説明

浸漬管及び浸漬管の製造方法

【課題】溶鋼に対する耐食性を向上させるために、溶鋼の流通経路の周縁の耐火物層を下端まで定形耐火物で構成させ、その定形耐火物を芯金に安定的に支持させることができると共に、定形耐火物に亀裂が生じるおそれを低減できる浸漬管を提供する。
【解決手段】筒状の芯金2、及び、芯金の内側に溶鋼を流通させる流通経路7を有する定形耐火物層10を備える浸漬管1であって、定形耐火物層は不焼成耐火煉瓦11によって構成されると共に浸漬管下端まで達しており、板状に形成され外表面が定形耐火物層から露呈するように定形耐火物層に埋設されている金属製の支持体5と、支持体の外表面と芯金とを連結する金属製の連結部材6と、芯金の外周面、芯金の下端、支持体の外表面、及び連結部材を被覆する不定形耐火物層20とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬管及び浸漬管の製造方法に関するものであり、特に、製鋼プロセスにおいて溶鋼の脱ガス処理を行う真空脱ガス装置に用いられて溶鋼に浸漬される浸漬管、及び、該浸漬管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空脱ガス処理は、一次精錬を終えた溶鋼から、更に脱炭、脱水素、脱窒素等を行う処理であり、RH法とDH法等がある。RH法の装置は、排気口が設けられた真空槽と、その底部に取り付けられた一対の浸漬管から、主に構成される。そして、取鍋に収容された溶鋼に浸漬管を浸漬させ、真空槽を減圧にすると共に、浸漬管の一方に設けられたガス吹き込み口からアルゴンガス等の不活性ガスを吹き込むことにより、その浸漬管を介して溶鋼が吸い上げられ、真空槽内で脱ガスされる。そして、脱ガスされた溶鋼は、自重により他方の浸漬管を介して取鍋内に排出される。このように、取鍋と真空槽との間で溶鋼が還流することにより、溶鋼からの脱ガス処理が進行する。また、DH法の装置は、真空槽とその底部に設けられた一本の浸漬管とから主に構成され、浸漬管を溶鋼に浸漬させて真空槽を減圧にすることにより、溶鋼が真空槽内に吸い上げられ、脱ガスが行われる。そして、真空槽の取鍋に対する相対的な上昇及び降下を繰り返すことにより、溶鋼は取鍋と真空槽とを行き来し、溶鋼からの脱ガス処理が進行する。
【0003】
上記の真空脱ガス装置に用いられる浸漬管は、一般的に、鋼等の金属製の円筒状の芯金と、その内側及び外側に被覆された耐火物層とから、主に構成されている。耐火物としては、溶鋼が流通する芯金の内側の耐火物層には、より耐食性に優れる定形耐火物が使用され、芯金の外側の耐火物層には、耐火材料の吹き付けによる補修が行い易い不定形耐火物が使用されることが多い。そして、図6(a)に例示するように、一般的な浸漬管100では、芯金102の下端に、内側に向けて受け金具105が突設され、これに載置させるように定形耐火物である焼成耐火煉瓦110が支持されている。そして、受け金具105の溶鋼による溶損を防止するために、受け金具105は下方から不定形耐火物120で被覆されている。
【0004】
このような構成とすると、受け金具105を介して焼成耐火煉瓦110を芯金102に堅固に支持させることができる一方で、溶鋼が流通する流通経路107の周縁の耐火物層において、下端側は焼成耐火煉瓦110より耐食性に劣る不定形耐火物120であるため、溶鋼の流通に伴う下端側の溶損が激しく、浸漬管100の耐用期間が短いものとなる。そこで、図6(b)に示すように、流通経路207の周縁の耐火物層を下端まで焼成耐火煉瓦210とし、芯金202の内周面から突設させたピン205を介して焼成耐火煉瓦210を芯金に支持させる浸漬管200(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−282131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成の浸漬管200では、焼成耐火煉瓦210の荷重がピン205に集中するため、ピン205部分で焼成耐火煉瓦210に亀裂が発生し易いという問題があった。また、ピン205を焼成耐火煉瓦210に留め付けるためには、焼成耐火煉瓦210にピン205を通すための孔を穿つ必要がある。そのため、その工程に手間を要することに加え、使用時にこの孔を基点として焼成耐火煉瓦210に亀裂が生じてしまうことがあった。
【0007】
そして、亀裂が発生すると、芯金202による焼成耐火煉瓦210の支持が不十分となり、ひいては焼成耐火煉瓦210が脱落するおそれがあった。或いは、発生した亀裂の進展により、亀裂を介して溶鋼が浸入し、芯金202が溶損してしまうおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、溶鋼に対する耐食性を向上させるために、溶鋼の流通経路の周縁の耐火物層を下端まで定形耐火物で構成させ、その定形耐火物を芯金に安定的に支持させることができると共に、定形耐火物に亀裂が生じるおそれを低減できる浸漬管、及び、該浸漬管の製造方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる浸漬管は、「筒状の芯金、及び、該芯金の内側に溶鋼を流通させる流通経路を有する定形耐火物層を備える浸漬管であって、前記定形耐火物層は不焼成耐火煉瓦によって構成されると共に、浸漬管下端まで達しており、板状に形成され、外表面が前記定形耐火物層から露呈するように前記定形耐火物層に埋設されている金属製の支持体と、該支持体の前記外表面と前記芯金とを連結する金属製の連結部材と、前記芯金の外周面、前記芯金の下端、前記支持体の前記外表面、及び前記連結部材を被覆する不定形耐火物層とを」具備している。
【0010】
「芯金」は、鋼や合金鋼等の金属で構成される筒状の部材であり、一般的な芯金の断面形状は略円形であるが、特にこれに限定されず、楕円形等であっても構わない。
【0011】
定形耐火物(耐火煉瓦)は、耐火材料が配合された原料を成形後、1300〜1900℃で焼成した焼成耐火煉瓦、成形後に焼成することなく硬化剤等により固化させた不焼成耐火煉瓦、原料を電融して所定形状に鋳造した電鋳耐火煉瓦に大別される。本発明では、定形耐火物として、このうちの不焼成耐火煉瓦を使用する。ここで、「不焼成耐火煉瓦」としては、マグネシア−カーボン質、マグネシア質、アルミナ−クロム質の不焼成耐火煉瓦を例示することができる。特に、マグネシア−カーボン質の不焼成耐火煉瓦は、含有されるカーボンの性質により、酸化反応を防止する必要があるものの、他の物質と化学的に反応し難く、溶鋼やスラグに対する濡れ性が小さいため、耐構造的スポーリング特性に優れており、望ましい。
【0012】
「浸漬管下端」は、浸漬管において溶鋼に浸漬される側の端部を指している。
【0013】
「支持体」は、例えば、2〜6mm厚さの金属板によって構成させることができる。また、「連結部材」は、例えば、丸棒状、角棒状、または板状の金属部材によって構成させることができる。ここで、「支持体」、「連結部材」を構成する金属の材質は、鋼や合金鋼等とすることができ、芯金の材質と同一であっても異なっていても構わない。また、「支持体」と「連結部材」の材質も、同一であっても異なっていても構わない。なお、支持体と連結部材との接合、連結部材と芯金との接合は、溶接やろう付けにより行うことができる。
【0014】
「不定形耐火物層」を構成する耐火材料の種類は特に限定されず、例えば、アルミナ質、スピネル質、アルミナ−シリカ質、アルミナ−スピネル質、アルミナ−マグネシア質等の耐火材料を使用することができる。
【0015】
上記構成により、本発明によれば、溶鋼を流通させる流通経路の周縁の耐火物層を、上端から下端まで定形耐火物層とし、溶鋼による耐食性を高めて浸漬管の耐用期間の長期化を図るに当たり、定形耐火物層を安定的に芯金に支持させることができる。すなわち、定形耐火物層は、まず、定形耐火物層に埋設された板状の支持体によって、面的に支持される。そのため、芯金の内周面から突設されたピンで定形耐火物層が支持される従来の浸漬管のように、応力が局部的に集中して定形耐火物層に亀裂が発生するおそれが低減され、支持体全体によって安定的に支持される。
【0016】
ここで、仮に、定形耐火物層を焼成耐火煉瓦で構成させた場合、これに支持体を埋設させるためには、焼成耐火煉瓦に支持体を埋め込むための凹部を加工する必要があり、その加工の際に焼成耐火煉瓦に亀裂が発生するおそれがある。これに対し、本発明では、定形耐火物層を不焼成耐火煉瓦で構成させているため、不焼成耐火煉瓦の成形時に支持体を埋設させ、不焼成耐火煉瓦と一体化させておくことが可能な構成である。これにより、定形耐火物層に亀裂を生じさせるおそれなく、支持体を定形耐火物層に取付けることができる。
【0017】
そして、支持体は金属製であり、その外表面は定形耐火物層から露呈しているため、この部分で金属製の連結部材と溶接等することにより、支持体を連結部材を介して芯金に堅固に固定することができる。このように、定形耐火物層が支持体に安定的に支持され、支持体が芯金に堅固に固定されることにより、支持体及び連結部材を介して、定形耐火物層を安定的に芯金に支持させることができる。
【0018】
本発明にかかる浸漬管は、「前記支持体は、内側に向けて突出し前記定形耐火物層に埋設されている複数の係止部を」具備するものとすることができる。
【0019】
「係止部」としては、V字状等の金属部材(スタッド)が、溶接等によって支持体の内側に取付けられたものを例示することができる。
【0020】
本発明では、支持体が面的に定形耐火物層を支持する作用に加え、支持体から突出した複数の係止部によって、定形耐火物層を支持体に牽引支持させることができる。ここで、支持体は板状であるため、係止部を分散させて多数設けることが可能な構成である。そのため、定形耐火物層の荷重が局部的に集中することなく、定形耐火物層の荷重を複数の係止部に分散させて支持させることができる。これにより、定形耐火物層での亀裂の発生を抑制しつつ、係止部を介して、定形耐火物層をより安定的に支持体に支持させることができる。
【0021】
また、定形耐火物層が不焼成耐火煉瓦で構成されているため、係止部の数が多い場合であっても、不焼成耐火煉瓦の成形時に係止部を容易に埋設することが可能な構成である。これにより、焼成耐火煉瓦に孔を穿ちピンを留め付ける従来の浸漬管とは異なり、手間をかけることなく、かつ、定形耐火物層に亀裂を発生させるおそれを低減して、複数の係止部が突設された支持体とすることが可能となっている。
【0022】
本発明にかかる浸漬管は、「前記係止部は、前記支持体に設けられた切込み線に囲まれた部分が引き起こされた切起こし部を」具備するものとすることができる。
【0023】
「切込み線」は、例えば、V字状、U字状、コ字状に設けることができる。そして、「切起こし部」は、支持体において切込み線に囲まれた部分が引き起こされた構成である。すなわち、支持体の一部によって係止部が構成されることとなる。なお、「係止部」として、「切起こし部」のみを備えるものであっても、上記のV字状等のスタッドと「切起こし部」とを、共に備えるものであっても良い。
【0024】
上記の構成により、本発明によれば、支持体の一部によって係止部を構成させることにより、浸漬管がより簡易な構成となる。また、「切起こし部」が引き起こされた跡には孔部が形成されることとなるが、この孔部によっても定形耐火物層を支持することができる。そのため、支持体によって、更に安定的に定形耐火物層を支持することができる。
【0025】
次に、本発明にかかる浸漬管の製造方法は、「板状に形成された金属製の支持体を、成形型内に前記支持体の外表面が前記成形型の内表面に当接するように配置し、不焼成耐火煉瓦用の耐火材料を前記成形型内に充填し加圧成形することにより、前記支持体が前記外表面を除いて耐火材料層に埋設された成形体を得る成形工程と、前記成形体を乾燥させ、前記支持体が一体化された不焼成耐火煉瓦を得る乾燥工程と、複数の前記不焼成耐火煉瓦を、前記支持体の前記外表面を外側にして筒状に組み上げ、溶鋼を流通させる流通経路を有する定形耐火物層を形成する定形耐火物層形成工程と、前記定形耐火物層の外側に筒状の芯金を配置し、該芯金と前記支持体の外表面とを金属製の連結部材で連結する連結工程と、前記芯金の外周面、前記芯金の端部、前記支持体の前記外表面、及び前記連結部材を被覆するように、前記定形耐火物層の端面と略同一の高さの不定形耐火物層を形成する不定形耐火物層形成工程と」を具備するものである。
【0026】
「不定形耐火物層の形成」は、流し込み施工により行うことができる。
【0027】
上記構成により、本発明によれば、不定形耐火物層形成工程において、定形耐火物層の端面と略同一の高さに不定形耐火物層を形成することにより、溶鋼を流通させる流通経路の周縁の耐火物層を、上端から下端まで定形耐火物層とすることができる。また、成形工程において支持体を耐火材料層に埋設させることにより、不焼成耐火煉瓦を製造する段階で支持体を一体化させることができる。これにより、上記の優れた作用効果を奏する浸漬管を、製造することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明の効果として、溶鋼に対する耐食性を向上させるために、溶鋼の流通経路の周縁の耐火物層を下端まで定形耐火物で構成させ、その定形耐火物を芯金に安定的に支持させることができると共に、定形耐火物に亀裂が生じるおそれを低減できる浸漬管、及び、該浸漬管の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の最良の一実施形態である浸漬管、及び、該浸漬管の製造方法について、図1乃至図5に基づいて説明する。ここで、図1は本実施形態の浸漬管の概略構成を示す縦断面図であり、図2は図1におけるA−A断面図であり、図3は本実施形態の浸漬管の製造方法を示す工程図であり、図4は切起こし部を説明する説明図であり、図5は支持体が埋設された不焼成耐火煉瓦の製造方法を説明する説明図である。なお、本実施形態では、RH法による真空脱ガス装置の浸漬管として、本発明を適用した場合を例示する。また、図示においては、構造を明確に示すために支持体の厚さを強調している。
【0030】
本実施形態の浸漬管1は、図1及び図2に示すように、筒状の芯金2、及び、芯金2の内側に溶鋼を流通させる流通経路7を有する定形耐火物層10を備える浸漬管であって、定形耐火物層10は不焼成耐火煉瓦11によって構成されると共に、浸漬管下端9まで達しており、板状に形成され、外表面が定形耐火物層10から露呈するように定形耐火物層10に埋設されている金属製の支持体5と、支持体5の外表面と芯金2とを連結する金属製の連結部材6と、芯金2の外周面、芯金2の下端、支持体5の外表面、及び連結部材6を被覆する不定形耐火物層20とを具備している。
【0031】
より詳細に説明すると、本実施形態の芯金2は、横断面の外周及び内周の形状が略円形である円筒状に形成されている。また、本実施形態の定形耐火物層10は、断面略台形の四角柱状の不焼成耐火煉瓦11を並設することにより、横断面の外周及び内周の形状が、芯金2と同心の略多角形状である筒状に形成されている。なお、本実施形態では、不焼成耐火煉瓦11として、マグネシア−カーボン質不焼成耐火煉瓦を使用している。
【0032】
更に、本実施形態の不定形耐火物層20は、横断面の外周の形状が芯金2と同心の略円形である筒状であり、芯金2の外周面、芯金2の下端、連結部材6、及び、支持体5の外表面を被覆すると共に、芯金2と定形耐火物層10との間隙を充填するように設けられている。
【0033】
また、定形耐火物層10の下端面と不定形耐火物層20との下端面とはほぼ同一面を形成しており、定形耐火物層10の下端面及び不定形耐火物層20との下端面によって、浸漬管下端9が構成されている。なお、定形耐火物層10の内周の内側に形成される筒状の空間によって、溶鋼を流通させる流通経路7が構成されている。
【0034】
個々の不焼成耐火煉瓦11には、平板状の支持体5が断面略L字状に屈曲させられた上で、不焼成耐火煉瓦11の角部に沿って埋設されている。また、支持体5の外表面と不焼成耐火煉瓦11の外表面は、ほぼ同一面となっている。換言すれば、支持体5の外表面が定形耐火物層10から露呈している。そして、露呈しているこの部分で、支持体5には連結部材6の一端が溶接されており、連結部材6の他端は芯金2に溶接されている。なお、本実施形態の連結部材6は、丸棒状の中実の金属部材で構成されている。
【0035】
また、支持体5には、略V字状の切込み線51が設けられ、切込み線51に囲まれた部分が内側に向けて引き起こされることにより、複数の切起こし部8が形成されている(図4参照。図1及び図2において図示省略)。本実施形態では、切起こし部8は分散させて多数設けられており、切起こし部8のみによって係止部が構成されている。
【0036】
芯金2の上端には、外側に向けて突出するように円環状のフランジ31が設けられている。なお、浸漬管1は、このフランジ31を介して真空脱ガス装置(図示しない)に着脱され、浸漬管1の損耗に応じて取り換えられる。なお、図1ではアルゴンガス等の不活性ガスを吹き込むためのガス吹込み管33を図示しているが、これは、RH法の真空脱ガス装置に一対設けられる浸漬管1のうち、一方にのみ設けられる構成である。また、芯金2の外周面には、芯金2の外周面を被覆する不定形耐火物層20を芯金2に牽引支持させるスタッド32が、複数設けられている。
【0037】
更に、本実施形態では、芯金2の下端の高さ、支持体5の下端の高さ、及び、連結部材6の高さは、共に浸漬管1の高さHの1/4〜1/2に設定されている。
【0038】
次に、浸漬管1の製造方法について、図3乃至図5を用いて説明する。本実施形態の浸漬管1の製造方法は、板状に形成された金属製の支持体5を、成形型内に支持体5の外表面が成形型の内表面に当接するように配置し、不焼成耐火煉瓦用の耐火材料300を成形型内に充填し加圧成形することにより、支持体5が外表面を除いて耐火材料層に埋設された成形体310を得る成形工程S2と、成形体310を乾燥させ、支持体5が一体化された不焼成耐火煉瓦11を得る乾燥工程S3と、複数の不焼成耐火煉瓦11を、支持体5の外表面を外側にして筒状に組み上げ、溶鋼を流通させる流通経路7を有する定形耐火物層10を形成する定形耐火物層形成工程S4と、定形耐火物層10の外側に筒状の芯金2を配置し、芯金2と支持体5の外表面とを金属製の連結部材6で連結する連結工程S5と、芯金2の外周面、芯金2の端部、支持体5の外表面、及び連結部材6を被覆するように、定形耐火物層10の端面と略同一の高さの不定形耐火物層20を形成する不定形耐火物層形成工程S6とを具備している。
【0039】
更に、本実施形態では、成形工程S2に先立って、支持体5に切込み線51を設け、切起こし部8を形成する係止部形成工程S1を具備している。
【0040】
より詳細に説明すると、まず、図4(a)に示すように、平板状の支持体5に略V字状の切込み線を複数設ける。そして、図4(b)に示すように、切込み線に囲まれた部分を引き起こし、切起こし部8を形成する(係止部形成工程S1)。
【0041】
次に、不焼成耐火煉瓦11の形状に相当する成形型の内部に、支持体5を配置する。ここで、本実施形態の成形型は、角筒状の枠型37、底型38、及び押し型39によって構成されている。まず、枠型37と底型38を嵌め合わせて有底筒状とする。次に、支持体5を切起こし部8が形成された側が内側となるよう、枠型37と底型38とが成す角度に相当する角度を有する略L字状に屈曲させ、図5(a)に示すように、支持体5の二つの外表面が、枠型37の内表面及び底型38の上面に当接するよう配置する。そして、不焼成耐火煉瓦用の耐火材料300を有底筒状の内部空間に充填する。そして、図5(b)に示すように、押し型39を押し下げ耐火材料300を加圧成形する。これにより、外表面を除く支持体5と、支持体5から内側に突出した複数の切起こし部8とが、耐火材料層に埋設された状態の成形体310が得られる(成形工程S2)。
【0042】
脱型後、成形体310を約300℃で乾燥させることにより、図5(c)に示すように、支持体5が一体化された不焼成耐火煉瓦11が得られる(乾燥工程S3)。
【0043】
このようにして得られた複数の不焼成耐火煉瓦11を作業用の平面上に載置し、浸漬管下端9が上向きとなるように組み上げ、筒状の定形耐火物層10を形成する(定形耐火物層形成工程S4)。このとき、隣接する不焼成耐火煉瓦11同士は、耐火モルタル等の接合剤で接合することができる。
【0044】
次に、フランジ31及びスタッド32を取り付けた芯金2を、フランジ31を下側にして、定形耐火物層10と同心となるようにその外側に配置する。そして、複数の連結部材6を用い、それぞれの連結部材6の一端を支持体5の外表面に溶接し他端を芯金2に溶接して、支持体5と芯金2とを連結する(連結工程S5)。
【0045】
この状態で、芯金2の外側に断面略円形の筒状型を同心に載置する。そして、不定形耐火材料を水及び硬化剤、分散剤等の調整剤と混合・混錬し、筒状型と定形耐火物層10との間に、定形耐火物層10と同一の高さまで流し込み、硬化させる(不定形耐火物層形成工程S6)。これにより、芯金2の外周面及び端部、芯金2と定形耐火物層10との間隙、支持体5の外表面、及び、連結部材6が不定形耐火物層20で被覆される。その後、養生を経て筒状型を取り外し乾燥させれば、浸漬管1の製造が完了する。
【0046】
上記のように、本実施形態の浸漬管1によれば、流通経路7は上端から下端まで耐食性に優れる定形耐火物層10によって構成されているため、浸漬管1の耐用期間を長期化することができる。
【0047】
また、定形耐火物層10は、定形耐火物層10に埋設された板状の支持体5によって面的に支持されると共に、支持体5に分散して複数突設された係止部(切起こし部8)によって、牽引支持されている。これにより、定形耐火物層10の荷重が局部的に集中して、亀裂が発生することが防止され、定形耐火物層10は支持体5によって安定的に支持されている。そして、支持体5は連結部材6を介して芯金2に堅固に固定されている。従って、支持体5及び連結部材6を介して、定形耐火物層10を芯金2に安定的かつ堅固に支持させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、成形工程S2において支持体5及び係止部(切起こし部8)を耐火材料層に埋設し、支持体5及び係止部が予め一体化された不焼成耐火煉瓦11によって定形耐火物層10を構成させている。これにより、焼成耐火煉瓦に支持体や係止部を後付けする場合とは異なり、支持体や係止部を取付ける加工を行う必要なく、かかる加工に伴って定形耐火物層10に亀裂が発生することが防止されている。
【0049】
更に、芯金2の下端、支持体5の下端、及び連結部材6の高さが(1/4)H以上であるため、金属製の芯金2、支持体5、及び連結部材6が溶鋼による加熱の影響を受け難い。これにより、熱膨張率が耐火物より極めて大きな金属部分の熱膨張に起因して、定形耐火物層10や不定形耐火物層20に亀裂等が生じることが抑制されている。
【0050】
一方、芯金2の下端の高さが、高過ぎない(1/2)H以下に抑えられているため、芯金2の表面積が確保されており、芯金2によって不定形耐火物層20を安定的に支持することができる。また、支持体5の下端の高さも同じく(1/2)H以下に抑えられているため、支持体5と芯金2が離れ過ぎることがなく、短い連結部材6を用いて、支持体5と芯金2とを簡易かつ容易に連結することができる。
【0051】
また、本実施形態では、マグネシア−カーボン質の不焼成耐火煉瓦11によって定形耐火物層10を構成させているが、マグネシア−カーボン質耐火物は、耐化学的浸食に優れることに加え、溶鋼やスラグの濡れ性が低い。これにより、本実施形態の定形耐火物層10は、溶鋼の流通に伴い溶鋼が定形耐火物層中に浸入し、変質によって定形耐火物層に亀裂や剥離等を生じる構造的スポーリングに対して、耐性の高いものとなっている。
【0052】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0053】
例えば、上記の実施形態では、支持体5にV字状の切込み線51を設けて切起こし部8を形成する場合を例示したが、これに限定されず、図4(c),(d)に例示するように、U字状の切込み線51bやコ字状の切込み線51cによって、切起こし部を形成することもできる。また、係止部を切起こし部8のみで構成させる場合を例示したが、これに限定されず、V字状等のスタッドを支持体に溶接して係止部とすることもできる。或いは、係止部として、V字状等のスタッド及び切起こし部とを共に備えるものとすることもできる。
【0054】
更に、上記の実施形態では、並設される不焼成耐火煉瓦11の一個が、それぞれ浸漬管1の上端から浸漬管下端9まで達する長さの一体物である場合を例示したが、不焼成耐火煉瓦が上下に接着された二段等の積層構造とすることもできる。この場合は、最下段の不焼成耐火煉瓦の上方に支持体を埋設すれば、その支持体で上段の不焼成耐火煉瓦を支持できると共に、支持体が溶鋼による加熱の影響を受け難く、望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態の浸漬管の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】浸漬管の製造方法を説明する工程図である。
【図4】切起こし部を説明する説明図である。
【図5】支持体が埋設された不焼成耐火煉瓦の製造方法を説明する説明図である。
【図6】従来の浸漬管の構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1 浸漬管
2 芯金
5 支持体
6 連結部材
7 流通経路
8 切起こし部(係止部)
9 浸漬管下端
10 定形耐火物層
11 不焼成耐火煉瓦
20 不定形耐火物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の芯金、及び、該芯金の内側に溶鋼を流通させる流通経路を有する定形耐火物層を備えた浸漬管であって、
前記定形耐火物層は不焼成耐火煉瓦によって構成されると共に、浸漬管下端まで達しており、
板状に形成され、外表面が前記定形耐火物層から露呈するように前記定形耐火物層に埋設されている金属製の支持体と、
該支持体の前記外表面と前記芯金とを連結する金属製の連結部材と
前記芯金の外周面、前記芯金の下端、前記支持体の前記外表面、及び前記連結部材を被覆する不定形耐火物層と
を具備することを特徴とする浸漬管。
【請求項2】
前記支持体は、内側に向けて突出し前記定形耐火物層に埋設されている複数の係止部を具備することを特徴とする請求項1に記載の浸漬管。
【請求項3】
前記係止部は、前記支持体に設けられた切込み線に囲まれた部分が引き起こされた切起こし部を具備する
ことを特徴とする請求項2に記載の浸漬管。
【請求項4】
板状に形成された金属製の支持体を、成形型内に前記支持体の外表面が前記成形型の内表面に当接するように配置し、不焼成耐火煉瓦用の耐火材料を前記成形型内に充填し加圧成形することにより、前記支持体が前記外表面を除いて耐火材料層に埋設された成形体を得る成形工程と、
前記成形体を乾燥させ、前記支持体が一体化された不焼成耐火煉瓦を得る乾燥工程と、
複数の前記不焼成耐火煉瓦を、前記支持体の前記外表面を外側にして筒状に組み上げ、溶鋼を流通させる流通経路を有する定形耐火物層を形成する定形耐火物層形成工程と、
前記定形耐火物層の外側に筒状の芯金を配置し、該芯金と前記支持体の外表面とを金属製の連結部材で連結する連結工程と、
前記芯金の外周面、前記芯金の端部、前記支持体の前記外表面、及び前記連結部材を被覆するように、前記定形耐火物層の端面と略同一の高さの不定形耐火物層を形成する不定形耐火物層形成工程と
を具備することを特徴とする浸漬管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−191329(P2009−191329A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34690(P2008−34690)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【Fターム(参考)】