説明

浴用剤組成物

【課題】皮膚に対し刺激性がなく、血行を促進して発汗作用を高め、保温効果に優れた浴用剤組成物を提供すること。
【解決手段】高麗ニンジン粉末及びトウガラシチンキを配合した浴用剤組成物。高麗ニンジン粉末とトウガラシチンキの配合比率が1:1〜10:1であることが望ましく、入浴時の高麗ニンジン粉末及びトウガラシチンキ使用濃度は0.005%〜1%であると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に対し刺激性がなく、血行を促進して発汗作用を高め、保温効果に優れた浴用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浴用剤組成物は、その成分として硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等のいわゆる無機塩類を主成分とし、これに香料、油分、色素等の補助成分を適宜配合し、入浴時の気分を爽快にし、血行を促進させ、新陳代謝を高めるとして、多種多用のものが上市されている。しかしながら、現在の浴用剤組成物は、血行を促進し、新陳代謝を高めることによる発汗効果、保温効果、且つ優れた美肌作用効果を得るには不充分といった問題があった。
【0003】
一方、血行を促進し、新陳代謝を高めることにより発汗効果や保温効果を得たり、更に優れた美肌作用効果を得るための浴用剤組成物は、浴槽のお湯200Lに対し25g〜30gといった使用量が一般的である。これに対し、より一層の血行促進もしくは新陳代謝を高めるに充分な発汗、保温効果を得るには、浴槽のお湯200Lに対しての使用量を増加するか、有効成分の1つである生薬成分を増加する方法等が考えられるが、使用量の増加や有効成分を増加すると、皮膚に対しての刺激が強かったり、無機塩のアルカリ成分で脱脂されたり,肌がザラついたりするという欠点がある。
【0004】
さらに、美肌作用を得るため油分を増加すると浴後、肌がべたついたり、浴槽が汚れ掃除するのに手間がかかってしまう。
【0005】
これら状況に対して、配合成分を工夫した浴用剤も提案されており、例えば、保湿性薬用植物又はそのエキスと保温塩類を配合することにより、入浴後の肌の感触に優れた浴用剤(例えば、特許文献1参照。)や、温熱薬用植物又はそのエキスと沈静薬剤を配合することにより、充分な温まり感とそれにより高揚した意識を鎮静し就寝時の寝付きを良くする浴用剤(例えば、特許文献2参照。)などがある。
【0006】
しかしながら、これら浴用剤も配合成分の配合量によっては、所望の効果が得られないどころか、皮膚に対し刺激を感じたり、発汗過多や体温上昇などが生じる恐れもあり得るという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平09−002935号公報
【特許文献2】特開平09−002937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、皮膚に対し刺激性がなく、血行を促進して発汗作用を高め、保温効果に優れた浴用剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記問題点を解決するために鋭意研究した結果、高麗ニンジン粉末及びトウガラシチンキを含有する浴用剤組成物が上記欠点をことごとく解決することを見い出し、本発明を完成したものである。
【0010】
すなわち本発明の浴用剤組成物は高麗ニンジン粉末及びトウガラシチンキを含有すること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来の浴用剤組成物に比べ、皮膚に対し刺激性がなく、血行を促進して発汗作用を高め、保温効果にも優れた浴用剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明に用いる高麗ニンジン(Panax ginseng)粉末は、ウコギ科の多年草の植物でチョウセンニンジン(朝鮮人参)、コウライニンジン(高麗人参)、単にニンジンとも呼ばれるものを粉末にしたものである。粉末にするに際しては、高麗ニンジンをそのまま乾燥するか、蒸してから乾燥し、粉砕したものでよい。高麗ニンジンは中国吉林省や韓国の全道、日本では長野で多く栽培されている。古くから難病に効く薬草、不老長寿の霊薬として珍重されてきたもので中国での臨床データによると多くの効能があることが分かっている。高麗ニンジンには、人参サポニン、ジンセノサイドなどの成分が含まれ、疲労回復、解熱、血圧調整,消炎抗菌作用、抗肥満作用、健胃整腸作用、肝機能強化作用,強心作用、抗腫瘍作用、糖尿病治療などの幅広い効能があるとされている。
【0014】
本発明に用いるトウガラシチンキは、トウガラシ(Capsium annum:ナス科トウガラシ属)のエタノール抽出液であり、カプサイシンを0.02〜0.06%含み、増進、消化促進、唾液(だえき)分泌促進、強壮などに効き目があるとされている。含有される成分のカプサイシンは、細胞を刺激し血行促進と新陳代謝の働きがあることがわかっている。トウガラシチンキはまた古くから腰痛防止、肩こり用の温シップ剤としてあるいは育毛剤などにも配合されてきた。
【0015】
本発明の浴用剤組成物に配合する高麗ニンジン粉末とトウガラシチンキは、皮膚に対し刺激性がなく、血行を促進して発汗作用を高め、保温効果に優れている。
【0016】
本発明の浴用剤組成物における高麗ニンジン粉末とトウガラシチンキは、その配合比率(高麗ニンジン粉末:トウガラシチンキ)を1:1〜10:1で配合することによりその効果を相乗させることができる。また使用時の濃度を高麗ニンジン粉末とトウガラシチンキを合わせての入浴時の使用濃度が0.005〜1%となるように浴槽に投入することで保温効果を高めることができる。例えば、本発明の効果を発現させるためには浴槽のお湯150〜220リットルに対し高麗ニンジン粉末とトウガラシチンキが上記濃度となるようにして入浴する。そうすれば、皮膚に対し刺激性がなく、深部体温をたかめ血行促進して保温効果を高めるという優れた効果を有する。
【0017】
本発明の浴用剤組成物には、高麗ニンジン粉末及びトウガラシチンキの他に、必要に応じて、無機塩類、無機酸類、有機酸類、油脂類、粘結剤類、多価アルコール類、保湿剤、香料類、植物粉末及び生薬類(エキス、粉末)等の成分を適宜配合することができる。
【0018】
無機塩類としては、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸、ほう砂、硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、リン酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸カルシウム、硫黄、尿素、セスキ炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、ミョウバン等が挙げられる。
【0019】
無機酸類としては、メタケイ酸、ホウ酸等が挙げられる。
【0020】
有機酸類としては、安息香酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、サリチル酸等が挙げられる。
【0021】
油脂類としては、オリーブ油、大豆油、アーモンド油、ひまし油、やし油、パーム油、タートル油、ヌカ油、ホホバ油、ミンク油、卵黄油、スクワラン、アボガド油、ラノリン、流動パラフィン、白色ワセリン、DHA、EPA等が挙げられる。
【0022】
粘結剤類としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ナトリウム塩、カゼイン、ぺクチン、デンプン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ローカストビーンガム、カラギナン、寒天、カーボポール、グルコマンナン等が挙げられる。
【0023】
多価アルコール類、保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ビタミンC及びその誘導体、加水分解シルク、コラーゲン、コンドロイチン及びその蛋白複合体、グリチルリチン及びその誘導体等が挙げられる。
【0024】
香料類としては、ラベンダー油、ジャスミン油、ローズ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、タイム油、ショウブ油、ウイキョウ油、スギ油、ヒバ油、ヒノキ油、バラ油、ユーカリ油、カンファー、ペパーミント油、スペアミント油、ゲラニオール、ミカン油油、トウヒ、シトロネロール等の天然及び合成香料等が挙げられる。
【0025】
植物粉末及び生薬類(エキス、粉末)としては、レモンの皮、海藻、スピルリナ、クロロフィル、ドナリエラ、ヒノキ、ヒバ、米ヌカ、シュウブ、ショウキョウ、カンゾウ、チンピ、トウヒ、トウキ、ハッカ、ケイヒ、ウバイ、ヨモギ、ドクダミ、モモノハ、カミツレ、アロエ、ジャスミン、ローズヒップ、ラベンダー、グァバ、オウゴン、クコ、レイシ、ニワトコ、アシタバ、ウコギ、ゴボウ、カンゾウ、コウカ、ゲンノショウコ、ショウキョウ等の粉砕物及びその水溶性もしくは油溶性抽出液が挙げられる。
【0026】
さらに、本発明の浴用剤組成物は、上記のもの以外にも、必要に応じてその他の成分として、殺菌剤、界面活性剤、ビタミン類、アミノ酸及び医薬品、医薬部外品並びに化粧品用タール系色素等を適宜配合出来る。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0028】
高麗ニンジン粉末は、日本薬局方コウジンをハンマーミルにて粉砕し、100メッシュ通過品を用いた。トウガラシチンキは図1に示す製造方法で作製した。
【0029】
実施例1、比較例1
表1の組成から成る浴用剤組成物について実施例1と比較例1とを比べ評価した。製法は通常の浴用剤組成物の方法に準じた。
【0030】
【表1】

【0031】
評価方法は、テスター10人に対し、香り立ち、入浴中の皮膚への感触(刺激なし)、入浴後の肌のつや、皮膚のしっとり感(保湿性)及び温まり感(保温効果)に関して官能評価を行った。入浴方法は、40℃のお湯を浴槽に約200L入れ、実施例1、比較例1の組成からなる浴用剤組成物をそれぞれ30gを投入し、10分間入浴した。それぞれの評価項目について5段階で評価を行い、非常に良い5点、良い4点、普通3点、変化なし2点、悪い1点の点数をアンケートにより記入してもらい、その平均点を取った。その結果を、表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2に示した結果より、明らかに実施例1は、比較例1に比べ入浴中の皮膚に対する感触が良く、刺激も無く、入浴後の肌につや、しっとり感(保湿性)を与え美肌効果に優れており、また温まり感(保温効果)も優れていることが分かった。
【0034】
実施例2、比較例2,3
表3に示す組成からなる実施例2、比較例2,3の浴用剤組成物と浴槽に有効成分を何も添加しない淡水浴について比較した。40℃のお湯を浴槽に約200L入れ、淡水浴はそのまま、実施例2、比較例2,3は各々30gずつ投入し、15分間入浴した。この入浴は5分入浴、5分休憩、10分入浴の反復浴とした。入浴効果は、発汗効果と保温効果を評価した。評価方法は、テスター10名に対し、25℃、60%の恒温恒湿室にて、発汗効果の評価は、額部の水分蒸散量を発汗量とし、フォーション社製ハイドログラフを用い、面積1cmの換気カプセルを用い測定した。同じく恒温恒湿室にて、保温効果の評価は、皮膚表面温度の経時変化を測定することにより行い、具体的には、胸部の温度を日本電気三栄製サーモグラフィーにて測定した。なお試料の製法は通常の浴用剤組成物の方法
に準じた。評価結果を表4及び表5に示す。表3中の数値は質量%を表し、表4及び表5中の数値はそれぞれの測定値を表す。
【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
表4,5の結果より、実施例2は、比較例2,3および淡水浴と比較して、入浴後60分においても、水分蒸散量が多いことから発汗作用が高く、また皮膚表面温度についても、比較例および淡水浴と比較して、高いことから保温性に優れていることが分かった。
【0039】
実施例3〜5
表6の組成から成る実施例3〜5の浴用剤組成物を通常の方法で製造した。これらは、高麗ニンジン粉末とトウガラシチンキの配合比率が異なるものである。入浴中と入浴後の温まり感について実施例1と同様の方法で評価したところ、いずれも良好な結果が得られた
が、実施例4については、実施例3,5に比べて、入浴中の温まり感が少ないとの評価であった。
【0040】
【表6】

【0041】
実施例6〜8
表7の組成から成る実施例6〜8の浴用剤組成物を通常の方法で製造した。これらも、高麗ニンジン粉末とトウガラシチンキの配合比率が異なるものである。入浴中と入浴後の温まり感について実施例1と同様の方法で評価した結果を併せて表7に示す。
【0042】
【表7】

【0043】
表7に示したように、実施例6は良好な結果が得られた。実施例7については、実施例6に比べて、入浴中の温まり感が少ないとの評価であったことから、トウガラシの比率が多いと入浴中の温まり感が少ない傾向にあることが分かる。実施例8については、実施例6に比べて、入浴後の温まり感が少ないとの評価であったことから、トウガラシが少ないと入浴後の温まり感が少ない傾向にあることが分かる。
【0044】
実施例9〜11
40℃のお湯を浴槽に約200L入れ、実施例6(高麗ニンジン粉末2%、トウガラシチンキ0.5%含有)の浴用剤組成物を表8に示す量にて投入し、20名のテスターに対し
、実施例1と同様の方法で、温まり感(保温効果)、香り立ち及び使用後の沈殿について評価した。評価結果を併せて表8に示す。なお評価点はアンケートの平均点である。
【0045】
【表8】

【0046】
表8に示したように、実施例9は良好な結果が得られた。投入量が多い(1%より多い)実施例10については、実施例9に比べて香り立ち(生薬成分の匂い)が気になり、使用後の沈殿も目立つとの評価であった。投入量が少ない(0.005%より少ない)実施例11については、実施例9に比べて温まり感(保温効果)が少ない評価であった。
【0047】
実施例12、比較例4,5
室温25度、湿度50%の条件の下、湯温40度で15分間の全身浴を行い、入浴前5分間、入浴中15分間、出浴後30分間の1から2分ごとに深部体温を測定した。入浴対象は成人8名で、男子5名、女子3名で行った。表9に浴用剤組成物の組成を示す。サンプルは、実施例12、比較例4、比較例5及びさら湯を比較しておこなった。浴用剤組成物は、25gを200Lのお湯に完全に溶解させて使用した。なお深部温度計の値は、入浴前5分の値の平均値との差を算出した。深部体温測定結果を図2に示す。なお図2において、SNT−2、SNT−4、SNT−3はそれぞれ実施例12,比較例4,比較例5のことである。
【0048】
【表9】

【0049】
図2に示すように、深部体温は入浴により上昇し、出浴後緩やかに下降して行く。入浴中から出浴後を通して、実施例12及び比較例4の両方で、さら湯と比較して深部温の上昇が確認できた。特に実施例12と比較例4を比較すると、トウガラシチンキに加え高麗ニンジン粉末を含む実施例12の方が高い深部体温を示す傾向があることが分かる。高麗ニンジン粉末とトウガラシチンキを配合した入浴剤は、さら湯に比べ温浴効果を高めた。ト
ウガラシチンキ単独より高麗ニンジン粉末を配合することにより相乗的に温熱効果が高まった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例に用いたトウガラシチンキの製造方法を示す工程図である。
【図2】実施例12、比較例4,5の深部体温測定結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高麗ニンジン粉末及びトウガラシチンキを配合することを特徴とする浴用剤組成物。
【請求項2】
高麗ニンジン粉末とトウガラシチンキの配合比率が1:1〜10:1である請求項1に記載の浴用剤組成物。
【請求項3】
高麗ニンジン粉末及びトウガラシチンキの入浴時の使用濃度が0.005%〜1%である請求項1または2に記載の浴用剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−275004(P2009−275004A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128939(P2008−128939)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(306018365)クラシエホームプロダクツ株式会社 (188)
【Fターム(参考)】