説明

浴湯除菌装置

【課題】浴槽内の有機物を装置内で堆積させることなく、光触媒担持体の表面に湯を多く接触させることができ安定した除菌作用及び浄化作用が可能な浴湯除菌装置を提供する。
【解決手段】湯流入口74と湯流出口75とを有するケーシング65と、このケーシング65に挿入される紫外線ランプ66とを備える。紫外線ランプ66の周囲を覆うように複数のビーズ状の光触媒担持体67を配置する。ケーシング65内に、光触媒担持体67が配置された内側湯流路82aと、光触媒担持体67が配置されない外側湯流路82bとを設ける。湯流入口74からケーシング65内に流入した浴湯を、内側湯流路82a及び外側湯流路82bに流通させて湯流出口75から流出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴湯除菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭において入浴する場合、きれいな湯であるいわゆる一番風呂に入りたい。このため、近年では、湯を浴槽から導出して浴槽に戻す循環経路に除菌・浄化する浴湯除菌装置(風呂用殺菌装置)を配置する場合がある(例えば、特許文献1参照)。この浴湯除菌装置は、図4に示すように、殺菌槽91と、この殺菌槽91に充填される複数個の光触媒担持体92・・と、殺菌槽91内で光触媒担持体92・・に紫外線を照射する紫外線ランプ93とを備える。
【0003】
そして、殺菌槽91には流入ノズル94と流出ノズル95とが設けられ、浴槽96と流入ノズル94とが第1配管97にて接続され、浴槽96と流出ノズル95とが第2配管98にて接続されている。このため、湯を浴槽96から導出して浴槽96に戻す循環経路99が形成される。すなわち、図示省略の循環用ポンプが駆動することによって、浴槽96の湯は第1配管97を介して流入ノズル94から殺菌槽91内に入り、この殺菌槽91内を流れ、流出ノズル95から第2配管98を介して浴槽96に戻る。
【0004】
光触媒は、紫外線が照射されれば、その紫外線によって励起されて殺菌力を発揮し、また有機物分解力も発揮する。このため、殺菌槽91内を湯が流れる際に、上記光触媒担持体92・・に紫外線を照射することによって、光触媒担持体92・・に殺菌力を発揮させて、湯の殺菌処理を行い、この殺菌された湯を浴槽96に戻すようにしている。
【特許文献1】特開2000−217991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載された浴湯除菌装置では、湯の光触媒に対する接触面積を大きくするために、殺菌槽91内全体に光触媒担持体92・・が充填されている。このため、殺菌槽91内を湯が通過する際の流れ抵抗が大きくなって、殺菌処理時間が大となると共に、循環用ポンプの負担が大きくなり、ポンプ寿命を縮めていた。逆に光触媒担持体92が少なければ、光触媒の接触面積が小さくなって、殺菌効果が低減すると共に、有機物分解力も低下していた。そのため、浴槽内の有機物が装置内に堆積して、装置内を汚染することになっていた。
【0006】
この発明は、上記従来の欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、浴湯が流れる流路の確保が可能で、しかも浴槽内の有機物を装置内で堆積させることなく安定した除菌作用及び浄化作用が可能な浴湯除菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで請求項1の浴湯除菌装置は、湯流入口74と湯流出口75とを有するケーシング65と、このケーシング65に挿入される紫外線ランプ66とを備え、上記紫外線ランプ66の周囲を覆うように複数のビーズ状の光触媒担持体67を配置して、上記ケーシング65内に、上記光触媒担持体67が配置された内側湯流路82aと、上記光触媒担持体67が配置されない外側湯流路82bとを設け、湯流入口74からケーシング65内に流入した浴湯を、内側湯流路82a及び外側湯流路82bに流通させて湯流出口75から流出させることを特徴としている。
【0008】
請求項2の浴湯除菌装置は、上記光触媒担持体67を、金属製網状体にて構成される袋体77に収納したことを特徴としている。
【0009】
請求項3の浴湯除菌装置は、上記袋体77の網目の大きさを、浴槽4に設けられるフィルタの網目よりも大きくしたことを特徴としている。
【0010】
請求項4の浴湯除菌装置は、上記光触媒担持体67は球体からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の浴湯除菌装置によれば、湯流入口からケーシングに入った湯は内側湯流路及び外側湯流路を流れて湯流出口から流出する。この際、紫外線ランプにて光触媒担持体に紫外線が照射され、光触媒担持体の光触媒は紫外線によってOHラジカルを生成し、これによって殺菌力を発揮し、しかも、有機物分解力も発揮する。そして、浴湯が内側湯流路を流通する際には光触媒担持体に湯が接触し、かつ光触媒担持体はビーズ状であるので、湯が接触する光触媒担持体の表面積を大きくとれる。このため、光触媒担持体と接触する湯の殺菌及び有機物分解を効率よく行うことができ、安定した除菌作用及び浄化作用が可能となる。これによって、浴湯がクリーン化され、入浴者はいわゆる一番風呂の感覚で常時入浴することができる。なお、外側湯流路にもOHラジカルは流出するが、光触媒担持体の表面及びその近傍に比べて少ない。このため、浴湯除菌装置を流れる湯の1回当りの除菌率及び有機物分解率は全体としてあまり高くないが、循環させることによって、浴槽の全体の湯を除菌及び有機物分解して行くことができる。そして、外側湯流路にて浴湯が流れる流路の確保できる。このため、外側湯流路を流れる湯は滑らかにこのケーシング内を流れ、循環用ポンプの負担を軽減できると共に、保温時に浴湯が循環する循環路にこの浴湯除菌装置を配置した場合においても、熱交換を行う短時間当りの流量が少なくならず、効率良く保温することができる。
【0012】
請求項2の浴湯除菌装置によれば、上記光触媒担持体を金属製網状体にて構成される袋体に収納したので、紫外線ランプから照射された紫外線は、金属製網状体に当ることによって乱反射し、多くの紫外線を光触媒担持体に照射することができ、殺菌力及び有機物分解力を上げることができる。また、この浴湯除菌装置内を流れる湯は、金属製網状体にて構成される袋体に当ることによって、その流れが乱れ、湯に含まれる有機物がより多く光触媒担持体に接触することになって、有機物の捕捉性が向上する。
【0013】
請求項3の浴湯除菌装置によれば、袋体の網目の大きさを、浴槽に設けられるフィルタの網目よりも大きくしたので、浴槽内の浮遊物等がこの袋体の網目に詰まるのを防止でき、浴湯除菌装置内での浮遊物等による汚れを回避することができる。
【0014】
請求項4の浴湯除菌装置によれば、上記光触媒担持体は球体からなるので、湯と接触する光触媒担持体の表面積を大きくとれ、効率の良い除菌作用を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、この発明の浴湯除菌装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は浴湯除菌装置の一部断面で示す側面図であり、図2は図1のA−A線断面図である。この浴湯除菌装置は、図3に示すようなヒートポンプ式給湯機に使用される。ヒートポンプ式給湯機は、タンクユニット(貯湯ユニット)1と熱源ユニット(ヒートポンプユニット)2を備え、タンクユニット1の水(温湯)をヒートポンプユニット2にて加熱するものである。
【0016】
タンクユニット1は貯湯タンク3を備え、貯湯タンク3に貯湯された温湯を浴槽4等に供給する。すなわち、貯湯タンク3には、底壁に給水口5、排水口6、及び取水口7が設けられると共に、上壁に湯流入口8、出湯口9、及び湯流出口10が設けられ、側壁に湯戻り口11が設けられている。また、取水口7と湯流入口8とは、ヒートポンプユニット2にて加熱した高温の湯を貯湯タンク3に戻すための加熱用循環路12を介して接続され、湯流出口10と湯戻り口11とは、浴槽4の湯を保温するための風呂用循環路13を介して接続されている。そして、給水口5に水道配管14が接続され、排水口6には排水配管15が接続されている。また、出湯口9には給湯用配管16が接続され、この給湯用配管16には混合弁17が介設され、混合弁17に給水用本管18が接続されている。なお、給湯用配管16には混合弁17への流入を許容する弁19が介設され、給水用本管18には混合弁17への流入を許容する弁20が介設されている。すなわち、貯湯タンク3からの高温の湯と給水用本管18からの水道水とが混合弁17で混合されて適温水となってこの適温水がFLS39を介してシャワー等に供給される。
【0017】
給湯用配管16には、浴槽4に湯を供給(給湯)するための湯張り用配管21と排水用配管22とが接続され、湯張り用配管21には混合弁23が介設され、この湯張り用配管21には混合弁23への流入を許容する弁24が介設されている。また、湯張り用配管21は、第1配管21aと第2配管21bとを有する。そして、上記弁24は第1配管21aに設けられ、第2配管21bには、開閉弁25と、排水弁26と、FLS27と、弁28とが介設されている。第2配管21bが浴槽4の湯が循環する循環路29に接続されている。この循環路29に本発明にかかる浴湯除菌装置Sが介設されている。なお、排水弁26には排水用配管33が接続されている。
【0018】
そして、循環路29は、浴槽4の接続アダプタ30に接続される第1配管31と第2配管32とを備える。第1配管31は浴湯除菌装置Sの湯流入口74(図1参照)に接続され、第2配管32は浴湯除菌装置Sの湯流出口75(図1参照)に接続される。また、第2配管32は、上記第2配管21bの合流部35よりも浴槽4側の第1流路36と、この合流部35よりも浴湯除菌装置S側の第2流路37とからなる。そして、第1流路36に循環用ポンプ38が介設されている。
【0019】
このため、開閉弁25を閉状態として循環用ポンプ38を駆動すれば、第1配管31に浴槽4の湯が流出し、浴湯除菌装置Sは介して第2配管32に入り、第2配管32から浴槽4に戻る。すなわち、浴槽4の湯が循環路29を循環する運転を行うことになる。図3の実線矢印がこの循環時の湯の流れ方向を示している。
【0020】
開閉弁25を開状態とすれば、貯湯タンク3からの高温の湯が出湯口9から出湯して湯張り用配管21を介して循環路29に入り、合流部35から第1流路36及び第2流路37に入り、第1流路36からは浴槽4に入る。また、第2流路37からは浴湯除菌装置Sを介して第1配管31に入り、第1配管31から浴槽4に入る。すなわち、浴槽4に湯を供給する湯張り時には、第1配管31及び第2配管32を介して浴槽4に湯が供給される。図3の点線矢印がこの状態の湯の流れ方向を示している。
【0021】
ところで、循環路29の第2配管32には熱交換路40が介設されている。すなわち、上記風呂用循環路13に熱交換器41及び循環用ポンプ42が介設され、この循環用ポンプ42が駆動することによって、湯流出口10から循環路13に貯湯タンク3から高温の湯が流出し、循環路13を循環して湯戻り口11から貯湯タンク3に戻る。このため、熱交換路40を流れる高温の湯と、循環路29を循環する浴槽4の湯との熱交換が行われ、浴槽4の湯が暖められる保温運転を行うことができる。また、循環路29の第1配管31には、水流スイッチ44と、湯温検出器(サーミスタ)45と、水位センサ46とが配置され、上記湯張り用配管21の第2配管21bには湯張り時の湯温を検出する温度検出器(サーミスタ)47が配置されている。
【0022】
なお、上記給水用本管18には、開閉弁48と、給水源からの給水を開閉弁48へのみ許容する弁49とが介設され、この給水用本管18から分岐される上記水道配管14には、この給水用本管18からの給水を給水口5側へのみ許容する弁50が介設されている。
【0023】
次に、ヒートポンプユニット2について説明すると、このヒートポンプユニット2は、冷凍サイクルRを備え、この冷凍サイクルRは、圧縮機51と、熱交換路52を構成する水熱交換器53と、減圧機構(電動膨張弁)54と、空気熱交換器55とを順に接続して構成される。また、循環路12は、熱交換路52を有する第1循環路12aと、この第1循環路12aからの湯(加熱水)を貯湯タンク3に返流させるための第2循環路12bとを有する。第1循環路12aはその一端が取水口7に接続され、その他端が切換弁56を介して第2循環路12bの一端に接続される。また、第2循環路12bの他端は湯流入口8に接続される。第1循環路12aには、水循環用ポンプ57と、開閉弁58、59とが介設され、第2循環路12bには、第2循環路12bの湯の温度を検出して、温度の上がり過ぎを防止するための温度検出器60が配置されている。そして、切換弁56には、開閉弁61が介設された排水用配管62が接続されている。
【0024】
従って、切換弁56を切換えて第1循環路12aと第2循環路12bとを接続状態として、水循環用ポンプ57を駆動すれば、取水口7から流出した湯がこの循環路12を循環して湯流入口8から貯湯タンク3へ返流させることができる。このため、圧縮機51を駆動すると共に、水循環用ポンプ57を駆動(作動)する。すると、貯湯タンク3の底部に設けた取水口7から貯溜水(温湯)が流出し、これが循環路12の熱交換路52を流通する。また、圧縮機51からの吐出冷媒が、水熱交換器53、減圧機構54、空気熱交換器55とを順次経由して圧縮機51へと返流する。そのため、循環路12の熱交換路52を流通する水が水熱交換器53によって加熱される。このため、加熱された湯は湯流入口8から貯湯タンク3の上部に返流される。そしてこのような動作を継続して行うことによって、貯湯タンク3に温湯が貯湯される沸上運転を行うことになる。なお、貯湯タンク3の側壁には、貯湯タンク3内の湯の温度を温度検出器(残湯サーミスタ)63a、63b、63c、63dが配置されている。
【0025】
次に、浴湯除菌装置Sについて説明する。この浴湯除菌装置Sは、図1と図2に示すように、ケーシング65と、このケーシング65に挿入される紫外線ランプ66と、この紫外線ランプ66の外周を覆うように配置されるビーズ状の複数個の光触媒担持体67・・等を備える。
【0026】
ケーシング65はステンレス等の金属からなり、円筒状のケーシング本体68と、ケーシング本体68の一端側開口部を塞ぐ第1蓋体69と、ケーシング本体68の他端側開口部を塞ぐ第2蓋体70とを備え、第1蓋体69には上記保温用循環路20の第1配管31が接続される第1継手71が取付けられ、第2蓋体70には紫外線ランプ66が支持される支持用筒体73が取付けられている。さらに、ケーシング本体68の周壁の他端開口部側に、図2に示すように、第2継手72が取付けられ、この第2継手72に循環路29の第2配管32の第1流路37に接続されている。なお、ケーシング本体68は第1筒体68aと第2筒体68bとからなり、その接合部を覆うように、ゴム等の弾性部材からなるバンド部材85が外嵌されている。
【0027】
この場合、第1継手71が浴湯除菌装置Sの湯流入口74を構成し、第2継手72が浴湯除菌装置Sの湯流出口75を構成する。このため、湯流入口74はケーシング65の軸心方向に沿って開口し、湯流出口75はケーシング65の軸心方向に直交する方向に開口している。なお、浴槽4の湯を保温する際に循環路29にて循環させるときに、湯が湯流入口74からケーシング65に入り、ケーシング65から湯流出口75から流出するが、湯張り時には逆に、湯が湯流出口75からケーシング65に入り、ケーシング65から湯流入口74から流出することになる。
【0028】
また、紫外線ランプ66は、棒状の発光体76がケーシング65の軸心に沿って配置され、その先端部66aの先端面を凸球面からなる丸み付した形状としている。また、発光体76は、本体部76aと、この本体部76aを覆うガラス部76bとからなる。この発光体76から360度全周、及び先端部66aから第1蓋体69に向かって放射状に紫外線が照射される。
【0029】
光触媒担持体67はシリカゲルに光触媒を担持させたものであって、全体として球体とされる。光触媒は酸化チタンや酸化亜鉛等を使用することができる。光触媒は、紫外線が照射されれば、その紫外線によってOHラジカルを生成し、これによって殺菌力を発揮し、しかも、有機物分解力も発揮することができる。シリカゲルは、吸着性に優れ光触媒の担持体に好ましく、かつ紫外線透過性が高く、菌吸着力に優れる。なお、光触媒担持体67の大きさは、例えば直径を6mm〜10mm程度とする。
【0030】
光触媒担持体67は袋体77に収納されて紫外線ランプ66の外周に配置される。袋体77は金属製網状体にて構成された2重構造の有底筒体からなる。このため、内周壁78と外周壁79との間に収納室80が設けられ、この収納室80に複数の光触媒担持体67が収納されている。この際、袋体77は、内周壁78が棒状の発光体76の外面に沿って配置されるように、発光体76に外嵌される。これによって、光触媒担持体67・・が配置された内側湯流路82aを構成することができる。そして、袋体77の先端部77a(紫外線ランプ66の先端部66aに対応して丸みを付した形状となっている)と湯流入口74との間にスペース83が設けられると共に、袋体77の外周壁79とケーシング本体68の内周面81との間に隙間84が形成され、このスペース83と隙間84とで、光触媒担持体67が配置されない外側湯流路82bを構成する。このため、図1の矢印Bのように、湯流入口74からケーシング65内に入った湯は、外側湯流路82bにおいては、矢印Cのように流れて、図2の矢印Dのように、湯流出口75から流出する。上記金属製網状体の網目の大きさは、浴槽4内の浮遊物等が網目に詰まるのを防止するため、上記接続アタプタ30のフィルタの網目よりも大きくするのが好ましい。また、袋体77から流出させないため網目を光触媒担持体67よりも小さくする必要がある。したがって、湯流入口74からケーシング65内に入った湯は、内側湯流路82aにおいても流れ、湯流出口75から流出する。
【0031】
このため、図3に示すように、保温時には、浴槽4の湯が浴湯除菌装置Sの湯流入口74に入って、内側湯流路82a及び外側湯流路82bを流れ湯流出口75から流出する。この際、紫外線ランプ66がオン状態とされて、袋体77に収納された光触媒担持体67に紫外線が照射される。これによって、光触媒担持体67の光触媒がこの紫外線によってOHラジカルを生成して、殺菌力を発揮し、しかも、有機物分解力も発揮することができる。そして、浴湯が内側湯流路82aを流通する際には、光触媒担持体67に湯が接触し、しかも、光触媒担持体67はビーズ状であるので、湯が接触する光触媒担持体67の表面積を大きくとれる。このため、光触媒担持体67と接触する湯の殺菌及び有機物分解を効率よく行うことができ、安定した除菌作用及び浄化作用が可能となる。これによって、浴湯がクリーン化され、入浴者はいわゆる一番風呂の感覚で常時入浴することができる。なお、外側湯流路82bにもOHラジカルは流出するが、光触媒担持体67の表面及びその近傍に比べて少ない。このため、内側湯流路82a及び外側湯流路82bを流れる湯の1回当りの除菌率及び有機物分解率は全体としてあまり高くないが、循環させることによって、浴槽4の全体の湯を除菌及び有機物分解して行くことができる。そして、外側湯流路82bにて浴湯が流れる流路の確保できる。このため、外側湯流路82bを流れる湯は滑らかにこのケーシング65内を流れ、循環用ポンプ38の負担を軽減できると共に、保温時において、熱交換を行う短時間当りの流量が少なくならず、効率良く保温することができる。
【0032】
また、光触媒担持体67を金属製網状体にて構成される袋体77に収納したので、紫外線ランプ66から照射された紫外線は、金属製網状体に当ることによって乱反射し、多くの紫外線を光触媒担持体67に対して照射することができ、殺菌力及び有機物分解力を上げることができる。また、この浴湯除菌装置S内を流れる湯は、袋体77に当ることによって、その流れが乱れ、より多くの有機物が光触媒担持体67に接触することになって、有機物の捕捉性が向上する。さらに、袋体77の網目の大きさを、浴槽4に設けられるフィルタの網目よりも大きくしたので、浴槽4内の浮遊物等がこの袋体77の網目に詰まるのを防止でき、浴湯除菌装置内での浮遊物等による汚れを回避することができる。そして、光触媒担持体67は球体からなるので、湯と接触する光触媒担持体67の表面積を特に大きくとれ、効率の良い除菌作用を発揮することができる。また、ケーシング65をステンレス等の金属の円筒体にて構成したので、紫外線はこのケーシング65の内周面81に反射され、光触媒担持体67には、紫外線ランプ66側及びケーシング65の内周面81側から紫外線が照射されることになる。このため、光触媒担持体67の殺菌作用等の光触媒作用の向上を図ることができる。さらに、浴湯除菌装置Sは、紫外線ランプ66と光触媒担持体67とを備えたものであるので、浴湯除菌装置S内において、紫外線照射による殺菌作用(紫外線による殺菌作用)と、光触媒作用により殺菌作用とがあると共に、有機物分解力も発揮できる。このため、この浴湯除菌装置Sによって、優れた殺菌作用及び有機物分解作用を発揮することができる。
【0033】
ところで、湯張り時には、保温時とは逆に湯は湯流出口75から浴湯除菌装置S内に入り、湯流入口74から流出する。すなわち、湯張り時や浴槽4の湯を追加する足し湯時には、循環路29の循環用ポンプ38を駆動しないと共に、光触媒担持体67に紫外線ランプ66から紫外線を照射しない。このため、浴湯除菌装置Sを貯湯タンク3からにクリーンな湯が流れることになって、クリーンな湯の流れによる浴湯除菌装置S内の洗浄を行うことができる。したがって、浴湯除菌装置S内がクリーンな状態となって、保温時において浴湯の安定した除菌作用及び浄化作用が可能となる。
【0034】
以上にこの発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、紫外線ランプ66の紫外線の周波数として、光触媒担持体67に照射した際に光触媒がOHラジカルを生成するものであれば任意に設定することができる。また、紫外線単独でも殺菌力を発揮し、しかも波長が253.7nmときに高い殺菌力を発揮する。このため、浴湯除菌装置Sとして、この波長の紫外線を照射できるようにするのが好ましい。上記実施形態では、光触媒担持体67を球体としているが、短柱体や垂体等の種々の形状のものを使用することができる。また、光触媒担持体67の大きさや数も、ケーシング65に収納できて、ケーシング65に外側湯流路82bが形成できるものであればよい。さらに、袋体77を構成する金属製網状体の網目(隙間)の形状としては、接続アタプタ30のフィルタの網目よりも大きくかつ光触媒担持体67が流出しない範囲で、三角形、矩形、円形等に種々の形状を採用することができ、ケーシング65としても円筒状に限るものではない。また、この浴湯除菌装置Sを使用する場合、図3に示すようなヒートポンプ式給湯機、つまりタンクユニット1とヒートポンプユニット2を備えた給湯機に限るものではなく、浴槽の湯が循環する循環路を備えた風呂装置において、この循環路に介設されるものであればよい。このため、加熱源がヒートポンプ式加熱源以外の火力や電気等であってもよく、また、貯湯タンク3を設けることなく、加熱源にて加熱された湯を直接に浴槽4に供給するものであってもよい。さらに、循環路29における熱交換手段として、貯湯タンクの湯を使用することなく、他の加熱源(例えば、電気ヒータ等)を使用するものであってもよい。また、湯張り時にクリーンな湯を供給する供給路と、保温時に浴槽4の湯を保温するための循環路とを独立状として、この循環路に浴湯除菌装置Sを配置して、ケーシング65内へは湯流入口74のみから湯が流入し、湯流出口75のみから湯が流出するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の浴湯除菌装置の実施形態を示す一部断面で示す側面図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】この発明の浴湯除菌装置を使用したヒートポンプ式給湯機の簡略図である。
【図4】従来の浴湯除菌装置を示す簡略図である。
【符号の説明】
【0036】
65・・ケーシング、66・・紫外線ランプ、67・・光触媒担持体、74・・湯流入口、75・・湯流出口、77・・袋体、82a・・内側湯流路、82b・・外側湯流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯流入口(74)と湯流出口(75)とを有するケーシング(65)と、このケーシング(65)に挿入される紫外線ランプ(66)とを備え、上記紫外線ランプ(66)の周囲を覆うように複数のビーズ状の光触媒担持体(67)を配置して、上記ケーシング(65)内に、上記光触媒担持体(67)が配置された内側湯流路(82a)と、上記光触媒担持体(67)が配置されない外側湯流路(82b)とを設け、湯流入口(74)からケーシング(65)内に流入した浴湯を、内側湯流路(82a)及び外側湯流路(82b)に流通させて湯流出口(75)から流出させることを特徴とする浴湯除菌装置。
【請求項2】
上記光触媒担持体(67)を、金属製網状体にて構成される袋体(77)に収納したことを特徴とする請求項1の浴湯除菌装置。
【請求項3】
上記袋体(77)の網目の大きさを、浴槽(4)に設けられるフィルタの網目よりも大きくしたことを特徴とする請求項2の浴湯除菌装置。
【請求項4】
上記光触媒担持体(67)は球体からなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの浴湯除菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−281036(P2006−281036A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101878(P2005−101878)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】