説明

浮体構造物及び浮体構造物の施工方法

【課題】水上に浮かべた二体の浮体ユニットを簡単かつ確実に接合することができる浮体構造物を提供することを課題とする。
【解決手段】水上に浮かべた複数の浮体ユニット10・・・によって構成される浮体構造物であって、隣り合う二体の浮体ユニット10,10の喫水部分Wよりも上方には上部接合部材17が突設され、各浮体ユニット10,10の喫水部分Wには下部接合部材18が突設されており、各浮体ユニット10,10の下部接合部材18,18同士が各浮体ユニット10,10の接合方向に係合されているとともに、各浮体ユニット10,10の上部接合部材17,17同士が固着されていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上に浮かべた複数の浮体ユニットによって構成される浮体構造物、及びこの浮体構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
箱状の浮体ユニットを水上に浮かべることで、浮桟橋などの浮体構造物を構築する場合には、鋼製の浮体ユニットをトラックやコンテナなどの搬送手段に積載可能な大きさに形成し、複数の浮体ユニットを水上で接合することによって、所望の大きさの浮体構造物を構築している。
そして、従来の浮体構造物としては、図10に示すように、隣り合う二体の浮体ユニット100,100の喫水部分W,Wを跨ぐようにプレートPを配置し、このプレートPを複数のボルトB・・・によって各浮体ユニット100,100の側面に固着するとともに、各浮体ユニット100,100の喫水部分W,Wよりも上方を溶接によって固着しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記した従来の浮体構造物では、水上に浮かべた二体の浮体ユニット100,100を引き寄せて接近させ、各浮体ユニット100,100の喫水部分W,Wに配置されたプレートPに水中で締結部材(ボルトB)を締め付けて、各浮体ユニット100,100の喫水部分W,Wを固着している。
【0004】
【特許文献1】特開2004−34851号公報(段落0011〜0013、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来の浮体構造物では、二体の浮体ユニット100,100を接合するために、作業者はボルトBなどの締結部材を潜水しながら水中で浮体ユニット100に締め付ける必要があり、接合作業が煩雑になってしまうという問題がある。
【0006】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、水上に浮かべた二体の浮体ユニットを簡単かつ確実に接合することができる浮体構造物、及びこの浮体構造物の施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の浮体構造物は、水上に浮かべた複数の浮体ユニットによって構成される浮体構造物であって、隣り合う二体の前記浮体ユニットの側面において喫水部分よりも上方には上部接合部材が突設され、前記各浮体ユニットの側面において喫水部分には下部接合部材が突設されており、前記各浮体ユニットの前記下部接合部材同士が前記各浮体ユニットの接合方向に係合されているとともに、前記各浮体ユニットの前記上部接合部材同士が固着されていることを特徴としている。
【0008】
この構成では、二体の浮体ユニットを接合するときに、各浮体ユニットの喫水部分では下部接合部材同士を係合させており、水中で各浮体ユニットの喫水部分をボルトなどの締結部材によって固着する必要がないため、各浮体ユニットの喫水部分を簡単に接合することができる。
また、各浮体ユニットの喫水部分よりも上方では上部接合部材同士が固着されており、各浮体ユニットが相対的に移動しないため、下部接合部材同士の係合が解除されてしまうのを防ぐことができ、各浮体ユニットの喫水部分を確実に接合することができる。
【0009】
前記した浮体構造物において、前記各浮体ユニットの前記下部接合部材同士は、上下方向に嵌め合わされることで前記各浮体ユニットの接合方向に係合されているように構成することができる。
【0010】
この構成では、二体の浮体ユニットの喫水部分を接合するときに、下部接合部材を上下方向に嵌め合わせることで、各浮体ユニットの喫水部分を簡単に接合することができる。
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の浮体構造物の施工方法は、水上に浮かべた複数の浮体ユニットによって構成される浮体構造物の施工方法であって、隣り合う二体の前記浮体ユニットの側面において喫水部分よりも上方には上部接合部材が突設され、前記各浮体ユニットの側面において喫水部分には下部接合部材が突設されており、一方の前記浮体ユニットの前記下部接合部材が、他方の前記浮体ユニットの前記下部接合部材よりも上方又は下方に位置するように、少なくとも一体の前記浮体ユニットを水上で上下方向に傾斜させる傾斜工程と、前記各浮体ユニットを接近させる接近工程と、傾斜した前記浮体ユニットの姿勢を戻して、前記各浮体ユニットの前記下部接合部材同士を上下方向に嵌め合わせることで、前記各浮体ユニットの前記下部接合部材同士を接合方向に係合させる下部係合工程と、前記各浮体ユニットの前記上部接合部材同士を固着する上部固着工程と、を含むことを特徴としている。
【0012】
この構成では、浮体ユニットを上下方向に傾斜させることで、各浮体ユニットの下部接合部材同士を干渉させることなく、各浮体ユニットを接近させることができる。また、傾斜した浮体ユニットの姿勢を戻すことで、各浮体ユニットの下部接合部材同士を上下方向に嵌め合わせることができる。したがって、前記した施工方法では、二体の浮体ユニットを接合するときに、水中で各浮体ユニットの喫水部分をボルトなどの締結部材によって固着する必要がないため、各浮体ユニットの喫水部分を簡単に接合することができる。
また、各浮体ユニットの喫水部分よりも上方では上部接合部材同士を固着しており、各浮体ユニットが相対的に移動しないため、下部接合部材同士の係合が解除されてしまうのを防ぐことができ、各浮体ユニットの喫水部分を確実に接合することができる。
【0013】
前記した浮体構造物の施工方法において、前記上部接合部材には、前記各浮体ユニットの接合方向に対して略直交する幅方向に貫通した貫通孔が形成されており、前記上部固着工程では、前記上部接合部材の前記貫通孔に挿通させた締結部材によって、前記各浮体ユニットの前記上部接合部材同士を固着しているように構成することができる。
【0014】
この構成では、各浮体ユニットの上部接合部材同士を締結部材によって固着しており、浮体ユニットの上面に載った作業者によって、各浮体ユニットの喫水部分よりも上方を簡単に接合することができる
また、各浮体ユニットの上部接合部材には、接合方向の幅方向に締結部材が挿通されており、各浮体ユニットが上下方向に相対移動しないため、上下方向に嵌め合わされた下部接合部材同士の係合が解除されてしまうのを確実に防ぐことができる。
【0015】
前記した浮体構造物の施工方法において、前記傾斜工程では、前記浮体ユニットに積載された錘を移動させることで、前記浮体ユニットを傾斜させるとともに、前記下部係合工程では、前記浮体ユニットに積載された錘を移動させることで、傾斜した前記浮体ユニットの姿勢を戻すことができる。
【0016】
この構成では、浮体ユニットに積載された錘を移動させることで、浮体ユニットの姿勢を簡単に変化させることができるため、二体の浮体ユニットを接合するときの作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の浮体構造物によれば、二体の浮体ユニットを接合するときに、各浮体ユニットの喫水部分では下部接合部材同士を係合させているため、各浮体ユニットの喫水部分を簡単に接合することができる。また、各浮体ユニットの喫水部分よりも上方では上部接合部材同士が固着されており、各浮体ユニットが相対的に移動しないため、各浮体ユニットの喫水部分を確実に接合することができる。
【0018】
本発明の浮体構造物の施工方法によれば、浮体ユニットを上下方向に傾斜させることで、各浮体ユニットの下部接合部材同士を干渉させることなく、各浮体ユニットを接近させることができる。また、傾斜した浮体ユニットの姿勢を戻すことで、下部接合部材同士を上下方向に嵌め合わせることができる。したがって、二体の浮体ユニットを接合するときに、各浮体ユニットの喫水部分を簡単に接合することができる。また、各浮体ユニットの喫水部分よりも上方では上部接合部材同士を固着しており、各浮体ユニットが相対的に移動しないため、各浮体ユニットの喫水部分を確実に接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、複数の浮体ユニットを海や河川などの水上に浮かべることで浮桟橋などの浮体構造物を構築する場合を例として説明する。
【0020】
[浮体構造物の構成]
浮体構造物1は、図1に示すように、左右方向に並設された三体の浮体ユニット10・・・を、前後方向に五列並べて接合したものであり、十五体の浮体ユニット10・・・によって、平面視で長方形の浮体構造物1が構成されている。
【0021】
なお、本実施形態の各浮体ユニット10・・・は、前後左右の面に突設された上部接合部材17及び下部接合部材18の構成(図2参照)が異なる以外は同一の構成となっている。そのため、以下の説明では、並設された各浮体ユニット10・・・全体の中央に配置される浮体ユニット10aについて詳細に説明し、他の浮体ユニット10については異なる点についてのみ説明する。
【0022】
浮体ユニット10aは、図2に示すように、中空な箱状の部材であり(図3(a)参照)、鋼板によって上面11、下面12、左側面13、右側面14、前面15、後面16が形成され、前後方向を長手方向とした直方体となっている。この浮体ユニット10は、一般的なトラックやコンテナなどの搬送手段に積載可能な大きさに形成されている。
また、浮体ユニット10aを水上に浮かべたときには、高さ方向の略中央よりも下部は水中に沈んだ喫水部分Wとなる。
【0023】
浮体ユニット10aの左側面13、右側面14、前面15、後面16において、喫水部分Wよりも上方には複数の上部接合部材17・・・が突設され、喫水部分Wには複数の下部接合部材18・・・が突設されている。
【0024】
上部接合部材17は、図3(a)及び(b)に示すように、両面が水平方向に向けられた鋼板であり、その基端部が溶接によって各面13,14,15,16に取り付けられている。
上部接合部材17の先端部の外形は半円状に形成されており、上部接合部材17の先端部には、水平方向に貫通した貫通孔17aが形成されている。なお、浮体ユニット10aの各面13,14,15,16に設けられた各上部接合部材17・・・は、他の浮体ユニット10との接合方向に突出しているため(図5(a)及び(b)参照)、上部接合部材17に形成された貫通孔17aは、浮体ユニット10の接合方向に対して直交する幅方向に貫通していることになる。
【0025】
左側面13及び右側面14には、それぞれ四体の上部接合部材17・・・が上端縁に沿って等間隔に取り付けられている。また、前面15及び後面16には、それぞれ五体の上部接合部材17・・・が上端縁に沿って等間隔に取り付けられている。
【0026】
下部接合部材18は、図2に示すように、基端部が溶接によって各面13,14,15,16に取り付けられた鋼材であり、図3(a)及び(b)に示すように、その先端部には上向きに突出した係合部18aが形成され、係合部18aと基端部との間には凹部18bが形成されている。
【0027】
左側面13及び右側面14には、それぞれ四体の下部接合部材18・・・が下端縁に沿って等間隔に取り付けられている。また、前面15及び後面16には、それぞれ三体の下部接合部材18・・・が下端縁に沿って等間隔に取り付けられている。
【0028】
ここで、図1に示す浮体構造物1では、外側面に船舶などが接触する可能性があるため、外側面には突起物が設けられていないことが望ましい。したがって、浮体構造物1を構成する各浮体ユニット10・・・では、浮体構造物1の外側面を構成する面、すなわち、他の浮体ユニット10が接合されない面には、上部接合部材17及び下部接合部材18(図2参照)が設けられていない。
【0029】
次に、各浮体ユニット10・・・の接合構造について、各浮体ユニット10・・・を並設して浮体構造物1を構築したときに、最前列に配置される三体の浮体ユニット10a,10b,10cの接合構造を例として説明する。
なお、図4(a)に示す前列中央の浮体ユニット10aでは、下部接合部材18の係合部18aが上向きに突出し、図4(b)に示す前列左側の浮体ユニット10bでは、下部接合部材18の係合部18aが下向きに突出し、図4(c)に示す前列右側の浮体ユニット10cでは、下部接合部材18の係合部18aが下向きに突出している。
【0030】
図5(a)に示すように、前列中央の浮体ユニット10aと、前列右側の浮体ユニット10cとの接合構造では、各浮体ユニット10a,10cの下部接合部材18,18同士が上下方向に嵌め合わされている。
具体的には、前列中央の浮体ユニット10aの下部接合部材18に形成された上向きの係合部18aが、前列右側の浮体ユニット10cの下部接合部材18に形成された下向きの凹部18bに入り込んで密着している。また、前列右側の浮体ユニット10cの下部接合部材18に形成された下向きの係合部18aが、前列中央の浮体ユニット10aの下部接合部材18に形成された上向きの凹部18bに入り込んで密着している。そして、各下部接合部材18,18の係合部18a,18aが左右方向に引っ掛かることで、下部接合部材18,18同士が接合方向に係合されている。
【0031】
また、図5(b)に示すように、前列中央の浮体ユニット10aと、前列右側の浮体ユニット10cとの接合構造では、各浮体ユニット10a,10cの上部接合部材17,17が前後方向に重なっており、各上部接合部材17,17の貫通孔17a,17aが連通している。そして、各上部接合部材17,17の貫通孔17a,17aにボルトBを挿通させ、ボルトBの先端部にナットNを締め込むことで、上部接合部材17,17同士が締結部材(ボルトB及びナットN)によって固着されている。
【0032】
図8(b)に示すように、前列中央の浮体ユニット10aと、前列左側の浮体ユニット10bとの接合構造では、前記した各浮体ユニット10a,10cの接合構造と同様に、下部接合部材18,18同士が接合方向に係合されているとともに、上部接合部材17,17同士が固着されている。
【0033】
図1に示す浮体構造物1を構成する各浮体ユニット10・・・では、前記した最前列の浮体ユニット10a,10b,10cの接合構造と同様に、隣り合う二体の浮体ユニット10,10の下部接合部材18,18同士が接合方向に係合されるとともに、上部接合部材17,17同士が固着されることで(図5(a)参照)、各浮体ユニット10・・・が接合されている。
したがって、各浮体ユニット10・・・では、隣り合う二体の浮体ユニット10,10の下部接合部材18,18同士を上下方向に嵌め合わせることができるように(図5(a)参照)、隣り合う二体の浮体ユニット10,10の下部接合部材18,18の係合部18a,18aの突出方向が上下に異なっている。
【0034】
[浮体構造物の施工方法]
次に、図1に示す浮体構造物1の施工方法について説明する。
本実施形態では、最前列に配置される三体の浮体ユニット10a,10b,10cを接合した後に、順次に後方側の浮体ユニット10を接合することで、浮体構造物1を構築する。
本実施形態の施工方法では、各浮体ユニット10,10を水上で上下方向に傾斜させる傾斜工程(図6(a)参照)と、各浮体ユニット10,10を接近させる接近工程(図6(b)参照)と、傾斜した各浮体ユニット10,10の姿勢を戻して、各浮体ユニット10,10の下部接合部材18,18同士を上下方向に嵌め合わせる下部係合工程(図7(a)参照)と、各浮体ユニット10,10の上部接合部材17,17同士を固着する上部固着工程(図7(b)参照)と、を行うことで隣り合う二体の浮体ユニット10,10を接合している。以下、各工程について詳細に説明する。
【0035】
傾斜工程では、図6(a)に示すように、前列中央の浮体ユニット10a及び前列右側の浮体ユニット10cを水上に浮かべて、前列右側の浮体ユニット10cの上面11の右端に錘20を積載するとともに、前列中央の浮体ユニット10aの上面11の右端に錘20を積載する。これにより、前列右側の浮体ユニット10cの下部接合部材18が、前列中央の浮体ユニット10aの下部接合部材18よりも上方に位置するように、各浮体ユニット10a,10cが右下がりに傾斜した状態となる。
【0036】
接近工程では、図6(b)に示すように、各浮体ユニット10a,10cを右下がりに傾斜させた状態で、各浮体ユニット10a,10cの間に掛け渡した牽引ロープ(図示せず)を用いて、前列右側の浮体ユニット10cを前列中央の浮体ユニット10a側に引き寄せて接近させる。これにより、各浮体ユニット10a,10cの下部接合部材18,18が上下方向に間隔を空けて配置される。
【0037】
下部係合工程では、図7(a)に示すように、各浮体ユニット10a,10cの上面に積載した錘20,20をそれぞれ上面11の中央に移動させる。これにより、傾斜した各浮体ユニット10a,10cの姿勢が水平状態に戻ることになり、各浮体ユニット10a,10cの下部接合部材18,18同士が上下方向に嵌め合わされ、下部接合部材18,18同士が接合方向に係合される。
【0038】
上部固着工程では、図7(b)に示すように、各浮体ユニット10a,10cの上部接合部材17,17の貫通孔17a,17aにボルトBを挿通させ、このボルトBの先端部にナットNを締め付けることで、上部接合部材17,17同士を固着する(図5(b)参照)。なお、上部接合部材17,17同士を固着する作業は、各浮体ユニット10a,10cの上面11,11に載った作業者によって行われる。
【0039】
また、各浮体ユニット10a,10cの上面11,11の間に上方から塞ぎ板30を嵌め込むことで、各浮体ユニット10a,10cの隙間を閉塞する(図1参照)。なお、塞ぎ板30の下面にはリブ31が突設されており、リブ31の下端部が上部接合部材17に当接することで、塞ぎ板30の上面と、各浮体ユニット10a,10cの上面11,11とが面一になるように構成されている。
【0040】
前記した各工程によって、前列中央の浮体ユニット10aと前列右側の浮体ユニット10cとを接合した後に、図8(a)に示すように、前列中央の浮体ユニット10aの上面11の左端に錘20を積載して、接合した各浮体ユニット10a,10cを左下がりに傾斜させる。また、前列左側の浮体ユニット10bの上面11の左端に錘20を積載して、前列左側の浮体ユニット10bを左下がりに傾斜させる(傾斜工程)。
そして、接合した各浮体ユニット10a,10c側に前列左側の浮体ユニット10bを引き寄せて接近させ(接近工程)、接合した各浮体ユニット10a,10c及び前列左側の浮体ユニット10bの姿勢を戻すことで、図8(b)に示すように、各浮体ユニット10a,10bの下部接合部材18,18同士を接合方向に係合させる(下部係合工程)。
さらに、各浮体ユニット10a,10bの上部接合部材17,17同士を固着し、各浮体ユニット10a,10bの隙間に塞ぎ板30を取り付けることで(上部固着工程)、最前列に配置される三体の浮体ユニット10a,10b,10cを接合する。
【0041】
続いて、前後方向に配置される浮体ユニット10,10(図1参照)を接合する場合には、図9(a)に示すように、前側の浮体ユニット10の上面11の前端に錘20を積載して、前側の浮体ユニット10を前下がりに傾斜させるとともに、後側の浮体ユニット10の上面11の前端に錘20を積載して、後側の浮体ユニット10を前下がりに傾斜させる(傾斜工程)。
そして、前側の浮体ユニット10側に後側の浮体ユニット10を引き寄せて接近させ(接近工程)、各浮体ユニット10,10の姿勢を戻すことで、図9(b)に示すように、各浮体ユニット10,10の下部接合部材18,18同士を接合方向に係合させる(下部係合工程)。
さらに、各浮体ユニット10,10の上部接合部材17,17同士を固着し、各浮体ユニット10,10の隙間に塞ぎ板30を取り付けることで(上部固着工程)、前後方向に配置される二体の浮体ユニット10,10を接合する。
【0042】
前記したように左右方向及び前後方向に隣り合う二体の浮体ユニット10,10を順次に接合することで、図1に示すように、複数の浮体ユニット10・・・によって構成される浮体構造物1を構築する。
【0043】
[浮体構造物及び浮体構造物の施工方法の作用効果]
前記した浮体構造物1及び浮体構造物1の施工方法では、図6(b)に示すように、隣り合う二体の浮体ユニット10,10を上下方向に傾斜させることで、各浮体ユニット10,10の下部接合部材18,18同士を干渉させることなく、各浮体ユニット10,10を接近させることができる。また、図7(a)に示すように、傾斜した各浮体ユニット10,10の姿勢を戻すことで、各浮体ユニット10,10の下部接合部材18,18を上下方向に嵌め合わせることができる。
したがって、前記した浮体構造物1及び浮体構造物1の施工方法では、二体の浮体ユニット10,10を接合するときに、各浮体ユニット10,10の喫水部分W,Wをボルトなどの締結部材によって水中で固着する必要がないため、各浮体ユニット10,10の喫水部分を簡単に接合することができる。
また、各浮体ユニット10,10の喫水部分W,Wよりも上方では上部接合部材17,17同士を固着しており(図7(b)参照)、各浮体ユニット10,10が相対的に移動しないため、下部接合部材18,18同士の係合が解除されてしまうのを防ぐことができ、各浮体ユニット10,10の喫水部分W,Wを確実に接合することができる。
【0044】
また、各浮体ユニット10,10の上部接合部材17,17同士を締結部材(ボルトB及びナットN)によって固着しており(図5(b)参照)、浮体ユニット10の上面11に載った作業者によって各浮体ユニット10,10の喫水部分W,Wよりも上方を簡単に接合することができる。
また、各浮体ユニット10,10の上部接合部材17,17には、接合方向の幅方向にボルトBが挿通されており、各浮体ユニット10,10が上下方向に相対移動しないため、上下方向に嵌め合わされた下部接合部材18,18同士の係合が解除されてしまうのを確実に防ぐことができる。
【0045】
また、図6(a)及び図7(a)に示すように、浮体ユニット10に積載された錘20を移動させることで、浮体ユニット10の姿勢を簡単に変化させることができるため、各浮体ユニット10・・・を接合するときの作業効率を向上させることができる。
【0046】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に設計変更が可能である。
例えば、本実施形態では、図6(a)に示すように、隣り合う二体の浮体ユニット10,10を水上で傾斜させているが、一方の浮体ユニット10のみを水上で傾斜させることで、一方の浮体ユニット10の下部接合部材18を他方の浮体ユニット10の下部接合部材18よりも上方又は下方に位置させることもできる。
【0047】
また、本実施形態では、図2に示すように、一体の浮体ユニット10に設けられた下部接合部材18の係合部18aが全て同一方向に突出しているが、左側面13と右側面14とにおいて下部接合部材18の係合部18aの突出方向を逆方向にしてもよく、同様に、前面15と後面16とにおいて下部接合部材18の係合部18aの突出方向を逆方向にしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、上部接合部材17を各面13,14,15,16の上端縁の近傍に設けているが、上部接合部材17は喫水部分Wよりも上方に設けられていればよい。また、本実施形態では、下部接合部材18を各面13,14,15,16の下端縁の近傍に設けているが、下部接合部材18は喫水部分Wに設けられていればよい。さらに、上部接合部材17及び下部接合部材18の個数は限定されるものではなく、浮体ユニット10の大きさなどを考慮して適宜に定められる。
【0049】
また、本実施形態では、浮体ユニット10を水上で上下方向に傾斜させるために、浮体ユニット10の上面11に錘20を積載しているが、作業者の重量によって浮体ユニット10を傾斜させることもできる。この構成では、浮体ユニット10の上面11を作業者が移動することで、浮体ユニット10を傾斜させるとともに、傾斜した浮体ユニット10の姿勢を戻すことができるため、作業効率を向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、図5(a)に示すように、一方の浮体ユニット10の下部接合部材18の係合部18aを、他方の浮体ユニット10の下部接合部材18の凹部18bに入り込ませることで、下部接合部材18,18同士を接合方向に係合させているが、下部接合部材18の構成は限定されるものではない。例えば、一方の浮体ユニット10の下部接合部材18に形成された上下方向の貫通孔に、他方の浮体ユニット10の下部接合部材18に形成した突起部を挿入することで、下部接合部材18,18同士を接合方向に係合させることもできる。
【0051】
また、本実施形態では、図5(b)に示すように、上部接合部材17,17同士を締結部材(ボルトB及びナットN)によって固着しているが、上部接合部材17,17同士を固着する構成は限定されるものではなく、例えば、上部接合部材17,17同士を溶接によって固着してもよい。
【0052】
また、本実施形態では、図1に示すように、浮体ユニット10は直方体に形成されているが、その形状は限定されるものではない。さらに、浮体構造物1を構成する複数の浮体ユニット10・・・を全て同じ形状にする必要はなく、各浮体ユニット10・・・の形状がそれぞれ異なっていてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、図2に示す浮体ユニット10が鋼製の箱状部材によって形成されているが、樹脂製の箱状部材やコンクリート製の箱状部材など、浮体ユニット10を形成する材料は限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本実施形態の浮体構造物を示した斜視図である。
【図2】本実施形態の浮体ユニットを示した斜視図である。
【図3】本実施形態の浮体ユニットを示した図で、(a)は一部を断面で示した平面図、(b)は側面図である。
【図4】本実施形態の浮体ユニットを示した図で、(a)は前列中央の浮体ユニットの正面図、(b)は前列左側の浮体ユニットの正面図、(c)は前列右側の浮体ユニットの正面図である。
【図5】本実施形態の浮体ユニットの接合構造を示した図で、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図6】本実施形態の浮体構造物の施工方法を示した図で、(a)は傾斜工程において各浮体ユニットを傾斜させた状態の正面図、(b)は接近工程において各浮体ユニットを接近させた状態の正面図である。
【図7】本実施形態の浮体構造物の施工方法を示した図で、(a)は下部係合工程において下部接合部材を係合させた状態の正面図、(b)は上部固着工程において上部接合部材を固着させた状態の正面図である。
【図8】本実施形態の浮体構造物の施工方法を示した図で、(a)は傾斜工程において三体の浮体ユニットを傾斜させた状態の正面図、(b)は三体の浮体ユニットを接合した状態の正面図である。
【図9】本実施形態の浮体構造物の施工方法を示した図で、(a)は傾斜工程において前後方向に配置された二体の浮体ユニットを傾斜させた状態の側面図、(b)は前後方向に配置された二体の浮体ユニットを接合した状態の側面図である。
【図10】従来の浮体構造物における浮体ユニットの接合構造を示した側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 浮体構造物
10 浮体ユニット
10a 前列中央の浮体ユニット
10a 全体中央の浮体ユニット
10b 前列左側の浮体ユニット
10c 前列右側の浮体ユニット
17 上部接合部材
17a 貫通孔
18 下部接合部材
18a 係合部
18b 凹部
20 錘
30 塞ぎ板
B ボルト
N ナット
W 喫水部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上に浮かべた複数の浮体ユニットによって構成される浮体構造物であって、
隣り合う二体の前記浮体ユニットの側面において喫水部分よりも上方には上部接合部材が突設され、前記各浮体ユニットの側面において喫水部分には下部接合部材が突設されており、
前記各浮体ユニットの前記下部接合部材同士が前記各浮体ユニットの接合方向に係合されているとともに、前記各浮体ユニットの前記上部接合部材同士が固着されていることを特徴とする浮体構造物。
【請求項2】
前記各浮体ユニットの前記下部接合部材同士は、上下方向に嵌め合わされることで前記各浮体ユニットの接合方向に係合されていることを特徴とする請求項1に記載の浮体構造物。
【請求項3】
水上に浮かべた複数の浮体ユニットによって構成される浮体構造物の施工方法であって、
隣り合う二体の前記浮体ユニットの側面において喫水部分よりも上方には上部接合部材が突設され、前記各浮体ユニットの側面において喫水部分には下部接合部材が突設されており、
一方の前記浮体ユニットの前記下部接合部材が、他方の前記浮体ユニットの前記下部接合部材よりも上方又は下方に位置するように、少なくとも一体の前記浮体ユニットを水上で上下方向に傾斜させる傾斜工程と、
前記各浮体ユニットを接近させる接近工程と、
傾斜した前記浮体ユニットの姿勢を戻して、前記各浮体ユニットの前記下部接合部材同士を上下方向に嵌め合わせることで、前記各浮体ユニットの前記下部接合部材同士を接合方向に係合させる下部係合工程と、
前記各浮体ユニットの前記上部接合部材同士を固着する上部固着工程と、
を含むことを特徴とする浮体構造物の施工方法。
【請求項4】
前記上部接合部材には、前記各浮体ユニットの接合方向に対して略直交する幅方向に貫通した貫通孔が形成されており、
前記上部固着工程では、前記上部接合部材の前記貫通孔に挿通させた締結部材によって、前記各浮体ユニットの前記上部接合部材同士を固着していることを特徴とする請求項3に記載の浮体構造物の施工方法。
【請求項5】
前記傾斜工程では、前記浮体ユニットに積載された錘を移動させることで、前記浮体ユニットを傾斜させるとともに、前記下部係合工程では、前記浮体ユニットに積載された錘を移動させることで、傾斜した前記浮体ユニットの姿勢を戻すことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の浮体構造物の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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