説明

浄化槽管理用の風量センサ装置

【課題】簡単な構造で安価な浄化槽管理用の風量センサ装置の提供。
【解決手段】浄化槽への空気供給路の途中に接続され、流入口14aから流入した空気を流出口14bから流出させるケース10と、回転軸11aが流入口14aと流出口14bとを結ぶ流路に対して直角方向に配置され、かつ回転軸11aが流入口14aと流出口14bとを結ぶ流路断面から外れた位置に配置された回転羽根11と、回転羽根11が収容されたケース10内の回転羽根室15と、回転軸11aの回転数を検出するエンコーダ12とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロアによって曝気用の空気を送り込む浄化槽において、ブロアの故障などによる空気供給の異常を検知するための浄化槽管理用の風量センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、浄化槽にはブロアによって曝気用の空気が送り込まれるが、このブロアの故障などにより空気が送り込まれなくなると、浄化槽内の好気性微生物が活動できなくなり、正常な浄化ができなくなる。そこで、浄化槽のブロアの異常をセンサによって検知し、即座に対応できるようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1には、送風機の吐出口に圧力センサを設け、吐出される空気の吐出圧力が最小圧力以下または最大圧力以上となった場合に警報ランプの点灯により通知することが記載されている。また、特許文献2には、浄化槽の異常検知に、圧力センサの他に風量(速)センサを利用可能であることが記載されているが、風量センサについて具体的な記載はない。
【0004】
また、非特許文献1には、市販の気体用流量センサについて記載されている。その測定原理は、無風時はヒータの熱が均等に拡散するが、流れがあると上流は流れにより冷やされ、下流側は上流側のヒータの熱により温められることにより、ヒータ前後の温度分布が流量に比例して変化するので、この比率から流量を求めるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−1343号公報
【特許文献2】特開2008−6354号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“アンプ分離型 気体用流量センサ FD−V40シリーズ”,[online],株式会社キーエンス,[平成21年1月8日検索],インターネット<URL:http://www.keyence.co.jp/atsuryoku/ryuryou/fd_v40/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に記載のような圧力センサは構造が複雑で非常に高価であるため、家庭用浄化槽のような小型の浄化槽のすべてに設置することは現実的に困難である。また、特許文献2に記載の風量センサについては具体的な記載がないため、実際にどのような構成で風量を検出するのか不明である。さらに、非特許文献1の流量センサについても構造が複雑であり、高価である。
【0008】
そこで、本発明においては、簡単な構造で安価な浄化槽管理用の風量センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の浄化槽管理用の風量センサ装置は、浄化槽への空気供給路の途中に接続され、流入口から流入した空気を流出口から流出させるケースと、回転軸が流入口と流出口とを結ぶ流路に対して直角方向に配置され、かつ回転軸が流入口と流出口とを結ぶ流路断面から外れた位置に配置された回転羽根と、回転羽根が収容されたケース内の回転羽根室と、回転軸の回転数を検出するエンコーダとからなる。
【0010】
本発明の風量センサ装置によれば、浄化槽への空気供給路内で空気が送り込まれている場合には、この空気の流れによって回転羽根が回転羽根室内で回転し、この回転羽根の回転数が回転軸を通じてエンコーダにより検出される。
【0011】
また、本発明の風量センサ装置は、エンコーダにより検出する回転数が設定値から所定幅以上変動した場合に異常を検出する異常検出装置を含むものであることが望ましい。これにより、正常動作時の風量からの変動幅によって異常を検出するので、管理する浄化槽の仕様に関わらず使用することが可能となる。
【0012】
また、異常検出装置は、設定値の所定幅以上の変動が所定時間継続した場合にのみ異常として検出するものであることが望ましい。これにより、瞬時停電などにより一時的にブロア停止が発生したとしても所定時間内に復帰した際には異常として検出されなくなり、異常の誤検出を防止することが可能となる。
【0013】
また、エンコーダは、回転軸に固定された回転円板と、回転円板の回転数を検知するフォトセンサとから構成されるものであることが望ましい。これにより、非接触で回転円板に負荷を掛けることなく回転円板の回転数を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
(1)浄化槽への空気供給路の途中に接続され、流入口から流入した空気を流出口から流出させるケースと、回転軸が流入口と流出口とを結ぶ流路に対して直角方向に配置され、かつ回転軸が流入口と流出口とを結ぶ流路断面から外れた位置に配置された回転羽根と、回転羽根が収容されたケース内の回転羽根室と、回転軸の回転数を検出するエンコーダとからなる風量センサ装置によれば、回転羽根の回転数を簡単な構造で安価に検出することが可能となり、ブロアの故障や浄化槽への空気供給路の目詰まりなどの異常を検知でき、即座に対応することができる。
【0015】
(2)エンコーダにより検出する回転数が設定値から所定幅以上変動した場合に異常を検出する異常検出装置を含むことにより、正常動作時の風量からの変動幅によって異常を検出するので、管理する浄化槽の仕様に関わらず使用することが可能となり、低コストで多くの種類の浄化槽に対応可能である。
【0016】
(3)異常検出装置が設定値の所定幅以上の変動が所定時間継続した場合にのみ異常として検出するものであることにより、瞬時停電などにより一時的にブロア停止が発生したとしても所定時間内に復帰した際には異常として検出されなくなり、異常の誤検出を防止することが可能となる。
【0017】
(4)エンコーダが、回転軸に固定された回転円板と、回転円板の回転数を検知するフォトセンサとから構成されるものであることにより、非接触で回転円板に負荷を掛けることなく回転円板の回転数を検出することができるので、浄化槽へ圧送する空気へほとんど影響を及ぼすことなく、ブロアの故障や浄化槽への空気供給路の目詰まりなどの異常を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態における風量センサ装置の概略構成図である。
【図2】図1の風量センサ本体の上ケースを省略した斜視図である。
【図3】図1の風量センサ本体の平面図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】図4の右側面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】図3のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態における浄化槽管理用の風量センサ装置の概略構成図である。図2は図1の風量センサ本体の上ケースを省略した斜視図、図3は図1の風量センサ本体の平面図、図4は図3の正面図、図5は図4の右側面図、図6は図5のA−A断面図、図7は図3のB−B断面図である。
【0020】
図1において、本発明の実施の形態における浄化槽管理用の風量センサ装置は、浄化槽RへブロアBにより空気を供給する空気供給路としてのホースHの途中に接続される風量センサ本体1と、風量センサ本体1の検知信号が入力されるマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と称す。)2と、マイコン2に接続されるモデム3と、浄化槽管理用のパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」と称す。)4と、パソコン4に接続されるモデム5とから構成される。
【0021】
マイコン2は、風量センサ本体1から入力される検知信号に基づいて異常を検出すると、モデム3を通じて、通信回線によりパソコン4へ通知する異常検出装置である。パソコン4は、モデム5を通じてこのマイコン2からの通知を受けて、そのディスプレイ4a上への表示や警報などにより管理者へ異常発生を通知するものである。
【0022】
図2〜図7に示すように、風量センサ本体1は、ケース10内に回転羽根11およびエンコーダ12を備える。ケース10は、上ケース10aおよび下ケース10bにより構成されている。ケース10には、ホースHを接続するニップル13a,13bが設けられている。ニップル13a,13bの一方はブロアB側のホースHに接続され、他方は浄化槽R側のホースHに接続される。なお、本実施形態においては、ニップル13a側の開口を流入口14a、ニップル13b側の開口を流出口14bとして説明するが、この風量センサ本体1はいずれの方向でも使用可能である。
【0023】
また、ケース10には、回転羽根11が収容される回転羽根室15と、エンコーダ12が収容されるエンコーダ室16とが設けられている。回転羽根室15とエンコーダ室16とは別室となっている。回転羽根11の回転軸11aは、流入口14aと流出口14bとを結ぶ流路に対して直角方向に配置され、回転羽根室15の両端部で軸受17により回転自在に支持されている。また、回転軸11aは、回転羽根室15を貫通してエンコーダ室16まで延設されている。回転軸11aの先端部には、エンコーダ12を構成する回転円板12aが固定されている。
【0024】
回転羽根11は、回転軸11a上に4枚の略半円状板11bが回転方向周りに90°間隔で立設されたものである。それぞれの略半円状板11bは、回転軸11aの軸線に対して平行に設けられている。回転羽根室15は、図7の断面視でこの回転羽根11の形状に沿う形状に形成されている。また、回転軸11aは、流入口14aと流出口14bとを結ぶ流路断面から外れた位置に配置されている。したがって、流入口14aから流入した空気は、図6に示すように回転羽根11の1枚に衝突し、この回転羽根11を回転軸11a周りに押し動かすことにより、流出口14bから流出する。
【0025】
エンコーダ12は、前述の回転円板12aと、回転円板12aの回転数を検知するフォトセンサ12bとから構成されている。フォトセンサ12bは、回転円板12aを挟んで一方から発光し、他方で受光するものである。回転円板12aには、外周に沿って所定間隔で貫通孔が複数形成されている。エンコーダ12は、上記フォトセンサ12bによって回転する回転円板12aの貫通孔の通過をカウントすることにより、回転数を検知する。
【0026】
上記構成の風量センサ装置では、まずホースHの途中に風量センサ本体1を設置し、正常動作時の風量の変動幅を測定し、この測定結果に基づいて初期設定値および許容変動幅を設定する。すなわち、正常動作時にエンコーダ12により検出される回転数の初期設定値と許容変動幅を設定する。マイコン2は、このエンコーダ12により検出される回転数が予め設定された設定値から所定幅以上変動した場合、すなわち、設定風量から例えば−30%以下もしくは10%以上の変動が生じた場合に異常と判断するように設定する。
【0027】
また、本実施形態においては、マイコン2は、瞬時停電などの際の誤検出を防止するため、この変動が所定時間(例えば30分間以上)継続した場合に異常を検出するように設定する。
【0028】
この風量センサ装置によれば、ホースHにより浄化槽Rへ空気が送り込まれている場合には、この空気の流れによって風量センサ本体1の回転羽根11が回転羽根室15内で回転し、この回転羽根11の回転数が回転軸11aを通じてエンコーダ12により検出される。そして、ブロアBの故障やホースHの目詰まりなどが発生した場合には空気の流れが減速あるいは停止するので、回転羽根11の回転数は減少あるいは0となる。
【0029】
このとき、マイコン2は、風量センサ本体1から入力される検知信号に基づいて上記のように異常を検出する。そして、マイコン2は、異常を検出すると、モデム3を通じて、通信回線によりパソコン4へ通知する。そして、パソコン4は、モデム5を通じてこのマイコン2からの通知を受けて、そのディスプレイ4a上への表示や警報などにより管理者へ異常発生を通知する。
【0030】
このように、本実施形態における風量センサ装置によれば、簡単な構造で曝気用の空気供給の異常を安価に検出することが可能であり、ブロアの故障や浄化槽への空気供給路の目詰まりなどの異常を検知し、即座に対応することができる。
【0031】
特に、本実施形態における風量センサ本体1では、エンコーダ12が、回転羽根11の回転軸11aに固定された回転円板12aと、回転円板12aの回転数を検知するフォトセンサ12bとから構成されるものであるため、非接触で回転円板11に負荷を掛けることなく回転円板11の回転数を検出することが可能であり、浄化槽Rへ圧送する空気へほとんど影響を及ぼすことがない。
【0032】
なお、本実施形態における風量センサ装置は、風量センサ本体1、マイコン2およびモデム3を浄化槽Rに設置し、パソコン4およびモデム5を浄化槽Rから離れた場所に設置する構成であるが、風量センサ本体1を浄化槽Rに設置し、この風量センサ本体1から出力される検知信号を浄化槽Rから離れた場所に設置したマイコン2やパソコン4等に送信して異常検出する構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の浄化槽管理用の風量センサ装置は、ブロアによって曝気用の空気を送り込む浄化槽において、ブロアの故障などによる空気供給の異常を検知するための装置として有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 風量センサ本体
2 マイクロコンピュータ(マイコン)
3,5 モデム
4 パーソナルコンピュータ(パソコン)
10 ケース
11 回転羽根
11a 回転軸
11b 略半円状板
12 エンコーダ
12a 回転円板
12b フォトセンサ
13a,13b ニップル
14a 流入口
14b 流出口
15 回転羽根室
16 エンコーダ室
17 軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄化槽への空気供給路の途中に接続され、流入口から流入した空気を流出口から流出させるケースと、
回転軸が前記流入口と前記流出口とを結ぶ流路に対して直角方向に配置され、かつ前記回転軸が前記流入口と前記流出口とを結ぶ流路断面から外れた位置に配置された回転羽根と、
前記回転羽根が収容された前記ケース内の回転羽根室と、
前記回転軸の回転数を検出するエンコーダと
からなる浄化槽管理用の風量センサ装置。
【請求項2】
前記エンコーダにより検出する回転数が設定値から所定幅以上変動した場合に異常を検出する異常検出装置を含む請求項1記載の浄化槽管理用の風量センサ装置。
【請求項3】
前記異常検出装置は、前記設定値の所定幅以上の変動が所定時間継続した場合にのみ異常として検出するものである請求項2記載の浄化槽管理用の風量センサ装置。
【請求項4】
前記エンコーダは、前記回転軸に固定された回転円板と、前記回転円板の回転数を検知するフォトセンサとから構成されるものである請求項1から3のいずれかに記載の浄化槽管理用の風量センサ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−200803(P2011−200803A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70833(P2010−70833)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(501046800)
【Fターム(参考)】