説明

海水淡水化装置

【課題】適切な運転条件に設定し、電力量を削減する海水淡水化装置を提供する。
【解決手段】高圧ポンプP2と、海水および逆浸透膜10からの濃縮海水が供給され、濃縮海水から回収したエネルギーにより高圧で海水を送出し低圧で濃縮海水を排水する動力回収装置20と、動力回収装置20から排水された海水を昇圧し、高圧ポンプP2からの海水と合流させて逆浸透膜10へ排水するポンプP3と、動力回収装置20から排水される濃縮海水量を調整する排水弁30と、逆浸透膜10に供給される海水圧力を測定するセンサSP1と、逆浸透膜10から排水される淡水流量を測定するセンサSQ4と、逆浸透膜10から排水される濃縮海水流量、あるいは、ポンプP3から送出される海水流量を測定するセンサSQ1、SQ3と、動力回収装置20に供給される海水流量を測定するセンサSQ2と、センサSP1、SQ1〜SQ4で測定された値に基づいて制御する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は海水淡水化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に水問題が深刻化する中、水ビジネスを巨大市場と捉え、世界規模で水ビジネス競争が加速している。河川などの表流水や地下水を水源として持たない中東諸国や、国内でも渇水リスクの高い地域では、水源確保のために海水淡水化技術を導入し、大型の海水淡水化プラントを設置している。
【0003】
従来の海水淡水化技術では、海水を加熱蒸発後に凝縮・回収する蒸発法が主流であった。これに対し、近年は、経済性の観点からRO(reverse osmosis)膜(以下、逆浸透膜という)を用いた方式が拡大しつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−279472号公報
【特許文献2】特開2009−154070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
逆浸透膜を用いた造水コスト(円/m3)のうち、ランニングコストに関する項目では、電力費(動力費)が約50%を占める。すなわち、動力費を削減することによってランニングコストを効果的に削減することができる。そこで、高圧ポンプの動力を高効率で回収する動力回収装置を適用し、動力用消費エネルギー(電力量)を大幅に改善できる動力回収装置の効率運転点を実現することが求められている。
【0006】
対象とする原海水の水質の変化、必要な淡水の生産水量、回収率などの運転条件の違いに応じて、単位生産淡水量あたりの電力量が異なるため、適切に運転条件を変更する必要がある。
【0007】
しかしながら、海水淡水化装置の運転条件が運転当初に決定された条件で不変である場合、電力量を限界まで削減することができなかった。その結果、海水淡水化装置を効率よく運転させることが困難であった。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みて成されたものであって、適切な運転条件に設定し、電力量を削減する海水淡水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による海水淡水化装置は、海水を淡水と濃縮海水とに分離して排水する逆浸透膜と、前記逆浸透膜に海水を送出する高圧ポンプと、海水と前記逆浸透膜から排水された濃縮海水とが供給され、前記濃縮海水から回収した圧力エネルギーにより高圧で前記海水を送出するとともに低圧で濃縮海水を排水する動力回収装置と、前記動力回収装置から排水された海水を前記高圧ポンプから排水される海水と同じ圧力となるまで昇圧し、前記高圧ポンプから排水される海水と合流するように排水するブースターポンプと、前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水弁と、前記逆浸透膜に供給される海水の圧力を測定する圧力センサと、前記逆浸透膜から排水される淡水の流量を測定する第1流量センサと、前記逆浸透膜から排水される濃縮海水の流量、あるいは、前記ブースターポンプから送出される海水の流量を測定する第2流量センサと、前記動力回収装置に供給される海水の流量を測定する第3流量センサと、前記圧力センサおよび前記第1流量センサで測定された値により前記高圧ポンプの回転数を制御し、前記第2流量センサで測定された値により前記ブースターポンプの回転数を制御し、前記第2流量センサおよび前記第3流量センサで測定された値により前記排水弁の弁開度を制御する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態に係る海水淡水化装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【図2】図1に示す海水淡水化装置の動力回収装置の一構成例を説明するための図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る海水淡水化装置の構成の他の例を概略的に示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る海水淡水化装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る海水淡水化装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る海水淡水化装置ついて、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1に、本発明の第1実施形態に係る海水淡水化装置の一構成例を概略的に示す。本実施形態に係る海水淡水化装置は、送水ポンプP1、高圧ポンプP2、ブースターポンプP3、動力回収装置20、ブライン流量調節弁30、逆浸透膜10、制御部CTR1、圧力センサSP1、および、流量センサSQ1、SQ2、SQ3、SQ4を備えている。
【0013】
送水ポンプP1は、前処理系(図示せず)から海水を吸引し、海水淡水化装置内に海水を送り込む。送水ポンプP1から排水された海水は、高圧ポンプP2と動力回収装置20とに供給される。
【0014】
高圧ポンプP2は、送水ポンプP1から供給された海水を高圧状態(例えば6MPa程度)まで昇圧して排水する。高圧ポンプP2から排水された海水は、逆浸透膜10に供給される。
【0015】
逆浸透膜10は、海水をろ過して海水に含まれる塩分を除去し、淡水を生成する。逆浸透膜10によって除去された塩分は、濃縮海水として排水される。逆浸透膜10から排水された濃縮海水は、動力回収装置20に供給される。
【0016】
図2に、動力回収装置20の一構成例を示す。本実施形態では、動力回収装置20は、例えば容積型動力回収装置である。動力回収装置20は、高圧側入口22と、高圧側出口24と、低圧側入口26と、低圧側出口28と、を備えている。
【0017】
動力回収装置20は、濃縮海水に含まれる圧力エネルギーを利用して送水ポンプP1から低圧側入口26より流入する海水を昇圧し、ブースターポンプP3へ出力する。動力回収装置20は、圧力エネルギーを回収した後の濃縮海水を、低圧側出口28および排水弁30を介して排水する。
【0018】
すなわち、高圧側入口22には、逆浸透膜10から排水された濃縮海水が供給される。濃縮海水は、その圧力エネルギーが回収された後、低圧側出口28から排水される。低圧側入口26には、送水ポンプP1から海水が供給される。この海水は、濃縮海水が持つ圧力(動力)を利用することにより高圧側出口24から排水される。高圧側出口24から排水された海水は、ブースターポンプP3に供給される。
【0019】
排水弁30は、例えばブライン流量調節弁であって濃縮海水の流量を調節する目的で、アクチュエータとして設置される。排水弁30の弁開度は、制御部CTR1からの制御信号により制御される。
【0020】
ブースターポンプP3は、動力回収装置20からの海水を、高圧ポンプP2からの海水と同程度の圧力まで昇圧する。そして、ブースターポンプP3から排水された昇圧後の海水は、高圧ポンプP2からの海水に合流されて、逆浸透膜10へ送水される。
【0021】
圧力センサSP1は、逆浸透膜10の入口圧力を計測する。流量センサSQ1は、ブースターポンプP3の出力流量を計測する。流量センサSQ2は、動力回収装置20の低圧側入口26への海水の流入量を計測する。流量センサSQ3は、動力回収装置20の高圧側入口22への濃縮海水の流入量を計測する。流量センサSQ4は、逆浸透膜10の出力流量を計測する。圧力センサSP1、および、流量センサSQ1〜SQ4で計測された値は、制御部CTR1に供給される。
【0022】
制御部CTR1は、圧力センサSP1および流量センサSQ4で測定された値により高圧ポンプP2の回転数を制御し、流量センサSQ1あるいは流量センサSQ3で測定された値によりブースターポンプP3の回転数を制御し、流量センサSQ2および流量センサSQ1で測定された値、あるいは、流量センサSQ2および流量センサSQ3で測定された値により排水弁30の弁開度を制御するように構成されている。
【0023】
以下、上記海水淡水化装置の動作について説明する。
【0024】
淡水の生産水量が所望の流量にするために、制御部CTR1は、高圧ポンプP2の動作を制御して海水塩分による浸透圧以上の圧力を逆浸透膜10に加える。淡水の生産水量は高圧ポンプP2の回転数に大きく依存するため、制御部CTR1は、淡水の生産水量の計測値が設定された目標値と一致するように、高圧ポンプP2の回転数を例えばPID(P : Proportional, I : Integral D : Differential)制御する。
【0025】
一方で、逆浸透膜10の入口圧力が逆浸透膜10の耐圧以上にならないように、逆浸透膜10の入口圧力は、圧力センサSP1により常時監視している。制御部CTR1は、圧力センサSP1で測定された値が、所定値以上とならないように高圧ポンプP2の回転数を制御する。
【0026】
制御部CTR1は、所望の回収率から濃縮海水の流量を演算し、ブースターポンプP3から送出される海水量(目標流量)を演算し、その目標流量とブースターポンプP3から送出される海水量とが一致するようにブースターポンプP3の回転数を制御する。なお、設定された回収率MRsvから目標流量Qhbsvを演算する際には、高圧ポンプP2についての制御に用いられる設定値である淡水の生産水量設定値Qpsvを用いて、
Qhbsv = Qpsv×(100/MRsv−1)
により演算される。ただし、MRsv≠0である。
【0027】
また、制御部CTR1は、動力回収装置20の高圧側入口22の流量と低圧側入口26の流量との差を所定値にする。このように制御することにより、動力回収装置20の性能を活かすことができ、効果的に動力回収装置20での消費電力を削減することができる。動力回収装置20の高圧側入口22の流量は、ブースターポンプP3により制御される。低圧側出口28の流量は、排水弁30により制御される。
【0028】
例えば、ブライン流量調節弁および回転式容積型動力回収装置を採用している場合には、回転に必要な潤滑水量を考慮して、その潤滑水量分多い流量を高圧側濃縮海水流量の計測値として、低圧側濃縮海水流量の目標値としてブライン流量調節弁を制御する。
【0029】
上記のように、圧力センサSP1と流量センサSQ1、SQ2、SQ3、SQ4を設置して制御部CTR1が高圧ポンプP2、ブースターポンプP3、および、排水弁30を制御することによって、動力回収装置の適切な運転条件に設定し、電力量を削減する海水淡水化装置を提供することができる。
【0030】
なお、図3に、高圧ポンプP2の回転数が固定されている場合の海水淡水化装置の一構成例を示す。この場合、海水淡水化装置は、高圧ポンプP2の後段に設置された高圧ポンプ吐出弁40を備える。
【0031】
制御部CTR1は、圧力センサSP1および流量センサSQ4で測定された値により、淡水の生産水量が所定値になるよう高圧ポンプ吐出弁40の弁開度を制御する。また、必要に応じて、逆浸透膜10の入口圧力が逆浸透膜10の耐圧以上とならないように、高圧ポンプ吐出弁40の弁開度を制御する。
【0032】
このように、圧力センサSP1と流量センサSQ1、SQ2、SQ3、SQ4を設置して制御部CTR1が高圧ポンプ吐出弁40、ブースターポンプP3、および、排水弁30を制御することによっても、水質や生産水量等の条件に応じて適切な運転条件に設定し、電力量を削減する海水淡水化装置を提供することができる。その結果、造水コスト(円/m)を低く抑えることができる。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態に係る海水淡水化装置について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、上述の第1実施形態に係る海水淡水化装置と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
図4に、本実施形態に係る海水淡水化装置の一構成例を概略的に示す。本実施形態に係る海水淡水化装置は、送水圧力調節弁50と、保安フィルタFLと、高圧ポンプ吐出弁40と、圧力センサSP2、SP3、SP4と、制御部CTR2と、をさらに備えている。
【0035】
なお、本実施形態の海水淡水化装置は、圧力センサSP1および流量センサSQ1、SQ2、SQ3、SQ4で測定された値によって、吐出弁40の弁開度、ブースターポンプP3の回転数、および、排水弁30の弁開度を制御する制御部(図示せず)をさらに備えている。
【0036】
この制御部は、図3に示す場合と同様に、圧力センサSP1および流量センサSQ4で測定された値により、淡水の生産水量が所定値になるよう高圧ポンプ吐出弁40の弁開度を制御する。また、図示しない制御部は、流量センサSQ1あるいは流量センサSQ3で測定された値により、ブースターポンプP3の回転数を制御する。また、図示しない制御部は、流量センサSQ2および流量センサSQ1で測定された値、あるいは、流量センサSQ2および流量センサSQ3で測定された値により、排水弁30の弁開度を制御する。
【0037】
保安フィルタFLは、送水ポンプP1の後段に設けられている。保安フィルタFLは、調整槽(図示せず)から送水される海水から懸濁物質を除去して逆浸透膜10を保護する。この場合、送水ポンプP1の後段であって、保安フィルタFLの前段に、送水圧力調節弁50が設けられる。
【0038】
圧力センサSP2は、送水圧力調節弁50の後段であって保安フィルタFLの前段に設けられている。圧力センサSP2は、送水圧力調節弁50から保安フィルタFLへ排水される海水の圧力を測定する。
【0039】
圧力センサSP3は、保安フィルタFLの後段であって高圧ポンプP2の前段に設けられている。圧力センサSP3は、保安フィルタFLを介して高圧ポンプP2に供給される海水の圧力を測定する。
【0040】
圧力センサSP4は、動力回収装置20の低圧側出口28と排水弁30との間に設置されている。圧力センサSP4は、動力回収装置20の低圧側出口28から排水される濃縮海水の圧力を測定する。
【0041】
制御部CTR2は、圧力センサSP2、SP3、SP4で測定された値によって送水圧力調節弁50の弁開度を制御する。制御部CTR2は、保安フィルタFL入口圧力が、保安フィルタFLの耐圧以上とならないように、送水圧力調節弁50の弁開度を制御するように構成されている。また、制御部CTR2は、高圧ポンプP2を保護するために、高圧ポンプP2引込圧力が下限値を下回らないように、送水圧力調節弁50の弁開度を制御するように構成されている。
【0042】
動力回収装置20の材質によっては、圧力センサSP4により背圧を測定することにより、制御部CTR2は動力回収装置20にキャビテーションが発生し、装置が破壊されることを抑制することが可能である。この場合、制御部CTR2は、背圧が設定値以上となるように、送水圧力調節弁50の弁開度を制御する。
【0043】
上記のように、送水ポンプP1の後段に保安フィルタFLを設けた場合であっても、圧力センサSP2、SP3、SP4をさらに設置して、送水圧力調節弁50の弁開度を制御することによって、上述の第1実施形態と同様に、動力回収装置の適切な運転条件に設定し、電力量を削減する海水淡水化装置を提供することができる。その結果、造水コスト(円/m)を低く抑えることができる。
【0044】
なお、上記の実施形態では、制御部CTR2と図示しない制御部とは独立に構成されていたが、制御部CTR2と図示しない制御部とが一体に構成されていても良い。その場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0045】
次に、本発明の第3実施形態に係る海水淡水化装置について、図面を参照して説明する。
【0046】
図5に、本実施形態に係る海水淡水化装置の一構成例を概略的に示す。本実施形態に係る海水淡水化装置は、原海水の水質を計測する計測器と、高圧ポンプP2、ブースターポンプP3、および、送水ポンプP1の電力量を計測する電力量計(図示せず)と、運転条件設定部60と、を備えている。海水淡水化装置は、計測器として、海水のペーハー(pH)を計測するpH計SpHと、海水の温度を計測する温度計STと、海水の電気伝導度を計測する電気伝導度計SECと、を備えている。なお、本実施形態に係る海水淡水化装置は、上述の第2実施形態と同様に、圧力センサSP2、SP3、SP4から供給される値に基づいて、送水圧力調節弁50の弁開度を制御する制御部(図示せず)をさらに備えている。
【0047】
pH計SpHは、保安フィルタFLの後段であって、高圧ポンプP2および動力回収装置20への流路が分岐する前段に設置される。pH計SpHは、保安フィルタFLを通過した海水のペーハー(pH)を計測する。pH計SpHで計測された値は、運転条件設定部60に供給される。
【0048】
温度計STは、保安フィルタFLの後段であって、高圧ポンプP2および動力回収装置20への流路が分岐する前段に設置される。温度計STは、保安フィルタFLを通過した海水の温度を計測する。温度計STで計測された値は、運転条件設定部60に供給される。
【0049】
電気伝導度計SECは、保安フィルタFLの後段であって、高圧ポンプP2および動力回収装置20への流路が分岐する前段に設置される。電気伝導度計SECは、保安フィルタFLを通過した海水の電気伝導度を計測する。電気伝導度計SECで計測された値は、運転条件設定部60に供給される。
【0050】
運転条件設定部60は、pH計SpH、温度計ST、および、電気伝導度計SECから供給された値に基づいて、海水淡水化装置の運転条件を設定する。本実施形態では、運転条件として、目標流量および回収率を設定する。目標流量は、ブースターポンプP3から送出される海水の流量の目標値である。
【0051】
運転条件設定部60は、供給されたペーハー(pH)、温度、および、電気伝導度の値から、動力回収装置20、送水ポンプP1、高圧ポンプP2、および、ブースターポンプP3による電力消費をより削減できるように、回収率および目標流量を設定する。
【0052】
運転条件設定部60は、例えば、所定の回収率を設定し、回収率から濃縮海水の流量を演算し、ブースターポンプP3から送出される海水量(目標流量)を演算する。なお、設定された回収率MRsvから目標流量Qhbsvを演算する際には、高圧ポンプP2についての制御に用いられる設定値である淡水の生産水量設定値Qpsvを用いて、
Qhbsv = Qpsv×(100/MRsv−1)
により演算される。ただし、MRsv≠0である。
【0053】
さらに、運転条件設定部60は、温度計STから供給された温度値が大きくなると目標流量および回収率を大きくし、温度値が小さくなると目標流量および回収率を小さくする。運転条件設定部60は、電気伝導度計SECから供給された電気伝導度が大きくなると目標流量および回収率を小さくし、電気伝導度が小さくなると目標流量および回収率を大きくする。運転条件設定部60は、pH計SpHから供給されたペーハー(pH)の値によって、海水の電気伝導度の値を補正する。
【0054】
運転条件設定部60で設定された目標流量および回収率は、制御部CTR3に供給される。
【0055】
制御部CTR3は、供給された目標流量および回収率を達成するように、ブースターポンプP3の回転数、排水弁30の弁開度、および、吐出弁40の弁開度を制御する。制御部CTR3は、その目標流量とブースターポンプP3から送出される海水量とが一致するようにブースターポンプP3の回転数を制御する。
【0056】
また、制御部CTR3は、動力回収装置20の高圧側入口22の流量と低圧側入口26の流量との差を所定値にする。このように制御することにより、動力回収装置20の性能を活かすことができ、効果的に動力回収装置20での消費電力を削減することができる。動力回収装置20の高圧側入口22の流量は、ブースターポンプP3により制御される。低圧側出口28の流量は、排水弁30により制御される。
【0057】
本実施形態に係る海水淡水化装置は、電力量計で計測された、送水ポンプP1、高圧ポンプP2、および、ブースターポンプP3で消費される電力量を、一体の表示部(図示せず)あるいは外部に接続されたモニタ等に表示させるように構成されている。
【0058】
原海水の水質や回収率といった運転条件に応じて、装置運転時の動力回収装置20、ポンプP1、P2、P3の効率、逆浸透膜10の特性が変化するため、単位生産水量あたりの総電力量が変化する。この単位生産水量あたりの総電力量の変化を、例えばテーブルや2次元グラフや3D(3次元)グラフなどで可視化することもできる。また、原海水の水質条件ごとに単位生産水量あたりの総電力量を最小とする運転機能を実現することも可能となる。
【0059】
上記のように、保安フィルタFLの後段に、海水の水質を計測する計測器を設けた場合、水質や生産水量等の条件に応じて、動力回収装置のより適切な運転条件に設定し、電力量を削減する海水淡水化装置を提供することができる。その結果、造水コスト(円/m)を低く抑えることができる。
【0060】
なお、本実施形態において、pH計SpHを設けているが、pH計SpHは省略してもよい。pH計SpHを省略した場合であっても、上述の実施形態に係る海水淡水化装置と同様の効果を得ることができる。また、制御部CTR3は、図示しない制御部と一体に形成されていてもよい。その場合でも、上述の実施形態に係る海水淡水化装置と同様の効果を得ることができる。
【0061】
さらに、本実施形態において、電力量計を設けているが、電力量計は省略してもよい。電力量計を省略した場合であっても、上述の実施形態に係る海水淡水化装置と同様の効果を得ることができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0063】
例えば、上記の各実施形態において、流量センサSQ1と流量センサSQ3とは、いずれか一方が設置されていればよく、一方が省略されてもよい。その場合であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
P1…送水ポンプ、P2…高圧ポンプ、P3…ブースターポンプ、FL…保安フィルタCTR1、CTR2、CTR3…制御部、SP1…圧力センサ、SP2…圧力センサ(第2圧力センサ)、SP3…圧力センサ(第3圧力センサ)、SP4…圧力センサ(第4圧力センサ)、SQ1…流量センサ(第2流量センサ)、SQ2…流量センサ(第3流量センサ)、SQ3…流量センサ(第2流量センサ)、SQ4…流量センサ(第1流量センサ)、10…逆浸透膜、20…動力回収装置、22…高圧側入口、24…高圧側出口、26…低圧側入口、28…低圧側出口、30…排水弁、40…吐出弁、50…送水圧力調節弁、60…運転条件設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水を淡水と濃縮海水とに分離して排水する逆浸透膜と、
前記逆浸透膜に海水を送出する高圧ポンプと、
海水と前記逆浸透膜から排水された濃縮海水とが供給され、前記濃縮海水から回収した圧力エネルギーにより高圧で前記海水を送出するとともに低圧で濃縮海水を排水する動力回収装置と、
前記動力回収装置から排水された海水を前記高圧ポンプから排水される海水と同じ圧力となるまで昇圧し、前記高圧ポンプから排水される海水と合流するように排水するブースターポンプと、
前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水弁と、
前記逆浸透膜に供給される海水の圧力を測定する圧力センサと、
前記逆浸透膜から排水される淡水の流量を測定する第1流量センサと、
前記逆浸透膜から排水される濃縮海水の流量、あるいは、前記ブースターポンプから送出される海水の流量を測定する第2流量センサと、
前記動力回収装置に供給される海水の流量を測定する第3流量センサと、
前記圧力センサおよび前記第1流量センサで測定された値により前記高圧ポンプの回転数を制御し、前記第2流量センサで測定された値により前記ブースターポンプの回転数を制御し、前記第2流量センサおよび前記第3流量センサで測定された値により前記排水弁の弁開度を制御する制御部と、を備える海水淡水化装置。
【請求項2】
海水を淡水と濃縮海水とに分離して排水する逆浸透膜と、
海水を送出する高圧ポンプと、
前記高圧ポンプと前記逆浸透膜との間に設置され、前記高圧ポンプから前記逆浸透膜に供給される海水の量を調節する吐出弁と、
海水と前記逆浸透膜から排水された濃縮海水とが供給され、前記濃縮海水から回収した圧力エネルギーにより高圧で前記海水を送出するとともに低圧で濃縮海水を排水する動力回収装置と、
前記動力回収装置から排水された高圧海水が供給され、前記高圧海水を前記高圧ポンプから排水される海水と同じ圧力となるまで昇圧し、前記高圧ポンプから排水される海水と合流するように排水するブースターポンプと、
前記動力回収装置から排水される濃縮海水の量を調整する排水弁と、
前記逆浸透膜に供給される海水の圧力を測定する圧力センサと、
前記逆浸透膜から排水される淡水の流量を測定する第1流量センサと、
前記逆浸透膜から排水される濃縮海水の流量、あるいは、前記ブースターポンプから送出される海水の流量を測定する第2流量センサと、
前記動力回収装置に供給される海水の流量を測定する第3流量センサと、
前記圧力センサおよび前記第1流量センサで測定された値により前記吐出弁の弁開度を制御し、前記第2流量センサで測定された値により前記ブースターポンプの回転数を制御し、前記第2流量センサおよび前記第3流量センサで測定された値により前記排水弁の弁開度を制御する制御部と、を備える海水淡水化装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記逆浸透膜から前記動力回収装置へ供給される濃縮海水の流量と、前記動力回収装置へ供給される海水の流量との差分が所定値となるように、前記ブースターポンプの回転数、および、前記排水弁の弁開度を制御するように構成された請求項1または請求項2記載の海水淡水化装置。
【請求項4】
前記高圧ポンプおよび前記動力回収装置へ海水を送出する送水ポンプと、
前記送水ポンプから送出される海水の量を調節する第2吐出弁と、
前記送水ポンプの後段に設けられた保安フィルタと、
前記保安フィルタの入力圧力を測定する第2圧力センサと、
前記高圧ポンプに供給される海水の圧力を測定する第3圧力センサと、
前記動力回収装置から排水される濃縮海水の圧力を測定する第4圧力センサと、
前記第2圧力センサ、前記第3圧力センサ、および、前記第4圧力センサで測定された値により前記第2吐出弁の弁開度を制御する第2制御部と、をさらに備えた請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の海水淡水化装置。
【請求項5】
前記第2制御部は、前記第4圧力センサで測定された値が所定値以上となるように前記第2吐出弁の弁開度を制御するように構成されている請求項4記載の海水淡水化装置。
【請求項6】
前記高圧ポンプおよび前記動力回収装置に供給される海水の温度を計測する温度計と、
前記高圧ポンプおよび前記動力回収装置に供給される海水の電気伝導度を計測する電気伝導度計と、
前記温度計および前記電気伝導度計とで計測された値から前記ブースターポンプの目標流量と回収率とを設定し、前記制御部に供給する設定部と、をさらに備える請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の海水淡水化装置。
【請求項7】
前記高圧ポンプおよび前記動力回収装置に供給される海水のペーハーを計測するpH計をさらに備え、
前記設定部は前記pH計で計測された値により、目標流量および回収率を補正するように構成されている請求項6記載の海水淡水化装置。
【請求項8】
前記高圧ポンプ、前記ブースターポンプ、および、前記送水ポンプの電力量を計測する電力量計をさらに備える請求項4記載の海水淡水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−240234(P2011−240234A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113535(P2010−113535)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】