説明

浮動アクティブインダクタ

【課題】回路構成を複雑にすることなしに、そのインダクタンス値及びその内部抵抗値を個別に設定することが可能な浮動アクティブインダクタを提供する。
【解決手段】第1及び第2入力端子1、2間に直列接続された浮動インダクタ回路A及び浮動負性抵抗回路Bと、それらの回路A、Bの直列接続点3を備え、第1及び第2入力端子1、2間に浮動アクティブインダクタが形成されるもので、浮動インダクタ回路Aは、第1入力端子1と直列接続点3間に直列接続された第1キャパシタ4、第1抵抗5、第2キャパシタ6と、第1キャパシタ4の両端に第1低抵抗8を介して接続された第1電圧フォロワ8と、第2キャパシタ6の両端に第2低抵抗を介して接続された第2電圧フォロワ8からなり、浮動負性抵抗回路Bは、直列接続点3と第2入力端子2間に直列接続された第2乃至第6抵抗11〜15と、第2及び第3抵抗11、12に接続された第1オペアンプ16と、第5及び第6抵抗14、15に接続された第2オペアンプ17からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮動アクティブインダクタに係り、特に、キャパシタ、抵抗、オペアンプからなる2端子型浮動アクティブインダクタに直列に抵抗、オペアンプからなる2端子型負性抵抗を接続して浮動アクティブインダクタを構成し、2端子型負性抵抗の負性抵抗値の調整により浮動アクティブインダクタのインダクタンス値及びその内部抵抗値を個別に調整可能な浮動アクティブインダクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、集中定数形フィルタでは、そのカットオフ周波数や帯域幅等を変更する場合、使用されるキャパシタ素子のキャパシタンス値及び/またはインダクタ素子のインダクタンス値を切替えることにより変化させたり、連続的に可変させたりすることにより行っている。このようなキャパシタ素子及びインダクタ素子におけるリアクタンス値の変更は、それらの素子の一端が接地接続状態で使用される一端接地型素子に限らず、接地点に対して浮動状態で使用される浮動型素子についても同じようにそのリアクタンス値を可変できる構成にする必要がある。
【0003】
ところで、キャパシタンス値を可変できるキャパシタ素子については、比較的大容量(数nF)の容量変化範囲を有する可変容量ダイオードの利用が可能であるから、多くの用途に供する集中定数形フィルタに対応できるものであるが、インダクタ素子については、可変容量ダイオードのように集中定数形フィルタの並列アームや直列アームに簡単に使用できる素子が存在していないので、このような素子に代わるものとして種々のアクティブインダクタを用いている。
【0004】
一端接地型素子、浮動型素子に係りなく、アクティブリアクタを実現する手段としては、通常、GICと呼ばれるインピーダンス変換器あるいはジャイレータを用いることが知られており、その具体的内容については、例えば、次の文献、「柳沢 健 監訳、金井 元 他訳“アナログフィルタの設計”、479頁〜496頁、秋葉出版、1986年2月」に示されている。この内容によれば、GICは、4つの直列接続されたインピーダンス素子Z1、Z2、Z3、Z4及び負荷インピーダンスZ5と、2つのオペアンプとを組み合わせて構成したアクティブ回路であって、その入力インピーダンスが(Z1・Z3・Z5)/(Z2・Z4)で表わされることを利用し、種々のインピーダンスの形成ができるものである。
【0005】
この場合、例えば、一端接地型素子を得たい場合は、インピーダンス素子Z2またはインピーダンスZ4のいずれかをキャパシタ素子とし、残りのすべてのインピーダンス素子Z1、Z3、Z5を抵抗素子とすれば、等価的に一端接地型インダクタ素子を得ることができれる。一方、このGICを利用して浮動型素子を得るには、1つのGIC(以下、これを第1GICという)と同一構成のもう1つのGIC(以下、これを第2GICという)とを用意し、第1GICにおける負荷インピーダンスZ5の接地接続部を接地点から切り離すとともに、第2GICにおける負荷インピーダンスZ5を回路から切り離し、その切り離し部分に第1GICにおける負荷インピーダンスZ5の切り離し部分を接続し、第1GICにおける負荷インピーダンスZ5を第1及び第2GICの浮動型共通負荷とすることによって構成している。このような構成にすれば、第1GIC及び第2GICの入力端子間に浮動アクティブインダクタを得ることができる。
【0006】
しかしながら、このような浮動アクティブインダクタは、実質的に2つのGICを用いていることから、全体の回路構成がかなり複雑なものになるだけでなく、4つのオペアンプを用いる必要があることから、安価に製造することが難しいという不具合を有するものである。
【0007】
このような不具合を解消するため、本件出願人は、全体の回路構成を簡素化することにより、使用するオペアンプを含む構成素子の数を大幅に低減させることを可能にした浮動アクティブリアクタを提案しており、特願2006−333503号として先に出願している。
【0008】
ここで、図2は、前記提案による特願2006−333503号に係る浮動アクティブインダクタの回路構成を示す回路図である。
【0009】
図2に示されるように、この浮動アクティブインダクタは、第1入力端子21と、第2入力端子22と、第1及び第2入力端子21、22間に直列にこの順に接続された第1キャパシタ23、抵抗24、第2キャパシタ25と、第1キャパシタ23の両端に第1低抵抗27を介して接続された第1電圧フォロワ26と、第1キャパシタ25の両端に第2低抵抗29を介して接続された第2電圧フォロワ28とからなっている。この場合、第1電圧フォロワ26は、非反転入力(+)が第1キャパシタ23と抵抗24の接続点に接続され、反転入力(−)が出力に接続されるとともに第1低抵抗27の一端に接続され、第1低抵抗27の他端が第1入力端子21に接続される。同じように、第2電圧フォロワ28は、非反転入力(+)が抵抗24と第2キャパシタ25の接続点に接続され、反転入力(−)が出力に接続されるとともに第2低抵抗29の一端に接続され、第2低抵抗29の他端が第2入力端子22に接続される。
【0010】
抵抗24と第2キャパシタ25の接続点に接続される。
【0011】
この浮動アクティブインダクタは、第1入力端子21と第2入力端子22間に信号電圧が印加されると、第1キャパシタ23と抵抗24の接続点には第1入力端子21に印加された信号位相に対して90°進相した90°進相電圧が発生し、第1電圧フォロワ26は、その90°進相電圧を利得1で同相増幅し、増幅した90°進相電圧を第1低抵抗27を通して第1入力端子21に供給して第1入力端子21に90°進相電流を流入さませるが、この状態は見掛け上第1入力端子21から90°遅相電流が流出するのと等価になる。同じように、抵抗24と第1キャパシタ25との接続点には第2入力端子22に印加された信号位相に対して90°進相した90°進相電圧が発生し、第2電圧フォロワ28は、その90°進相電圧を利得1で同相増幅し、増幅した90°進相電圧を第2低抵抗29を通して第2入力端子22に供給して第2入力端子21に90°進相電流を流入させるが、第1入力端子21に印加された信号位相と第2入力端子22に印加された信号位相とは、常時180°位相が異なるので、この状態は第2入力端子22から90°遅相電流が流入するのと同じになる。このように、第1入力端子21に供給される信号位相を基準とした場合、第1入力端子21からその90°遅相電流が流出し、第2入力端子22にその90°遅相電流が流入するので、この浮動アクティブインダクタは、インダクタとしての特性を満たすものである。
【0012】
この浮動アクティブインダクタにおいて得られるインダクタンス値は、第1キャパシタ23と第2キャパシタ25の各容量値をC0 、抵抗24の抵抗値を2R0 、第1低抵抗27と第2低抵抗29の各抵抗値をrとし、sをラプラス変換子とすれば、第1入力端子21と第2入力端子22間に形成されるインピーダンスZは、Z=2(rC0 R0 s+r)で表される。そして、このインピーダンスZにおけるインダクタンス値は2rC0 R0 であり、その内部抵抗値は2rである。
【特許文献1】特願2006−333503号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、前記提案による特願2006−333503号に係る浮動アクティブインダクタは、GICにより構成したアクティブインダクタに比べて、単純な回路構成を有するとともに、オペアンプを含む構成素子の数を大幅に低減させることが可能であるという利点を有しているものであるが、得られるインダクタンス値2rC0 R0 に対して、インダクタンスの良さを表わす直列抵抗値2rを小さくするようにした場合、それと同時にインダクタンス値2rC0 R0 も小さくなってしまい、所望の小さい内部抵抗値を得たいとき、その小さい内部抵抗値に見合う所望のインダクタンス値を得ることが難しくなる。
【0014】
本発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたもので、その目的は、浮動アクティブインダクタに負性抵抗回路を付加接続することにより、回路構成を複雑にすることなしに、そのインダクタンス値及びその内部抵抗値を個別に設定することが可能な浮動アクティブインダクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明による浮動アクティブインダクタは、第1入力端子及び第2入力端子と、第1入力端子及び第2入力端子間に直列接続された2端子型浮動インダクタ回路及び2端子型浮動負性抵抗回路と、2端子型浮動インダクタ回路と2端子型浮動負性抵抗回路との直列接続点とを備え、第1入力端子及び第2入力端子間に浮動インダクタが形成されるものであって、2端子型浮動インダクタ回路は、第1入力端子と直列接続点間に接続された第1キャパシタと第1抵抗と第2キャパシタからなる直列回路と、第1キャパシタと第1抵抗の接続点に非反転入力が接続され、出力が第1低抵抗を介して第1入力端子に接続された第1電圧フォロワと、第1抵抗と第2キャパシタの接続点に非反転入力が接続され、出力が第2低抵抗を介して直列接続点に接続された第2電圧フォロワとからなり、2端子型浮動負性抵抗回路は、直列接続点と第2入力端子間に接続された第2抵抗、第3抵抗、第4抵抗、第5抵抗及び第6抵抗からなる直列回路と、直列接続点と第2抵抗との接続点に第1入力が、第2抵抗と第3抵抗との接続点に出力が、第3抵抗と第4抵抗との接続点に第2入力がそれぞれ接続された第1オペアンプと、第4抵抗と第5抵抗との接続点に第1入力が、第5抵抗と第6抵抗との接続点に出力が、第6抵抗と第2入力端子との接続点に第2入力がそれぞれ接続された第2オペアンプとからなる手段を具備する。
【0016】
この場合、前記手段における2端子型負性抵抗回路の第4抵抗は、抵抗値を調整できる可変抵抗によって構成することができるものである。
【0017】
また、前記手段における2端子型浮動インダクタ回路の第1キャパシタ及び第2キャパシタは同じ容量値を有する素子で構成され、第1低抵抗及び第2低抵抗は同じ低抵抗値を有する素子で構成されることが好適である。
【0018】
さらに、前記手段における2端子型負性抵抗回路の第2抵抗及び第3抵抗は同じ抵抗値を有する素子で構成され、第5抵抗及び第6抵抗は同じ抵抗値を有する素子で構成されることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明による浮動アクティブインダクタによれば、アクティブインダクタが形成される第1入力端子と第2入力端子間に2端子型浮動インダクタ回路と2端子型負性抵抗回路とを直列接続することにより、2端子型浮動インダクタ回路によって形成されるインダクタに含まれる内部抵抗値を2端子型負性抵抗回路によって形成される負性抵抗値によって低減させることが可能になり、その結果、浮動アクティブインダクタで使用される全体の回路素子数を大幅に増大させず、回路構成を複雑にすることなしに、浮動アクティブインダクタで得られるインダクタンス値及びその内部抵抗値を個別に適宜設定することが可能になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明による浮動アクティブインダクタの好適な実施の形態を示す回路図であって、上側点線枠Aによって囲まれた回路構成部分が浮動インダクタ回路を示し、下側点線枠Bで囲まれた回路構成部分が浮動負性抵抗回路を示すもので、浮動インダクタ回路は、図2に図示した特願2006−333503号に係る浮動アクティブインダクタの回路構成と同じ回路構成を有している。
【0022】
図1に示されるように、この実施の形態に係る浮動アクティブインダクタは、第1入力端子1と、第2入力端子2と、第1入力端子1と直列接続点3との間に接続された浮動インダクタ回路と、直列接続点3と第2入力端子2との間に接続された浮動インダクタ回路とにより構成されている。そして、浮動インダクタ回路は、第1入力端子1と直列接続点3間にこの順序で直列接続された第1キャパシタ4、第1抵抗5、第2キャパシタ6と、非反転入力(+)が第1キャパシタ4と第1抵抗5との接続点に接続され、出力が反転入力(−)及び第1低抵抗8を介して第1入力端子1に接続された第1電圧フォロワ7と、非反転入力(+)が第1抵抗5と第2キャパシタ6の接続点に接続され、出力が反転入力(−)及び第2低抵抗10を介して直列接続点3に接続された第2電圧フォロワ9とからなっている。また、浮動負性抵抗回路は、直列接続点3と第2入力回路2間にこの順序で直列接続された第2抵抗11、第3抵抗12、第4抵抗13、第4抵抗14、第5抵抗15と、非反転入力(+)が直列接続点3と第2抵抗11との接続点に接続され、出力が第2抵抗11と第3抵抗12との接続点に接続され、反転入力(−)が第3抵抗12と第4抵抗13との接続点に接続された第1オペアンプ16と、非反転入力(+)が第4抵抗13と第5抵抗14との接続点に接続され、出力が第5抵抗14と第6抵抗15との接続点に接続され、反転入力(−)が第6抵抗15と第2入力端子2との接続点に接続された第2オペアンプ17とからなっている。
【0023】
前記構成による浮動アクティブインダクタの動作について説明する。
【0024】
まず、第1入力端子1と直列接続点3との間に接続された浮動インダクタ回路の動作は、既に述べた特願2006−333503号に係る浮動アクティブインダクタの動作と同じ動作が行われるものであり、ここではその動作を図1に図示の浮動インダクタ回路に従って改めて説明する。
【0025】
いま、第1入力端子1と第2入力端子2間に信号電圧が印加されると、第1キャパシタ4と第1抵抗5の接続点には第1入力端子1に印加された信号位相に対して90°進相した90°進相電圧が発生し、第1電圧フォロワ7は、その90°進相電圧を利得1で同相増幅し、増幅した90°進相電圧を第1低抵抗8を通して第1入力端子1に供給し、第1入力端子1に90°進相電流を流入させるが、このときの状態は見掛け上第1入力端子1から90°遅相電流が流出するときの状態と等価になる。
【0026】
一方、直列接続点3と第2入力端子2に接続される浮動負性抵抗回路は、信号位相を変化させる素子を含んでいないことから、第2入力端子2と直列接続点3における信号位相は同相になり、抵抗5と第2キャパシタ6との接続点には第2入力端子2に印加された信号位相に対して90°進相した90°進相電圧が発生し、第2電圧フォロワ8は、その90°進相電圧を利得1で同相増幅し、増幅した90°進相電圧を第2低抵抗10を通して直列接続点3及び第2入力端子2に供給し、直列接続点3及び第2入力端子2に90°進相電流を流入させるが、このときに第1入力端子1に印加された信号位相と、第2入力端子2及び直列接続点3に印加された信号位相とは、常時180°位相が異なるので、このときの状態は第2入力端子2及び直列接続点3から90°遅相電流が流入するのと同じになる。このように、第1入力端子1に供給される信号位相を基準とした場合、第1入力端子1からその90°遅相電流が流出し、第2入力端子2及び直列接続点3にその90°遅相電流が流入するので、この浮動インダクタ回路は、インダクタとして働くものである。
【0027】
また、直列接続点3及び第2入力端子2間に接続された浮動負性抵抗回路は、第1オペアンプ16と第2オペアンプ17としてそのオープンループ利得が極めて大きいものを使用し、第1オペアンプ16の非反転入力(+)と出力との間に接続された第2抵抗11による正帰還量及びその反転入力(−)と出力との間に接続された第3抵抗12による負帰還量をほぼ等しくするとともに、第2オペアンプ17の非反転入力(+)と出力との間に接続された第5抵抗14による正帰還量及びその反転入力(−)と出力との間に接続された第6抵抗15による負帰還量をほぼ等しくすれば、直列接続点3及び第2入力端子2間に負性抵抗が形成される。
【0028】
かかる構成を有する浮動インダクタ回路においては、前述の浮動アクティブインダクタにおいて説明したように、第1キャパシタ4と第2キャパシタ6の各容量値を同じ容量値C0 、第1抵抗5の抵抗値を2R0 、第1低抵抗8と第2低抵抗10の各抵抗値を同じ抵抗値rとし、sをラプラス変換子とすれば、第1入力端子1と直列接続点3との間に形成されるインピーダンスZは、Z=2(rC0 R0 s+r)で表される。そして、このインピーダンスZにおけるインダクタンス値は2rC0 R0 であり、その内部抵抗値は2rである。
【0029】
一方、負性抵抗回路においては、第2抵抗11と第3抵抗12の各抵抗値を同じ抵抗値R2 、第4抵抗13の抵抗値をR3 、第5抵抗14と第6抵抗15の各抵抗値を同じ抵抗値R4 とし、第4抵抗13の中間点が電圧基準点として考えた場合、この電圧基準点に対する直列接続点3の信号電圧をei 、この電圧基準点に対する第1オペアンプ16の出力に生じる信号電圧をeo とすると、
【数1】

【0030】
で表わすことができる。このとき、第4抵抗13を流れる信号電流をi、直列接続点3と電圧基準点との間の入力抵抗をrinとすれば、
【数2】

【0031】
になり、これらの関係を総合すれば、rin=−(R3 /2)が得られ、さらに、負性抵抗回路における本来の入力抵抗Rin、すなわち、直列接続点3と第2入力端子2との間の入力抵抗Rinは前記入力抵抗rinの2倍であるから、本来の入力抵抗Rin=−R3 になる。
【0032】
かかる構成にすれば、第1入力端子1と第2入力端子2との間に形成されるインピーダンスZL は、浮動インダクタ回路に形成されたインピーダンスZ=2rC0 R0+2rと負性抵抗回路で形成された入力抵抗Rin=−R3 とが加算されたものになり、インピーダンスZL は、ZL =2rC0 R0+2r−R3 となる。このインピーダンスZL におけるインダクタンス値は2rC0 R0 であり、その直列抵抗値は2r−R3 になる。
【0033】
この場合、インダクタンス値2rC0 R0 及びその直列抵抗値2r−R3 の設定は、まず、浮動インダクタ回路における第1キャパシタ4と第2キャパシタ6の各容量値C0 、第1抵抗5の抵抗値2R0 、第1低抵抗8と第2低抵抗10の各抵抗値rをそれぞれ選択設定して浮動インダクタ回路のインダクタンス値2rC0 R0 を決めた後、負性抵抗回路に用いる第4抵抗13の抵抗値R3 を調整設定し、その直列抵抗値2r−R3 が正抵抗値を示す範囲で小さくなるように調整すれば足り、インダクタンス値2rC0 R0 と直列抵抗値2r−R3 とを個別に調整することが可能になる。なお、負性抵抗回路に用いる第4抵抗13は抵抗値R3 が調整された固定抵抗を用いてもよいが、第4抵抗13を可変抵抗によって構成し、その可変抵抗の抵抗値R3 を適宜調整できるようにしてもよい。
【0034】
前記実施の形態による浮動アクティブインダクタにおいては、浮動インダクタ回路における第1キャパシタ4と第2キャパシタ6の各容量値を等しい容量値C0 に、第1低抵抗8と第2低抵抗10の各抵抗値を等しい抵抗値rとした例を挙げて説明したが、本発明による浮動インダクタ回路における第1キャパシタ4と第2キャパシタ6の各容量値及び第1低抵抗8と第2低抵抗10の各抵抗値の設定は、前述の例に限られるものではなく、第1キャパシタ4と第2キャパシタ6の各容量値を若干変更させるようにしても、第1低抵抗8と第2低抵抗10の各抵抗値を若干変更させるようにしてもよい。
【0035】
また、前記実施の形態による浮動アクティブインダクタにおいては、負性抵抗回路における第2抵抗11と第3抵抗12の各抵抗値を等しい抵抗値R2 に、第5抵抗14と第6抵抗15の各抵抗値を等しい抵抗値R4 とした例を挙げて説明したが、本発明による負性抵抗回路における第2抵抗11と第3抵抗12の各抵抗値及び第5抵抗14と第6抵抗15の各抵抗値の設定は、前述の例に限られるものではなく、若干変更させるようにしても、第5抵抗14と第6抵抗15の各抵抗値を若干変更させるようにしてもよい。
【0036】
さらに、前記実施の形態による浮動アクティブインダクタにおいては、負性抵抗回路における第1オペアンプ16及び第2オペアンプ17における非反転入力(+)及び反転入力(−)における外部回路との接続は、図1に図示されたような向きの接続であっても、図1に図示されたような向きと逆向きの接続であっても構わない。その理由は、第1オペアンプ16及び第2オペアンプ17のオープンループ利得が極めて大きく、正帰還回路及び負帰還回路がそれぞれ形成されているので、非反転入力(+)及び反転入力(−)の信号電位はその接続の向きを入れ替えてもほぼ等しくなるからである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による浮動アクティブインダクタの好適な実施の形態を示す回路図である。
【図2】本発明者が提案した特願2006−333503号に係る浮動アクティブインダクタの回路図である。
【符号の説明】
【0038】
1 第1入力端子
2 第2入力端子
3 直列接続点
4 第1キャパシタ
5 第1抵抗
6 第2キャパシタ
7 第1電圧フォロワ
8 第1低抵抗
9 第2電圧フォロワ
10 第2低抵抗
11 第2抵抗
12 第3抵抗
13 第4抵抗
14 第5抵抗
15 第6抵抗
16 第1オペアンプ
17 第2オペアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力端子及び第2入力端子と、前記第1入力端子及び前記第2入力端子間に直列接続された2端子型浮動インダクタ回路及び2端子型浮動負性抵抗回路と、前記2端子型浮動インダクタ回路と前記2端子型浮動負性抵抗回路との直列接続点とを備え、前記第1入力端子及び前記第2入力端子間に浮動インダクタが形成される浮動アクティブリアクタであって、前記2端子型浮動インダクタ回路は、前記第1入力端子と前記直列接続点間に接続された第1キャパシタと第1抵抗と第2キャパシタからなる直列回路と、前記第1キャパシタと前記第1抵抗の接続点に非反転入力が接続され、出力が第1低抵抗を介して前記第1入力端子に接続された第1電圧フォロワと、前記第1抵抗と前記第2キャパシタの接続点に非反転入力が接続され、出力が第2低抵抗を介して前記直列接続点に接続された第2電圧フォロワとからなり、前記2端子型浮動負性抵抗回路は、前記直列接続点と前記第2入力端子間に接続された第2抵抗、第3抵抗、第4抵抗、第5抵抗及び第6抵抗からなる直列回路と、前記直列接続点と前記第2抵抗との接続点に第1入力が、前記第2抵抗と前記第3抵抗との接続点に出力が、前記第3抵抗と前記第4抵抗との接続点に第2入力がそれぞれ接続された第1オペアンプと、前記第4抵抗と前記第5抵抗との接続点に第1入力が、前記第5抵抗と前記第6抵抗との接続点に出力が、前記第6抵抗と前記第2入力端子との接続点に第2入力がそれぞれ接続された第2オペアンプとからなることを特徴とする浮動アクティブリアクタ。
【請求項2】
前記2端子型負性抵抗回路における前記第4抵抗は、抵抗値を調整できる可変抵抗により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の浮動アクティブリアクタ。
【請求項3】
前記2端子型浮動インダクタ回路において、前記第1キャパシタ及び前記第2キャパシタは同じ容量値を有する素子で構成され、前記第1低抵抗及び前記第2低抵抗は同じ低抵抗値を有する素子で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の浮動アクティブリアクタ。
【請求項4】
前記2端子型負性抵抗回路において、前記第2抵抗及び前記第3抵抗は同じ抵抗値を有する素子で構成され、前記第5抵抗及び前記第6抵抗は同じ抵抗値を有する素子で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の浮動アクティブリアクタ。

【図1】
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【図2】
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