説明

浸漬型膜分離装置及びその運転方法

【課題】 濾過性能の良い浸漬型膜分離装置の提供。
【解決手段】 凝集槽2と膜分離槽3とを有しており、凝集槽2に、凝集剤添加装置11、攪拌機12が備えられており、膜分離槽3が、内部が仕切壁14により第1槽3aと第2槽3bとに分けられ、第1槽3aと第2槽3bが仕切壁14の上端側と下端側にて液の流通が可能なように連通されており、第1槽3aに攪拌機16が備えられ、第2槽3b内に膜分離モジュール15と散気装置17が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種分野の水処理に使用できる、浸漬型膜分離装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種分野の水処理において、凝集処理と膜分離処理を併用する方法が採用されている。特許文献1には、凝集処理と膜分離処理を別々の槽内で行う装置が記載されており、特許文献2には、凝集処理と膜分離処理を一つの槽内で行う装置が記載されている。
【特許文献1】特開平9−141065号公報
【特許文献2】特開2006−167604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、凝集処理と膜分離処理を別々の槽内で行う装置であり、膜分離処理の分離能力が高められた浸漬型膜分離装置及びその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、課題の解決手段として、
少なくとも凝集槽と膜分離槽とを有する浸漬型膜分離装置であり、
前記凝集槽に、凝集剤添加装置、攪拌機が備えられており、
前記膜分離槽が、内部が仕切壁により第1槽と第2槽とに分けられ、前記第1槽と前記第2槽が前記仕切壁の上端側と下端側にて液の流通が可能なように連通されており、
前記第1槽に攪拌機が備えられており、前記第2槽内に膜分離モジュールと散気装置が備えられている、浸漬型膜分離装置を提供する。
【0005】
本発明は、課題の他の解決手段として、
請求項1記載の浸漬型膜分離装置の運転方法であり、
凝集槽内にて凝集剤を添加し、攪拌機で攪拌することにより凝集処理する工程と、
凝集処理後の凝集処理水を膜分離槽の第1槽内に被処理水として送り、第1槽と第2槽内を被処理水で満たした後、第1槽内を攪拌機で攪拌しながら、第2槽内の膜分離モジュールで濾過処理する工程であり、このとき、第1槽内の被処理水と第2槽内の被処理水を互いに流通させながら濾過処理する、浸漬型膜分離装置の運転方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の浸漬型膜分離装置によれば、膜分離槽における膜分離モジュールによる濾過能力を高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<浸漬型膜分離装置>
図1により、本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の浸漬型膜分離装置の概念図である。図1中の丸で囲まれたPは、ポンプを示している。
【0008】
原水槽1は、原水ライン21により供給された原水で満たされており、内部にポンプが浸漬されている。原水槽1は、原水供給ライン22で凝集槽2に接続されている。
【0009】
凝集槽2は、所定量の凝集剤を添加するための凝集剤添加装置11、槽内を攪拌するための攪拌機12、槽内の被処理水のpHを調整するためのpH調整装置13を備えている。凝集槽2の内部にはポンプが浸漬されている。凝集槽2は、凝集処理水ライン23で膜分離槽3に接続されている。
【0010】
膜分離槽3内は、内部が仕切壁14により第1槽3aと第2槽3bとに分けられている。第1槽3aと第2槽3bの容積は、同程度であるか、第2槽3bの方が大きいことが好ましい。
【0011】
仕切壁14は、膜分離槽3の対向する壁面に両側面が固定されており、下面14aは膜分離槽3の底面から離れており、上面14bは満水状態のときに水面よりも下に位置するように設定されている。このため、第1槽3aと第2槽3bは、仕切壁14の上面(上端)14b側と下面(下端)14a側にて液の流通が可能なように連通されている。
【0012】
第1槽3aには、槽内を攪拌するための攪拌機16が備えられており、第2槽3b内には、膜分離モジュール15が吊り下げられた状態で浸漬されている。膜分離モジュール15としては、例えば、公知の中空糸膜モジュール(外圧型又は内圧型であるが、好ましくは外圧型)を用いることができる。
【0013】
膜分離モジュール15の直下の第2槽3bの底面には、散気装置17が設置されている。膜分離槽3の底面と一方の側面の境界は、図示するように傾斜面31となっている。
【0014】
膜分離槽3は、ポンプを備えた透過水ライン24で透過水槽4に接続され、散気装置17は、散気ライン26で空気供給源に接続されている。
【0015】
透過水槽4と膜分離槽3内の膜分離モジュール15の透過水出口は、ポンプを備えた逆圧洗浄ライン25で接続されている。
【0016】
膜分離槽3は、傾斜面31において汚泥引抜ライン27で汚泥貯留槽5に接続されている。汚泥引抜ライン27により、膜分離槽3の底面付近に溜まった汚泥を水とともに汚泥含有水として引き抜くことができる。傾斜面31を有していることにより、汚泥が膜分離槽3の底面に溜まりやすくなり、抜き取りが容易になる。
【0017】
汚泥貯留槽5内には、図示していない濾過手段(例えば、JIS規格で10メッシュ程度のポリエステルからなる不織布製の濾布が、ステンレス製の箱枠に固定されたもの)が設置されており、汚泥引抜ライン27から送られた汚泥含有水を汚泥と水に分離する(汚泥を脱水する)。汚泥貯留槽5は、返送ライン28により、原水槽1に接続されている。
【0018】
<浸漬型膜分離装置の運転方法>
次に、図1により、本発明の浸漬型膜分離装置の運転方法について説明する。
【0019】
原水が満たされた原水槽1内のポンプを作動させ、原水供給ライン22から凝集槽2に原水を供給する。
【0020】
凝集槽2では、攪拌機12により槽内を攪拌しながら、凝集剤添加装置11により、所要量の凝集剤を添加する。このとき、必要に応じてpH調整装置13により、pH調整剤を添加してpHを9〜10に調整する。凝集剤は公知のものを用いることができ、例えば、特許文献2に記載の無機凝集剤と有機凝集剤の混合物を用いることができる。凝集槽2で凝集処理した処理水は、ポンプを作動させ、ライン23から膜分離槽3に送る。
【0021】
次に、膜分離槽3では、第1槽3aと第2槽3bが凝集フロックを含む凝集処理水で満たされた状態で、第1槽3aでは攪拌機16で攪拌しながら、第2槽3bでは膜分離モジュール15で濾過する。膜分離モジュール15による濾過時には、膜面を外側から洗浄するため、散気装置17から散気することができる。また、適当間隔をおいて、逆圧洗浄ライン25により、逆圧洗浄することができる。
【0022】
膜分離槽3内の濾過時において、第1槽3a内が攪拌機16で攪拌されているため、第1槽3aと第2槽3b内の凝集処理水は、仕切壁14の下面14aの下を通り、上面14bを越えて互いに流通する。このため、膜分離槽3内の凝集処理水は、フロックが偏在することなく均一状態になり、分離膜モジュール15による濾過性能が安定する。
【0023】
膜分離槽3で濾過した透過水は、透過水ライン24により、透過水タンク4に送られ、貯水される。透過水タンク4内の透過水は、適宜河川等に放流するほか、膜分離モジュール15の逆圧洗浄水としても用いられる。
【0024】
膜分離槽3の底面付近に溜まったフロック(汚泥)は、汚泥引抜ライン27から引き抜き、汚泥貯留槽5に送る。汚泥貯留槽5では、汚泥を脱水して、水は原水槽1に返送し、汚泥は廃棄する。
【実施例】
【0025】
実施例1
<図1で示す浸漬型膜分離装置>
凝集槽は、高さ0.85m、幅0.55m、奥行き0.33m(容積0.5m)を用いた。
【0026】
膜分離槽(図1に示す傾斜面31を有している)は、高さ1.35m、幅0.63m、奥行き0.86m(容積0.81m)で、幅方向1/3〜1/2の位置に、高さ1mの仕切壁が、上側に0.35m、下側に0.25mの隙間を空けて、槽の壁に固定されたものを用いた。
【0027】
<図1で示す浸漬型膜分離装置による濾過運転>
凝集槽では、BOD52ppm,nヘキサン抽出物量7.6mg/L、濁度52、pH7.3の原水(化粧品工場の排水)に対して、凝集剤(商品名メムフロックU002;ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製)を濃度が80ppmとなるように添加し、攪拌凝集処理を行った。凝集槽内の滞留時間は約10分間であった。
【0028】
膜分離槽では、膜分離モジュール(ポリエーテルスルホン中空糸膜を充填したケーシングフリーの浸漬型中空糸膜エレメント〔有効膜面積2.2m〕を8ユニット組み合わせたもの)により、吸引濾過した。
【0029】
濾過運転は、散気管(パールコン;ダイセン・メンブレン・システムズ社製,PMD-T06)により散気しながら行った。濾過運転30分ごとに45秒間の逆圧洗浄をした。
【0030】
濾過運転1時間経過時の透過水は、BOD38ppm、nヘキサン抽出物量0.76mg/L以下、濁度0.2であり、そのまま河川放流ができるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の浸漬型膜分離装置の概念図。
【符号の説明】
【0032】
1 原水槽
2 凝集槽
3 膜分離槽
3a 第1槽
3b 第2槽
4 透過水槽
5 汚泥貯留槽
11 凝集剤添加装置
12 攪拌機
14 仕切壁
15 膜分離モジュール
16 攪拌機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも凝集槽と膜分離槽とを有する浸漬型膜分離装置であり、
前記凝集槽に、凝集剤添加装置、攪拌機が備えられており、
前記膜分離槽が、内部が仕切壁により第1槽と第2槽とに分けられ、前記第1槽と前記第2槽が前記仕切壁の上端側と下端側にて液の流通が可能なように連通されており、
前記第1槽に攪拌機が備えられており、前記第2槽内に膜分離モジュールと散気装置が備えられている、浸漬型膜分離装置。
【請求項2】
更に前記凝集槽にpH調整装置が備えられている、請求項1記載の浸漬型膜分離装置。
【請求項3】
請求項1記載の浸漬型膜分離装置の運転方法であり、
凝集槽内にて凝集剤を添加し、攪拌機で攪拌することにより凝集処理する工程と、
凝集処理後の凝集処理水を膜分離槽の第1槽内に被処理水として送り、第1槽と第2槽内を被処理水で満たした後、第1槽内を攪拌機で攪拌しながら、第2槽内の膜分離モジュールで濾過処理する工程であり、このとき、第1槽内の被処理水と第2槽内の被処理水を互いに流通させながら濾過処理する、浸漬型膜分離装置の運転方法。
【請求項4】
凝集槽内で凝集処理するとき、pHを9〜10に調整する、請求項3記載の浸漬型膜分離装置の運転方法。




【図1】
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【公開番号】特開2009−28612(P2009−28612A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194073(P2007−194073)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】