説明

浸漬ヒーター

【課題】金属溶湯を効率よく加熱することができる浸漬ヒーターを提供する。
【解決手段】容器に貯留される金属溶湯に浸漬して金属溶湯を加熱する浸漬ヒーター1であって、導電性セラミックス材料からなる有底筒状の外筒管2と、外筒管2の内部に配置され、外筒管2に通電可能に接続する導電性材料からなる内部導電体3とを備える浸漬ヒーター1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳造用のアルミニウム溶湯や亜鉛メッキ用の亜鉛溶湯等の金属溶湯を保持炉やメッキ槽等の容器に貯留する場合、金属溶湯の温度が低下することを防止するために、金属溶湯を加熱・保温する浸漬ヒーターが用いられている。このような浸漬ヒーターとして、例えば、特許文献1に開示されている浸漬ヒーターが知られている。この浸漬ヒーターは、図8に示すように、通電加熱により加熱される電熱線100を絶縁抵抗の高い絶縁セラミックス101で被覆して構成されている。
【特許文献1】特開平11−176564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されているような浸漬ヒーターを用いて金属溶湯を加熱・保温する場合、電熱線が絶縁セラミックスで被覆されているため、電熱線において発生した熱は、絶縁セラミックスを介して金属溶湯に伝わることになり、金属溶湯を効率よく加熱・保温することが難しいという問題があった。
【0004】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、金属溶湯を効率よく加熱することができる浸漬ヒーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、容器に貯留される金属溶湯に浸漬して金属溶湯を加熱する浸漬ヒーターであって、導電性セラミックス材料からなる有底筒状の外筒管と、前記外筒管の内部に配置され、前記外筒管に通電可能に接続する導電性材料からなる内部導電体とを備える浸漬ヒーターにより達成される。
【0006】
また、この浸漬ヒーターにおいて、前記外筒管は、金属溶湯に浸漬される浸漬部と、前記浸漬部よりも電気比抵抗値が小さい非浸漬部とを備え、前記浸漬部及び前記非浸漬部は、前記外筒管の軸方向に沿って配置されていることが好ましい。
【0007】
また、前記外筒管は、金属溶湯に浸漬される浸漬部と、前記浸漬部よりも肉厚が厚い非浸漬部とを備え、前記浸漬部及び前記非浸漬部は、前記外筒管の軸方向に沿って配置されていることが好ましい。
【0008】
また、前記外筒管と前記内部導電体との間には、電気絶縁性を有する断熱材料が充填されていることが好ましい。
【0009】
また、前記内部導電体は、前記外筒管に着脱自在に取り付けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属溶湯を効率よく加熱することができる浸漬ヒーターを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る浸漬ヒーターについて添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る浸漬ヒーターの概略構成断面図であり、図2は図1における矢示A方向から見た浸漬ヒーターの概略構成図である。この浸漬ヒーター1は、容器に貯留されるアルミニウム溶湯や亜鉛溶湯等の金属溶湯に浸漬させて該金属溶湯を加熱・保温するための加熱装置であり、図1に示すように、有底筒状の外筒管2と、外筒管2の内部に配置される導電性材料からなる内部導電体3とを備えている。
【0012】
外筒管2は、金属溶湯に直接接触する部材であり、耐熱性があり、通電すると発熱する導電性セラミックス材料により形成されている。この外筒管2は、筒部21と、当該筒部21の一端を閉塞する底部22とを備えている。このような構成により、外筒管2が、一端2aに底部22を有し、他端2bに開口部23を有するように構成されている。外筒管2を構成する導電性セラミックス材料としては、カーボンなどの低電気抵抗素材及びシリコンカーバイドなどの高電気抵抗素材を主体としたセラミックス材料を例示することができる。このような外筒管2は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、カーボンなどの低電気抵抗素材とシリコンカーバイドなどの高電気抵抗素材とを、所望の電気比抵抗値になるように割合を調整した後、液状のピッチタールやレジン等で混練し、坏土を作る。この坏土を所定形状の金型内に充填し、プレス成形を行った後、これを焼成して必要な強度を付与する。そして、必要に応じて旋盤などで加工し、所定の形状とすることにより外筒管2が得られる。外筒管2の電気比抵抗値は、10×10−3Ω・cm〜500×10−3Ω・cmであることが好ましく、50×10−3Ω・cm〜200×10−3Ω・cmであることがより好ましい。
【0013】
内部導電体3は、図1及び図2に示すように、断面視円形の棒状体となるように形成されている。この内部導電体3は、外筒管2の内周面2cと非接触な状態で外筒管2の内部に収容され、外筒管2の底部22に一端3aが通電可能に接続するようにして取り付けられている。本実施形態においては、内部導電体3も外筒管2と同様に、導電性セラミックス材料により形成されている。電気比抵抗値は、10×10−3Ω・cm〜500×10−3Ω・cmであることが好ましく、50×10−3Ω・cm〜200×10−3Ω・cmであることがより好ましい。
【0014】
内部導電体3を外筒管2の底部22に接続するには、例えば、底部中央に形成した取付凹部24に電導性モルタル等の導電性の接着材4を介して内部導電体3の一端3aを接着して固定することにより行う。
【0015】
外筒管2の開口部23側には外筒管用電極26が取り付けられており、内部導電体3の他端側3bには内部導電体用電極36が取り付けられている。外筒管用電極26及び内部導電体用電極36は、サイリスタ整流器等の電源装置Eに接続されており、外筒管用電極26と内部導電体用電極36との間に電圧を印加することができる構成になっている。電圧の印加により、内部導電体3及び外筒管2が通電加熱することになる。
【0016】
外筒管2の開口部23側と内部導電体3の他端側3bとは、電気絶縁性を有する補強部材5により接続されている。これにより、内部導電体3や外筒管2が折損することを防止することができる。
【0017】
次に、このように構成された浸漬ヒーター1を用いて保持炉等の容器に貯留された金属溶湯を加熱・保温するには、例えば、図3に示すように、容器6に貯留された金属溶湯Zの中に外筒管2の一部が浸漬するようにして容器6の蓋体7に固定する。次に、電源装置Eを起動し、浸漬ヒーター1の外筒管用電極26と内部導電体用電極36との間に電圧を印加することにより、内部導電体3及び外筒管2に電流を流す。これにより内部導電体3及び外筒管2が通電加熱する。内部導電体3及び外筒管2において発生した熱は、金属溶湯Zに放熱され、該金属溶湯Zを加熱又は保温する。
【0018】
このように、本実施形態に係る浸漬ヒーター1は、容器6に貯留された金属溶湯Zに直接接触する外筒管2が、通電加熱により発熱するように構成されているため、効率よく金属溶湯Zを加熱・保温することができる。
【0019】
また、外筒管2が輻射効率の優れた導電性セラミックス材料により形成されているので、外筒管2において発生した熱が、金属溶湯Zに伝わりやすく、該溶湯Zを効率よく加熱・保温することができる。
【0020】
また、本実施形態に係る浸漬ヒーター1においては、内部導電体3及び外筒管2の双方において発熱するように構成しているため、内部導電体3及び外筒管2の電気抵抗値をそれぞれ適宜変更することにより、内部導電体3及び外筒管2のそれぞれにおいて発熱する熱量のバランスをコントロールすることができる。これにより、保温温度が異なる様々な種類の金属溶湯に対して、エネルギーロスが少なく効率的に各金属溶湯を加熱・保温するのに最も適した浸漬ヒーター1を容易に得ることができる。内部導電体3及び外筒管2の電気抵抗値を変更するには、例えば、内部導電体3及び外筒管2を形成するのに用いられるカーボン等の低電気抵抗素材とシリコンカーバイド等の高電気抵抗素材との配合割合をそれぞれ調整することにより可能である。また、内部導電体3の軸線に対して垂直方向の断面積と、外筒管2の軸線に対して垂直方向の筒部21の断面積との比を変更することにより、或いは、内部導電体3及び外筒管2の軸方向長さをそれぞれ変更することによっても可能である。
【0021】
以上、本発明に係る浸漬ヒーター1の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な構成は上記実施形態に限定されない。例えば、図4に示すように、外筒管2の筒部21が、金属溶湯に浸漬される浸漬部21aと、浸漬部21aよりも電気比抵抗値が小さい非浸漬部21bとを備え、これら浸漬部21aおよび非浸漬部21bが外筒管2の軸方向に沿って配置するように構成してもよい。このような外筒管2は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、カーボンなどの低電気抵抗素材とシリコンカーバイドなどの高電気抵抗素材とを、所望の電気比抵抗値になるように割合を調整した後、液状のピッチタールやレジン等で混練し、坏土を作る。このようにして、電気比抵抗値が異なる坏土を金型内に積層状に充填し、プレス成形を行った後、これを焼成して必要な強度を付与する。そして、必要に応じて旋盤などで加工し、所定の形状とすることにより外筒管2が得られる。このような構成を有する浸漬ヒーター1を容器中の金属溶湯に浸漬し、外筒管2を通電加熱した場合、浸漬部21aが高温になる一方、非浸漬部21bの温度はこれよりも低くなる。したがって、金属溶湯が主に接触する外筒管2の浸漬部21aにおいて、金属溶湯を十分加熱することができる一方、金属溶湯との接触がほとんどない非浸漬部21bにおいては発熱を抑制することができる。この結果、金属溶湯を効率よく加熱・保温することが可能になり、高い省エネルギー効果を得ることができる。
【0022】
また、非浸漬部21bの電気比抵抗値を浸漬部21aよりも小さく設定することにより、非浸漬部21bに比べて浸漬部21aがより高温になるようにしているが、浸漬部21a及び非浸漬部21bの電気比抵抗値を異ならせる代わりに、図5に示すように、非浸漬部21bの肉厚が、浸漬部21aの肉厚よりも厚くなるように外筒管2を形成してもよい。このような構成であっても、浸漬部21aの電気抵抗値を非浸漬部21bの電気抵抗値よりも大きくすることができ、金属溶湯に主に接触する浸漬部21aを高温状態にすると共に、金属溶湯との接触がほとんどない非浸漬部21bからの発熱を抑制することが可能になる。この結果、金属溶湯を効率よく加熱・保温することができる。なお、浸漬部21aと非浸漬部21bとの接合部21cは、図5に示すように肉厚が連続的に変化する形状であってもよく、或いは、段差形状であってもよい。
【0023】
また、本実施形態において、図6に示すように、外筒管2と内部導電体3との間に、電気絶縁性を有する断熱材料8を充填してもよい。電気絶縁性を有する断熱材料8としては、例えば、アルミナ、シリカ、ボーキサイト、ムライト、ジルコニア、SiC等を挙げることができる。このような構成により、内部導電体3と外筒管2の内周面2cとの間で短絡が生じることや、内部導電体3の表面及び外筒管2の内周面2cが酸化により損傷することを確実に防止しつつ、外筒管2で発生した熱が内部導電体3側に放熱されることを抑制することができる。この結果、浸漬ヒーター1の耐久性を高めつつ、金属溶湯を効率よく加熱・保温することが可能になる。
【0024】
また、本実施形態においては、内部導電体3を導電性セラミックス材料により形成しているが、内部導電体3が発熱する熱により内部導電体3自らが溶損しない程度の高融点の金属材料により内部導電体3を形成することもできる。また、導電性の優れた金属材料により内部導電体3を形成し、外筒管2において主に発熱するような構成を採用することもできる。
【0025】
また、本実施形態においては、導電性モルタル等の導電性を有する接着材4により、内部導電体3の一端3aと外筒管2の底部22とを接続するように構成しているが、例えば、内部導電体3と外筒管2とを金型により一体成形してもよい。
【0026】
また、例えば、図7に示すように、内部導電体3の一端側3aに雄ネジ部を形成すると共に、外筒管2の底部22に形成される取付凹部24の内周面に雌ネジ部を形成し、内部導電体3を外筒管2の取付凹部24に螺合により着脱自在に取り付けるように構成してもよい。このような構成を採用することにより、種々の電気抵抗値を有する内部導電体3と外筒管2とを組み合わせることが容易になり、内部導電体3及び外筒管2のそれぞれにおいて発熱する熱量のバランスを容易にコントロールすることができる。この結果、金属溶湯を所望の温度に効率よく加熱・保温するのに最も適した浸漬ヒーター1を容易に得ることができる。
【0027】
また、本実施形態においては、内部導電体3の一端3aを外筒管2の底部22に通電可能に接続するように構成しているが、例えば、内部導電体3の一端3aが外筒管2の内周面2cに通電可能に接続するように構成することもできる。
【0028】
また、本実施形態においては、カーボンなどの低電気抵抗素材及びシリコンカーバイドなどの高電気抵抗素材により構成した導電性セラミックス材料により外筒管2を形成するようにしているが、接触する溶湯により外筒管2が酸化することを防止するために、例えば、アルミナ、シリカ、ムライトやガラス成分等を導電性セラミックス材料に更に添加して外筒管2を形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る浸漬ヒーターを示す概略構成断面図である。
【図2】図1における矢示A方向から見た浸漬ヒーターの概略構成図である。
【図3】図1に示す浸漬ヒーターを用いて金属溶湯を加熱・保温する方法を説明するための説明図である。
【図4】図1に示す浸漬ヒーターの変形例を示す概略構成断面図である。
【図5】図1に示す浸漬ヒーターの変形例を示す概略構成断面図である。
【図6】図1に示す浸漬ヒーターの変形例を示す概略構成断面図である。
【図7】図1に示す浸漬ヒーターの変形例を示す概略構成断面図である。
【図8】従来の浸漬ヒーターを示す概略構成断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 浸漬ヒーター
2 外筒管
21 筒部
21a 浸漬部
21b 非浸漬部
22 底部
3 内部導電体
26 外筒管用電極
36 内部導電体用電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に貯留される金属溶湯に浸漬して金属溶湯を加熱する浸漬ヒーターであって、
導電性セラミックス材料からなる有底筒状の外筒管と、
前記外筒管の内部に配置され、前記外筒管に通電可能に接続する導電性材料からなる内部導電体とを備える浸漬ヒーター。
【請求項2】
前記外筒管は、金属溶湯に浸漬される浸漬部と、前記浸漬部よりも電気比抵抗値が小さい非浸漬部とを備え、
前記浸漬部及び前記非浸漬部は、前記外筒管の軸方向に沿って配置されている請求項1に記載の浸漬ヒーター。
【請求項3】
前記外筒管は、金属溶湯に浸漬される浸漬部と、前記浸漬部よりも肉厚が厚い非浸漬部とを備え、
前記浸漬部及び前記非浸漬部は、前記外筒管の軸方向に沿って配置されている請求項1に記載の浸漬ヒーター。
【請求項4】
前記外筒管と前記内部導電体との間には、電気絶縁性を有する断熱材料が充填されている請求項1から3のいずれかに記載の浸漬ヒーター。
【請求項5】
前記内部導電体は、前記外筒管に着脱自在に取り付けられる請求項1から4のいずれかに記載の浸漬ヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−269808(P2008−269808A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107228(P2007−107228)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(592134871)日本坩堝株式会社 (31)
【Fターム(参考)】