浴槽用手摺り
【課題】浴槽の側壁への取り付けや取り外しの操作の手間を少なくすることができる浴槽用手摺りを提供する。
【解決手段】浴槽の側壁の上端部に配置され、手摺り2が設けられた本体具3と、浴槽の側壁の一方の側面に対向配置して本体具3の一方の側部に形成された側片4と、側片4の内側に設けられた一つの押圧具5と、押圧具5の上記側片4と反対側の面に左右一対設けられた押圧板6と、上記側片4の外側に設けられ、押圧具5を側片4に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドル7と、本体具3の上記側片4と反対側の側部に一対設けられ、各独立して押圧具5に近接離反する方向にスライドして移動自在な押圧受け具8と、上記の一対の各押圧板6に対向して一対の各押圧受け具8に設けられた押圧受け板9と、押圧受け具8をスライド移動させた箇所に解除自在に固定する固定・解除手段10と、を備える。
【解決手段】浴槽の側壁の上端部に配置され、手摺り2が設けられた本体具3と、浴槽の側壁の一方の側面に対向配置して本体具3の一方の側部に形成された側片4と、側片4の内側に設けられた一つの押圧具5と、押圧具5の上記側片4と反対側の面に左右一対設けられた押圧板6と、上記側片4の外側に設けられ、押圧具5を側片4に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドル7と、本体具3の上記側片4と反対側の側部に一対設けられ、各独立して押圧具5に近接離反する方向にスライドして移動自在な押圧受け具8と、上記の一対の各押圧板6に対向して一対の各押圧受け具8に設けられた押圧受け板9と、押圧受け具8をスライド移動させた箇所に解除自在に固定する固定・解除手段10と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽への出入りを補助するために、浴槽の側壁に取り付けて使用される浴槽用手摺りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者などの入浴を介護するために、浴槽の側壁に取り付けて使用される浴槽用手摺りが従来から提供されている。この浴槽用手摺りに掴まることによって、浴槽の側壁を乗り越えて浴槽に出入りすることなどが容易になるものである。
【0003】
図19は特許文献1で提供されている浴槽用手摺りの一例を示すものであり、下面が開口するコ字形の本体具3に手摺り2を設けて形成してある。本体具3の一方の側片4の内側には左右一対の押圧板6が設けてある。この各押圧板6は側片4を通して設けられた一対のボルト軸12の先端に取り付けてあり、ボルト軸12の後端部には側片4の外側においてハンドルノブ13が設けてある。ハンドルノブ13内に雌ねじ凹部(図示省略)が形成してあり、ボルト軸12の後端部はこの雌ねじ凹部内に螺合している。また手摺り2の他方の側片22にはその内側に押圧受け板9が設けてある。
【0004】
そして浴槽の側壁1にこの浴槽用手摺りを取り付けるにあたっては、まず側壁1の上端部に跨らせるように本体具3を配置し、側壁1の浴槽外の面に押圧受け板9を当接させる。次に、一対の各ハンドルノブ13を回すと、ハンドルノブ13の雌ねじ凹部内に後端部が螺合しているボルト軸12は、この螺合によって前進し、ボルト軸12の先端部に設けた押圧板6を前進させて側壁1の浴槽内の面に当接させることができる。このようにハンドルノブ13を回して締め付けることによって、押圧受け板9と押圧板6の間に浴槽の側壁1を挟み込むことができるものであり、浴槽の側壁1に浴槽用手摺りを取り付けることができるものである。
【0005】
ここで図20に示すように、側壁1は浴槽の内面側が湾曲して厚みが一定でない場合が多い。このため、一対の押圧板6を設け、各押圧板6に対応するハンドルノブ13の回動操作で、各押圧板6を独立して前後に移動させることができるようにしてあり、各押圧板6の前進距離を調整することによって、湾曲して厚みが異なる部分においても押圧受け板9と押圧板6の間に浴槽の側壁1を挟み込むことができるようにし、高い強度で浴槽用手摺りを取り付けることができるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−261327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように形成される浴槽用手摺りにあって、浴槽の側壁1の湾曲による厚みの変化に対応することができるように、左右一対の押圧板6を設け、各押圧板6をそれぞれ独立して移動させることができるようにしてあり、このために各押圧板6の操作は二つのハンドルノブ13をそれぞれ回して行なう必要がある。従って、浴槽の側壁1に浴槽用手摺りを取り付けるときには、二つのハンドルノブ13を順に回して締め付ける必要があり、手間がかかるという問題があった。特に高齢者等が入浴するときだけ浴槽用手摺りを取り付け、それ以外のときは浴槽用手摺りを取り外すような場合では、取り付けと取り外しのいずれにおいても二つのハンドルノブ13を回す必要があるため、手間が一層煩雑になるものであった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、浴槽の側壁への取り付けや取り外しの操作の手間を少なくすることができる浴槽用手摺りを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る浴槽用手摺りは、浴槽の側壁1の上端部に配置され、手摺り2が設けられた本体具3と、浴槽の側壁1の一方の側面に対向配置して本体具3の一方の側部に形成された側片4と、側片4の内側に設けられた一つの押圧具5と、押圧具5の上記側片4と反対側の面に左右一対設けられた押圧板6と、上記側片4の外側に設けられ、押圧具5を側片4に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドル7と、本体具3の上記側片4と反対側の側部に一対設けられ、各独立して押圧具5に近接離反する方向にスライドして移動自在な押圧受け具8と、上記の一対の各押圧板6に対向して一対の各押圧受け具8に設けられた押圧受け板9と、押圧受け具8をスライド移動させた箇所に解除自在に固定する固定・解除手段10と、を備えて成ることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、一対の押圧受け具8をそれぞれ独立してスライド移動させることによって、浴槽の側壁1が湾曲して厚みが異なる部分においても各押圧受け具8の押圧受け板9を浴槽の側壁1の側面に当接させることができるものであり、そして一つの操作ハンドル7の操作で押圧具5を前進移動させて一対の押圧板6を浴槽の側壁1の側面に圧接させることによって、押圧板6と押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟持して、浴槽の側壁1の上端部に浴槽用手摺りを取り付けることができるものである。このように、一つの操作ハンドル7の操作で一対の押圧板6を移動させて押圧板6と押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟持する締め付けを行なうことができるものであって、浴槽の側壁1への取り付けや取り外しの操作の手間を少なくすることができるものである。特に浴槽の側壁1の同じ箇所に繰り返して取り付けたり取り外したりする場合、一対の押圧受け具8をスライド移動させる操作は最初に取り付けを行なうときだけでよく、それ以後は一つの操作ハンドル7を操作するだけで済むものであり、浴槽の側壁1への取り付けや取り外しの操作の手間がより少なくなるものである。
【0011】
また本発明において、上記の操作ハンドル7は、上記側片4に設けた雌ねじ具11に通して側片4を貫通して設けられ、先端部が押圧具5に連結されたボルト軸12と、ボルト軸12の後端部に取り付けられ、ボルト軸2を回動させて雌ねじ具11に対する螺合でボルト軸12を前進後退させる操作を行なうハンドルノブ13と、所定の力以下ではハンドルノブ13からボルト軸12に回動力が伝達され、所定の力を超えるとハンドルノブ13からボルト軸12に回動力が伝達されないようにする回動伝達遮断機構14と、を備えて成ることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、操作ハンドル7のハンドルノブ13を回す操作をしてボルト軸12を回動させることによって、押圧具5を前進移動させ、押圧具5の押圧板6と押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟持して浴槽用手摺りを取り付けるにあたって、押圧具5の押圧板6が浴槽の側壁1に当接している状態で、ハンドルノブ13を強い力で回しても、ハンドルノブ13からの力は回動伝達遮断機構14で遮断されてボルト軸12へ伝わらず、過剰な力で押圧具5の押圧板6が浴槽の側壁1に圧接されることを防ぐことができるものであり、浴槽の側壁1が破損することを防止することができるものである。
【0013】
また本発明において、上記の押圧受け具8は、本体具3に設けた差込穴15にスライド自在に差し込まれるスライド片16を備えて形成され、上記の固定・解除手段10は、スライド片16にそのスライド方向に沿って複数形成された係合溝17と、本体具3に設けられ、係合溝17に係合・離脱自在なラッチ具18とを備えて成ることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、押圧受け具8をスライド移動させる際の固定・解除手段10による固定や解除は、スライド片16の係合溝17にラッチ具18を係合させたり離脱させたりして行なうことができるものであり、押圧受け具8のスライド操作を容易に行なうことができるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一対の押圧受け具8をそれぞれ独立してスライド移動させることによって、浴槽の側壁1が湾曲して厚みが異なる部分においても各押圧受け具8の押圧受け板9を浴槽の側壁1の側面に当接させることができるものであり、そして一つの操作ハンドル7の操作で押圧具5を前進移動させて一対の押圧板6を浴槽の側壁1の側面に圧接させることによって、押圧板6と押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟持して、浴槽の側壁1の上端部に浴槽用手摺りを取り付けることができるものである。このように、一つの操作ハンドル7の操作で一対の押圧板6を移動させて押圧板6と押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟持する締め付けを行なうことができるものであって、浴槽の側壁1への取り付けや取り外しの操作の手間を少なくすることができるものである。特に浴槽の側壁1の同じ箇所に繰り返して取り付けたり取り外したりする場合、一対の押圧受け具8をスライド移動させる操作は最初に取り付けを行なうときだけでよく、それ以後は一つの操作ハンドル7を操作するだけで済むものであり、浴槽の側壁1への取り付けや取り外しの操作の手間が少なくなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】同上の側面図である。
【図3】同上の背面図である。
【図4】同上の底面図である。
【図5】同上の側面断面図である。
【図6】同上の底面断面図である。
【図7】同上の操作ハンドルを示す断面図である。
【図8】同上の操作ハンドルを示す分解斜視図である。
【図9】(a)はハンドルノブを示す断面図、(b)は可動側ロック座金受けを示す正面図、(c)は固定側ロック座金受けを示す正面図、(d)は固定側ロック座金受けを示す断面図である。
【図10】同上のトルクロック座金を示すものであり、(a)は正面図、(b)はイ−イ線断面図、(c)は背面図、(d)はロ−ロ線での拡大断面図である。
【図11】同上の回転伝達遮断機構のトルクロック座金の噛み合いを示すものであり(a)(b)は一部の断面図である。
【図12】同上の押圧受け具とラッチ具等を示す分解斜視図である。
【図13】同上の押圧受け具を示すものであり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図14】同上のラッチ具の分解斜視図である。
【図15】同上のラッチ具の断面図である。
【図16】同上の係合溝とラッチ爪の係合状態を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ概略図である。
【図17】同上の取付状態を示す下から見た断面図である。
【図18】本発明の他の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図19】従来例を示すものであり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【図20】従来例の取付状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1乃至図6は本発明に係る浴槽用手摺りAの実施の形態の一例を示すものであり、手摺り2は本体具3に設けてある。本体具3は上片24と、上片24の一側部に下方へ垂下して設けた側片4とから、断面横L字形に形成してあり、手摺り2は本体具3の側片4の外面に取り付けてある。尚、図5に示すように、上片24は側片4と一体に形成される水平部24aと、水平部24aの上に被せて取り付けられるカバー部24bからなるものである。
【0019】
手摺り2は側片4の両側端部外面に取り付けられる一対の支柱25と、支柱25の上端間に掛け渡して取り付けられる環状の握り26とから、図1のように形成されるものである。各支柱25には上下複数個所に等間隔で取付孔27が穿設してあり、この取付孔27を通して固定ねじ28を図4のように側片4にねじ込むことによって、側片4に支柱25を固定して、手摺り2の取り付けを行なうことができるものである。取付孔27は支柱25に上下複数個所において設けてあるので、固定ねじ28を通す取付孔27を選択することによって、手摺り2の握り26の高さ調節をすることができるものである。
【0020】
側片4の中央部には雌ねじ具11が取り付けてある。雌ねじ具11は図5及び図6に示すように側片4の内外両方向に開口するものであり、内周に雌ねじが形成してある。この内周の雌ねじに外周の雄ねじを螺合した状態で、雌ねじ具11にボルト軸12が通してある。図7及び図8に示すように、ボルト軸12の側片4から内方へ突出する側の端部には押圧具取付軸部30が設けてあり、ボルト軸12の側片4から外方へ突出する側の端部にはハンドルノブ取付軸部31が設けてある。ハンドルノブ取付軸部31は基部側の断面形状が六角形の角軸部32と、先部側の断面形状が円形の丸軸部33とからなるものである。またボルト軸12の中心に全長に亘る空洞孔が設けてあり、この空洞孔のうち押圧具取付軸部30の部分と、丸軸部33の部分の内周にねじを切って、それぞれ雌ねじ孔34として形成してある。
【0021】
図7及び図8は操作ハンドル7を示すものである。図7及び図8において13はハンドルノブであって、中央に貫通する孔を設けた筒状に形成してあり、図9(a)のように、この孔は外側から内側へと連通する、頭隠し用孔36、最も小径の丸孔に形成される空転用丸孔37、空転用丸孔37より大径の座金収容孔38、座金収容孔38より大径の八角形孔に形成される座金受け収容孔39によって形成されるものである。座金収容孔38には座金49が収容されるものであり、また角孔に形成される座金受け収容孔39には図9(b)のような外周が八角形、内周が丸孔40aのドーナツ状に形成される可動側ロック座金受け40がはめ込んで取り付けてある。この可動側ロック座金受け40には、その内周の丸孔40aを囲むように等間隔の4箇所においてピン孔41が穿設してある。
【0022】
図7及び図8において42はトルクロック座金であり、内外周が円形のドーナツ板状に形成してある。トルクロック座金42の片面の外周部には、図10(a)〜(c)に示すようにロック突部43が周方向に沿った等間隔で複数個所に突設してあり、周方向に隣り合うロック突部43間に係合凹部46が形成されるようにしてある。各ロック突部43は図10(d)に示すように、トルクロック座金42の円周方向に向けてトルクロック座金42の表面から斜めに立ち上がるように傾斜する傾斜部44と、傾斜部44の上端と連続しトルクロック座金42の表面と平行な平行部45とで形成されるものである。尚、図10(a)において、傾斜部44と平行部45を斜線を付して示している。またトルクロック座金42には、その内周を囲むように等間隔の4箇所においてピン孔47が穿設してある。
【0023】
このトルクロック座金42は、ロック突部43を設けた面が外側になるように上記の可動側ロック座金受け40の片面に配置すると共に、トルクロック座金42のピン孔47と可動側ロック座金受け40のピン孔41とにピン48を圧入することによって、周方向への回り止めをした状態で、可動側ロック座金受け40に取り付けられるものである。
【0024】
また図7及び図8において51は固定側ロック座金受けであり、固定側ロック座金受け51は図9(c)(d)に示すように、内周が六角孔の角孔51bとなった筒状に形成してあり、固定側ロック座金受け51の片面には内周の角孔51bを囲むようにロック座金収納凹部53が凹設してある。このロック座金収納凹部53には角孔51bを囲むように等間隔の4箇所においてピン孔52が穿設してある。上記のトルクロック座金42は、ロック突部43を設けた面が外側になるようにロック座金収納凹部53内に配置して、トルクロック座金42のピン孔47と固定側ロック座金受け51のピン孔52とにピン48を圧入することによって、周方向への回り止めをした状態で、固定側ロック座金受け51に取り付けられるものである。
【0025】
そしてこのようにトルクロック座金42を取り付けた固定側ロック座金受け51は、ボルト軸12のハンドルノブ取付軸部31にその先端から被挿して、内周の角孔51bを角軸部32に嵌め合わせた状態で、図7のようにボルト軸12に取り付けられるものである。固定側ロック座金受け51は、トルクロック座金42を取り付けた面がハンドルノブ取付軸部31の先端側を向くように配置して取り付けられるものであり、角孔51bと角軸部32の嵌め合わせによって、回転しない状態に固定してハンドルノブ取付軸部31に取り付けられるものである。
【0026】
また上記のように可動側ロック座金受け40をはめ込んで装着したハンドルノブ13は、ボルト軸12のハンドルノブ取付軸部31にその先端から被挿して、図7のように丸軸部33に取り付けられるものであり、ハンドルノブ13の空転用丸孔37と可動側ロック座金受け40の内周の丸孔40aが丸軸部33の外周を回ることによって回動自在になっている。そして図7のように、頭隠し用孔36の孔底に座金55を配置し、固定ねじ56をハンドルノブ取付軸部31の雌ねじ孔34にねじ込んで、座金55で頭隠し用孔36の孔底を押えることによって、ハンドルノブ13の抜け止めを行なうようにしてある。頭隠し用孔36にはゴム製のキャップ57をはめ込んで、固定ねじ56の頭を隠すようにしてある。
【0027】
ここで、上記のようにハンドルノブ13に装着した可動側ロック座金受け40にはトルクロック座金42が設けてあり、ハンドルノブ13をハンドルノブ取付軸部31に取り付けることによって、この可動側ロック座金受け40のトルクロック座金42は、上記の固定側ロック座金受け51に設けたトルクロック座金42に対向して相互に噛み合っている。すなわち、図11(a)に示すように、固定側ロック座金受け51のトルクロック座金42(42a)と可動側ロック座金受け40のトルクロック座金42(42b)とは、ロック突部43と係合凹部46が相互にはまり合って係合することによって、噛み合っている。このトルクロック座金42a,42bの噛み合いによって、ハンドルノブ13を回し操作する際の回動力がボルト軸12に伝わり、ボルト軸12を回すことができるものである。また、ハンドルノブ13を回し操作する際の回動力が過大な力であると、図11(b)に示すように、固定側ロック座金受け51のトルクロック座金42aと可動側ロック座金受け40のトルクロック座金42bのそれぞれの傾斜部44が滑って、ロック突部43と係合凹部46との係合による噛み合いが外れる。そして固定側ロック座金受け51のトルクロック座金42aの平行部45の上に可動側ロック座金受け40のトルクロック座金42bの平行部45が乗り上げることになって、固定側ロック座金受け51のトルクロック座金42aに対して可動側ロック座金受け40のトルクロック座金42bがニ矢印方向に空回りすることになるので、ハンドルノブ13も空転用丸孔37の外周を空転し、ハンドルノブ13を回し操作する回動力がボルト軸12に伝わらないようにすることができるものである。このような構成の一対のトルクロック座金42をハンドルノブ13とボルト軸12の間に備えて、所定の力以下ではハンドルノブ13からボルト軸12に回動力が伝達され、所定の力を超えるとハンドルノブ13からボルト軸12に回動力が伝達されないようにする回動伝達遮断機構14が形成されるものである。
【0028】
上記のように、ボルト軸12に回動伝達遮断機構14とハンドルノブ13を取り付けることによって、図7に示すような操作ハンドル7が形成されるものであり、既述のように、雌ねじ具11に螺合した状態で側片4にボルト軸12を挿通することによって、本体具3に操作ハンドル7を装着することができるものである。
【0029】
このように側片4に挿通したボルト軸12の先端部には、側片4の内側において押圧具5が取り付けてある。押圧具5は左右に長い板状体で形成されるものであり、その中央部の孔にボルト軸12の先端部の押圧具取付軸部30を差し込んで、図5及び図6に示すように固定ねじ59を押圧具取付軸部30の雌ねじ孔34にねじ込むことによって、固定ねじ59で押えてボルト軸12の先端部の押圧具取付軸部30に若干の遊びをもって取り付けるようにしてある。従ってこの押圧具5はボルト軸12の軸周りの上下方向に回動自在であり、且つ前後方向に揺動自在となっている。そして押圧具5の側片4と反対側の面には、左右両端部にそれぞれ押圧板6が設けてある。押圧板6は縦長の矩形に形成してあり、各押圧板6の側片4と反対側の面にはゴムシートなどで形成される滑り止めシート60が貼ってある。押圧板6は図6のように固定軸61で押圧具5に遊びをもって取り付けてあり、固定軸61の回りの上下方向に回転自在であり、且つ前後方向に揺動自在となっている。
【0030】
操作ハンドル7のハンドルノブ13を回してボルト軸12を回動させると、ボルト軸12の外周の雄ねじが雌ねじ具11の内周の雌ねじに螺合しているので、ボルト軸12の回動方向に従って、ボルト軸12は螺進あるいは螺退して移動し、押圧具5及び押圧板6を側片4から離れる方向あるいは側片4に近接する方向に前後移動させることができるものである。
【0031】
本体具3の上片24には、側片4と直交する方向に細長く、側片4と反対側の側部において開口する差込穴15が設けてある。この差込穴15は上片24の両端部に平行に一対設けられるものであり、図12に示すように本体具3の上片24の上面に筒状部70を設けることによって、この筒状部70内に差込穴15が形成されるようにしてある。
【0032】
押圧受け具8は水平なスライド片16と、スライド片16の一端に下方へ垂下して延設される受け片63とから、図12及び図13のように横L字形に形成されるものであり、受け片63のスライド片16と反対側の面にC字形のグリップ64が設けてある。また受け片63のスライド片16の側の面には押圧受け板9が取り付けてある。押圧受け板9は縦長の矩形に形成してあり、押圧受け板9の受け片63と反対側の面にはゴムシートなどで形成される滑り止めシート60が貼ってある。押圧受け板9は図6のように固定軸65で押圧受け具8の受け片63に遊びをもって取り付けてあり、固定軸65の回りの上下方向に回転自在であり、且つ前後方向に揺動自在となっている。
【0033】
押圧受け板9を設けた押圧受け具8は一対用いられるものであり、各スライド片16を本体具3の上片24の各差込穴15にスライド自在に差し込むことによって、上片24の側片4と反対側の側部に左右一対の押圧受け具8を取り付けるようにしてある。このようにスライド片16を差込穴15に差し込んで一対の押圧受け具8を本体具3に取り付けると、一対の各押圧受け具8に設けた押圧受け板9は上記の押圧具5に設けた一対の押圧板6と滑り止めシート60を貼った面同士で対向することになる。
【0034】
ここで、各押圧受け具8のスライド片16の相対向する内側の側面には、スライド片16の長手方向、すなわち前後方向に沿って等間隔で多数の係合溝17が凹設してある。係合溝17は図13に示すように、側片4の側の側面がスライド片16のスライド方向と垂直な垂直面17aに形成してあると共に、側片4と反対側の面がスライド片16のスライド方向に対して側片4と反対側へ傾斜する傾斜面17bに形成してある。
【0035】
また本体具3の上片24に設けた一対の筒状部70には、差込穴15の開口部の近傍において、相対向する側面にラッチ窓孔72を設けて、差込穴15の一部を側方へ開口させてある。このラッチ窓孔72の外側にはラッチ具18が取り付けてある。
【0036】
ラッチ具18の本体となるラッチ爪ホルダー73は基板74の上面にホルダー筒75を設けて形成されるものであり、図14及び図15に示すように、ホルダー筒75内に両端で開口するホルダー洞穴76が設けてある。このホルダー筒75の一側部には横長のガイド孔77とストッパー孔78とが、ホルダー洞穴76内に連通するように穿設してある。ホルダー洞穴76内にはラッチ爪79と押さえばね80とが取り付けてある。ラッチ爪79は先端部にスライド傾斜面81を設けて水平断面レ字形に形成されるものであり、側面に開口するピン孔82が穿設してある。ホルダー洞穴76の一方の開口端部内に筒状のストッパー83をはめ込み、ストッパー孔78に通した固定ねじ84でこのストッパー83を固定するようにしてある。また操作板85に連結ボルト86を通して取り付けてあり、この連結ボルト86はストッパー83の内周に通してホルダー洞穴76内に差し込んである。そしてホルダー洞穴76内に他方の開口端部からコイルばねとして形成される押さえばね80とラッチ爪79を差し込み、連結ボルト86の先端部を押さえばね80内に通して、ラッチ爪79の後端部に設けたねじ穴87に螺合することによって、連結ボルト86の先端部にラッチ爪79を固定してある。ラッチ爪79をこのようにホルダー洞穴76内に配置した状態で、ガイドピン88をガイド孔77に通すと共にラッチ爪79のピン穴82に差し込んであり、ガイドピン88がガイド孔79内を移動する範囲で、ラッチ爪79はスライド傾斜面81を設けた先端部がホルダー洞穴76から突出する位置と、ラッチ爪79のこの先端部がホルダー洞穴76内に引っ込む位置との間でスライド移動されるようにしてある。
【0037】
上記のようにラッチ爪79を装着したラッチ具18は、ラッチ爪79がラッチ窓孔72から差込穴15内に差し込まれる位置において、本体具3の上片24に固定されるものであり、ラッチ爪79の先端部のスライド傾斜面81が差込穴15の開口部の側を向くように配置してある。ここで、ラッチ爪79の後端とストッパー83の間には押さえばね80が介在しており、この押さえばね80の弾撥力によって、ラッチ爪79はホルダー洞穴76から突出する方向に、すなわちラッチ窓孔72を通して差込穴15内に差し込まれる方向に付勢されている。そして上記のように差込穴15内には押圧受け具8のスライド片16が差し込まれているが、このスライド片16の側面に形成した係合溝17に図16(a)のようにラッチ爪79の先端部が係合することによって、差込穴15内にスライド片16が差し込まれた位置に押圧受け具8を固定することができるものである。また、操作板85をラッチ爪ホルダー73から離す方向に引くと、ラッチ爪79は押さえばね80に抗してホルダー洞穴76内に引っ込む方向に後退し、ラッチ窓孔72を通して差込穴15から抜け出るものであり、スライド片16の係合溝17へのラッチ爪79の係合が外れ、押圧受け具8の固定は解除される。このように、押圧受け具8のスライド片16に設けた係合溝17と、この係合溝17に係合するラッチ爪79や係合を解除する操作板85等を供えたラッチ具18とで、押圧受け具8をスライド移動させた箇所に解除自在に固定する固定・解除手段10が形成されるものである。
【0038】
上記のように形成される本発明の浴槽用手摺りAは、浴槽の側壁1の上端部に取り付けて使用されるものであり、まず、側片4が浴槽の外側に位置するように本体具3を側壁1の上端部に被せて配置し、押圧具5の押圧板6を側壁1の浴槽外の面に、押圧受け具8の押圧受け板9を側壁1の浴槽内の面に、それぞれ対向させる。そして一対の押圧受け具8のスライド片16を本体具3の差込穴15の奥へとスライドさせることによって、各押圧受け具8の押圧受け板9を移動させ、側壁1の浴槽内の面に押圧受け板9の滑り止めシート60を貼った外面を当接させる。このとき、押圧受け具8のスライド片16に設けた係合溝17にラッチ具18のラッチ爪79が係合しているが、ラッチ爪79のスライド傾斜面81に対して係合溝17の傾斜面17bは、スライド片16を差込穴15の奥へスライドさせる方向で対面しているため、図16(b)にロ矢印で示すように、スライド片16を差込穴15の奥へスライドさせると、係合溝17の傾斜面17bでスライド傾斜面81が押されて図16(b)のハ矢印のように、ラッチ爪79は押さえばね80に抗してラッチ窓孔72を通して差込穴15から抜け出る方向にスライドし、ラッチ爪79は係合溝17から抜ける。このためスライド片16を差込穴15の奥へ押し込む力をかけることによって大きな抵抗なくスライドして、押圧受け具8の押圧受け板9を浴槽の側壁1に近接する方向に移動させることができるものであり、押圧受け板9を浴槽の側壁1に当接させることができるものである。
【0039】
ここで、浴槽の側壁1は、浴槽の内面側が湾曲して厚みが一定でない場合が多いが、一対の押圧受け具8は独立してスライドさせることができるので、各押圧受け具8の押圧受け板9の移動距離をそれぞれ独立して調整することによって、図17に示すように、湾曲して厚みが変化する部分においても各押圧受け板9を浴槽の側壁1に当接させることができるものである。またこのように一対の押圧受け具8の移動距離を調整するにあたって、上記のように各押圧受け具8は大きな抵抗なくスライドさせることができるものであり、押圧受け具8をスライドさせるという簡単な操作で、この調整を行なうことができるものである。そしてこのように各押圧受け具8をスライド移動させて押圧受け板9を浴槽の側壁1に当接させると、この位置で各押圧受け具8のスライド片16の係合溝17にラッチ具18のラッチ爪79が係合し、押圧受け具8はこのスライド移動した箇所に固定される。
【0040】
次に、操作ハンドル7のハンドルノブ13を回す操作を行なって、ボルト軸12を回動させて螺進させ、ボルト軸12の先端に設けた押圧具5の押圧板6を前進移動させる。このように押圧具5の押圧板6を前進させて、滑り止めシート60を貼った外面を側壁1の浴槽外の面に当接させ、さらにハンドルノブ13を強く回して押圧板6を側壁1に圧接させることによって、押圧板6と押圧受け具8の押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟み込む。ここで、押圧具5の押圧板6を浴槽の側壁1に圧接させると、これに伴なって押圧受け具8の押圧受け板9が押されて、スライド片16に差込穴15から抜ける図16(a)のイ矢印方向の力が作用するが、スライド片16の係合溝17に差し込まれているラッチ爪79の先端部が係合溝17の垂直面17aと係合することによって、スライド片16がイ矢印方向に移動しないように係合受け具8は固定されている。このため、押圧具5の押圧板6と押圧受け板8の押圧受け板9による安定した挟持力で、浴槽用手摺りAを浴槽の側壁1の上端部に強固に取り付けることができるものである。
【0041】
そして上記のように浴槽の側壁1に取り付けた浴槽用手摺りAの手摺り2を持つことによって、例えば浴槽に出入りするために側壁1を跨ぐ際の補助とすることができるものである。また浴槽用手摺りAには浴槽の内側に突出するようにグリップ64が設けてあるので、浴槽内に座った姿勢から立ち上がるときにこのグリップ64を握ることによって、立ち上がりの補助とすることができるものである。
【0042】
上記のように、一対の押圧受け具8をそれぞれスライドさせて各押圧受け板9を側壁1の浴槽内側の面に当接させた状態で、一つの操作ハンドル7のハンドルノブ13を回すことによって、一対の押圧板6を同時に前進移動させてこの押圧板6と一対の押圧受け板9との間に浴槽の側壁1を挟持させて、浴槽の側壁1に浴槽用手摺りAを取り付けることができるものであり、また一つの操作ハンドル7のハンドルノブ13を回して、一対の押圧板6を同時に後進移動させることで、一対の押圧板6と一対の押圧受け板9との間での浴槽の側壁1の挟持を解除して、浴槽の側壁1から浴槽用手摺りAを取り外すことができるものである。従って、従来のように一対の押圧板6を移動させるために二つハンドルノブ13を回す操作を行なうような必要がなくなり、浴槽用手摺りAの取り付けや取り外しの手間を少なくすることができるものである。特に、浴槽の側壁1の同じ箇所に浴槽用手すりを繰り返して取り付けたり取り外したりする場合、一対の押圧受け具8をスライド移動させる操作は最初に浴槽用手摺りAの取り付けを行なうときだけでよく、それ以後は一つの操作ハンドル7を操作するだけで済むものであり、浴槽の側壁1への取り付けや取り外しの操作の手間がより少なくなるものである。
【0043】
ここで、上記のように操作ハンドル7のハンドルノブ13を回す操作を行なって、ボルト軸12を回動させて螺進させ、押圧具5の押圧板6を前進移動させることによって、押圧板6と押圧受け具8の押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟み込んで浴槽の側壁1に浴槽用手摺りAを取り付けるにあたって、高い取付強度で浴槽用手摺りAを取り付けるためには、押圧具5の押圧板6と押圧受け具8の押圧受け板9による浴槽の側壁1の挟持力を高くする必要があり、このためにハンドルノブ13を強い力で回して締め付ける必要がある。しかしハンドルノブ13を過大な力で回すと、浴槽の側壁1に対する押圧板6の押圧力が過大になり、浴槽の側壁1に破損等が発生するおそれがある。このために本発明では、ハンドルノブ13からボルト軸12への回動力の伝達経路に上記のような、一対のトルクロック座金42を備えて形成される回動伝達遮断機構14が設けてある。
【0044】
すなわち、既述の図11(a)のように、一対のトルクロック座金42a,42bの噛み合いによって、ハンドルノブ13を回し操作する際の回動力がボルト軸12に伝わり、ボルト軸12を回すことができるものであるが、ハンドルノブ13を回し操作する際の回動力が過大な力になると、既述の図11(b)に示すように、一対のトルクロック座金42a,42bの噛み合いが外れ、トルクロック座金42bが空回りしてハンドルノブ13を回し操作する回動力がボルト軸12に伝わらなくなる。従って、押圧具5の押圧板6が浴槽の側壁1に当接している状態で、ハンドルノブ13を過大な強い力で回しても、ハンドルノブ13からの力は回動伝達遮断機構14で遮断されてボルト軸12へ伝わらないものであり、過大な力で押圧板6が浴槽の側壁1に圧接されることを防止して、浴槽の側壁1が破損等することを防ぐことができるものである。
【0045】
図18は本発明の他の実施の形態を示すものであり、本体具3の側片4に設けた支柱25の下部の長さを長く形成して、側片4の下方へ延長し、この支柱25の下端に接地脚68が取り付けてある。このものでは、浴槽の側壁1に浴槽用手摺りAを取り付けた際に、支柱25の下端の接地脚68を浴槽の底部の上に接地させるようにしてある。このように支柱25の下端が接地していることによって、支柱25の上端に設けた手摺り2の握り26を利用する際にかかる体重は、浴槽の側壁1の上端に取り付けられる本体具3で支持される他に、接地された支柱25によっても支持されるものであり、体重を安定して支持することができるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 浴槽の側壁
2 手摺り
3 本体具
4 側片
5 押圧具
6 押圧板
7 操作ハンドル
8 押圧受け具
9 押圧受け板
10 固定・解除手段
11 雌ねじ具
12 ボルト軸
13 ハンドルノブ
14 回動伝達遮断機構
15 差込穴
16 スライド片
17 係合溝
18 ラッチ具
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽への出入りを補助するために、浴槽の側壁に取り付けて使用される浴槽用手摺りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者などの入浴を介護するために、浴槽の側壁に取り付けて使用される浴槽用手摺りが従来から提供されている。この浴槽用手摺りに掴まることによって、浴槽の側壁を乗り越えて浴槽に出入りすることなどが容易になるものである。
【0003】
図19は特許文献1で提供されている浴槽用手摺りの一例を示すものであり、下面が開口するコ字形の本体具3に手摺り2を設けて形成してある。本体具3の一方の側片4の内側には左右一対の押圧板6が設けてある。この各押圧板6は側片4を通して設けられた一対のボルト軸12の先端に取り付けてあり、ボルト軸12の後端部には側片4の外側においてハンドルノブ13が設けてある。ハンドルノブ13内に雌ねじ凹部(図示省略)が形成してあり、ボルト軸12の後端部はこの雌ねじ凹部内に螺合している。また手摺り2の他方の側片22にはその内側に押圧受け板9が設けてある。
【0004】
そして浴槽の側壁1にこの浴槽用手摺りを取り付けるにあたっては、まず側壁1の上端部に跨らせるように本体具3を配置し、側壁1の浴槽外の面に押圧受け板9を当接させる。次に、一対の各ハンドルノブ13を回すと、ハンドルノブ13の雌ねじ凹部内に後端部が螺合しているボルト軸12は、この螺合によって前進し、ボルト軸12の先端部に設けた押圧板6を前進させて側壁1の浴槽内の面に当接させることができる。このようにハンドルノブ13を回して締め付けることによって、押圧受け板9と押圧板6の間に浴槽の側壁1を挟み込むことができるものであり、浴槽の側壁1に浴槽用手摺りを取り付けることができるものである。
【0005】
ここで図20に示すように、側壁1は浴槽の内面側が湾曲して厚みが一定でない場合が多い。このため、一対の押圧板6を設け、各押圧板6に対応するハンドルノブ13の回動操作で、各押圧板6を独立して前後に移動させることができるようにしてあり、各押圧板6の前進距離を調整することによって、湾曲して厚みが異なる部分においても押圧受け板9と押圧板6の間に浴槽の側壁1を挟み込むことができるようにし、高い強度で浴槽用手摺りを取り付けることができるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−261327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように形成される浴槽用手摺りにあって、浴槽の側壁1の湾曲による厚みの変化に対応することができるように、左右一対の押圧板6を設け、各押圧板6をそれぞれ独立して移動させることができるようにしてあり、このために各押圧板6の操作は二つのハンドルノブ13をそれぞれ回して行なう必要がある。従って、浴槽の側壁1に浴槽用手摺りを取り付けるときには、二つのハンドルノブ13を順に回して締め付ける必要があり、手間がかかるという問題があった。特に高齢者等が入浴するときだけ浴槽用手摺りを取り付け、それ以外のときは浴槽用手摺りを取り外すような場合では、取り付けと取り外しのいずれにおいても二つのハンドルノブ13を回す必要があるため、手間が一層煩雑になるものであった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、浴槽の側壁への取り付けや取り外しの操作の手間を少なくすることができる浴槽用手摺りを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る浴槽用手摺りは、浴槽の側壁1の上端部に配置され、手摺り2が設けられた本体具3と、浴槽の側壁1の一方の側面に対向配置して本体具3の一方の側部に形成された側片4と、側片4の内側に設けられた一つの押圧具5と、押圧具5の上記側片4と反対側の面に左右一対設けられた押圧板6と、上記側片4の外側に設けられ、押圧具5を側片4に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドル7と、本体具3の上記側片4と反対側の側部に一対設けられ、各独立して押圧具5に近接離反する方向にスライドして移動自在な押圧受け具8と、上記の一対の各押圧板6に対向して一対の各押圧受け具8に設けられた押圧受け板9と、押圧受け具8をスライド移動させた箇所に解除自在に固定する固定・解除手段10と、を備えて成ることを特徴とするものである。
【0010】
この発明によれば、一対の押圧受け具8をそれぞれ独立してスライド移動させることによって、浴槽の側壁1が湾曲して厚みが異なる部分においても各押圧受け具8の押圧受け板9を浴槽の側壁1の側面に当接させることができるものであり、そして一つの操作ハンドル7の操作で押圧具5を前進移動させて一対の押圧板6を浴槽の側壁1の側面に圧接させることによって、押圧板6と押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟持して、浴槽の側壁1の上端部に浴槽用手摺りを取り付けることができるものである。このように、一つの操作ハンドル7の操作で一対の押圧板6を移動させて押圧板6と押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟持する締め付けを行なうことができるものであって、浴槽の側壁1への取り付けや取り外しの操作の手間を少なくすることができるものである。特に浴槽の側壁1の同じ箇所に繰り返して取り付けたり取り外したりする場合、一対の押圧受け具8をスライド移動させる操作は最初に取り付けを行なうときだけでよく、それ以後は一つの操作ハンドル7を操作するだけで済むものであり、浴槽の側壁1への取り付けや取り外しの操作の手間がより少なくなるものである。
【0011】
また本発明において、上記の操作ハンドル7は、上記側片4に設けた雌ねじ具11に通して側片4を貫通して設けられ、先端部が押圧具5に連結されたボルト軸12と、ボルト軸12の後端部に取り付けられ、ボルト軸2を回動させて雌ねじ具11に対する螺合でボルト軸12を前進後退させる操作を行なうハンドルノブ13と、所定の力以下ではハンドルノブ13からボルト軸12に回動力が伝達され、所定の力を超えるとハンドルノブ13からボルト軸12に回動力が伝達されないようにする回動伝達遮断機構14と、を備えて成ることを特徴とするものである。
【0012】
この発明によれば、操作ハンドル7のハンドルノブ13を回す操作をしてボルト軸12を回動させることによって、押圧具5を前進移動させ、押圧具5の押圧板6と押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟持して浴槽用手摺りを取り付けるにあたって、押圧具5の押圧板6が浴槽の側壁1に当接している状態で、ハンドルノブ13を強い力で回しても、ハンドルノブ13からの力は回動伝達遮断機構14で遮断されてボルト軸12へ伝わらず、過剰な力で押圧具5の押圧板6が浴槽の側壁1に圧接されることを防ぐことができるものであり、浴槽の側壁1が破損することを防止することができるものである。
【0013】
また本発明において、上記の押圧受け具8は、本体具3に設けた差込穴15にスライド自在に差し込まれるスライド片16を備えて形成され、上記の固定・解除手段10は、スライド片16にそのスライド方向に沿って複数形成された係合溝17と、本体具3に設けられ、係合溝17に係合・離脱自在なラッチ具18とを備えて成ることを特徴とするものである。
【0014】
この発明によれば、押圧受け具8をスライド移動させる際の固定・解除手段10による固定や解除は、スライド片16の係合溝17にラッチ具18を係合させたり離脱させたりして行なうことができるものであり、押圧受け具8のスライド操作を容易に行なうことができるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一対の押圧受け具8をそれぞれ独立してスライド移動させることによって、浴槽の側壁1が湾曲して厚みが異なる部分においても各押圧受け具8の押圧受け板9を浴槽の側壁1の側面に当接させることができるものであり、そして一つの操作ハンドル7の操作で押圧具5を前進移動させて一対の押圧板6を浴槽の側壁1の側面に圧接させることによって、押圧板6と押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟持して、浴槽の側壁1の上端部に浴槽用手摺りを取り付けることができるものである。このように、一つの操作ハンドル7の操作で一対の押圧板6を移動させて押圧板6と押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟持する締め付けを行なうことができるものであって、浴槽の側壁1への取り付けや取り外しの操作の手間を少なくすることができるものである。特に浴槽の側壁1の同じ箇所に繰り返して取り付けたり取り外したりする場合、一対の押圧受け具8をスライド移動させる操作は最初に取り付けを行なうときだけでよく、それ以後は一つの操作ハンドル7を操作するだけで済むものであり、浴槽の側壁1への取り付けや取り外しの操作の手間が少なくなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】同上の側面図である。
【図3】同上の背面図である。
【図4】同上の底面図である。
【図5】同上の側面断面図である。
【図6】同上の底面断面図である。
【図7】同上の操作ハンドルを示す断面図である。
【図8】同上の操作ハンドルを示す分解斜視図である。
【図9】(a)はハンドルノブを示す断面図、(b)は可動側ロック座金受けを示す正面図、(c)は固定側ロック座金受けを示す正面図、(d)は固定側ロック座金受けを示す断面図である。
【図10】同上のトルクロック座金を示すものであり、(a)は正面図、(b)はイ−イ線断面図、(c)は背面図、(d)はロ−ロ線での拡大断面図である。
【図11】同上の回転伝達遮断機構のトルクロック座金の噛み合いを示すものであり(a)(b)は一部の断面図である。
【図12】同上の押圧受け具とラッチ具等を示す分解斜視図である。
【図13】同上の押圧受け具を示すものであり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図14】同上のラッチ具の分解斜視図である。
【図15】同上のラッチ具の断面図である。
【図16】同上の係合溝とラッチ爪の係合状態を示すものであり、(a)(b)はそれぞれ概略図である。
【図17】同上の取付状態を示す下から見た断面図である。
【図18】本発明の他の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図19】従来例を示すものであり、(a)は側面図、(b)は底面図である。
【図20】従来例の取付状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1乃至図6は本発明に係る浴槽用手摺りAの実施の形態の一例を示すものであり、手摺り2は本体具3に設けてある。本体具3は上片24と、上片24の一側部に下方へ垂下して設けた側片4とから、断面横L字形に形成してあり、手摺り2は本体具3の側片4の外面に取り付けてある。尚、図5に示すように、上片24は側片4と一体に形成される水平部24aと、水平部24aの上に被せて取り付けられるカバー部24bからなるものである。
【0019】
手摺り2は側片4の両側端部外面に取り付けられる一対の支柱25と、支柱25の上端間に掛け渡して取り付けられる環状の握り26とから、図1のように形成されるものである。各支柱25には上下複数個所に等間隔で取付孔27が穿設してあり、この取付孔27を通して固定ねじ28を図4のように側片4にねじ込むことによって、側片4に支柱25を固定して、手摺り2の取り付けを行なうことができるものである。取付孔27は支柱25に上下複数個所において設けてあるので、固定ねじ28を通す取付孔27を選択することによって、手摺り2の握り26の高さ調節をすることができるものである。
【0020】
側片4の中央部には雌ねじ具11が取り付けてある。雌ねじ具11は図5及び図6に示すように側片4の内外両方向に開口するものであり、内周に雌ねじが形成してある。この内周の雌ねじに外周の雄ねじを螺合した状態で、雌ねじ具11にボルト軸12が通してある。図7及び図8に示すように、ボルト軸12の側片4から内方へ突出する側の端部には押圧具取付軸部30が設けてあり、ボルト軸12の側片4から外方へ突出する側の端部にはハンドルノブ取付軸部31が設けてある。ハンドルノブ取付軸部31は基部側の断面形状が六角形の角軸部32と、先部側の断面形状が円形の丸軸部33とからなるものである。またボルト軸12の中心に全長に亘る空洞孔が設けてあり、この空洞孔のうち押圧具取付軸部30の部分と、丸軸部33の部分の内周にねじを切って、それぞれ雌ねじ孔34として形成してある。
【0021】
図7及び図8は操作ハンドル7を示すものである。図7及び図8において13はハンドルノブであって、中央に貫通する孔を設けた筒状に形成してあり、図9(a)のように、この孔は外側から内側へと連通する、頭隠し用孔36、最も小径の丸孔に形成される空転用丸孔37、空転用丸孔37より大径の座金収容孔38、座金収容孔38より大径の八角形孔に形成される座金受け収容孔39によって形成されるものである。座金収容孔38には座金49が収容されるものであり、また角孔に形成される座金受け収容孔39には図9(b)のような外周が八角形、内周が丸孔40aのドーナツ状に形成される可動側ロック座金受け40がはめ込んで取り付けてある。この可動側ロック座金受け40には、その内周の丸孔40aを囲むように等間隔の4箇所においてピン孔41が穿設してある。
【0022】
図7及び図8において42はトルクロック座金であり、内外周が円形のドーナツ板状に形成してある。トルクロック座金42の片面の外周部には、図10(a)〜(c)に示すようにロック突部43が周方向に沿った等間隔で複数個所に突設してあり、周方向に隣り合うロック突部43間に係合凹部46が形成されるようにしてある。各ロック突部43は図10(d)に示すように、トルクロック座金42の円周方向に向けてトルクロック座金42の表面から斜めに立ち上がるように傾斜する傾斜部44と、傾斜部44の上端と連続しトルクロック座金42の表面と平行な平行部45とで形成されるものである。尚、図10(a)において、傾斜部44と平行部45を斜線を付して示している。またトルクロック座金42には、その内周を囲むように等間隔の4箇所においてピン孔47が穿設してある。
【0023】
このトルクロック座金42は、ロック突部43を設けた面が外側になるように上記の可動側ロック座金受け40の片面に配置すると共に、トルクロック座金42のピン孔47と可動側ロック座金受け40のピン孔41とにピン48を圧入することによって、周方向への回り止めをした状態で、可動側ロック座金受け40に取り付けられるものである。
【0024】
また図7及び図8において51は固定側ロック座金受けであり、固定側ロック座金受け51は図9(c)(d)に示すように、内周が六角孔の角孔51bとなった筒状に形成してあり、固定側ロック座金受け51の片面には内周の角孔51bを囲むようにロック座金収納凹部53が凹設してある。このロック座金収納凹部53には角孔51bを囲むように等間隔の4箇所においてピン孔52が穿設してある。上記のトルクロック座金42は、ロック突部43を設けた面が外側になるようにロック座金収納凹部53内に配置して、トルクロック座金42のピン孔47と固定側ロック座金受け51のピン孔52とにピン48を圧入することによって、周方向への回り止めをした状態で、固定側ロック座金受け51に取り付けられるものである。
【0025】
そしてこのようにトルクロック座金42を取り付けた固定側ロック座金受け51は、ボルト軸12のハンドルノブ取付軸部31にその先端から被挿して、内周の角孔51bを角軸部32に嵌め合わせた状態で、図7のようにボルト軸12に取り付けられるものである。固定側ロック座金受け51は、トルクロック座金42を取り付けた面がハンドルノブ取付軸部31の先端側を向くように配置して取り付けられるものであり、角孔51bと角軸部32の嵌め合わせによって、回転しない状態に固定してハンドルノブ取付軸部31に取り付けられるものである。
【0026】
また上記のように可動側ロック座金受け40をはめ込んで装着したハンドルノブ13は、ボルト軸12のハンドルノブ取付軸部31にその先端から被挿して、図7のように丸軸部33に取り付けられるものであり、ハンドルノブ13の空転用丸孔37と可動側ロック座金受け40の内周の丸孔40aが丸軸部33の外周を回ることによって回動自在になっている。そして図7のように、頭隠し用孔36の孔底に座金55を配置し、固定ねじ56をハンドルノブ取付軸部31の雌ねじ孔34にねじ込んで、座金55で頭隠し用孔36の孔底を押えることによって、ハンドルノブ13の抜け止めを行なうようにしてある。頭隠し用孔36にはゴム製のキャップ57をはめ込んで、固定ねじ56の頭を隠すようにしてある。
【0027】
ここで、上記のようにハンドルノブ13に装着した可動側ロック座金受け40にはトルクロック座金42が設けてあり、ハンドルノブ13をハンドルノブ取付軸部31に取り付けることによって、この可動側ロック座金受け40のトルクロック座金42は、上記の固定側ロック座金受け51に設けたトルクロック座金42に対向して相互に噛み合っている。すなわち、図11(a)に示すように、固定側ロック座金受け51のトルクロック座金42(42a)と可動側ロック座金受け40のトルクロック座金42(42b)とは、ロック突部43と係合凹部46が相互にはまり合って係合することによって、噛み合っている。このトルクロック座金42a,42bの噛み合いによって、ハンドルノブ13を回し操作する際の回動力がボルト軸12に伝わり、ボルト軸12を回すことができるものである。また、ハンドルノブ13を回し操作する際の回動力が過大な力であると、図11(b)に示すように、固定側ロック座金受け51のトルクロック座金42aと可動側ロック座金受け40のトルクロック座金42bのそれぞれの傾斜部44が滑って、ロック突部43と係合凹部46との係合による噛み合いが外れる。そして固定側ロック座金受け51のトルクロック座金42aの平行部45の上に可動側ロック座金受け40のトルクロック座金42bの平行部45が乗り上げることになって、固定側ロック座金受け51のトルクロック座金42aに対して可動側ロック座金受け40のトルクロック座金42bがニ矢印方向に空回りすることになるので、ハンドルノブ13も空転用丸孔37の外周を空転し、ハンドルノブ13を回し操作する回動力がボルト軸12に伝わらないようにすることができるものである。このような構成の一対のトルクロック座金42をハンドルノブ13とボルト軸12の間に備えて、所定の力以下ではハンドルノブ13からボルト軸12に回動力が伝達され、所定の力を超えるとハンドルノブ13からボルト軸12に回動力が伝達されないようにする回動伝達遮断機構14が形成されるものである。
【0028】
上記のように、ボルト軸12に回動伝達遮断機構14とハンドルノブ13を取り付けることによって、図7に示すような操作ハンドル7が形成されるものであり、既述のように、雌ねじ具11に螺合した状態で側片4にボルト軸12を挿通することによって、本体具3に操作ハンドル7を装着することができるものである。
【0029】
このように側片4に挿通したボルト軸12の先端部には、側片4の内側において押圧具5が取り付けてある。押圧具5は左右に長い板状体で形成されるものであり、その中央部の孔にボルト軸12の先端部の押圧具取付軸部30を差し込んで、図5及び図6に示すように固定ねじ59を押圧具取付軸部30の雌ねじ孔34にねじ込むことによって、固定ねじ59で押えてボルト軸12の先端部の押圧具取付軸部30に若干の遊びをもって取り付けるようにしてある。従ってこの押圧具5はボルト軸12の軸周りの上下方向に回動自在であり、且つ前後方向に揺動自在となっている。そして押圧具5の側片4と反対側の面には、左右両端部にそれぞれ押圧板6が設けてある。押圧板6は縦長の矩形に形成してあり、各押圧板6の側片4と反対側の面にはゴムシートなどで形成される滑り止めシート60が貼ってある。押圧板6は図6のように固定軸61で押圧具5に遊びをもって取り付けてあり、固定軸61の回りの上下方向に回転自在であり、且つ前後方向に揺動自在となっている。
【0030】
操作ハンドル7のハンドルノブ13を回してボルト軸12を回動させると、ボルト軸12の外周の雄ねじが雌ねじ具11の内周の雌ねじに螺合しているので、ボルト軸12の回動方向に従って、ボルト軸12は螺進あるいは螺退して移動し、押圧具5及び押圧板6を側片4から離れる方向あるいは側片4に近接する方向に前後移動させることができるものである。
【0031】
本体具3の上片24には、側片4と直交する方向に細長く、側片4と反対側の側部において開口する差込穴15が設けてある。この差込穴15は上片24の両端部に平行に一対設けられるものであり、図12に示すように本体具3の上片24の上面に筒状部70を設けることによって、この筒状部70内に差込穴15が形成されるようにしてある。
【0032】
押圧受け具8は水平なスライド片16と、スライド片16の一端に下方へ垂下して延設される受け片63とから、図12及び図13のように横L字形に形成されるものであり、受け片63のスライド片16と反対側の面にC字形のグリップ64が設けてある。また受け片63のスライド片16の側の面には押圧受け板9が取り付けてある。押圧受け板9は縦長の矩形に形成してあり、押圧受け板9の受け片63と反対側の面にはゴムシートなどで形成される滑り止めシート60が貼ってある。押圧受け板9は図6のように固定軸65で押圧受け具8の受け片63に遊びをもって取り付けてあり、固定軸65の回りの上下方向に回転自在であり、且つ前後方向に揺動自在となっている。
【0033】
押圧受け板9を設けた押圧受け具8は一対用いられるものであり、各スライド片16を本体具3の上片24の各差込穴15にスライド自在に差し込むことによって、上片24の側片4と反対側の側部に左右一対の押圧受け具8を取り付けるようにしてある。このようにスライド片16を差込穴15に差し込んで一対の押圧受け具8を本体具3に取り付けると、一対の各押圧受け具8に設けた押圧受け板9は上記の押圧具5に設けた一対の押圧板6と滑り止めシート60を貼った面同士で対向することになる。
【0034】
ここで、各押圧受け具8のスライド片16の相対向する内側の側面には、スライド片16の長手方向、すなわち前後方向に沿って等間隔で多数の係合溝17が凹設してある。係合溝17は図13に示すように、側片4の側の側面がスライド片16のスライド方向と垂直な垂直面17aに形成してあると共に、側片4と反対側の面がスライド片16のスライド方向に対して側片4と反対側へ傾斜する傾斜面17bに形成してある。
【0035】
また本体具3の上片24に設けた一対の筒状部70には、差込穴15の開口部の近傍において、相対向する側面にラッチ窓孔72を設けて、差込穴15の一部を側方へ開口させてある。このラッチ窓孔72の外側にはラッチ具18が取り付けてある。
【0036】
ラッチ具18の本体となるラッチ爪ホルダー73は基板74の上面にホルダー筒75を設けて形成されるものであり、図14及び図15に示すように、ホルダー筒75内に両端で開口するホルダー洞穴76が設けてある。このホルダー筒75の一側部には横長のガイド孔77とストッパー孔78とが、ホルダー洞穴76内に連通するように穿設してある。ホルダー洞穴76内にはラッチ爪79と押さえばね80とが取り付けてある。ラッチ爪79は先端部にスライド傾斜面81を設けて水平断面レ字形に形成されるものであり、側面に開口するピン孔82が穿設してある。ホルダー洞穴76の一方の開口端部内に筒状のストッパー83をはめ込み、ストッパー孔78に通した固定ねじ84でこのストッパー83を固定するようにしてある。また操作板85に連結ボルト86を通して取り付けてあり、この連結ボルト86はストッパー83の内周に通してホルダー洞穴76内に差し込んである。そしてホルダー洞穴76内に他方の開口端部からコイルばねとして形成される押さえばね80とラッチ爪79を差し込み、連結ボルト86の先端部を押さえばね80内に通して、ラッチ爪79の後端部に設けたねじ穴87に螺合することによって、連結ボルト86の先端部にラッチ爪79を固定してある。ラッチ爪79をこのようにホルダー洞穴76内に配置した状態で、ガイドピン88をガイド孔77に通すと共にラッチ爪79のピン穴82に差し込んであり、ガイドピン88がガイド孔79内を移動する範囲で、ラッチ爪79はスライド傾斜面81を設けた先端部がホルダー洞穴76から突出する位置と、ラッチ爪79のこの先端部がホルダー洞穴76内に引っ込む位置との間でスライド移動されるようにしてある。
【0037】
上記のようにラッチ爪79を装着したラッチ具18は、ラッチ爪79がラッチ窓孔72から差込穴15内に差し込まれる位置において、本体具3の上片24に固定されるものであり、ラッチ爪79の先端部のスライド傾斜面81が差込穴15の開口部の側を向くように配置してある。ここで、ラッチ爪79の後端とストッパー83の間には押さえばね80が介在しており、この押さえばね80の弾撥力によって、ラッチ爪79はホルダー洞穴76から突出する方向に、すなわちラッチ窓孔72を通して差込穴15内に差し込まれる方向に付勢されている。そして上記のように差込穴15内には押圧受け具8のスライド片16が差し込まれているが、このスライド片16の側面に形成した係合溝17に図16(a)のようにラッチ爪79の先端部が係合することによって、差込穴15内にスライド片16が差し込まれた位置に押圧受け具8を固定することができるものである。また、操作板85をラッチ爪ホルダー73から離す方向に引くと、ラッチ爪79は押さえばね80に抗してホルダー洞穴76内に引っ込む方向に後退し、ラッチ窓孔72を通して差込穴15から抜け出るものであり、スライド片16の係合溝17へのラッチ爪79の係合が外れ、押圧受け具8の固定は解除される。このように、押圧受け具8のスライド片16に設けた係合溝17と、この係合溝17に係合するラッチ爪79や係合を解除する操作板85等を供えたラッチ具18とで、押圧受け具8をスライド移動させた箇所に解除自在に固定する固定・解除手段10が形成されるものである。
【0038】
上記のように形成される本発明の浴槽用手摺りAは、浴槽の側壁1の上端部に取り付けて使用されるものであり、まず、側片4が浴槽の外側に位置するように本体具3を側壁1の上端部に被せて配置し、押圧具5の押圧板6を側壁1の浴槽外の面に、押圧受け具8の押圧受け板9を側壁1の浴槽内の面に、それぞれ対向させる。そして一対の押圧受け具8のスライド片16を本体具3の差込穴15の奥へとスライドさせることによって、各押圧受け具8の押圧受け板9を移動させ、側壁1の浴槽内の面に押圧受け板9の滑り止めシート60を貼った外面を当接させる。このとき、押圧受け具8のスライド片16に設けた係合溝17にラッチ具18のラッチ爪79が係合しているが、ラッチ爪79のスライド傾斜面81に対して係合溝17の傾斜面17bは、スライド片16を差込穴15の奥へスライドさせる方向で対面しているため、図16(b)にロ矢印で示すように、スライド片16を差込穴15の奥へスライドさせると、係合溝17の傾斜面17bでスライド傾斜面81が押されて図16(b)のハ矢印のように、ラッチ爪79は押さえばね80に抗してラッチ窓孔72を通して差込穴15から抜け出る方向にスライドし、ラッチ爪79は係合溝17から抜ける。このためスライド片16を差込穴15の奥へ押し込む力をかけることによって大きな抵抗なくスライドして、押圧受け具8の押圧受け板9を浴槽の側壁1に近接する方向に移動させることができるものであり、押圧受け板9を浴槽の側壁1に当接させることができるものである。
【0039】
ここで、浴槽の側壁1は、浴槽の内面側が湾曲して厚みが一定でない場合が多いが、一対の押圧受け具8は独立してスライドさせることができるので、各押圧受け具8の押圧受け板9の移動距離をそれぞれ独立して調整することによって、図17に示すように、湾曲して厚みが変化する部分においても各押圧受け板9を浴槽の側壁1に当接させることができるものである。またこのように一対の押圧受け具8の移動距離を調整するにあたって、上記のように各押圧受け具8は大きな抵抗なくスライドさせることができるものであり、押圧受け具8をスライドさせるという簡単な操作で、この調整を行なうことができるものである。そしてこのように各押圧受け具8をスライド移動させて押圧受け板9を浴槽の側壁1に当接させると、この位置で各押圧受け具8のスライド片16の係合溝17にラッチ具18のラッチ爪79が係合し、押圧受け具8はこのスライド移動した箇所に固定される。
【0040】
次に、操作ハンドル7のハンドルノブ13を回す操作を行なって、ボルト軸12を回動させて螺進させ、ボルト軸12の先端に設けた押圧具5の押圧板6を前進移動させる。このように押圧具5の押圧板6を前進させて、滑り止めシート60を貼った外面を側壁1の浴槽外の面に当接させ、さらにハンドルノブ13を強く回して押圧板6を側壁1に圧接させることによって、押圧板6と押圧受け具8の押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟み込む。ここで、押圧具5の押圧板6を浴槽の側壁1に圧接させると、これに伴なって押圧受け具8の押圧受け板9が押されて、スライド片16に差込穴15から抜ける図16(a)のイ矢印方向の力が作用するが、スライド片16の係合溝17に差し込まれているラッチ爪79の先端部が係合溝17の垂直面17aと係合することによって、スライド片16がイ矢印方向に移動しないように係合受け具8は固定されている。このため、押圧具5の押圧板6と押圧受け板8の押圧受け板9による安定した挟持力で、浴槽用手摺りAを浴槽の側壁1の上端部に強固に取り付けることができるものである。
【0041】
そして上記のように浴槽の側壁1に取り付けた浴槽用手摺りAの手摺り2を持つことによって、例えば浴槽に出入りするために側壁1を跨ぐ際の補助とすることができるものである。また浴槽用手摺りAには浴槽の内側に突出するようにグリップ64が設けてあるので、浴槽内に座った姿勢から立ち上がるときにこのグリップ64を握ることによって、立ち上がりの補助とすることができるものである。
【0042】
上記のように、一対の押圧受け具8をそれぞれスライドさせて各押圧受け板9を側壁1の浴槽内側の面に当接させた状態で、一つの操作ハンドル7のハンドルノブ13を回すことによって、一対の押圧板6を同時に前進移動させてこの押圧板6と一対の押圧受け板9との間に浴槽の側壁1を挟持させて、浴槽の側壁1に浴槽用手摺りAを取り付けることができるものであり、また一つの操作ハンドル7のハンドルノブ13を回して、一対の押圧板6を同時に後進移動させることで、一対の押圧板6と一対の押圧受け板9との間での浴槽の側壁1の挟持を解除して、浴槽の側壁1から浴槽用手摺りAを取り外すことができるものである。従って、従来のように一対の押圧板6を移動させるために二つハンドルノブ13を回す操作を行なうような必要がなくなり、浴槽用手摺りAの取り付けや取り外しの手間を少なくすることができるものである。特に、浴槽の側壁1の同じ箇所に浴槽用手すりを繰り返して取り付けたり取り外したりする場合、一対の押圧受け具8をスライド移動させる操作は最初に浴槽用手摺りAの取り付けを行なうときだけでよく、それ以後は一つの操作ハンドル7を操作するだけで済むものであり、浴槽の側壁1への取り付けや取り外しの操作の手間がより少なくなるものである。
【0043】
ここで、上記のように操作ハンドル7のハンドルノブ13を回す操作を行なって、ボルト軸12を回動させて螺進させ、押圧具5の押圧板6を前進移動させることによって、押圧板6と押圧受け具8の押圧受け板9の間に浴槽の側壁1を挟み込んで浴槽の側壁1に浴槽用手摺りAを取り付けるにあたって、高い取付強度で浴槽用手摺りAを取り付けるためには、押圧具5の押圧板6と押圧受け具8の押圧受け板9による浴槽の側壁1の挟持力を高くする必要があり、このためにハンドルノブ13を強い力で回して締め付ける必要がある。しかしハンドルノブ13を過大な力で回すと、浴槽の側壁1に対する押圧板6の押圧力が過大になり、浴槽の側壁1に破損等が発生するおそれがある。このために本発明では、ハンドルノブ13からボルト軸12への回動力の伝達経路に上記のような、一対のトルクロック座金42を備えて形成される回動伝達遮断機構14が設けてある。
【0044】
すなわち、既述の図11(a)のように、一対のトルクロック座金42a,42bの噛み合いによって、ハンドルノブ13を回し操作する際の回動力がボルト軸12に伝わり、ボルト軸12を回すことができるものであるが、ハンドルノブ13を回し操作する際の回動力が過大な力になると、既述の図11(b)に示すように、一対のトルクロック座金42a,42bの噛み合いが外れ、トルクロック座金42bが空回りしてハンドルノブ13を回し操作する回動力がボルト軸12に伝わらなくなる。従って、押圧具5の押圧板6が浴槽の側壁1に当接している状態で、ハンドルノブ13を過大な強い力で回しても、ハンドルノブ13からの力は回動伝達遮断機構14で遮断されてボルト軸12へ伝わらないものであり、過大な力で押圧板6が浴槽の側壁1に圧接されることを防止して、浴槽の側壁1が破損等することを防ぐことができるものである。
【0045】
図18は本発明の他の実施の形態を示すものであり、本体具3の側片4に設けた支柱25の下部の長さを長く形成して、側片4の下方へ延長し、この支柱25の下端に接地脚68が取り付けてある。このものでは、浴槽の側壁1に浴槽用手摺りAを取り付けた際に、支柱25の下端の接地脚68を浴槽の底部の上に接地させるようにしてある。このように支柱25の下端が接地していることによって、支柱25の上端に設けた手摺り2の握り26を利用する際にかかる体重は、浴槽の側壁1の上端に取り付けられる本体具3で支持される他に、接地された支柱25によっても支持されるものであり、体重を安定して支持することができるものである。
【符号の説明】
【0046】
1 浴槽の側壁
2 手摺り
3 本体具
4 側片
5 押圧具
6 押圧板
7 操作ハンドル
8 押圧受け具
9 押圧受け板
10 固定・解除手段
11 雌ねじ具
12 ボルト軸
13 ハンドルノブ
14 回動伝達遮断機構
15 差込穴
16 スライド片
17 係合溝
18 ラッチ具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の側壁の上端部に配置され、手摺りが設けられた本体具と、浴槽の側壁の一方の側面に対向配置して本体具の一方の側部に形成された側片と、側片の内側に設けられた一つの押圧具と、押圧具の上記側片と反対側の面に左右一対設けられた押圧板と、上記側片の外側に設けられ、押圧具を側片に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドルと、本体具の上記側片と反対側の側部に一対設けられ、各独立して押圧具に近接離反する方向にスライドして移動自在な押圧受け具と、上記の一対の各押圧板に対向して一対の各押圧受け具に設けられた押圧受け板と、押圧受け具をスライド移動させた箇所に解除自在に固定する固定・解除手段と、を備えて成ることを特徴とする浴槽用手摺り。
【請求項2】
上記の操作ハンドルは、側片に設けた雌ねじ具に通して側片を貫通して設けられ、先端部が押圧具に連結されたボルト軸と、ボルト軸の後端部に取り付けられ、ボルト軸を回動させて雌ねじ具に対する螺合でボルト軸を前進後退させる操作を行なうハンドルノブと、所定の力以下ではハンドルノブからボルト軸に回動力が伝達され、所定の力を超えるとハンドルノブからボルト軸に回動力が伝達されないようにする回動伝達遮断機構と、を備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の浴槽用手摺り。
【請求項3】
上記の押圧受け具は、本体具に設けた差込穴にスライド自在に差し込まれるスライド片を備えて形成され、上記の固定・解除手段は、スライド片にそのスライド方向に沿って複数形成された係合溝と、本体具に設けられ、係合溝に係合・離脱自在なラッチ具とを備えて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴槽用手摺り。
【請求項1】
浴槽の側壁の上端部に配置され、手摺りが設けられた本体具と、浴槽の側壁の一方の側面に対向配置して本体具の一方の側部に形成された側片と、側片の内側に設けられた一つの押圧具と、押圧具の上記側片と反対側の面に左右一対設けられた押圧板と、上記側片の外側に設けられ、押圧具を側片に近接離反する方向に移動させる操作を行なう操作ハンドルと、本体具の上記側片と反対側の側部に一対設けられ、各独立して押圧具に近接離反する方向にスライドして移動自在な押圧受け具と、上記の一対の各押圧板に対向して一対の各押圧受け具に設けられた押圧受け板と、押圧受け具をスライド移動させた箇所に解除自在に固定する固定・解除手段と、を備えて成ることを特徴とする浴槽用手摺り。
【請求項2】
上記の操作ハンドルは、側片に設けた雌ねじ具に通して側片を貫通して設けられ、先端部が押圧具に連結されたボルト軸と、ボルト軸の後端部に取り付けられ、ボルト軸を回動させて雌ねじ具に対する螺合でボルト軸を前進後退させる操作を行なうハンドルノブと、所定の力以下ではハンドルノブからボルト軸に回動力が伝達され、所定の力を超えるとハンドルノブからボルト軸に回動力が伝達されないようにする回動伝達遮断機構と、を備えて成ることを特徴とする請求項1に記載の浴槽用手摺り。
【請求項3】
上記の押圧受け具は、本体具に設けた差込穴にスライド自在に差し込まれるスライド片を備えて形成され、上記の固定・解除手段は、スライド片にそのスライド方向に沿って複数形成された係合溝と、本体具に設けられ、係合溝に係合・離脱自在なラッチ具とを備えて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の浴槽用手摺り。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−246691(P2010−246691A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98387(P2009−98387)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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