説明

海洋深層水の不純物除去方法及び不純物除去システム

【課題】 海洋深層水中の塩、微生物などの不純物を、低エネルギーかつ低コストにて充分に除去し、安全で良質なミネラル水などの回収水を確実に得るための不純物除去方法、及びそれに用いる簡素な不純物除去システムを提供すること。
【解決手段】 海洋深層水に対して、少なくともろ過処理及び透析処理を行い、該透析処理をモザイク荷電膜にて行うことを特徴とする海洋深層水の不純物除去方法、並びに少なくともろ過処理設備及び透析処理設備を備え、該透析処理設備にモザイク荷電膜が備えられたことを特徴とする、前記不純物除去方法に用いる不純物除去システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋深層水の不純物除去方法及び不純物除去システムに関する。さらに詳しくは、海洋深層水中の塩、微生物などの不純物を、低エネルギーかつ低コストにて充分に除去し、安全で良質なミネラル水などの回収水を確実に得るための不純物除去方法、及びそれに用いる簡素な不純物除去システムに関する。
【0002】
なお、本発明において「海洋深層水」とは、水深約200m以上の深海から採取した海水のことをいう。また「不純物除去」とは、海洋深層水中で低分子量電解質から電解されたイオンのなかの、例えばNa+、K+、Al3+、Cl-、F-、Br-、NO3-、SO42-、PO43-などの不要なイオンの除去(脱塩)や微生物、浮遊物質などの除去を行い、不純物を含まず、主に例えばMg2+、Ca2+などのミネラル成分のみを含む水を回収する操作をいう。
【背景技術】
【0003】
光が届かない深海の水である海洋深層水は、海の上層にある表層水と比べて、生命活動に欠かせない無機栄養塩が多く含まれ、陸水や大気からの化学物質の汚染にさらされる機会が極めて少なく、周年に渡って温度変化が少ないなどの利点を有する海水であり、特に必須微量元素やミネラル成分がバランス良く含まれていることから、種々有効利用についての研究が進められている。
【0004】
ミネラル成分を含む水を調製する方法として、例えば、水深200m以深より採取される海水(海洋深層水)を必要に応じて限外ろ過した後、逆浸透膜ろ過法、電気透析法、拡散透析法、蒸留法などの少なくとも1種にて処理する方法が提案されている(特許文献1、2参照)。かかる方法によって、確かに、例えば皮膚改善に有用なミネラル成分を含んだ、化粧料に配合し得る濃縮水や減塩水が得られる。
【0005】
しかしながら前記方法において、例えば逆浸透膜ろ過法にて処理を行う場合には、ろ過装置を作動させる際の作動圧力が通常3〜10MPaとかなり高く、専用の高価な高圧ポンプが必要であることに加え、かかる高圧ポンプの動力コストも高く、非常に高い維持費が必要であるといった問題がある。さらに、かかる逆浸透膜ろ過法にて処理した透過水はほぼ純水であり、回収水中には例えばNa+、K+、Mg2+、Ca2+、Cl-、SO42-などの各種イオンが混在しているため、この中からミネラル成分であるMg2+、Ca2+を分離するには、電気透析法や拡散透析法による処理がさらに必要であるといった問題がある。
【0006】
前記電気透析法にて処理を行う場合には、1価の陽イオンを選択的に透過させ、陰イオンも透過させることができるといった利点があるものの、セル内部で発生するジュール熱による温度上昇を防ぐために冷却装置が必要であり、しかも直流電流を通電させる際の電気コストも高く、非常に高い維持費が必要であるといった問題がある。
【0007】
前記拡散透析法には、電気透析法とは異なり、駆動動力が不要であるという利点があるものの、処理の際に透過させる海洋深層水と同量以上の純水が必要であり、やはりコストが上昇してしまう。
【0008】
さらに前記ミネラル成分を含む水を調製する方法以外にも、例えば水深2000m以上の深海又は水深100m以上の湧昇流地からの海洋深層水をセラミックフィルタなどでろ過した後、多価陽イオン難透過性イオン交換膜などの手段で多価陽イオンを残留させ、陰イオン交換膜などの手段で陰イオンを回収してミネラル水を製造する方法も提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
しかしながら前記方法において、多価陽イオン難透過性イオン交換膜は通常電気透析法にて用いられるため、やはり、高額な電荷装置が必要であることに加え、かかる電荷装置を作動させる際の電気コストも高く、非常に高い維持費が必要である。しかも電気透析法による処理に加え、陰イオン交換膜などにて別途陰イオンを回収しなければならず、操作が煩雑で時間を要し、コストも上昇してしまうといった問題もある。
【特許文献1】特開2000−159654号公報
【特許文献2】特開2000−159655号公報
【特許文献3】特開2002−205070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、海洋深層水中の塩、微生物などの不純物を、低エネルギーかつ低コストにて充分に除去し、安全で良質なミネラル水などの回収水を確実に得るための不純物除去方法、及びそれに用いる簡素な不純物除去システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明は、
(1)海洋深層水に対して、少なくともろ過処理及び透析処理を行う不純物除去方法であって、前記透析処理をモザイク荷電膜にて行うことを特徴とする海洋深層水の不純物除去方法、並びに
(2)少なくともろ過処理設備及び透析処理設備を備えた不純物除去システムであって、前記透析処理設備にモザイク荷電膜が備えられたことを特徴とする、前記不純物除去方法に用いる不純物除去システム
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の不純物除去方法及びそれに用いる不純物除去システムによれば、海洋深層水中の塩、微生物などの不純物が、低エネルギーかつ低コストで充分に除去され、安全で良質なミネラル成分を豊富に含有した回収水を確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の海洋深層水の不純物除去方法は、海洋深層水に対して、少なくともろ過処理及び透析処理を行うものであり、該透析処理をモザイク荷電膜にて行うことを特徴とするものである。
【0014】
以下に本発明の不純物除去方法及びこれに用いる不純物除去システムの実施態様を図面に基づいて説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る海洋深層水の不純物除去方法及びこれに用いる不純物除去システムの一例を示す概略構成図である。図1に示されるように、本実施形態の不純物除去システムには、少なくともろ過処理設備1及び透析処理設備2が備えられ、該透析処理設備2にはモザイク荷電膜10が備えられている。
【0016】
なお本実施形態において、ろ過処理及び透析処理を行う順序(ろ過処理設備及び透析処理設備を備える順序)に特に限定はなく、場合に応じて適宜処理順序を変更することができる。図1には、例えばろ過処理及び透析処理の順に海洋深層水の処理を行う場合の不純物除去システムの一例をあげている。以下、代表して、この順に処理を行った場合の不純物除去方法及び不純物除去システムについて図面に基づいて説明する。
【0017】
まず海洋深層水を原水タンク3へ移送した後、ポンプ3pにて所定の送水量でろ過処理設備1へと移送する。該ろ過処理設備1では、主に、安全で良質なミネラル水などの回収水には不要の、海洋深層水中の高分子量物質や微粒子物質などが除去される。
【0018】
前記ろ過処理として、例えば限外ろ過膜を用いた限外ろ過処理、精密ろ過膜を用いた精密ろ過処理などが好適に行われる。
【0019】
限外ろ過処理に用いられる限外ろ過膜は、通常スキン層とスポンジ層とからなる非対称の高分子膜であり、例えば布や素焼きにコロジオンを塗布した膜や、酢酸セルロース膜、ポリアクリロニトリル膜、ポリスルホン膜などがあげられる。該限外ろ過膜は逆浸透膜よりもやや孔径が大きな微孔を有し、例えばコロイド状粒子、タンパク質、微生物性汚染物質などの高分子量物質を透過させずに分離し、水、イオンなどの低分子量物質を透過させる、特に透水性に優れた透過選択性膜である。該限外ろ過膜によって、通常平均分子量が数千〜30万程度の高分子量物質の回収が可能である。また該限外ろ過膜は、0.005〜0.1μm程度の微粒子を透過させないものである。
【0020】
ろ過処理として限外ろ過処理を行う場合、限外ろ過膜を備えた限外ろ過処理設備における海洋深層水の処理条件は、充分な処理効果が得られる限り特に限定がなく、海洋深層水の水質や目的とする回収水の水質、限外ろ過膜の種類などに応じて適宜変更することができるが、例えば処理圧力(ろ過圧力)は50〜1000kPa程度、処理速度(ろ過速度)は3〜10m/日程度、処理温度(海洋深層水温度)は5〜15℃程度であることが好ましい。なお該限外ろ過処理では加圧ろ過を行うことから、膜付近にゲル状の層が生じたり、膜劣化が生じる場合もある。したがって、例えば平膜型、管型、中空型などの膜モジュールの形式、処理条件などを適宜選択して処理を行うことが好ましい。
【0021】
精密ろ過に用いられる精密ろ過膜は、一般ろ過膜と前記限外ろ過膜との中間に位置する膜であり、例えばポリフッ化ビニリデン膜、セルロース膜、ポリプロピレン膜、ポリテトラフルオロエチレン膜などがあげられる。該精密ろ過膜により、例えば濁質や、大腸菌、一般細菌などの細菌類といった懸濁成分の他、クリプトスポリジウム、ジアルジアなどの病原性微生物などを分離除去することが可能である。また該精密ろ過膜により、0.05〜10μm程度の微粒子を分離することができる。
【0022】
ろ過処理として精密ろ過処理を行う場合、精密ろ過膜を備えた精密ろ過処理設備における海洋深層水の処理条件は、充分な処理効果が得られる限り特に限定がなく、海洋深層水の水質や目的とする回収水の水質、精密ろ過膜の種類などに応じて適宜変更することができるが、例えば処理圧力(ろ過圧力)は10〜100kPa程度、処理速度(ろ過速度)は1〜3m/日程度、処理温度(海洋深層水温度)は5〜15℃程度であることが好ましい。なお該精密ろ過処理でも加圧ろ過を行うことから、膜付近にゲル状の層が生じたり、膜劣化が生じる場合もある。したがって、例えば平膜型、管型、中空型などの膜モジュールの形式、処理条件などを適宜選択して処理を行うことが好ましい。またかかる精密ろ過処理では、場合に応じてクロスフローろ過方式や全量ろ過方式を適宜選択して採用することが可能である。
【0023】
なお本実施形態においては、ろ過処理として、例えば前記限外ろ過処理や精密ろ過処理のいずれかのみを行っても、両方を行ってもよく、海洋深層水の水質や目的とする回収水の水質などに応じて適宜選択することが好ましい。
【0024】
かくしてろ過処理設備1にてろ過処理が施された海洋深層水をろ過水タンク4へと移送し、該ろ過水タンク4からポンプ4pにて所定の送水量で透析処理設備2へと移送する。従来は、ここで電気透析処理法、逆浸透膜処理法、拡散透析処理法などを適宜組み合わせた処理が行われているが、本実施形態においては、透析処理設備2内に備えられたモザイク荷電膜10にて透析処理を行う。このようにモザイク荷電膜10にて透析処理を行うことが本実施形態の大きな特徴の1つである。
【0025】
透析処理に用いられるモザイク荷電膜は、カチオン性重合体成分とアニオン性重合体成分とからなり、膜の表裏を貫通しかつ互いに隣接して存在しているイオンチャンネルを有する膜である。該モザイク荷電膜は、このイオンチャンネルを介してイオンを透過させることはできるが、低分子量有機物質や非イオンは、透過させることができないか、ほんの僅かしか透過させないといった優れた機能性膜である。
【0026】
このようにモザイク荷電膜はそれ1枚で、Na+、K+、Mg2+、Ca2+、Al3+などの陽イオン及びCl-、F-、Br-、NO3-、SO42-、PO43-などの陰イオン両方を透過させることができるので、透過に長時間を要さず、外部から電気を流したり大きな圧力をかける必要がない。したがって、かかるモザイク荷電膜にて透析処理を行った場合には、海洋深層水中に含まれる不要な陽イオン及び陰イオンが同時に確実に除去され、ランニングコストを抑えることが可能である。しかもこれら陽イオン及び陰イオンの中から、各種イオンを適宜選択的に透過させることができるので、不要なイオンを含まず、Mg2+、Ca2+といったミネラル成分のみを豊富に含む良質な回収水を得ることができる。
【0027】
図1に示すように、透析処理設備2内の液槽21、22はモザイク荷電膜10で仕切られており、液槽21に海洋深層水(ろ過水)を移送し、もう一方の液槽22には例えば純水などの透析水を流入する。モザイク荷電膜10内の個々のイオンチャンネルでは、陽イオン又は陰イオンいずれかが優先的に透過するが、膜全体としてはどちらのイオンも透過し、これらイオンは液槽22内の透析水側に浸透する。しかもこの際、後述するように、モザイク荷電膜の構成素材を適宜調整することにより、陽イオンのなかでもMg2+、Ca2+以外の陽イオンが選択的に透過され、その結果、液槽21内の海洋深層水(ろ過水)から不要なイオンが除去されてMg2+、Ca2+といったミネラル成分のみが残存する。
【0028】
本実施形態に用いられるモザイク荷電膜には特に限定がなく、カチオン性重合体成分及びアニオン性重合体成分からなるものであればよいが、例えば陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂からなるものが好適に用いられる。
【0029】
モザイク荷電膜を構成する各イオン交換樹脂の形状及びその分布状態にも特に限定がないが、例えば図3の模式図に示すような、粒状の陽イオン交換樹脂及び粒状の陰イオン交換樹脂がランダムに分布したモザイク荷電膜や、図5の模式図に示すような、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が層状に交互に並んだモザイク荷電膜などが例示される。
【0030】
図3に示されるモザイク荷電膜10aは、陽イオン交換樹脂粒子11及び陰イオン交換樹脂粒子12が、膜形成ポリマー13中にランダムに分散しているものである。かかるモザイク荷電膜10aは、例えば、膜形成ポリマー、溶媒、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を混合し、ポリマー溶液に陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を分散させて均一なポリマー分散液を調製した後、該ポリマー分散液を基材上に塗布、延伸し、乾燥して凝固させ、得られた膜から溶媒を除去して洗浄するなどの方法にて製造することができる。なおかかるポリマー分散液を調製する際には、膜形成ポリマーを溶媒に溶解させた均一なポリマー溶液に、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を分散させる方法や、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を溶媒に分散させて分散液を調製した後、膜形成ポリマーを該分散液に溶解させ、ポリマー溶液に陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が分散した状態とする方法などを採用することができる。
【0031】
前記膜形成ポリマーとしては、モザイク荷電膜を形成する際に、加熱乾燥などにより皮膜を形成することができる、例えばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホンなどのポリスルホン系樹脂;例えば二価フェノールと芳香族ジカルボン酸とのポリエステルなどのポリアリレート系樹脂;例えばジアミンと二塩基酸との重縮合、ラクタム開環重合、アミノカルボン酸の重縮合などによって得られる重合体などのポリアミド系樹脂;例えばビフェニルテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮重合などによって得られる重合体やポリエーテルイミドなどのポリイミド系樹脂;例えば無水トリメリット酸とジイソシアネートとの反応や無水トリメリット酸クロライドとジアミンとの反応によって得られる重合体や無水トリメリット酸とジフェニルアルキルジイソシアネートなどとの反応による芳香族ポリアミドイミドなどのポリアミドイミド系樹脂;例えば脂肪族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネートとテトラメチレングリコールなどのポリオールとの反応によって得られる重合体やポリウレタン尿素樹脂などのポリウレタン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレンなどのアルキレン主鎖の水素原子がフッ素原子にて置換された重合体やそのスルホン化物などのフッ素系樹脂;ポリメチルシロキサンなどのポリアルキルシロキサンなどのシリコーン系樹脂が例示される。なおかかる膜形成ポリマーの数平均分子量には特に限定がない。
【0032】
溶媒は、前記膜形成ポリマーを溶解し得るものである限り特に限定がなく、膜形成ポリマーの種類に応じて適宜選択することができ、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド,N,N−ジエチルアセトアミドなどの含チッ素系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系有機溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系有機溶剤などがあげられる。
【0033】
ポリマー溶液に分散させる陽イオン交換樹脂としては、分子中に例えばスルホン酸基(−SO3H)、カルボン酸基(−COOH)、ホスホン酸基(−PO32、−PO4H)、フェノール基(−C64OH)、スルホエチル基(−(CH22SO2OH)、ホスホメチル基(−CH2PO(OH)2)、カルボキシメチル基(−OCH2COOH)、イミノ二酢酸基(−N=C(CH2COOH)2)、イミノ二酢酸エステル基(−N=C(CH2COOR)2)などを有する、例えばイオン交換容量が1〜2.5meq/mL程度の酸性樹脂を好適に用いることができる。
【0034】
ポリマー溶液に分散させる陰イオン交換樹脂としては、分子中に例えば第4級アンモニウム塩基(−NR3)、第3級アミノ基(−NR2)、第2級アミノ基(−NHR)、第1級アミノ基(−NH2)、2−ヒドロキシプロピルアミノ基(−OC24N(C25)CH2CH(OH)CH3)、トリエチルアミノ基(−(CH22N(C253)、ポリエチレンイミノ基(−(CH2CH2NH)xCH2CH2NH2)、ジエチルアミノエチル基(−(CH22N(C252)、p−アミノベンジル基(−CH2−C64−NH2)、N−メチルグルカミン基(−CH2−N(CH3)−CH2−(C(OH)H)4−CH2OH)などを有する、例えばイオン交換容量が1〜2.5meq/mL程度の塩基性樹脂を好適に用いることができる。
【0035】
なお、ポリマー溶液における陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の分散性が向上し、得られるモザイク荷電膜の特性がさらに向上するといった点から、これら陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂がいずれも例えば粉砕イオン交換樹脂、超微粒イオン交換樹脂などの粒子径が比較的小さいイオン交換樹脂であることが好ましい。一般的なイオン交換樹脂としては、その種類によっても異なるものの、通常700〜900μm程度の平均粒子径を有する樹脂が多い。イオン交換樹脂のポリマー溶液における分散性及びモザイク荷電膜の耐圧性を考慮すると、その平均粒子径は小さいほど好ましく、例えば500μm以下、さらには400μm以下、特に300μm以下であることが好ましい。また例えば粉砕イオン交換樹脂を用いる場合に、イオン交換樹脂を粉砕する際の作業性や、イオン交換樹脂からポリマー分散液を調製する際の作業性を考慮すると、該イオン交換樹脂の平均粒子径は0.1μm以上、さらには1μm以上、特に20μm以上であることが好ましい。なおこれらイオン交換樹脂の粒子径によって、得られるモザイク荷電膜の塩透過性を変化させることが可能であるので、モザイク荷電膜の使用目的、すなわち該モザイク荷電膜にて処理しようとする対象海洋深層水中のイオンの種類に応じて、適した粒子径を有する粉砕イオン交換樹脂、超微粒イオン交換樹脂などのイオン交換樹脂を適宜選択して用いることが好ましい。なおイオン交換樹脂として粉砕イオン交換樹脂を用いようとする場合、イオン交換樹脂の粉砕方法には特に限定がなく、イオン交換樹脂の種類に応じて適宜粉砕方法を選択することが好ましい。
【0036】
陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の種類(組み合わせ)及び使用割合は、海洋深層水における透過させようとするイオン(除去しようとする不要なイオン(塩))の種類に応じて適宜変更することが好ましい。またこれらイオン交換樹脂の種類及び合計量を考慮して、前記膜形成ポリマー及び溶媒の種類や使用割合を適宜変更することが好ましい。
【0037】
得られたポリマー分散液を例えば静置するか、遠心分離機などを用いて脱泡処理した後、表面が平滑な基材上に、例えばバーコート法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法などによって塗布、延伸し、0.05〜1mm程度の厚さの膜を形成させる。これを所望の温度及び時間にて乾燥して凝固させた後、得られた膜から溶媒を除去し、洗浄処理を行って0.05〜1mm程度の厚さの、図3に示されるようなモザイク荷電膜が得られる。
【0038】
さらに前記のごとき粒状の各イオン交換樹脂がランダムに分布したモザイク荷電膜として、例えば図4の模式図に示されるような、その片面にイオン選択性表面層が設けられた、より優れたイオン選択性(イオン価数の差異に基づく選択性)を有するモザイク荷電膜も用いることができる。図4に示すように、モザイク荷電膜10bは、陽イオン交換樹脂粒子11及び陰イオン交換樹脂粒子12が膜形成ポリマー13中にランダムに分散している膜14の片面に、イオン選択性表面層15が設けられたものである。
【0039】
図4に示されるモザイク荷電膜10bは、例えば前記図3に示されるモザイク荷電膜10aと同様にして製造し、洗浄処理を施した膜の片面に、後述する荷電性ポリマー及び必要に応じて支持体となるポリマー、溶媒を混合した荷電性ポリマーの溶液を、例えばバーコート法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法などによって塗布及び延伸し、乾燥させて凝固させ、10〜200μm程度の厚さのイオン選択性表面層を設けるなどして製造することができる。
【0040】
イオン選択性表面層には、海洋深層水中の、選択性を付与しようとするイオンの種類に応じて任意の荷電性ポリマーが含有されていることが好ましい。
【0041】
Na+、K+、Ca2+、Mg2+、Al3+といった陽イオンに対する選択性が付与されたモザイク荷電膜としては、例えばポリエチレンイミンや、任意の高分子主鎖上に例えば第4級アンモニウム塩基(−NR3)、第3級アミノ基(−NR2)、第2級アミノ基(−NHR)、第1級アミノ基(−NH2)、2−ヒドロキシプロピルアミノ基(−OC24N(C25)CH2CH(OH)CH3)、トリエチルアミノ基(−(CH22N(C253)、ポリエチレンイミノ基(−(CH2CH2NH)xCH2CH2NH2)、ジエチルアミノエチル基(−(CH22N(C252)、p−アミノベンジル基(−CH2−C64−NH2)、N−メチルグルカミン基(−CH2−N(CH3)−CH2−(C(OH)H)4−CH2OH)などを有するポリマーなどの、正の荷電性ポリマーを含有したイオン選択性表面層が設けられたものが好ましい。
【0042】
また逆にCl-、F-、Br-、NO3-、SO42-、PO43-といった陰イオンに対する選択性が付与されたモザイク荷電膜としては、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸や、任意の高分子主鎖上に例えばスルホン酸基(−SO3H)、カルボン酸基(−COOH)、ホスホン酸基(−PO32、−PO4H)、フェノール基(−C64OH)、スルホエチル基(−(CH22SO2OH)、ホスホメチル基(−CH2PO(OH)2)、カルボキシメチル基(−OCH2COOH)、イミノ二酢酸基(−N=C(CH2COOH)2)、イミノ二酢酸エステル基(−N=C(CH2COOR)2)などを有するポリマーなどの、負の荷電性ポリマーを含有したイオン選択性表面層が設けられたものが好ましい。
【0043】
なおこれら荷電性ポリマーの多くは水溶性を呈するものであることから、通常、例えばポリビニルアルコール、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などの、例えば前記膜形成ポリマーとして例示したポリマーのなかから適宜選択し、支持体として用いることが好ましい。
【0044】
なお、これら図3及び図4に示されるような粒状の陽イオン交換樹脂及び粒状の陰イオン交換樹脂がランダムに分布したモザイク荷電膜は、透析処理での適用温度範囲が例えば10〜80℃程度と非常に広いので、海洋深層水の水質や目的とする回収水の水質などに応じて、処理温度を適宜変更して用いることができるといった利点を有する。
【0045】
また透析処理の際の操作圧力は、例えば従来の逆浸透膜処理のように高圧に設定する必要はなく、後述するように、例えば2MPa以下の低圧でよいが、図3及び図4に示されるような粒状の陽イオン交換樹脂及び粒状の陰イオン交換樹脂がランダムに分布したモザイク荷電膜は、優れた耐圧性を有するものであることから、かかるモザイク荷電膜を用いた場合には、透析処理の際の操作圧力を高圧に設定することも可能である。
【0046】
図5に示されるモザイク荷電膜10cは、陽イオン交換樹脂16及び陰イオン交換樹脂17が層状に交互に並んでいるものである。かかるモザイク荷電膜10cは、例えば、陽イオン交換基を導入可能なポリマーと陰イオン交換基を導入可能なポリマーとからブロックコポリマーを調製し、製膜前又は製膜後に陽イオン交換基及び陰イオン交換基をそれぞれ導入して、必要に応じて各ブロックを架橋させ、該ブロックコポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液を用い、溶媒を蒸発させて製膜するなどの方法にて製造することができる。
【0047】
陽イオン交換基を導入可能なポリマーとしては、例えばスルホン酸基(−SO3H)、カルボン酸基(−COOH)、ホスホン酸基(−PO32、−PO4H)、フェノール基(−C64OH)、スルホエチル基(−(CH22SO2OH)、ホスホメチル基(−CH2PO(OH)2)、カルボキシメチル基(−OCH2COOH)、イミノ二酢酸基(−N=C(CH2COOH)2)、イミノ二酢酸エステル基(−N=C(CH2COOR)2)などの陽イオン交換基を導入することができるポリマーを適宜用いることができる。
【0048】
陰イオン交換基を導入可能なポリマーとしては、例えば第4級アンモニウム塩基(−NR3)、第3級アミノ基(−NR2)、第2級アミノ基(−NHR)、第1級アミノ基(−NH2)、2−ヒドロキシプロピルアミノ基(−OC24N(C25)CH2CH(OH)CH3)、トリエチルアミノ基(−(CH22N(C253)、ポリエチレンイミノ基(−(CH2CH2NH)xCH2CH2NH2)、ジエチルアミノエチル基(−(CH22N(C252)、p−アミノベンジル基(−CH2−C64−NH2)、N−メチルグルカミン基(−CH2−N(CH3)−CH2−(C(OH)H)4−CH2OH)などの陰イオン交換基を導入することができるポリマーを適宜用いることができる。
【0049】
前記陽イオン交換基を導入可能なポリマー及び陰イオン交換基を導入可能なポリマーの種類(組み合わせ)及び使用割合は、海洋深層水における透過させようとするイオン(除去しようとする不要なイオン(塩))の種類に応じて適宜変更することが好ましい。またブロックコポリマーを調製する際の条件もこれらポリマーの種類などに応じて適宜変更することが好ましい。
【0050】
ブロックコポリマーからポリマー溶液を調製する際の溶媒には特に限定がなく、ブロックコポリマーを充分に溶解し得る、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを用いることができる。かかる溶媒の種類は、ブロックコポリマーを構成するポリマーの種類に応じて決定すればよい。
【0051】
前記ポリマー溶液を用い、例えば水銀上で溶媒を蒸発させて製膜させるが、得られるモザイク荷電膜の強度を向上させるために、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなる薄膜などを支持部材として製膜させてもよい。
【0052】
前記のごとき製膜の前又は後に、陽イオン交換基及び陰イオン交換基を、ブロックコポリマー中のそれぞれのポリマー部位に導入させ、必要に応じて架橋構造を形成させる。これらイオン交換基の導入及び架橋は、イオン交換基の種類及びポリマー部位の構造などに応じて適宜条件を選択して行うことができる。
【0053】
本実施形態における透析処理では、例えば図3や図4に示される粒状の陽イオン交換樹脂及び粒状の陰イオン交換樹脂がランダムに分布したモザイク荷電膜や、図5に示される陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が層状に交互に並んだモザイク荷電膜などを特に限定なく用いることができるが、これらのモザイク荷電膜の中でも、耐圧性、耐久性、塩透過性などだけでなく、特にイオン選択性も具備し、適用温度範囲が広く、海洋深層水中のイオン濃度に係らず処理することが可能であるという点から、例えば図3や図4に示される粒状の陽イオン交換樹脂及び粒状の陰イオン交換樹脂がランダムに分布したモザイク荷電膜、特にその片面にイオン選択性表面層が設けられた図4に示されるようなモザイク荷電膜が好ましい。またこれらの中でも、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が、いずれも平均粒子径が500μm以下のイオン交換樹脂であるモザイク荷電膜を用いることが特に好ましい。
【0054】
また透析処理を行うことによる脱塩効果を考慮すると、モザイク荷電膜の塩透過率は、透析処理に供する海洋深層水中のイオンの種類や後述する透析処理条件などによっても多少異なるが、50%以上、さらには70%以上であることが好ましく、特に90〜99%の塩透過率を達成し得ることが好ましい。
【0055】
透析処理設備2における透析処理の際の操作圧力は、モザイク荷電膜を用いたことによって低く設定することが可能であり、低コストで充分に作動し、満足な透析処理結果が得られるという点から、例えば2MPa以下、さらには1.8MPa以下であることが好ましい。またあまりにも操作圧力が低い場合には、透析処理に時間を要してしまう恐れがあるので、0.1MPa以上、さらには0.3MPa以上とすることが好ましい。
【0056】
さらに他の透析処理条件は、充分な処理効果が得られる限り、すなわち海洋深層水からミネラル成分以外の不要なイオンが除去される限り特に限定がなく、海洋深層水の水質や目的とする回収水の水質などに応じて適宜変更することができるが、例えば海洋深層水の処理温度(海洋深層水温度)は10〜80℃程度、さらには15〜60℃程度であることが好ましい。なおかかる処理温度を上昇させた場合には、処理時間を短縮することが可能であり、しかも不純物などが溶出したり、有機物質が変質する恐れも少ない。
【0057】
図1の概略構成図に示す不純物除去方法及び不純物除去システムでは、透析処理設備2が1つのみ備えられているが、本実施形態の別の一例として、透析処理設備が複数備えられた不純物除去システムで、透析処理を複数回行うことも可能である。
【0058】
図2Aに、2つの透析処理設備2、2が直列して備えられた場合の海洋深層水の不純物除去方法及び不純物除去システムの一例を、図2Bに、2つの透析処理設備2、2が並列して備えられた場合の海洋深層水の不純物除去方法及び不純物除去システムの一例を、それぞれろ過水タンク4以降の部分概略構成図として示す。図2A及び図2Bに示すように、2つの透析処理設備2、2内にはいずれもモザイク荷電膜10が備えられており、ろ過水タンク4を経た海洋深層水は、ポンプ4pにて所定の送水量で移送され、1段目の透析処理設備2及び2段目の透析処理設備2にて順次(図2A)又は2つの透析処理設備2、2にて同時に(図2B)透析処理が施される。
【0059】
なお2つの透析処理設備にて順次海洋深層水を処理する場合、図2Aに示されるように、1段目の透析処理設備2を経た海洋深層水は、通常、一度貯留水タンク5へと移送された後、ポンプ5pにて再度所定の送水量で2段目の透析処理設備2へと移送される。このように2つの透析処理設備にて順次処理する場合には、1段目の透析処理設備において、例えばNa+、K+、Cl-などの透過速度が他のイオンと比較して格段に速いイオンを透過させ易いモザイク荷電膜にてまずこれらのイオンを選択的に透過させ、次いで2段目の透析処理設備において、SO42-、PO43-などの2価、3価の陰イオンや、1段目のモザイク荷電膜で透過しなかったNO3-、F-、Br-などの1価の陰イオンを透過させ易く、かつ2価の陽イオンを透過させ難いモザイク荷電膜にて、これらの陰イオンを選択的に透過させながら2価の陽イオン、すなわちCa2+、Mg2+を残存させる、といった処理を行うことが好ましい。前記透過速度が他のイオンと比較して格段に速いイオンを透過させ易いモザイク荷電膜によれば、通常海洋深層水中に数%存在しているNa+、K+、Cl-は、Na+、Cl-が約0.05%以下の濃度に、K+が約0.005%以下の濃度になるまで除去され得る。
【0060】
このような2つの透析処理設備にて海洋深層水を順次処理した場合には、特に良質でミネラル成分を豊富に含有した回収水を得ることができる。なお1段目、2段目の透析処理設備におけるモザイク荷電膜で各々透過させるイオンは、前記順序に限定されるものではなく、逆に1段目の透析処理設備のモザイク荷電膜でSO42-、PO43-、NO3-、F-、Br-を透過させた後、2段目の透析処理設備のモザイク荷電膜でNa+、K+、Cl-を透過させてもよい。
【0061】
図2A、図2Bでは2つの透析処理設備にて透析処理を2回行う場合を示したが、透析処理の回数には限定がなく、海洋深層水中のイオン濃度、目的とする回収水の純度、処理に供する海洋深層水量などに応じて適宜変更することが好ましい。また並列での処理及び直列での処理を適宜組み合わせることも可能である。
【0062】
かくして透析処理が施されたあとの液槽21内の海洋深層水(処理水)は、Ca2+、Mg2+などのミネラル成分を豊富に含有した回収水(ミネラル水)として透析処理設備2から排出される。一方液槽22内の透析水は、Na+、K+、Cl-、NO3-、F-、Br-、SO42-、PO43-などを含有した透過水として透析処理設備2から排出され、海水へと放流される。
【0063】
このように本実施形態の不純物除去方法及び不純物除去システムによれば、海洋深層水中の塩、微生物などの不純物が、低エネルギーかつ低コストで充分に除去され、安全で良質なミネラル成分を豊富に含有した回収水を確実に得ることができる。
【0064】
なお本実施形態の不純物除去システムにおいて、図1、2A、2Bの概略構成図には示していないが、システム全体が効率的かつ安全正確に連続操業されるように、ろ過処理設備1、透析処理設備2などの各設備、タンクのポンプなどは、それぞれが運転制御されている。
【0065】
以下に、本発明の海洋深層水の不純物除去方法及び不純物除去システムに用いるモザイク荷電膜を製造例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0066】
製造例1〜6(モザイク荷電膜の製造)
以下に示す原料1〜4を準備した。原料3及び原料4は、各々表1に示す平均粒子径となるように粉砕し、粉砕イオン交換樹脂として用いた。
原料1(膜形成ポリマー):
ポリスルホン(アルドリッチ(Aldrich)社製、数平均分子量:約22000)
原料2(溶媒):
N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業(株)製)
原料3(陽イオン交換樹脂):
スルホン酸基含有イオン交換樹脂
(商品名:Amberlite IR−120B、オルガノ(株)製、
イオン交換容量:1.9meq/mL)
原料4(陰イオン交換樹脂):
第4級アンモニウム塩基含有イオン交換樹脂
(商品名:Amberlite IRA−410J、オルガノ(株)製、
イオン交換容量:1.4meq/mL)
【0067】
表1に原料1〜4の使用量、並びに原料3及び原料4の平均粒子径を併せて示す。
【0068】
まず原料1及び原料2を、ヒーター付きスターラーを用いて約60℃で均一なポリマー溶液となるまで充分に加熱攪拌した。得られたポリマー溶液を60℃に保持したまま、これに粉砕して粒子径を調整した原料3及び原料4を添加し、これら原料3及び原料4がポリマー溶液中に分散するまで充分に加熱攪拌して均一なポリマー分散液を得た。
【0069】
得られたポリマー分散液を液中に気泡がなくなるまで静置して脱泡した後、ガラスプレート上にキャストし、バーコート法にて約0.5mmの均一な厚さとなるように延伸した。これを30℃で24時間乾燥させて凝固させた後、得られた膜から原料2である溶媒を除去し、蒸留水にて洗浄してモザイク荷電膜を得た。
【0070】
得られたモザイク荷電膜はひび割れ、欠け、キズなどがなく、良好な外観を有するものであった。その厚さを表1に示す。
【0071】
製造例7(イオン選択性表面層を有するモザイク荷電膜の製造)
正の荷電性ポリマーとしてポリエチレンイミン(商品名:ポリエチレンイミンP−70、和光純薬工業(株)製、30%ポリエチレンイミン溶液、数平均分子量:約70000)を用い、またポリエチレンイミンの支持体としてポリビニルアルコール(和光純薬工業(株)製、重合度:1000)を用いてイオン選択性表面層を形成した。
【0072】
ポリビニルアルコールをジメチルスルホキシド(和光純薬工業(株)製)の70%水溶液に溶解させ、この溶液に、ポリビニルアルコールとポリエチレンイミンとの割合が20:1(重量比)となるようにポリエチレンイミンを添加してポリマー溶液を調製した。
【0073】
得られたポリマー溶液を、製造例4で得られた洗浄後の膜の片面にバーコート法にて塗布及び延伸し、これを室温で約1時間乾燥して凝固させた後、得られた膜から溶媒を除去し、蒸留水にて洗浄して厚さ約150μmのイオン選択性表面層が設けられたモザイク荷電膜を得た。
【0074】
得られたモザイク荷電膜はひび割れ、欠け、キズなどがなく、良好な外観を有するものであった。その厚さを表1に示す。
【0075】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の海洋深層水の不純物除去方法及び不純物除去システムは、海洋深層水からの良質なミネラル水の製造に有効利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る、海洋深層水の不純物除去方法及びこれに用いる不純物除去システムの一例を示す概略構成図
【図2A】本発明の第1の実施形態に係る、海洋深層水の不純物除去方法及びこれに用いる不純物除去システムの一例を示す部分概略構成図
【図2B】本発明の第1の実施形態に係る、海洋深層水の不純物除去方法及びこれに用いる不純物除去システムの一例を示す部分概略構成図
【図3】本発明に用いられるモザイク荷電膜の一例を示す模式図
【図4】本発明に用いられるモザイク荷電膜の一例を示す模式図
【図5】本発明に用いられるモザイク荷電膜の一例を示す模式図
【符号の説明】
【0078】
1 ろ過処理設備
2 透析処理設備
3 原水タンク
3p ポンプ
4 ろ過水タンク
4p ポンプ
5 貯留水タンク
5p ポンプ
10、10a、10b、10c モザイク荷電膜
11 陽イオン交換樹脂粒子
12 陰イオン交換樹脂粒子
13 膜形成ポリマー
14 膜
15 イオン選択性表面層
16 陽イオン交換樹脂
17 陰イオン交換樹脂
21、22 液槽



【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋深層水に対して、少なくともろ過処理及び透析処理を行う不純物除去方法であって、
前記透析処理をモザイク荷電膜にて行うことを特徴とする海洋深層水の不純物除去方法。
【請求項2】
透析処理を複数回行う、請求項1に記載の不純物除去方法。
【請求項3】
2MPa以下の操作圧力で透析処理を行う、請求項1又は2に記載の不純物除去方法。
【請求項4】
モザイク荷電膜が、粒状の陽イオン交換樹脂及び粒状の陰イオン交換樹脂がランダムに分布したものである、請求項1〜3いずれかに記載の不純物除去方法。
【請求項5】
モザイク荷電膜が、その片面にイオン選択性表面層が設けられたものである、請求項4に記載の不純物除去方法。
【請求項6】
陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂が、いずれも平均粒子径が500μm以下のイオン交換樹脂である、請求項4又は5に記載の不純物除去方法。
【請求項7】
モザイク荷電膜の塩透過率が50%以上である、請求項1〜6いずれかに記載の不純物除去方法。
【請求項8】
ろ過処理が限外ろ過処理及び/又は精密ろ過処理である、請求項1〜7いずれかに記載の不純物除去方法。
【請求項9】
少なくともろ過処理設備及び透析処理設備を備えた不純物除去システムであって、
前記透析処理設備にモザイク荷電膜が備えられたことを特徴とする、請求項1に記載の不純物除去方法に用いる不純物除去システム。
【請求項10】
透析処理設備が複数備えられた、請求項9に記載の不純物除去システム。



【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−326505(P2006−326505A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154393(P2005−154393)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】