説明

浸水検知用光ファイバ素線および光ファイバ着色心線

【課題】浸水場所の特定の正確さを向上させ、かつ浸水の検知感度を向上することができる浸水検知用光ファイバを提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線14は、:コアとクラッドとを有するガラス光ファイバ11と、ガラス光ファイバ11上に被覆され、水を吸収すると膨張する吸水性材料を含む、第1の樹脂からなる一次被覆層12と、一次被覆層12上に被覆され、第2の樹脂からなる二次被覆層13であって、一次被覆層12より高い弾性率を有する二次被覆層13とを備え、光ファイバ素線14の吸水量は35重量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバ素線に関し、より詳細には、光ケーブル、通信ケーブルの内部に収納可能で浸水を検知可能な浸水検知用光ファイバ素線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浸水検知用光ファイバとして様々な光ファイバが提案されている。
特許文献1に開示されている浸水検知用光ファイバは、光ファイバの外側に2層の被覆層を備える構造である。上記2層の被覆層の内側被覆層は外側被覆層より低いヤング率を有するとともに、吸水性材料を含む樹脂組成物層である。特許文献1には、内側被覆層への吸水性材料の添加量は5〜50重量%が良いと開示されている。一方、吸水性材料の添加量が5%未満では吸水効果が小さいとされている。
【0003】
また、特許文献2では、光ファイバ上に紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂からなる一次被覆層を約80μm程度の膜厚で設け、さらに該一次被覆層の上にスチレンイソプレンスチレン共重合体エラストマーに吸水パウダーを分散混合して作製した吸水材を約300μmの膜厚で設けて、浸水検知用光ファイバを形成している。さらに、特許文献2では、上記吸水材の周囲に、マイクロベンディングを増幅させるために金属製の編組を設けることによって、吸水材を半径方向内方に押さえ込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−260204号公報
【特許文献2】特開昭62−262803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、光ファイバの外側に2層の被覆層を備え、内側被覆層は、外側被覆層より低いヤング率を有するとともに、吸水性材料を含む樹脂組成物層である。特許文献1では、吸水性材料の内側被覆層への添加量は5重量%以上50重量%以下が良いことが開示されており、吸水性材料の添加量が5重量%未満であると、損失検出が困難になる旨が記載されている。
【0006】
また、特許文献2では、吸水材の厚さを200μm未満のものでは薄すぎて吸水能力が低く、かつ体積膨張率が小さいため、吸水材の厚さを200μm〜900μmと厚くすることにより、吸水能力を大きくすることが記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、内側被覆層への吸水性材料の添加量が5重量%未満では吸水効果が小さいと記載されているが、該吸水性材料を5重量%以上添加すると浸水時に吸水性材料が膨潤しすぎることがある。このように吸水性材料が膨張し過ぎると、該膨張により発生した応力が光ファイバ全体に加わりガラスに局所的な応力が加わらず、浸水場所を正確に検知することが困難であった。また、上述のように局所的に応力が印加されなくなることにより、伝送損失の増加が小さくなるという問題点にも繋がっていた。
【0008】
この問題点は、特許文献2にも言えることである。すなわち、特許文献2でも特許文献1と同様に、吸水材の吸水能力を大きくすることを技術目的としており、そのために、吸水材の厚さを厚くしている。従って、たとえ局所的に浸水があった場合でも、吸水材は多くの水を吸収することになり、吸水材の膨張による応力は、浸水箇所から離れた箇所の光ファイバにも印加されることがある。よって、浸水により生じる応力を浸水箇所に局所的に印加させることが困難となる。
【0009】
このように、特許文献1および2では、内側被覆層や吸水材が多くの水を含むように構成されているので、浸水により生じた内側被覆層や吸水材の膨張の影響は、浸水箇所以外の領域にまで広範囲に及ぶことになる。従って、浸水箇所の特定の正確性の低下や感度低下を招いていた。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、浸水場所の特定の正確さを向上させ、かつ浸水の検知感度を向上することができる浸水検知用光ファイバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明は、コアとクラッドとを有する光ファイバと、前記光ファイバ上に被覆され、水を吸収すると膨張する吸水性材料を含む、第1の樹脂からなる一次被覆層と、前記一次被覆層上に被覆され、第2の樹脂からなる二次被覆層であって、前記一次被覆層より高い弾性率を有する二次被覆層とを備える光ファイバ素線であって、前記光ファイバ素線の吸水量は35重量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の浸水検知用光ファイバによれば、第1の樹脂(例えば、紫外線硬化型樹脂)からなる一次被覆層に吸水性材料を添加して、光ファイバ素線の吸水量が35重量%以下となるようにしているので、水が浸水した場合、一次被覆層内で吸水性材料が膨潤することで局所的に光ファイバ(例えば、ガラス光ファイバ)に応力を加えることができ、該光ファイバが曲がることで伝送損失を発生させ水の侵入を検知することができる。すなわち、浸水箇所において従来よりも局所的にマイクロベンディングを発生させることができるので、浸水場所を正確に特定することができる。また、上記局所的に光ファイバに応力を印加することができるので、上記伝送損失の低下を低減することができ、浸水検知の感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光ファイバ着色心線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る浸水検知用光ファイバに適用可能な光ファイバ素線14の断面図である。
図1において、光ファイバ素線14は、その中心にガラス光ファイバ11を備えている。ガラス光ファイバ11は、コアと、該コアの周囲に設けられた、該コアよりも屈折率が低いクラッドとを備えている。本実施形態では、該コアとクラッドとは石英である。
【0015】
なお、さらには、図1では、光ファイバ素線14が備える光ファイバとしてガラス光ファイバを例に挙げているが、プラスチック光ファイバ等、通常光ファイバに用いられる材料であればいずれを用いても良い。
【0016】
ガラス光ファイバ11の周囲には、クッション層として機能する、第1の樹脂からなる一次被覆層12が設けられている。該一次被覆層12の厚さは、20μm以上35μm以下にすることが好ましい。該一次被覆層12には、光ファイバ素線14の吸水量(水の吸収量)が35重量%以下となるように、吸水性材料が添加されている。本実施形態では、該吸水性材料として、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩化架橋物(例えば、日本触媒製のアクアリックCS7S(登録商標))を用いている。上記吸水性材料の最大粒径を20μm以下とすることは好ましい。なお、本明細書において、「吸水性材料」とは、水を吸収することにより膨張する性質を有する材料を指す。
【0017】
本実施形態においては、一次被覆層12として、紫外線硬化樹脂であるウレタンアクリレートを用いたが、これに限定されず、通常一次被覆層として用いることができる樹脂であればいずれを用いても良い。すなわち、本発明では、吸水性材料として、アクアリックCS7Sといったアクリル酸重合体部分ナトリウム塩化架橋物を用いる場合、一次被覆層12として通常用いられている樹脂(例えば、ウレタンアクリレート)を用いれば、以下に示すように光ファイバ素線14の吸水量(水の吸収量)が35重量%以下の場合に奏される効果を得ることができる。
【0018】
また、一次被覆層12の周囲には、一次被覆層12よりも弾性率が高い第2の樹脂である二次被覆層13が設けられている。本実施形態では、二次被覆層13として、紫外線硬化樹脂であるウレタンアクリレートを用いたが、これに限定されず、通常二次被覆層として用いることができる樹脂であればいずれを用いても良い。
【0019】
なお、通常、一次被覆層としてはヤング率が3MPa以下のものが、二次被覆層としてはヤング率が500MPa以上のものが用いられる。
【0020】
また、光ファイバは、シングルモード伝送用であっても良いし、マルチモード伝送用であっても良い。本実施形態では、ITU−T G.652準拠のシングルモード光ファイバ(SMF)を用いている。
【0021】
なお、本発明の一実施形態では、図2に示すように、二次被覆層13の周囲に三次被覆層としての着色層15を設けることにより、光ファイバ着色心線16を形成しても良い。
【0022】
本発明の一実施形態では、クッション層として機能する一次被覆層12に吸水性材料が添加されている浸水検知用光ファイバにおいて、マイクロベンディングをより局所的に発生させるように、一次被覆層12の膨張をコントロールすることが本質であり、浸水検知用光ファイバの構成部材の材料に特徴があるわけではない。従って、上述のように、ガラス光ファイバ(コア、クラッド)11、一次被覆層12、二次被覆層13等の、浸水検知用光ファイバの構成部材の材料は、通常の光ファイバに用いることができるものであればよく、特に限定されない。
【0023】
本実施形態では、このような構成の光ファイバ素線14を浸水検知用光ファイバとして用いており、浸水があると、浸水箇所に存在する一次被覆層12に添加された吸水性材料が膨張することにより、一次被覆層12が膨張する。このとき、一次被覆層12の外側に配置され、一次被覆層12よりも弾性率が高い二次被覆層13の存在により、一次被覆層12の内側に配置されたガラス光ファイバ11に応力が印加され、マイクロベンディングが生じる。このマイクロベンディングにより伝送損失が発生し、光ファイバ素線14の後方散乱光等を検出することにより、上記伝送損失が生じている箇所を特定することができる。
【0024】
さて、従来では、水を吸収させる層である内側被覆層や吸水材の吸収能力が高い場合、浸水があると内側被覆層や吸水材が大量の水を吸収することになり、該大量の水の吸収による膨張により、光ファイバの、浸水箇所から離れた領域まで応力が印加されることがある。従って、上記広範囲にまで及ぶ応力により、マイクロベンディングによる伝送損失が発生する領域も広範囲となり浸水場所の特定が困難になるばかりでなく、検知感度も鈍ってしまう。
【0025】
これに対して本実施形態では、光ファイバ素線14の吸水量が35重量%以下となるように一次被覆層12が形成されているので、浸水があった場所において、一次被覆層12は、大量に水を吸収することは無い。従って、浸水により膨張した一次被覆層12によりガラス光ファイバ11に及ぼす応力(側圧)は、広範囲ではなく、局所的にガラス光ファイバ11に印加されることになる。よって、マイクロベンディングによる伝送損失が発生する領域を、浸水があった場所に限定することができ、浸水場所の特定を正確に行うことができる。さらには、本実施形態では、上述のように、浸水に応じた一次被覆層12の膨張により生じた応力は、ガラス光ファイバ11に対して局所的に印加されるので、マイクロベンディングによる伝送損失の低下を低減することができ、感度低下を抑えることができる。
【0026】
さらに、本実施形態では、上述のように、一次被覆層12の厚さを20μm以上35μm以下にすることが、伝送損失の増加の観点から好ましい。すなわち、光ファイバ素線14の吸水量を35重量%以下と抑えた状態で、さらに、一次被覆層12の厚さを20μm〜35μmと薄くすることで、一次被覆層12が吸収する水の量を低減することができ、ガラス光ファイバ11における、膨張による応力が印加される領域をより狭めることができる。すなわち、ガラス光ファイバ11に対して、膨張による応力を、局所的に印加させることができる。なお、一次被覆層12の厚さを20μm以下とした場合、初期の伝送損失が悪化し、ファイバ性能が機能しなくなる、あるいは十分なファイバ性能が得られなくなる問題が生じる。
【0027】
さて、光ファイバの一次被覆層への要求特性として、ガラス光ファイバに対する外部からの応力に対する緩衝性等の多様な要求特性を満足することが不可欠なものとなっている。浸水検知用光ファイバにおいても敷設された状態(浸水していない状態)においては、本来の光ファイバの特性を満たす必要がある。一次被覆層への吸水性材料の添加量が5重量%以上と、添加量が多い場合、吸水性材料を添加しない光ファイバに比べて伝送損失が増加してしまう。
【0028】
これに対して、本発明の一実施形態では、光ファイバ素線14の吸水量を35重量%以下にするように吸水性材料を添加するので、一次被覆層12への吸水性材料の添加量を、例えば、0.1〜5重量%と小さくすることができる。このように、吸水性材料の添加量を0.1〜5重量%とすることにより、一次被覆層12の樹脂粘度は、吸水性材料添加前と変化がなく、一次被覆層12に吸水性材料を添加していない光ファイバと同様に線引きが可能である。また、製造された光ファイバの初期の伝送損失は一次被覆層12に吸水性材料を添加していない樹脂で製造したファイバと同等とすることができる。従って、伝送損失の悪化を抑えることができる。
【0029】
このように、本発明では、浸水検知用光ファイバにおいて、浸水検知のためのマイクロベンディングをより局地的に発生させるために、光ファイバ素線14の吸水量を35重量%以下にすることが重要である。従来では、浸水の吸収による膨張により生じる応力を光ファイバに対して局所的に印加させることと、光ファイバ素線の吸水量、すなわち重量%との関係についての議論は全くされていなかった。
【0030】
これに対して、本発明では、内側被覆層への吸水性材料の添加量を多くしたり、吸水材の厚さを厚くすると、内側被覆層や吸水材が大量に水を吸収することになり、該大量の吸水により、光ファイバに対しての局所的な応力の印加が困難であるという、従来には無い本発明に特有の課題を解決するために、光ファイバ素線の吸水量(重量%)に着目している。すなわち、上記従来には無い、より局所的にマイクロベンディングを発生させるために光ファイバ素線の吸水量(重量%)を調節するという技術思想に基づいて、後述する実施例のような実験を行い、例えば、吸水性材料としてアクリル酸重合体部分ナトリウム塩化架橋物を用いる場合に、光ファイバ素線14の吸水量を35重量%以下にすることが良いことを見出した。
【0031】
すなわち、本発明では、光ファイバ素線14の吸水量を35重量%以下とすることで、浸水検知用光ファイバにおいて、一次被覆層12の膨張によるガラス光ファイバ11への応力をより局地的に印加させることができ、マイクロベンディングの発生を浸水があった領域になるべく限定させることができるという格別な効果を奏することができる。
【0032】
(実施例)
以下、本発明の実施例を説明する。
石英ガラスからなるガラス光ファイバ11を線引きし、ガラス光ファイバ11上に紫外線硬化型ウレタンアクリレートに、吸水性材料としてのアクリル酸重合体部分ナトリウム塩化架橋物からなる吸水パウダーアクアリックCS7S(日本触媒)を0.1〜6重量%混合した、20μm〜35μmの膜厚で一次被覆層12を被覆し、その上に紫外線硬化型ウレタンアクリレートからなる二次被覆層13を被覆した数種類の光ファイバ素線14を作製した(表1〜3に示す、実施例1〜実施例7、9、11、12、比較例1、2、3)。また、その光ファイバ素線14上に着色層15を被覆し、外径255μmの着色心線16を得た(表1〜3に示す、実施例8、10、13、比較例2)。各樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いた。紫外線硬化型樹脂は、オリゴマー、希釈モノマー、光開始剤、連鎖移動剤、添加剤を含むが、その構成材料を変えることで数種類の光ファイバ素線14、着色心線15を作製した。
【0033】
まず、吸水性材料の最大粒径、吸水性材料添加量、一次被覆層厚、二次被覆層厚を変化させた光ファイバ素線(実施例1、2、比較例1、2)を作製し、通常品と同様に線引きが可能かどうかを調査した。結果を表1に示す。
【0034】
なお、表1の実施例1、2においては、ビーズミルにて1mmφジルコニアと一緒に回転させ、吸水性材料を20μm以下に粉砕したのち、紫外線硬化樹脂と混合をおこない、200メッシュ及び422メッシュフィルターによりろ過を行い、一次被覆層材を得た。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例1、2に示されるように、吸水性材料の最大粒径が20μm以下の場合は問題なく線引きできたが、比較例1、2に示されるように、吸水性材料の粒径が35μm以上のものが含まれている場合は、線引きダイス内で目詰まりを起こし光ファイバの断線につながった。
【0037】
このように、吸水性材料の最大粒径が35μm以上であると、ダイス詰まりによる断線が起こり、該最大粒径が20μm以下であるとダイス詰まりが起こらなかった。すなわち、吸水性材料と一次被覆層の材料となる紫外線硬化樹脂との混合物をフィルターによりろ過等して、一次被覆層に含まれる吸水性材料の最大粒径を20μm以下とすることにより、上記ダイス詰まりによる断線を防止、ないしは低減することができる。
【0038】
次に、実施例1、2と同様に吸水性材料の最大粒径を20μm以下の範囲で変化させ、吸水性材料添加量、一次被覆層厚、二次被覆層厚を変化させた光ファイバ素線(実施例5〜7、9、11、12、比較例3)および光ファイバ着色心線(実施例8、10、13、比較例4)を作製し、吸水量と吸水による伝送損失の増加量を調べた。結果を表2、表3に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
各測定条件は、以下に示す通りである。
【0042】
(吸水量(重量%)の測定方法)
製造された光ファイバ素線及び光ファイバ着色心線を用いて常温水浸漬による重量変化を測定した。サンプル長5mの光ファイバ素線または光ファイバ着色心線を水に24hr浸し、重量変化率をガラス光ファイバの重量を差し引いて樹脂のみの重量で算出した。
【0043】
(伝送損失の測定方法)
製造された光ファイバ素線及び光ファイバ着色心線を用いて、長さ約1kmの光ファイバ素線あるいは着色心線を常温水に浸漬し、該浸漬後の伝送損失を測定した。伝送損失の測定は、アンリツ(株)製 光パルス試験器 MW9076Bを用い、光後方散乱損失係数(OTDR)により、波長1.55μmの伝送ロスを長手方向に測定することにより行った。そして、常温水に24hr浸漬した後膨潤しすぎてファイバが裂けて破壊したものを(表2の×印:比較例3、4)と判定した。
【0044】
表2、3に示されるように、光ファイバ素線14の吸水量が35重量%以下では伝送損失が増加する結果が得られた。
【0045】
また、上記吸水量が35重量%以下とすることにより、吸水による一次被覆層12の膨張による、二次被覆層13の破裂を抑制することができる。すなわち、本発明の一実施形態では、一次被覆層および二次被覆層の二重被覆構造を有し、一次被覆層および二次被覆層共に樹脂であるが、吸水により膨張する吸水性材料を含む一次被覆層が膨張し過ぎると、樹脂からなる二次被覆層が破壊(破裂)することがある。しかしながら、本実施例によれば、吸水性材料としてアクリル酸重合体部分ナトリウム塩化架橋物を用いる場合に、光ファイバ素線の吸水量を35重量%以下となるように調節することによって、一次被覆層12の膨張による二次被覆層13の破壊を防止、ないしは低減することができる。
【0046】
以上の説明から明らかなように、本発明の光ファイバ素線及び、光ファイバ着色心線の吸水材料添加量と被覆厚とを比較した場合に、吸水量35重量%以下、及び一次被覆層の厚さが35μm以下の光ファイバ素線を用いることによって、常温水に24hr浸漬したときに伝送損失が増大することを確認できた。また一次被覆層の厚さを20μm以上35μm以下の範囲でより小さくする方がより伝送損失を敏感に増大させることができる。ただし、一次被覆層の厚さを20μm以下とした場合は、伝送損失が悪化し、通常のファイバ性能が機能しなくなる、あるいは十分なファイバ性能が得られなくなるという問題が生じる。
【0047】
また、光ファイバは水浸入時に吸水し伝送損失が増加して、浸水を検知するが、浸水が無くなった後は、24hrほどで伝送損失ゼロまでもどることで再利用が可能である。
【符号の説明】
【0048】
11 ガラス光ファイバ
12 一次被覆層
13 二次被覆層
14 光ファイバ素線
15 着色層
16光ファイバ着色心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとクラッドとを有する光ファイバと、
前記光ファイバ上に被覆され、水を吸収すると膨張する吸水性材料を含む、第1の樹脂からなる一次被覆層と、
前記一次被覆層上に被覆され、第2の樹脂からなる二次被覆層であって、前記一次被覆層より高い弾性率を有する二次被覆層とを備える光ファイバ素線であって、
前記光ファイバ素線の吸水量は35重量%以下であることを特徴とする光ファイバ素線。
【請求項2】
前記吸水性材料は、アクリル酸重合体部分ナトリウム塩化架橋物であることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線。
【請求項3】
前記一次被覆層の厚さは、20μm以上35μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ素線。
【請求項4】
前記吸水性材料の最大粒径は、20μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバ素線。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバ素線と、
前記光ファイバ素線の二次被覆層上に設けられた、三次被覆層として着色層と
を備えることを特徴とする光ファイバ着色心線。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−248097(P2011−248097A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121330(P2010−121330)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】