説明

浸漬型膜分離装置とそれを用いた濾過運転方法

【課題】濾過性能の良い浸漬型膜分離装置の提供。
【解決手段】槽2内が、液の流通が可能なように仕切壁13で凝集槽3と膜分離槽4に仕切られており、凝集槽3に凝集剤添加装置11、攪拌機12が備えられており、膜分離槽4内に膜分離モジュール15が浸漬されている。槽2から引き抜かれた汚泥は、汚泥貯留槽6内の濾過手段で脱水され、水は原水槽1に返送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各分野の水処理に用いることができる浸漬型膜分離装置とそれを用いた濾過運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種分野の水処理において、凝集処理と膜分離処理を併用する方法が採用されている。凝集処理と膜分離処理を1つの槽内で行う方法は、装置全体をコンパクトにできる点で好ましいが、凝集処理で生じたフロックにより膜が閉塞され、濾過性能が低下するおそれもある。
【特許文献1】特開平4−256500号公報
【特許文献2】特許2852034号公報
【特許文献3】特開平6−71257号公報
【特許文献4】特開2005−349337号公報
【特許文献5】特開2002−177983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、凝集処理と膜分離処理を1つの槽内で行う方法であり、装置全体として高い濾過性能を維持できる浸漬型膜分離装置と、それを用いた濾過運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明は、課題の解決手段として、
少なくとも原水槽、凝集及び膜分離槽、前記凝集及び膜分離槽から引き抜かれた汚泥含有水を貯留する汚泥貯留槽とを有する浸漬型膜分離装置であり、
前記凝集及び膜分離槽が、凝集剤添加装置と撹拌機を備え、槽内に膜分離モジュールが浸漬されたものであり、
前記汚泥貯留槽が、汚泥含有水を脱水するための濾過手段を有しており、
前記汚泥貯留槽と前記原水槽が、前記汚泥貯留槽で脱水された後の水を返送するための返送ラインで接続されている、浸漬型膜分離装置を提供する。
【0005】
本願発明は、他の課題の解決手段として、
請求項1〜3のいずれか1項記載の浸漬型膜分離装置を用いた濾過運転方法であり、
原水槽内の原水を凝集及び膜分離槽に送り、凝集及び膜分離処理する工程、
前工程により膜分離した透過水を透過水槽に送り、凝集及び膜分離槽内に溜まった汚泥含有水を引き抜いて汚泥貯留槽に送る工程、
前記汚泥貯留槽にて、槽内に設置された濾過手段により前記汚泥含有水を脱水する工程、
前工程で脱水した水を原水槽に返送する工程、
を有している、濾過運転方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の浸漬型膜分離装置によれば、装置全体として高い濾過性能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<浸漬型膜分離装置>
図1により、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の浸漬型膜分離装置の概念図である。図1中の丸で囲まれたPは、ポンプを示している。
【0008】
原水槽1は、原水ライン21により供給された原水で満たされており、内部にポンプが浸漬されている。原水槽1は、原水供給ライン22で凝集及び膜分離槽2に接続されている。
【0009】
凝集及び膜分離槽2は、内部が仕切壁13により、凝集槽3と膜分離槽4とに分けられている。凝集槽3と膜分離槽4の容積は、同程度であるか、膜分離槽4の方が大きいことが好ましい。凝集及び膜分離槽2の底面と凝集槽3側の側面の境界は、図示するように傾斜面2aとなっている。
【0010】
仕切壁13は、凝集及び膜分離槽2の対向する壁面に両側面が固定されており、下面13aは凝集及び膜分離槽2の底面から離れており、上面13bは満水状態のときに水面よりも下に位置するように設定されている。このため、凝集槽3と膜分離槽4は、仕切壁13の上面(上端)13b側と下面(下端)13a側にて液の流通が可能なように連通されている。
【0011】
凝集槽3は、所定量の凝集剤を添加するための凝集剤添加装置11、槽内を攪拌するための攪拌機12が備えられており、必要に応じて図示していないpH調整装置も設けることができる。
【0012】
膜分離槽4には、膜分離モジュール15が吊り下げられた状態で浸漬されている。膜分離モジュール15としては、例えば、公知の中空糸膜モジュール(外圧型又は内圧型であるが、好ましくは外圧型)を用いることができる。膜分離モジュール15の直下の槽底面には、必要に応じて、膜面を外側から洗浄するための散気装置を設置することができる。凝集及び膜分離槽2は、ポンプを備えた透過水ライン23で透過水槽5に接続されている。
【0013】
透過水槽5と凝集及び膜分離槽2内の膜分離モジュール15の透過水出口は、ポンプを備えた逆圧洗浄ライン24で接続されている。逆圧洗浄ライン24には、薬液添加装置7が設置されている。
【0014】
凝集及び膜分離槽2は、傾斜面2aにおいて汚泥引抜ライン25で汚泥貯留槽6に接続されている。汚泥引抜ライン25により、凝集及び膜分離槽2の底面付近に溜まった汚泥を水とともに汚泥含有水として引き抜くことができる。汚泥貯留槽6は、返送ライン26により、原水槽1に接続されている。
【0015】
汚泥貯留槽6内には、汚泥含有水を脱水して、汚泥と水を分離するための図示していない濾過手段が設置されている。この濾過手段としては、例えば、JIS規格で10〜50メッシュ程度の不織布製の濾布が、ステンレス製等の箱枠や籠等の支持体に固定されたものを用いることができる。
【0016】
不織布の材質は特に制限されるものはなく、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド等の公知のものを用いることができる。
【0017】
<浸漬型膜分離装置を用いた濾過運転方法>
次に、図1により、本発明の浸漬型膜分離装置を用いた濾過運転方法について説明する。
【0018】
原水が満たされた原水槽1内のポンプを作動させ、原水供給ライン22から凝集槽3に原水を供給し、凝集槽3と膜分離槽4内に原水を満たす。
【0019】
凝集槽3では、攪拌機12により槽内を攪拌しながら、凝集剤添加装置11により、所要量の凝集剤を添加する。このとき、必要に応じてpH調整装置により、pH調整剤を添加してpHを9〜10に調整することができる。
【0020】
凝集剤は、例えば、吸着剤、凝結剤、高分子凝集剤等を用いることができる。吸着剤としては、珪藻土、モンモリロナイト、活性白土等の油吸着剤、凝結剤としては、硫酸アルミニウム等の無機化合物、高分子凝集剤としては、アニオン系とカチオン系の高分子凝集剤を挙げることができる。
【0021】
膜分離槽4では、膜分離モジュール15で濾過する。膜分離モジュール15による濾過時には、膜面を外側から洗浄するため、散気装置で散気することができる。また、適当間隔をおいて、逆圧洗浄ライン24により、薬液を含む洗浄液で逆圧洗浄することができる。
【0022】
膜分離槽4内の濾過時において、凝集槽3内が攪拌機12で攪拌されているため、凝集槽3と膜分離槽4内の被処理水は、仕切壁13の下面13aの下を通り、上面13bを越えて互いに流通する。このため、膜分離槽4内の被処理水は、フロックが偏在することなく均一状態になり、分離膜モジュール15の膜面が閉塞されることもなく、分離膜モジュール15による濾過性能が安定する。
【0023】
膜分離槽4で濾過した透過水は、透過水ライン23により、透過水タンク5に送られ、貯水される。透過水タンク5内の透過水は、適宜河川等に放流するほか、膜分離モジュール15の逆圧洗浄水としても用いられる。
【0024】
凝集及び膜分離槽2の底面付近に溜まったフロック(汚泥)は、汚泥引抜ライン25から引き抜き、汚泥貯留槽6に送る。汚泥貯留槽6では、汚泥を脱水して、水は原水槽1に返送し、汚泥は廃棄する。
【実施例】
【0025】
<図1で示す浸漬型膜分離装置>
凝集及び膜分離槽2(図1に示す傾斜面2aを有している)は、高さ1.35m、幅0.63m、奥行き0.86m(容積0.81m)で、幅方向1/3〜1/2の位置に、高さ1mの仕切壁が、上側に0.35m、下側に0.25mの隙間を空けて、槽の壁に固定されたものを用いた。
【0026】
汚泥貯留槽6は、高さ0.65m、幅0.35m、奥行き0.36m(容積0.08m)のものを用いた。濾過手段は、ステンレス網で作られた籠の内部に、厚さ10〜30μmのポリエステル製の濾布(10メッシュ;JIS規格)が装着されたものを用いた。
【0027】
<図1で示す浸漬型膜分離装置による濾過運転>
凝集及び膜分離槽2では、以下に記載する凝集処理と膜分離処理を並行させた。
【0028】
原水槽1から1000kg/hの速度で供給されたBOD52ppm,nヘキサン抽出物量7.6mg/L、濁度52、pH7.3の原水(化粧品工場の排水)に対して、凝集剤(商品名メムフロックU002;ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製)を濃度が80ppmとなるように添加し、攪拌凝集処理を行った。
【0029】
そして、膜分離モジュール15(外径2mm、内径0.9mmの酢酸セルロース中空糸膜を充填したケーシングフリーの浸漬型中空糸膜エレメント〔有効膜面積3m〕を90mm間隔で6ユニット組み合わせたもの)により、吸引濾過した。濾過運転は、散気管(パールコン;ダイセン・メンブレン・システムズ社製,PMD-T06)により散気しながら行った。濾過運転30分ごとに45秒間の逆圧洗浄をした。
【0030】
濾過運転0.5時間に1回の割合で、凝集及び膜分離槽2から30〜50Lの量の汚泥を汚泥引抜ライン25により取り出し、汚泥貯留槽6内に設置した濾布上に供給して、汚泥を脱水した。その結果、50〜80L/hの水を原水槽1に戻した。原水槽のBODは51ppmとなった。
【0031】
濾過運転1時間経過時の透過水は、BOD38ppm、nヘキサン抽出物量0.6mg/L以下、濁度0.2であり、そのまま河川放流ができるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の浸漬型膜分離装置の概念図。
【符号の説明】
【0033】
1 原水槽
2 凝集及び膜分離槽
3 凝集槽
4 膜分離槽
5 透過水槽
6 汚泥貯留槽
11 凝集剤添加装置
12 攪拌機
13 仕切壁
15 膜分離モジュール




【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも原水槽、凝集及び膜分離槽、前記凝集及び膜分離槽から引き抜かれた汚泥含有水を貯留する汚泥貯留槽とを有する浸漬型膜分離装置であり、
前記凝集及び膜分離槽が、凝集剤添加装置と撹拌機を備え、槽内に膜分離モジュールが浸漬されたものであり、
前記汚泥貯留槽が、汚泥含有水を脱水するための濾過手段を有しており、
前記汚泥貯留槽と前記原水槽が、前記汚泥貯留槽で脱水された後の水を返送するための返送ラインで接続されている、浸漬型膜分離装置。
【請求項2】
前記凝集及び膜分離槽が、内部が仕切壁により凝集槽と膜分離槽とに分けられ、前記凝集槽と前記膜分離槽が前記仕切壁の上端側と下端側にて液の流通が可能なように連通されており、前記凝集槽に凝集剤添加装置と攪拌機が備えられており、前記膜分離槽内に膜分離モジュールが備えられている、請求項1記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項3】
前記汚泥貯留槽に設置された濾過手段が、支持体に10〜50メッシュ(JIS規格)の不織布からなる濾布が固定されたものである、請求項1又は2記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の浸漬型膜分離装置を用いた濾過運転方法であり、
原水槽内の原水を凝集及び膜分離槽に送り、凝集及び膜分離処理する工程、
前工程により膜分離した透過水を透過水槽に送り、凝集及び膜分離槽内に溜まった汚泥含有水を引き抜いて汚泥貯留槽に送る工程、
前記汚泥貯留槽にて、槽内に設置された濾過手段により前記汚泥含有水を脱水する工程、
前工程で脱水した水を原水槽に返送する工程、
を有している、濾過運転方法。
【請求項5】
前記凝集及び膜分離処理工程が、
内部が仕切壁により凝集槽と膜分離槽とに分けられ、前記凝集槽と前記膜分離槽が前記仕切壁の上端側と下端側にて液の流通が可能なように連通された槽を使用し、
原水を凝集槽内に送り、凝集槽と膜分離槽内を被処理水で満たした後、凝集槽内に凝集剤を添加し、攪拌機で攪拌しながら凝集処理し、膜分離槽内に浸漬した膜分離モジュールで濾過処理するとき、凝集槽内の被処理水と膜分離槽内の被処理水を互いに流通させながら凝集及び膜分離処理する工程である、請求項4記載の濾過運転方法。







【図1】
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【公開番号】特開2009−28614(P2009−28614A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194075(P2007−194075)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】