浮上分離装置及び固液分離システム
【課題】スカムを回収するための排出手段の性能を長期に亘って良好に維持することができ、安定した分離処理機能が得られるとともに、メンテナンス頻度を大幅に低減できてランニングコストの低減にも寄与できる浮上分離装置を提供する。
【解決手段】浮上分離装置104の上面側に設置されたスカム排出手段126は、タイミングベルト146で連結されてモータ148により同期回転する前軸134と後軸136を有している。これらの軸には偏心カムが固定されている。偏心カムにはカム受け本体138が支持され、カム受け本体138間にはブラケット140が固定されている。ブラケット140間にはスクレーパ142が固定されており、偏心カムの同期回転によりスクレーパ142は平行運動(円運動)し、浮上分離槽104aの水面に浮上したスカムを排出方向に押し出す。
【解決手段】浮上分離装置104の上面側に設置されたスカム排出手段126は、タイミングベルト146で連結されてモータ148により同期回転する前軸134と後軸136を有している。これらの軸には偏心カムが固定されている。偏心カムにはカム受け本体138が支持され、カム受け本体138間にはブラケット140が固定されている。ブラケット140間にはスクレーパ142が固定されており、偏心カムの同期回転によりスクレーパ142は平行運動(円運動)し、浮上分離槽104aの水面に浮上したスカムを排出方向に押し出す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水(原水)に含まれる懸濁物質や繊維質等の固形分を凝集化による比重差や気泡付着による浮力を利用して水面に浮上させて回収する浮上分離装置、該浮上分離装置を備えた固液分離システムに関し、特に塗装ブース循環水の汚水処理に好適な固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浮上分離方式の汚水処理システムは、例えば図23に示すような構成となっている。図示しない反応槽で汚水に高分子凝集剤を加えて反応させ、反応後のフロック化汚水を浮上分離装置200の浮上分離槽201に投入する。浮上分離槽201内での滞留時間は汚水特性によって異なるが、大よそ5分から10分程度である。
投入されたフロック化汚水の固形物は凝集後の軽比重化によって液面に浮上し、スカム(scum;浮上した固形物の集合体)202を形成する。
スカム202は、浮上分離槽201の上部に設置された排出手段204により、フロック化汚水の投入側とは反対側へ押し出され、浮上分離槽201外へ排出されてスカムピット205に一旦溜められる。
スカム202の下方の分離処理水は、浮上分離槽201の中間部に設けられたパイプ206によって槽外へ導かれ、処理水排出ゲート207からオーバーフロー方式で排出される。
浮上分離槽201内の中間水を導出するため、分離処理水には殆ど固形物は含まれていない。
【0003】
スカムピット205に回収されたスカムは、一旦スカム貯槽208に貯留してから、次工程に送られる。浮上分離槽201で浮上しやすく物性を変化させているために、スカム貯槽208内でも再び分離作用が起こりやすい状態になる。分離が生じると、後工程の脱水機における脱水効率が低下する。
これを防止するために、スカム貯槽208内にパドル式の攪拌手段210を設けて攪拌するようになっている。スカム貯槽208が所定の水位に達すると、脱水工程が開始される。回収されたスカムは自然流下によりスカム貯槽208に溜められるが、スカム貯槽208からは水中ポンプ212などの手段で反応槽214へ移送される。
攪拌手段を有する反応槽214で再び高分子凝集剤を加えてフロック化処理し、脱水機216へ投入する。スカムピット205でのスカムの含水率は97〜99%程度であるが、脱水機216からは含水率が85%程度の脱水ケーキとして排出される。
【0004】
スカムを回収する排出手段204は、例えばプーリ218、220間にチェーン222を巻き付け、チェーン222に複数のスクレーパ224などを取り付けて回転駆動する構成となっている。
チェーン222の回動に伴ってスクレーパ224が移動してスカム202をスカムピット205側へ押し出すことによりスカム202が排出される。
一般的に、チェーン222に特殊なコマを取り付けて、そのコマにスクレーパ224を交換可能に取り付ける構造となっている。
【0005】
塗装ブースでは、塗装ロボットによってワークを塗装しているが、ワーク後方には循環水がカーテン状に流れている。塗着率は50%程度であり、塗料の多くが循環水に混入している。
循環水を回さないと、ブース内がミスト状の塗料で充満するため、循環水は不可欠となっている。
大量の塗装が行われるために、循環水の濃度は使用塗料の50%程度を含む高濃度となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−116390号公報
【特許文献2】特開2006−297239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなチェーン駆動方式の排出手段では、チェーンの自重に加えてコマとスクレーパの重量が加わるために、浮上分離槽の幅が大きくなるほど、すなわちプーリとプーリの軸間距離が長くなるほど、経時的な加重負荷によってチェーンに弛みが発生することを避けられない。
弛みはプーリに近いほど小さく、プーリから離れる中央部ほど大きくなる。このため、浮上分離槽の液面に浮上したスカムの深さに対して、全てのスクレーパが均一に作用せず、結果的に攪拌してしまうなど良好な分離処理水を得られない場合があった。
また、スクレーパが予定水深より入り込むことで、駆動装置の負荷が大きくなり、動力アップ(ひいては電力消費量の増加)にもつながっていた。
さらに、このようなチェーンの弛みによる不具合を解消するためには頻繁なメンテナンスも不可欠であった。
【0008】
一方、処理システム全体から観察すると、上記のように従来においては回収したスカムを一旦スカム貯槽に溜める構成となっているため、スカム貯槽内での再分離を回避するために、攪拌手段が必要となり、ポンプ移送構成も必要となるなど、システムの設備構成の大型化、設置スペースの広面積化を避けられなかった。
また、攪拌手段やポンプ移送設備を設けることにより、脱水に必要な状態に十分にフロック化処理されていたスカムが再分解され、脱水するために新たに高分子凝集剤を加える凝集反応部の設置が不可欠となる。
【0009】
塗装分野において、循環水の濃度が高くなると、循環水が閉塞してブースが停止したり、悪臭が発生するなどの環境面の問題が生じる。循環水を取り替えれば問題はないが、産業廃棄物となるため多大な費用が掛かり、できるだけ長く循環水を使いたいとというニーズが高まっている。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、スカムを回収するための排出手段の性能を長期に亘って良好に維持することができ、安定した分離処理機能が得られるとともに、メンテナンス頻度を大幅に低減できてランニングコストの低減にも寄与できる浮上分離装置の提供を、その目的とする。
また、本発明は、大幅な省スペース化、大幅なコスト削減を実現できる固液分離システムの提供を、その目的とする。
また、本発明は塗装ブースにおける循環水の長期的な使用を可能とするに好適な固液分離システムの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、槽内の液面に浮上した固形分を、槽の一端側から他端側へ押し出して槽外へ排出する排出手段を有する浮上分離装置において、前記排出手段は、排出方向と直交する方向に延び固形分を掻き取るように該排出方向へ押し込むスクレーパを備え、且つ、前記スクレーパを前記排出方向である前後方向と上下方向に平行運動させる構成を有していることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の浮上分離装置において、前記排出手段は、前記排出方向と直交する方向に延びる軸と、該軸に固定された偏心カムと、前記軸を回転駆動する駆動源と、前記偏心カムに支持され、該偏心カムの回転に伴って前記平行運動をするカム受け部材とを有し、前記スクレーパは前記カム受け部材に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の浮上分離装置において、前記カム受け部材は、前記偏心カムに嵌合するカム受け本体と、該カム受け本体に固定され、前記排出方向に延びるブラケットとを有し、前記スクレーパは前記ブラケットに取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の浮上分離装置において、前記軸は前記排出方向に間隔をおいて複数設けられているとともに同期回転するように連結され、前記偏心カム及び前記カム受け本体は前記各軸に前記排出方向と直交する方向に間隔をおいてそれぞれ複数設けられ、前記ブラケットは前記排出方向に位置する複数の前記カム受け本体間に固定され、複数のスクレーパが複数のブラケット間に取り付けられていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、固液分離システムにおいて、浮上分離装置と、前記浮上分離装置により回収された固形分を含む処理対象物を脱水しながら固液分離する脱水装置とを有し、前記浮上分離装置は請求項1〜4のいずれかに記載の浮上分離装置であることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の固液分離システムにおいて、前記浮上分離装置の前段に、処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有し、前記凝集反応部にて凝集反応化された処理対象物を前記浮上分離装置に投入することを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の固液分離システムにおいて、前記浮上分離装置と前記脱水装置との間に、回収された固形分を含む処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する第2の凝集反応部を有していることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、槽内の液面に固形分を浮上させて回収する浮上分離装置と、該浮上分離装置の後段に設けられ、前記浮上分離装置で回収された固形分を含む処理対象物を脱水しながら固液分離する脱水装置とを有することを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項8記載の固液分離システムにおいて、前記浮上分離装置の前段に、処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有し、前記凝集反応部にて凝集反応化された処理対象物を前記浮上分離装置に投入することを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項8又は9記載の固液分離システムにおいて、前記浮上分離装置と前記脱水装置との間に、回収された固形分を含む処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有していることを特徴とする。
【0016】
請求項11記載の発明は、塗装ブースと、該塗装ブースの下方に設けられ、塗料ミストが混入した水が循環する循環水槽と、該循環水槽から汲み上げられた循環水の固形分を分離・排出する浮上分離装置とを有し、前記浮上分離装置は請求項1〜4のいずれかに記載の浮上分離装置であることを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項11記載の固液分離システムにおいて、前記循環水槽が前記塗装ブースの底面積よりも広い面積を有し、前記浮上分離装置が前記循環水槽の上面に設置されていることを特徴とする。
請求項13記載の発明は、請求項11又は12記載の固液分離システムにおいて、前記循環水槽からの循環水の汲み上げがエアーリフトポンプによりなされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、浮上分離したスカムを平行運動によるスクレーパで掻き取る構成を有しているので、従来のチェーン駆動方式に比べて経時的な弛みが殆ど無く、スカム排出性能を長期に亘って均一に維持することができる。これにより、安定した分離処理機能が得られるとともに、メンテナンス頻度を大幅に低減できてランニングコストの低減にも寄与できる。
また、本発明によれば、浮上分離装置で回収されたスカムを脱水装置へ直接脱水することにより、ポンプ移送設備、凝集反応部や高分子注入設備などが不要となり、大幅なイニシャルコストの削減を実現できる。
また、本発明によれば、浮上分離装置で回収されたスカムを凝集反応部に投入して再度フロック化してから脱水装置で脱水することにより、ポンプ移送設備などを不要にできてコンパクト化を実現できるとともに、脱水効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る固液分離システムの概要断面図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】浮上分離装置における排出手段の概要平面図である。
【図3】偏心カムを示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】カム受け部材のカム受け本体を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】偏心カム、カム受け本体及び軸を組み付けた状態の概要断面図である。
【図6】図1の右側から見た概要断面図である。
【図7】ブラケットとスクレーパとの取付構成を示す要部斜視図である。
【図8】スクレーパの平行運動の工程を示す図である。
【図9】スクレーパの平行運動(円運動)における変位状態を示す図である。
【図10】浮上分離装置における中間水の取水構成を示す図である。
【図11】第2の凝集反応部と浮上分離装置及び脱水装置との関係を示す概要図である。
【図12】脱水装置の概要断面図で、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図13】濃縮ガイドの調整型の一部を示す分解斜視図である。
【図14】図12で示した脱水装置の搬送方向と直交する方向の断面図である。
【図15】第1のプレート群と第2のプレート群のプレート配置構造を示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図16】第2のプレート群を有する第2のプレートユニットの概要斜視図である。
【図17】濾過体を偏心カムにより平行運動させる機構を示す斜視図である。
【図18】第1のプレートユニットと第2のプレートユニットにおける偏心カムの位相差を示す図である。
【図19】プレートの平行運動による処理対象物の搬送原理を示す模式図である。
【図20】プレートの上下変位による処理対象物の絞り込み作用(脱水作用)を示す模式図である。
【図21】第2の実施形態に係る固液分離システム(塗装ブースシステム)の概要構成の斜視図である。
【図22】同塗装ブースシステムの概要断面図である。
【図23】従来における浮上分離方式の処理システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、図1乃至図20に基づいて第1の実施形態を説明する。図1は本実施形態に係る固液分離システムの概要構成図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
固液分離システム100は、処理対象物(原水)に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部102と、浮上分離装置104と、浮上分離装置104により回収された固形分を含む処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する第2の凝集反応部106と、処理対象物をフィルタ脱水方式により脱水しながら固液分離する脱水装置2とを処理工程方向に直列に接続・集約した構成となっている。
【0020】
凝集反応部102は、凝集反応槽102a内に原水を投入するための原水供給口110、高分子凝集剤を投入するための薬液投入口112、エアーを供給するためのエアー注入口(バルブ)114を有している。
凝集反応槽102aの内部には攪拌部材116が設けられ、上部には攪拌部材116を回転駆動する駆動源としての攪拌モータ118が設置されている。
凝集反応部102でフロック化された処理対象物は、浮上分離装置104との間に設けられた、互いに上下方向に入り込む仕切り壁120、122間に形成される狭隘通路124を通って浮上分離装置104内に流入する。
凝集反応部102の原水供給口110と反対側の側面には操作盤125が設けられている。
【0021】
浮上分離装置104の浮上分離槽104aは、凝集反応槽102aに比べて十分に広い浮上面積を有している。凝集反応部102から流入した処理対象物の高分子凝集剤が付着した固形物は高分子凝集剤の軽比重によって液面(水面)に浮上し、スカムを形成する。
浮上分離槽104aの上面側には、スカムを回収するための排出手段としてのスカム排出手段126が設けられている。
浮上分離槽104aの図中奥側の側面には、浮上分離槽104a内で分離された分離処理水を取水するための処理水ゲート127が設けられている。
【0022】
スカム排出手段126は、図2に示すように、スカムの排出方向(以下、「押し出し方向」ともいう)Fと直交する方向に延び、浮上分離槽104aの側板(厚みを省略)128、130間に軸受132を介して回転自在に支持され、排出方向である前後方向(処理工程方向)に間隔をおいて配置された前軸134及び後軸136と、これらの軸の両端側に固定された後述する偏心カムと、該偏心カムに支持されるカム受け部材137と、カム受け部材137に固定され、押し出し方向Fと直交する方向に延びる複数(ここでは3本)のスクレーパ142と、前軸134、後軸136の手前側端部にそれぞれ固定されたタイミングプーリ144と、これらのタイミングプーリ144間に掛け回されたタイミングベルト146と、前軸134を回転駆動する駆動源としてのモータ148とを有している。
カム受け部材137は、偏心カムに嵌合するカム受け本体138と、各前後のカム受け本体138間に固定された2つのブラケット140とから構成されている。
各ブラケット140にはスクレーパ142の取付位置を変更することができるように、取付用穴140aがスクレーパ142の個数よりも多く前後方向(排出方向)に略等間隔で形成されている。
【0023】
図3に示すように、偏心カム150は、その中心位置Nから偏心量δ(ここでは25mm)ずれたところに前軸134、後軸136を挿通する挿通穴150aが形成されている。挿通穴150aには軸方向に延びるキー溝150bが連設されており、さらにキー溝150bの上には軸方向と直交するネジ穴150cが連設されている。
すなわち、偏心カム150は前軸134及び後軸136にマシンキーで固定され、且つボルトでマシンキーを固定するようになっている。
図4に示すように、カム受け本体138は、偏心カム150との摺動性、耐久性及び軽量化を得るために、ポリアミド(PA)等のエンジニアプラスチックで形成されている。
カム受け本体138には偏心カム150に嵌合する収容穴(摺動穴)138aが形成されているとともに、該収容穴138aに段差部138bを介して前軸134、後軸136の挿通穴138cが形成されている。段差部138bは偏心カム150に対してカム受け本体138が図4(b)中左側へずれるのを阻止する機能を有している。
カム受け本体138の平板部には、ブラケット140を固定するための取付用穴138dが形成されている。
図5は、前軸134、後軸136、偏心カム150及びカム受け本体138を組み付けた状態の断面図を示している。
【0024】
図6は、図1の右側から見た概要断面図である。左右のカム受け本体138の内側にはL字形のアングル材であるブラケット140が、上記取付用穴138dを介してボルト・ナット152で固定されている。無論、ブラケット140はカム受け本体138の外側に固定してもよい。
ブラケット140の他方の片には、ボルト・ナット154でスクレーパ142が固定されている。スクレーパ142は、ブラケット140に固定されるL字形のスクレーパベース156と、このスクレーパベース156に図示しないボルト・ナットで着脱自在に固定されるゴム材からなるスクレーパ本体158とから構成されている。経時的にスクレーパ142の交換が必要になった場合には、スクレーパ本体158のみが交換される。図6では、偏心カム150、タイミングベルト146は省略している。スクレーパ142は一枚板で構成してもよい。
また、排出方向における2つのカム受け本体138とブラケット140とを一体に成形してもよい。
【0025】
カム受け本体138の軸方向のずれは図示しないC形等の止め輪で規制されている。止め輪はカム受け本体138の両側に設けているが、上記のように段差部138bがその機能を兼ねるので、図6中右側のみに止め輪を設けてもよい。
図7に示すように、ブラケット140におけるカム受け本体138の収容穴138aに対向する部分には、ブラケット140とカム受け本体138とを固定した後に偏心カム150の組み付けを許容する円弧状凹部140bが形成されている。符号140cはカム受け本体138の取付用穴138dに対応するボルト挿通穴を示している。
【0026】
図8及び図9に基づいて、スカム排出手段126のスカム押し出し動作を説明する。
前軸134と後軸136はタイミングプーリ144とタイミングベルト146により同期回転するため、前軸134と後軸136の回転に伴う各偏心カム150の同期回転により、カム受け本体138、ブラケット140及びスクレーパ142は前後及び上下に変位する平行運動(円運動)を行う。
図8(a)は、水面のスカム102に対してスクレーパ142が最も深く入り込んだ状態を示している。
図8(b)は、図8(a)の位置から偏心カム150が反時計回りに90°回転した状態を示している。スクレーパ142の下端は水面と略同一となっている。
図8(c)は、図8(b)の位置からさらに偏心カム150が反時計回りに90°回転した状態を示している。スクレーパ142の下端は水面から偏心量(δ=25mm)分水面から上方に離れる。
図8(d)は、図8(c)の位置からさらに偏心カム150が反時計回りに90°回転した状態を示している。スクレーパ142の下端は水面と略同一となっている。
【0027】
スクレーパ142の変位は、図9に示すように連続的な円運動となり、この繰り返しによりスカム102は押し出し方向Fへ押圧される。
従来のチェーン駆動方式に比べ、経時的に弛みを来たす構成ではないので、スカム102に対するスクレーパ142の掻き取り機能(押し出し機能)は長期に亘って均一に維持される。
偏心量δは、汚水の濃度などの特性によるが、10〜40mm程度が望ましい。
上記のように本実施形態では偏心量δを25mmとしている。水面に浮上したスカム202が浮上分離槽104aの入り口側からスカム排出口まで覆っていると、スカムを移動させる力がスカムを介して伝達されるために、25mm間隔でスクレーパ142を取り付ける必要はない。この観点から本実施形態ではスクレーパ142は3つしか設けていない。
本実施形態では各スクレーパ142は上記の平行運動により同時に水面のスカム202に作用するが、出口側に近いほど早く作用し、入り口に近い程僅かに遅れるように、スクレーパ142の垂直部の長さを設定するのが望ましい。
【0028】
図10に基づいて処理水ゲート127について説明する。
処理水ゲート127は、浮上分離槽104a内に中間水を取水可能に配置された取水口160と、取水した水を浮上分離槽104aの外部に導出するパイプ162と、浮上分離槽104aの側面に固定され、パイプ162に接続された処理水槽164と、処理水槽164の内部に設けられ、浮上分離槽104aと同じ水位を保つ高さの排出管166とを備えている。図示しないが排出管166の上部はゲート位置を調整可能となっている。
処理水槽164内で排出管166のゲート位置(上面)を越えたものがオーバーフローして排出管166内に入り、外部に処理水として排出される。
【0029】
図1に示すように、浮上分離装置104の後段に配置された第2の凝集反応部106は、凝集反応槽106a内に高分子凝集剤を投入するための薬液投入口170を有している。
凝集反応槽106aの内部には攪拌部材172が設けられ、上部には攪拌部材172を回転駆動する駆動源としての攪拌モータ174が設置されている。
図11に示すように、浮上分離装置104内でスカム排出手段126により押し出された(回収された)スカム202は、浮上分離装置104のスカム出口104bから凝集反応槽106aに入り、仕切壁176で底面側から移動して攪拌部材172により高分子凝集剤と共に攪拌される。
凝集反応槽106aでフロック化されたスカムを含む処理対象物180は、フィルタ脱水方式の脱水装置2に受け渡される。
【0030】
脱水装置2としては、従来より知られている種々のものを採用できる。例えば本出願人による特許第3905549号公報や、特許第4183740号公報記載のフィルタ脱水方式のものを採用することができる。
図12乃至図20を参照して脱水装置2を詳細に説明する。なお、各図において、適宜、部材の厚みを省略している。
図12に示すように、脱水装置2は、架台ケーシングとしての筐体12と、筐体12内に設けられ、搬送方向下流側(排出口側)が上り勾配となる濾過面を有する濾過体14と、筐体12の入口側(投入口側又は第2の凝集反応部106からの流入側)において濾過体14の上面に設けられた濃縮ガイド16と、排出口側(出口側)において汚泥を加圧する加圧手段(ウエート)18と、脱水処理された固形物(脱水ケーキ)を外部へ排出するシュータ20等を有している。
【0031】
濾過体14の処理領域は、主に重力を利用した濃縮作用で水分を除去する重力濃縮部と、加圧手段18により強制的に加圧して脱水する加圧脱水部とに分けられている。
濃縮ガイド16は、濾過体14の搬送方向と直交する幅方向に間隔をおいて設けられた一対のガイドプレート22、22からなる。各ガイドプレート22は、搬送方向に沿った平行部22aと、濾過面上の中央部に寄るように傾斜した傾斜部22bとからなる屈曲形状を有している。平行部22aの投入口側端が後述する第1のプレートユニット72の側板に固定されている。
濾過体14の投入口側に供給されたフロック化汚泥21は濃縮ガイド16により搬送方向下流側(排出口側)に向けて中央部に寄せられ、これにより重力濃縮部での濃縮作用が一層高められる。
【0032】
加圧手段18は、一端側(搬送方向上流側)を回転自在に支持され、なだらかな湾曲形状を有する加圧プレート24と、加圧プレート24の搬送方向下流側上面に固定された重り26とを有している。
濾過体14の濾過面と加圧プレート24との間の隙間は、搬送方向下流側に向かって楔状に漸減し、フロック化汚泥21の搬送が進行するに伴い、徐々に加圧が高まるようになっている。
濃縮ガイド16により中央部に寄せられたフロック化汚泥21は、加圧手段18により今度は逆に中央部からサイドへ延ばされる。これにより均一にプレスが掛かりやすくなる。このように、濃縮ガイド16と加圧手段18の連携により脱水効果を高めるようになっている。
【0033】
濃縮ガイド16によるガイド長さには供給されるフロック化汚泥21の汚泥濃度により適正な大きさがある。例えば図13に示すように、汚泥濃度の違いに応じて適正なガイド長さが設定できるように、調整可能な構成とすることもできる。
同図に示すように、上記第1のプレートユニット72の側板に固定される固定板21を別途設け、平行部22aに搬送方向に延びる長穴22a−1を1つ以上形成し、固定板21に一体に設けたネジ軸23を長穴22a−1に挿通してナット部材25で止めるようにする。
この場合、刻印等の目盛りMを平行部22aに形成し、フロック化汚泥21の種類に応じて固定板21のエッジ21aを対応する目盛りMに合わせて長さを調整すれば調整が容易となる。
フロック化汚泥21の種類(性状)によって加圧手段18による加圧力も適正な範囲がある。図示しないが、汚泥性状の違いに応じて適正な加圧力を設定できるように、重り26の重量を調整できるようになっている。重量調整は、例えば、重り26を分割構成としたり、水などの液体タンク構成として液量を調整すればよい。
【0034】
図14に示すように、濾過体14は、第1のプレート群28と第2のプレート群30が互いに櫛歯状に噛み合った構成を有しており、排出口側に設けられたモータ32の駆動力により互いに上下左右方向に変位する平行運動(後述)を行うようになっている。
図15に示すように、第1のプレート群28は、帯板状のAプレートをその厚み方向にスペーサ34を介して一定の間隔で多数枚積層配置し、投入口側と排出口側の端部に長ボルト35Aを挿通して一体に組み付けられている。
第2のプレート群30は、重力濃縮部に配置された第1の分割プレートとしての帯板状のBプレートと、加圧脱水部に配置された第2の分割プレートとしての帯板状のCプレートの2種類のプレートを有している。したがって、濾過体14は3種類のプレートから構成されている。
Bプレートは、Aプレートと同様にその厚み方向にスペーサ34を介して一定の間隔で多数枚積層配置され、投入口側と排出口側の端部に長ボルト35Bを挿通して一体に組み付けられている。
Cプレートは、その厚み方向にスペーサ36を介して一定の間隔で多数枚積層配置され、投入口側と排出口側の端部に長ボルト35Bを挿通して一体に組み付けられている。
【0035】
本実施形態における各部材の具体的な寸法は以下の通りである。
Aプレートの厚みtA:1.5mm
Bプレートの厚みtB:1.5mm
Cプレートの厚みtC:2.0mm
スペーサ34の長さw1:2.5mm
スペーサ36の長さw2:2.0mm
AプレートとBプレート間のギャップg1:0.5mm
AプレートとCプレート間のギャップg2:0.25mm
Cプレートの厚みを大きくすることにより、加圧脱水部におけるプレート間のギャップg2は、重力濃縮部におけるギャップg1の半分に狭められている。
BプレートとCプレート間の隙間g3は、処理対象物の搬送が長手方向で滑らかに進行するようにできるだけ小さい方がよい。
【0036】
図16に示すように、Bプレート群とCプレート群は、L字形の一対の側板38、39間に長ボルト35Bを支持することにより位置決めされ、これらは第2のプレートユニット40を構成している。符号38a、39aはボルト挿通孔を、42はナットを示している。第2のプレートユニット40の投入口側と排出口側は図示しない側板で塞がれている。
側板38の底面38aの投入口側と排出口側には、偏心カムホルダ44が固定されている。偏心カムホルダ44は、側板38の底面38bにボルト46とナット47(図14参照)により固定されるL字形のブラケット48と、ブラケット48に固定されたカム受け50を有している。
偏心カムホルダ44は側板38の排出口側にも同様に固定されており、側板39においても同様である。同図において、符号38c、39cはボルト挿通孔を示す。
第2のプレートユニット40における重力濃縮部と加圧脱水部との境界には仕切り板52が固定されており、重力濃縮部の処理水と加圧脱水部の処理水とを分けて回収できるようになっている。
側板38の底面38bと側板39の底面39bの間の隙間54は水分の落下用空間としてなる。
仕切り板52によって区画される領域に対応して、筐体12の底面部12aも仕切り板55で2つの領域に区画されており、各領域に設けられた排水口56、58から処理水を移送できるようになっている。
【0037】
図14に示すように、モータ32に接続された駆動軸60は筐体12の側板の外側に固定された軸受62、64に回転可能に支持されている。駆動軸60には4つの偏心カム66A、66B、66C、66Dが固定されており、内方2つの偏心カム66A、66Bはそれぞれ第2のプレートユニット40の偏心カムホルダ44のカム受け50に回転可能に収容されている。
第1のプレート群28は側板38、39よりも外側に位置するL字形の一対の側板68、70間に長ボルト35Aを支持することにより位置決めされ、これらは第1のプレートユニット72を構成している。
上記加圧手段18の加圧プレート24は側板68、70間に回動自在に支持されている。なお、第2のプレートユニット40と同様に、第1のプレートユニット72の投入口側と排出口側も図示しない側板で塞がれており、上記濃縮ガイド16の平行部22aは投入口側の側板に固定されている。
第2のプレートユニット40と同様に、側板68、70の底面には偏心カムホルダ44が固定されており、外方2つの偏心カム66C、66Dはこれらの偏心カムホルダ44のカム受け50に回転可能に収容されている。
【0038】
図17に示すように、筐体12の投入口側には従動軸74が駆動軸60と同様に支持されており、駆動軸60と同様に4つの偏心カム66A、66B、66C、66Dが固定されている。
駆動軸60と従動軸74のモータ32側には、それぞれチェーンスプロケット76、78が固定されており、これらにチェーン80が掛け回されてモータ32の駆動力が従動軸74に伝達されるようになっている。
図18に示すように、各偏心カム66はδの偏心量(ここでは5mm)を有し、Aプレートを有する第1のプレートユニット72に対応する偏心カム66C、66Dと、Bプレート及びCプレートを有する第2のプレートユニット40に対応する偏心カム66A、66Bは、180°の位相差をもつように設定されている。
すなわち、Aプレートと、Bプレート及びCプレートとの間のプレート上面(上縁)の上下変位が最大となるように設定されている。但し、この位相差に限定される趣旨ではない。
【0039】
上記のように第1のプレートユニット72と第2のプレートユニット40が偏心カム66A、66B、66C、66Dを介して支持されている構成により、Aプレートからなる第1のプレート群28と、Bプレート及びCプレートからなる第2のプレート群30は互いに180°の位相差をもって、上記偏心量による円運動に基づく上下・左右変位を伴う平行運動をする。
図19(a)は、Aプレート群のプレート上面で形成されるフィルタ面(濾過面)にフロック化汚泥21が載っている状態を示している。この状態で上記平行運動によりAプレート群のフィルタ面と、Bプレート群及びCプレート群のプレート上面で形成されるフィルタ面とが互いに上下に変位して入れ替わり、フロック化汚泥21は図19(b)に示すように、Bプレート群及びCプレート群のフィルタ面で持ち上げられて排出口側へ移動する。
【0040】
その後、図19(c)に示すように、Bプレート群及びCプレート群のフィルタ面上のフロック化汚泥21は、再び入れ替わることにより上昇するAプレート群のフィルタ面に受け渡される。
この動作が繰り返されることにより、フロック化汚泥21は徐々に排出口側へ搬送される。
第1のプレート群28と第2のプレート群30は互いに上下に変位するので、フロック化汚泥21を搬送する濾過面は偏心カム66の1回転毎に新しい濾過面として現れることになる。
図20に示すように、プレートが上昇してフロック化汚泥21を受け取るときに、プレートがフロック化汚泥21に突き上げるようにフロック化汚泥21を搾り込み、脱水が促される。したがって、第1のプレート群28と第2のプレート群30のプレート上面の高低差が最も大きいときに水分が落下する量が多い。
プレート上面の高低差が最も小さくなったときは、重力濃縮部では、上記プレートの搾り込み作用による脱水は期待できず、単に重力のみによる脱水作用となる。
【0041】
BプレートとAプレートの平行運動が行われる重力濃縮部では、フロック化汚泥21は主に重力を利用した濃縮作用で水分が除去される。換言すれば、単にザルの目から水が抜けるのと同様の脱水作用となる。
したがって、水の分離に伴う固形分の流出は極めて少ない処理水が得られる。
加圧脱水部では加圧手段18によりフロック化汚泥21は濾過体14の濾過面に加圧されるため、フロックに抱き込まれた水分の流出が促される。
加圧手段18は短い搬送距離で処理効率を上げるためには必要であるが、重力濃縮部でのプレート間のギャップがそのまま維持された場合、水分と共に多量の固形物が流出することになる。
一般に、汚水処理プラントの中では、脱水機から離脱した処理水は再び汚水処理の原水槽に戻されることが多いために、処理水に固形物が多く含まれることは汚水処理装置に余計な負担を与えることにつながり、好ましくない。
したがって、従来においては、固形分の流出が極めて少ない重力濃縮部と、強制加圧により固形分の流出が多い加圧脱水部での処理水は分けて回収した方が望ましく、加圧脱水部での処理水をそのまま汚水処理系(浄化槽)に排出することは困難となっていた。
【0042】
本実施形態に係る脱水装置2では、上述のように、加圧脱水部でのプレート間ギャップg2は0.25mmで、重力濃縮部のプレート間ギャップg1(0.5mm)の半分となっているため、加圧されても固形分の流出が抑制される。
加圧脱水部ではフロック化汚泥21の容積が次第に小さくなることと、フィルタ面のギャップ(プレート間ギャップ)の目幅が小さくなることで、重力濃縮部と同様のギャップを有している場合に比べて圧力が高まり、良好に脱水される。
圧力が高まるに伴い、僅かなギャップ(g2)から水分が除去され、脱水された固形物はシュータ20より落下する。
従来の平行プレート搬送方式では、搬送方向全体に亘ってプレート間ギャップ幅が同じであるため、脱水ケーキの含水率を低下させようとして加圧脱水部における加圧力を高めても、ギャップから漏れ出る固形物の量が増えるだけであった。
これに対し、本実施形態に係る脱水装置2では固形物の流出を抑制しながら脱水ケーキの含水率を良好に低下させることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、図16に示すように、重力濃縮部と加圧脱水部との境界に仕切り板52を設けて処理水を分けて回収するようにしているが、加圧脱水部での処理水も重力濃縮部での処理水と同様に直接浄化槽に回すことが可能となる。
フロック化汚泥21の種類、ギャップg2の大きさによっては、重力濃縮部と加圧脱水部での処理水を分けて回収する構成は不要である。
【0044】
加圧脱水部でのプレート間ギャップを重力濃縮部に比べて狭くする方法としては他に、投入口側から排出口側全体に亘る長さを有する一体物のプレートにおいて排出口側の厚みを大きくする方法、Cプレートを、図15の1つのCプレートに二点鎖線で例示するように、薄肉プレートCtを厚み方向に複数枚重ねて厚みを大きくする方法等を採用することができる。
本実施形態のように、大きな厚みを有する単板のCプレートをスペーサを介して厚み方向に積層する方式では、製造及び組み立てが容易で、上記他の方法に比べてコスト的に有利である。特に、一体物のプレートにおいて排出口側の厚みを大きくする方法との比較において、同じ材質の場合(例えばステンレス)、加工費用の観点から圧倒的に有利である。
一体物方式では例えば強化プラスチックによる樹脂成形方法により低コスト化を図ることもできる。
【0045】
厚みの異なるCプレート(単板)を複数種類用意し、処理対象物の種類(性状)に応じて組み替えてギャップg2を調整してもよい。このようにすれば、同じ装置で種々の処理対象物に対応できる。
この場合、薄肉プレートCtの枚数を調整する方法も有効である。
【0046】
上述のように、浮上分離装置104で分離したスカムを脱水装置2により脱水することで、従来の浮上分離方式のシステムに比べ脱水効率を大幅に向上させることができる。また、浮上分離装置104で分離したスカムを直接的に脱水装置2で脱水する構成としたので、システム構成の簡易化、コンパクト化を実現できる。この場合、浮上分離装置104はスカム排出手段として上記した平行運動方式に限定されず、従来のチェーン駆動方式を用いてもよい。
上記実施形態では、浮上分離装置104の前段に凝集反応部102を設ける構成としたが、これに代えて浮上分離装置104に気泡発生手段を設け、気泡の浮力のみで分離する構成としてもよい。
また、浮上分離装置104と脱水装置2との間に第2の凝集反応部106を設ける構成としたが、これを省いて浮上分離装置104で回収されたスカムを直接脱水装置2に投入する構成としてもよい。
【0047】
浮上分離装置104により回収されたスカムは、言い換えるとフロック集合体とも言える。汚水の性状にもよるが、スカムの状態によってはそのまま脱水工程まで耐えうる場合もあるからである。特に塗装などの汚水は離水性が高いためにこのような場合が多い。
但し、より低い含水率を期待する場合には、より強固なフロックを必要とする。その場合には上記実施形態のように、第2の凝集反応部106で反応させて脱水するのが望ましい。含水率が低いほど産業廃棄物の処分コストに反映されるからである。
【0048】
また、上記各システム構成において、浮上分離装置として平行運動をするスカム排出手段126を有するものを示したが、従来のチェーン駆動方式のものであっても、回収されたスカムを脱水装置へ直接に、あるいは凝集反応部を介して送り込むことにより、脱水効率を高めることができるとともに、システム構成の大幅なコンパクト化、省スペース化、低コスト化を実現できる。
【0049】
図21及び図22に基づいて第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略する。
上記実施形態では、脱水処理までを含めた固液分離システムについて説明したが、例えば塗装ブースの循環水槽容量が1000リットル〜5000リットル程度の小規模のブースの場合には、システム価格が低価格でより簡易的な処理(脱水処理まで行わない)を望む声が多く、設置スペースについても省スペース化の要望が強い。
本実施形態ではこのような要望に応えるべく、塗装ブースシステム(固液分離システム)の小型化、簡易処理化を目的としている。
【0050】
図21に示すように、本実施形態に係る固液分離システムとしての塗装ブースシステム300は、塗装ブース301と、この塗装ブース301の下方に配置された循環水槽302と、小型の浮上分離装置104とから構成されている。循環水槽302は塗装ブース301の底面積よりも広い面積を有しており、浮上分離装置104は循環水槽302の上面の空いたスペースを利用して設置されている。
一般に、塗装ブースの循環水槽は点検口を設けるために塗装ブースの底面積よりも広い面積を有しており、本実施形態ではこの点検口スペースを浮上分離装置104の設置スペースとして利用したものである。これにより、浮上分離装置104を設置するためのスペースを確保する必要がなく、省スペース化を図ることができる。
換言すれば、循環水槽302の空きスペースに合わせて浮上分離装置104の設計寸法を決定し、システムの小型化を図っている。
【0051】
上述のように、塗装ブース301内にはブース内で浮遊する固形物としての塗料ミストを捕獲するための水流カーテンが流れており、塗料ミストが混入した水は循環水槽302内を循環する。図21において、符号WLは、循環水槽302内の循環水の液面を示している。
図22に示すように、循環水槽302内の混入水は、揚水手段としてのエアーリフトポンプ305によって汲み上げられ、浮上分離槽104aに投入される。
浮上分離装置104を循環水槽302上の空きスペースに設置しているため、浮上分離装置104と循環水槽302との距離が非常に近く、この近接配置がエアーリフトポンプの使用を可能としている。
エアーリフトポンプ305は、上下方向に延び、下端が循環水槽302の水面下に位置する揚水管306と、揚水管306の下方に連通する送気管307と、送気管307の上端側(他端側)に接続されたエアー源308と、送気管307の途中に設けられたエアー開閉バルブ309等を有している。
揚水管306の上端近傍には略水平に延びる排出管310が設けられており、汲み上げられた混入水は排出管310を介して浮上分離槽104aに投入される。
【0052】
浮上分離槽104a内に投入された混入水は浮上分離槽104aで固形分(スカム;塗料固形物)を分離され、水面上に浮上したスカムは上記実施形態で説明したのと同様に、スクレーパ方式のスカム排出手段126により一方側へ寄せられて排出される。
浮上分離槽104aの一方側には排出シュート311が設けられており、寄せられたスカムはこの排出シュート311を介して排出され、排出シュート311の下方に置かれたスカム回収容器としての一斗缶312に収容される。
スカムを分離された処理水は、処理水槽164から循環水槽302内へ戻される。
図22において、符号313は塗装ブース301の排気ダクト(図21では省略)を示している。また、符号314は、塗装ブース301の外側面に設置された浮上分離槽104aを制御するための制御盤を示している。
【0053】
周知のように、エアーリフトポンプは通常の水車型の陸上ポンプに比べて構成が簡単でトラブルの発生が極めて少なく、消耗品もなく、動力を必要としないため、システムの小型化に加えてランニングコストの低減にも寄与する。
【符号の説明】
【0054】
2 固液分離装置
102 凝集反応部
104 浮上分離装置
106 第2の凝集反応部
126 排出手段としてのスカム排出手段
134、136 軸
137 カム受け部材
138 カム受け本体
140 ブラケット
142 スクレーパ
148 駆動源としてのモータ
150 偏心カム
301 塗装ブース
302 循環水槽
305 エアーリフトポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水(原水)に含まれる懸濁物質や繊維質等の固形分を凝集化による比重差や気泡付着による浮力を利用して水面に浮上させて回収する浮上分離装置、該浮上分離装置を備えた固液分離システムに関し、特に塗装ブース循環水の汚水処理に好適な固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浮上分離方式の汚水処理システムは、例えば図23に示すような構成となっている。図示しない反応槽で汚水に高分子凝集剤を加えて反応させ、反応後のフロック化汚水を浮上分離装置200の浮上分離槽201に投入する。浮上分離槽201内での滞留時間は汚水特性によって異なるが、大よそ5分から10分程度である。
投入されたフロック化汚水の固形物は凝集後の軽比重化によって液面に浮上し、スカム(scum;浮上した固形物の集合体)202を形成する。
スカム202は、浮上分離槽201の上部に設置された排出手段204により、フロック化汚水の投入側とは反対側へ押し出され、浮上分離槽201外へ排出されてスカムピット205に一旦溜められる。
スカム202の下方の分離処理水は、浮上分離槽201の中間部に設けられたパイプ206によって槽外へ導かれ、処理水排出ゲート207からオーバーフロー方式で排出される。
浮上分離槽201内の中間水を導出するため、分離処理水には殆ど固形物は含まれていない。
【0003】
スカムピット205に回収されたスカムは、一旦スカム貯槽208に貯留してから、次工程に送られる。浮上分離槽201で浮上しやすく物性を変化させているために、スカム貯槽208内でも再び分離作用が起こりやすい状態になる。分離が生じると、後工程の脱水機における脱水効率が低下する。
これを防止するために、スカム貯槽208内にパドル式の攪拌手段210を設けて攪拌するようになっている。スカム貯槽208が所定の水位に達すると、脱水工程が開始される。回収されたスカムは自然流下によりスカム貯槽208に溜められるが、スカム貯槽208からは水中ポンプ212などの手段で反応槽214へ移送される。
攪拌手段を有する反応槽214で再び高分子凝集剤を加えてフロック化処理し、脱水機216へ投入する。スカムピット205でのスカムの含水率は97〜99%程度であるが、脱水機216からは含水率が85%程度の脱水ケーキとして排出される。
【0004】
スカムを回収する排出手段204は、例えばプーリ218、220間にチェーン222を巻き付け、チェーン222に複数のスクレーパ224などを取り付けて回転駆動する構成となっている。
チェーン222の回動に伴ってスクレーパ224が移動してスカム202をスカムピット205側へ押し出すことによりスカム202が排出される。
一般的に、チェーン222に特殊なコマを取り付けて、そのコマにスクレーパ224を交換可能に取り付ける構造となっている。
【0005】
塗装ブースでは、塗装ロボットによってワークを塗装しているが、ワーク後方には循環水がカーテン状に流れている。塗着率は50%程度であり、塗料の多くが循環水に混入している。
循環水を回さないと、ブース内がミスト状の塗料で充満するため、循環水は不可欠となっている。
大量の塗装が行われるために、循環水の濃度は使用塗料の50%程度を含む高濃度となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−116390号公報
【特許文献2】特開2006−297239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなチェーン駆動方式の排出手段では、チェーンの自重に加えてコマとスクレーパの重量が加わるために、浮上分離槽の幅が大きくなるほど、すなわちプーリとプーリの軸間距離が長くなるほど、経時的な加重負荷によってチェーンに弛みが発生することを避けられない。
弛みはプーリに近いほど小さく、プーリから離れる中央部ほど大きくなる。このため、浮上分離槽の液面に浮上したスカムの深さに対して、全てのスクレーパが均一に作用せず、結果的に攪拌してしまうなど良好な分離処理水を得られない場合があった。
また、スクレーパが予定水深より入り込むことで、駆動装置の負荷が大きくなり、動力アップ(ひいては電力消費量の増加)にもつながっていた。
さらに、このようなチェーンの弛みによる不具合を解消するためには頻繁なメンテナンスも不可欠であった。
【0008】
一方、処理システム全体から観察すると、上記のように従来においては回収したスカムを一旦スカム貯槽に溜める構成となっているため、スカム貯槽内での再分離を回避するために、攪拌手段が必要となり、ポンプ移送構成も必要となるなど、システムの設備構成の大型化、設置スペースの広面積化を避けられなかった。
また、攪拌手段やポンプ移送設備を設けることにより、脱水に必要な状態に十分にフロック化処理されていたスカムが再分解され、脱水するために新たに高分子凝集剤を加える凝集反応部の設置が不可欠となる。
【0009】
塗装分野において、循環水の濃度が高くなると、循環水が閉塞してブースが停止したり、悪臭が発生するなどの環境面の問題が生じる。循環水を取り替えれば問題はないが、産業廃棄物となるため多大な費用が掛かり、できるだけ長く循環水を使いたいとというニーズが高まっている。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたもので、スカムを回収するための排出手段の性能を長期に亘って良好に維持することができ、安定した分離処理機能が得られるとともに、メンテナンス頻度を大幅に低減できてランニングコストの低減にも寄与できる浮上分離装置の提供を、その目的とする。
また、本発明は、大幅な省スペース化、大幅なコスト削減を実現できる固液分離システムの提供を、その目的とする。
また、本発明は塗装ブースにおける循環水の長期的な使用を可能とするに好適な固液分離システムの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、槽内の液面に浮上した固形分を、槽の一端側から他端側へ押し出して槽外へ排出する排出手段を有する浮上分離装置において、前記排出手段は、排出方向と直交する方向に延び固形分を掻き取るように該排出方向へ押し込むスクレーパを備え、且つ、前記スクレーパを前記排出方向である前後方向と上下方向に平行運動させる構成を有していることを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の浮上分離装置において、前記排出手段は、前記排出方向と直交する方向に延びる軸と、該軸に固定された偏心カムと、前記軸を回転駆動する駆動源と、前記偏心カムに支持され、該偏心カムの回転に伴って前記平行運動をするカム受け部材とを有し、前記スクレーパは前記カム受け部材に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の浮上分離装置において、前記カム受け部材は、前記偏心カムに嵌合するカム受け本体と、該カム受け本体に固定され、前記排出方向に延びるブラケットとを有し、前記スクレーパは前記ブラケットに取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の浮上分離装置において、前記軸は前記排出方向に間隔をおいて複数設けられているとともに同期回転するように連結され、前記偏心カム及び前記カム受け本体は前記各軸に前記排出方向と直交する方向に間隔をおいてそれぞれ複数設けられ、前記ブラケットは前記排出方向に位置する複数の前記カム受け本体間に固定され、複数のスクレーパが複数のブラケット間に取り付けられていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、固液分離システムにおいて、浮上分離装置と、前記浮上分離装置により回収された固形分を含む処理対象物を脱水しながら固液分離する脱水装置とを有し、前記浮上分離装置は請求項1〜4のいずれかに記載の浮上分離装置であることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の固液分離システムにおいて、前記浮上分離装置の前段に、処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有し、前記凝集反応部にて凝集反応化された処理対象物を前記浮上分離装置に投入することを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項5又は6記載の固液分離システムにおいて、前記浮上分離装置と前記脱水装置との間に、回収された固形分を含む処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する第2の凝集反応部を有していることを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、槽内の液面に固形分を浮上させて回収する浮上分離装置と、該浮上分離装置の後段に設けられ、前記浮上分離装置で回収された固形分を含む処理対象物を脱水しながら固液分離する脱水装置とを有することを特徴とする。
請求項9記載の発明は、請求項8記載の固液分離システムにおいて、前記浮上分離装置の前段に、処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有し、前記凝集反応部にて凝集反応化された処理対象物を前記浮上分離装置に投入することを特徴とする。
請求項10記載の発明は、請求項8又は9記載の固液分離システムにおいて、前記浮上分離装置と前記脱水装置との間に、回収された固形分を含む処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有していることを特徴とする。
【0016】
請求項11記載の発明は、塗装ブースと、該塗装ブースの下方に設けられ、塗料ミストが混入した水が循環する循環水槽と、該循環水槽から汲み上げられた循環水の固形分を分離・排出する浮上分離装置とを有し、前記浮上分離装置は請求項1〜4のいずれかに記載の浮上分離装置であることを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項11記載の固液分離システムにおいて、前記循環水槽が前記塗装ブースの底面積よりも広い面積を有し、前記浮上分離装置が前記循環水槽の上面に設置されていることを特徴とする。
請求項13記載の発明は、請求項11又は12記載の固液分離システムにおいて、前記循環水槽からの循環水の汲み上げがエアーリフトポンプによりなされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、浮上分離したスカムを平行運動によるスクレーパで掻き取る構成を有しているので、従来のチェーン駆動方式に比べて経時的な弛みが殆ど無く、スカム排出性能を長期に亘って均一に維持することができる。これにより、安定した分離処理機能が得られるとともに、メンテナンス頻度を大幅に低減できてランニングコストの低減にも寄与できる。
また、本発明によれば、浮上分離装置で回収されたスカムを脱水装置へ直接脱水することにより、ポンプ移送設備、凝集反応部や高分子注入設備などが不要となり、大幅なイニシャルコストの削減を実現できる。
また、本発明によれば、浮上分離装置で回収されたスカムを凝集反応部に投入して再度フロック化してから脱水装置で脱水することにより、ポンプ移送設備などを不要にできてコンパクト化を実現できるとともに、脱水効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る固液分離システムの概要断面図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】浮上分離装置における排出手段の概要平面図である。
【図3】偏心カムを示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】カム受け部材のカム受け本体を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】偏心カム、カム受け本体及び軸を組み付けた状態の概要断面図である。
【図6】図1の右側から見た概要断面図である。
【図7】ブラケットとスクレーパとの取付構成を示す要部斜視図である。
【図8】スクレーパの平行運動の工程を示す図である。
【図9】スクレーパの平行運動(円運動)における変位状態を示す図である。
【図10】浮上分離装置における中間水の取水構成を示す図である。
【図11】第2の凝集反応部と浮上分離装置及び脱水装置との関係を示す概要図である。
【図12】脱水装置の概要断面図で、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
【図13】濃縮ガイドの調整型の一部を示す分解斜視図である。
【図14】図12で示した脱水装置の搬送方向と直交する方向の断面図である。
【図15】第1のプレート群と第2のプレート群のプレート配置構造を示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図16】第2のプレート群を有する第2のプレートユニットの概要斜視図である。
【図17】濾過体を偏心カムにより平行運動させる機構を示す斜視図である。
【図18】第1のプレートユニットと第2のプレートユニットにおける偏心カムの位相差を示す図である。
【図19】プレートの平行運動による処理対象物の搬送原理を示す模式図である。
【図20】プレートの上下変位による処理対象物の絞り込み作用(脱水作用)を示す模式図である。
【図21】第2の実施形態に係る固液分離システム(塗装ブースシステム)の概要構成の斜視図である。
【図22】同塗装ブースシステムの概要断面図である。
【図23】従来における浮上分離方式の処理システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
まず、図1乃至図20に基づいて第1の実施形態を説明する。図1は本実施形態に係る固液分離システムの概要構成図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
固液分離システム100は、処理対象物(原水)に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部102と、浮上分離装置104と、浮上分離装置104により回収された固形分を含む処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する第2の凝集反応部106と、処理対象物をフィルタ脱水方式により脱水しながら固液分離する脱水装置2とを処理工程方向に直列に接続・集約した構成となっている。
【0020】
凝集反応部102は、凝集反応槽102a内に原水を投入するための原水供給口110、高分子凝集剤を投入するための薬液投入口112、エアーを供給するためのエアー注入口(バルブ)114を有している。
凝集反応槽102aの内部には攪拌部材116が設けられ、上部には攪拌部材116を回転駆動する駆動源としての攪拌モータ118が設置されている。
凝集反応部102でフロック化された処理対象物は、浮上分離装置104との間に設けられた、互いに上下方向に入り込む仕切り壁120、122間に形成される狭隘通路124を通って浮上分離装置104内に流入する。
凝集反応部102の原水供給口110と反対側の側面には操作盤125が設けられている。
【0021】
浮上分離装置104の浮上分離槽104aは、凝集反応槽102aに比べて十分に広い浮上面積を有している。凝集反応部102から流入した処理対象物の高分子凝集剤が付着した固形物は高分子凝集剤の軽比重によって液面(水面)に浮上し、スカムを形成する。
浮上分離槽104aの上面側には、スカムを回収するための排出手段としてのスカム排出手段126が設けられている。
浮上分離槽104aの図中奥側の側面には、浮上分離槽104a内で分離された分離処理水を取水するための処理水ゲート127が設けられている。
【0022】
スカム排出手段126は、図2に示すように、スカムの排出方向(以下、「押し出し方向」ともいう)Fと直交する方向に延び、浮上分離槽104aの側板(厚みを省略)128、130間に軸受132を介して回転自在に支持され、排出方向である前後方向(処理工程方向)に間隔をおいて配置された前軸134及び後軸136と、これらの軸の両端側に固定された後述する偏心カムと、該偏心カムに支持されるカム受け部材137と、カム受け部材137に固定され、押し出し方向Fと直交する方向に延びる複数(ここでは3本)のスクレーパ142と、前軸134、後軸136の手前側端部にそれぞれ固定されたタイミングプーリ144と、これらのタイミングプーリ144間に掛け回されたタイミングベルト146と、前軸134を回転駆動する駆動源としてのモータ148とを有している。
カム受け部材137は、偏心カムに嵌合するカム受け本体138と、各前後のカム受け本体138間に固定された2つのブラケット140とから構成されている。
各ブラケット140にはスクレーパ142の取付位置を変更することができるように、取付用穴140aがスクレーパ142の個数よりも多く前後方向(排出方向)に略等間隔で形成されている。
【0023】
図3に示すように、偏心カム150は、その中心位置Nから偏心量δ(ここでは25mm)ずれたところに前軸134、後軸136を挿通する挿通穴150aが形成されている。挿通穴150aには軸方向に延びるキー溝150bが連設されており、さらにキー溝150bの上には軸方向と直交するネジ穴150cが連設されている。
すなわち、偏心カム150は前軸134及び後軸136にマシンキーで固定され、且つボルトでマシンキーを固定するようになっている。
図4に示すように、カム受け本体138は、偏心カム150との摺動性、耐久性及び軽量化を得るために、ポリアミド(PA)等のエンジニアプラスチックで形成されている。
カム受け本体138には偏心カム150に嵌合する収容穴(摺動穴)138aが形成されているとともに、該収容穴138aに段差部138bを介して前軸134、後軸136の挿通穴138cが形成されている。段差部138bは偏心カム150に対してカム受け本体138が図4(b)中左側へずれるのを阻止する機能を有している。
カム受け本体138の平板部には、ブラケット140を固定するための取付用穴138dが形成されている。
図5は、前軸134、後軸136、偏心カム150及びカム受け本体138を組み付けた状態の断面図を示している。
【0024】
図6は、図1の右側から見た概要断面図である。左右のカム受け本体138の内側にはL字形のアングル材であるブラケット140が、上記取付用穴138dを介してボルト・ナット152で固定されている。無論、ブラケット140はカム受け本体138の外側に固定してもよい。
ブラケット140の他方の片には、ボルト・ナット154でスクレーパ142が固定されている。スクレーパ142は、ブラケット140に固定されるL字形のスクレーパベース156と、このスクレーパベース156に図示しないボルト・ナットで着脱自在に固定されるゴム材からなるスクレーパ本体158とから構成されている。経時的にスクレーパ142の交換が必要になった場合には、スクレーパ本体158のみが交換される。図6では、偏心カム150、タイミングベルト146は省略している。スクレーパ142は一枚板で構成してもよい。
また、排出方向における2つのカム受け本体138とブラケット140とを一体に成形してもよい。
【0025】
カム受け本体138の軸方向のずれは図示しないC形等の止め輪で規制されている。止め輪はカム受け本体138の両側に設けているが、上記のように段差部138bがその機能を兼ねるので、図6中右側のみに止め輪を設けてもよい。
図7に示すように、ブラケット140におけるカム受け本体138の収容穴138aに対向する部分には、ブラケット140とカム受け本体138とを固定した後に偏心カム150の組み付けを許容する円弧状凹部140bが形成されている。符号140cはカム受け本体138の取付用穴138dに対応するボルト挿通穴を示している。
【0026】
図8及び図9に基づいて、スカム排出手段126のスカム押し出し動作を説明する。
前軸134と後軸136はタイミングプーリ144とタイミングベルト146により同期回転するため、前軸134と後軸136の回転に伴う各偏心カム150の同期回転により、カム受け本体138、ブラケット140及びスクレーパ142は前後及び上下に変位する平行運動(円運動)を行う。
図8(a)は、水面のスカム102に対してスクレーパ142が最も深く入り込んだ状態を示している。
図8(b)は、図8(a)の位置から偏心カム150が反時計回りに90°回転した状態を示している。スクレーパ142の下端は水面と略同一となっている。
図8(c)は、図8(b)の位置からさらに偏心カム150が反時計回りに90°回転した状態を示している。スクレーパ142の下端は水面から偏心量(δ=25mm)分水面から上方に離れる。
図8(d)は、図8(c)の位置からさらに偏心カム150が反時計回りに90°回転した状態を示している。スクレーパ142の下端は水面と略同一となっている。
【0027】
スクレーパ142の変位は、図9に示すように連続的な円運動となり、この繰り返しによりスカム102は押し出し方向Fへ押圧される。
従来のチェーン駆動方式に比べ、経時的に弛みを来たす構成ではないので、スカム102に対するスクレーパ142の掻き取り機能(押し出し機能)は長期に亘って均一に維持される。
偏心量δは、汚水の濃度などの特性によるが、10〜40mm程度が望ましい。
上記のように本実施形態では偏心量δを25mmとしている。水面に浮上したスカム202が浮上分離槽104aの入り口側からスカム排出口まで覆っていると、スカムを移動させる力がスカムを介して伝達されるために、25mm間隔でスクレーパ142を取り付ける必要はない。この観点から本実施形態ではスクレーパ142は3つしか設けていない。
本実施形態では各スクレーパ142は上記の平行運動により同時に水面のスカム202に作用するが、出口側に近いほど早く作用し、入り口に近い程僅かに遅れるように、スクレーパ142の垂直部の長さを設定するのが望ましい。
【0028】
図10に基づいて処理水ゲート127について説明する。
処理水ゲート127は、浮上分離槽104a内に中間水を取水可能に配置された取水口160と、取水した水を浮上分離槽104aの外部に導出するパイプ162と、浮上分離槽104aの側面に固定され、パイプ162に接続された処理水槽164と、処理水槽164の内部に設けられ、浮上分離槽104aと同じ水位を保つ高さの排出管166とを備えている。図示しないが排出管166の上部はゲート位置を調整可能となっている。
処理水槽164内で排出管166のゲート位置(上面)を越えたものがオーバーフローして排出管166内に入り、外部に処理水として排出される。
【0029】
図1に示すように、浮上分離装置104の後段に配置された第2の凝集反応部106は、凝集反応槽106a内に高分子凝集剤を投入するための薬液投入口170を有している。
凝集反応槽106aの内部には攪拌部材172が設けられ、上部には攪拌部材172を回転駆動する駆動源としての攪拌モータ174が設置されている。
図11に示すように、浮上分離装置104内でスカム排出手段126により押し出された(回収された)スカム202は、浮上分離装置104のスカム出口104bから凝集反応槽106aに入り、仕切壁176で底面側から移動して攪拌部材172により高分子凝集剤と共に攪拌される。
凝集反応槽106aでフロック化されたスカムを含む処理対象物180は、フィルタ脱水方式の脱水装置2に受け渡される。
【0030】
脱水装置2としては、従来より知られている種々のものを採用できる。例えば本出願人による特許第3905549号公報や、特許第4183740号公報記載のフィルタ脱水方式のものを採用することができる。
図12乃至図20を参照して脱水装置2を詳細に説明する。なお、各図において、適宜、部材の厚みを省略している。
図12に示すように、脱水装置2は、架台ケーシングとしての筐体12と、筐体12内に設けられ、搬送方向下流側(排出口側)が上り勾配となる濾過面を有する濾過体14と、筐体12の入口側(投入口側又は第2の凝集反応部106からの流入側)において濾過体14の上面に設けられた濃縮ガイド16と、排出口側(出口側)において汚泥を加圧する加圧手段(ウエート)18と、脱水処理された固形物(脱水ケーキ)を外部へ排出するシュータ20等を有している。
【0031】
濾過体14の処理領域は、主に重力を利用した濃縮作用で水分を除去する重力濃縮部と、加圧手段18により強制的に加圧して脱水する加圧脱水部とに分けられている。
濃縮ガイド16は、濾過体14の搬送方向と直交する幅方向に間隔をおいて設けられた一対のガイドプレート22、22からなる。各ガイドプレート22は、搬送方向に沿った平行部22aと、濾過面上の中央部に寄るように傾斜した傾斜部22bとからなる屈曲形状を有している。平行部22aの投入口側端が後述する第1のプレートユニット72の側板に固定されている。
濾過体14の投入口側に供給されたフロック化汚泥21は濃縮ガイド16により搬送方向下流側(排出口側)に向けて中央部に寄せられ、これにより重力濃縮部での濃縮作用が一層高められる。
【0032】
加圧手段18は、一端側(搬送方向上流側)を回転自在に支持され、なだらかな湾曲形状を有する加圧プレート24と、加圧プレート24の搬送方向下流側上面に固定された重り26とを有している。
濾過体14の濾過面と加圧プレート24との間の隙間は、搬送方向下流側に向かって楔状に漸減し、フロック化汚泥21の搬送が進行するに伴い、徐々に加圧が高まるようになっている。
濃縮ガイド16により中央部に寄せられたフロック化汚泥21は、加圧手段18により今度は逆に中央部からサイドへ延ばされる。これにより均一にプレスが掛かりやすくなる。このように、濃縮ガイド16と加圧手段18の連携により脱水効果を高めるようになっている。
【0033】
濃縮ガイド16によるガイド長さには供給されるフロック化汚泥21の汚泥濃度により適正な大きさがある。例えば図13に示すように、汚泥濃度の違いに応じて適正なガイド長さが設定できるように、調整可能な構成とすることもできる。
同図に示すように、上記第1のプレートユニット72の側板に固定される固定板21を別途設け、平行部22aに搬送方向に延びる長穴22a−1を1つ以上形成し、固定板21に一体に設けたネジ軸23を長穴22a−1に挿通してナット部材25で止めるようにする。
この場合、刻印等の目盛りMを平行部22aに形成し、フロック化汚泥21の種類に応じて固定板21のエッジ21aを対応する目盛りMに合わせて長さを調整すれば調整が容易となる。
フロック化汚泥21の種類(性状)によって加圧手段18による加圧力も適正な範囲がある。図示しないが、汚泥性状の違いに応じて適正な加圧力を設定できるように、重り26の重量を調整できるようになっている。重量調整は、例えば、重り26を分割構成としたり、水などの液体タンク構成として液量を調整すればよい。
【0034】
図14に示すように、濾過体14は、第1のプレート群28と第2のプレート群30が互いに櫛歯状に噛み合った構成を有しており、排出口側に設けられたモータ32の駆動力により互いに上下左右方向に変位する平行運動(後述)を行うようになっている。
図15に示すように、第1のプレート群28は、帯板状のAプレートをその厚み方向にスペーサ34を介して一定の間隔で多数枚積層配置し、投入口側と排出口側の端部に長ボルト35Aを挿通して一体に組み付けられている。
第2のプレート群30は、重力濃縮部に配置された第1の分割プレートとしての帯板状のBプレートと、加圧脱水部に配置された第2の分割プレートとしての帯板状のCプレートの2種類のプレートを有している。したがって、濾過体14は3種類のプレートから構成されている。
Bプレートは、Aプレートと同様にその厚み方向にスペーサ34を介して一定の間隔で多数枚積層配置され、投入口側と排出口側の端部に長ボルト35Bを挿通して一体に組み付けられている。
Cプレートは、その厚み方向にスペーサ36を介して一定の間隔で多数枚積層配置され、投入口側と排出口側の端部に長ボルト35Bを挿通して一体に組み付けられている。
【0035】
本実施形態における各部材の具体的な寸法は以下の通りである。
Aプレートの厚みtA:1.5mm
Bプレートの厚みtB:1.5mm
Cプレートの厚みtC:2.0mm
スペーサ34の長さw1:2.5mm
スペーサ36の長さw2:2.0mm
AプレートとBプレート間のギャップg1:0.5mm
AプレートとCプレート間のギャップg2:0.25mm
Cプレートの厚みを大きくすることにより、加圧脱水部におけるプレート間のギャップg2は、重力濃縮部におけるギャップg1の半分に狭められている。
BプレートとCプレート間の隙間g3は、処理対象物の搬送が長手方向で滑らかに進行するようにできるだけ小さい方がよい。
【0036】
図16に示すように、Bプレート群とCプレート群は、L字形の一対の側板38、39間に長ボルト35Bを支持することにより位置決めされ、これらは第2のプレートユニット40を構成している。符号38a、39aはボルト挿通孔を、42はナットを示している。第2のプレートユニット40の投入口側と排出口側は図示しない側板で塞がれている。
側板38の底面38aの投入口側と排出口側には、偏心カムホルダ44が固定されている。偏心カムホルダ44は、側板38の底面38bにボルト46とナット47(図14参照)により固定されるL字形のブラケット48と、ブラケット48に固定されたカム受け50を有している。
偏心カムホルダ44は側板38の排出口側にも同様に固定されており、側板39においても同様である。同図において、符号38c、39cはボルト挿通孔を示す。
第2のプレートユニット40における重力濃縮部と加圧脱水部との境界には仕切り板52が固定されており、重力濃縮部の処理水と加圧脱水部の処理水とを分けて回収できるようになっている。
側板38の底面38bと側板39の底面39bの間の隙間54は水分の落下用空間としてなる。
仕切り板52によって区画される領域に対応して、筐体12の底面部12aも仕切り板55で2つの領域に区画されており、各領域に設けられた排水口56、58から処理水を移送できるようになっている。
【0037】
図14に示すように、モータ32に接続された駆動軸60は筐体12の側板の外側に固定された軸受62、64に回転可能に支持されている。駆動軸60には4つの偏心カム66A、66B、66C、66Dが固定されており、内方2つの偏心カム66A、66Bはそれぞれ第2のプレートユニット40の偏心カムホルダ44のカム受け50に回転可能に収容されている。
第1のプレート群28は側板38、39よりも外側に位置するL字形の一対の側板68、70間に長ボルト35Aを支持することにより位置決めされ、これらは第1のプレートユニット72を構成している。
上記加圧手段18の加圧プレート24は側板68、70間に回動自在に支持されている。なお、第2のプレートユニット40と同様に、第1のプレートユニット72の投入口側と排出口側も図示しない側板で塞がれており、上記濃縮ガイド16の平行部22aは投入口側の側板に固定されている。
第2のプレートユニット40と同様に、側板68、70の底面には偏心カムホルダ44が固定されており、外方2つの偏心カム66C、66Dはこれらの偏心カムホルダ44のカム受け50に回転可能に収容されている。
【0038】
図17に示すように、筐体12の投入口側には従動軸74が駆動軸60と同様に支持されており、駆動軸60と同様に4つの偏心カム66A、66B、66C、66Dが固定されている。
駆動軸60と従動軸74のモータ32側には、それぞれチェーンスプロケット76、78が固定されており、これらにチェーン80が掛け回されてモータ32の駆動力が従動軸74に伝達されるようになっている。
図18に示すように、各偏心カム66はδの偏心量(ここでは5mm)を有し、Aプレートを有する第1のプレートユニット72に対応する偏心カム66C、66Dと、Bプレート及びCプレートを有する第2のプレートユニット40に対応する偏心カム66A、66Bは、180°の位相差をもつように設定されている。
すなわち、Aプレートと、Bプレート及びCプレートとの間のプレート上面(上縁)の上下変位が最大となるように設定されている。但し、この位相差に限定される趣旨ではない。
【0039】
上記のように第1のプレートユニット72と第2のプレートユニット40が偏心カム66A、66B、66C、66Dを介して支持されている構成により、Aプレートからなる第1のプレート群28と、Bプレート及びCプレートからなる第2のプレート群30は互いに180°の位相差をもって、上記偏心量による円運動に基づく上下・左右変位を伴う平行運動をする。
図19(a)は、Aプレート群のプレート上面で形成されるフィルタ面(濾過面)にフロック化汚泥21が載っている状態を示している。この状態で上記平行運動によりAプレート群のフィルタ面と、Bプレート群及びCプレート群のプレート上面で形成されるフィルタ面とが互いに上下に変位して入れ替わり、フロック化汚泥21は図19(b)に示すように、Bプレート群及びCプレート群のフィルタ面で持ち上げられて排出口側へ移動する。
【0040】
その後、図19(c)に示すように、Bプレート群及びCプレート群のフィルタ面上のフロック化汚泥21は、再び入れ替わることにより上昇するAプレート群のフィルタ面に受け渡される。
この動作が繰り返されることにより、フロック化汚泥21は徐々に排出口側へ搬送される。
第1のプレート群28と第2のプレート群30は互いに上下に変位するので、フロック化汚泥21を搬送する濾過面は偏心カム66の1回転毎に新しい濾過面として現れることになる。
図20に示すように、プレートが上昇してフロック化汚泥21を受け取るときに、プレートがフロック化汚泥21に突き上げるようにフロック化汚泥21を搾り込み、脱水が促される。したがって、第1のプレート群28と第2のプレート群30のプレート上面の高低差が最も大きいときに水分が落下する量が多い。
プレート上面の高低差が最も小さくなったときは、重力濃縮部では、上記プレートの搾り込み作用による脱水は期待できず、単に重力のみによる脱水作用となる。
【0041】
BプレートとAプレートの平行運動が行われる重力濃縮部では、フロック化汚泥21は主に重力を利用した濃縮作用で水分が除去される。換言すれば、単にザルの目から水が抜けるのと同様の脱水作用となる。
したがって、水の分離に伴う固形分の流出は極めて少ない処理水が得られる。
加圧脱水部では加圧手段18によりフロック化汚泥21は濾過体14の濾過面に加圧されるため、フロックに抱き込まれた水分の流出が促される。
加圧手段18は短い搬送距離で処理効率を上げるためには必要であるが、重力濃縮部でのプレート間のギャップがそのまま維持された場合、水分と共に多量の固形物が流出することになる。
一般に、汚水処理プラントの中では、脱水機から離脱した処理水は再び汚水処理の原水槽に戻されることが多いために、処理水に固形物が多く含まれることは汚水処理装置に余計な負担を与えることにつながり、好ましくない。
したがって、従来においては、固形分の流出が極めて少ない重力濃縮部と、強制加圧により固形分の流出が多い加圧脱水部での処理水は分けて回収した方が望ましく、加圧脱水部での処理水をそのまま汚水処理系(浄化槽)に排出することは困難となっていた。
【0042】
本実施形態に係る脱水装置2では、上述のように、加圧脱水部でのプレート間ギャップg2は0.25mmで、重力濃縮部のプレート間ギャップg1(0.5mm)の半分となっているため、加圧されても固形分の流出が抑制される。
加圧脱水部ではフロック化汚泥21の容積が次第に小さくなることと、フィルタ面のギャップ(プレート間ギャップ)の目幅が小さくなることで、重力濃縮部と同様のギャップを有している場合に比べて圧力が高まり、良好に脱水される。
圧力が高まるに伴い、僅かなギャップ(g2)から水分が除去され、脱水された固形物はシュータ20より落下する。
従来の平行プレート搬送方式では、搬送方向全体に亘ってプレート間ギャップ幅が同じであるため、脱水ケーキの含水率を低下させようとして加圧脱水部における加圧力を高めても、ギャップから漏れ出る固形物の量が増えるだけであった。
これに対し、本実施形態に係る脱水装置2では固形物の流出を抑制しながら脱水ケーキの含水率を良好に低下させることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、図16に示すように、重力濃縮部と加圧脱水部との境界に仕切り板52を設けて処理水を分けて回収するようにしているが、加圧脱水部での処理水も重力濃縮部での処理水と同様に直接浄化槽に回すことが可能となる。
フロック化汚泥21の種類、ギャップg2の大きさによっては、重力濃縮部と加圧脱水部での処理水を分けて回収する構成は不要である。
【0044】
加圧脱水部でのプレート間ギャップを重力濃縮部に比べて狭くする方法としては他に、投入口側から排出口側全体に亘る長さを有する一体物のプレートにおいて排出口側の厚みを大きくする方法、Cプレートを、図15の1つのCプレートに二点鎖線で例示するように、薄肉プレートCtを厚み方向に複数枚重ねて厚みを大きくする方法等を採用することができる。
本実施形態のように、大きな厚みを有する単板のCプレートをスペーサを介して厚み方向に積層する方式では、製造及び組み立てが容易で、上記他の方法に比べてコスト的に有利である。特に、一体物のプレートにおいて排出口側の厚みを大きくする方法との比較において、同じ材質の場合(例えばステンレス)、加工費用の観点から圧倒的に有利である。
一体物方式では例えば強化プラスチックによる樹脂成形方法により低コスト化を図ることもできる。
【0045】
厚みの異なるCプレート(単板)を複数種類用意し、処理対象物の種類(性状)に応じて組み替えてギャップg2を調整してもよい。このようにすれば、同じ装置で種々の処理対象物に対応できる。
この場合、薄肉プレートCtの枚数を調整する方法も有効である。
【0046】
上述のように、浮上分離装置104で分離したスカムを脱水装置2により脱水することで、従来の浮上分離方式のシステムに比べ脱水効率を大幅に向上させることができる。また、浮上分離装置104で分離したスカムを直接的に脱水装置2で脱水する構成としたので、システム構成の簡易化、コンパクト化を実現できる。この場合、浮上分離装置104はスカム排出手段として上記した平行運動方式に限定されず、従来のチェーン駆動方式を用いてもよい。
上記実施形態では、浮上分離装置104の前段に凝集反応部102を設ける構成としたが、これに代えて浮上分離装置104に気泡発生手段を設け、気泡の浮力のみで分離する構成としてもよい。
また、浮上分離装置104と脱水装置2との間に第2の凝集反応部106を設ける構成としたが、これを省いて浮上分離装置104で回収されたスカムを直接脱水装置2に投入する構成としてもよい。
【0047】
浮上分離装置104により回収されたスカムは、言い換えるとフロック集合体とも言える。汚水の性状にもよるが、スカムの状態によってはそのまま脱水工程まで耐えうる場合もあるからである。特に塗装などの汚水は離水性が高いためにこのような場合が多い。
但し、より低い含水率を期待する場合には、より強固なフロックを必要とする。その場合には上記実施形態のように、第2の凝集反応部106で反応させて脱水するのが望ましい。含水率が低いほど産業廃棄物の処分コストに反映されるからである。
【0048】
また、上記各システム構成において、浮上分離装置として平行運動をするスカム排出手段126を有するものを示したが、従来のチェーン駆動方式のものであっても、回収されたスカムを脱水装置へ直接に、あるいは凝集反応部を介して送り込むことにより、脱水効率を高めることができるとともに、システム構成の大幅なコンパクト化、省スペース化、低コスト化を実現できる。
【0049】
図21及び図22に基づいて第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り既にした構成上及び機能上の説明は省略する。
上記実施形態では、脱水処理までを含めた固液分離システムについて説明したが、例えば塗装ブースの循環水槽容量が1000リットル〜5000リットル程度の小規模のブースの場合には、システム価格が低価格でより簡易的な処理(脱水処理まで行わない)を望む声が多く、設置スペースについても省スペース化の要望が強い。
本実施形態ではこのような要望に応えるべく、塗装ブースシステム(固液分離システム)の小型化、簡易処理化を目的としている。
【0050】
図21に示すように、本実施形態に係る固液分離システムとしての塗装ブースシステム300は、塗装ブース301と、この塗装ブース301の下方に配置された循環水槽302と、小型の浮上分離装置104とから構成されている。循環水槽302は塗装ブース301の底面積よりも広い面積を有しており、浮上分離装置104は循環水槽302の上面の空いたスペースを利用して設置されている。
一般に、塗装ブースの循環水槽は点検口を設けるために塗装ブースの底面積よりも広い面積を有しており、本実施形態ではこの点検口スペースを浮上分離装置104の設置スペースとして利用したものである。これにより、浮上分離装置104を設置するためのスペースを確保する必要がなく、省スペース化を図ることができる。
換言すれば、循環水槽302の空きスペースに合わせて浮上分離装置104の設計寸法を決定し、システムの小型化を図っている。
【0051】
上述のように、塗装ブース301内にはブース内で浮遊する固形物としての塗料ミストを捕獲するための水流カーテンが流れており、塗料ミストが混入した水は循環水槽302内を循環する。図21において、符号WLは、循環水槽302内の循環水の液面を示している。
図22に示すように、循環水槽302内の混入水は、揚水手段としてのエアーリフトポンプ305によって汲み上げられ、浮上分離槽104aに投入される。
浮上分離装置104を循環水槽302上の空きスペースに設置しているため、浮上分離装置104と循環水槽302との距離が非常に近く、この近接配置がエアーリフトポンプの使用を可能としている。
エアーリフトポンプ305は、上下方向に延び、下端が循環水槽302の水面下に位置する揚水管306と、揚水管306の下方に連通する送気管307と、送気管307の上端側(他端側)に接続されたエアー源308と、送気管307の途中に設けられたエアー開閉バルブ309等を有している。
揚水管306の上端近傍には略水平に延びる排出管310が設けられており、汲み上げられた混入水は排出管310を介して浮上分離槽104aに投入される。
【0052】
浮上分離槽104a内に投入された混入水は浮上分離槽104aで固形分(スカム;塗料固形物)を分離され、水面上に浮上したスカムは上記実施形態で説明したのと同様に、スクレーパ方式のスカム排出手段126により一方側へ寄せられて排出される。
浮上分離槽104aの一方側には排出シュート311が設けられており、寄せられたスカムはこの排出シュート311を介して排出され、排出シュート311の下方に置かれたスカム回収容器としての一斗缶312に収容される。
スカムを分離された処理水は、処理水槽164から循環水槽302内へ戻される。
図22において、符号313は塗装ブース301の排気ダクト(図21では省略)を示している。また、符号314は、塗装ブース301の外側面に設置された浮上分離槽104aを制御するための制御盤を示している。
【0053】
周知のように、エアーリフトポンプは通常の水車型の陸上ポンプに比べて構成が簡単でトラブルの発生が極めて少なく、消耗品もなく、動力を必要としないため、システムの小型化に加えてランニングコストの低減にも寄与する。
【符号の説明】
【0054】
2 固液分離装置
102 凝集反応部
104 浮上分離装置
106 第2の凝集反応部
126 排出手段としてのスカム排出手段
134、136 軸
137 カム受け部材
138 カム受け本体
140 ブラケット
142 スクレーパ
148 駆動源としてのモータ
150 偏心カム
301 塗装ブース
302 循環水槽
305 エアーリフトポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽内の液面に浮上した固形分を、槽の一端側から他端側へ押し出して槽外へ排出する排出手段を有する浮上分離装置において、
前記排出手段は、排出方向と直交する方向に延び固形分を掻き取るように該排出方向へ押し込むスクレーパを備え、且つ、前記スクレーパを前記排出方向である前後方向と上下方向に平行運動させる構成を有していることを特徴とする浮上分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の浮上分離装置において、
前記排出手段は、前記排出方向と直交する方向に延びる軸と、該軸に固定された偏心カムと、前記軸を回転駆動する駆動源と、前記偏心カムに支持され、該偏心カムの回転に伴って前記平行運動をするカム受け部材とを有し、前記スクレーパは前記カム受け部材に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする浮上分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の浮上分離装置において、
前記カム受け部材は、前記偏心カムに嵌合するカム受け本体と、該カム受け本体に固定され、前記排出方向に延びるブラケットとを有し、前記スクレーパは前記ブラケットに取り付けられていることを特徴とする浮上分離装置。
【請求項4】
請求項3記載の浮上分離装置において、
前記軸は前記排出方向に間隔をおいて複数設けられているとともに同期回転するように連結され、前記偏心カム及び前記カム受け本体は前記各軸に前記排出方向と直交する方向に間隔をおいてそれぞれ複数設けられ、前記ブラケットは前記排出方向に位置する複数の前記カム受け本体間に固定され、複数のスクレーパが複数のブラケット間に取り付けられていることを特徴とする浮上分離装置。
【請求項5】
浮上分離装置と、
前記浮上分離装置により回収された固形分を含む処理対象物を脱水しながら固液分離する脱水装置とを有し、前記浮上分離装置は請求項1〜4のいずれかに記載の浮上分離装置であることを特徴とする固液分離システム。
【請求項6】
請求項5記載の固液分離システムにおいて、
前記浮上分離装置の前段に、処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有し、前記凝集反応部にて凝集反応化された処理対象物を前記浮上分離装置に投入することを特徴とする固液分離システム。
【請求項7】
請求項5又は6記載の固液分離システムにおいて、
前記浮上分離装置と前記脱水装置との間に、回収された固形分を含む処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する第2の凝集反応部を有していることを特徴とする固液分離システム。
【請求項8】
槽内の液面に固形分を浮上させて回収する浮上分離装置と、該浮上分離装置の後段に設けられ、前記浮上分離装置で回収された固形分を含む処理対象物を脱水しながら固液分離する脱水装置とを有することを特徴とする固液分離システム。
【請求項9】
請求項8記載の固液分離システムにおいて、
前記浮上分離装置の前段に、処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有し、前記凝集反応部にて凝集反応化された処理対象物を前記浮上分離装置に投入することを特徴とする固液分離システム。
【請求項10】
請求項8又は9記載の固液分離システムにおいて、
前記浮上分離装置と前記脱水装置との間に、回収された固形分を含む処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有していることを特徴とする固液分離システム。
【請求項11】
塗装ブースと、該塗装ブースの下方に設けられ、塗料ミストが混入した水が循環する循環水槽と、該循環水槽から汲み上げられた循環水の固形分を分離・排出する浮上分離装置とを有し、前記浮上分離装置は請求項1〜4のいずれかに記載の浮上分離装置であることを特徴とする固液分離システム。
【請求項12】
請求項11記載の固液分離システムにおいて、
前記循環水槽が前記塗装ブースの底面積よりも広い面積を有し、前記浮上分離装置が前記循環水槽の上面に設置されていることを特徴とする固液分離システム。
【請求項13】
請求項11又は12記載の固液分離システムにおいて、
前記循環水槽からの循環水の汲み上げがエアーリフトポンプによりなされることを特徴とする固液分離システム。
【請求項1】
槽内の液面に浮上した固形分を、槽の一端側から他端側へ押し出して槽外へ排出する排出手段を有する浮上分離装置において、
前記排出手段は、排出方向と直交する方向に延び固形分を掻き取るように該排出方向へ押し込むスクレーパを備え、且つ、前記スクレーパを前記排出方向である前後方向と上下方向に平行運動させる構成を有していることを特徴とする浮上分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の浮上分離装置において、
前記排出手段は、前記排出方向と直交する方向に延びる軸と、該軸に固定された偏心カムと、前記軸を回転駆動する駆動源と、前記偏心カムに支持され、該偏心カムの回転に伴って前記平行運動をするカム受け部材とを有し、前記スクレーパは前記カム受け部材に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする浮上分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の浮上分離装置において、
前記カム受け部材は、前記偏心カムに嵌合するカム受け本体と、該カム受け本体に固定され、前記排出方向に延びるブラケットとを有し、前記スクレーパは前記ブラケットに取り付けられていることを特徴とする浮上分離装置。
【請求項4】
請求項3記載の浮上分離装置において、
前記軸は前記排出方向に間隔をおいて複数設けられているとともに同期回転するように連結され、前記偏心カム及び前記カム受け本体は前記各軸に前記排出方向と直交する方向に間隔をおいてそれぞれ複数設けられ、前記ブラケットは前記排出方向に位置する複数の前記カム受け本体間に固定され、複数のスクレーパが複数のブラケット間に取り付けられていることを特徴とする浮上分離装置。
【請求項5】
浮上分離装置と、
前記浮上分離装置により回収された固形分を含む処理対象物を脱水しながら固液分離する脱水装置とを有し、前記浮上分離装置は請求項1〜4のいずれかに記載の浮上分離装置であることを特徴とする固液分離システム。
【請求項6】
請求項5記載の固液分離システムにおいて、
前記浮上分離装置の前段に、処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有し、前記凝集反応部にて凝集反応化された処理対象物を前記浮上分離装置に投入することを特徴とする固液分離システム。
【請求項7】
請求項5又は6記載の固液分離システムにおいて、
前記浮上分離装置と前記脱水装置との間に、回収された固形分を含む処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する第2の凝集反応部を有していることを特徴とする固液分離システム。
【請求項8】
槽内の液面に固形分を浮上させて回収する浮上分離装置と、該浮上分離装置の後段に設けられ、前記浮上分離装置で回収された固形分を含む処理対象物を脱水しながら固液分離する脱水装置とを有することを特徴とする固液分離システム。
【請求項9】
請求項8記載の固液分離システムにおいて、
前記浮上分離装置の前段に、処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有し、前記凝集反応部にて凝集反応化された処理対象物を前記浮上分離装置に投入することを特徴とする固液分離システム。
【請求項10】
請求項8又は9記載の固液分離システムにおいて、
前記浮上分離装置と前記脱水装置との間に、回収された固形分を含む処理対象物に凝集剤を加えて攪拌する凝集反応部を有していることを特徴とする固液分離システム。
【請求項11】
塗装ブースと、該塗装ブースの下方に設けられ、塗料ミストが混入した水が循環する循環水槽と、該循環水槽から汲み上げられた循環水の固形分を分離・排出する浮上分離装置とを有し、前記浮上分離装置は請求項1〜4のいずれかに記載の浮上分離装置であることを特徴とする固液分離システム。
【請求項12】
請求項11記載の固液分離システムにおいて、
前記循環水槽が前記塗装ブースの底面積よりも広い面積を有し、前記浮上分離装置が前記循環水槽の上面に設置されていることを特徴とする固液分離システム。
【請求項13】
請求項11又は12記載の固液分離システムにおいて、
前記循環水槽からの循環水の汲み上げがエアーリフトポンプによりなされることを特徴とする固液分離システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−284636(P2010−284636A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235478(P2009−235478)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(502141393)ジャステック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(502141393)ジャステック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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