説明

浮遊微粒子を分類する方法および装置

流入した空気の流れ内の2つ以上のグループの粒子の選択された少なくとも1つに静電荷を印加するように適合されている帯電システムを含んでいる、浮遊微粒子を分類するための装置が提供される。集束システムは、流入した空気の流れよりも細い集束された流れに、帯電された粒子を静電気的に集束させるように適合されている。堆積システムは、集束された流れから粒子をターゲット表面上に堆積させるように適合されており、ここで、ターゲット表面は、その上に堆積された粒子を分析することができる分析システムに搬送されることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、参照により本明細書に組み込まれた、2003年9月19日出願の(「Electrostatically Enhanced Particle Sorting and Deposition」と題された)アメリカ合衆国特許仮出願第60/504,682号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般には空気のサンプリングに関し、より詳細には、空気サンプルからのエアロゾル粒子の収集と分類に関する。
【背景技術】
【0003】
到来する空気サンプルから、対象とする粒子(例えば、エアロゾル粒子)を分類することができる、軍用、私用、個別用の空気サンプリング・システムへの増大する需要が存在する。粒子の分類は、分析技術(例えば、スペクトログラフを使用する識別)を実行する前に、サンプル中の無視される粒子の数を削減することにより、空気サンプルの内容物を、より高速で精密に分析することを可能にする。対象とする粒子は、一般的に、空気サンプル中の他の粒子と分離され、次にさらなる分析のために、ターゲット上または粒子捕集表面上に集束(focus)される。
【0004】
現在の粒子分類システムは、サンプル空気流内の粒子を操作して集束させるために、空気力学的技術(例えば、ノズル)を使用している。そのような分類システムは、大きな(例えば、約50μmより大きい)粒子をかなりうまく分類することを達成する一方で、より小さい(例えば、約0.5μmから10μmの範囲の)粒子を操作することが求められる場合には、しばしば信頼性にかける動作をする。さらにそのようなシステムは、多数の気流の流れの調整が困難であり、結果的に流れの直径が圧縮されるので、粒子の速度が増加するために、分類された粒子を、指定されたターゲット上または捕集表面上に集めることにおいて最適な精度を示さない。
【特許文献1】アメリカ合衆国特許仮出願第60/504,682号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、当技術において、浮遊微粒子分類の改良された方法および装置への必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、浮遊微粒子を分類するための装置は、少なくとも第1のグループの粒子が、第2のグループの粒子が偏向されるよりも大きな度合いで偏向されるように、粒子に静電荷を印加するように適合されている帯電システムを含んでいる。集束システムは、少なくとも第1のグループの粒子を、流入した空気の流れよりも細い集束された流れに静電気的に実質的に集束させるように適合されている。堆積システムは、集束された流れから、第1のグループの粒子をターゲット表面上に実質的に堆積させるように適合されており、ここで、このターゲット表面は、その上に堆積された粒子を分析することができる分析システムに搬送されることができる。別の実施形態では、特により小さい粒子に対して、より精密な粒子の集束さえも可能にするイオン風が粒子分類システム内部に生成される。
【0007】
前で言及された本発明の実施形態が達成される方法が詳細に理解されることができるように、前で簡潔に要約された本発明のより具体的な記述が、添付の図面に示される本発明の実施形態を参照することによって与えられることができる。しかしながら、添付された図面は本発明の典型的な実施形態を示すのみであり、したがって本発明は、他の同等に効果的な実施形態を許容できるので、それらが本発明の範囲を限定するものであると考えるべきでないことに留意されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
理解を容易にするために、可能な場合には、図面に共通な同一の要素を示すために、同一の参照番号が用いられている。
【0009】
本発明の実施形態は、一般には、浮遊微粒子を分類して、ターゲットの堆積表面上に分類された粒子を正確に堆積する装置を提供する。一実施形態では、現存する分類システムよりも実質的により正確な粒子の分類と堆積を達成するために、この装置は、静電気的な帯電メカニズムと集束メカニズムを使用している。さらに本発明の装置は、より小さい粒子に対してさえも、より効率的な分類と堆積を達成する。開示されたシステムが、浮遊微粒子の捕集、および微量の薬剤の堆積用途(例えば、吸入器)を含む、他の分野における用途を同様に有することができることが当業者には明らかであろう。
【0010】
図1は、本発明による粒子分類システム100の、一実施形態を示す模式図である。一実施形態では、このシステム100は、4つの主要な構成要素、すなわちスペクトログラフィック識別サブシステム102、粒子帯電セクション104、粒子集束セクション106、および粒子堆積サブシステム108を含んでいる。
【0011】
スペクトログラフィック識別サブシステム102は、到来する空気サンプル(1つまたは複数の異なるタイプの粒子を含んでいる)を受領し、さらなる分析のために、その空気サンプル内の対象とする粒子を識別するように適合されている。一実施形態では、スペクトログラフィック識別サブシステム102は、フロー・シャフト110、およびこのフロー・シャフト110の周囲に位置する光検出ユニット112を含む。一実施形態では、光検出ユニット112は、蛍光、色、粒子サイズ、粒子形状等を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の光学的に観察可能な特性に基づいて、粒子を識別するように適合されている。一実施形態では、光検出ユニット112は、粒子がこの光検出ユニット112により形成されたビームを横切る際に、個々の粒子により生成される散乱光のパターンを検出することにより、対象とする粒子を識別するように適合されている。この光検出システム112はさらに、以下でより詳細に論ぜられるように、各々の粒子について、その粒子の最終到達地を示す信号を生成するように適合されている。
【0012】
一実施形態では、スペクトログラフィック識別サブシステム102は、それを通る粒子のごく一部のみを対象とする粒子として識別する。一実施形態では、識別される粒子と無視される粒子の比率は、約1対1,000から1対100程度である。
【0013】
一実施形態では、スペクトログラフィック識別サブシステム102は、仮想インパクタまたは一般的なサンプリング装置内部の他のシステムからの空気サンプルを受領するように適合されている。さらにこのスペクトログラフィック識別サブシステム102は、シース流を受領するように適合されている。一実施形態では、このシース流は、フロー・シャフト110が空気サンプルを受領する位置の近傍で、フロー・シャフト110に注入されるガス(例えば、空気または他の混合ガス)である。粒子の軌跡が光検出ユニット112の視野(例えば、レーザのビーム)と交差するように、到来する空気サンプル中の粒子に空気力学的に焦点を合わせるために、シース流は使用されている。
【0014】
一実施形態では、スペクトログラフィック識別サブシステム102はさらに、粒子分類システム100の他の構成要素に空気サンプル内に含まれる粒子をより良好に搬送し集束するための複合の流れを形成するために、フロー・シャフト110内部で到来する空気サンプルをシース流と混合するように適合されている。
【0015】
他の実施形態では、スペクトログラフィック識別サブシステム102はさらに、この複合の流れ内の対象とする粒子(例えば、所望の光学的特性を示す粒子)の識別に基づいて、粒子帯電セクション104に制御信号を提供するように適合されている。この制御信号は、粒子帯電セクション104が堆積のためにより効率的に粒子を帯電できるようにする。
【0016】
粒子帯電セクション104は、スペクトログラフィック識別サブシステム102の下流に配置され、以下により詳細に記述されているように、粒子集束セクション106の適切な部分に、複合の流れ内の粒子を帯電させて偏向させるように適合されている。一実施形態では、粒子帯電セクション104は、フロー・シャフト110の周囲の近傍に配置された放射状の静電気帯電メカニズム114を含んでいる。一実施形態では、この静電気帯電メカニズム114は、複数の尖った電極チップ(例えば、フロー・シャフト110の端部に機械的に形成された)を含んでいる。一実施形態では、静電気帯電メカニズム114は、フロー・シャフト110の周囲の近傍に配置された第1の電極(例えば、コロナ電極)のアレイ116と、このアレイ116に対してフロー・シャフト110の反対側に配置された第2の電極(例えば、グラウンド電極またはアレイ116より低い電圧の他の電極)118を含んでおり、アレイ116とグラウンド電極118はそれらの間に静電場120を生成するように適合されている。
【0017】
具体的には、アレイ116および第2の電極118は、複合の流れ内の粒子を帯電する静電場120を生成するように適合されている。一実施形態では、静電気帯電メカニズム114は、対象とする粒子を静電気帯電メカニズム114が効率的に帯電させることができるようにするスペクトログラフィック識別サブシステム102からの制御信号を受領するように適合されている。一実施形態では、静電気帯電メカニズム114は、対象とする粒子としてスペクトログラフィック識別サブシステム102によって識別された粒子のみが帯電されるように制御される。他の実施形態では、静電気帯電メカニズム114は複合の流れ内のすべての粒子に電荷を印加し、したがって異なる比率の粒子が、それらの偏向の度合いを決定する異なる電荷対半径比を得る。生成された静電場は、対象とする粒子であると識別された粒子が、粒子集束セクション106の第1の位置に偏向されるような強度である。
【0018】
一実施形態では、粒子は、細い複合の流れ内を、約10から20m毎秒の間の速度で粒子帯電セクション104を通って流れ、したがって粒子が第2の電極118上に捕集されることを実質的に防止する。異なるサイズの粒子は、異なる度合いで偏向され、したがって個々の粒子の軌跡は、最大の粒子(例えば、最大の直径)が最も大きく偏向されるように、その粒子のサイズに従って変化する。同じ電荷対半径比を有する実質的にすべての粒子は、共通の軌跡に沿って偏向される。一実施形態では、静電場120は、対象とする粒子であると識別された粒子を完全に帯電させ、そのため所定の直径に対する帯電は均一であり、したがって偏向される粒子に対して再現可能な軌跡を保証する。
【0019】
一実施形態では、粒子帯電セクション104は、スペクトログラフィック識別サブシステム102によって対象とする粒子であると識別された粒子が偏向される場合にのみ起動される。これは、光検出ユニット112に害を与える可能性がある、潜在的な電磁放射相互作用を低減する。
【0020】
粒子集束セクション106は、粒子帯電セクション104の下流に配置され、フロー・シャフト110から分岐する方向に枝分かれする第1の部分122および第2の部分124とを含んでいる。粒子集束セクション106の第1の部分122は、スペクトログラフィック識別サブシステム102によって対象とする粒子であると識別され、粒子帯電セクション104によって適切に帯電され、偏向された粒子を受領するように適合されている。粒子集束セクション106の第1の部分122は、その内部に配置された第1の分類シャフト126、および偏向された粒子の流れを堆積のためのより細い流れへと集束するように適合されている静電気集束メカニズム128を含んでいる。一実施形態では、静電気集束メカニズム128は、静電気レンズ130を含んでいる。
【0021】
図3は、粒子分類システム100に使用される、静電気レンズ130の一実施形態を示す上面図である。一実施形態では、静電気レンズ130は、レンズ・ハウジング300、および収束型レンズ302を含んでいる。一実施形態では、レンズ・ハウジング300は、その内部に備えられた収束型レンズ302を保護するように構成された円筒形ハウジングである。一実施形態では、レンズ・ハウジング300は、誘電体材料で形成されている。
【0022】
一実施形態では、収束型レンズ302は、複数の薄い壁面の導電性チューブ304〜304(以下では、集合的に「チューブ304」と呼称する)を含んでいる。複数の導電性チューブ304の各々は異なる直径を有し、チューブ304の直径がより小さいほど、チューブ304が半径方向のさらに内側であるように、導電性チューブ304は同心円状に配置されている。一実施形態では、各々のチューブ304が隣とは半径方向のギャップ306〜306(以下では集合的に「エア・ギャップ306」と呼称する)により隔てられ、かつ静電気レンズ130の中心軸である、共通の中心軸Cをチューブ304が共有するように、チューブ304は、相互にレンズ・ハウジング300内部に精密に配列されている。
【0023】
収束型レンズ302の効率は、一連のチューブの直径、連続的なチューブ304の間の異なる電圧、個々のチューブの長さ、および隣接するチューブ304間の半径方向のエア・ギャップ306を含む複数のパラメータに依存する。一実施形態では、これらのパラメータは、静電気分析ソフトウェアを使用して最適化されてもよい。
【0024】
一実施形態では、静電気レンズ130の個々の集束セクション(例えば、チューブ304)は、交番する極性モードに構成されている。他の実施形態では、静電気レンズ130の個々のチューブ304は、連続ステップ電圧構成に構成されている。連続ステップ電圧構成は、一般に、結果としてよりコンパクトでより効率的なデザインになるが、使用されているチューブ304の数に依存して、最も内側のチューブ304のピーク電圧がかなり高くなることがある。これにより、静電気レンズ130の中心軸Cに向かって、より大きな粒子がより小さい粒子よりも急速に移動することになり、したがって一実施形態では、静電気レンズ130の中心軸Cは、より小さい粒子の偏向軌跡と同心的に配置されている。このようにして、より小さい粒子は、静電気レンズ130の中心軸Cに到達するために横断する最小の距離を有する。
【0025】
一実施形態では、複数の同心円のチューブ304は、最外周のチューブ304から最内周のチューブ304へと内側に延伸する2つ以上の半径方向フィン308〜308(以下では、「フィン308」と呼称する)により支持されている。一実施形態では、半径方向フィン308は、以下でより詳細に論じるように、チューブ304を通る流れを妨害することがないように、可能な限り薄く形成される。
【0026】
動作中、静電気レンズ130内部に方向転換された複合の流れの一部は、この複合の流れがレンズの入り口から出口へ(例えば、中心軸Cに向かって)流れるように、静電気レンズ130の連続した各々のエア・ギャップ306を通って流れる。この複合の流れは連続したエア・ギャップ306を通って流れるので、複合の流れは静電気レンズ130から出るまで、段々により狭くなって集束される。最外周(最大直径)または入り口のチューブ304を通る流れの速度は、最内周(最小直径)または出口のチューブ304を通る流れの速度と実質的に等しい。各々のチューブ304の内側の体積流速は、半径方向の内側に向かって低下する。反対に、各々のチューブ304の外側の体積流速は、静電気レンズ130の入り口から出口へ粒子が進行するので、半径方向の外側に向かって上昇し、以下でより詳細に論じられるように、その地点で複合の流れの大部分が粒子堆積サブシステム108から離れて導かれ、粒子集束セクション106の第2の部分124へ向かう。
【0027】
再び図1を参照すると、粒子集束セクション106の第2の部分124は、第1の分類シャフト126から分岐する第2の分類シャフト132を含んでおり、大部分の無視される粒子を含む複合の流れの一部を搬送するように適合されている。一実施形態では、第2の分類シャフト132は、これらの無視される粒子を捕集システムまたは廃棄のためのセクションへ搬送する。
【0028】
粒子堆積サブシステム108は、粒子集束セクション106の下流に配置され、より具体的には、静電気集束メカニズム128(例えば、静電気レンズ130の最内周チューブ304)の最も細い部分(例えば、最内周チューブ304)の下流に配置されている。粒子堆積サブシステム108は、分類され集束された対象とする粒子(例えば、粒子P)が、(例えば、ラマン検出システム136または他のスペクトログラフィック調査システムによる)さらなる分析のために堆積されるターゲット表面134を含んでいる。一実施形態では、このターゲット表面134は、堆積された粒子を粒子分析システム(図示せず)へ搬送する、テープなどの移動表面である。一実施形態では、その上に粒子が堆積されるターゲット表面134のその部分は、500ミクロン以下の直径を有する。
【0029】
動作の一実施形態では、空気サンプル(例えば、エアロゾル流)は、粒子分類システム100により受領され、より具体的には、スペクトログラフィック識別サブシステム102により受領される。同時に、シース流も同様に粒子分類システム100により受領され、このシース流は空気サンプルと混合されて、光検出ユニット112を通り過ぎて搬送される複合の流れを形成する。光検出ユニット112は、前で論じられた、1つまたは複数の光学的に観察可能な特性に基づいて、複合の流れ内の対象とする粒子を(例えば、その粒子の最終到達地を表わす、各々の粒子に対する制御信号を生成することにより)識別する。一実施形態では、このスペクトログラフィック識別サブシステム102は、光検出ユニットによる対象とする粒子の観察に基づいて、制御信号を粒子帯電セクション104に供給する。
【0030】
複合の流れは、粒子帯電セクション104を通って搬送されるので、第1の電極116のアレイは、この複合の流れ内に含まれている粒子を帯電させる静電場120を第2の電極118と共に生成する。対象とする粒子であると識別された粒子が、複合の流れの中心から(例えば、粒子集束セクション106の第1の分類シャフト126に向かって)偏向されるように、粒子は帯電される。一実施形態では、この光検出ユニット112により生成される信号は、粒子帯電セクション104へ出力され、粒子帯電セクション104は、粒子の偏向を容易にするために、適切な方法により静電場120を調節する。一実施形態では、この静電場120は、高速スイッチング回路により調節される。
【0031】
無視される粒子(例えば、粒子p)は、対象とする粒子が偏向されるよりもより小さい度合いで偏向され、したがって、大部分の無視される粒子を含んでいる複合の流れの第1の部分は、第2の分類シャフト132へ搬送され、第2の分類シャフト132は、最終的に複合の流れの第1の部分を捕集装置またはその他の廃棄用の装置に届ける。
【0032】
偏向された粒子(すなわち、対象とする粒子)を含んでいる複合の流れの第2の部分は、第1の分類シャフト126に搬送される。複合の流れのこの第2の部分は、次いで静電気レンズ130を通って流れ、偏向された粒子はそこで、段々と細くなるようにして集束される。静電気レンズ130の最も狭い部分(例えば、チューブ304)を通って集束された後に、偏向された粒子は粒子堆積サブシステム108に届けられ、偏向された粒子はそこで、ターゲット表面134上に堆積される。堆積された粒子を含んでいるターゲット表面134は、次いでその上に堆積された粒子の分析のために、粒子分析システムに届けられる。
【0033】
この粒子分類システム100は、現存する分類システムよりも、実質的により正確な粒子の堆積を達成し、さらに、より小さい粒子に対してさえも、より効率的な分類と堆積を達成する。これは、粒子の集束用の静電気メカニズム(例えば、静電気レンズ130)を使用することに部分的に起因し、静電気のメカニズムは、ターゲット表面134上への堆積を容易にする、低い速度のしっかりと集束された粒子の流れを達成する。このようにして、集束された粒子の堆積位置全体への、従来の空気力学技術と比較してより大きな制御が達成される。
【0034】
図2は、本発明による粒子分類システム200の第2の実施形態を示す模式図である。一実施形態では、このシステム200は、図1に示された粒子分類システム100と実質的に同様であり、4つの主要な構成要素、すなわちスペクトログラフィック識別サブシステム202、粒子帯電セクション204、粒子集束セクション206、および粒子堆積サブシステム208を含んでいる。しかしながら、このシステム200の4つの主要な構成要素は、粒子分類システム100の構成に対してわずかに異なる方法で構成されている。
【0035】
一実施形態では、粒子帯電セクション204は、到来する空気サンプル(1つまたは複数の異なるタイプの粒子を含んでいる)を受領するように適合されているフロー・シャフト210を含んでいる。さらにフロー・シャフト210は、この粒子分類システム200の他の構成要素に空気サンプル内に含まれている粒子をより良好に搬送するための複合の流れを形成するために、到来する空気サンプルと組合せられるシース流を受領するように構成されている。粒子帯電セクション104と同様に、粒子帯電セクション204は、複合の流れ内に静電場220を生成してその内部に含まれている粒子を帯電させる第1の電極のアレイ216および第2の電極218を含んでいる。
【0036】
粒子集束セクション206は、粒子帯電セクション204の下流に配置され、フロー・シャフト210と、フロー・シャフト210から分岐する方向に枝分かれする廃棄シャフト232とを含んでいる。この粒子集束セクション206内部に配置されたフロー・シャフト210の一部分は、その内部に配置された静電気集束メカニズム228をさらに含み、また堆積のためのより細い流れへと帯電された粒子の流れを集束するように適合されている。一実施形態では、静電気集束メカニズム228は、図3に示された静電気レンズ130と同様の収束型静電気レンズ230を含んでいる。廃棄シャフト232は、フロー・シャフト210から分岐し、複合の流れの集束されない部分を、粒子分類システム200から取り除くように適合されている。
【0037】
スペクトログラフィック識別サブシステム202は、粒子集束セクション206の下流に配置され、集束される複合の流れ内の対象とする粒子を識別するように適合されている。一実施形態では、スペクトログラフィック識別サブシステム202は、光検出ユニッ212と、集束されたフロー・シャフト226とを含んでいる。光検出ユニット212は、静電気集束メカニズム228の最も狭い部分の近傍の、集束されたフロー・シャフト226の第1の端部227に配置されている。一実施形態では、光検出ユニット212は、蛍光、色、粒子サイズ等を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の光学的に観察可能な特性に基づいて、粒子を識別するように適合されている。一実施形態では、スペクトログラフィック識別サブシステム202は、以下により詳細に記述されるように、対象とする粒子をより効率的な方法で堆積させるために、極性が切り換えられるターゲット表面に制御信号を提供するように適合されている。
【0038】
粒子堆積サブシステム208は、集束されたフロー・シャフト226、極性切り換えスイッチ240、および選択された粒子がさらなる分析のためにその上に収集されるターゲット表面(例えば、図4の400)を含んでいる。極性切り換えスイッチ240は、光検出ユニット212の下流の、集束されたフロー・シャフト226の遠端部239に配置されている。ターゲット表面は、極性切り換えスイッチ240の近傍の、集束されたフロー・シャフト226の遠端部に同様に配置されている。
【0039】
極性スイッチ240は、対象とする粒子としてスペクトログラフィック識別サブシステム202により識別された粒子が、ターゲット表面上に引き寄せられて捕集され、無視される粒子が偏向されて遠ざけられるか、または代わりの表面上に捕集されるように、ターゲット表面の極性を切り換えるように適合されている。ターゲット表面は、図1のターゲット表面134と実質的に同様の方法で構成されてもよく、またはその代わりに異なる構成を有してもよい。
【0040】
図4は、図2に示された粒子分類システム200に用いられるターゲット表面400の一実施形態の上面図である。一実施形態では、ターゲット表面400は、第1の電極402、および少なくとも1つの第2の電極404〜404(以下では、「第2の電極404」と呼称する)を含んでいる。一実施形態では、第1の電極402は、実質的に円形の断面を有し、また第2の電極404は、第1の電極402の周囲に同心円的に配置された、実質的にリング形の断面を有する。一実施形態では、第2の電極404は、単一のリング形の電極である。他の実施形態では、第2の電極404は、その各々がリングの断片を形成する複数の電極404を含んでいる。
【0041】
第1の電極402と第2の電極404の間の電場の極性を変化させることにより、帯電された粒子は、第1の電極402あるいは1つまたは複数の第2の電極404のどちらかに、捕集のために選択的に引きつけられることができる。例えば、ターゲット表面400の極性は、対象とする粒子が第1の電極402上に堆積され、無視される粒子が第2の電極404上に堆積されるように、またはその逆になるように設定されてもよい。一実施形態では、粒子は、電極402または404の表面上に直接堆積する。他の実施形態では、電極402および404の表面は、それを通して電場が広がる(例えば、電極の表面の上に)、取り除くことができる半導体材料で被覆されており、粒子はこの取り除くことができる材料の上に堆積する。ターゲット表面400が、実質的に円形またはリング形の断面を有する電極402および404を含むように図示されているが、任意の構成、形状、および電極の数が用いられてもよいことを当業者は認識するであろう。
【0042】
動作の一実施形態では、空気サンプル(例えば、エアロゾル流)は、粒子分類システム200により受領され、より具体的には、粒子帯電システム204により受領される。同時に、シース流も同様に粒子分類システム200により受領され、このシース流は、コロナ電極のアレイ216とグラウンド電極218の間に生成される静電場220を通って搬送される複合の流れを形成するために、空気サンプルと混合される。粒子はコロナ電極のアレイ216に形成されるイオンにより帯電され、コロナ電極のアレイ216と集束電極の間に形成される電場により、集束メカニズム228に向けられる。
【0043】
帯電された粒子を含む複合の流れは、次に静電気レンズ230を通って流れ、静電気レンズ230は粒子を細い低速度の流れへと集束させる。静電気レンズ230の最も狭い部分(例えば、チューブ304)を通って集束された後に、粒子は、スペクトログラフィック識別サブシステム202の光検出ユニット212に届けられる。光検出ユニット212は、前で論じたように、1つまたは複数の光学的に観察可能な特性に基づいて、複合の流れ内の対象とする粒子を識別する。
【0044】
極性切り換えスイッチ240は、対象とする粒子として光検出ユニット212により識別された粒子(例えば、粒子P)が、第1の電極402などのターゲット表面上に引き寄せられて捕集され、無視される粒子(例えば、粒子p)が、第2の電極404の少なくとも1つの表面上に堆積されるように、ターゲット表面の極性を切り換える。堆積された粒子を含んでいるターゲット表面は、次いでその上に堆積された粒子の分析のために、粒子分析システムに届けられる。
【0045】
代替の実施形態では、粒子帯電セクション204は、粒子が集束されかつ識別された後にのみ帯電されるように、スペクトログラフィック識別サブシステム202の上流よりもむしろ下流に配置されてもよい。この実施形態では、粒子帯電セクション204を形成する第1の電極のアレイ216は、ターゲット表面の電極402および404を使用して、それらの間にイオン風が生じるように、電場を生成する。このイオン風は、複合の流れ内の粒子をさらに集束するための機械的な手段として機能し、小さい粒子の軌跡を集束させ制御するためには特に有用である。
【0046】
粒子分類システム100と同様に、粒子分類システム200は、現存する分類システムよりも実質的により正確な粒子の堆積を達成し、さらに、より小さい粒子(例えば、スペクトログラフィック調査の後に帯電が実行される場合)に対してさえもより効率的な分類と堆積を達成するように構成されることができる。また、スペクトログラフィック調査に先立つ粒子の帯電は、光検出ユニットの動作と干渉する、粒子帯電セクションからの電磁放射の可能性を大幅に低減する。いくつかの実施形態では、粒子分類システム200は、粒子分類システム100よりもコンパクトとなるように製造されてもよい。
【0047】
図5は、本発明による粒子分類システム500の第3の実施形態を示す模式図である。一実施形態では、この粒子分類システム500は、4つの主要な構成要素、すなわちスペクトログラフィック識別サブシステム502、粒子帯電セクション504、粒子集束セクション506、および粒子堆積サブシステム508を含んでいる。しかしながら、このシステム500の4つの主要なこれらの構成要素は、前で論じた、粒子分類システム100および200の構成要素の構成とは異なる方法で構成されている。
【0048】
一実施形態では、粒子帯電セクション504は、空気サンプル・シャフト540および電極のアレイ516を含んでいる。空気サンプル・シャフト540は、この粒子分類システム500に空気サンプルを(例えば、仮想インパクタまたはその他のサンプル捕集手段から)届けるように適合され、より大きなフロー・シャフト510または堆積チャンバー内に開口する第1の端部542を含んでおり、空気サンプルはそこで、シース流と組合せられて複合の流れを形成する。電極のアレイ516は、この開口した第1の端部542の近傍で、空気サンプル・シャフト540の周囲を取り囲んで配置されている。電極のアレイ516は、この空気サンプル・シャフト540の開口した第1の端部542の領域に電場を生成するように適合されている。
【0049】
スペクトログラフィック識別サブシステム502は、粒子帯電セクション504の下流に配置され、複合の流れ内の対象とする粒子を識別するように適合されている。一実施形態では、スペクトログラフィック識別サブシステム502は、フロー・シャフト510の周囲の附近に配置されている光検出ユニット512を含んでいる。一実施形態では、光検出ユニット512は、蛍光、色、粒子の形状、粒子サイズ等を含むがこれらに限定されない1つまたは複数の光学的に観察可能な特性に基づいて、粒子を識別するように適合されている。一実施形態では、スペクトログラフィック識別サブシステム502は、粒子堆積サブシステム508に制御信号を送信するように適合されている。
【0050】
粒子堆積サブシステム508は、スペクトログラフィック識別サブシステム502の下流に配置され、複合の流れ内の粒子がその上に堆積するターゲット表面550を含んでいる。一実施形態では、ターゲット表面550は、少なくとも1つの第1の電極552、少なくとも1つの第2の電極554、および極性切り換えスイッチ556を含んでいる。極性切り換えスイッチ556は、対象とする粒子が、第1の電極552または第2の電極554のうちの一方の上に(例えば、スペクトログラフィック識別サブシステム502から受領した制御信号に従って)選択的に堆積されるように、ターゲット表面550の極性を切り換えるように適合されている。一実施形態では、ターゲット表面550の電極552および554は、図4に示されたターゲット表面400と同様の方法で形成されている。さらに、第1と第2の電極552および554は、粒子帯電セクション504の電極のアレイ516と共に第2の電場を生成するように適合され、したがって粒子集束セクション506が、この第2の電場の領域内に確立される。
【0051】
動作の一実施形態では、空気サンプルは、粒子分類システム500により受領され、より具体的には、空気サンプル・シャフト540により受領される。空気サンプル内の粒子は、この空気サンプル・シャフト540の開口した第1の端部542を通って流れるので、これらの粒子は、粒子帯電セクション504と遭遇して、電極のアレイ516に形成されるイオンにより帯電される。
【0052】
帯電された粒子が空気サンプル・シャフト540から出ると、粒子はシース流と組合せられて複合の流れを形成する。この複合の流れはスペクトログラフィック識別サブシステム502を通って流れ、それが複合の流れ内の対象とする粒子(例えば、粒子P)を識別する。一実施形態では、スペクトログラフィック識別サブシステム502は次に、対象とする粒子をより効率的に粒子堆積サブシステム508が捕集できるようにする極性スイッチ556に制御信号を送信する。
【0053】
複合の流れは、粒子集束セクション506を通って搬送されるので、粒子帯電セクション504を形成する電極のアレイ516と、粒子堆積サブシステム508の第1の電極552および第2の電極554とは、それらの間に第2の電場を生成する。第2の電場は、複合の流れ内の対象とする粒子をさらに集束させるイオン風を生成する。一実施形態では、このイオン風は、複合の流れ内の粒子の軌跡を制御し、かつ対象とする粒子を意図される電極552または554上に集束させる、実質的に円錐形の風である。
【0054】
極性スイッチ556は、第1の電極552または第2の電極554のいずれかが対象とする粒子をその上に捕集するように適合されるかを制御する。図示された実施形態では、極性スイッチ556は、第1の電極552が対象とする粒子をその上に捕集するように設定されている。無視される粒子(例えば、粒子p)は、第2の電極554の表面上に捕集される。
【0055】
この実施形態では、粒子帯電セクション504を形成する電極のアレイ516と、粒子堆積サブシステム508の第1の電極552および第2の電極554との間における風の生成は、特により小さい粒子に対する、改善された軌跡の制御を提供する。したがって、粒子分類システム500は、小さい粒子(例えば、約0.5μmから10μmの範囲)さえも、精密なターゲット表面上に正確に堆積することができる。
【0056】
このようにして、本発明は、浮遊微粒子を分類する分野において、顕著な進歩を表わしている。現存する分類システムよりも実質的に正確な粒子堆積を達成するために、静電気帯電および集束メカニズムを採用した装置が提供される。さらに、本発明の装置は、より小さい粒子に対してさえも、より効率的な分類と堆積を達成する。開示されたシステムが、浮遊微粒子の捕集と、微量の薬剤の堆積の用途を含む他の分野における用途も同様に有することを、当業者は認識するであろう。この新規な方法が、本発明の実施形態による装置を示す図面を同時に用いて説明されていることに留意されたい。
【0057】
以上の記述は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の他の実施形態およびさらなる実施形態も、本発明の基本的な範囲を逸脱することなく考案されることができ、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により決定される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による粒子分類システムの、一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明による粒子分類システムの、第2の実施形態を示す模式図である。
【図3】粒子分類システムに用いられる静電気レンズの一実施形態を示す上面図である。
【図4】図2に示された粒子分類システムに用いられるターゲット表面の一実施形態の上面図である。
【図5】本発明による粒子分類システム500の第3の実施形態を示す模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のグループの粒子が、第2のグループの粒子が偏向されるよりも大きな度合いで偏向されるように、前記粒子に静電荷を印加するように適合されている粒子帯電システムと、
少なくとも前記第1のグループの前記粒子を、流入した空気の流れよりも細い集束された流れに静電気的に実質的に集束させるように適合されている粒子集束システムと、
前記集束された流れから、前記第1のグループの前記粒子をターゲット表面上に堆積させるように適合されている粒子堆積システムとを含む、
流入した空気の流れ内に含まれている2つ以上の異なるグループの粒子を分離するための装置。
【請求項2】
前記2つ以上の異なるグループの粒子から、前記少なくとも第1のグループの粒子を識別するように適合されている粒子識別システムをさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記粒子識別システムが、前記粒子帯電セクションにより前記第1のグループの粒子が帯電される前に、前記少なくとも第1のグループの粒子を識別するように適合されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記粒子識別システムが、少なくとも1つの光学的に観察可能な特性に基づいて、前記少なくとも第1のグループの粒子を識別するように適合されている、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光学的に観察可能な特性が、蛍光、色、粒子形状、および粒子サイズの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記帯電システムが
前記流入した空気の流れの軌跡の近傍に配置された第1の電極のアレイと、
前記第1の電極のアレイの近傍に配置された第2の電極であって、前記第2の電極と前記第1の電極のアレイがそれらの間に静電場を生成するように適合されており、前記静電場が前記流入した空気の流れ内の粒子を帯電させるように適合されている、第2の電極とを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記第1のグループの粒子内の粒子の軌跡が、前記集束システムに向かって偏向されるように、前記少なくとも第1のグループの粒子を帯電させるように前記静電場が適合されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記ターゲット表面は、500ミクロン以下の直径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記ターゲット表面が
前記少なくとも第1のグループの粒子の粒子がその上に堆積される少なくとも第1の電極と、
前記少なくとも第1のグループの粒子の粒子がその上に堆積されない少なくとも第2の電極とを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
少なくとも第1のグループの粒子が、第2のグループの粒子が偏向されるよりもより大きな度合いで偏向されるように、前記粒子に静電荷を印加する工程と、
少なくとも前記第1のグループの前記粒子を、流入した空気の流れよりも細い集束された流れに静電気的に実質的に集束させる工程と、
前記集束された流れから、前記第1のグループの前記粒子をターゲット表面上に堆積させるように粒子堆積システムが適合される工程とを含む、流入した空気の流れ内に含まれている2つ以上の異なるグループの粒子を分離するための方法。
【請求項11】
少なくとも第1のグループの粒子が、第2のグループの粒子が偏向されるよりも大きな度合いで偏向されるように、前記粒子に静電荷を印加するように適合されている粒子帯電システムと、
前記第1のグループの前記粒子をターゲット表面上に堆積させるように適合されている粒子堆積システムとを含む、
流入した空気の流れ内に含まれている2つ以上の異なるグループの粒子を分離するための装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−506106(P2007−506106A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527122(P2006−527122)
【出願日】平成16年9月20日(2004.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/030811
【国際公開番号】WO2005/081684
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(505316842)サーノフ コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】