説明

浄水システム

【課題】凝集剤を用いることなく高色度・高濁度の水を適切に浄化できる、浄水システムを提供する。
【解決手段】浄水システム10は、上流側から順に、直列的に設けられかつ下流側の槽ほど小さいろ材が収容される6段構造の上向流式ろ過槽である第1槽62a〜第6槽62fとその下流側に設けられる1段の下向流式ろ過槽である第7槽62gとを含む荒ろ過装置14、紐状接触材槽88とそれに収容される紐状接触材90とを含む紐状接触処理装置16、2つの緩速ろ過ユニット22aおよび22bを含む緩速ろ過装置22、および水を消毒するために電解塩素発生装置178を有する水消毒装置26を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は浄水システムに関し、より特定的には凝集剤を用いない小型の浄水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浄水システムでは、高色度・高濁度の原水の浄化にはたとえばポリ塩化アルミニウムなどの凝集剤を用いるのが一般的である。また、凝集剤を用いない浄水システムとしては、礫を用いた3〜4段の上向流式ろ過槽を直列的に接続した荒ろ過装置を有するものがある。さらに、特許文献1には、緩速ろ過装置による水処理の前処理装置として傾斜管沈殿装置を用いた浄水システムが開示されている。
【特許文献1】特開2002−316181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、凝集剤を用いた浄水システムでは、色度・濁度除去は可能であるが開発途上国では凝集剤を購入し続ける経済力がないため、凝集剤の援助による供給が止まり凝集剤の在庫がなくなると浄水システムが停止してしまう。
【0004】
また、3〜4段の上向流式ろ過槽を含む荒ろ過装置では、雨季の高色度・高濁度の水を処理するときにはろ過槽が閉塞し機能しなくなる場合がある。
【0005】
さらに、特許文献1の浄水システムでは、開発途上国における雨季の高色度・高濁度の表流水は前処理装置の処理能力を超えており、当該表流水を緩速ろ過が可能な程度にまで浄化することはできない。この場合、緩速ろ過が物理ろ過にとどまってしまい、微生物ろ過としての機能を十分に果たせない。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、凝集剤を用いることなく高色度・高濁度の水を適切に浄化できる、浄水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の浄水システムは、荒ろ過装置を備える浄水システムであって、前記荒ろ過装置は、直列的に設けられかつ下流側の槽ほど小さいろ材が収容される複数の上向流式ろ過槽、および前記複数の上向流式ろ過槽より下流側に設けられる下向流式ろ過槽を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の浄水システムは、請求項1に記載の浄水システムにおいて、前記下向流式ろ過槽は、前記複数の上向流式ろ過槽に収容されるろ材のうち最小寸法のろ材と比べて同寸法以下のろ材を収容することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の浄水システムは、請求項1に記載の浄水システムにおいて、前記複数の上向流式ろ過槽および前記下向流式ろ過槽はそれぞれ遮光構造とされることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の浄水システムは、請求項1に記載の浄水システムにおいて、前記複数の上向流式ろ過槽は6段に構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の浄水システムは、請求項1に記載の浄水システムにおいて、前記荒ろ過装置からの水を緩速ろ過するために前記荒ろ過装置の下流側に設けられる緩速ろ過装置をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の浄水システムは、請求項5に記載の浄水システムにおいて、前記荒ろ過装置へ一定量の水を供給するために前記荒ろ過装置の上流側に設けられる第1液体供給装置をさらに含み、前記第1液体供給装置から前記荒ろ過装置へは、前記緩速ろ過装置での処理量を超える量の水が供給されることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の浄水システムは、請求項6に記載の浄水システムにおいて、前記緩速ろ過装置へ一定量の水を供給するために前記荒ろ過装置と前記緩速ろ過装置との間に設けられる第2液体供給装置をさらに含み、前記第2液体供給装置から前記緩速ろ過装置へは、前記緩速ろ過装置での処理量を超えかつ前記第1液体供給装置から前記荒ろ過装置への供給量以下の量の水が供給されることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の浄水システムは、請求項6に記載の浄水システムにおいて、前記緩速ろ過装置からオーバーフローする水を収容する収容部をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の浄水システムは、請求項6に記載の浄水システムにおいて、前記緩速ろ過装置での処理量を制御するために前記緩速ろ過装置の下流側に設けられる第3液体供給装置をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の浄水システムは、請求項5に記載の浄水システムにおいて、前記緩速ろ過装置は複数の緩速ろ過ユニットを含むことを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の浄水システムは、請求項5に記載の浄水システムにおいて、前記緩速ろ過装置の損失水頭を測定するために前記緩速ろ過装置に連結される透明管をさらに含むことを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の浄水システムは、請求項5に記載の浄水システムにおいて、紐状接触材槽と前記紐状接触材槽に収容される紐状接触材とを含みかつ前記荒ろ過装置からの水を浄化するために前記荒ろ過装置と前記緩速ろ過装置との間に介挿される紐状接触処理装置をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の浄水システムは、請求項12に記載の浄水システムにおいて、前記紐状接触材槽の水深は前記紐状接触材の直径の2倍以下に設定されることを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載の浄水システムは、請求項12に記載の浄水システムにおいて、前記緩速ろ過装置からの水を消毒するために電解塩素発生装置を有しかつ前記緩速ろ過装置の下流側に設けられる水消毒装置をさらに含むことを特徴とする。
【0021】
高色度・高濁度の水には、沈殿しやすいものから沈殿しないものまで様々な大きさの成分が混在している。請求項1に記載の浄水システムでは、複数の上向流式ろ過槽が下流の槽ほど小さいろ材を収容するように構成されることによって、高色度・高濁度の水に含まれる成分を大きい成分から徐々に除去していくことができる。したがって、汚泥が1箇所に集中することはなく、ろ過槽の閉塞を抑制できる。また、複数の上向流式ろ過槽に続けて下向流式ろ過槽を設け、ろ過槽での水流方向を上向きから下向きへと変えることによって水の環境が変化する。それによって、下向流式ろ過槽内のろ材上面と水との界面近傍においてたとえば鉄バクテリア等の微生物が発生すると考えられる。その微生物の活動等によって、上向流式ろ過槽では除去できなかったミクロン単位の微細な粒子を下向流式ろ過槽で除去でき、水の色度・濁度をさらに低減できる。このようにタイプの異なるろ過槽を組み合わせることによって、凝集剤を用いることなく高色度・高濁度の水から泥成分やそれに付着する細菌等を除去でき、水を適切に浄化できる。
【0022】
請求項2に記載の浄水システムでは、複数の上向流式ろ過槽に収容されるろ材のうち最小寸法のろ材と比べて同寸法以下のろ材を下向流式ろ過槽に収容することによって、下向流式ろ過槽内において微生物による浄化に加えてろ材による浄化をも効果的に施すことができ、水の浄化をさらに促進できる。
【0023】
請求項3に記載の浄水システムでは、各ろ過槽を遮光構造とすることによって、ろ過槽内において閉塞を起こす可能性がある藻の発生を防止できる。特に、藻が発生しやすい熱帯地方において有効となる。
【0024】
請求項4に記載の浄水システムでは、6段構造の上向流式ろ過槽について下流側の槽ほど小さいろ材を収容するように設定することによって、水中の成分を大きいものから徐々に除去できるので、汚泥が1箇所に集中してろ過槽が閉塞することをさらに抑制できる。また、上向流式ろ過槽が6段構造であれば、たとえば、上向流式ろ過槽のドレン作業を1日に1段ずつ行うと、月曜日から土曜日までの6日間で6段の各上向流式ろ過槽を1回ずつ、すなわち1週間に1回の頻度でドレン作業できる。したがって、月曜日から土曜日の各曜日と6段の各ろ過槽とを対応付けておけば、日曜日を除いて毎日、その日に割り当てられた特定の1つのろ過槽をドレン作業すればよく、日々の作業スケジュールを容易に管理できドレン作業を確実かつ円滑に行える。特に、作業スケジュールの簡素化が望まれる開発途上国において有効である。
【0025】
請求項5に記載の浄水システムでは、高色度・高濁度の水を荒ろ過装置によって緩速ろ過装置への水として要求されるレベルまで浄化できるので、緩速ろ過装置には所望の水質レベルの水を安定して供給できる。したがって、緩速ろ過装置において、ろ材表面近傍の微生物や藻による緩速ろ過が正常に機能し、水から飲料として不適当な物質や細菌やミクロン単位の微細な粒子をさらに除去でき水をさらに浄化できる。その結果、従来、高色度・高濁度の水を原水とする地域では緩速ろ過装置を用いることは困難であったが、このような地域においても緩速ろ過装置を含む浄水システムを用いることができる。
【0026】
請求項6に記載の浄水システムでは、一定量の水を第1液体供給装置によって荒ろ過装置へ供給することによって、荒ろ過装置でのろ過性能を安定させることができる。また、緩速ろ過装置での処理量を超える水を荒ろ過装置に供給することによって、緩速ろ過装置からオーバーフローする水を他の目的に、たとえば、荒ろ過装置をドレン作業する場合ドレン作業によって空になったろ過槽の洗浄および充填に使用できる。その結果、ドレン作業によってろ過槽の水を排出した後、充填が完了し通常状態に復帰するまでの時間を短縮でき、荒ろ過装置の機能停止時間を短縮できる。また、この水は荒ろ過されており所定のレベルまで浄化されているので、この水の供給に起因して荒ろ過装置が閉塞することはない。なお、緩速ろ過装置での処理量を超える超過分の水量は、その日にドレン作業される全ろ過槽にドレン作業後に補給すべき総水量以上に設定されることが好ましい。
【0027】
請求項7に記載の浄水システムでは、第2液体供給装置を用いることによって、緩速ろ過装置の位置に拘わらず緩速ろ過装置に一定量の水を供給できる。特に、緩速ろ過装置に自然流下によって水を供給できない場合に有効である。
【0028】
請求項8に記載の浄水システムでは、緩速ろ過装置からオーバーフローした水を収容部に収容しておけば、たとえばドレン作業を行ったろ過槽への給水が容易になる。
【0029】
請求項9に記載の浄水システムでは、緩速ろ過装置の下流側に第3液体供給装置を設けることによって、緩速ろ過装置での処理量は第3液体供給装置から放出される水量に依存する。言い換えれば、第3液体供給装置によって緩速ろ過装置での処理量を精度よく制御でき、緩速ろ過装置における微生物の生息環境を最適化し、緩速ろ過を安定させることができる。
【0030】
請求項10に記載の浄水システムでは、緩速ろ過装置が複数の緩速ろ過ユニットを含むので、1つの緩速ろ過ユニットがメンテナンス中であっても他の緩速ろ過ユニットによって浄水ひいては給水を継続できる。
【0031】
請求項11に記載の浄水システムでは、透明管に表れる損失水頭を測定するだけで緩速ろ過装置のメンテナンス時期を簡単に判断できる。
【0032】
紐状接触処理装置では、紐状接触材に藻類や微生物類が繁殖し、藻類の光合成や微生物群の生態現象によって有機物や鉄、マンガン、カルシウム等、飲料として不適当な物質が除去される。請求項12に記載の浄水システムでは、荒ろ過装置によって色度・濁度が十分除去されているので、紐状接触処理装置は、微生物の生息により快適な環境を提供でき、これによって水中の飲料として不適当な物質を除去でき水の浄化作用を一層向上できる。したがって、より浄化された水を後続する緩速ろ過装置に供給でき、さらに緩速ろ過を安定させることができる。
【0033】
請求項13に記載の浄水システムでは、紐状接触材槽の水深を紐状接触材の直径の2倍以下に設定することによって、水の淀みを抑制でき、紐状接触材と水との接触効率を向上させ浄化機能を促進できる。
【0034】
請求項14に記載の浄水システムでは、水消毒装置内の電解塩素発生装置によって緩速ろ過装置からの水に含まれる塩素イオンを用いて次亜塩素酸イオンを発生させて水を消毒し細菌の繁殖を防止できる。したがって、次亜塩素酸液を水に直接供給する場合とは異なり、薬品を管理する必要なく安全な飲料水を得ることができる。特に、開発途上国において有効である。
【0035】
この発明において、「荒ろ過」とは、主としてれきや砂などのろ材によって物理的に水をろ過することをいう。
【0036】
「緩速ろ過」とは、5〜8m/日程度の速度で水を流しながら微生物や藻によって水をろ過することをいう。
【0037】
「色度」とは、色の程度を数値で表したもので、精製水1リットルの中に1ミリグラムの白金および0.5ミリグラムのコバルトを含むときの色を、「色度1」とする。
【0038】
「濁度」とは、水の濁りの程度を数値で表したもので、精製水1リットルの中に1ミリグラムのカオリンという白陶土を含むときの濁りを「濁度1」とする。
【発明の効果】
【0039】
この発明によれば、凝集剤を用いることなく高色度・高濁度の水を適切に浄化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
図1および図2を参照して、この発明の一実施形態の浄水システム10は、小型の浄水システムであり、たとえば8m(縦)×10m(横)程度に収まるように構成される。
【0041】
浄水システム10は、上流側から順に、第1液体供給装置12、荒ろ過装置14、紐状接触処理装置16、タンク18、第2液体供給装置20、緩速ろ過装置22、第3液体供給装置24および水消毒装置26を含む。
【0042】
第1液体供給装置12には、たとえば川、池、井戸等の水源28からの水を取り込むためのポンプ30が接続される。
【0043】
図3〜図5を参照して、第1液体供給装置12は原水タンク31を含み、原水タンク31には、ポンプ30に接続されるパイプ32が取り付けられる。また、原水タンク31には、水位が上限に達したことを検知する上限水位検知部34aと水位が下限以下になったことを検知する下限水位検知部34bとを有する水位センサ34が装着される。ポンプ30は、水位センサ34からの出力に基づいて駆動され、下限水位検知部34bによって水位が下限以下になったことを検知すればオンされ、上限水位検知部34aによって水位が上限に達したことを検知すればオフされる。なお、後述する流量制御装置36は原水タンク31内の水位に応じて上下に揺動するが、原水タンク31内の水位が下限のときに流量制御装置36が水平となるように下限水位検知部34bの先端部の位置が設定される。
【0044】
原水タンク31内には、流量制御装置36がタンク底面の汚泥を吸い込まない高さに設けられる。
【0045】
図6〜図8を参照して、流量制御装置36は取り付け部材38を含む。取り付け部材38は、略短冊状の取り付け板38aと、取り付け板38aの下面に設けられる挿通部材38bとを含む。取り付け板38a上には2つの略球状の浮き40が取り付けられ、挿通部材38bにはボルト41によって略直方体状のキャップ42が揺動可能に取り付けられる。キャップ42は水を導入するための貫通孔42aを有し、貫通孔42aには、孔44aを有する中空円板状の調整部材44が装着され、孔44aの大きさによって導入される水の流量が調整される。この実施形態では、孔44aの直径は12mmに設定され、流量が略8.1L(リットル)/分(略11.7トン/日)となる。
【0046】
キャップ42にはパイプ46の一端が装着される。パイプ46はその一端から他端にまで延びる流路46aと側面から流路46aに貫通する貫通孔46bとを有する。貫通孔46bにはホース48の一端が嵌入され、流路46aがホース48を介して大気に開放される。ホース48の先端部は、取り付け板38a上に設けられた略L字状の保持部材50によって保持される。なお、2つの浮き40は、パイプ46内が水で充満された状態でもホース48の先端が水面上に位置する浮力を有するサイズで構成される。
【0047】
パイプ46の他端には、パイプ46を揺動可能に支持するために原水タンク31の側面下方寄りに設けられる支持部材52が取り付けられる。
【0048】
支持部材52は、パイプ46に接続されるキャップ52a、キャップ52aに接続されるパイプ52b、パイプ52bに取り付けられるナット52c、および蓋52dを含む。
【0049】
キャップ52aは、たとえば直方体状に形成され、嵌入孔および当該嵌入孔と直交する貫通孔(ともに図示せず)を有し、したがって略T字状の孔を有する。キャップ52aの嵌入孔にはパイプ46が嵌入され、貫通孔には一方側からパイプ52bが回動可能に挿入されかつ他方側から蓋52dが設けられ、パイプ46とパイプ52bとがキャップ52aを介して略L字状に連通される。そして、パイプ52bを原水タンク31の側面に挿通してパイプ52bの鍔部52eとナット52cとで原水タンク31の側面を挟みナット52を締めることによって、原水タンク31の側面に支持部材52が固定される。なお、キャップ52aに対するパイプ52bの取り付け部近傍および蓋52dの取り付け部近傍にはそれぞれ、Oリング52fおよび52gが装着される。
【0050】
図5に示すように、このような支持部材52は弁54を介してパイプ56に接続される。また、原水タンク31の側面の下端近傍には、ドレン作業用の弁58を介してパイプ60が取り付けられる。
【0051】
さらに、原水タンク31にはたとえばFRP製の蓋(図示せず)が被せられる。これによって、原水タンク31内に落ち葉や虫等が入って流出口を塞いだり腐食することが防止される。
【0052】
このような第1液体供給装置12では、ポンプ30の駆動によって水源28からの水がパイプ32を介して原水タンク31に供給され、原水タンク31内の水位が下限水位検知部34bと上限水位検知部34aとの間に維持される。
【0053】
流量制御装置36では、原水タンク31内の水面高さに拘わらず、水面からパイプ46の導水口(調整部材44の貫通孔44a)までの深さが略一定となり、当該導水口に加わる水圧が安定する。また、ホース48によってパイプ46内は大気圧に保たれている。したがって、原水タンク31内の水面高さに拘わらずパイプ46の流路46aを流れる水量は常に略一定となり、原水タンク31ひいては第1液体供給装置12から略一定量の水がパイプ56を介して荒ろ過装置14に供給される。また、2つの球状の浮き40を取り付け板38a上に横方向に並べて取り付けることによって、パイプ46内の水の有無に拘わらず、2つの球状の浮き40ひいては流量制御装置36の姿勢が崩れることなく、円滑に送水できる。
【0054】
ついで、図9〜図13を参照して、荒ろ過装置14は、6段構造の上向流式ろ過槽である第1槽62a〜第6槽62fと、それに続く1段の下向流式ろ過槽である第7槽62gとを含み、第1槽62a〜第7槽62gは遮光構造とされる。荒ろ過装置14は、スペースを有効利用するためにUターン構造とされ、この実施形態では第3槽62cから第4槽62dに至るところで折り返されている。
【0055】
第1槽62a〜第7槽62gの内寸法は、たとえば1400mm(幅)×1400mm(奥行き)×1400mm(最深部(底面中央部)の深さ)に設定される。図14〜図16に示すように、第1槽62a〜第7槽62gのそれぞれの底面64a〜64gの形状は、中央部(幅はたとえば200mm)から左右両端部に向けてたとえば150mm高くなるように傾斜されている。底面64a〜64gを傾斜させることによって、ドレン作業時に汚泥の流出を促進できる。
【0056】
第1槽62a〜第7槽62gのそれぞれの底面64a〜64g上には、支持台66が配置される。図17を参照して、支持台66は、ろ材を支持できる強度を有するようにたとえばFRPからなる。支持台66は、たとえば1380mm(縦)×1380mm(横)×10mm(厚み)の正方形状の板状部材66aを含む。板状部材66aには複数の孔66bが形成される。孔66bは、水や汚泥は通過するがろ材は通過しないように、たとえば直径20mmに設定される。板状部材66aの下面には正方形状の枠体66cが設けられ、さらに、枠体66c内を四等分するように短冊状の板状部材66dおよび66eが設けられる。板状部材66dの高さは枠体66cと同じ高さに設定される。板状部材66eの高さはそれよりも高く設定される。支持台66を底面64a〜64g上に配置したとき(図14〜図16参照)、支持台66の枠体66cおよび板状部材66eが、底面64a〜64gに当接する。このような支持台66を用いれば、ドレン作業時、ろ材が流れ落ちることなく、水と汚泥とを排出することができる。
【0057】
図14(a)に示すように、第1槽62a内の支持台66上には、たとえば深さ960mmの単層aからなるろ材が配置される。このろ材はたとえば径が30〜50mmのれきである。
【0058】
図14(b)に示すように、第2槽62b内の支持台66上には、たとえば、下から順に深さ100mmの層b1と深さ860mmの層b2とからなる深さ960mmの2層構造のろ材が配置される。ろ材は、層b1より層b2の方が小さくされ、たとえば、層b1のろ材は30〜50mmのれきであり、層b2のろ材は15〜30mmのれきである。層b1は、層b2のろ材が支持台66の下に流れ落ちることを防ぐために設けられ、第2槽62bにおけるろ過機能は主として層b2が果たす。
【0059】
図14(c)に示すように、第3槽62c内の支持台66上には、たとえば、下から順に深さ100mmの層c1と深さ100mmの層c2と深さ760mmの層c3とからなる深さ960mmの3層構造のろ材が配置される。ドレン作業時の水流によって小さいろ材が下方に流れ落ちることを防ぐために小さいろ材ほど上層に配置され、たとえば、層c1のろ材は30〜50mmのれきであり、層c2のろ材は15〜30mmのれきであり、層c3のろ材は10〜15mmのれきである。第3槽62cにおけるろ過機能は主として層c3が果たす。
【0060】
図15(a)に示すように、第4槽62d内の支持台66上には、たとえば、下から順に深さ100mmの層d1と深さ100mmの層d2と深さ760mmの層d3とからなる深さ960mmの3層構造のろ材が配置される。ドレン作業時の水流によって小さいろ材が下方に流れ落ちることを防ぐために小さいろ材ほど上層に配置され、たとえば、層d1のろ材は30〜50mmのれきであり、層d2のろ材は15〜30mmのれきであり、層d3のろ材は5〜10mmのれきである。第4槽62dにおけるろ過機能は主として層d3が果たす。なお、図9からわかるように、配管を単純にするため、第4槽62dの底面64dの構造は、他の槽の底面に対して90°ずれている。
【0061】
図15(b)に示すように、第5槽62e内の支持台66上には、たとえば、下から順に深さ100mmの層e1と深さ100mmの層e2と深さ760mmの層e3とからなる深さ960mmの3層構造のろ材が配置される。ドレン作業時の水流によって小さいろ材が下方に流れ落ちることを防ぐために小さいろ材ほど上層に配置され、たとえば、層e1のろ材は30〜50mmのれきであり、層e2のろ材は15〜30mmのれきであり、層e3のろ材は2〜5mmのれきである。第5槽62eにおいてろ過機能は主として層e3が果たす。
【0062】
図16(a)に示すように、第6槽62f内の支持台66上には、たとえば、下から順に深さ100mmの層f1と深さ100mmの層f2と深さ330mmの層f3と深さ330mmの層f4と深さ100mmの層f5とからなる深さ960mmの5層構造のろ材が配置される。ドレン作業時の水流によって小さいろ材が下方に流れ落ちることを防ぐために小さいろ材ほど上層に配置され、たとえば、層f1のろ材は30〜50mmのれきであり、層f2のろ材は15〜30mmのれきであり、層f3のろ材は5〜10mmのれきであり、層f4のろ材は2〜5mmのれきであり、層f5のろ材は0.5〜0.6mmの砂である。第6槽62fでは、ろ過機能は主として層f5が果たし、層f5の砂がドレン作業で流出しないように層f1〜f4によって支持される。
【0063】
層f5のろ材は、後述する第7槽62g内の層g4および緩速ろ過槽128内の層S3と同サイズの砂であり、ミクロン単位の微細な粒子を除去して第7槽62gにかかる負荷を低減することを目的とする。ミクロン単位の微細な粒子を一度で除去しようとすると槽内で閉塞を起こすので、層f5の砂の厚さは上述のように100mmと比較的小さくされている。
【0064】
図16(b)に示すように、第7槽62g内の支持台66上には、たとえば、下から順に深さ100mmの層g1と深さ100mmの層g2と深さ100mmの層g3と深さ500mmの層g4とからなる深さ800mmの4層構造のろ材が配置される。ドレン作業時の水流によって小さいろ材が下方に流れ落ちることを防ぐために小さいろ材ほど上層に配置され、たとえば、層g1のろ材は30〜50mmのれきであり、層g2のろ材は15〜30mmのれきであり、層g3のろ材は2〜5mmのれきであり、層g4のろ材は0.5〜0.6mmの砂である。第7槽62gは、通常沈殿では除去できないミクロン単位の微細な粒子を除去することを主目的とし、層g4の表面近傍でのミクロン単位の微細な粒子の除去が中心となるので、層g4の上方に少なくとも2〜5cmの水の層Wを必要とする。層Wの水面高さは、荒ろ過装置14に連結されている次の紐状接触処理装置16の水面高さと等しく設定される。ここで除去すべきミクロン単位の微細な粒子は、濁度として計測できず色度として検出される。
【0065】
第7槽62gでは、ろ過機能は主として層g4が果たし、層g4の砂がドレン作業で流出しないように層g1〜g3によって支持される。第7槽62gでは、層g4の表面近傍で水からミクロン単位の微細な粒子が取り除かれるので、ドレン作業で水を下方に流すと、ミクロン単位の微細な粒子は層g4内に入り込むとともに堆積されていく。したがって、メンテナンス時には、層g4の砂をミクロン単位の微細な粒子とともに削り取りそののち砂を補充するだけでよい。
【0066】
このような第1槽62a〜第7槽62gの側面には、槽に水を導くための入水パイプ68a〜68g、下流側の槽や装置に水を送るための出水パイプ70a〜70g、ドレン後に槽に水を充填するための充填用パイプ72a〜72g、および槽から余分な水を排出するためのオーバーフロー管74a〜74gがそれぞれ貫入される。入水パイプ68a〜68fおよび出水パイプ70gはドレン用パイプを兼ねる。
【0067】
上向流式ろ過槽である第1槽62a〜第6槽62fにおいて、入水パイプ68a〜68fはそれぞれ、底面64a〜64fの中央部に対応する位置に設けられ、たとえば直径100mmに設定される。
【0068】
出水パイプ70a〜70fはそれぞれ、各槽内の最上層のろ材上に約20〜30mmの水層ができるように、最上層のろ材上面より高い位置に設けられる。これによって、ろ材は出水パイプ70a〜70fに落ち込むことなく水中に浸漬され、ろ材を有効に活用できる。
【0069】
充填用パイプ72a〜72fはそれぞれ、出水パイプ70a〜70fより少し高い位置(通常水に浸からない位置)に設けられる。オーバーフロー管74a〜74fはそれぞれ、充填用パイプ72a〜72fと略同じ高さに設けられる。
【0070】
下向流式ろ過槽である第7槽62gにおいて、出水パイプ70gは底面64gの中央部に対応する位置に設けられる。入水パイプ68gは槽内の最上層のろ材上面より高い位置に設けられる。充填用パイプ72gは入水パイプ68gより少し高い位置に設けられ、オーバーフロー管74gは充填用パイプ72gと略同じ高さに設けられる。
【0071】
図9〜図13に戻って、第1液体供給装置12のパイプ56と第1槽62aの入水パイプ68aとがパイプ76aによって連結される。第1槽62aの出水パイプ70aと第2槽62bの入水パイプ68bとがパイプ76bによって連結される。以下同様に、第2槽62b〜第7槽62gにおいて前槽の出水パイプと次槽の入水パイプとがそれぞれ、パイプ76c〜76gによって連結される。また、入水パイプ68a〜68fにはそれぞれ、ドレン作業用の弁78a〜78fが設けられ、出水パイプ70gにはドレン作業用の弁78gが設けられる。堆積した汚泥はドレン時の水流によって放出する必要があるので、弁78a〜78gにはたとえば直径100mmの大径のバルブが用いられる。なお、第7槽62gは下向流式であるので、第6槽62fの出水パイプ70fと第7槽62gの入水パイプ68gとを結ぶパイプ76gは、水平に設けられる。
【0072】
また、第1槽62a〜第7槽62gの充填用パイプ72a〜72gの外端はパイプ80によって連結され、パイプ80には3つの蛇口82a〜82cが取り付けられる。充填用パイプ72a〜72gの内端にはそれぞれ、弁84a〜84gが取り付けられる。
【0073】
第1槽62a〜第7槽62gの上面にはそれぞれ、遮光性を有する蓋86(図1参照)が設けられる。この実施形態では、蓋86は、着色FRPを含み、またはFRPとFRPによって挟まれた遮光部材(たとえばアルミニウムホイールや黒色のプラスティックシート)とを含む。水が存在するところに光が入ると藻が自然発生する。藻は有害物質ではないが、ドレン作業時に水流に乗ってろ材の内部に入り込んでしまう。この藻が槽を閉塞したり腐食して水が悪臭を放つ原因となる可能性がある。したがって、各槽を遮光することによって藻の発生を抑制する。
【0074】
このような荒ろ過装置14では第1液体供給装置12から供給された水は第1槽62a〜第7槽62gを通過し、次の紐状接触処理装置16に与えられる。
【0075】
図18を参照して、紐状接触処理装置16は、紐状接触処理槽88と紐状接触処理槽88内に配置されるたとえばバイオコード(TBR社の登録商標)からなる紐状接触材90とを含む。
【0076】
紐状接触材槽88は、往路88aと復路88bとを含む往復構造とされ、往路88aおよび復路88bにはそれぞれ、複数(この実施形態では7本)の紐状接触材90が配置される。
【0077】
図12および図19を参照して、往路88aの始端と荒ろ過装置14の第7槽62gとは、出水パイプ70g、パイプ92、3方弁94、パイプ96a、プレハブジョイント98aおよびパイプ100aを介して連結される。また、復路88bの終端とタンク18(図1および図2参照)とは、パイプ100b、プレハブジョイント98bおよびパイプ96bを介して連結される。さらに、図20を参照して、往路88aおよび復路88bのそれぞれの中央部には、Y字状のパイプ102が接続され、パイプ102は弁104およびパイプ106を介してタンク18に連結される。
【0078】
紐状接触材槽88は、藻類の除去等のメンテナンス作業時に作業者が楽な姿勢を取れるように適度な高さに設けられる。この実施形態では、紐状接触処理装置88は、高さ1100mm程度の複数の脚部88c上に配置される。紐状接触材90と水との必要接触長ひいては紐状接触材槽88の流路の長さは、水質(水に含まれる有機物成分・鉄・マンガン・カルシウム等の濃度)に応じて変わる。この実施形態では、紐状接触材槽88の流路は、たとえば往復長14m、幅が0.4mに設定される。また、水と紐状接触材90との接触効率については、紐状接触材槽88の水深が大きすぎると接触効率が低下しかつ水が淀み水質が悪化する。一方、紐状接触材槽88の水深が小さくなると接触効率を向上できるが水の流量が減少してしまう。したがって、接触効率と流量とのバランスを考慮すると、紐状接触材槽88の水深を紐状接触材90の直径X(図18参照)の2倍以下にすることが好ましい。また、流速が30cm/分以下であれば、紐状接触材90と水との接触が良好となり高い除去率を確保できる。この実施形態では、紐状接触材槽88の水深が80mm、紐状接触材90の直径Xが45mm、流速が25cm/分に設定されている。
【0079】
さらに、紐状接触材槽88において注目すべきは、図21(a)および(b)に示すように、水が流入する往路88aの始端に斜面108aを有する段部108が形成されていることである。
【0080】
たとえば、図22(a)および(b)に示すように往路89aの始端が形成されている場合には、一点鎖線110aで示す部分に水の淀みができる。また、図23(a)および(b)に示すように往路89bの始端に階段状の段部108bが形成されている場合には、一点鎖線110bで示す部分に水の淀みができる。
【0081】
これに対して、図21(a)および(b)に示すように往路88aにおいて斜面108aを有する段部108が形成されている場合には、水が淀むことなく流入した水を流路の進行方向に円滑に流すことができる。
【0082】
このような紐状接触材槽88を流れる水は、復路88bの終端からパイプ100b、プレハブジョイント98bおよびパイプ96bを介してタンク18に供給される。また、ドレン作業時には、水は紐状接触材槽88の中央部からパイプ102、弁104およびパイプ106を介してタンク18に供給される。
【0083】
図2を参照して、タンク18には、水位が上限(ここでは、タンク上端から250mmの深さ)に達したことを検知する上限水位検知部112aと水位が下限(ここでは、タンク上端から550mmの深さ)以下になったことを検知する下限水位検知部112bとを有する水位センサ112が装着される。タンク18と第2液体供給装置20との間にはポンプ114が介挿される。ポンプ114は、タンク18に収容された水が上限以上になると駆動され、第2液体供給装置20に送水する。一方、ポンプ114は、タンク18に収容された水が下限以下になると停止され、第2液体供給装置20への送水を停止する。
【0084】
図24〜図26を参照して、第2液体供給装置20は、緩速ろ過用の原水タンク116を含む。原水タンク116内には、2つの流量制御装置118aおよび118bが取り付けられる。流量制御装置118aおよび118bは、第1液体供給装置12の流量制御装置36と略同様に構成されるので、その重複する説明は省略する。流量制御装置118aおよび118bでは、流量を設定する調整部材の孔(流量制御装置36の孔44aに相当:図6参照)の直径は9mmに設定され、流量は略3.6L/分(略5.2トン/日)となる。
【0085】
流量制御装置118aおよび118bはそれぞれ、原水タンク116の側面下端近傍に取り付けられ、弁120aおよび120bを介してパイプ122aおよび122bに接続される。また、原水タンク116の側面上端近傍には2つのオーバーフロー管124aおよび124bが取り付けられる。
【0086】
図1および図2を参照して、第2液体供給装置20は、パイプ122aおよび122bを介して緩速ろ過装置22の2つの緩速ろ過ユニット22aおよび22bに接続される。また、第2液体供給装置20は、オーバーフロー管124aおよび124bを介して、第2液体供給装置20の下方に配置される収容部である充填用タンク126aおよび126bに接続される。
【0087】
第2液体供給装置20内の水は、流量制御装置118aおよび118bによって緩速ろ過装置22の緩速ろ過ユニット22aおよび22bに一定の流量で供給される。また、流量制御装置118aおよび118bからの供給量は略等しい。
【0088】
流量制御装置36、流量制御装置118aおよび118bのそれぞれからの水の流量は、(流量制御装置36≧流量制御装置118a+流量制御装置118b)を満たすように設定される。この実施形態では、流量制御装置36からの流量は略11.7トン/日であり、流量制御装置118aおよび118bのそれぞれからの流量は略5.2トン/日であるので、(11.7≧5.2×2=10.4)となり、上述の条件を満たす。
【0089】
また、流量制御装置36からの流量が、流量制御装置118aおよび118bからの流量の和を超えると、その超えた分の水が第2液体供給装置20の原水タンク116からオーバーフローし、パイプ124aおよび124bを介して充填用タンク126aおよび126bに供給される。この実施形態では、上式より略1.3トン/日の水が原水タンク116からオーバーフローする。
【0090】
なお、弁120aおよび120bによって緩速ろ過ユニット22aおよび22bへの給水量が制限されるとき(たとえば緩速ろ過ユニット22aおよび22bのメンテナンス時)には、原水タンク116からのオーバーフロー水はさらに増加する。充填用タンク126aおよび126b内の水はポンプ127(図2参照)によって荒ろ過装置14に向けて供給され、ろ過槽の洗浄や充填等に有効利用される。原水タンク116にはたとえばFRP製の蓋(図示せず)が被せられる。これによって、原水タンク116内に落ち葉や虫等が入って流出口を塞いだり腐食することが防止される。
【0091】
ついで、図27〜図30を参照して、緩速ろ過ユニット22aおよび22bについて説明する。ここでは、緩速ろ過ユニット22aについて説明するが、緩速ろ過ユニット22bについても同様である。
【0092】
緩速ろ過ユニット22aはたとえば断面円形の緩速ろ過槽128を有する。緩速ろ過槽128は、相互に同軸上に設けられる上部槽128aと下部槽128bとを有する。上部槽128aの直径は下部槽128bの直径より大きく設定され、両者の間に段部130が形成される。この実施形態では、緩速ろ過槽128は、着色FRPを含んで構成され、またはFRPとFRPによって挟まれた遮光部材(たとえばアルミニウムホイールや黒色のプラスティックシート)とを含んで構成される。また、たとえば、上部槽128aの内径はφ1200mm、下部槽128bの内径はφ1000mmに設定される。
【0093】
下部槽128b内の底面には、たとえばFRPからなる支持台132が配置される。
【0094】
図31に示すように、支持台132は、複数の孔132aが形成された円板状の板状部材132bを含み、板状部材132bには円環状の枠体132cが設けられ、枠体132cには4つの切り欠き132dが等間隔に設けられる。また、板状部材132bの中央には十字状の板状部材132eが設けられる。たとえば、孔132aの直径は10mmに設定され、支持台132の各部の厚みは10mmに設定される。
【0095】
図30に示すように、支持台132上には、下から順に層S1と層S2と層S3とからなる3層構造のろ材が段部130と面一になるように配置される。3槽構造からなるろ材は下部槽128bにのみ収容される。この実施形態では、層S1は深さ65mm、層S2は深さ50mm、層S3は深さ400mmである。ドレン作業時に水流によって小さいろ材が下方に流れ落ちるのを防ぐために小さいろ材ほど上層に配置され、この実施形態では、層S1のろ材は15〜30mmのれきであり、層S2のろ材は2〜5mmのれきであり、層S3のろ材は0.5〜0.6mmの砂である。緩速ろ過槽128内におけるろ材によるろ過機能は、主として最上段の層S3のろ材が果たす。
【0096】
そして、緩速ろ過槽128内には段部130から上方たとえば500mmの高さにまで水が充填される。
【0097】
緩速ろ過槽128の段部130には、槽内に水を導入するための入水パイプ134が取り付けられる。入水パイプ134には、第2液体供給装置20の原水タンク116に取り付けられるパイプ122aが、パイプ136およびプレハブジョイント138を介して連結される。パイプ136の一端には弁140が取り付けられる。また、下部槽128bの側面下部には浄水を排出するためのパイプ142が取り付けられ、パイプ142には弁144が取り付けられる。さらに、上部槽128aの側面上部には、オーバーフローのためのパイプ146が取り付けられ、パイプ146にはプレハブジョイント147が取り付けられる。緩速ろ過槽128には透光性を有する蓋(図示せず)を被せてもよい。これによって、緩速ろ過槽128内に落ち葉や虫等が入ることを防ぐとともに、水中での微生物の活動を活性化できる。
【0098】
このような緩速ろ過ユニット22aでは、パイプ134から緩速ろ過槽128内に上向きに注水され、水は主として層S3の表面近傍でろ過され、層S2およびS1を介してパイプ142から第3液体供給装置24の液体供給ユニット24aに供給される。また、一部の水はパイプ146およびプレハブジョイント147を介してオーバーフローされ充填用タンク126aに供給される。
【0099】
緩速ろ過ユニット22bについても緩速ろ過ユニット22aと同様であり、ろ過された水は第3液体供給装置24の液体供給ユニット24bに供給され、オーバーフロー水は充填用タンク126bに供給される。
【0100】
図32〜図34を参照して、第3液体供給装置24に含まれる液体供給ユニット24a及び24bについて説明する。ここでは、液体供給ユニット24aについて説明するが、液体供給ユニット24bについても同様である。
【0101】
液体供給ユニット24aはタンク148を含む。タンク148内には、流量制御装置150が設けられる。流量制御装置150は流量制御装置36と同様であるので、その重複する説明は省略する。なお、タンク148内では浄水を扱うので、流量制御装置150を構成するパイプ(流量制御装置36のパイプ46に相当:図6参照)には殺菌作用を有する銅パイプが使用されている。流量制御装置150の調整部材の孔(流量制御装置36の孔44aに相当:図6参照)の直径は7.8mmに設定され、流量が略2.8L/分(略4.0トン/日)となる。
【0102】
流量制御装置150は、タンク148の側面下部に取り付けられ、3方弁152を介してパイプ154に接続される。
【0103】
また、タンク148の底面の入口にはパイプ156が取り付けられ、パイプ156にはT字状のパイプ158を介して弁144が連結される。パイプ158の一端には、緩速ろ過処理後の浄水を採取するための弁160が取り付けられ、弁160にはパイプ162を介して、損失水頭を測定するための透明管164が取り付けられる。また、タンク148上面には蓋165が被せられ、蓋165にはタンク148内を外気と連通するためのパイプ166が設けられる。
【0104】
なお、液体供給ユニット24bについても液体供給ユニット24aと同様である。
【0105】
このような液体供給ユニット24aおよび24bのそれぞれの流量制御装置150からは、一定流量の水がパイプ154を介して水消毒装置26に供給される。また、各流量制御装置150からの流量に応じて、その上流側の緩速ろ過ユニット22aおよび22bでのろ過速度が設定される。この実施形態では、略5m/日に設定される。
【0106】
流量制御装置36および2つの流量制御装置150のそれぞれからの水の流量は、(流量制御装置36≧流量制御装置150×2+荒ろ過装置14においてその日にドレン作業される全ろ過槽にドレン作業後に補給すべき総水量)を満たすように設定される。この実施形態では、流量制御装置36からの流量は略11.7トン/日であり、流量制御装置150からの流量は略4.0トン/日であり、荒ろ過装置14の1日当たりのドレン槽数は1つであり、1槽当たり1.2トンの給水を必要とするので、(11.7≧4.0×2+1.2×1=9.2)となり、上述の条件を満たす。
【0107】
また、流量制御装置36からの流量が、2つの流量制御装置150からの流量の和を超えると、その超えた分の水が、上述した第2液体供給装置20の原水タンク116および緩速ろ過ユニット22および22bの各緩速ろ過槽128からオーバーフローし充填用タンク126aおよび126bに供給される。この実施形態では、上式より略3.7トン/日の水がオーバーフローし、充填用タンク126aおよび126bに貯留される。
【0108】
そして、充填用タンク126aおよび126bに貯留された水は、ドレンされた荒ろ過槽の洗浄および充填に利用されるとともに、浄水システム10の洗浄等の任意の用途に用いられる。この実施形態では、略1.2トンが荒ろ過槽の洗浄および充填に用いられ、残りの略2.5トンが浄水システム10の洗浄等の任意の用途に用いられる。
【0109】
また、透明管164によって損失水頭が測定される。
【0110】
ついで、図35を参照して、水消毒装置26について説明する。
水消毒装置26は浄水タンク168を含む。浄水タンク168には浄水を導入ためのパイプ170が取り付けられる。パイプ170には、第3液体供給装置24の液体供給ユニット24aおよび24bに接続されるパイプ154が、パイプ172およびプレハブジョイント174を介して連結される。
【0111】
浄水タンク168内には、水位が上限に達したことを検知する上限水位検知部176aと水位が下限以下になったことを検知する下限水位検知部176bとを有する水位センサ176が装着される。また、浄水タンク168内には、水位センサ176からの出力に基づいてコントローラ180によって制御される電解塩素発生装置178が配置される。さらに、浄水タンク168は、水位センサ176の出力に基づいて駆動されるポンプ184に、パイプ182を介して連結される。
【0112】
水消毒装置26では、第3液体供給装置24からの浄水が浄水タンク168に供給される。そして、水位センサ176の下限水位検知部176bが浄水タンク168内の水位が下限に達したことを検知すると、コントローラ180のタイマが計時を開始し、それに伴って電解塩素発生装置178が駆動され、浄水に含まれている塩素イオンを用いて次亜塩素酸イオンを発生させる。電解塩素発生装置178の駆動は、コントローラ180のタイマの計時が所定時間に達するまで継続される。このようにして発生した次亜塩素酸イオンによって浄水タンク168内の水が消毒される。なお、次亜塩素酸イオン濃度は、コントローラ180のタイマが計時すべき所定時間に基づいて調整される。コントローラ180のタイマは、水位センサ176の上限水位検知部176aが浄水タンク168内の水位が上限に達したことを検知すると、リセットされる。
【0113】
また、ポンプ184は、浄水タンク168の水位が上限に達したことが検知されるとオンされ、浄水タンク168の水位が下限に達したことが検知されるとオフされ、この間で浄水タンク168から浄水が取り出される。
【0114】
このような浄水システム10によれば、6段構造の上向流式ろ過槽である第1槽62a〜第6槽62fが下流の槽ほど小さいろ材を収容するように構成されることによって、高色度・高濁度の水に含まれる成分を大きい成分から徐々に除去していくことができる。したがって、汚泥が1箇所に集中することはなく、ろ過槽の閉塞を抑制できる。また、これらの上向流式ろ過槽に続けて設けられる下向流式ろ過槽である第7槽62gによって、上向流式ろ過槽では除去できなかったミクロン単位の微細な粒子を除去でき、水の色度・濁度をさらに低減できる。このようにタイプの異なるろ過槽を組み合わせることによって、凝集剤を用いることなく高色度・高濁度の水から泥成分やそれに付着する細菌等を除去でき、水を適切に浄化できる。
【0115】
第1槽62a〜第6槽62fに収容される最小寸法のろ材(ここでは、第6槽62fの層f5のろ材)を第7槽62gにも収容することによって、第7槽62g内において微生物による浄化に加えてろ材による浄化をも効果的に施すことができ、水の浄化をさらに促進できる。
【0116】
第1槽62a〜第7槽62gを遮光構造とすることによって、各ろ過槽内において閉塞を起こす可能性がある藻の発生を防止できる。特に、藻が発生しやすい熱帯地方において有効となる。
【0117】
上向流式ろ過槽が第1槽62a〜第6槽62fの6段構造であるので、たとえば、第1槽62a〜第6槽62fのドレン作業を1日に1段ずつ行うと、月曜日から土曜日までの6日間で第1槽62a〜第6槽62fを1回ずつ、すなわち1週間に1回の頻度でドレン作業できる。したがって、月曜日から土曜日の各曜日と第1槽62a〜第6槽62fとを対応付けておけば、日曜日を除いて毎日、その日に割り当てられた特定の1つのろ過槽をドレン作業すればよく、日々の作業スケジュールを容易に管理できドレン作業を確実かつ円滑に行える。特に、作業スケジュールの簡素化が望まれる開発途上国において有効である。なお、荒ろ過装置14では、1回/週の頻度でろ過槽のドレン作業を行えばろ過槽の閉塞を防止できるが、水の色度・濁度に応じてドレン作業の頻度を変更してもよい。
【0118】
高色度・高濁度の水を荒ろ過装置14によって緩速ろ過装置22への水として要求されるレベルまで浄化できるので、緩速ろ過装置22には所望の水質レベルの水を安定して供給できる。したがって、緩速ろ過装置22において、ろ材表面近傍の微生物や藻による緩速ろ過が正常に機能し、水から飲料として不適当な物質や細菌やミクロン単位の微細な粒子をさらに除去でき水をさらに浄化できる。その結果、従来、高色度・高濁度の水を原水とする地域では緩速ろ過装置22を用いることは困難であったが、このような地域においても緩速ろ過装置22を含む浄水システム100を用いることができる。
【0119】
一定量の水を第1液体供給装置12によって荒ろ過装置14へ供給することによって、荒ろ過装置14でのろ過性能を安定させることができる。また、緩速ろ過装置22での処理量を超える水を荒ろ過装置14に供給することによって、緩速ろ過装置22からオーバーフローする水を他の目的に、たとえば、荒ろ過装置14をドレン作業する場合ドレン作業によって空になったろ過槽の洗浄および充填に使用できる。このとき、緩速ろ過装置22からオーバーフローした水を充填用タンク126aおよび126bに収容しておけば、ろ過槽への給水が容易になる。その結果、ドレン作業によってろ過槽の水を排出した後、充填が完了し通常状態に復帰するまでの時間を短縮でき、荒ろ過装置14の機能停止時間を短縮できる。
【0120】
具体的には、この実施形態では浄水システム10におけるろ過速度は略5m/日に設定されており、ドレン作業で荒ろ過装置14のいずれかのろ過槽の水を抜くと、そのろ過槽に水が充填されるまで荒ろ過装置14の機能は停止する。ろ材の体積を考慮して空隙率を0.5としても、空のろ過槽に水を充填するまでに略2.4時間かかる。この機能停止時間を最短にするため、充填用タンク126aおよび126b内の水を荒ろ過装置14内のろ過槽へ充填する。この場合、第1液体供給装置12からの原水供給を伴うと、0.5時間弱で通常機能に戻すことができる。
【0121】
なお、充填タンク126aおよび126b内の水は少なくとも荒ろ過されており所定のレベルまで浄化されているので、この水の供給に起因して荒ろ過装置14が閉塞することはない。なお、緩速ろ過装置22での処理量を超える超過分の水量は、荒ろ過装置14においてその日にドレン作業される全ろ過槽にドレン作業後に補給すべき総水量以上に設定されることが好ましい。
【0122】
荒ろ過装置14のろ過槽が閉塞してくると通水抵抗が高くなって水の流れが悪くなり、その手前のろ過槽の水位が上昇いていく。したがって、オーバーフロー管74a〜74gのいずれかから水が流出すると、次段のろ過槽の通水抵抗が上昇しておりそのろ過槽の閉塞が近いことがわかる。オーバーフロー管74a〜74gの取り付け高さをろ過槽内の通常水位に近付けておけばろ過槽が閉塞する兆候を早く掴むことができ、この実施形態では、オーバーフロー管74a〜74gは、出水パイプ70a〜70fおよび入水パイプ68gより少し高い位置に設けられている。
【0123】
上述のように荒ろ過装置14によって色度・濁度が十分除去されているので、紐状接触処理装置16は、微生物の生息により快適な環境を提供でき、これによって水中の飲料として不適当な物質を除去でき水の浄化作用を一層向上できる。したがって、より浄化された水を後続する緩速ろ過装置22に供給でき、さらに緩速ろ過を安定させることができる。
【0124】
鉄バクテリア等の微生物は環境が変化する場所で増殖する傾向があり、水の浄化方法が荒ろ過から紐状接触に切り替わる紐状接触処理装置16の入り口付近で鉄バクテリアが増殖しやすくなる。鉄バクテリアによってパイプ中の水から飲料として不適当な物質である鉄分を除去できるが、当該鉄分はパイプ中で汚泥となってパイプを閉塞させるおそれがある。したがって、紐状接触処理装置16の手前において3方弁94やプレハブジョイント98aを設けることによって、緩速ろ過装置16の手前のパイプ内の汚泥を定期的に排除でき、また、パイプを取り外してその内部を検査・清掃できる。
【0125】
また、緩速ろ過ユニット22aおよび22bによれば、砂ろ過層である層S3の厚みを、従来の900〜1200mmから400mmに減じることができる。この点について説明する。
【0126】
従来、緩速ろ過装置において砂ろ過層が閉塞したときには砂表面を5〜10mm削ってろ過機能を回復させながら使うのが一般的であった。しかし、ろ過機能回復までの時間は、砂を削り取るだけの場合と砂を削り取りかつその分を補充する場合とで差はない。特に、温度の高い地方において差はない。また、砂ろ過層の高さは、400mmあれば機能的に問題がないことが一般的に知られている。したがって、緩速ろ過ユニット22aおよび22bにおいて、砂ろ過層である層S3が閉塞したときには、砂表面を5〜10mm削ってろ過機能を回復させ、その直後に削った分の砂を補充して層S3の高さを400mmに保ち砂表面の位置を変えないようにした。このように層S3の高さを最低高さに設定することによって、層S1〜S3までのろ材全体の高さを低く抑えることができる。また、緩速ろ過工程に至るまでの前処理工程によって水の色度および濁度を十分低下でき、緩速ろ過槽128内で砂の閉塞は起こりにくいので、水深を大きくして水圧を高くする必要はなく水深を500mmと浅くできる。したがって、緩速ろ過槽128の高さ寸法を小さくでき、コストを低減できる。
【0127】
緩速ろ過ユニット22aおよび22bでは、層S3の表面が段部130と面一になる。したがって、砂の補充時には層S3の表面と段部130とを面一にすることだけに注意すればよく、砂補充の完了時を簡単に判断できる。これによって、層S3の高さを400mmに容易に保つことができ、浄化性能の低下を防止できる。また、段部130を足場として利用することによって足場を常に確保でき、足載せ用の板等を別途準備する必要もない。さらに、段部130には砂をかぶせないので、メンテナンス時に作業者は砂の上に載らなくて済み、砂の中の微生物層を傷つけることを防止できる。
【0128】
また、緩速ろ過槽128内にパイプ134から上向きに注水し一部の水をオーバーフローさせることによって、層S3の砂表面に悪影響を与えることなく、ろ過槽内に発生した藻、ろ過槽内に落ちた枯葉、虫等の不純物を水とともに排出することができる。これによって、砂の上に上記不純物が堆積して閉塞あるいは2次的な汚染を引き起こすことを防止できる。
【0129】
緩速ろ過ユニット22aおよび/または22b内の砂を削り取って閉塞状態を解消するメンテナンス時には、弁140を開けることによって砂上の水を短時間でドレンすることができる。
【0130】
後続の第3液体供給装置24や水消毒装置26のメンテナンスや清掃時には、弁144を閉じればこれらの装置への給水を絶つことができる。
【0131】
さらに、第3液体供給装置24によれば、流量制御装置150を用いることによって、タンク148内の構造を単純化できタンク148を小さくできる。それに伴ってタンク148内の水を減らすことができ、水を汚染する機会を減らすことができる。
【0132】
図32に示すように、タンク148に対する流量制御装置150の取り付け位置すなわち排出口の位置を、緩速ろ過槽128内の層S3の砂表面下100mmの高さに設定することによって、タンク148内の水位を層S3の砂表面下100mmまで自動的に低下させることができる。緩速ろ過槽128内の砂削り取り作業時において、タンク148内の水位をここまで下げれば砂面上方に水層はなく作業を円滑に行える。
【0133】
また、弁160を開けることによって、緩速ろ過槽128内の水を直接かつ容易に採取・測定できる。これによって、緩速ろ過槽128内の水質を直接かつ正確に把握できる。さらに、たとえば緩速ろ過ユニット22aおよび/または22bが十分に機能していないときには、3方弁152を開けることによって水を廃棄できる。
【0134】
さらに、第2液体供給装置20を用いることによって、緩速ろ過装置22の位置に拘わらず緩速ろ過装置22に一定量の水を供給できる。特に、この実施形態のように紐状接触処理装置16が緩速ろ過装置22より低い位置にあり自然流下によって水を供給できない場合に有効である。
【0135】
緩速ろ過装置22の下流側に第3液体供給装置24を設けることによって、緩速ろ過装置22でのろ過速度ひいては処理量を精度よく制御でき、緩速ろ過装置22における微生物の生息環境を最適化し、緩速ろ過を安定させることができる。
【0136】
緩速ろ過装置22は2つの緩速ろ過ユニット22aおよび22bを含むので、一方の緩速ろ過ユニットがメンテナンス中であっても他方の緩速ろ過ユニットによって浄水ひいては給水を継続できる。
【0137】
損失水頭測定用に透明管164を用いることによって、透明管164に表れる損失水頭を容易に測定でき、緩速ろ過槽128のメンテナンスのタイミングを容易に判断できる。
【0138】
また、水消毒装置26によれば、その内部の電解塩素発生装置178によって緩速ろ過装置22からの水に含まれる塩素イオンを用いて次亜塩素酸イオンを発生させて水を消毒し細菌の繁殖を防止できる。したがって、次亜塩素酸液を水に直接供給する場合とは異なり、薬品を管理する必要なく安全な飲料水を得ることができる。
【0139】
以上のように浄水システム10によれば、薬品を必要とせず簡単にシステムの駆動およびメンテナンスを行え、特に、開発途上国の村落、病院、学校、寺院等の比較的小規模な浄水施設を必要とする所に好適に用いられる。
【0140】
ついで、荒ろ過装置14による荒ろ過の実験結果の一例について説明する。
図36および図37には、荒ろ過装置14の第1槽62a〜第7槽62gから排出される水の濁度の測定結果が示され、横軸は実験開始日からの日数および測定時刻であり、縦軸は濁度である。縦軸の濁度の目盛りの最大値は、図36では「1000」、図37では「100」である。また、濁度の目標値は「10以下」である。
【0141】
図36および図37に示すように、荒ろ過装置14では下流側のろ過槽に進むほど濁度が小さくなっていき、7段目である第7槽62gからの水の濁度は測定時刻の全てにおいて目標値である「10以下」まで低下している。これにより第1槽62a〜第7槽62gの各ろ過槽において水の濁度を除去できることがわかる。
【0142】
つぎに、図38および図39には、荒ろ過装置14の第1槽62a〜第7槽62gから排出される水の色度の測定結果が示され、横軸は実験開始日からの日数および測定時刻であり、縦軸は色度である。縦軸の色度の目盛りの最大値は、図38では「5000」、図39では「100」である。また、色度の目標値は「30以下」である。
【0143】
図38および図39に示すように、荒ろ過装置14では下流側のろ過槽に進むほど色度が小さくなっていき、7段目である第7槽62gからの水の色度は最終測定時(27日目8時に測定、色度「31」)を除いて測定時刻の全てにおいて目標値である「30以下」まで低下している。これにより第1槽62a〜第7槽62gの各ろ過槽において水の色度を除去できることがわかる。
【0144】
特に、図37において第6槽62fからの水の濁度(白抜き四角形:□で示す)と第7槽62gからの水の濁度(白抜き三角形:△で示す)とを比較すると、第7槽62gは、第6槽62fからの水の濁度が「10」に近い値をとるときに特に効果を発揮し、第7槽62gによって濁度を「4以下」に減少させていることがわかる。
【0145】
また、図39において第6槽62fからの水の色度(白抜き四角形:□で示す)と第7槽62gからの水の色度(白抜き三角形:△で示す)とを比較すると、測定の全期間において第7槽62gからの水の色度が第6槽62fからの水の色度より大幅に低下していることがわかる。これは、荒ろ過装置14の6段目の第6槽62fまでの上向流式ろ過槽では有効に除去できなかったミクロン単位の微細な粒子が、下向流式ろ過槽である第7槽62gによって効果的に除去されていることを意味する。
【0146】
以上より、6段構造の上向流式ろ過槽である第1槽62a〜第6槽62fと1段の下向流式ろ過槽である第7槽62gとを組み合わせた荒ろ過装置14によれば、水を緩速ろ過用の原水として十分に使用可能なレベルにまで浄化でき、その下流の緩速ろ過装置22を円滑に動作させることができる。
【0147】
なお、浄水システム10において、紐状接触処理装置16を緩速ろ過装置22より高く配置し自然流下式に導水するようにしてもよい。この場合、緩速ろ過装置22が複数の緩速ろ過ユニットを有していれば、そのユニット数に応じた分配装置を設ければよい。
【0148】
浄水システム10に含まれる液体供給装置としては、たとえば特開2000−246087に開示されている装置を用いてもよく、一定量の水を供給可能な任意の供給装置を用いることができる。
【0149】
上述の実施形態の浄水システム10は、荒ろ過装置14、紐状接触処理装置16、緩速ろ過装置22および水消毒装置26を含んで構成されている。しかし、この発明の浄水システムは、これらをすべて含む場合に限定されず、それらのうちで、荒ろ過装置14だけを含んで構成されてもよく、荒ろ過装置14と緩速ろ過装置22とを含んで構成されてもよく、荒ろ過装置14と紐状接触処理装置16と緩速ろ過装置22とを含んで構成されてもよい。
【0150】
荒ろ過装置14は、上述のような7段構造に限定されず、少なくとも2段以上の上向流式ろ過槽とそれに続く1段の下向流式ろ過槽とを組み合わせたものであればよい。
【0151】
荒ろ過装置14において、下向流式ろ過槽は、それより上流にあるすべての上向流式ろ過槽に収容されるろ材のうち最小寸法のろ材より小さいろ材を収容するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】この発明の一実施形態の浄水システムの要部を示す斜視図である。
【図2】図1の実施形態の浄水システムの配管の一例を示す図解図である。
【図3】第1液体供給装置の一例を示す正面図である。
【図4】第1液体供給装置の一例を示す側面図である。
【図5】第1液体供給装置の一例を示す平面図である。
【図6】流量制御装置の一例を示す正面図である。
【図7】流量制御装置の一例を示す背面図である。
【図8】流量制御装置の一例を示す側面図である。
【図9】荒ろ過装置の一例を示す平面図である。
【図10】荒ろ過装置の一例を示す正面図である。
【図11】荒ろ過装置の一例を示す左側面図である。
【図12】荒ろ過装置の一例を示す背面図である。
【図13】荒ろ過装置の一例を示す右側面図である。
【図14】荒ろ過装置の一例を示す図解図であり、(a)は第1槽、(b)は第2槽、(c)は第3槽である。
【図15】荒ろ過装置の一例を示す図解図であり、(a)は第4槽、(b)は第5槽である。
【図16】荒ろ過装置の一例を示す図解図であり、(a)は第6槽、(b)は第7槽である。
【図17】(a)は支持台の一例を示す正面図であり、(b)はその底面図であり、(c)はその側面図である。
【図18】紐状接触処理装置の一例を示す平面図解図である。
【図19】図18のA−A断面を示す図解図である。
【図20】図18のB−B断面を示す図解図である。
【図21】(a)は紐状接触材槽の始端部近傍の一例を示す平面図解図であり、(b)はその断面図解図である。
【図22】(a)は従来の紐状接触材槽の始端部近傍の一例を示す平面図解図であり、(b)はその断面図解図である。
【図23】(a)は従来の紐状接触材槽の始端部近傍の他の例を示す平面図解図であり、(b)はその断面図解図である。
【図24】第2液体供給装置の一例を示す平面図である。
【図25】第2液体供給装置の一例を示す正面図である。
【図26】第2液体供給装置の一例を示す側面図である。
【図27】緩速ろ過ユニットの一例を示す正面図である。
【図28】緩速ろ過ユニットの一例を示す側面図である。
【図29】緩速ろ過ユニットの一例を示す平面図解図である。
【図30】緩速ろ過槽の一例を示す図解図である。
【図31】(a)は緩速ろ過槽内に配置される支持台の一例を示す正面図であり、(b)はその底面図である。
【図32】緩速ろ過ユニット、液体供給ユニットおよび透明管を示す図解図である。
【図33】液体供給ユニットの一例を示す図解図である。
【図34】蓋をはずした状態の液体供給ユニットの一例を示す平面図である。
【図35】水消毒装置の一例を示す図解図である。
【図36】荒ろ過装置の濁度に関する実験結果の一例を示すグラフである。
【図37】図36のグラフの縦軸を拡張したグラフである。
【図38】荒ろ過装置の色度に関する実験結果の一例を示すグラフである。
【図39】図38のグラフの縦軸を拡張したグラフである。
【符号の説明】
【0153】
10 浄水システム
12 第1液体供給装置
14 荒ろ過装置
16 紐状接触処理装置
18,148 タンク
20 第2液体供給装置
22 緩速ろ過装置
22a,22b 緩速ろ過ユニット
24 第3液体供給装置
24a,24b 液体供給ユニット
26 水消毒装置
28 水源
30,114,127,184 ポンプ
31,116 原水タンク
34,112,176 水位センサ
36,118a,118b,150 流量制御装置
62a〜62g 第1槽〜第7槽
88 紐状接触処理槽
90 紐状接触材
126a,126b 充填用タンク
128 緩速ろ過槽
164 透明管
168 浄水タンク
178 電解塩素発生装置
180 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荒ろ過装置を備える浄水システムであって、
前記荒ろ過装置は、
直列的に設けられかつ下流側の槽ほど小さいろ材が収容される複数の上向流式ろ過槽、および前記複数の上向流式ろ過槽より下流側に設けられる下向流式ろ過槽を含む、浄水システム。
【請求項2】
前記下向流式ろ過槽は、前記複数の上向流式ろ過槽に収容されるろ材のうち最小寸法のろ材と比べて同寸法以下のろ材を収容する、請求項1に記載の浄水システム。
【請求項3】
前記複数の上向流式ろ過槽および前記下向流式ろ過槽はそれぞれ遮光構造とされる、請求項1に記載の浄水システム。
【請求項4】
前記複数の上向流式ろ過槽は6段に構成される、請求項1に記載の浄水システム。
【請求項5】
前記荒ろ過装置からの水を緩速ろ過するために前記荒ろ過装置の下流側に設けられる緩速ろ過装置をさらに備える、請求項1に記載の浄水システム。
【請求項6】
前記荒ろ過装置へ一定量の水を供給するために前記荒ろ過装置の上流側に設けられる第1液体供給装置をさらに含み、
前記第1液体供給装置から前記荒ろ過装置へは、前記緩速ろ過装置での処理量を超える量の水が供給される、請求項5に記載の浄水システム。
【請求項7】
前記緩速ろ過装置へ一定量の水を供給するために前記荒ろ過装置と前記緩速ろ過装置との間に設けられる第2液体供給装置をさらに含み、
前記第2液体供給装置から前記緩速ろ過装置へは、前記緩速ろ過装置での処理量を超えかつ前記第1液体供給装置から前記荒ろ過装置への供給量以下の量の水が供給される、請求項6に記載の浄水システム。
【請求項8】
前記緩速ろ過装置からオーバーフローする水を収容する収容部をさらに含む、請求項6に記載の浄水システム。
【請求項9】
前記緩速ろ過装置での処理量を制御するために前記緩速ろ過装置の下流側に設けられる第3液体供給装置をさらに含む、請求項6に記載の浄水システム。
【請求項10】
前記緩速ろ過装置は複数の緩速ろ過ユニットを含む、請求項5に記載の浄水システム。
【請求項11】
前記緩速ろ過装置の損失水頭を測定するために前記緩速ろ過装置に連結される透明管をさらに含む、請求項5に記載の浄水システム。
【請求項12】
紐状接触材槽と前記紐状接触材槽に収容される紐状接触材とを含みかつ前記荒ろ過装置からの水を浄化するために前記荒ろ過装置と前記緩速ろ過装置との間に介挿される紐状接触処理装置をさらに備える、請求項5に記載の浄水システム。
【請求項13】
前記紐状接触材槽の水深は前記紐状接触材の直径の2倍以下に設定される、請求項12に記載の浄水システム。
【請求項14】
前記緩速ろ過装置からの水を消毒するために電解塩素発生装置を有しかつ前記緩速ろ過装置の下流側に設けられる水消毒装置をさらに含む、請求項12に記載の浄水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2009−297646(P2009−297646A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154651(P2008−154651)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】