2シール部材(46b)を第2溝(42b)に収容することができる。
【0020】
上記第4の発明によれば、平面視で上記可動弁体(42)の回転方向に沿って溝幅を漸減させた絞り溝(45)を形成したため、可動弁体(42)の回転に応じて絞り溝(45)が第1弁孔(A)又は第2弁孔(B)の絞り量を調節することができる。これにより、両弁孔(A,B)間を流れる流体流量を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態1に係る冷媒回路を示す配管系統図である。
【図2】本実施形態1に係る複合弁の縦断面構造を模式的に表した図である。
【図3】(A)が第1固定弁体と第1可動弁体の構成を示す平面図、(B)が第2固定弁体と第2可動弁体の構成を示す平面図である。
【図4】接続ポート(B)を全開させた状態において、(A)が膨張弁用溝の構造を模式的に表した図、(B)が室外側膨張弁の構造を模式的に表した図である。
【図5】接続ポート(B)を半閉させた状態において、(A)が膨張弁用溝の構造を模式的に表した図、(B)が室外側膨張弁の構造を模式的に表した図である。
【図6】接続ポート(B)を全閉させた状態において、(A)が膨張弁用溝の構造を模式的に表した図、(B)が室外側膨張弁の構造を模式的に表した図である。
【図7】本実施形態2に係る複合弁の構成を説明する図である。
【図8】従来例に係る冷媒回路を示す配管系統図である。
【図9】従来例に係る四路切換弁の構造を模式的に表した図である。
【図10】従来例に係る電子膨張弁の構造を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
〈発明の実施形態1〉
〈概要〉
本発明の実施形態1として、冷房運転及び暖房運転が可能な空気調和機(冷凍装置)の例を説明する。この空気調和機は、冷媒回路において冷媒を循環させて蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。図1は、本発明の実施形態1に係る空気調和機(10)における冷媒回路(11)の冷媒配管系統図である。同図に示すように、冷媒回路(11)は、圧縮機(12)、四路切換弁(13)、室外熱交換器(14)(熱源側熱交換器)、室外側膨張弁(15)(熱源側膨張弁)、開閉弁(16)、室内側膨張弁(17)(利用側膨張弁)、及び室内熱交換器(18)(利用側熱交換器)を備えている。そして、本実施形態1では、四路切換弁(13)、室外側膨張弁(15)、及び開閉弁(16)が一体化されて複合弁(30)として形成されている。尚、圧縮機(12)、室外熱交換器(14)、及び複合弁(30)は室外機(19)に収容され、室内熱交換器(18)と室内側膨張弁(17)は室内機(20)に収容されている。この室外機(19)と室内機(20)は連絡配管で接続されている。以下では、はじめに冷媒回路(11)の各構成要素について概説し、その後に複合弁(30)の構成について説明する。尚、以下の説明において、四路切換弁(13)、室外側膨張弁(15)、開閉弁(16)等の弁についての「連通状態の制御」とは、接続ポートの接続関係を切り換える制御、弁を開状態及び閉状態の2段階に制御、流体の流量を連続的に変更する制御等の種々の制御を含む概念である。尚、室外側膨張弁(15)は、本発明に係る流量制御弁を構成している。
【0024】
《圧縮機(12)、各熱交換器(14,18)》
本実施形態1の圧縮機(12)は、電動式のスクロール式圧縮機である。尚、圧縮機(12)には、スクロール式圧縮機に限らず種々の形式の圧縮機(例えば、ロータリー式圧縮機)を採用できる。また、室外熱交換器(14)および室内熱交換器(18)は、この空気調和機(10)では、クロス・フィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器を採用している。室外熱交換器(14)では、冷媒回路(11)を循環する冷媒が、室外ファン(図示は省略)により取り込まれた室外空気と熱交換する。また、室内熱交換器(18)では、冷媒回路(11)を循環する冷媒が、室内ファン(図示は省略)によって取り込まれた室内空気と熱交換する。
【0025】
《四路切換弁(13)》
四路切換弁(13)は、空気調和機(10)の運転状態を冷房運転と暖房運転の何れかに切り換える際に使用する弁である。この四路切換弁(13)は、配管を接続する4つの接続ポート(C,D,E,S)を備えている。そして、四路切換弁(13)は、接続ポート(C,D)が互いに連通し、且つ接続ポート(E,S)が互いに連通する第1の連通状態と、接続ポート(D,E)が互いに連通し、且つ接続ポート(C,S)が互いに連通する第2の連通状態の2段階に切り換えられるようになっている。
【0026】
この空気調和機(10)では、接続ポート(C)は、室外熱交換器(14)の一端に接続され、接続ポート(D)は、圧縮機(12)の吐出ポートと接続されている。また、接続ポート(E)は、室内熱交換器(18)の一端に接続され、接続ポート(S)は、圧縮機(12)の吸入ポートに接続されている。そして、空気調和機(10)で冷房運転が行われる場合に第1の連通状態に切り換えられ、暖房運転が行われる場合に第2の連通状態に切り換えられる。
【0027】
《室外側、室内側膨張弁(15,17)、開閉弁(16)》
室外側膨張弁(15)は、冷媒回路(11)における冷媒の流量を調整する弁であり、開度調整を連続的に行えるようになっている。この室外側膨張弁(15)は、暖房運転が行われる際の流量調整に主に使用される。なお、この例の室外側膨張弁(15)は、複合弁(30)として形成されているが、従来の空気調和機ではこの部位には、開度調整を連続的に行える、いわゆる電動弁が採用されることが多い。
【0028】
また、開閉弁(16)は、全開状態と全閉状態の2段階に切り換え可能な弁である。開閉弁(16)は、室外側膨張弁(15)と並列に接続されている。開閉弁(16)も複合弁(30)として形成されているが、従来の空気調和機ではこの部位には、いわゆる電磁弁が採用されることが多い。冷媒回路(11)においては、室外側膨張弁(15)と開閉弁(16)とは、室外熱交換器(14)の一端(四路切換弁(13)とは反対側)と、室内側膨張弁(17)の一端とにそれぞれ接続されている。
【0029】
また、室内側膨張弁(17)も、冷媒回路(11)における冷媒の流量を調整する弁であり、一端が室内熱交換器(18)に接続されている。この室内側膨張弁(17)は、冷房運転が行われる際の冷媒の流量調整に主に使用される。そのため室内側膨張弁(17)は、開度調整を連続的に行えるようになっており、具体的には電動弁を採用している。
【0030】
《複合弁(30)の構成》
図2は、本実施形態に係る複合弁(30)の縦断面構造を模式的に表した図である。この例では、複合弁(30)は、第1固定弁体(31)と第2固定弁体(41)と第3固定弁体(48)と第1可動弁体(33)と第2可動弁体(42)とケーシング(50)とを備えている。第1固定弁体(31)、第2固定弁体(41)、第3固定弁体(48)、第1可動弁体(33)、及び第2可動弁体(42)は、ケーシング(50)に収容されている。このケーシング(50)は、密閉ドーム型の圧力容器である。また、ケーシング(50)には、図示はしないが、第1可動弁体(33)及び第2可動弁体(42)を駆動するためのモータが収容され、このモータは、駆動軸(51)を介して第1可動弁体(33)及び第2可動弁体(42)に接続されている。
【0031】
この複合弁(30)は、既述の通り、四路切換弁(13)、室外側膨張弁(15)、及び開閉弁(16)を一体化したものであり、第1可動弁体(33)と第1固定弁体(31)とで四路切換弁(13)の機能を果たすロータリー弁を構成し、第2可動弁体(42)と第2固定弁体(41)と第3固定弁体(48)とで、室外側膨張弁(15)及び開閉弁(16)の機能を果たすロータリー弁を構成している。以下では、これらの構成要素について説明する。
【0032】
〈第1固定弁体(31)〉
図3(A)は、第1固定弁体(31)と第1可動弁体(33)の構成を示す平面図である。第1固定弁体(31)は、円盤状の形態をしていて、ケーシング(50)内に固定されている(図2を参照)。図3(A)に示すように、この第1固定弁体(31)には、四路切換弁(13)用の4つの接続ポート(C,D,E,S)が形成されている。
【0033】
これらの接続ポート(C,D,E,S)は、何れも同一直径の円形穴であり、第1固定弁体(31)の外周縁の近傍に配置されている。詳しくは、これらの接続ポート(C,D,E,S)は、同一の仮想円上に、それぞれの穴中心が位置するように、所定の角度間隔(α)で配置されている。この例では、接続ポート(C,D,E,S)は、α=90°である。そして、第1固定弁体(31)は、前記仮想円の中心がの駆動軸(51)の軸心と一致するように、ケーシング(50)内に固定されている。
【0034】
〈第1可動弁体(33)〉
第1可動弁体(33)は、平面形状が扇形(この例では概ね半円形)をしていて、第1固定弁体(31)の上面(図3(A)における上)側に該第1固定弁体(31)と摺接するように配置される一方、第2固定弁体(41)の下面側に該第2固定弁体(41)と摺接するように配置されている。第1可動弁体(33)の中心(M)には、の駆動軸(51)が取り付けられている。これにより、第1可動弁体(33)は、モータで回転駆動されて、第1固定弁体(31)に対して回転方向に相対変位する。なお、第1固定弁体(31)には、ピン状のストッパー(32)が設けてあり、第1可動弁体(33)の回転方向位置を一定範囲に規制している。
【0035】
この第1可動弁体(33)には切換弁用溝(34)(連通溝)が形成されている。切換弁用溝(34)は、第1固定弁体(31)の所定の接続ポート(C,D,E,S)間の連通状態の切換に使用する。例えば、図3(A)は、切換弁用溝(34)が接続ポート(C,S)上に位置して、接続ポート(C,S)間を連通させている状態を例示している。尚、第1可動弁体(33)の上下面には、切換弁用溝(34)の周縁に沿った所定幅の溝が形成され、該溝にはシール部材(35,35)が収容されている。このシール部材(35,35)により、切換弁用溝(34)内の空間とケーシング(50)内の空間とをシールしている。
【0036】
接続ポート(C,S)間が連通した状態では、第1可動弁体(33)は接続ポート(C,S)にのみ重なり、接続ポート(D,E)には重ならないようになっている。これにより、接続ポート(D,E)は、ケーシング(50)内の空間に開放され、接続ポート(D,E)間は、ケーシング(50)内の空間で互いに連通する(図3(A)参照)。すなわち、図3(A)に示した状態は四路切換弁(13)の第2の連通状態に対応している。
【0037】
この状態から、第1可動弁体(33)が時計回りに回転して、切換弁用溝(34)が接続ポート(E,S)上に来ると、該接続ポート(E,S)間が連通される。
【0038】
接続ポート(E,S)間が連通した状態では、第1可動弁体(33)は、接続ポート(E,S)にのみ重なり、接続ポート(C,D)には重ならないようになっている。これにより、接続ポート(C,D)は、ケーシング(50)内の空間に開放され、接続ポート(C,D)間は、ケーシング(50)内の空間で互いに連通する(図3(A)参照)。すなわち、第1の連通状態に対応している。このように、第1固定弁体(31)と第1可動弁体(33)(詳しくは切換弁用溝(34))によって、四路切換弁(13)が構成されるのである。
【0039】
〈第2固定弁体(41)〉
図3(B)は、第2固定弁体(41)と第2可動弁体(42)の構成を示す平面図である。第2固定弁体(41)は、円盤状の形態をしていて、ケーシング(50)内に固定されている(図2を参照)。尚、第2固定弁体(41)は、本発明に係る第1弁座を構成している。
図3(B)に示すように、第2固定弁体(41)には、2つの接続ポート(A,B)が形成されている。接続ポート(A,B)は、何れも同一直径の円形穴であり、同一の仮想円上に所定の間隔で配置されている。尚、この接続ポート(A,B)は、本発明に係る弁孔を構成している。また、接続ポート(A)は第1弁孔を構成し、接続ポート(B)は第2弁孔を構成している。また、第2固定弁体(41)は、この仮想円の中心がの駆動軸(51)の軸心上に来るように、ケーシング(50)に取り付けられている。
【0040】
〈第2可動弁体(42)〉
第2可動弁体(42)は、平面形状が扇形(この例では概ね半円形)をしていて、第2固定弁体(41)の上面(図3(B)における上)側に該第2固定弁体(41)と摺接するように配置される一方、第3固定弁体(48)の下面側に該第3固定弁体(48)と摺接するように配置されている。尚、第2可動弁体(42)は、本発明に係る可動弁体を構成している。第2可動弁体(42)の中心には駆動軸(51)が取り付けられている。これにより、第2可動弁体(42)は、モータで回転駆動されて、第2固定弁体(41)に対して回転方向に相対変位する。すなわち、第2可動弁体(42)は第1可動弁体(33)と一体的に回転駆動される。
【0041】
また、第2可動弁体(42)には、開閉弁用溝(43)と膨張弁用溝(45)が形成されている。開閉弁用溝(43)は、接続ポート(A,B)とともに開閉弁(16)を構成し、膨張弁用溝(45)は、接続ポート(A,B)とともに室外側膨張弁(15)を構成している。以下、開閉弁用溝(43)と膨張弁用溝(45)について説明する。
【0042】
-開閉弁用溝(43)-
開閉弁用溝(43)は、平面形状が円弧状で幅が一定の溝である。複合弁(30)では、第1可動弁体(33)が第1の連通状態の位置に設定されると、第2可動弁体(42)では開閉弁用溝(43)が接続ポート(A,B)に対向して接続ポート(A,B)間を連通させるようになっている。具体的には本実施形態では、以下のように開閉弁用溝(43)の位置や幅が設定されている。
【0043】
すなわち、開閉弁用溝(43)は、その溝中心を通る円弧(以下、中心円弧という。図3(B)を参照)が、接続ポート(A,B)の位置を定める仮想円(前述)と同曲率かつ同心に設定されている。そして、開閉弁用溝(43)の溝幅は、接続ポート(A,B)の穴径と同じ、若しくはやや大きめに設定されている。また、開閉弁用溝(43)の中心円弧長、すなわち中心円弧の中心角は、接続ポート(A,B)の間隔に合わせてある。そして、第2可動弁体(42)と第2固定弁体(41)は、四路切換弁(13)が第1連通状態の場合に開閉弁用溝(43)が接続ポート(A,B)と対向するように、回転方向の相対位置を設定してある。尚、第2可動弁体(42)の上下面には、それぞれに開閉弁用溝(43)の周縁に沿った所定幅の溝が形成され、該溝にはシール部材(図示なし)が収容されている。このシール部材により、開閉弁用溝(43)内の空間とケーシング(50)内の空間とをシールしている。
【0044】
上記構成により、四路切換弁(13)が第1連通状態の場合に、接続ポート(A,B)間が連通状態になり、その他の場合には接続ポート(A,B)は開閉弁用溝(43)では連通しない。すなわち、第2可動弁体(42)(開閉弁用溝(43))と第2固定弁体(41)とによって、接続ポート(A,B)を開閉制御する開閉弁(16)が構成されている。
【0045】
-膨張弁用溝(45)-
膨張弁用溝(45)は、その長さ方向に向かって幅が変化する溝であって、本発明に係る連通路及び絞り溝を構成している。第1可動弁体(33)がモータで回転駆動されて、四路切換弁(13)の第2の連通状態に対応した位置に設定されると、第2可動弁体(42)ではこの膨張弁用溝(45)が接続ポート(A,B)に対向し、接続ポート(A,B)間を連通させるようになっている。
【0046】
膨張弁用溝(45)は、具体的には、図3(B)に示すように溝の中心線が円弧状であり、該円弧(以下、中心円弧という)は、開閉弁用溝(43)の中心円弧と同曲率かつ同心である。そして、膨張弁用溝(45)は、第2可動弁体(42)の変位方向(すなわち、回転方向)に沿って溝幅が漸減している。図3(B)の例では、溝幅が最も大きい部分は接続ポート(A,B)の直径とほぼ同じ大きさである。そして、膨張弁用溝(45)の中心円弧の中心角は、接続ポート(A,B)の間隔よりも大きく設定されている。
【0047】
次に、本発明の特徴部分である第2可動弁体(42)の周辺の構造について詳細に説明する。
【0048】
図4は、第2可動弁体(42)の周辺の構造を模式的に表した図である。図4(B)に示すように、第2可動弁体(42)は、第2固定弁体(41)と第3固定弁体(48)との間に所定幅の隙間を有して設けられている。本実施形態では、隙間は約0.5mm程度に形成される。そして、第2可動弁体(42)の上下面には、それぞれに膨張弁用溝(45)の周縁に沿った所定幅の溝(第1溝(42a)、第2溝(42b))が形成されている。
【0049】
上記第1溝(42a)は、第2可動弁体(42)における第2固定弁体(41)と対向する面で膨張弁用溝(45)の周縁に沿って形成される溝である。この第1溝(42a)の内部には、下側Oリング(47a)と第1シール部材(46a)とが収容されている。
【0050】
上記第1シール部材(46a)は、図4(A)に示すように、平面視で扇形の形態をしており、膨張弁用溝(45)の周縁に沿って設けられている。第1シール部材(46a)は、第1溝(42a)の内部に収容され、下側Oリング(47a)によって第2固定弁体(41)側へ押圧されている。この下側Oリング(47a)は、本発明に係る第1押圧部材を構成している。つまり、下側Oリング(47a)が第1シール部材(46a)を押圧することで、第1シール部材(46a)と第2固定弁体(41)とを密着させている。そして、第1シール部材(46a)により膨張弁用溝(45)内の空間とケーシング(50)内の空間とをシールしている。第1シール部材(46a)は、第2可動弁体(42)の回転方向の一端側(図4(A)における左側)の端部に、接続ポート(A,B)の穴径と同じ、若しくはやや大きめの閉塞部(49)が形成されている。つまり、第1シール部材(46a)は、第2可動弁体(42)の回転に応じて閉塞部(49)が接続ポート(B)を閉塞可能に構成されている。
【0051】
上記第2溝(42b)は、第2可動弁体(42)における第3固定弁体(48)と対向する面で膨張弁用溝(45)の周縁に沿って形成される溝である。この第2溝(42b)の内部には、上側Oリング(47b)と第2シール部材(46b)とが収容されている。
【0052】
上記第2シール部材(46b)は、図4(A)に示すように、平面視で扇形の形態をしており、膨張弁用溝(45)の周縁に沿って設けられている。第2シール部材(46b)は、第2溝(42b)の内部に収容され、上側Oリング(47b)によって第3固定弁体(48)側へ押圧されている。この上側Oリング(47b)は、本発明に係る第2押圧部材を構成している。つまり、上側Oリング(47b)が第2シール部材(46b)を押圧することで、第2シール部材(46b)と第3固定弁体(48)とを密着させている。そして、第2シール部材(46b)により膨張弁用溝(45)内の空間とケーシング(50)内の空間とをシールしている。
【0053】
したがって、例えば空気調和機(10)で暖房運転を行う際に、上記室内熱交換器(18)で凝縮した高圧の液冷媒は、膨張弁用溝(45)内の空間へ導入される。膨張弁用溝(45)に形成される空間は、高圧冷媒が充填されているケーシング(50)内の空間よりも低い圧力で、且つ膨張後の低圧冷媒よりも高い圧力に形成されているため、両空間の差圧は小さい。
【0054】
しかしながら、両シール部材(45a,46b)は、両Oリング(47a,47b)によって押圧されているため、第1シール部材(46a)と第2固定弁体(41)との間、及び第2シール部材(46b)と第3固定弁体(48)との間の密着性が向上している。これにより、膨張弁用溝(45)内の冷媒(高圧液冷媒)がケーシング(50)内の空間へ漏れることはない。
【0055】
図5の例は、第2可動弁体(42)が回転して接続ポート(A)と接続ポート(B)の一部が膨張弁用溝(45)に対向し、接続ポート(B)の残りの部分は膨張弁用溝(45)の対向位置から外れるように、膨張弁用溝(45)の円周方向位置等が設定されている。この位置では、接続ポート(B)は第1シール部材(46a)によって、その一部が閉塞された状態となっているため、室外側膨張弁(15)を通過する冷媒流量が制限される。
【0056】
図6の例は、第2可動弁体(42)が回転して接続ポート(A)のみが膨張弁用溝(45)に対向し、接続ポート(B)は膨張弁用溝(45)との対向位置から外れるように、膨張弁用溝(45)の円周方向位置等が設定されている。この位置では、接続ポート(B)は第1シール部材(46a)によって閉塞されており、接続ポート(A,B)間は閉状態に制御されることになる。
【0057】
《空気調和機(10)の運転動作》
〈冷房運転〉
空気調和機(10)で冷房運転を行う場合には、四路切換弁(13)を第1の連通状態(図1に実線で示す状態)に切り換える。また、開閉弁(16)を開状態にする。このとき、室外側膨張弁(15)は閉状態になる。
【0058】
すなわち、この空気調和機(10)において、四路切換弁(13)を第1の連通状態に設定するには、第1可動弁体(33)の切換弁用溝(34)で接続ポート(E,S)間が連通し、かつ開閉弁(16)の開閉弁用溝(43)で接続ポート(A,B)間が連通するようにモータを制御する。このとき、室外側膨張弁(15)を構成する膨張弁用溝(45)は、接続ポート(A,B)からは外れた位置に来る。すなわち、複合弁(30)では、冷媒は室外側膨張弁(15)を通過することなく、開閉弁(16)を通過する。この空気調和機(10)では、開閉弁(16)を設けて、これを冷房運転時に開状態にすることで、冷房運転時に室外側膨張弁(15)が冷媒の流通の抵抗になるのを防止しているのである。
【0059】
そして、この空気調和機(10)では、空気調和機(10)が発揮すべき能力に応じて、室内側膨張弁(17)の開度を調整する。この状態で圧縮機(12)を運転すると、冷媒回路(11)では、室外熱交換器(14)、室内側膨張弁(17)、室内熱交換器(18)の順に冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。詳しくは、圧縮機(12)が吐出した冷媒は四路切換弁(13)を介して室外熱交換器(14)に流入する。室外熱交換器(14)へ流入した冷媒は、室外空気へ放熱して凝縮し、開閉弁(16)を介して室内側膨張弁(17)に流入する。その冷媒は、室内側膨張弁(17)を通過する際に減圧され、室内熱交換器(18)へ流入する。室内熱交換器(18)へ流入した冷媒は、室内熱交換器(18)から吸熱して蒸発する。これにより室内機(20)では、室内熱交換器(18)で冷媒によって冷却された室内空気を室内へ供給する。そして、室内熱交換器(18)で蒸発した冷媒は、四路切換弁(13)を通って圧縮機(12)へ吸入される。圧縮機(12)は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。以下、同様の動作が繰り返されて室内の冷房が行われる。
【0060】
〈暖房運転〉
暖房運転時には、四路切換弁(13)が第2の連通状態(図1に破線で示す状態)に切り換えられる。また、空気調和機(10)が発揮すべき能力に応じて、室外側膨張弁(15)の開度を調整する(図4〜図6参照)。このとき開閉弁(16)は、閉状態になる。また、室内側膨張弁(17)は全開状態にしておく。
【0061】
すなわち、この空気調和機(10)において、四路切換弁(13)を第2の連通状態に設定するには、モータで第1可動弁体(33)を、接続ポート(C,S)間が連通する位置に回転駆動させる。この第1可動弁体(33)の回転に伴って第2可動弁体(42)も一体的に回転し、第2可動弁体(42)の膨張弁用溝(45)が接続ポート(A,B)に対向する。これにより、接続ポート(A,B)間は膨張弁用溝(45)で連通させられる。つまり、接続ポート(A,B)間は室外側膨張弁(15)によって連通する。このとき、第2可動弁体(42)の開閉弁用溝(43)は、接続ポート(A,B)からは外れた位置に来る。すなわち、複合弁(30)では、冷媒は開閉弁(16)を通過することなく室外側膨張弁(15)側を通過する。
【0062】
そして、この状態で圧縮機(12)を運転すると、冷媒回路(11)では、室内熱交換器(18)、室内側膨張弁(17)(全開状態)、室外側膨張弁(15)、室外熱交換器(14)の順に冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。詳しくは、圧縮機(12)から吐出された冷媒は、四路切換弁(13)を介して室内熱交換器(18)へ流入する。室内熱交換器(18)へ流入した冷媒は、室内空気へ放熱して凝縮する。これにより、室内機(20)では、室内熱交換器(18)で冷媒によって加熱された室内空気を室内へ供給する。室内熱交換器(18)で凝縮した冷媒は、全開状態の室内側膨張弁(17)を通過し、室外側膨張弁(15)へ送られる。そして、冷媒は室外側膨張弁(15)を通過する際に減圧され、室外熱交換器(14)へ流入する。室外熱交換器(14)へ流入した冷媒は、室外空気から吸熱して蒸発し、四路切換弁(13)を通って圧縮機(12)へ吸入される。圧縮機(12)は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する。以下、同様の動作が繰り返されて室内の暖房が行われる。
【0063】
−実施形態1の効果−
上記本実施形態1によれば、第2固定弁体(41)、及び第3固定弁体(48)と第2可動弁体(42)との間に第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)を設けたため、第2可動弁体(42)と第2固定弁体(41)、及び第3固定弁体(48)との間を密閉することができる。また、下側Oリング(47a)が第1シール部材(46a)を押圧し、上側Oリング(47b)が第2シール部材(46b)を押圧するようにしたため、第1シール部材(46a)と第2固定弁体(41)との密着性、及び第2シール部材(46b)と第3固定弁体(48)との密着性を向上させることができる。したがって、第2可動弁体(42)と両固定弁体(41,48)との間の隙間をより密閉することができる。これらにより、室外側膨張弁(15)において、第2可動弁体(42)と両固定弁体(41,48)との間の摺動摩擦を低減させると共に、第2可動弁体(42)の膨張弁用溝(45)から冷媒がケーシング(50)内の空間へ漏れるのを確実に防止することができる。
【0064】
また、第1シール部材(46a)に閉塞部(49)を設けたため、第2可動弁体(42)の回転に応じて接続ポート(B)を閉塞することができる。これらにより、接続ポート(A,B)間の連通状態を切り換えることができる。
【0065】
さらに、第2可動弁体(42)に第1溝(42a)、及び第2溝(42b)を設けたため、下側Oリング(47a)、及び第1シール部材(46a)を第1溝(42a)に収容すると共に、上側Oリング(47b)、及び第2シール部材(46b)を第2溝(42b)に収容することができる。
【0066】
一方、平面視で第2可動弁体(42)の回転方向に沿って溝幅を漸減させた膨張弁用溝(45)を形成したため、第2可動弁体(42)の回転に応じて膨張弁用溝(45)が接続ポート(A,B)の絞り量を調節することができる。これにより、両接続ポート(A,B)間を流れる冷媒流量を調節することができる。この結果、室外側膨張弁(15)の開度を調節することができる。
【0067】
《発明の実施形態2》
図7は、本発明の実施形態2に係る複合弁の構成を説明する図である。この複合弁は、2つの接続ポート(A,B)の何れの側で流量を絞るかを、冷房運転か暖房運転かに応じて切換できるようになっている。なお、この複合弁には、実施形態1の複合弁(30)で設けられていた開閉弁(16)は存在しない。また、この複合弁を用いた冷媒回路では、室内側膨張弁(17)を設けていない。
【0068】
具体的に実施形態2に係る複合弁では、室外側膨張弁の構成が実施形態1と異なっており、この室外側膨張弁(55)は可動弁体(第2可動弁体(56))の構成に特徴がある。なお、本実施形態では、図3に示すように、第1固定弁体(31)における接続ポート(C,D,E,S)の並び順が実施形態1とは異なっているが、これらの接続ポートの形状や間隔等は実施形態1と同様である。
【0069】
〈第2可動弁体(56)〉
本実施形態2の第2可動弁体(56)は、平面形状が扇形(この例では概ね半円形)をしていて、第2固定弁体(41)の上面(図7における上)側に該第2固定弁体(41)と摺接するように配置されている。そして、第2可動弁体(56)には、膨張弁用溝(57)が形成されている。膨張弁用溝(57)は、接続ポート(A,B)とともに室外側膨張弁(15)を構成している。
【0070】
この膨張弁用溝(57)は、図7に示すように、平面形状が三日月状に形成されている。第1可動弁体(33)がモータで回転駆動されて、四路切換弁(13)の第2の連通状態に対応した位置に設定されると、第2可動弁体(56)ではこの膨張弁用溝(57)が接続ポート(A,B)に対向し、接続ポート(A,B)間を連通させるようになっている。
【0071】
具体的には、膨張弁用溝(57)は、その溝中心を通る円弧(以下、中心円弧という。図7を参照)が、接続ポート(A,B)の位置を定める仮想円と同心かつ同径である。図7の例では、溝幅が最も大きい部分の溝幅は接続ポート(A,B)の直径とほぼ同じ大きさである。そして、膨張弁用溝(57)の中心円弧における中心角は、接続ポート(A,B)の間隔よりも大きく設定されている。詳しくは、四路切換弁(13)が第1の連通状態を維持できる範囲で第2可動弁体(56)が回転移動した場合に、膨張弁用溝(57)の左半分(図7参照)が、接続ポート(A,B)の両方若しくは接続ポート(B)のみと対向し、第2の連通状態を維持できる範囲で第2可動弁体(56)が回転移動した場合には、膨張弁用溝(57)の右半分が接続ポート(A,B)の両方若しくは接続ポート(A)のみと対向ように、中心円弧長が設定されている。
【0072】
上記第2可動弁体(56)の上下面には、膨張弁用溝(57)の周縁に沿った所定幅の溝(第1溝、及び第2溝)が形成され、該溝には第1シール部材(図示なし)、及び第2シール部材(58)が収容されている。尚、第1シール部材及び第2シール部材の構成は、実施形態1と同様である。これらのシール部材により、膨張弁用溝(57)内の空間とケーシング(50)内の空間とをシールしている。
【0073】
上記の構成により、第1の連通状態(すなわち冷房運転時)には、接続ポート(A)側に膨張弁用溝(57)の先端側が位置し、接続ポート(A)の開口量が調整する。これにより、接続ポート(A,B)間の冷媒流量が制御されることになる。すなわち、本実施形態では、冷媒の圧力が大きい側の接続ポートの開口面積が他方よりも大きく設定されている。一方、第2の連通状態(すなわち暖房運転時)では、接続ポート(B)側に膨張弁用溝(57)の先端側が位置し、接続ポート(B)の開口量が調整される。これにより、第2の連通状態でも接続ポート(A,B)間の冷媒流量が制御される。この場合も冷媒の圧力が大きい側の接続ポートの開口面積が他方よりも大きく設定されている。
【0074】
《複合弁の動作》
図7では(A)が冷房運転時、(B)が暖房運転時の第2可動弁体(56)等の動作をそれぞれ例示している。
【0075】
〈冷房運転時〉
例えば、冷房運転時には、図7(A)の(1)〜(3)に示すように、四路切換弁(13)側では、接続ポート(E,S)間が切換弁用溝(34)で連通し、接続ポート(C,D)間は、ケーシング(50)内の空間を介して互いに連通している。
【0076】
一方、室外側膨張弁(15)側では、(1)の段階では、膨張弁用溝(57)の一端側(先端側)が接続ポート(B)上にあり、接続ポート(A)は、第2可動弁体(56)の下に隠れている。すなわち、接続ポート(A,B)間は連通していない。そして、第2可動弁体(56)が時計回りに回転して(2)の段階になると、膨張弁用溝(57)の先端側は接続ポート(A)上にあり、接続ポート(A)の流路が絞られている。一方、接続ポート(B)は、膨張弁用溝(57)の中央に近い部分が面していて、全開状態に制御されている。さらに第2可動弁体(56)が時計回りに回転して(3)の段階になると、接続ポート(A)は、(2)の段階と比べ、膨張弁用溝(57)のより幅が広い部分と対向する。したがって、(3)の段階は、(2)の段階よりも接続ポート(A)の絞り量は小さい。
【0077】
〈暖房運転時〉
また、暖房運転時には、図7(B)の(4)〜(6)に示すように、四路切換弁(13)側では、接続ポート(C,S)間が切換弁用溝(34)で連通し、接続ポート(D,E)間は、ケーシング(50)内の空間を介して互いに連通している。
【0078】
一方、室外側膨張弁(15)は、(4)の段階では、膨張弁用溝(57)の他の一端側(図7(4)における膨張弁用溝(57)の右先端側)が接続ポート(B)のやや右にあり、接続ポート(A)は、膨張弁用溝(57)の中央に近い部分が面している。すなわち、(4)の段階では全接続ポート(A)は開状態であり、接続ポート(B)は流路が絞られている。さらに第2可動弁体(56)が時計回りに回転して(5)の段階になると、接続ポート(A)の流路も絞られてくるが、接続ポート(B)側の流路の方が絞り量は大きい。そして、(6)の段階になると、接続ポート(B)は、第2可動弁体(56)の下に隠れている。すなわち、接続ポート(A,B)間は連通していない。その他の構成・作用及び効果は、実施形態1と同様である。
【0079】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態1及び2について、以下のような構成としてもよい。
【0080】
本実施形態1及び2では、本発明の構成を室外側膨張弁(15)に適用したが、本発明の構成は、開閉弁(16)についても同様に適用することができる。
【0081】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明は、流体制御弁の流体の漏れ防止対策について有用である。
【符号の説明】
【0083】
41 第2固定弁体
42 第2可動弁体
42a 第1溝
42b 第2溝
45 膨張弁用溝
46a 第1シール部材
46b 第2シール部材
47a 下側Oリング
47b 上側Oリング
48 第3固定弁体
49 閉塞部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる連通路(45)が形成された可動弁体(42)を備え、該可動弁体(42)が所定の軸心周りに回転して、上記連通路(45)に開口する複数の弁孔(A,B)間の連通状態を制御する流量制御弁であって、
上記連通路(45)は、上記軸心方向に可動弁体(42)を貫通し、
上記可動弁体(42)における上記軸心方向の両端面と所定の隙間を有して対向する第1弁座(41)、及び第2弁座(48)と、
上記可動弁体(42)における上記軸心方向の両端面に設けられ、上記隙間を密閉するように上記各弁座(41,48)に密着して上記連通路(45)の周囲に配置される第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)とを備え、
上記第1弁座(41)には、上記複数の弁孔(A,B)が形成される一方、
上記第1シール部材(46a)は、上記可動弁体(42)の回転に応じて上記複数の弁孔(A,B)のうち少なくとも一の弁孔(B)を閉塞可能な大きさに形成された閉塞部分(49)を有している
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
請求項1において、
上記可動弁体(42)には、弾性体で形成されて上記第1シール部材(46a)を上記第1弁座(41)側へ押圧する第1押圧部材(47a)と、弾性体で形成されて上記第2シール部材(46b)を上記第2弁座(48)側へ押圧する第2押圧部材(47b)とを備えている
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項3】
請求項2において、
上記可動弁体(42)には、上記第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)をそれぞれ収容する第1溝(42a)、及び第2溝(42b)がそれぞれ形成され、
上記第1押圧部材(47a)、及び第2押圧部材(47b)は、それぞれ上記第1溝(42a)、及び第2溝(42b)に収容されている
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1つにおいて、
上記第1弁座(41)は、上記弁孔(A,B)として第1弁孔(A)と第2弁孔(B)とを有し、上記第1弁孔(A)、及び第2弁孔(B)は、上記第1弁座(41)上の同一仮想円上に配置され、
上記連通路(45)は、平面視で上記可動弁体(42)の回転方向に沿って溝幅を漸減させた絞り溝(45)に形成され、上記可動弁体(42)の回転に応じて上記絞り溝(45)が第1弁孔(A)または第2弁孔(B)の絞り量を制御するよう構成されている
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項1】
流体が流れる連通路(45)が形成された可動弁体(42)を備え、該可動弁体(42)が所定の軸心周りに回転して、上記連通路(45)に開口する複数の弁孔(A,B)間の連通状態を制御する流量制御弁であって、
上記連通路(45)は、上記軸心方向に可動弁体(42)を貫通し、
上記可動弁体(42)における上記軸心方向の両端面と所定の隙間を有して対向する第1弁座(41)、及び第2弁座(48)と、
上記可動弁体(42)における上記軸心方向の両端面に設けられ、上記隙間を密閉するように上記各弁座(41,48)に密着して上記連通路(45)の周囲に配置される第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)とを備え、
上記第1弁座(41)には、上記複数の弁孔(A,B)が形成される一方、
上記第1シール部材(46a)は、上記可動弁体(42)の回転に応じて上記複数の弁孔(A,B)のうち少なくとも一の弁孔(B)を閉塞可能な大きさに形成された閉塞部分(49)を有している
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
請求項1において、
上記可動弁体(42)には、弾性体で形成されて上記第1シール部材(46a)を上記第1弁座(41)側へ押圧する第1押圧部材(47a)と、弾性体で形成されて上記第2シール部材(46b)を上記第2弁座(48)側へ押圧する第2押圧部材(47b)とを備えている
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項3】
請求項2において、
上記可動弁体(42)には、上記第1シール部材(46a)、及び第2シール部材(46b)をそれぞれ収容する第1溝(42a)、及び第2溝(42b)がそれぞれ形成され、
上記第1押圧部材(47a)、及び第2押圧部材(47b)は、それぞれ上記第1溝(42a)、及び第2溝(42b)に収容されている
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1つにおいて、
上記第1弁座(41)は、上記弁孔(A,B)として第1弁孔(A)と第2弁孔(B)とを有し、上記第1弁孔(A)、及び第2弁孔(B)は、上記第1弁座(41)上の同一仮想円上に配置され、
上記連通路(45)は、平面視で上記可動弁体(42)の回転方向に沿って溝幅を漸減させた絞り溝(45)に形成され、上記可動弁体(42)の回転に応じて上記絞り溝(45)が第1弁孔(A)または第2弁孔(B)の絞り量を制御するよう構成されている
ことを特徴とする流量制御弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−75047(P2011−75047A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228112(P2009−228112)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]