説明

浄水器

【課題】浄化性及び通水性に優れるとともに、省スペース化が実現された浄水器を提供する。
【解決手段】本実施の形態の浄水器31は、原水5をその内部で濾過することによって浄化する筒状のフィルタ本体3と、フィルタ本体3が内部に配設された、原水5の導入口7及び浄化した浄化水6の導出口8を有するフィルタケース4とを備えた浄水器31であって、フィルタケース4が、その導出口7側の端面に開口部37を有し、フィルタケース4の開口部37を塞ぐように配設された、所定箇所に開口孔36を有するとともにフィルタケース4の開口部37に対応した形状を有する板状部材33と、板状部材33の開口孔36からフィルタケース4の内部の空気35を排出するための空気抜き路34を形成するように、板状部材33の開口孔36を覆うように配設された空気抜きカバー38とをさらに備えてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水器に関する。さらに詳しくは、浄化性及び通水性に優れるとともに、省スペース化が実現された浄水器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学工業、食品工業等の分野におけるプロセス機器や水道水の家庭用の浄水器において、原液をその内部に透過させて除菌、濾過等の浄化を行うフィルタとして、セラミックス製膜や、活性炭等の吸着部材をフィルタケースに収納したフィルタカートリッジを用いたものが使用されている。
【0003】
このようなフィルタカートリッジを備えた浄水器としては、例えば、少なくとも活性炭を含む濾過層を有するフィルタカートリッジとフィルタケースに内蔵されたセラミックス膜フィルタとを備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この浄水器は、交換が簡易で、メンテナンス性の面において一定の効果を発揮するとともに、セラミックス膜フィルタの目詰まりや圧力損失の上昇を抑えることができる点で優れたものである。また、このようなフィルタカートリッジは、所定期間使用したフィルタカートリッジを回収して容易にリサイクルを行うことが可能である。
【0005】
【特許文献1】特許第3124627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、使用済みのフィルタカートリッジを回収してリサイクルを行う場合、回収したフィルタカートリッジを分解し、その内部の洗浄を行う際に、充填された粉体状の吸着部材、例えば、活性炭等が、プラスチック等からなるフィルタカートリッジの内面に静電気にて付着し、ブラッシング等の手間の掛かる洗浄を行わなければならないという問題があった。特に、このフィルタカートリッジの輸送や使用等に際し、フィルタカートリッジの内部で活性炭同士が擦れ合い、一部の活性炭が、例えば、1μm以下の微細な粉末に粉砕されていることがあり、この場合、フィルタカートリッジの洗浄がさらに困難となり問題となっていた。
【0007】
また、フィルタカートリッジに充填された吸着部材、例えば、活性炭に、原水を通過させると活性炭粒子間の間隔が狭まって充填密度が密になり、例えば、浄水器の省スペース化のために、通水方向が水平方向となるようにフィルタカートリッジを横置きに設置した場合においては、活性炭の充填状態に偏りが発生し、フィルタカートリッジの内部に空隙が形成される。このような空隙は原水の流れに対して抵抗が小さいことから、空隙部分を流路として大量の原水が流れることとなり、活性炭による浄化が十分に行われない状態で原水が流出側に排出されてしまうという問題があった。また、フィルタカートリッジの内部に充填された活性炭等の吸着部材が、フィルタカートリッジの圧力損失の上昇を引き起こすという問題もあった。
【0008】
また、従来の浄水器において、上述したフィルタカートリッジの内部に残留する空気の抜け性が悪いために、浄水器を使用する際にフィルタカートリッジ内部に空気が残留し、浄化水の水切れが悪くなることや、フィルタカートリッジ内部でエアーロックを起こし浄化水の排出量が低下するという問題もあった。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、浄化能力及び通水性に優れるとともに、省スペース化が実現された浄水器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上述の課題を解決するべく、以下の浄水器を提供するものである。
【0011】
[1] 原水をその内部で濾過することによって浄化する筒状のフィルタ本体と、前記フィルタ本体が内部に配設された、前記原水の導入口及び浄化した浄化水の導出口を有するフィルタケースとを備えた浄水器であって、前記フィルタケースが、その前記導出口側の端面に開口部を有し、前記フィルタケースの開口部を塞ぐように配設された、所定箇所に開口孔を有するとともに前記フィルタケースの前記開口部に対応した形状を有する板状部材と、前記板状部材の前記開口孔から前記フィルタケースの内部の空気を排出するための空気抜き路を形成するように、前記板状部材の前記開口孔を覆うように配設された空気抜きカバーとをさらに備えてなることを特徴とする浄水器。
【0012】
[2] 前記フィルタケースの内部に、前記原水に含まれる不純物を吸着することによって浄化する吸着部材をさらに備えてなる前記[1]に記載の浄水器。
【0013】
[3] 前記吸着部材が、通水可能な吸着部材ケースの内部に充填された状態で保持されるとともに、前記吸着部材ケースが前記フィルタケースの内部に着脱可能に配設されてなり、前記吸着部材ケースの内部の所定箇所に、弾性を有し、外部から加わる応力によって、その体積を可逆的に変化させることが可能な空隙補填部材が、前記吸着部材側に圧縮された状態で配設されてなる前記[2]に記載の浄水器。
【0014】
[4] 前記吸着部材ケースの形状が、流入側の端面の断面積が流出側の端面の断面積よりも大きくなるように構成された異径の筒状であり、前記吸着部材ケースの内面のうち、少なくとも前記断面積が変化する異径部位の通水方向に略垂直な内面に、前記吸着部材を通過して前記通水方向に略垂直な内面に達した前記原水を低抵抗に通過させることが可能な圧力損失低減部材が配設されてなる前記[3]に記載の浄水器。
【0015】
[5] 前記吸着部材が活性炭層である前記[2]〜[4]のいずれかに記載の浄水器。
【0016】
[6] 前記吸着部材ケースの内部に、前記吸着部材として、少なくとも二種類の吸着部材が、区画部材によって区画された状態で保持された前記[3]〜[5]のいずれかに記載の浄水器。
【0017】
[7] 前記吸着部材が、銀を添加することで細菌に対する抗菌性を有する第一の吸着部材及び骨炭を添加することで重金属に対する吸着性を有する第二の吸着部材とからなる前記[6]に記載の浄水器。
【0018】
[8] 前記第一の吸着部材と、前記第二の吸着部材との割合が、質量比で5:95〜95:5である前記[7]に記載の浄水器。
【0019】
[9] 前記フィルタ本体がセラミックスフィルタである前記[1]〜[8]のいずれかに記載の浄水器。
【0020】
[10] 前記フィルタ本体が、その内部を通過する前記原水の流れ方向が水平方向となるように前記フィルタケースの内部に配設されてなる前記[1]〜[9]のいずれかに記載の浄水器。
【0021】
[11] 前記フィルタ本体が、その端部側から前記浄化水を取り出す構造を有するものである前記[1]〜[10]のいずれかに記載の浄水器。
【0022】
[12] 前記フィルタ本体が、その外周壁側から前記浄化水を取り出す構造を有するものである前記[1]〜[10]のいずれかに記載の浄水器。
【発明の効果】
【0023】
本発明の浄水器は、フィルタケースの内部に残留する空気を容易に外部へと排出して浄化水の水切れを良好にすることができるとともに、フィルタケースの内部に残留した空気によるエアーロックを防止し、浄化水を安定した状態で排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0025】
まず、浄水器の一例について説明する。
【0026】
図1に示すように、この浄水器1は、原水5に含まれる不純物を吸着することによって浄化する吸着部材2と、原水5をその内部で濾過することによって浄化する筒状のフィルタ本体3と、吸着部材2及びフィルタ本体3が内部に配設された、原水5の導入口7及び浄化した浄化水6の導出口8を有するフィルタケース4とを備えた浄水器1であって、吸着部材2が、通水可能な吸着部材ケース9の内部に充填された状態で保持されるとともに、吸着部材ケース9がフィルタケース4の内部に着脱可能に配設されてなり、吸着部材ケース9の内部の所定箇所に、弾性を有し、外部から加わる応力によって、その体積を可逆的に変化させることが可能な空隙補填部材10が、吸着部材2側に圧縮された状態で配設されてなるものである。
【0027】
このような浄水器1においては、フィルタケース4の内部に、吸着部材2が充填された吸着部材ケース9及びフィルタ本体3が着脱可能に配設されていることから、これらを一体としフィルタカートリッジ14として用いることができる。また、この浄水器1は、このフィルタカートリッジ14が、フィルタケース4の導入口7に連なる導入配管11及びフィルタケース4の導出口8から取り出された浄化液6を外部に導出する導出配管12を有する外部ケース13の内部に、フィルタケース4の長手方向が水平方向となるように配設されて構成されている。
【0028】
吸着部材2が充填された吸着部材ケース9及びフィルタ本体3をフィルタケース4の内部に収納した状態で用いることができるために、所定の期間使用したフィルタカートリッジ14の交換作業が簡便になるとともに、フィルタカートリッジ14をリサイクルする際の作業が容易になる。また、吸着部材2が吸着部材ケース9に充填された状態でフィルタケース4の内部に保持されているために、フィルタケース4の内面に吸着部材2、例えば、粉体状の活性炭層等が静電気等によって付着することがなく、リサイクル等を行う際のフィルタケース4の洗浄が容易になる。
【0029】
この浄水器1においては、フィルタカートリッジ14が、その通水方向が水平方向となるような横置きの状態で外部ケース13の内部に配設されて構成されていることが好ましく、このように構成することによって、例えば、流し台の壁等に取り付けて用いることが可能となり、省スペース化が実現される。
【0030】
従来、フィルタカートリッジが、その通水方向が水平方向となるような横置きの状態で配設されて構成された浄水器においては、吸着部材が粉体状の場合、吸着部材に原水を通過させた際に、その充填密度が密となり、吸着部材の充填状態に偏りが発生して、フィルタカートリッジの内部に空隙が形成されることがあった。このようにフィルタカートリッジの内部に空隙が形成されると、吸着部材による浄化が十分に行われない状態で原水が流出側に排出されてしまうことがあったが、この浄水器1においては、吸着部材ケース9の内部の所定箇所に、弾性を有し、外部から加わる応力によって、その体積を可逆的に変化させることが可能な空隙補填部材10が、吸着部材2側に圧縮された状態で配設されており、充填密度の変化による吸着部材2の体積減少分を補填するように、空隙補填部材10がその体積を増加させて空隙の形成を防止することから、常に吸着部材2による原水5の浄化が十分な状態で行われる。
【0031】
図1においては、空隙補填部材10が原水5の流入側に配設された構成となっているが、この位置に限定されることはなく、原水5の通水方向に略垂直ないずれかの面に配設されていればよい。
【0032】
空隙補填部材10の材料としては、例えば、PP繊維、ナイロン繊維、PE繊維、又は綿から形成された不織布等を好適に用いることができる。
【0033】
また、吸着部材2は、活性炭層であることが好ましい。活性炭層は、銀及び骨炭を添加することで細菌に対する抗菌性や重金属等に対する優れた吸着性を有し、濾過機能を有するフィルタ本体3と併用することにより、原水5の浄化精度をさらに向上させることができる。
【0034】
また、吸着部材ケース9の内部に、吸着部材2として、少なくとも二種類の吸着部材2が、不織布等からなる区画部材19によって区画された状態で保持されていることが好ましく、さらに、吸着部材2が、銀を添加することで細菌に対する抗菌性を有する第一の吸着部材2a及び骨炭を添加することで重金属に対する吸着性を有する第二の吸着部材2bとからなることが好ましい。
【0035】
銀を添加することで細菌に対する抗菌性を有する第一の吸着部材2aとしては、例えば、クラレケミカル社製の粒状活性炭:型番T−ZB60/150を好適に用いることができ、骨炭を添加することで重金属に対する吸着性を有する第二の吸着部材2bとしては、例えば、特に鉛に対する吸着性に優れた、クラレケミカル社製の粒状活性炭:型番ARG50S60/150を好適に用いることができる。
【0036】
また、吸着部材2として、第一の吸着部材2aと第二の吸着部材2bとを用いる場合は、第一の吸着部材2aと第二の吸着部材2bとの割合が、質量比で5:95〜95:5であることが好ましい。このように構成することによって、原水5に含まれる有害な不純物を、長期間に渡り強力に除去することができ、安全な浄化水を得ることができる。
【0037】
また、区画部材19が、弾性を有し、外部から加わる応力によって、その体積を可逆的に変化させることが可能な不織布等を用いて形成されてなり、この区画部材19が、吸着部材2側に圧縮された状態で吸着部材ケース9の内部に配設されることにより、空隙補填部材10と同様の効果、即ち、充填密度の変化による吸着部材2の体積減少分を補填するように、その体積を増加させて空隙の形成を防止する効果をも有するものとすることができる。
【0038】
フィルタ本体3としては、例えば、セラミックス製(その形状としては交互に目封じしたハニカム形状のものやモノリス型形状のもの等がある)等を挙げることができる。中でも、耐熱性や耐食性に優れるセラミックスフィルタを好適に用いることができる。
【0039】
また、フィルタ本体3としては、その端部20側から浄化液6を取り出す構造を有するものであってもよく、その外周壁21側から浄化液6を取り出す構造を有するものであってもよい。
【0040】
フィルタケース4の材料としては、例えば、成形性が容易で、かつ、使用後の回収リサイクルが容易な、PP樹脂、ABS樹脂及びPVDF樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。
【0041】
また、吸着部材ケース9の材料としては、例えば、PP樹脂、ABS樹脂、POM樹脂及びPE樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。
【0042】
また、外部ケース13の材料としては、例えば、ステンレス等の金属、ABS樹脂及びアクリル樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。
【0043】
また、特に限定されることはないが外部ケース13の導入配管11及び導出配管12は、ポリスチレン等からなるホース状のものであることが好ましく、この導入配管11及び導出配管12は、水道の蛇口に容易に着脱可能で、かつ、浄化水、水道水及び水道水シャワーを切り換え可能な切り換えコックを有する接続部材に接続されて構成されていることがさらに好ましい。
【0044】
また、図2及び図3に示すように、吸着部材ケース9の形状が、流入側の端面16の断面積が流出側の端面17の断面積よりも大きくなるように構成された異径の筒状であり、吸着部材ケース9の内面のうち、少なくとも断面積が変化する異径部位15の通水方向に略垂直な内面に、吸着部材2を通過してこの略垂直な内面に達した原水5を低抵抗に通過させることが可能な、不織布等からなる圧力損失低減部材18が配設されてなることが好ましい。
【0045】
吸着部材ケース9の形状を異径の筒状とすることで、外部ケース13(図1参照)を大きくすることなく、吸着部材ケース9の体積を増加させることができ、吸着部材ケース9に充填される吸着部材2の充填量を増加させることができる。また、吸着部材ケース9の形状を異径の筒状にした場合、吸着部材ケース9の断面積が変化する異径部位15が原水5の通水における抵抗となり、フィルタカートリッジ14(図1参照)の圧力損失が上昇してしまうことがあるが、浄水器1(図1参照)においては、吸着部材ケース9の少なくとも断面積が変化する異径部位15の通水方向に略垂直な内面に、不織布等からなる圧力損失低減部材18を配設することにより、原水5を圧力損失低減部材18の内部を低抵抗に通過させてフィルタカートリッジ14(図1参照)の圧力損失を低減させることができる。
【0046】
また、圧力損失低減部材18の形状は、図3に示したものに限定されることはなく、例えば、図4に示すように、吸着部材ケース9の断面積が変化する異径部位15から吸着部材ケース9の流出側の端面17までの部位を覆うように、圧力損失低減部材18が配設されていてもよく、図5に示すように、吸着部材ケース9の断面積が変化する異径部位15から吸着部材ケース9の流出側の端面17全てを覆うように、圧力損失低減部材18が配設されてなるものであってもよい。図4及び図5において、図3に示した各要素と共通する要素については、図3と同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
圧力損失低減部材18の材料としては、PP繊維、ナイロン繊維、PE繊維又は綿から形成された不織布等を好適に用いることができる。
【0048】
また、図1に示すように、圧力損失低減部材18が、弾性を有し、外部から加わる応力によって、その体積を可逆的に変化させることが可能な不織布等を用いて形成されてなり、この圧力損失低減部材18が、吸着部材2側に圧縮された状態で吸着部材ケース9の内部に配設されることにより、空隙補填部材10と同様の効果、即ち、充填密度の変化による吸着部材2の体積減少分を補填するように、その体積を増加させて空隙の形成を防止する効果をも有するものとすることができる。
【0049】
なお、この浄水器1で浄化される原水5としては特に制限はなく、例えば、水道水、化学工業、食品工業等で用いられる各種液体等を挙げることができる。
【0050】
また、図示は省略するが、フィルタカートリッジの交換時期や浄化水の積算流量等の各種情報を表示する表示部を、これまでに説明した浄水器を構成する外部ケースの所定箇所に配設してもよい。
【0051】
次に、本発明の浄水器について、図6を参照しつつ具体的に説明する。本実施の形態においては、図1に示した浄水器1を構成する構成要素と同様に構成されたものについては、同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
【0052】
図6に示すように、本実施の形態の浄水器31は、原水5をその内部で濾過することによって浄化する筒状のフィルタ本体3と、フィルタ本体3が内部に配設された、原水5の導入口7及び浄化した浄化水6の導出口8を有するフィルタケース4とを備えた浄水器31であって、フィルタケース4が、その導出口7側の端面に開口部37を有し、フィルタケース4の開口部37を塞ぐように配設された、所定箇所に開口孔36を有するとともにフィルタケース4の開口部37に対応した形状を有する板状部材33と、板状部材33の開口孔36からフィルタケース4の内部の空気35を排出するための空気抜き路34を形成するように、板状部材33の開口孔36を覆うように配設された空気抜きカバー38とをさらに備えてなることを特徴とする浄水器である。
【0053】
このように構成することによって、フィルタケース4の内部に残留する空気35を容易に外部へと排出して浄化水6の水切れを良好にすることができるとともに、フィルタケース4の内部に残留した空気35によるエアーロックを防止し、浄化水6を安定した状態で排出することができる。
【0054】
また、本実施の形態においては、フィルタケース4の内部に、原水5に含まれる不純物を吸着することによって浄化する吸着部材2をさらに備えてなることが好ましく、図1に示した浄水器1と同様に、この吸着部材2が、通水可能な吸着部材ケース9の内部に充填された状態で保持されるとともに、吸着部材ケース9がフィルタケース4の内部に着脱可能に配設されてなり、吸着部材ケース9の内部の所定箇所に、弾性を有し、外部から加わる応力によって、その体積を可逆的に変化させることが可能な、不織布等からなる空隙補填部材10が、吸着部材2側に圧縮された状態で配設されてなることが好ましい。
【0055】
このように構成することによって、充填密度の変化による吸着部材2の体積減少分を補填するように、空隙補填部材10がその体積を増加させて空隙の形成を防止することから、常に吸着部材2による原水5の浄化が十分な状態で行われる。
【0056】
また、本実施の形態においては、吸着部材2は、活性炭層であることが好ましい。活性炭層は、銀及び骨炭を添加することで細菌に対する抗菌性や重金属等に対する優れた吸着性を有し、濾過機能を有するフィルタ本体3と併用することにより、原水5の浄化精度をさらに向上させることができる。
【0057】
また、本実施の形態においては、吸着部材ケース9の内部に、吸着部材2として、少なくとも二種類の吸着部材2が、不織布等からなる区画部材19によって区画された状態で保持されてなることが好ましく、さらに、吸着部材2が、銀を添加することで細菌に対する抗菌性を有する第一の吸着部材2a及び骨炭を添加することで重金属に対する吸着性を有する第二の吸着部材2bとからなることが好ましい。第一の吸着部材2a及び第二の吸着部材2bは、図1に示した第一の吸着部材2a及び第二の吸着部材2bと同様に構成されたものを好適に用いることができる。
【0058】
また、本実施の形態においては、区画部材19が、弾性を有し、外部から加わる応力によって、その体積を可逆的に変化させることが可能な不織布等を用いて形成されてなり、このように区画部材19が、吸着部材2側に圧縮された状態で吸着部材ケース9の内部に配設されることにより、空隙補填部材10と同様の効果、即ち、充填密度の変化による吸着部材2の体積減少分を補填するように、その体積を増加させて空隙の形成を防止する効果をも有するものとすることができる。
【0059】
また、本実施の形態においては、吸着部材ケース9の形状が、流入側の端面16の断面積が流出側の端面17の断面積よりも大きくなるように構成された異径の筒状であり、吸着部材ケース9の内面のうち、少なくとも断面積が変化する異径部位15の通水方向に略垂直な内面に、吸着部材2を通過して通水方向に略垂直な内面に達した原水5を低抵抗に通過させることが可能な、不織布等からなる圧力損失低減部材18が配設されていることが好ましい。
【0060】
このように構成することによって、図1に示した浄水器1と同様の作用、効果を得ることができる。
【0061】
また、本実施の形態の浄水器31に用いられるフィルタ本体3、フィルタケース4、圧力損失低減部材18、吸着部材ケース9、空隙補填部材10、外部ケース13、及び区画部材19は、図1に示した浄水器1において説明した各要素と同様に構成されたものを好適に用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によっていかなる制限を受けるものではない。
【0063】
(参考例1〜4)
吸着部材として、活性炭(クラレケミカル社製:型番GW60/150)を、直径75mmの円筒状の吸着部材ケースの内部に、乾燥状態で充填密度が0.55g/cmとなるように150g充填して活性炭層を形成した。
【0064】
活性炭層を充填した吸着部材ケースの原水の流出側に、応力が加わっていない状態での厚さが10mmで、弾性を有し、外部から加わる応力によって、その体積を可逆的に変化させることが可能な不織布からなる空隙補填部材を、その圧縮量が3.5mm、4mm、5mm及び7mmとなるように活性炭層側に圧縮させた状態で配設し、得られた吸着部材ケースを、20℃、0.1MPaにおいて、初期通水量が6L/minの、直径62mm、軸方向の長さ100mmのセラミックスフィルタとともにフィルタケースの内部に配設してフィルタカートリッジを製作し、このフィルタカートリッジを浄水器に設置した(参考例1〜4)。
【0065】
(比較例1)
吸着部材ケースの内部に同様の条件で活性炭層を充填し、空隙補填部材を配設しない状態で、20℃、0.1MPaにおいて、初期通水量が6L/minの、直径62mm、軸方向の長さ100mmのセラミックスフィルタとともにフィルタケースの内部に配設してフィルタカートリッジを製作し、このフィルタカートリッジを浄水器に設置した(比較例1)。
【0066】
この浄水器(参考例1〜4及び比較例1)に、総トリハロメタンの濃度が100ppmとなるように調整したイオン交換水を原水として、水圧0.05MPa、3L/minの条件で、排出される浄化水が、原水に含まれるトリハロメタンの80%以上を除去することができる総通水量を測定した。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
本参考例(参考例1〜4)の全ての浄水器が、9000L以上の原水を処理することができた。比較例1の浄水器は、4800Lを通水した時点で、トリハロメタンを80%以上処理することができなくなった。比較例1においては、フィルタケースの内部に空隙が形成されており、この空隙部分は通水の抵抗が低いために原水が空隙部分を優先的に通過して、活性炭層が均一に使用されていないことが分かる。
【0069】
(参考例5〜8)
参考例1と同様に、吸着部材として、活性炭(クラレケミカル製:型番GW60/150)を、直径75mmの円筒状の吸着部材ケースの内部に、乾燥状態で充填密度が0.55g/cmとなるように150g充填して活性炭層を形成した。
【0070】
活性炭層を充填した吸着部材ケースに、図7〜10に示すように吸着部材ケース9の内面のうち、少なくとも断面積が変化する異径部位の通水方向に略垂直な内面に、活性炭層を通過して通水方向に略垂直な内面に達した原水を低抵抗に通過させることが可能な不織布からなる圧力損失低減部材18を配設し、得られた吸着部材ケースを、20℃、0.1MPaにおいて、初期通水量が6L/minの、直径62mm、軸方向の長さ100mmのセラミックスフィルタとともにフィルタケースの内部に配設してフィルタカートリッジを製作し、このフィルタカートリッジを浄水器に設置した(参考例5〜8)。
【0071】
(比較例2)
活性炭層を充填した吸着部材ケースに、吸着部材ケースの流出口のみに圧力損失低減部材を配設し、得られた吸着部材ケースを、20℃、0.1MPaにおいて、初期通水量が6L/minの、直径62mm、軸方向の長さ100mmのセラミックスフィルタとともにフィルタケースの内部に配設してフィルタカートリッジを製作し、このフィルタカートリッジを浄水器に設置した(比較例2)。
【0072】
この浄水器(参考例5〜8及び比較例2)に、総トリハロメタンの濃度が100ppmとなるように調整したイオン交換水を原水として、水圧0.05MPa、3L/minの条件で、排出される浄化水が、原水に含まれるトリハロメタンの80%以上を除去することができる総通水量を測定した。結果を表2に示す。また、この浄水器(参考例5〜8及び比較例2)の初期通水量を測定した。結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
本参考例(参考例5〜8)の浄水器は、全てが9200Lの原水を処理することができた。比較例2の浄水器は、4800Lを通水した時点で、トリハロメタンを80%以上処理することができなくなった。比較例2の浄水器は、初期通水量が1.5L/minと非常に少なく、フィルタカートリッジの圧力損失が高いことから、吸着部材ケースに充填された活性炭層が均一に使用されていないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の浄水器は、フィルタカートリッジを、その通水方向が水平方向となるような横置きの状態で外部ケースの内部に配設することによって、省スペース化が実現されるため、例えば、流し台の壁等に取り付けて用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】浄水器の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の浄水器に用いられる吸着部材ケースを模式的に示す斜視図である。
【図3】図1の浄水器に用いられる吸着部材ケース及び空隙補填部材を模式的に示す断面図である。
【図4】図1の浄水器に用いられる吸着部材ケース及び空隙補填部材を模式的に示す断面図である。
【図5】図1の浄水器に用いられる吸着部材ケース及び空隙補填部材を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の浄水器の一の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の浄水器の参考例5に用いられる吸着部材ケース及び圧力損失低減部材を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の浄水器の参考例6に用いられる吸着部材ケース及び圧力損失低減部材を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の浄水器の参考例7に用いられる吸着部材ケース及び圧力損失低減部材を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の浄水器の参考例8に用いられる吸着部材ケース及び圧力損失低減部材を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1:浄水器、2:吸着部材、2a:第一の吸着部材、2b:第二の吸着部材、3:フィルタ本体、4:フィルタケース、5:原水、6:浄化水、7:導入口、8:導出口、9:吸着部材ケース、10:空隙補填部材、11:導入配管、12:導出配管、13:外部ケース、14:フィルタカートリッジ、15:異径部位、16:流入側の端面、17:流出側の端面、18:圧力損失低減部材、19:区画部材、20:端部、21:外周壁、31:浄水器、33:板状部材、34:空気抜き路、35:空気、36:開口孔、37:開口部、38:空気抜きカバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水をその内部で濾過することによって浄化する筒状のフィルタ本体と、前記フィルタ本体が内部に配設された、前記原水の導入口及び浄化した浄化水の導出口を有するフィルタケースとを備えた浄水器であって、
前記フィルタケースが、その前記導出口側の端面に開口部を有し、前記フィルタケースの開口部を塞ぐように配設された、所定箇所に開口孔を有するとともに前記フィルタケースの前記開口部に対応した形状を有する板状部材と、前記板状部材の前記開口孔から前記フィルタケースの内部の空気を排出するための空気抜き路を形成するように、前記板状部材の前記開口孔を覆うように配設された空気抜きカバーとをさらに備えてなることを特徴とする浄水器。
【請求項2】
前記フィルタケースの内部に、前記原水に含まれる不純物を吸着することによって浄化する吸着部材をさらに備えてなる請求項1に記載の浄水器。
【請求項3】
前記吸着部材が、通水可能な吸着部材ケースの内部に充填された状態で保持されるとともに、前記吸着部材ケースが前記フィルタケースの内部に着脱可能に配設されてなり、
前記吸着部材ケースの内部の所定箇所に、弾性を有し、外部から加わる応力によって、その体積を可逆的に変化させることが可能な空隙補填部材が、前記吸着部材側に圧縮された状態で配設されてなる請求項2に記載の浄水器。
【請求項4】
前記吸着部材ケースの形状が、流入側の端面の断面積が流出側の端面の断面積よりも大きくなるように構成された異径の筒状であり、
前記吸着部材ケースの内面のうち、少なくとも前記断面積が変化する異径部位の通水方向に略垂直な内面に、前記吸着部材を通過して前記通水方向に略垂直な内面に達した前記原水を低抵抗に通過させることが可能な圧力損失低減部材が配設されてなる請求項3に記載の浄水器。
【請求項5】
前記吸着部材が活性炭層である請求項2〜4のいずれかに記載の浄水器。
【請求項6】
前記吸着部材ケースの内部に、前記吸着部材として、少なくとも二種類の吸着部材が、区画部材によって区画された状態で保持された請求項3〜5のいずれかに記載の浄水器。
【請求項7】
前記吸着部材が、銀を添加することで細菌に対する抗菌性を有する第一の吸着部材及び骨炭を添加することで重金属に対する吸着性を有する第二の吸着部材とからなる請求項6に記載の浄水器。
【請求項8】
前記第一の吸着部材と、前記第二の吸着部材との割合が、質量比で5:95〜95:5である請求項7に記載の浄水器。
【請求項9】
前記フィルタ本体がセラミックスフィルタである請求項1〜8のいずれかに記載の浄水器。
【請求項10】
前記フィルタ本体が、その内部を通過する前記原水の流れ方向が水平方向となるように前記フィルタケースの内部に配設されてなる請求項1〜9のいずれかに記載の浄水器。
【請求項11】
前記フィルタ本体が、その端部側から前記浄化水を取り出す構造を有するものである請求項1〜10のいずれかに記載の浄水器。
【請求項12】
前記フィルタ本体が、その外周壁側から前記浄化水を取り出す構造を有するものである請求項1〜10のいずれかに記載の浄水器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−119692(P2008−119692A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339477(P2007−339477)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【分割の表示】特願2002−355541(P2002−355541)の分割
【原出願日】平成14年12月6日(2002.12.6)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】