説明

浸入性コーティング剤

【目的】微細な凹凸表面、細かなひび割れ等の凹凸部や隙間に空気を追い出しながら浸入して、溶剤の蒸発により硬化させるようにした浸入性コーティング剤を提供する。
【構成】合成樹脂ポリマーと界面活性剤とを溶剤に溶解させてなる液状物であって、該液状物は、空気が流通し得る材料の微細な凹凸表面、細かなひび割れ等の凹凸部や隙間に空気を追い出しながら浸入して、溶剤の蒸発により硬化させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気が流通し得る材料の微細な凹凸表面、細かなひび割れ等の凹凸部や隙間に空気を追い出しながら浸入して、溶剤の蒸発により硬化させるようにした浸入性コーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来構造物の隙間を塞ぐためのコーティング剤(シーリング材)としては、エポキシ樹脂が使用されていた。
【0003】
しかしながら、このものは、極めて高価であるほか、使用直前に硬化剤を混合(2液を混合)し、これを構造物の隙間に注入するものであるので、非常に取り扱い難い問題があった。そればかりか、粘性が高いこともあって、隙間に完全に充填することはできず、空気が残存するので、強固に隙間を連結できないこととコーティングが劣化する問題があった。更に、狭い隙間、ひび割れ等には、エポキシ樹脂は浸入充填し得ないので、施工し得ない問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、このような点に着目してなされたものであり、微細な凹凸表面、細かなひび割れ等の凹凸部や隙間に空気を追い出しながら浸入して、溶剤の蒸発により硬化させるようにした浸入性コーティング剤を提供することを目的とする。しかして従来、このような性質を有するコーティング剤は、本出願人の知る限り、知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明者は鋭意研究の結果、合成樹脂ポリマーと界面活性剤とを溶剤に溶解させてなる液状物が、空気が流通し得る材料の微細な凹凸表面、細かなひび割れ等の凹凸部や隙間に空気を追い出しながら浸入充填して、溶剤の蒸発により隙間無く強固に硬化するという驚くべき事実を見出し、本発明に到達した。
【0006】
即ち本発明は、合成樹脂ポリマーと界面活性剤とを溶剤に溶解させてなる液状物であって、該液状物は、空気が流通し得る材料の微細な凹凸表面、細かなひび割れ等の凹凸部や隙間に空気を追い出しながら浸入充填して、溶剤の蒸発により硬化させるようにしたことを特徴とする。
【0007】
前記合成樹脂ポリマー10〜50重量部、溶剤40〜89.5重量部、界面活性剤0.5〜10重量部であるのが、好ましい(請求項2)。
【0008】
前記合成樹脂ポリマーは、熱可塑性樹脂(請求項3)、特に、スチレン、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル及びポリプロピレンの1種若しくは2種以上であるのが好ましい(請求項4)。前記合成樹脂ポリマーは、ポリスチレンとABS樹脂若しくはブタジェン樹脂との混合物で(請求項5)であるのが、硬い硬化部に耐震性を付与させ、ひび割れを防止できることから特に好ましい。
【0009】
前記空気が流通し得る材料が、コンクリート、モルタル(請求項6)であるのが好ましく、前記溶剤は、ラッカーシンナー(請求項7)であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、界面活性剤の作用により、空気を追い出しながら、コーティング剤が凹部若しくはひび割れ等の隙間に浸入充填するので、凹部若しくはひび割れ等の隙間に、隙間無く充填することができるから、従来にない極めて強固なコーティング膜を形成することができる。更に、このようにして硬化した重合体は、モノマーを重合させたものよりも、硬くなることが確認されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に使用する合成樹脂ポリマーとしては、有機溶媒に可溶なものであれば良く、特に限定されない。このようなものとしては、熱可塑性樹脂、特にポリスチレン、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル及びポリプロピレンが好適に使用できる。これらは、単独若しくは2種以上で使用しても良い。
ポリスチレンは、非常に硬くなるので、用途にもよるが、ABS樹脂若しくはブタジェン樹脂を混合させて、耐震性を付与させ、ひび割れを防止するようにするのが好ましい。
【0012】
合成樹脂ポリマーと界面活性剤と溶剤との混合割合は、これらの種類及び施工目的にもよるが、合成樹脂ポリマー10〜50重量部、特に好ましくは20〜30重量部、溶剤49〜89重量部、特に好ましくは67〜79重量部、界面活性剤0.5〜10重量部、特に好ましくは1〜3重量部であるのが好ましい。これら割合は、施工目的に応じて、適した粘性を得るという見地から適当な割合を選択すると良い。
【0013】
溶剤としては、合成樹脂を溶解できるものは、いずれも使用することができる。例えば、ポリスチレンを使用する場合は、ベンジン、シンナー、ラッカーシンナー等が、ABS樹脂を使用する場合は、同様にラッカーシンナー等が、ポリアクリロニトリルを使用する場合は、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が、ポリプロピレンを使用する場合は、デカリン、テトラリン等が使用できる。
【0014】
界面活性剤としては、合成樹脂を溶解した溶剤に溶解するものであれば良く、特に限定されないが、液状の界面活性剤が溶解性が良いことから好ましい。本発明の実施例には、花王株式会社から「エマルゲンLS−106」の商品名で市販の界面活性剤を使用した。
【0015】
本発明の浸入性コーティング剤は、合成樹脂ポリマーを常温若しくは加温して揮発し得る溶剤に溶解させ、これに好ましくは液状の界面活性剤を溶解させることによって製造することができる。
【0016】
このようにして製造した本発明の浸入性コーティング剤は、雨漏り対策、耐酸性雨対策として極めて好適に使用することができる。
【0017】
本発明の浸入性コーティング剤は、構造物の表面にコーティングするだけでなく、構造物のひび割れ、隙間等に浸入充填する目的であれば、どのような用途にも使用できる。従って、本発明の浸入性コーティング剤は、通常のコーティング剤だけでなく、シーリング材、目地材等を含む意味である。
【0018】
本発明の浸入性コーティング剤を、表面が微細な粗面に形成されたコンクリートブロックにコーティングすると、空気が表面から出てくるのが観察された。また、微細なひび割れ内にも浸入して硬化するので雨漏りが効果的に防止されることが確認された。更に、このようにして形成されたコーティングは、従来のコーティングと比べて極めて強固であることが実験により確認されている。
【0019】
従って、本発明の本発明の浸入性コーティング剤は、雨漏り対策、耐酸性雨対策用として、この種従来のコーティング剤には全く見られない絶大な効果を奏する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂ポリマーと界面活性剤とを揮発し得る溶剤に溶解させてなる液状物であって、該液状物は、空気が流通し得る材料の微細な凹凸表面、細かなひび割れ等の凹凸部や隙間に空気を追い出しながら浸入充填して、溶剤の蒸発により硬化させるようにしたことを特徴とする浸入性コーティング剤。
【請求項2】
前記合成樹脂ポリマー10〜50重量部、溶剤40〜89.5重量部、界面活性剤0.5〜10重量部である請求項1記載の浸入性コーティング剤。
【請求項3】
前記合成樹脂ポリマーが、熱可塑性樹脂である請求項1又は2記載の浸入性コーティング剤。
【請求項4】
前記合成樹脂ポリマーは、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアクリロニトリル及びポリプロピレンの1種若しくは2種以上である請求項3記載の浸入性コーティング剤。
【請求項5】
前記合成樹脂ポリマーは、ポリスチレンとABS樹脂若しくはブタジェン樹脂との混合物である請求項4記載の浸入性コーティング剤。
【請求項6】
前記空気が流通し得る材料が、コンクリート、モルタルである請求項1〜5のいずれかに記載の浸入性コーティング剤。
【請求項7】
前記溶剤は、ラッカーシンナーである請求項1〜6のいずれかに記載の浸入性コーティング剤。



【公開番号】特開2009−203354(P2009−203354A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47236(P2008−47236)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(596060480)
【Fターム(参考)】