説明

浸透圧式デリバリーシステム及びピストンアセンブリー

活性薬剤含有製剤を液体環境に送達するための浸透圧式デリバリーシステムが開示されている。この浸透圧式デリバリーシステムは、典型的には、活性薬剤含有製剤及び浸透剤含有製剤を含有する管状内腔(lumen)を含むリザーバー、及び浸透剤含有製剤から活性薬剤含有製剤を分離するために管状内腔中に位置するピストンアセンブリーを含む。典型的には、ピストンアセンブリーは、管状内腔に位置するように構築され配置された胴体を含む。胴体は有機溶媒中で耐浸出性であるポリマー材料からなる。ある態様に於いて、この胴体は、その遠心端に、リザーバーの壁に係合し封着するための縁、及び、その遠心端に、リザーバーの壁に対して縁を偏らせるために保持されたばねを含む円柱状胴体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、活性薬剤を液体環境中に持続的に送達するための浸透圧式デリバリーシステムに関する。より具体的には、本発明は、浸透圧式デリバリーシステムのリザーバーの管状内腔に仕切りを形成する際に用いられるピストンアセンブリーに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,728,396号及び米国特許第6,524,305号に記載されるような浸透圧式デリバリーシステムに於いて、ピストンは、リザーバーの管状内腔を分割し、2つのチャンバーとするようにリザーバーの管状内腔に位置する。第1のチャンバーは浸透剤含有製剤を含む一方、第2のチャンバーは活性薬剤含有製剤を含む。このピストンは、リザーバーの壁に対して係合し封着することにより、浸透剤含有製剤を活性薬剤含有製剤と分離する。ピストンでの圧力差により、リザーバー内でピストンが長軸方向に動くことが可能である。ピストンは、一般的に、リザーバー内を動く時にリザーバーの壁との封着が維持されることが要求される。ピストンは、典型的には、リザーバーよりも低い硬度の材料からなり、この材料はリザーバーの管状内腔の適合するように変形するであろうし、不浸透性である。典型的には、このピストンは、例えば、これに限定されないが以下のような材料からなる:ポリプロピレン;ゴム類例えば、エチルプロピレンジエンゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、塩化ゴム、スチレンブタジエンゴム又はクロロプレンゴム;及び熱可塑性エラストマー類、例えば、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、SANTOPRENE(登録商標)(Advanced Elastomer Systems,Akron OH)、又はC−FLEX(登録商標)(Consolidated Polymer Technologies,Inc.,Clearwater FL)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ピストンと浸透圧式デリバリーシステムの部品との適合性及び封着の改善への要求は依然として存在する。
【0004】
本発明は、浸透圧式デリバリーシステム、そこで用いられる活性薬剤含有製剤、並びにこの浸透圧式デリバリーシステムの製造方法及び使用方法に関する。また、本発明はピストン及びピストンアセンブリーに関する。いくつかの態様に於いては、このピストン及びピストンアセンブリーは、有機溶媒、又は例えば懸濁ビヒクルのような有機溶媒を含む溶液と接触した場合、実質的に耐浸出性である。
【0005】
ある局面に於いては、本発明は、液体環境内に活性薬剤含有製剤を送達するための浸透圧式デリバリーシステムに関する。この浸透圧式デリバリーシステムは、活性薬剤含有製剤、浸透剤含有製剤、並びに、活性薬剤含有製剤を浸透剤含有製剤から分離するように管状内腔に位置させたピストンアセンブリーを含む管状内腔、を含むリザーバーを含む。ピストンアセンブリーは胴体、例えば、管状内腔に位置するように構築され配置された円柱状胴体を含む。この胴体は、典型的には、有機溶媒中で耐浸出性である材料、例えば、ポリマー材料からなり、この胴体は、リザーバーの壁に対して係合し封着するための手段を更に含む。
【0006】
浸透圧式デリバリーシステムのある態様に於いて、ピストンアセンブリーの胴体は実質的に円柱状であり、その遠心端に、リザーバーの壁に係合し封着するための縁、並びに、この遠心端に、リザーバーの壁に対して縁を偏らせるために保持されたばねを含む。このばねは、円柱状胴体の遠心端の空洞に保持されてよい。このばねは、例えば、傾斜コイルばねのようなラジアルばねであってよい。典型的には、ばねは非反応性金属からなる。縁及びリングのこのような組み合わせの1つ若しくは2つ以上が、ピストンの胴体に沿って、例えば、1つの遠心端に、それぞれの遠心端に、又は1つ若しくは2つ以上の遠心端に、1つ若しくは2つ以上のこのような組み合わせがピストンの胴体に沿って遠心端と遠心端の間に分布した状態で、存在してよい。
【0007】
浸透圧式デリバリーシステムの別の態様に於いて、ピストンアセンブリーは、管状内腔に位置するように構築され配置された胴体を含んでよく、この胴体は有機溶媒(例えば、適切なポリマー材料)中で耐浸出性である材料からなる。ピストンアセンブリーは、例えば、1つ又は2つ以上のコンセントリック溝を更に含むことができ、それぞれの溝は、リザーバーの壁に対して係合し封着するための手段を提供するエラストマーO−リングを保持するように形成されている。
【0008】
別の局面に於いて、本発明は、浸透圧式デリバリーシステムのための、リザーバーの管状内腔に位置するピストンアセンブリーに関する。このピストンアセンブリーは、管状内腔に位置するように構築され配置された胴体、例えば、円柱状胴体を含み、この胴体は有機溶媒中で耐浸出性である材料(例えば、適切なポリマー材料)からなり、ここで、この胴体はリザーバーの壁に対して係合し封着するための手段を更に含む。
【0009】
ピストンアセンブリーの、ある態様に於いて、胴体は実質的に円柱状であり、ピストンアセンブリーの遠心端(又は、別の態様に於いてはそれぞれの遠心端)に、リザーバーの壁に対して係合し封着するための縁を含み、また、遠心端(又は双方の遠心端)に、リザーバーの壁に対して縁を偏らせるために保持されたばねを含む。更に、1つ又は2つ以上のばねをピストンアセンブリーの遠心端と遠心端の間に保持させ、リザーバーの壁に対して係合し封着するための1つ又は2つ以上の縁を提供することができる。従って、このピストンアセンブリーは、ピストンアセンブリーの長さに沿って種々の位置に置かれたリザーバーの壁に対して係合し封着するための1つ又は2つ以上の手段を含み、好ましくは、少なくとも1つのこのような手段は、有機溶媒を含むリザーバーのチャンバー(例えば、活性薬剤含有製剤を含むチャンバー)と接触する状態となるピストンの遠心端の近くにある状態で含まれる。
【0010】
本発明の実施に有用なばねとしては、例えば、浸透圧式デリバリーシステムの他の部品と非反応性(特に、活性薬剤含有製剤及び/又は浸透剤含有製剤と非反応性)である金属からなる傾斜コイルばねのようなラジアルばねが挙げられる。
【0011】
ピストンアセンブリーの別の態様に於いて、ピストンアセンブリーは、管状内腔に位置するように構築され配置された胴体を含み、ここで、この胴体は有機溶媒中で耐浸出性である材料からなり、1つ又は2つ以上のコンセントリック溝を含む。典型的には、それぞれの溝は、リザーバーの壁に対して係合し封着するための手段を提供するエラストマーO−リングを保持するように形成されている。
【0012】
別の局面に於いて、本発明は、1種又は2種以上のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を含む活性薬剤(例えば、1種又は2種以上のペプチド粒子、ポリペプチド粒子、又はタンパク質粒子を含む粒子懸濁液)が充填された浸透圧式デリバリーシステムに関する。ある態様に於いて、ペプチドは、例えば、αインターフェロン、βインターフェロン、δインターフェロン、γインターフェロン、λインターフェロン、ωインターフェロン、τインターフェロン、及びこれらの混合物よりなる群から選択されるインターフェロンのようなインターフェロンである。活性薬剤は、例えば、(i)ペプチド粒子の粒子製剤(例えば、インターフェロンを含む)を含む懸濁製剤であってよく、また、(ii)溶媒(例えば、有機溶媒)及びポリマーを含むビヒクルに懸濁されていてよい。
【0013】
別の局面に於いて、本発明は、インターフェロンを含む活性薬剤を充填した本発明の浸透圧式デリバリーシステムを用いたインターフェロン応答性疾患状態の治療に関する。ある態様に於いて、本発明は、次のような治療を必要としている対象に於けるC型肝炎ウイルス(HCV)感染の治療法に関し、この治療法には、α、β、又はωインターフェロンを含む懸濁製剤(例えば、選択されたインターフェロンを含む粒子製剤)を充填した本発明の浸透圧式デリバリーシステムを対象に投与することが含まれる。別の局面に於いて、本発明は、次のような治療を必要としている対象に於ける多発性硬化症の治療法に関し、この治療法には、β又はωインターフェロンを含む懸濁製剤(例えば、選択されたインターフェロンを含む粒子製剤)を充填した本発明の浸透圧式デリバリーシステムを対象に投与することが含まれる。
【0014】
別の局面に於いて、本発明は、インシュリン分泌性ペプチドを含む活性薬剤を充填した本発明浸透圧式デリバリーシステムを用いた糖尿病及び/又は糖尿病関連疾患の治療に関する。ある態様に於いて、本発明は、次のような治療を必要としている対象に於ける糖尿病の治療法に関し、この治療法にはグルカゴン様タンパク質1(GLP−1)又はエキセンディン−4を含む懸濁製剤(例えば、GLP−1又はエキセンディン−4を含む粒子製剤)を充填した本発明の浸透圧式デリバリーシステムを対象に投与することが含まれる。
【0015】
本明細書の開示に鑑み、当業者は本発明のこれらの態様及び他の態様を容易に思いつくであろう。
【0016】
以下に記載される添付の図面は本発明の典型的な態様を説明するものであるが、本発明の範囲を限定するものと考えられるべきではない。なぜなら、本発明は、他の等しく有効性のある態様を認めてよいからである。図面は必ずしも実寸ではなく、図面のある特徴及び図面のある見え方は、明瞭さ及び簡潔さのため、尺度又は概要が強調して示されていることがあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ピストンアセンブリーを含む浸透圧式デリバリーシステムの断面図である。
【図2A】図1のピストンアセンブリーの拡大図である。
【図2B】デュアルリップシール(dual−lip seal)を備えたピストンアセンブリーの断面図である。
【図3】図2Aのピストンアセンブリーを用いた活性薬剤含有製剤の経時累積放出を示す。
【図4A】2つのO−リングタイプシール部材を備えたピストンアセンブリーの側面図である。
【図4B】図4Aのピストンアセンブリーの側面図を表す。
【図4C】3つのO−リングタイプのシール部材を備えたピストンアセンブリーの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.0.0 定義
本明細書で用いられる用語は、特定の態様を記載する目的のみのものであると理解すべきであり、限定することを意図していない。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文中で明示しない限り、複数の指示対象を包含する。従って、例えば、「a ポリマー」は2種又は3種以上のこのようなポリマーの組み合わせを包含し、「an 活性薬剤」と言及する場合、1種又は2種以上の活性薬剤、活性薬剤の混合物等が包含される。
【0019】
特に定義されない限り、本明細書で用いられるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野に於ける当業者によって通常理解されるものと同様の意味を有する。本明細書に記載のものと同様、又は均等な他の方法及び材料を本発明の実施に於いて用いることができるが、好ましい材料及び方法は本明細書に記載される。
【0020】
本発明を記載しクレームする際に、以下の用語は、下に述べる定義に従って用いられるであろう。
【0021】
本明細書で用いられる「活性薬剤」という表現は、典型的には薬理学的に有用な化合物を指し、この化合物の限定されない例として、小分子、ペプチド、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書に於いては相互に交換可能なものとして用いられ、典型的には、2つ又は3つ以上のアミノ酸鎖(例えば、最も典型的には、L−アミノ酸であるが、例えば、D−アミノ酸、修飾アミノ酸、アミノ酸類似体、及び/又はアミノ酸模倣物も含む)を含む分子を指す。ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質は、アミノ酸鎖を修飾する更なる基、例えば、翻訳後修飾を介して付加された官能基を含んでもよい。翻訳後修飾の限定されない例として、アセチル化、アルキル化(メチル化を含む)、ビオチン化、グルタミル化、グリシル化、グリコシル化、イソプレニル化、リポイル化、ホスホパンテテイニル化、リン酸化、セレン化、及びC末端のアミド化が挙げられる。ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質という用語にはアミノ末端及び/又はカルボキシ末端の修飾も含まれる。末端のアミノ基の修飾には、以下に限定されないが、デス−アミノ修飾、N−低アルキル修飾、N−ジ−低アルキル修飾、及びN−アシル修飾が含まれる。末端のカルボキシル基の修飾には、以下に限定されないが、アミド修飾、低アルキルアミド修飾、ジアルキルアミド修飾、及び低アルキルエステル修飾(例えば、ここで低アルキルは、炭素数が1〜4のアルキルである)が含まれる。
【0023】
本明細書に用いられる「アミノ酸」という用語は典型的には、天然のアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然アミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然のアミノ酸には、遺伝情報によりコード化されたアミノ酸、並びに、後修飾により形成されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γカルボキシグルタミン酸、及びO−ホスホセリンが含まれる。
【0024】
本明細書に用いられる「アミノ酸類似体」という用語は、典型的には、天然のアミノ酸と同様の基本化学構造(例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合した炭素)を有した化合物を指す。アミノ酸類似体の限定されない例として、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、又はメチオニンメチルスルホニウムが挙げられる。このような類似体は一般的に、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有しているが、天然のアミノ酸と同様の基本化学構造を保持する。
【0025】
本明細書に用いられる「アミノ酸模倣物」という用語は、典型的には、一般的なアミノ酸の化学構造と異なるが天然のアミノ酸と同様に機能する構造を有した化合物を指す。
【0026】
本明細書に用いられる「ペプチド模倣物(peptide mimetics)」又は「ぺプチド模倣物(peptidomimetics)」という用語は、一般的には、治療上有用なペプチドと構造的に類似し、同等の治療効果又は予防効果を得るために用いることができ(Fauchere,J.,Adv.Drug.Res.15,29−69(1986);Veber and Freidinger,TINS(登録商標) p.392−396(1985);and Evans,et al.,J.Med.Chem.30:1229−1239(1987))、そして、コンピューター分子モデリングを用いて通常開発される活性薬剤を指す。ペプチド模倣物は、典型的には、参照ポリペプチド(すなわち、選択された生化学的性質又は薬理活性を有したポリペプチド、例えば、ωインターフェロン、GLP−1、又はエキセンディン−4)と構造的に類似しているが、以下から選択されるがそれらに限定されない結合で所望により置き換えられた1つ又は2つ以上のペプチド結合を有している:−CH2NH−;−−CH2S−−;−−CH2−−;−−CH=CH−−(シス及びトランス);−COCH2−、−−CH(OH)CH2−−、又は−−CH2SO−−。このような結合は当該分野に於いて公知である。例えば、より経済的な製品、より高い化学安定性、高い薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効力、有効性等)、変化した特異性(例えば、広域スペクトル性の生物学的活性)、及び/又は低い抗原性が提供されることにより、このようなペプチド模倣物はポリペプチドの態様と比較した利益をもたらし得る。
【0027】
本明細書に用いられる「ポリペプチド類似体」又は「ポリペプチド誘導体」という用語は、典型的には、天然の参照配列に対して1つ又は2つ以上の保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドを指す。ポリペプチド類似体又はポリペプチド誘導体は、参照ポリペプチドの1次配列に関するアミノ酸付加又はアミノ酸欠失をも指し、ここで、この修飾(例えば、アミノ酸付加又は欠失)は実質的に、ポリペプチド類似体の所望の特性に悪影響を及ぼさない。一般的に、参照ポリペプチドに対して1つ又は2つ以上のアミノ酸の置換、付加、又は欠失を有したポリペプチドは、参照ポリペプチドと実質的に同一である。本明細書に用いられる「実質的に同一」という用語は、2つのペプチド配列が、例えば、初期設定のパラメータ(例えば、初期設定のギャップ重量)を用いたプログラムGAP又はBESTFITにより最適に配列された場合、少なくとも約80パーセントの配列相同性を、好ましくは、少なくとも約90パーセントの配列相同性を、より好ましくは、少なくとも約95パーセントの配列相同性を、そして最も好ましくは少なくとも約98パーセントの配列相同性を有していることを典型的には意味する。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。
【0028】
本明細書に用いられる「保存的アミノ酸」という表現は、典型的には、同様の側鎖を有したアミノ酸残基、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、又はイソロイシンを含む脂肪族側鎖を有したアミノ酸のグループ;セリン又はトレオニンを含む脂肪族ヒドロキシル側鎖を有したアミノ酸のグループ;アスパラギン又はグルタミンを含むアミド含有側鎖を有したアミノ酸のグループ;フェニルアラニン、チロシン、又はトリプトファンを含む芳香族側鎖を有したアミノ酸のグループ;リシン、アルギニン、又はヒスチジンを含む塩基性側鎖を有したアミノ酸のグループ;システイン又はメチオニンを含む硫黄含有側鎖を有したアミノ酸のグループ、の可換性を指す。アミノ酸の好ましい保存的置換基には、限定されない例として、バリン/ロイシン/イソロイシン(すなわち、これらの3つのそれぞれが、これらのうちの1つが出現する残基で置換することができる)、フェニルアラニン/チロシン、リシン/アルギニンン、アラニン/バリン、グルタミン酸/アスパラギン酸、及びアスパラギン/グルタミンが挙げられる。
【0029】
本明細書に用いられる「ビヒクル」という用語は、活性薬剤を運ぶために用いられる媒体を指す。本発明のビヒクルには、ポリマー類及び溶媒類といった成分が典型的には含まれる。本明細書で用いられる「有機溶媒」という用語は、別の物質(例えば、ポリマー)を溶解するために用いられる有機化合物(すなわち、炭素原子を含む)を指す。本明細書で用いられる「懸濁ビヒクル」という表現は、例えば、ペプチド粒子(本明細書ではペプチド粒子、ポリペプチド粒子、及びタンパク質粒子は区別なく用いられる)の懸濁製剤を調製するために用いられる溶媒及びポリマーを典型的には指す。本発明のピストンアセンブリーの胴体は一般的には1種又は2種以上のポリマー材料からなり、ピストンアセンブリーと組み合わせて用いられるビヒクルに含まれる有機溶媒中で実質的に耐浸出性である。
【0030】
本明細書で用いられる「相分離」という表現は、懸濁ビヒクルが水性環境に接触する時のような、懸濁ビヒクル中での複数相(例えば、液相又はゲル相)の形成を指す。本発明のいくつかの態様に於いて、懸濁ビヒクルは、約50%未満の水を、好ましくは、約20%未満の水を、更に好ましくは約10%未満の水を有した水性環境と接触すると相分離を示すように配合される。
【0031】
本明細書に用いられる「単相」という表現は、全体にわたって物理的及び化学的に一様である、固体、半固体、又は液体の均一な系を指す。
【0032】
本明細書に用いられる「分散した」という用語は、化合物、例えば、ペプチド粒子を、懸濁ビヒクル中に溶解、分散、懸濁、又はそれ以外の場合分布させることを指す。
【0033】
本明細書に用いられる「化学的に安定」という表現は、脱アミド化(通常加水分解による)、凝集、又は酸化のような化学経路により、定義された期間にわたって許容可能なパーセントの分解産物が製剤中で形成されること指す。
【0034】
本明細書に用いられる「物理的に安定」という表現は、許容可能なパーセントの凝集物(例えば、2量体及び他の高分子量産物)が製剤中で形成されることを指す。更に、物理的に安定な製剤は、典型的にはその物理状態を例えば、液体から固体に、非結晶から結晶形態に変化させず、又は多形状態間で相互に交換しない。
【0035】
本明細書に用いられる「粘性」という用語は、典型的には、本質的に以下のような、ずり速度に対するずり応力の比から決定される値(例えば、Considine,D.M. & Considine,G.D.,Encyclopedia of Chemistry,4th Edition,Van Nostrand,Reinhold,NY,1984を参照)に関する:
【0036】
F/A=μ(V/L) (方程式1)
ただし、F/A=ずり応力(単位面積当たりの力)、
μ=比例定数(粘性)、そして
V/L=層の厚さあたりの速度(ずり速度)
である。
【0037】
この関係から、ずり速度に対するずり応力の比率により粘性が定義される。ずり応力及びずり速度の測定は、選択された条件下(例えば、約37℃の温度で)で行われる平行板レオメトリーを用いて典型的には決定される。粘性の他の測定方法として、粘度計、例えば、Cannon−Fenske粘度計、Ubbelohde粘度計をCannon−Fenske不透明溶液について、又はOstwald粘度計を用いた動粘性率の測定、が挙げられる。一般的には、本発明の懸濁ビヒクルは、その中の懸濁された粒子製剤が保存中に沈殿し、例えば、活性薬剤含有製剤を送達するための移植可能な浸透圧式デリバリーシステムといった送達方法で用いる間に沈殿することを防ぐために十分な粘性を有している。
【0038】
本明細書で用いられる「非水系」という用語は、全体の水分含有量、例えば、製剤の全体の水分含有量が典型的には約10重量パーセント(wt%)、好ましくは、約5wt%未満、より好ましくは、約4wt%未満であることを指す。
【0039】
本明細書で用いられる「有機溶媒中で耐浸出性」という用語は、典型的には、製薬学的用途に許容される量の浸出物が活性薬剤含有製剤中へ生成されることを指す。浸出物の許容可能な量は、一般的に、浸出物の量並びに毒性によって決まり、以下を含むがこれらに限定されない他の要因の決定が含まれる場合もある:浸出物の一日量;投与経路(例えば、経口、吸入、注入、又は移植された装置からの送達);臨床用途か商業用途か;浸出物と活性薬剤、他の装置部品、包装、分析物又は製品の機能との反応性又は干渉。薬学的用途に於いて浸出物の量及びタイプは、典型的には、浸出物に暴露される対象の許容限界内である。本発明のいくつかの態様に於いては、(i)揮発性浸出物の生成(本発明のピストンアセンブリーが有機溶媒に暴露された場合)量は、ポリマー材料が有機溶媒に40℃で約45日間暴露された場合、約1.4μg/ml〜約10μg/ml未満、好ましくは、約1.4μg/ml未満であり、又はポリマー材料が有機溶媒に40℃で約90日間以上暴露された場合、約1.4μg/ml〜約15μg/ml未満、好ましくは、約1.4μg/ml未満であり、(ii)不揮発性浸出物の生成(本発明のピストンアセンブリーが有機溶媒に暴露された場合)量は、ポリマー材料が有機溶媒に40℃で約45日間暴露された場合、約9.0μg/ml〜約15μg/ml未満、好ましくは、約9.0μg/ml未満であり、又はポリマー材料が有機溶媒に40℃で約90日間以上暴露された場合、約9.0μg/ml〜約20μg/ml未満、好ましくは、約9.0μg/ml未満である。
【0040】
本明細書で用いられる「シール部材」、「シール手段」、又は「シール装置」という表現は、一般的には、2つの部品(例えば、チャンバー)間で、部品間の液漏れを防止するために用いられる装置を指す。シール装置は典型的には、可撓性材料からなる。リザーバーの2つのチャンバー間のシール部材は、典型的には水密である。シール装置の限定されない例として、ピストンアセンブリー(例えば、このアセンブリーに於いては、傾斜コイルばねがピストンの縁をリザーバーの内壁に対して偏らせている)、又はリザーバーの管状内腔の内部表面に接触することにより、リザーバーの管状内腔の活性薬剤チャンバーの内容物とリザーバーの管状内腔の浸透剤チャンバーの内容物との間を実質的に分離させる、ピストンアセンブリーの1つ若しくは2つ以上の部品(例えば、O−リング、ガスケット、シール、パッキン等)が挙げられる。シール部材又はシール手段により、異なる領域、すなわちリザーバーのチャンバー内に含まれる2種又は3種以上の液体間は、実質的に分離される。
【0041】
本明細書で用いられる「対象」という用語は、以下に限定されないが、ヒト、並びに、アカゲザル、チンパンジー及び他の類人猿類及びサル種のような非ヒト霊長類を含む他の霊長類;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマのような家畜;イヌ及びネコのような家畜哺乳類;実験動物、例えば、マウス、ネズミ及びモルモットのようなげっ歯類;鳥、例えば、ひな鳥、シチメンチョウ及び他のキジ類の鳥、アヒル、ガチョウ等の、飼い慣らされた鳥、野生の鳥及び猟鳥、を含む脊索動物亜門のいずれかのメンバーを指す。この用語は特定の齢を意味しない。従って、成体及び新生児(新生仔)の双方の個体が含まれることが意図される。
【0042】
本発明の総括
本発明を詳細に記載する前に、以下の細目の使用は本明細書の教示に照らして選択される場合があるため、この発明が、特定のタイプのポリマー材料、ポリマーの特定の原料、特定のポリマー等に限定されないことを理解すべきである。本明細書で用いられる用語法は、本発明の特定の態様を記載する目的のみのものであり、限定することを意図するものではない。
【0043】
ある局面に於いて、本発明は、胴体(例えば、円柱状胴体)を含むピストンアセンブリーを含む、活性薬剤含有製剤を液体環境へ送達するための浸透圧式デリバリーシステムに関する。いくつかの態様に於いて、ピストンアセンブリー又はピストンアセンブリーの部品は有機溶媒中で耐浸出性であるポリマー材料からなる。いくつかの態様に於いて、本発明のピストンアセンブリーは、ピストンアセンブリーとリザーバーの内壁との間の信頼性のあるシール(例えば、水密シール)を提供する。いくつかの態様に於いて、本発明のピストンアセンブリーは、ピストンアセンブリーとリザーバーの内壁との間の信頼性のあるシール(例えば、水密シール)を提供するために2種又は3種以上の材料を含んでよい。
【0044】
ある局面に於いて、本発明は活性薬剤含有製剤を液体環境に送達するための浸透圧式デリバリーシステムに関する。浸透圧式デリバリーシステムは、典型的には、管状内腔を規定するリザーバーのに関し、この場合、リザーバーは管状内腔に活性薬剤含有製剤及び浸透剤含有製剤を含有する。ピストンアセンブリーは、活性薬剤含有製剤を浸透剤含有製剤から分離するために、典型的には管状内腔に位置する。典型的には、ピストンアセンブリーは、ピストンアセンブリーとリザーバーの内壁との間の信頼性のあるシールを提供する。例えば、ピストンアセンブリーは、管状内腔に位置させるために構築され配置された胴体を含み、そして、典型的にはこの胴体は有機溶媒中で耐浸出性であるポリマー材料からなる。この胴体は、リザーバーの壁に対して係合し封着するための手段を更に含み得る。ピストンは、リザーバー内の圧力に応じてリザーバー内で可動性があってもよい。いくつかの態様に於いて、浸透圧式デリバリーシステムは対象内に移植可能であってもよい。リザーバーは例えば、不浸透性材料(例えば、チタン合金)からなる。
【0045】
ピストンアセンブリーは、例えば、管状内腔中に位置するように構築され配置された胴体を含む。本発明のある態様に於いて、ピストンアセンブリーは、例えば、その遠心端にリザーバーの壁に対して係合し封着するための縁を含む円柱状胴体、及び、この遠心端に於いてリザーバーの壁に対して縁を偏らせるために保持されたばね(例えば、傾斜コイルばねのようなラジアルばね)を含み得る。ばねは例えば、非反応性金属からなる。ばねは円柱状胴体の遠心端の空洞に保持されていてよい。このような円柱状胴体は、遠心端に於ける及び/又は円柱状胴体の長さに沿った他の場所に置かれた1つ又は2つ以上の縁を含んでよく、この場合、この縁は、例えば、保持されたばねを用いることによりリザーバーの内壁に対して係合し、封着する。
【0046】
別の態様に於いて、ピストンアセンブリーの胴体は、有機溶媒中で耐浸出性であるポリマー材料からなってよく、1又は2以上のコンセントリック溝を含み、それぞれの溝は前記リザーバーの壁に係合し封着するための手段を提供するエラストマーO−リングを保持するために形成されている。このような1又は2以上のコンセントリック溝は、胴体の1つ又は2つ以上の遠心端に位置し、かつ/又は円柱状胴体の長さに沿った他の場所に置かれ得、この場合、エラストマーO−リングはリザーバーの内壁に対して係合し封着される。
【0047】
好ましい態様に於いて、ピストンアセンブリーの胴体は有機溶媒中で耐浸出性であるポリマー材料からなる。ポリマー材料の限定されない例として、ポリエチレン、ポリアリールエーテルケトン類及び超高分子量ポリエチレン類が挙げられる。有機溶媒は典型的には、対象中で非経口的に用いることが許容される有機溶媒である。有機溶媒の限定されない例としては、ラウリルアルコール、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、乳酸ラウリル、デカノール、乳酸エチルヘキシル、長鎖(炭素数8〜24)脂肪族アルコール類、エステルス類、又はこれらの混合物が挙げられる。本発明の実施で用いられる好ましい有機溶媒は、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、又はこれらの混合物である。ポリマー材料は、40℃で少なくとも45日間、より好ましくは少なくとも90日間有機溶媒に暴露した際、約1.4μg/ml未満の濃度で揮発性浸出物を好ましくは生成する。ポリマー材料は、40℃で少なくとも45日間、より好ましくは少なくとも90日間有機溶媒に暴露した際、約9.0μg/ml未満の濃度で不揮発性浸出物を好ましくは生成する。
【0048】
いくつかの態様に於いて、浸透圧式デリバリーシステムは、例えば、浸透剤含有製剤に隣接したリザーバーの第1の遠心端に位置する半透膜を含むことができる。更に、活性薬剤含有製剤を液体環境へ送達するための開口部を備えた流量調節器は、例えば、活性薬剤含有製剤に隣接したリザーバーの第2の遠心端に位置させることができる。
【0049】
浸透圧式デリバリーシステムの活性薬剤含有製剤は懸濁製剤を含むことができる。懸濁製剤の限定されない例として、粒子製剤及び懸濁ビヒクルの組み合わせが挙げられる。粒子製剤は、選択されたペプチド、例えば、1種又は2種以上のインターフェロン(例えば、αインターフェロン、βインターフェロン、δインターフェロン、γインターフェロン、ωインターフェロン、λインターフェロン、τインターフェロン、又はこれらの組み合わせ)を含むことができる。好ましい態様に於いて、このインターフェロンは、ωインターフェロン又はβインターフェロンであってよい。更に、活性薬剤含有製剤は、インシュリン分泌性ペプチド(例えば、グルカゴン様タンパク質1(GLP−1)又はエキセンディン−4)を含む粒子製剤を含む懸濁製剤を含むことができる。懸濁ビヒクル中で用いられる好ましい有機溶媒は、以下に限定されないが、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、又はこれらの組み合わせが含まれる。
【0050】
本発明の浸透圧式デリバリーシステムのある態様に於いて、活性薬剤含有製剤は、粒子製剤(例えば、ωインターフェロン、スクロース、メチオニン、クエン酸一水和物、及びクエン酸ナトリウムを含む)及び懸濁ビヒクル(例えば、安息香酸ベンジル、及びポリビニルピロリドン(PVP)を含む)を含む懸濁製剤を含む。浸透剤含有製剤は2種の円柱錠剤を含み、それぞれの錠剤は、例えば、塩化ナトリウム塩をセルロース結合剤及びポビドン結合剤と共に含む。ピストンアセンブリーは、その遠心端に、リザーバーの壁に対して係合し封着するための縁を含む円柱状胴体、及び、この遠心端に、リザーバーの壁に対して縁を偏らせるため保持されたばねを含む。ピストンアセンブリーは、超高分子量ポリエチレンを含み、ばねは傾斜コイルばねである。この態様は、(i)浸透剤含有製剤に隣接したリザーバーの第1の遠心端に位置する半透膜(例えば、ポリウレタンからなる)、及び(ii)活性薬剤含有製剤に隣接するリザーバーの第2の遠心端に位置する流量調節器(例えば、ポリエーテルエーテルケトンからなる)を更に含む。更に、この態様は対象に移植可能である。
【0051】
この発明の別の局面は、リザーバー、活性薬剤含有製剤、浸透剤含有製剤、ピストンアセンブリー、半透膜及び流量調節器を含む浸透圧式デリバリーシステムの製造方法に関する。製造方法の段階には、例えば、ピストンアセンブリーが活性薬剤含有製剤を浸透剤含有製剤から分離するために管状内腔に位置し、半透膜が浸透剤含有製剤に隣接するリザーバーの第1の遠心端に位置し、そして流量調節器が活性薬剤含有製剤に隣接するリザーバーの第2の遠心端に位置するように、リザーバー、活性薬剤含有製剤、浸透剤含有製剤、ピストンアセンブリー、半透膜及び流量調節器を組み立てることが含まれる。
【0052】
本発明のある態様は、活性薬剤含有製剤を液体環境に送達するための浸透圧式デリバリーシステムに関する。この浸透圧式デリバリーシステムは、活性薬剤含有製剤及び浸透剤含有製剤を含有する管状内腔を有したリザーバー(例えば、チタン合金からなる)を含む。活性薬剤含有製剤は、(i)粒子製剤(例えば、ωインターフェロン、スクロース、メチオニン、クエン酸一水和物、及びクエン酸ナトリウムを含む)、及び(ii)懸濁ビヒクル(例えば、安息香酸ベンジル及びポリビニルピロリドン(PVP)を含む)を含む懸濁製剤を含む。浸透剤含有製剤は2種の円柱錠剤を含み、それぞれの錠剤は、例えば、塩化ナトリウム塩をセルロース結合剤及びポビドン結合剤と共に含む。管状内腔に位置するピストンアセンブリーは、活性薬剤含有製剤を浸透剤含有製剤から分離し、この場合(i)ピストンアセンブリーは管状内腔に位置するように構築され配置された砂時計形状を有した円柱状胴体を含み、そして(ii)円柱状胴体は超高分子量ポリエチレンを含む。更に、円柱状胴体は、その遠心端に、リザーバーの壁に対して係合し封着するための縁、及び、この遠心端に、リザーバーの壁に対して縁を偏らせるために保持された傾斜コイルばねを有する。この態様は、浸透剤含有製剤に隣接するリザーバーの第1の遠心端に位置する半透膜(例えば、ポリウレタンからなる)、並びに、活性薬剤含有製剤に隣接するリザーバーの第2の遠心端に位置する流量調節器(例えば、ポリエーテルエーテルケトンからなる)を含む。
【0053】
本発明の更なる局面は、本明細書に記載の装置を投与することを含む方法を用いてインターフェロン応答性疾患(例えば、多発性硬化症又はHCV感染のようなウイルス感染)の治療に関する。典型的には、本発明の浸透圧式デリバリーシステムは対象に移植され、治療に有効な割合での活性薬剤(例えば、インターフェロン)の送達が提供される。用いられるインターフェロンは、例えば、αインターフェロン、βインターフェロン、ωインターフェロン、又はこれらの組み合わせである。
【0054】
治療の別の局面は、本明細書に記載の装置を投与することにより糖尿病又は糖尿病関連疾患の治療法に関する。典型的には、本発明の浸透圧式デリバリーシステムは対象に移植され、治療に有効な割合での活性薬剤(例えば、インシュリン分泌性ペプチド)の送達が提供される。
【0055】
更に別の局面に於いては、本発明は、浸透圧式デリバリーシステムのためのリザーバーの管状内腔内に位置させるために適合したピストンアセンブリーに関する。このピストンアセンブリーは典型的には、管状内腔内に位置させるために構築され配置された胴体を含む。胴体は有機溶媒の存在下で耐浸出性であるポリマー材料からなっていてよい。このような溶媒の限定されない例として、安息香酸ベンジル及びベンジルアルコールが挙げられる。この胴体は、リザーバーの壁に対して係合し封着するための装置又は手段を更に含む。
【0056】
いくつかの態様に於いて、胴体はリザーバーの壁に対して係合し封着するための装置又は手段を含む円柱状胴体であってよく、例えば、この場合、この装置又は手段は、円柱状胴体の遠心端に、リザーバーの壁に対して係合し封着するための縁、及び、この遠心端に、リザーバーの壁に対して縁を偏らせるために保持されたばねを含む。このばねは、例えば、非反応性金属からなる傾斜コイルばねであってよい。
【0057】
別の態様に於いて、ピストンアセンブリーは、1又は2以上のコンセントリック溝を含む胴体を含んでよい。それぞれの溝は、リザーバーの壁に対して係合し封着するための手段を提供するエラストマーO−リングを保持するために形成されてよい。
【0058】
ピストンアセンブリーの胴体のためのポリマー材料の限定されない例として、ポリエチレン、ポリアリールエーテルケトン類及び超高分子量ポリエチレン類が挙げられる。ポリマー材料は、40℃で少なくとも約45日間、より好ましくは少なくとも約90日間有機溶媒に暴露された場合、約1.4μg/ml未満の濃度で揮発性浸出物を生成することが好ましい。ポリマー材料は、40℃で少なくとも約45日間、より好ましくは少なくとも約90日間有機溶媒に暴露された場合、約9.0μg/ml未満の濃度で不揮発性浸出物を生成することが好ましい。
【0059】
本発明のこれらの局面及び態様は、例えば、添付の図面に説明されるように、2、3の好ましい態様を参照し詳細に記載されている。本明細書の以下に於いて、いくつかの好ましい態様を記載する際、本発明の完全な理解を提供するため、数多くの詳細な具体例が示される。しかし、本発明が、これらの詳細な具体例のいくつか又はすべてがない状態で実施することができることは当業者にとって自明であろう。他の例では、周知の特徴及び/又は工程段階は、本発明が不必要に不明瞭とならないように、詳細には記載されていない。更に、類似した又は同一の参照番号は、共通の又は同様の要素を特定するために用いられる。
【0060】
3.0.0 例示的な浸透圧式デリバリーシステムの部品
図1はピストンアセンブリーを含む浸透圧式デリバリーシステムの例の断面図である。
【0061】
図1は、管状内腔104と共にリザーバー102を有した浸透圧式デリバリーシステム100を表す。ピストンアセンブリー200は管状内腔104に位置している。ピストンアセンブリー200は管状内腔104を2つのチャンバー108、110に分割する。ある実施例に於いて、チャンバー108は活性薬剤含有製剤112を含み、チャンバー110は浸透剤含有製剤114を含む。半透膜116は、リザーバー102の遠心端118に、浸透剤含有製剤114を含むチャンバー110に隣接して位置する。流量調節器120は、リザーバー102の遠心端122に、活性薬剤含有製剤112を含む、チャンバー108に隣接して位置する。流量調節器120は、送達開口部124を含む。流量調節器120は、送達開口部を有したいかなる適切なフロー装置であってもよい。別の場合、リザーバー102の遠心端122は端部が閉鎖されていてよく、送達開口部を含んでいてよい。
【0062】
液体は半透膜116を通ってチャンバー110に吸収される。活性薬剤含有製剤112は、流量調節器120中の送達開口部124を通ってチャンバー108から分配される。ピストンアセンブリー200はリザーバー102の壁126に対して係合し封着し、これにより浸透剤含有製剤114及び半透膜116を通って吸収された液体が活性薬剤含有製剤112から分離される。定常状態では、活性薬剤含有製剤112は、外部の液体が半透膜116を通ってチャンバー110内に吸収される速度に対応する速度で、流量調節器120中の送達開口部124を通って排出される。
【0063】
3.1.0 ピストンアセンブリー
ピストンアセンブリー(例えば、200、図1)は、好ましい態様に於いては、例えば、活性薬剤含有製剤(例えば、112、図1)中に存在する有機溶媒に対して実質的に耐浸出性である材料からなる。有機溶媒に対するピストンアセンブリーの耐性とは、ピストンアセンブリーが有機溶媒に暴露された場合、最小限の浸出物しかなく、寸法変化、膨張、変形及び分解が最小限しかないか、存在しないことを意味する。本発明の実施に有用な有機溶媒の限定されない例として、非経口的に許容される有機溶媒、例えば、ラウリルアルコール、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、乳酸ラウリル、デカノール(デシルアルコールとも呼ばれる)、乳酸エチルヘキシル、長鎖(炭素数8〜24)脂肪族アルコール類、エステル類、又はこれらの混合物が挙げられる。ある態様に於いて、ピストンアセンブリー200は、安息香酸ベンジルに対して耐浸出性である材料からなる。別の態様に於いて、ピストンアセンブリーは、ベンジルアルコールに対して耐浸出性である材料からなる。
【0064】
図2Aは、ピストンアセンブリーの実施例の断面図である。ピストンアセンブリー200は、そこを液が流れない胴体(例えば、円柱状胴体202)を含む。円柱状胴体202の第1の遠心端203は、同心に配置された内部のリッジ204及び外部の縁206を含む。空洞208は、リッジ204と縁206との間に形成される。空洞208は、実質的に環状形状であり、連続的又はセグメント化されていてよい。少なくとも1つのばね210が、空洞208に位置している。
【0065】
ばね210は、縁206に半径方向力を加え、縁206を外側に偏らせる。半径方向力が縁206の周縁に一様に加えられることが好ましい。ある実施例に於いて、ばね210は、例えば、Bal Seal Engineering(Foothill Ranch、CA)から入手可能な傾斜コイルばねである。傾斜コイルばねは、傾いた(すなわち、傾斜した)楕円コイルを備えた円筒コイルばねとして記載されている場合がある。このコイルは圧縮されると独立してたわむ。コイルのいずれかの部分がたわむ度にばね全体が反応し、コイルばねと表面とのそれぞれの接触点に半径方向力が均一に加えられることが可能である。傾斜コイルばねは、従来記載されている(例えば、米国特許第4,655,462号;米国特許第4,826,144号;米国特許第4,830,344号;米国特許第4,876,781号;米国特許第4,893,795号;米国特許第4,907,788号;米国特許第4,915,366号;米国特許第4,934,666号;米国特許第4,961,253号;米国特許第4,964,204号;米国特許第4,974,821号;米国特許第5,072,070号;米国特許第5,079,388号;米国特許第5,108,078号;米国特許第5,117,066号;米国特許第5,134,244号;米国特許第5,160,122号;米国特許第5,161,806号;及び米国特許第5,203,849号を参照されたい)。しかし、本発明は傾斜コイルばねの使用に限定されない。縁206が外方向に偏るような半径方向力を縁206に及ぼすことが可能ないずれのばね(例えば、ラジアルばね)又はばね様手段も、空洞208に位置することができる。
【0066】
ピストン200が管状内腔(図1中の104)に位置する場合、ばね210は、縁206をリザーバー(図1中の102)の内壁(図1中の126)に対して偏らせ、これにより、縁206とリザーバーの内壁との間のシールが維持される。ばね210により、円柱状胴体202が時間の経過につれてクリープを起こす場合であっても、長期間にわたって実質的に一定のシール力が与えられる。ばね210の力は、浸透圧式デリバリーシステム(図1中の100)の作動中、ピストンアセンブリー200とリザーバーの内壁との間でシールが維持されるように選択することができる。リッジ204はリップ(lip)212を含むことができ、このリップ212は、空洞208中のばね210を保持するのに役立つように、空洞208を部分的に囲い込むか、又は部分的に覆う。
【0067】
ピストン200の別の実施例に於いて、図2Bに例示するように、第1の遠心端203の反対にある、円柱状胴体202の第2の遠心端は、縁206、空洞208、及びリッジ204、並びに第1の遠心端203の上述の他の特徴(例えば、リップ212)をも含んでよい。
【0068】
円柱状胴体202の外部表面218は、図2Aに例示するように滑らかであってよい。別の場合、図2Bに例示するように、アンダーカット220及び/又はリブ222を円柱状胴体202の外部表面218上に形成することができ、ピストンアセンブリー200がリザーバーの管状内腔(図1中の104)に位置する場合、円柱状胴体202とリザーバー(図1中の102)の内壁(図1中の126)との間のシールが更に高められる。円柱状胴体202の断面形状は同一であるか、円柱状胴体202の長さに沿って変化してよい。例えば、アンダーカット220が円柱状胴体202上に形成される場合、アンダーカット部分220の断面形状はリブ部分222の断面形状と異なってよい。円柱状胴体202の断面形状は円、楕円、又は他の適切な形状であってよい。好ましくは、縁206の外側の(周囲の)輪郭は、リザーバーの管状内腔の内側の(周囲の)輪郭と一致する。従って、管状内腔が円形の輪郭を有する場合、縁206もまた円形の輪郭を有することが好ましいであろう。好ましくは、縁206の外径は、管状内腔に挿入された場合、縁206がリザーバーの壁に係合するように選択され、例えば、活性薬剤含有製剤112(図1中)を含む図1中のチャンバー108と、浸透剤含有製剤114(図1中)を含む図1中のチャンバー110との間で液が貫流することを防ぐ。
【0069】
円柱状胴体202は、有機溶媒、例えば、懸濁ビヒクルの剤形に用いられる有機溶媒に暴露した場合、実質的に不浸透性かつ実質的に耐浸出性であるポリマー材料からなることが好ましい。ある態様に於いて、円柱状胴体202に適したポリマー材料は、有機溶媒に40℃で約45日間、及び約90日間暴露した場合、揮発性浸出物及び不揮発性浸出物をそれぞれ約1.4μg/ml未満及び約9μg/ml未満生成する。好ましくは、ピストンアセンブリーの完全性及び性能が、意図された保存期間及び使用期間の間実質的に悪影響を受けないような最小限の浸出物しか、保存及び使用の過程で生じない。許容される浸出物の量は、例えば、浸出物の毒性及び以下を含むがこれらに限定されない他の要因に依存して決定することができる:浸出物の一日量;投与経路(例えば、経口、吸入、注入、又は移植された装置からの送達);臨床用途か商業用途か;浸出物と活性薬剤、他の装置部品、包装、分析物又は浸透圧式デリバリーシステムの機能との反応性又は干渉。ある態様に於いて、円柱状胴体202に用いられるポリマー材料は、ラウリルアルコール、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、乳酸ラウリル、デカノール(デシルアルコールとも呼ばれる)、乳酸エチルヘキシル、及び長鎖(炭素数8〜24)脂肪族アルコール類、エステル類、又はこれらの混合物を含む群から選択されるがこれらに限定されない有機溶媒の存在下で耐浸出性である。好ましい態様に於いて、ピストンアセンブリーの胴体(例えば、円柱状胴体202、図1)に用いられるポリマー材料は、安息香酸ベンジル及び/又はベンジルアルコールの存在下で耐浸出性である。
【0070】
本発明のある態様に於いて、ピストンアセンブリーの胴体は図2Bに示される形状と類似し、それは円柱状であるが、むしろ砂時計形状を有する(すなわち、ピストンの遠心端付近に於いて管状内腔の内部表面で接触するのみである)。一般的に、ピストンの胴体は円柱状(すなわち、円柱様)であるが、本明細書の教示を鑑み、当業者は、例えば、活性薬剤含有製剤112(図1中)を含む図1中のチャンバー108と、浸透剤含有製剤114(図1中)を含む図1中のチャンバー110との間で貫流することを防ぐために効果的な他の形状を選択することができる。ピストンアセンブリーのコアは超高分子量ポリエチレンであってよく、傾斜コイルばねはチタン合金からなってよい。ピストンアセンブリーの胴体は、アセンブリーの少なくとも一部が管状内腔の内部表面に接触し、リザーバーの管状内腔の活性薬剤チャンバーの内容物と浸透剤チャンバーの内容物との間が実質的に分離されるようないずれの形態をもとることができる。
【0071】
ピストンアセンブリーの胴体を作成するために適したポリマーの例として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ポリエチレン;ポリアリールエーテルケトン類(例えば、ポリエーテルケトン及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK));及び超高分子量ポリエチレン。有用なポリマーの他の例として以下が挙げられるがこれらに限定されない:パーフルオロ化(perfluoronated)エラストマー類及びポリマー類(例えば、広範囲の耐薬品性を備え、エラストマーの弾性及びシール力を、例えば、CHEMRAZ(登録商標)(Greene,Tweed of Delaware,Inc.,Wilmington DE)材料として入手可能なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の耐薬品性に近い耐薬品性と兼ね備える、エラストマー材料);ポリイミド類;及びポリスルホン類。好ましい態様に於いて、ポリマー材料は、管状内腔の内壁を含む材料と比較して多少の自然な潤滑能力を有する。ポリマー材料は、湿潤となった時に、リザーバーの壁に密着するものであってよい。円柱状胴体202に保持されたばね210は金属材料からなっていてよい。この金属材料は非反応性(又は不活性)かつ生体適合性である。ばね210に用いられる材料は、以下で更に記載されるであろう浸透圧式デリバリーシステムのリザーバー(図1中の102)に用いられる材料と類似していてよい。別の場合、ピストンと管状内腔の内壁との間のシール(例えば、水密シール)を提供する他の手段を用いることもでき、それらのいくつかは、以下本明細書で更に論じられる。
【0072】
ピストンアセンブリーを作成するためにポリマー材料の固いコアを使用することに加え、異なるコア基材上にこれらの耐溶媒性ポリマー類の1種又は2種以上による厚い不浸透性コーティングが用いられてもよい。
【0073】
更に、ピストンの例示的な形状は円柱として記載されるが、ピストンアセンブリーの形状は円柱形状と異なってよい(例えば、ピストンは管状内腔の遠心端に近い内部表面と接触する砂時計形状を有してよい)。ピストンアセンブリーの形状は、典型的には、ピストンアセンブリーが管状内腔の内部表面に接触することにより(i)管状内腔の活性薬剤チャンバーと浸透剤チャンバーとの間が分離され(ii)それらの間に液が流れることを防止されるようなものである。好ましい態様に於いては、ピストンアセンブリーは、管状内腔の活性薬剤チャンバーと浸透剤チャンバーとの間の液体のやりとりを実質的に防ぐ。
【0074】
ある局面に於いて、本発明のピストンアセンブリーは、1つ又は2つ以上の部品又は材料を含み、この場合、ピストンは活性薬剤含有製剤を浸透エンジンから効果的に分離する。複数の材料又は複数の部品を用いてピストンを構築することにより、それぞれの材料又は部品は1つ又は2つ以上の利点が提供されるように選択することができる。例えば、ポリエチレン(例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE))及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のような熱可塑性の物質は、薬学的応用に典型的に用いられる化学物質に対して広範囲の耐性を有する;しかし、このような熱可塑性の物質は、リザーバーの内壁に対して緊密なシールを形成するために必要とされる弾性を典型的には有しない。しかし、1つ又は2つ以上の縁/ばね、ばね、O−リング、ガスケット、シール、パッキン等のシール手段がピストンアセンブリーの熱可塑性材料又は部品と共に用いられる場合、リザーバーの内壁に対する許容されるシールが形成される。傾斜コイルばねを用いた態様は上述されている。
【0075】
エラストマー類、例えば、パーフルオロエラストマーは、典型的には広範囲の耐薬品性を有するが、一体化されたピストンに成型することは困難でありかつコストがかかる場合がある。しかし、薄いパーフルオロエラストマーのO−リング、ガスケット、又はコーティングを固いコア材料(例えば、熱可塑性の物質、セラミック、金属)に据え付けるか又は施してもよく、これにより許容されるピストンのシールが形成される。このような組合せ(又は複合体)ピストンは、単一の材料又は単一の部品のピストンの使用に典型的には関連するいくつかの問題を解決する助けとなりうる。例えば、いくつかの単一材料は、薬学的応用に用いることができる化学物質に対する広範囲の耐性を有しているが、これらを単一材料のピストンを作成する際に用いる場合、これらはリザーバーの内壁に対する緊密なシールを形成するために必要とされる弾性を典型的には有しない。また、リザーバーの内壁に対する緊密なシールを形成するために有用ないくつかのエラストマーは非常に高価であり(例えば、パーフルオロエラストマー)、完全なピストンに成型することは困難である。本明細書に於いて論じられるように、O−リング等はこのようなエラストマーから形成することができ、これにより、このようなエラストマーから完全なピストンを成型する必要が回避され生産コストも減少する。従って、本発明のピストンアセンブリーは、2つ若しくは3つ以上の部品及び/又は2つ若しくは3つ以上の材料を含み、これにより、賦形剤、ビヒクル、浸透圧式システム、及び製剤原料とのより広範囲な化学的適合性が提供される。
【0076】
従って、ある局面に於いて、本発明は2種又は3種以上の液体を分離するために用いられるドラッグデリバリー装置に於けるピストンアセンブリー又はシールに関する。このピストンアセンブリー又はシールは、これらに限定されないが以下の分野:化学的適合性、生体適合性、コスト、強度、システムの始動、圧縮永久ひずみ耐性(貯蔵性)、及び部品の複雑さ(part complexity)に於いて、単一の材料又は部品から作製されるピストンアセンブリーと比べて優れた有用性を与えられる2つ又は3つ以上の材料及び/又は部品から作製することができる。複合体ピストンアセンブリーは、単一部品又は単一材料のピストンと同様又は類似したやり方で洗浄、潤滑、及び据え付けることができる。
【0077】
本発明のある態様は、図2A及び図2Bに示されるように、熱可塑性コアの薄いフランジ又はリップにシール力を供給する傾斜金属ばねを含む空洞を備えた熱可塑性コアピースを含む。この種のデザインには、複数のばねシールが含まれてもよく、どちらかの端が製剤と接触するように据え付けられてもよい。この熱可塑性コアは、優れた化学的適合性及び生物学的適合性、強度を有し、(非圧縮性であること)により優れたシステム始動送達が与えられる。この態様は、より詳しく本明細書に上記されている。
【0078】
本発明の別の局面は、コア(例えば、熱可塑性コア)を、エラストマーO−リング又はガスケットを受け入れる1つ又は2つ以上のコンセントリックな筋、溝又はグランド(すなわち、グランドとは溝の空隙である)と共に含む。このO−リング又はガスケットにより、リザーバーの管状内腔の内壁とのシールが与えられる。このようなピストンアセンブリーの2つの例が図4A、図4B及び図4Cに示される。図4Aを参照すると、2つのエラストマーO−リング402及び404が示されている。ピストンアセンブリー400の胴体は、例えば、熱可塑性の物質(例えば、PEEK又はUHMWPE)又はチタン合金コアである。O−リング402及び404は同じ材料からなるか、異なる材料からなってよい。ある態様に於いて、有機溶媒を含むリザーバーチャンバーに関連するシールを形成するO−リングは、この溶媒による損傷又は分解に対する耐性のある材料からなってよい。例えば、O−リング402はパーフルオロエラストマーからなっていてよい。浸透剤を含むリザーバーチャンバーに関連するシールを形成する第2のO−リング404は、異なる材料、例えば、フルオロエラストマー又は他のエラストマーからなってよい。図4Bは、図4Aに示されるピストンアセンブリーの概略図を表す。O−リング402及び404、並びに胴体400に加え、図4Bは、O−リングが据えられたピストンアセンブリーの胴体により形成される溝又はグランド406を例示する。
【0079】
複数のO−リングを備えた別のピストンアセンブリーは図4Cに例示される。図4Cに於いて、3つのO−リング402及び404が示される。上記のように、3つのO−リングはすべて同一又は類似した材料からなるか、又はO−リングは種々の材料からなっていてよい。例えば、ある態様に於いて、有機溶媒を含むリザーバーチャンバーに関連するシールを形成するO−リングは、この溶媒による損傷又は分解に対して耐性のある材料からなっていてよい。例えば、O−リング402はパーフルオロエラストマーからなっていてよい。浸透剤を含むリザーバーチャンバーに関連するシールを形成する第2及び第3のO−リング404は異なる材料、例えば、フルオロエラストマー又は他のエラストマーからなっていてよい。ピストンアセンブリー400の胴体は本明細書に記載の種々の材料からなっていてよく、また、実質的な円柱状胴体を含むがこれに限定されない数多くの適切な形状を取ってよい。
【0080】
熱可塑性コアは優れた化学的適合性及び生物学的適合性を与え、また、(非圧縮性であること)により、優れたシステム始動送達が与えられる。エラストマーO−リング又はガスケットは、コストを低く保つために小さくてもよく(例えば、パーフルオロエラストマー)、又は、異なる組成のO−リング若しくはガスケットは、分離されている液体が異なる溶媒和力を有する場合(例えば、飽和食塩溶液対有機溶媒薬剤懸濁液)、同一のピストン上に用いることができる。エラストマーシールは、例えば、グランド内に据え付けられる別々の部品であってよく、又は、これらのシールはオーバーモールド又は接着工程により、熱可塑性コアに取り付けることができる。
【0081】
本発明のある態様は、ピストンアセンブリーと接触する有機溶媒成分の観点からピストンアセンブリーを作製するための材料を注意深く選択することによりピストンアセンブリーから生成する浸出物量の制御能力である。他の態様に於いては、本発明のピストンアセンブリーは、多種多様な医薬品賦形剤に有用であり、以前用いられていたピストンアセンブリーに対していくつかの一般的な利点を提供する。例えば、2種又は3種以上の材料は、ピストンアセンブリー及びリザーバーの内壁との間に信頼性のあるシール(例えば、水密シール)を提供するために用いることができ、2種又は3種以上の材料を用いることにより、ピストンアセンブリーをより容易に製造することが可能となり、コストを節約することもできる。更に、本発明のピストンアセンブリーにより、長期間、例えば、約45日以上、好ましくは、約90日以上、より好ましくは、約180日以上、より好ましくは、約365日以上、ピストン及び浸透圧式デリバリーシステムの作動が許容可能となる。更に、本発明のピストンアセンブリーは、有機溶媒と組み合わせて用いた場合、揮発性及び不揮発性浸出物を、医薬的に許容される低レベルで又はそれ未満で生成する。
【0082】
本明細書に記載のピストンアセンブリーは、例えば、DUROS(登録商標)(ALZA Corporation,Palo Alto CA)デリバリーシステムのような浸透圧式デリバリーシステム又は類似したシステム(例えば、米国特許第5,728,396号;米国特許第5,985,305号;米国特許第5,997,527号;米国特許第6,113,938号;米国特許第6,132,420号;米国特許第6,156,331号;米国特許第6,217,906号;米国特許第6,261,584号;米国特許第6,270,787号;米国特許第6,287,295号;米国特許第6,395,292号;米国特許第6,508,808号;米国特許第6,544,252号;米国特許第6,635,268号;米国特許第6,682,522号;米国特許第6,923,800号;米国特許第6,939,556号;米国特許第6,976,981号;米国特許第6,997,922号;米国特許第7,014,636号;米国特許第7,112,335号;米国特許第7,163,688号を参照)。
【0083】
DUROS(登録商標)装置は、浸透圧の原理に基づき、所定の割合で活性薬剤を放出する。細胞外液(例えば、対象中に、装置が、例えば、移植により置かれた、液体環境由来のもの)は、半透膜を通ってDUROS(登録商標)装置に入り、拡大することによりゆっくり一様な送達速度でピストンを駆動させるソルトエンジン(salt engine)内に直接入る。ピストンの動作により、製剤は、開口部又は出口を通って強制的に放出される。
【0084】
移植可能な装置、例えば、DUROS(登録商標)により、懸濁製剤の投与について以下の利点が提供される:薬物動態学的に真に0オーダーの活性薬剤の放出;長期の放出時間(例えば、最長約12カ月);及び、活性薬剤の信頼性のある送達及び投薬。
【0085】
3.2.0 半透膜
リザーバー(例えば、図1中の102)は、体に移植されるような大きさであってよい。遠心端(例えば、図1の118)は開口していてよく、半透膜(例えば、図1の116)はこの開口した遠心端(例えば、図1の118)に挿入されるプラグとして提供されてよい。このようなプラグは、例えば、圧入又はねじ山様の手段を用いることにより挿入されてよい。別の場合、半透膜(例えば、図1の116)はリザーバー(図1の102)の遠心端(例えば、図1の118)と一体であってよい。
【0086】
プラグとしての半透膜のある態様に於いて、半透膜116は、リザーバー102の遠心端118を係合する留め具としての役割を果たす増大した部分116aを含んでよい。半透膜116の外部表面116bは、リザーバー102の壁126と係合するリブ116cを有してよく、これにより半透膜116はリザーバー102に固定され、リザーバー102と半透膜116との間にシールを形成することができる。リザーバー102の壁126は、半透膜116上のリブ116cと係合するアンダーカットをも含んでよい。半透膜116は、1方向バルブとしての役割を果たし、チャンバー110から外部液体環境に流れ出ることを防ぐ一方、外部液体環境からチャンバー110に流れることを可能にする。
【0087】
半透膜に適した半透性の材料(例えば、図1の116)は、湿潤となった時にリザーバー(例えば、図1の102)の管状内腔(例えば、図1の104)の形状と一致することができるものである。好ましくは、これらの材料は、湿潤となった時にリザーバー(例えば、図1の102)の壁(例えば、図1の126)に密着することもでき、これにより壁(例えば、図1の126)と半透膜(例えば、図1の116)との間のシールが与えられ又は維持される。典型的には、これらの半透性の材料はポリマー材料であり、これらは膜の浸透性及びシステム構成の要求に基づき選択することができる。適切な半透性の材料の限定されない例として、可塑化されたセルロース系材料;ヒドロキシルエチルメタクリレート(HEMA)のような強化ポリメチルメタクリレート類(PMMA);並びに、ポリウレタン類及びポリアミド類、ポリエーテル−ポリアミド共重合体類、熱可塑性コポリエステル類のようなエラストマー材料等が挙げられる。
【0088】
一般的に、選択された期間所望の割合で活性薬剤が送達可能なように決定された割合で浸透剤が拡大するような、浸透圧式デリバリーシステムの管状内腔への水溶液の適切な流入を提供するために、ポリマー材料の膜透過性の範囲が選択される。表1は150μl名目容積の浸透圧式デリバリーシステムのための膜についての水の浸透性範囲の例を表す。
【0089】
【表1】

【0090】
半透膜材料は、例えば、ポリマー材料の平衡水吸収パーセント及び/又はポリマー材料の動的透水率を基に、典型的には選択される。
【0091】
本発明のある態様に於いて、この半透膜は、名目平衡水吸収が33%である脂肪族のポリエーテル系ポリウレタンである。熱可塑性ポリウレタンは射出成形されてよく、4つの逆とげのあるコンセントリックリブ、及び留め具としての役割を果たす増大した部分(例えば、図1、116a)を備えた膜が形成される。
【0092】
3.3.0 浸透剤
浸透剤(又は水膨潤剤)含有製剤(例えば、図1、チャンバー110中)は、その高い浸透圧及び高い溶解性により、半透膜から入った水の中で飽和溶液にとどまる一方、長期にわたって活性薬剤が推進される、組織耐性の製剤であることが好ましい。浸透剤は、少なくとも、記載されている期間より長い期間、患者内に残された移植された装置からの不慮の投薬を許容するようなポンピング速度や仮定上もたらされる濃度における皮下組織の耐容性に基づいて好ましくは選択される。好ましい態様に於いては、浸透剤は、通常の操作条件の下では、容易に感知できる程のいずれの量(例えば、約10%未満、より好ましくは、約8%未満、より好ましくは、約6%未満)もピストンアセンブリーを通って拡散又は浸透することはない。
【0093】
浸透剤含有製剤は図1、114に示されるように、例えば、錠剤形状であってよい。1つ又は2つ以上の錠剤を用いてよい。別の場合、浸透剤含有製剤は他の形、材質、密度、又は粘性を有していてよい。例えば、浸透剤含有製剤は、スラリー、錠剤、成形材料若しくは押出材料、粉末状若しくは粒状、又は当該分野で公知の他の形状であってよい。浸透剤含有製剤は1種又は2種以上の浸透性ポリマー類を含んでよい。浸透性ポリマーは、液体(例えば、生体液又は水)を吸収することができる親水性ポリマーであり、液体を吸収すると平衡状態まで拡大し、吸収した液体のかなりの部分を保持する。浸透性ポリマーは非常に高度に、例えば、最初の体積の約2倍から約50倍に拡大することができる。浸透性ポリマーは架橋していてもしていなくてもよい。好ましい浸透性ポリマー類は、軽度に架橋された親水性ポリマー類であり、このような架橋は、共有結合若しくはイオン結合又は膨張後の残基の結晶領域により形成される。浸透性ポリマー類は、例えば、植物、動物又は合成起源のものであってよい。
【0094】
浸透剤含有製剤(例えば、図1、114)中に用いるのに適した浸透性ポリマー類の限定されない例として、分子量30,000〜5,000,000のポリ(ヒドロキシ−アルキルメタクリレート);分子量10,000〜360,000のポリビニルピロリドン(PVP);アニオンハイドロゲル及びカチオンハイドロゲル;高分子電解質複合体;アセテート残基が少なく、グリオキサール、ホルムアルデヒド、又はグルタルアルデヒドで架橋され、重合度が200〜30,000であるポリビニルアルコール;メチルセルロース、架橋された寒天及びカルボキシメチルセルロースの混合物;ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物;ヒドロキシプロピルエチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム;カルボキシメチルセルロースカリウム;無水マレイン酸のモル当たり共重合体当たり0.001〜約0.5モルの飽和した架橋剤と架橋された無水マレイン酸と、スチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン又はイソブチレンとの細かく分割された共重合体の分散体から形成された不水溶性、水膨潤性共重合体;N−ビニルラクタム類の水膨潤性ポリマー類;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンゲル;ポリオキシブチレン−ポリエチレンブロック共重合体ゲル;イナゴマメガム;ポリアクリル酸ゲル;ポリエステルゲル;ポリ尿素ゲル;ポリエーテルゲル;ポリアミドゲル;ポリペプチドゲル類;ポリアミノ酸ゲル類;ポリセルロースゲル;ポリガムゲル(polygum gel);並びに、ガラス状のハイドロゲルを通過し、そのガラス温度を下げる水を吸収し吸い込む、初期乾燥ハイドロゲルが挙げられる。
【0095】
浸透性ポリマー類の他の限定されない例として、以下が挙げられる:ハイドロゲルを形成するポリマー類、例えば、酸性カルボキシポリマーであり、アクリル酸のポリマーであり、そしてポリアリルスクロースと架橋された、カルボキシポリメチレン及びカルボキシビニルポリマーとしても知られる、分子量250,000〜4,000,000のCARBOPOL(登録商標)(Noveon,Inc.,Cleveland OH);シアナマー(cynamer)ポリアクリルアミド類;架橋された水膨潤性インデン−無水マレイン酸ポリマー類;分子量80,000〜200,000のGOOD−RITE(登録商標)(Noveon,Inc.,Cleveland OH)ポリアクリル酸;分子量100,000〜5,000,000以上のPOLYOX(登録商標)(Union Carbide Chemicals & Plastics Technology Corporation,Danbury CT)ポリエチレンオキシドポリマー;澱粉グラフト共重合体類;ジエステルで架橋されたポリグルラン(polygluran)のような縮合したグルコース単位より構成されるアクリレートポリマー多糖類等。
【0096】
浸透剤含有製剤は、上記の浸透性ポリマーに加えて、又は上記の浸透性ポリマーの代わりに、浸透に有効な溶質を含むことができる。浸透に有効な溶質には、浸透圧式デリバリーシステムが液体環境に置かれた際、半透膜にわたって浸透圧勾配を示すことができる無機化合物及び有機化合物が挙げられる。浸透剤含有製剤(例えば、図1、114)中の浸透に有効な溶質は、半透膜(例えば、図1、116)を介してチャンバー(例えば、図1、110)中に液体を吸収し、これにより液圧が利用可能となり、ピストンアセンブリー(例えば、図1、200)が移動し、流量調節器(例えば、図1、120)により送達開口部(例えば、図1、124)を介して活性薬剤含有製剤が押される。浸透剤含有製剤で有用な、浸透に有効な溶質又はオスマジェント(osmagent)(すなわち、水溶性であり、水の浸透圧流入を駆動する浸透勾配を形成する不揮発性種)の限定されない例として、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、d−マンニトール、尿素、イノシトール、コハク酸マグネシウム、酒石酸、イノシトール、炭水化物類、並びに種々の単糖類、オリゴ糖類及び多糖類、例えば、スクロース、グルコース、ラクトース、フルクトース、ラフィノース及びデキストラン、並びにこれらの多様な種のいずれかの混合物が挙げられる。
【0097】
適切な錠剤化剤(潤滑剤及び結合剤;例えば、セルロース結合剤及びポビドン結合剤)、及び粘性改良剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムを有した塩化ナトリウム(NaCl)のような浸透剤が好ましい浸透剤である。水膨潤剤として有用な他の浸透剤として、オスモポリマー(Osmopolymer)及びオスマジェントが含まれ、例えば、米国特許第5,413,572号に記載されている。液体添加物若しくはゲル添加物又は充填剤は、浸透圧エンジンの周りの空間から空気を除外するために、チャンバー20に加えることができる。装置から空気を除外するとういことは、注入速度が名目外圧変化(例えば、±7p.s.i.(±5a.t.m))の影響を比較的受けないであろうということを一般的に意味する。
【0098】
浸透錠剤とは、活性薬剤の流れを駆動するために用いられる液体吸引剤である浸透剤である。浸透剤はオスマジェント、オスモポリマー、又はこの2種の混合物である。オスマジェント(すなわち、水溶性であり、水の浸透圧流入を駆動する浸透勾配を形成する不揮発性種)の範疇に入る種は多種多様である。このようなオスマジェントの例は、当該分野に於いて周知であり、本明細書で上記に挙げたものを含む。図1中の浸透剤114は、浸透錠剤として例示される。浸透錠剤は、例えば、塩化ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、ステアリン酸マグネシウム、及び注入のための水を含む。
【0099】
浸透剤は、種々の技法により製造することができ、その多くは当該分野で公知である(例えば、米国特許第6,923,800号及び第6,287,295号)。このような技法のひとつに於いて、浸透圧的に活性な薬剤は、固体又は半固体の製剤として調製され、その寸法がそれぞれのチャンバーの内部寸法に比べてわずかに小さいペレット又は錠剤へと圧縮成形されることにより、これらの製剤によりこの囲壁内が占められるであろう。それぞれの成分を細かい粒径とし、極めて均一な混合物とするための、ボールミル粉砕、カレンダリング、攪拌又はロール練りのような工程によるペレットの形成の前に、含まれてよい薬剤及び他の固体成分は、用いられる材料の特性に依存して、処理されてよい。浸透剤を圧縮成形して錠剤又はペレットとするための囲壁は、型を使用することにより、型の構成に依存して、型の上又は型の内側のいずれかに材料を入れることで、壁形成材料から形成することができる。
【0100】
3.4.0 活性薬剤
活性薬剤含有製剤(例えば、図1、112)は、1種又は2種以上の活性薬剤を含んでよい。活性薬剤は、いずれの生理活性物質又は薬理活性物質であってもよく、特に、ヒト又は動物の体に送達されるものとして知られる、医薬、ビタミン、栄養等であってよい。本発明の浸透圧式デリバリーシステムにより送達することのできる活性薬剤として、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、血管系、シナプス部位、神経効果器接合部、内分泌系及びホルモン系、免疫系、生殖器系、骨格系、局所ホルモン系、消化器系、排出系、ヒスタミン系又は中枢神経系に作用する薬物が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。更に、本発明の浸透圧式デリバリーシステムにより送達することのできる活性薬剤としては、感染症、慢性疼痛、糖尿病、自己免疫疾患、内分泌疾患、代謝疾患及びリウマチ学的疾患の治療に用いられる活性薬剤が挙げられるがこれらに限定されるわけではない。
【0101】
適切な活性薬剤には、限定されないものとして、以下が挙げられる:ペプチド、タンパク質、ポリペプチド(例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン)、ポリヌクレオチド、核タンパク質、多糖類、糖タンパク質、リポタンパク質、ステロイド、鎮痛薬、局所麻酔薬、抗生物質製剤、抗炎症性コルチコステロイド、眼の薬、製薬学的用途(例えば、リバビリン)の他の小分子、又はこれらの種の合成類似体、並びにこれらの混合物。好ましい活性薬剤としては、巨大分子(例えば、ペプチド、タンパク質及びポリペプチド)、又は非常に強力な活性薬剤が挙げられる。
【0102】
本発明の浸透圧式装置は、多種多様な活性薬剤を送達するために用いることができる。これらの薬剤としては、限定されないものとして、薬理活性のペプチドタンパク質、ポリペプチド、遺伝子、遺伝子産物、他の遺伝子治療薬剤、又は他の小分子が挙げられる。このポリペプチドには、限定されないものとして、以下が含まれていてよい:成長ホルモン、ソマトスタチン、ソマトロピン、ソマトトロピン、ソマトトロピン類似体、ソマトメジンC、アミノ酸付加ソマトトロピン、タンパク質付加ソマトトロピン;卵胞刺激ホルモン;黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、LHRH類似体、例えば、ロイプロリド、ナファレリン及びゴセレリン、LHRHアゴニスト又はアンタゴニスト;成長ホルモン放出因子;カルシトニン;コルヒチン;ゴナドトロピン放出ホルモン;ゴナドトロピン、例えば絨毛性ゴナドトロピン;オキシトシン、オクトレオチド;バソプレッシン;副腎皮質刺激ホルモン;上皮成長因子;線維芽細胞増殖因子;血小板由来増殖因子;トランスフォーミング増殖因子;神経成長因子;プロラクチン;コンシトロピン;リプレシンポリペプチド、例えば、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;セクレチン;パンクレオザイミン;エンケファリン;グルカゴン;内部に分泌され血流により行き渡る、内分泌剤(endocrine agent)等。
【0103】
更に、送達することのできる活性薬剤の限定されないものとして以下が挙げられる:αアンチトリプシン;第VII因子;第IX因子及び他の凝固因子;インシュリン;ペプチドホルモン;副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン及び他の下垂体ホルモン;エリスロポエチン;成長因子、例えば、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インスリン様成長因子−1;組織プラスミノーゲンアクチベータ;CD4;1−デアミノ−8−D−アルギニンンバソプレッシン;インターロイキン−1受容体アンタゴニスト;腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子受容体;腫瘍抑制タンパク質;膵酵素;ラクターゼ;リンホカイン、ケモカイン又はインターロイキン、例えば、インターロイキン−1、インターロイキン−2を含むサイトカイン;細胞毒性タンパク質;スーパーオキシドジムスターゼ;内部に分泌され血流により動物中に行き渡る、内分泌剤;組み換え抗体、抗体断片、ヒト化抗体、単鎖抗体、モノクローナル抗体;アビマー(avimer)等。
【0104】
更に、投与することのできる活性薬剤として、容器を通って輸送される化合物をこれに限定されずに含む無機化合物及び有機化合物が挙げられる。本発明の実施に用いることのできる活性薬剤の限定されない例として以下が含まれる:催眠薬及び鎮静薬、例えば、ペントバルビタールナトリウム、フェノバルビタール、セコバルビタール、チオペンタール、ジエチルイソ吉草酸アミド及びアルファブロモイソバレリル尿素などのアミド類及び尿素類、ウレタン類、又はジスルファン類;複素環式催眠薬、例えば、ジオキソピペリジン類、及びグルタルイミド;抗鬱薬、例えば、イルカルボキサジド、ニアラミド、フェネルジン、イミプラミン、トラニルシプロミン、パルギリン(pargyline));精神安定剤、例えば、クロロプロマジン、プロマジン、フルフェナジンレセルピン、デセルピジン、メプロバメート、ベンゾジアゼピン、例えば、クロルジアゼポキシド;抗痙攣薬、例えば、プリミドン、ジフェニルヒダントイン、エトトイン、フェネツリッド、エトスクシミド;筋弛緩剤及び抗パーキンソン病薬、例えば、メフェネシン、メトカルバモール、トリヘキシルフェニジル、ビペリデン、L−ドーパ及びL−ベータ−3−4−ジヒドロキシフェニルアラニンとしても知られるレボドパ;鎮痛薬、例えば、モルヒネ、コデイン、メペリジン、ナロルフィン;解熱剤及び抗炎症剤例えば、アスピリン、サリチルアミド、ナトリウムサリチルアミド、ナプロキシン、イブプロフェン;局所麻酔薬、例えば、プロカイン、リドカイン、ネーパイン、ピペロカイン、テトラカイン、ジブカイン;抗痙攣薬及び抗潰瘍薬、例えば、アトロピン、スコポラミン、メトスコポラミン、オキシフェノニウム、パパベリン、プロスタグランジン、例えば、PGE1、PGE2、PGF1alpha、PGF2alpha、PGA;抗菌剤、例えば、ペニシリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロラムフェニコール、スルホンアミド、テトラサイクリン、バシトラシン、クロルテトラサイクリン、エリスロマイシン;抗マラリア薬、例えば、4−アミノキノリン、8−アミノキノリン及びピリメタミン;ホルモン剤、例えば、プレドニゾロン、コルチゾン、コルチゾール及びトリアムシノロン、アンドロゲン性ステロイド(例えば、メチルテストステロン、フルオキシメステロン)、エストロゲンステロイド(例えば、17−ベータ−エストラジオール及びエチニルエストラジオール)、プロゲステロンのステロイド(例えば、17−アルファ−ヒドロキシプロゲステロンアセテート、19−ノル−プロゲステロン、ノルエチンドロン);交感神経作用薬、例えば、エピネフリン、アンフェタミン、エフェドリン、ノルエピネフリン;心臓脈管薬、例えば、プロカインアミド、硝酸アミル、ニトログリセリン、ジピリダモール、硝酸ナトリウム、硝酸マンニトール;利尿薬、例えば、アセタゾラミド、クロロサイアザイド、フルメサイアザイド;駆虫剤、例えば、ベフェニウムヒドロキシナフトエート、ジクロロフェン、エニタバス、ダプソン;抗悪性腫瘍薬、例えば、メクロロエタミン(mechloroethamine)、ウラシルマスタード、5−フルオロウラシル、6−チオグアニン及びプロカルバジン;血糖降下剤、例えば、インシュリン関連化合物(例えば、イソフェンインシュリン懸濁液、プロタミン亜鉛インシュリン懸濁液、グロビン亜鉛インシュリン、持続型インスリン亜鉛懸濁液)トルブタミド、アセトヘキサミド、トラザミド、クロルプロパミド;栄養剤、例えば、ビタミン、必須アミノ酸、及び必須脂肪;目の薬、例えば、ピロカルピン塩、塩酸ピロカルピン、硝酸ピロカルピン;抗ウイルス剤、例えば、フマル酸ジソプロキシル、アシクロビル、シドフォビル、ドコサノール、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスカルネット、ガンシクロビル、イドクスウリジン、ペンシクロビル、トリフルリジン、トロマンタジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、アマンタジン、アルビドール(arbidol)、オセルタミビル、ペラミビル(peramivir)、リマンタジン、ザナミビル、アバカビル、ジダノシン、エムトリシタビン、ラミブジン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、テノフォビル、エファビレンツ、デラビルジン、ネビラピン、ロビリド(loviride)、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、ホスアンプレナビル、インジナビル、ロビナビル、ネルフィナビル、リトナビル、サキナビル、チプラナビル、エンフビルチド、アデフォビル、ホミビルセン、イミキモド、イノシン、ポドフィロトキシン、リバビリン、ビラミジン(viramidine)、ウイルス表面タンパク質又はウイルス受容体を特異的にターゲティングする融合遮断薬(fusion blocker)(例えば、gp−41阻害薬(T−20)、CCR−5阻害薬);吐き気抑制剤、例えば、スコポラミン、ジメンヒドリナート);イドクスウリジン(iodoxuridine)、ヒドロコルチゾン、エゼリン、ホスホリン、ヨウ化物、並びに他の有益な活性薬剤。
【0105】
本発明の実施に於いて有用な数多くのペプチド、タンパク質又はポリペプチドが本明細書に記載されている。記載されたペプチド、タンパク質又はポリペプチドに加えて、これらのペプチド、タンパク質又はポリペプチドが修飾されたものも当業者に公知であり、本明細書に示された指示に従って、本発明の実施に用いることができる。このような修飾されたものとして、アミノ酸類似体、アミノ酸模倣物、ポリペプチド類似体、又はポリペプチド誘導隊が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。更に、本明細書に開示された活性薬剤は、単独で、又は組み合わせて製剤されてよい(例えば、混合物)。
【0106】
本発明のいくつかの態様には、インターフェロンペプチド(例えば、α、β、δ、γ、λ、ω、τインターフェロン、並びにこれらの類似体又は誘導体、例えば、ペグ化された形態のもの;例えば、The Interferons:Characterization and Application,by Anthony Meager(Editor),Wiley−VCH(May 1,2006)参照)又は、糖尿病及び糖尿病関連疾患の治療のためのペプチドホルモン(例えば、グルカゴン様タンパク質のようなインシュリン分泌性ペプチド(例えば、GLP−I)、並びに、その類似体及び誘導体、又はエキセンディン(例えば、エキセンディン−4)、並びにその類似体及び誘導体)を使用することが含まれる。
【0107】
GLP−1(3つの形態のペプチド、GLP−1(1−37)、GLP−1(7−37)及びGLP−1(7−36)アミド、並びに、GLP−1の類似体を含む)は、細胞によるグルコース取り込みを惹起し血清グルコース濃度の低下を招くインシュリン分泌を刺激する(すなわち、これはインシュリン分泌性である)ことが示されている(例えば、Mojsov,S.,Int.J.Peptide Protein Research,40:333−343(1992)参照)。
【0108】
インシュリン分泌促進作用を示す数多くのGLP−1誘導体及び類似体が当該分野に於いて公知である(例えば、米国特許第5,118,666号;米国特許第5,120,712号;米国特許第5,512,549号;米国特許第5,545,618号;米国特許第5,574,008号;米国特許第5,574,008号;米国特許第5,614,492号;米国特許第5,958,909号;米国特許第6,191,102号;米国特許第6,268,343号;米国特許第6,329,336号;米国特許第6,451,974号;米国特許第6,458,924号;米国特許第6,514,500号;米国特許第6,593,295号;米国特許第6,703,359号;米国特許第6,706,689号;米国特許第6,720,407号;米国特許第6,821,949号;米国特許第6,849,708号;米国特許第6,849,714号;米国特許第6,887,470号;米国特許第6,887,849号;米国特許第6,903,186号;米国特許第7,022,674号;米国特許第7,041,646号;米国特許第7,084,243号;米国特許第7,101,843号;米国特許第7,138,486号;米国特許第7,141,547号;米国特許第7,144,863号;及び米国特許第7,199,217号参照)。従って、本明細書に於いて参照を容易にするため、インシュリン分泌促進活性を有したGLP−1誘導体及び類似体ファミリーをGLP−1と総称する。
【0109】
エキセンディンは、アメリカドクトカゲの毒液から単離されたペプチドである。エキセンディン−4は、アメリカドクトカゲ(Heloderma suspectum)の毒液中に存在する(Eng,J.,et al.,J.Biol.Chem.,265:20259−62(1990);Eng.,J.,et al.,J.Biol.Chem.,267:7402−05(1992);米国特許第5,424,286号)。エキセンディンは、グルカゴン様ペプチドファミリーのいくつかのメンバーといくらかの配列相同性を有し、最も高い相同性、53%をGLP−1(7−36)アミドに対して有する(Goke,et al.,J.Biol.Chem.,268:19650−55(1993))。
【0110】
エキセンディン−4は、インシュリン分泌β−TC1細胞、モルモットの膵臓の分散型腺房細胞及び胃の壁細胞上のGLP−1受容体で作用する。また、エキセンディン−4ペプチドは、摘出胃に於いて、ソマトスタチン放出を刺激しガストリン放出を抑制する(Goke,et al.,J.Biol.Chem.268:19650−55(1993);Schepp,et al.,Eur.J.Pharmacol.,69:183−91(1994);Eissele,et al.,Life Sci.,55:629−34(1994))。真性糖尿病の治療及び高血糖の予防にエキセンディン−3及びエキセンディン−4を用いることは、そのインシュリン分泌促進活性に基づいて提案されてきた(例えば、米国特許第5,424,286号参照)。
【0111】
エキセンディン−4は、例えば、胃内容排出、インシュリン分泌、食物摂取及びグルカゴン分泌を調節するという点で、GLP−1と類似した特性を有している。
【0112】
インシュリン分泌促進作用を示す数多くのエキセンディン−4誘導体及び類似体(例えば、エキセンディン−4アゴニストを含む)は、当該分野に於いて公知である(例えば、米国特許第5,424,286号;米国特許第6,268,343号;米国特許第6,329,336号;米国特許第6,506,724号;米国特許第6,514,500号;米国特許第6,528,486号;米国特許第6,593,295号;米国特許第6,703,359号;米国特許第6,706,689号;米国特許第6,767,887号;米国特許第6,821,949号;米国特許第6,849,714号;米国特許第6,858,576号;米国特許第6,872,700号;米国特許第6,887,470号;米国特許第6,887,849号;米国特許第6,924,264号;米国特許第6,956,026号;米国特許第6,989,366号;米国特許第7,022,674号;米国特許第7,041,646号;米国特許第7,115,569号;米国特許第7,138,375号;米国特許第7,141,547号;米国特許第7,153,825号;及び米国特許第7,157,555号参照)。従って、本明細書に於いて参照を容易にするため、インシュリン分泌促進活性を有したエキセンディン−4誘導体及び類似体ファミリーをエキセンディン−4と総称する。
【0113】
活性薬剤は、以下の種々の形態であってもよいが、それらに限定されない:非荷電性分子;分子錯体の構成要素;及び、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、又はサリチル酸塩のような薬理学的に許容される塩。酸性薬物として、金属、アミン又は有機カチオンの塩、例えば、4級アンモニウムを用いることができる。更に、本発明の目的に適した溶解度特性を有した、エステル類、エーテル類、アミド類等のような、薬物の単純な誘導体も本明細書で用いることができる。浸透圧式装置リザーバー内の薬物又は他の製剤は、溶液、分散液、ペースト、クリーム、粒子、粒剤、錠剤、乳剤、懸濁剤、散剤のような、当該分野に於いて公知の種々の形態を取り得る。1種又は2種以上の活性薬剤に加えて、活性薬剤含有製剤は、所望により、薬剤的に許容可能な担体及び/又は更なる成分、例えば、酸化防止剤、安定化剤、緩衝剤、及び浸透強化剤を含んでよい。
【0114】
上記の薬剤は、限定されないものとして、次を含む種々の状態の治療に有用である:血友病及び他の血液疾患、成長異常、糖尿病、白血病、肝炎、腎不全、細菌感染、ウイルス感染(例えば、HIV、HCV等による感染)、遺伝病、例えば、セレブロシダーゼ欠損症及びアデノシンデアミナーゼ欠損症、高血圧症、敗血症性ショック、自己免疫疾患(例えば、グレーヴス病、全身性エリトマトーデス及び関節リウマチ)、ショック及び消耗障害(shock and wasting disorder)、嚢胞性繊維症、乳糖不耐症、クローン病、炎症性腸疾患、胃腸癌及び他の癌。
【0115】
本発明のデリバリー装置に用いられる活性薬剤又は有益な薬剤の量は、送達部位に於ける所望の結果を達成するために治療上有効な量の薬剤を送達するのに必要な量である。実際上、この量は、例えば、特定の薬剤、送達部位、状態の重症度及び所望の治療効果といった変動要因に依存して変化するであろう。有益な薬剤及びそれらの服用単位量は、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,11th Ed.,(2005),McGraw Hill;Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,(1995),Mack Publishing Co.;及びMartin’s Physical Pharmacy and Pharmaceutical Sciences,1.00 edition (2005),Lippincott Williams & Wilkinsに於ける従来技術に於いて公知である。典型的には、浸透圧式デリバリーシステムについて、活性薬剤含有製剤を含むチャンバー(例えば、図1、チャンバー108)の容積は、約100μl〜約1000μlであり、より好ましくは、約140μl〜200μlである。ある態様に於いて、活性薬剤含有製剤を含むチャンバーの容積は約150μlである。
【0116】
ある局面に於いて、本発明は、インターフェロン(例えば、α、β、δ、γ、λ、ω又はτインターフェロン)の活性薬剤含有製剤、例えば、公表された米国特許出願公開第2006−0263433号及び第2006−0251618号に例えば記載されているような、ωインターフェロン及び懸濁ビヒクルを含む粒子製剤を含む懸濁製剤を提供する。懸濁ビヒクルは、1種又は2種以上のポリマー及び1種又は2種以上の溶媒を含む、非水系で単相のビヒクルを典型的には含む。このビヒクルは、好ましくは粘性特性を有する。ペプチド成分は、ビヒクル中に分散している粒子製剤中にインターフェロンペプチドを含む。粒子製剤は、炭水化物、酸化防止剤、アミノ酸、緩衝剤、及び無機化合物からなる群より選択される1種又は2種以上の安定剤成分を含む安定化成分を、典型的には含む。
【0117】
3.4.1 粒子製剤
本発明の実施に用いられる粒子製剤は、少なくとも約1月、より好ましくは少なくとも約3月、より好ましくは少なくとも約6月、更に好ましくは少なくとも約12月の間、送達温度で、化学的及び物理的に安定であることが好ましい。送達温度は典型的には、人体の通常の温度であり、例えば、約37℃又はそれよりわずかに高い温度、例えば、約40℃である。更に、本発明の粒子製剤は、好ましくは少なくとも約3月、より好ましくは少なくとも約6月、更に好ましくは少なくとも約12月の間、貯蔵温度で、化学的及び物理的に安定であることが好ましい。貯蔵温度の例としては、冷蔵温度、例えば、約5℃、又は室温、例えば、約25℃が挙げられる。
【0118】
送達温度で約3月後、好ましくは約6月後、より好ましくは約12月後、そして、貯蔵温度では約6月後、約12月後、好ましくは約24月後に、約25%未満、好ましくは約20%未満、より好ましくは約15%未満、より好ましくは約10%未満、より好ましくは約5%未満のペプチド粒子の分解生成物が生成される場合、粒子製剤は化学的に安定と考えられる。
【0119】
送達温度で約3月後、好ましくは約6月後、そして貯蔵温度では約6月、好ましくは約12月後、約10%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは約1%未満のペプチド粒子の凝集物が生成される場合、粒子製剤は物理的に安定と考えられる。粒子製剤が物理的に安定であると考えられることを示す別の基準は、選択された期間(例えば、送達温度で約3月後、好ましくは約6月後、より好ましくは約12月後、そして、貯蔵温度では約6月後、約12月後、より好ましくは約24月後)粒子の固体状態が本質的に同一であるか、実質的に同様である状態(例えば、粒子が、非結晶から結晶への相転移、又は多形状態間での相互の交換を示さない)でいられることである。
【0120】
タンパク質の安定性を保つためには、一般的に、タンパク質溶液を凍結状態に保ち、凍結乾燥又は噴霧乾燥し固体状態とする。Tg(ガラス転移温度)は、タンパク質の安定した組成を達成する際に考慮する1つの要素であり得る。いずれかの特定の理論に拘束されるものではないが、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を安定化するための、高Tgの非結晶固体の形成理論は、製薬産業に利用されてきた。一般的に、無定形固体がより高いTg、例えば、100℃を有する場合、貯蔵温度がTgを下回るため、室温で保存される場合又は40℃で保存される場合でさえも、タンパク質製品は可動性を有しないであろう。分子情報を用いた計算が示してきたところによると、ガラス転移温度が貯蔵温度50℃を超える場合、分子の可動性はゼロである。分子の可動性がない場合、不安定性の問題との関連はない。Tgは、製品製剤中の水分レベルにも依存する。一般的に、水分量が多いほど、組成物のTgは低くなる。
【0121】
従って、本発明のいくつかの局面に於いて、安定性を改善するため、より高いTgを有した賦形剤、例えば、スクロース(Tg=75℃)及びトレハロース(Tg=110℃)を、タンパク質製剤中に含んでよい。粒子製剤は、噴霧乾燥、凍結乾燥(lyophilization)、脱水、凍結乾燥(freeze−drying)、粉砕(milling)、顆粒化、超音波滴下形成(ultrasonic drop creation)、結晶化、沈殿、又は当該分野に於いて利用可能な、成分の混合物から粒子を生成するための他の技術といった工程を用いて、粒子へと形成可能であることが好ましい。粒子は、形状及びサイズが実質的に均一であることが好ましい。
【0122】
典型的な噴霧乾燥工程には、例えば、ペプチド、例えば、ωインターフェロン、及び安定化賦形剤を含む噴霧溶液をサンプルチャンバーに装填することが含まれる。サンプルチャンバーは、典型的には、所望の温度、例えば、冷蔵温度から室温で維持される。冷蔵により一般的にタンパク質の安定性が促進される。供給ポンプにより噴霧溶液はノズル噴霧器中に噴霧される。同時に、霧状のガス(典型的には、空気、窒素、又は不活性ガス)が、ノズル噴霧器の出口に向けられ、噴霧溶液から液滴の霧が形成される。液滴の霧は、乾燥チャンバー中で乾燥ガスと即座に接触させる。乾燥ガスにより液滴から溶媒が除去され、粒子は収集チャンバーに運ばれる。噴霧乾燥に於いて、収量に影響を及ぼし得る要素としては、限定されないものとして、粒子上の局在電荷(これは粒子の噴霧乾燥器への接着を増進し得る)及び粒子の空気力学(これにより粒子を収集することが困難となる場合がある)が挙げられる。一般的に、噴霧乾燥工程の収率は粒子製剤に部分的に依存する。
【0123】
粒径は、本発明の浸透圧式デリバリーシステムを介して送達することのできるようなものである。粒子が均一な形状及びサイズであることは、典型的には、このようなデリバリーシステムから一貫した均一な放出速度を得るために役立つ;しかし、非正規分布状の粒径を有した粒子製剤を用いることもできる。例えば、図1の送達開口部124を有した本明細書に記載の浸透圧式デリバリーシステムに於いて、粒径は送達開口部の直径の約30%未満、好ましくは約20%未満、好ましくは約10%未満、更に好ましくは約5%未満である。
【0124】
好ましい態様に於いて、粒子は懸濁ビヒクル中に含まれる場合、送達温度で、約3月未満で沈殿しない。一般的に言えば、より小さい粒子は、粘性のある懸濁ビヒクルに於いて、より大きな粒子よりも沈殿速度が低い。従って、ミクロン〜ナノサイズの粒子が典型的には望ましい。移植片の送達開口部の直径が、例えば、約0.1〜約0.5mmの範囲である浸透圧式デリバリーシステムと共に用いる粒子製剤のある態様に於いて、粒径は、好ましくは約50ミクロン未満、より好ましくは約10ミクロン未満、より好ましくは約3〜約7ミクロンの範囲であってよい。ある態様に於いて、開口部は約0.25mm(250μm)であり、粒径はおよそ3−5μmである。
【0125】
ある態様に於いて、本発明の粒子製剤は、1種又は2種以上のインターフェロンペプチド(例えば、α、β、δ、γ、λ、ω又はτインターフェロン)、1種又は2種以上の安定剤、及び所望により緩衝剤を含む。安定剤は、例えば、炭水化物、酸化防止剤、アミノ酸、緩衝剤、又は無機化合物であってよい。粒子製剤中の安定剤及び緩衝剤の量は、安定剤及び緩衝剤の活性並びに製剤の所望の特性に基づき実験的に決定しすることができる。典型的には、製剤中の炭水化物の量は、沈殿を考慮して決定される。一般的に、炭水化物のレベルは、ペプチドと結合していない過剰の炭水化物により水の存在下で結晶が成長することが促進されることを避けるために、高すぎてはいけない。典型的には、製剤中の酸化防止剤の量は酸化を考慮して決定されるが、製剤中のアミノ酸の量は、酸化を考慮し、及び/又は噴霧乾燥中の粒子の形成可能性により、決定される。典型的には、製剤中の緩衝剤の量は、前処理を考慮して、安定性を考慮して、そして噴霧乾燥中の粒子の形成可能性により決定される。すべての賦形剤が可溶化される場合、緩衝剤は、処理、例えば、溶液調製及び噴霧乾燥の間に、ペプチドを安定化させる必要があるかもしれない。
【0126】
粒子製剤中に含まれてよい炭水化物の限定されない例として、単糖類(例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース及びソルボース)、二糖類(例えば、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びセロビオース)、多糖類(例えば、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、及びスターチ)、及びアルジトール類(非環状ポリオール類;例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール、ピラノシルソルビトール、及びミオイノシトール)が挙げられる。好ましい炭水化物としては、非還元糖、例えば、スクロース、トレハロース及びラフィノースが挙げられる。
【0127】
粒子製剤中に含まれてよい酸化防止剤の限定されない例として、メチオニン、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、カタラーゼ、白金、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、システイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシルトルエン、及び没食子酸プロピルが挙げられる。
【0128】
粒子製剤中に含まれてよいアミノ酸の限定されない例として、アルギニンン、メチオニン、グリシン、ヒスチジン、アラニン、L−ロイシン、グルタミン酸、イソ−ロイシン、L−トレオニン、2−フェニルアミン、バリン、ノルバリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、セリン、アスパラギン、システイン、チロシン、リシン、ノルロイシンが挙げられる。好ましいアミノ酸としては、容易に酸化するもの、例えば、システイン、メチオニン及びトリプトファンが挙げられる。
【0129】
粒子製剤に含まれてよい緩衝剤の限定されない例として、クエン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、トリス、アセテート、炭水化物、及びグリシルグリシン(gly−gly)。好ましい緩衝剤の例として、クエン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩、及びトリスが挙げられる。
【0130】
粒子製剤中に含まれてよい無機化合物の限定されない例として、NaCl、NaSCN、NaSO、NaHCO、KCl、KHPO、CaCl、及びMgClが挙げられる。
【0131】
更に、粒子製剤は、他の賦形剤、例えば、界面活性剤、充填剤、及び塩を含んでよい。界面活性剤の限定されない例として、Polysorbate 20、Polysorbate 80、PLURONIC(登録商標)(BASF Corporation, Mount Olive NJ)F68、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられる。充填剤の限定されない例として、マンニトール、グリシンが挙げられる。塩の限定されない例として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムが挙げられる。
【0132】
3.4.2 ビヒクル製剤
本発明のある局面に於いて、懸濁ビヒクルは、粒子製剤が分散する安定した環境を提供する。懸濁ビヒクルは典型的には、ペプチドを含む粒子を均一に懸濁させるために十分な粘性を有した溶液を形成する、1種又は2種以上のポリマー及び1種又は2種以上の溶媒を含む。本発明のピストンアセンブリーは、本明細書中上記されるように、ビヒクル、特にビヒクルの有機溶媒に暴露された場合、実質的に不浸透性かつ実質的に耐浸出性である。
【0133】
懸濁ビヒクルの粘性は、粒子製剤が、貯蔵中及び送達方法、例えば、浸透圧式デリバリーシステムで用いる間沈殿することを防ぐのに典型的には十分である。懸濁ビヒクルは、生物学的環境に応答してある期間にわたって分解し崩壊するという点で生物分解性である。懸濁ビヒクルの分解は、1つ又は2つ以上の物理分解工程又は化学分解工程、例えば、酵素作用、酸化、還元、加水分解(例えば、タンパク質分解)、置換(例えば、イオン交換)又は可溶化、乳剤又はミセル形成による溶解により起こり得る。懸濁ビヒクルが分解した後、懸濁ビヒクルの成分は、対象の体及び周囲の組織に吸収されるか又はそうでない場合消散される。
【0134】
ポリマーが溶解している溶媒は、懸濁製剤の特性、例えば、貯蔵中のペプチド粒子製剤の挙動に影響を与え得る。溶媒は、得られた懸濁ビヒクルが水性環境と接触すると相分離を示すように、ポリマーと組み合わせて選択してよい。所望により、溶媒は、得られた懸濁ビヒクルがおよそ10%未満の水を有する水性環境と接触すると相分離を示すように、ポリマーと組み合わせて選択してよい。
【0135】
いくつかの態様に於いて、溶媒は水と混和しない、許容される溶媒であってよい。溶媒は、ポリマーが高濃度で、例えば、約30%を超える濃度で、その溶媒に可溶であるように選択されてよい。しかし、典型的には、ペプチドは溶媒中で実質的に不溶性である。本発明の実施に於いて有用な溶媒の限定されない例として、ラウリルアルコール、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、乳酸ラウリル、デカノール(デシルアルコールとも呼ばれる)、乳酸エチルヘキシル、及び長鎖(炭素数8〜24)脂肪族アルコール類、エステル類、又はこれらの混合物が挙げられる。懸濁ビヒクル中に用いられる溶媒は、水分量が低いという点で「乾燥」していてよい。懸濁ビヒクルの製剤に用いられる好ましい溶媒として、乳酸ラウリル、ラウリルアルコール、及び安息香酸ベンジルが挙げられる。
【0136】
本発明の実施に於いて有用であり得る更なる溶媒の限定されないものとして以下が挙げられる:植物油(ごま油、綿実油、大豆油);トリグリセリド;グリセリン;グリセリン;ポリエチレングリコール(例えば、PEG400);グリコフロール(glycofurol);N−メチルピロリドン;ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20及びポリソルベート80);αトコフェロール(例えば、ビタミンE);ジメチルスルホキシド;又はシリコーンメディカルフルイド(silicon medical fluid)。
【0137】
本発明の懸濁ビヒクルの製剤のためのポリマーの限定されない例として、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸又はポリ乳酸ポリグリコール酸)、ピロリドン(例えば、約2,000〜約1,000,000の分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP))、不飽和アルコールのエステル又はエーテル(例えば、酢酸ビニル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、又はこれらの混合物が挙げられる。ある態様に於いて、ポリマーは、分子量2,000〜1,000,000を有したPVPである。懸濁ビヒクルに用いられるポリマーは、1種又は2種以上の異なるポリマーを含み又は異なるグレードの単一ポリマーを含んでよい。懸濁ビヒクルに用いられるポリマーは乾燥していてもよく、又は水分量が低くてよい。
【0138】
一般的に言えば、本発明の懸濁ビヒクルは、所望の性能特性に基づき、組成が異なっていてよい。ある態様に於いて、懸濁ビヒクルは、約25重量%〜約80重量%のポリマー及び約75重量%〜約20重量%の溶媒を含んでよく、より好ましくは、40重量%〜約75重量%のポリマー及び約60重量%〜約25重量%の溶媒を含んでよい。懸濁ビヒクルの好ましい様態としては、以下の割合でポリマーと溶媒が混合されたものから成るビヒクルを含んでもよい:約75重量%のポリマー及び約25重量%の溶媒;約60重量%のポリマー及び約40重量%の溶媒;約55重量%のポリマー及び約45重量%の溶媒;約50重量%のポリマー及び約50重量%の溶媒;約45重量%のポリマー及び約55重量%の溶媒;約40重量%のポリマー及び約60重量%の溶媒;約25重量%のポリマー及び約75重量%の溶媒。
【0139】
懸濁ビヒクルは、ニュートン挙動を示してよい。懸濁ビヒクルは、典型的には、懸濁製剤中で所定の期間粒子製剤の均一な分散が維持される粘性が提供されるように配合される。これにより、所望の割合でペプチドを制御送達可能なように適合させた懸濁製剤を作成することが容易となる。懸濁ビヒクルの粘性は、目的とする用途、粒子製剤のサイズ及びタイプ、及び懸濁ビヒクル中の粒子製剤の装填に依存して異なってよい。懸濁ビヒクルの粘性は、用いられる溶媒又はポリマーのタイプ又は相対量を変えることにより変化させることができる。
【0140】
懸濁ビヒクルは約100ポアズ〜約1,000,000ポアズ、好ましくは、約1,000ポアズ〜約100,000ポアズの範囲の粘性を有してよい。粘性は、37℃、ずり速度10−4/秒で、パラレルプレート型粘度計を用いて計測することができる。ある態様に於いて、懸濁ビヒクルの粘性は、約5,000ポアズ〜約50,000ポアズの範囲である。ある態様に於いて、ビヒクルは、33℃で、約16,700ポアズの粘性を有する。好ましい態様に於いて、粘性の範囲は、33℃で、約12,000〜18,000ポアズの間にある。
【0141】
懸濁ビヒクルは、水性環境に接触した場合、相分離を示してよい。しかし、典型的には、懸濁ビヒクルは、温度の作用では相分離を実施的に示さない。例えば、約0℃〜約70℃の範囲の温度で、温度サイクル、例えば、4℃から37℃へ、更に4℃へのサイクルに於いて、懸濁ビヒクルは、典型的には、相分離を示さない。本発明のいくつかの態様に於いて、約10%未満の水を有した水性環境に接触した場合、懸濁ビヒクルは相分離を示す。
【0142】
懸濁ビヒクルは、例えば、ポリマー及び溶媒を、乾燥条件下、例えば、ドライボックス内で組み合わせることにより調製することができる。ポリマー及び溶媒は、高温、例えば、約40℃〜約70℃で組み合わせてよく、液化させ、単相を形成させてよい。これらの含有物質を真空下で混合することにより、乾燥した含有物質から生成した気泡を除去することができる。これらの含有物質は、従来のミキサー、例えば、デュアルへリックスブレード(dual helix blade)又は同様のミキサーで、例えば、約40rpmの速度に設定されたものを用いて組み合わせることができる。しかし、含有物質を混合するためにより高い速度を用いることもできる。含有物質の溶液が得られたら、懸濁ビヒクルは、室温まで冷却することができる。示差走査熱量測定(DSC)は、懸濁ビヒクルが単相であることを確認するために用いることができる。更に、懸濁ビヒクルの成分(例えば、溶媒及び/又はポリマー)を処理し、過酸化物を実質的に減少させるか又は実質的に除去することができる。
【0143】
ペプチド(例えば、ωインターフェロン)を含む粒子製剤を懸濁ビヒクルに加え、懸濁製剤を形成する。懸濁製剤は、粒子製剤を懸濁ビヒクル中に分散させることにより調製することができる。懸濁ビヒクルを加熱し、乾燥条件下で粒子製剤を懸濁ビヒクルに加えることができる。これらの含有物質は、真空下、高温、例えば、約40℃〜約70℃で混合することができる。これらの含有物質を、十分な速度、例えば、約40rpm〜約120rpmで、十分な時間、例えば、約15分間混合し、懸濁ビヒクル中均一に分散した粒子製剤を得ることができる。このミキサーはデュアルへリックスブレード又は他の適切なミキサーであってよい。得られた混合物をミキサーから取り出し、懸濁製剤に水が混入しないように乾燥容器に密封し、更なる使用、例えば、浸透圧式デリバリーシステムへの装填の前に、室温まで冷却することができる。
【0144】
懸濁製剤は、典型的には、全体の水分含有量が約10重量%未満、好ましくは約5重量%未満、より好ましくは約4重量%未満である。
【0145】
要約すると、懸濁ビヒクルの成分により、それを用いることが意図されている対象との生体適合性が与えられる。懸濁ビヒクルの成分により、適切な物理化学的特性が与えられ、例えば、乾燥粉末粒子製剤の安定した懸濁が形成される。これらの特性には、限定されないものとして、以下が挙げられる:懸濁液の粘性;ビヒクルの純度;ビヒクルの残留湿気;ビヒクルの密度;乾燥粉末との適合性;移植可能装置との適合性;ポリマーの分子量;ビヒクルの安定性;及びビヒクルの疎水性及び親水性。例えば、懸濁ビヒクル中に用いられるビヒクル成分を変えること及び成分の割合を操作することにより、これらの特性を操作及び制御することができる。
【0146】
粒子製剤に含まれるすべての成分は、典型的には、対象、特にヒトに於いて製薬学的用途に許容される。
【0147】
本発明のある態様は、本明細書記載の浸透圧式デリバリーシステムを含み、このシステムには以下のような懸濁製剤が含まれる:目標粒子充填が約10%(w/w)である、安息香酸ベンジル/ポリビニルピロリドン(BB/PVP)懸濁ビヒクル中に懸濁したωインターフェロン粒子製剤(ωインターフェロン:スクロース:メチオニン:クエン酸塩の比が重量換算で1:2:1:2.15)。浸透圧式デリバリーシステムのリザーバーは約150μLの懸濁液で満たされている。
【0148】
3.5.0 リザーバー
リザーバー(例えば、図1、102)に用いることのできる材料は、浸透剤含有製剤の膨張に耐えるのに十分固く、そのサイズ及び形状を変えない。浸透圧式デリバリーシステムが移植可能な場合、典型的には、それらの材料は、移植中にリザーバーが受ける応力下で、又は作動中に生成される圧力による応力下で、リザーバーが漏出、亀裂、破壊又はゆがみが起こさないことが確保されるように選択される。リザーバーは、当該分野に於いて公知の、非反応性(又は不活性)で、生体適合性の、天然又は合成材料から形成されてよい。リザーバーの材料は、非生体内分解性(すなわち、用いる液体環境(例えば、胃液)中で不溶)又は生体内分解性(すなわち、用いる液体環境(例えば、胃液)中で可溶)であってよい。好ましくは、リザーバーの材料は非生体内分解性である。一般的に、リザーバーの好ましい材料はヒトへの移植で許容されるものである。リザーバーの材料は、特に、リザーバー中の製剤の安定性が用いる液体環境中の液体に影響されやすい場合(例えば、対象に移植した後)、不浸透性であることが好ましい。
【0149】
リザーバーに適した材料の例として、非反応性で、生体適合性のポリマー類及び金属類又は合金類が挙げられる。リザーバーのための非反応性、生体適合性のポリマー類の限定されないものとして、アクリロニトリルポリマー類、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンターポリマー;ハロゲン化ポリマー類、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体;ポリイミド;ポリスルホン;ポリカーボネート;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリ塩化ビニル−アクリル酸共重合体;ポリカーボネート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン;及びポリスチレンが挙げられる。リザーバー102のための、金属の、生体適合性の材料の限定されない例として、ステンレス鋼、チタン、白金、タンタル、金、及びこれらの合金、並びに、金めっき合金鉄、白金めっき合金鉄、コバルトクロム合金及び窒化チタン被覆ステンレス鋼が挙げられる。サイズが重要である用途、高いペイロード能力、長期の用途、及び、製剤が移植部位での生体の化学反応に影響されやすい用途のために、リザーバーは、チタン、又は、約60%以上、より好ましくは約85%以上のチタンを有したチタン合金であることが好ましい。
【0150】
リザーバーの胴体に、例えば、レーザーエッチングを用いてラベルし、活性薬剤の特性、活性薬剤の投与量、製造元等を表示することができる。更に、リザーバーの胴体には、その製品の使用者に方向の指示が提供されるためのマーク、例えば、溝の付いた帯が含まれてよく、例えば、その帯はリザーバーの胴体の中間に関して非対称に位置し、リザーバーのどちらの端に半透膜又は流量調節器が含まれるかを示すことができる。このような溝は、胴体の両端の外観が似ている場合に特に有用である。
【0151】
リザーバーの全体のサイズは、種々のパラメーター、例えば、(i)流量調節器(例えば、図1、流量調節器120)が占める体積、(ii)活性薬剤含有製剤(例えば、図1、チャンバー108)が占める体積、(iii)ピストンアセンブリー(例えば、図1、ピストンアセンブリー200)が占める体積、(iv)浸透剤含有製剤(例えば、図1、浸透剤含有製剤114)が占める体積、(v)半透膜(例えば、図1、半透膜116)が占める体積、及び(vi)送達される活性薬剤の量及び浸透圧式デリバリーシステムが活性薬剤を送達する期間に基づき選択される。典型的には、リザーバーの全体積(すなわち、他の部品の存在しないリザーバーの内部チャンバーにより規定される体積)は、約200μl〜約2000μl、より好ましくは約250μl〜約400μlである。ある態様に於いて、リザーバーの全体積は、約300μlである。
【0152】
3.6.0 流量調節器及び開口部
流量調節器は、典型的には、浸透圧式デリバリーシステムから活性薬剤の出口への液体流路を規定するプラグ様部材である(例えば、米国特許第5,728,396号、米国特許第5,997,527号、米国特許第6,217,906号、米国特許第6,287,295号、米国特許第6,395,292号、米国特許第6,524,305号、米国特許第6,635,268号、米国特許第6,840,931号、及び米国特許第6,923,800号参照)。
【0153】
本発明は、流量調節器が所望の方法で活性薬剤含有製剤を送達可能である限り、いずれの特定の流量調節器にも限られない。流量調節器(例えば、図1の120)により、管状内腔(例えば、図1の104)内への外部の液体の逆拡散を制御しながら、活性薬剤含有製剤(例えば、図1の112)の送達することが可能であることが好ましい。遠心端(例えば、図1の122)は、開口していてよく、流量調節器(例えば、図1の120)は、開口端に挿入されたプラグの形態で備えられてよい。別の場合、流量調節器(例えば、図1の120)は、リザーバー(例えば、図1、102)の遠心端(例えば、図1の122)と統合されていてよい。
【0154】
流量調節器によって供えられた送達開口部流路は、例えば、らせん状又は直線状であってよい。更に、開口部流路は、これらに限定されないが、円形、三角形、四角形、D型、卵型、又は細長い(例えば、スリット様)形状を含む種々の形状であってよい。流量調節器は、好ましくは、非反応性(又は不活性)、生体適合性の材料からなる。材料の限定されない例として、金属、例えば、チタン、ステンレス鋼、白金及びこれらの合金並びにコバルトクロム合金が挙げられる。他の適合性の材料として、ポリマー類、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及びポリアリールエーテルケトン類、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。ある態様に於いて、開口部流路は、名目「直径」(すなわち、最も広い開口部にわたって計測)が250μm(0.25mm)であるD型流路である。
【0155】
流量調節器は、数多くの方法、例えば、流量調節器若しくは管状内腔の内部表面又はこれらの双方にリブ、例えば、補助的な連続したらせん状のねじ山/溝を含む、ねじ山及びねじ法(thread and screw method)により、リザーバーと組み合わせることができる。単一の、2重の、3重の又は4重のねじ山/溝を用いることができる。
【0156】
別の場合、流量調節器は、流量調節器の外側がリザーバーの内径よりわずかに大きい、圧入(すなわち、締まりばめ)によりリザーバーと組み合わせることができる。典型的には、この組立て方法は、ねじ山及びねじの組立てのような、本発明の実施に用いられてよい他の組立て方法よりも早く、そして自動化がより容易である。
【0157】
種々のタイプの送達開口部が当該分野に於いて公知であり、本発明の実施に於いて有用である。例えば、可撓性の流量モデレータは、活性薬剤を含むチャンバーと液体をやりとりする少なくとも1つのスリット開口部を有してよい。スリット開口部は、例えば、活性薬剤チャンバー中の液体圧力が所定の圧力より小さい場合、閉じていてよい(例えば、米国特許第5,997,527号参照)。スリット開口部は、浸透圧ポンプ流量により生成される流れを許すのに必要な最小限の程度だけ開いてよい(例えば、米国特許第6,217,906号)。
【0158】
浸透圧式デリバリーシステムの流量調節器アセンブリーは、例えば、胴体の対向する2つの端の間でやりとりする流量調節器の胴体にわたる開口経路(例えば、穴又は流路)を規定する胴体(例えば、ここで開口部は活性薬剤の出口部位を規定する)をも含んでよい。開口経路は、例えば、直線、らせん、又は曲線であってよい。流量調節器は、浸透圧式デリバリーシステムの使用の準備ができるまで外部環境に対して開口部を閉じる役割を果たす栓を更に含んでよい(例えば、米国特許第6,524,305号参照)。使用前、例えば、移植可能な浸透圧式デリバリーシステムを対象内に挿入する前に、このような栓は取り除かれる。
【0159】
ある態様に於いて、流量モデレータは、2つのポリエーテルエーテルケトン機械加工部品、内部コア及び外側スリーブを含み、それにより、これらが組み立てられた時に、連続的ならせん状のデリバリーチャネルが2つの部品の間に形成される。2つの部品からなるモデレータは、リザーバー内に圧入することにより組み立てられる(ここで、リザーバーもモデレータもリブを含まない)。別の態様に於いて、リブを有した部品を用いることができる。
【0160】
本発明は、上記の部品の組み立てを含む、本発明の浸透圧式デリバリーシステムの製造方法も含む。
【0161】
更に、本発明の浸透圧式デリバリーシステムは、個別に包装されるか、グループとして包装されてよい。このような包装は、例えば、ホイルパウチ又はバイアルであってよい。包装には乾燥剤が含まれていてよく、又は、浸透圧式デリバリーシステムは、窒素又は真空下で包装されてよい。
【0162】
4.0.0 浸透圧式デリバリーシステムの使用
ある局面に於いて、本発明は、治療を必要としている対象に上記の浸透圧式デリバリーシステムを用いて活性薬剤を投与することを含む、対象への治療法を提供する。典型的には、浸透圧式デリバリーシステムは、このシステムが対象内の液体環境に接触するように、対象内に移植される。
【0163】
本発明の浸透圧式デリバリーシステムにより、対象への活性薬剤の送達を制御された様式で長期にわたり介入なしに行うことが可能となる。活性薬剤を持続的に送達することにより、しばしば毒性と関連付けられるピーク血漿濃度関連効果(例えば、多数大量瞬間投与によるもの)、並びに、しばしば次善の治療効果と関連付けられる治療量以下のトラフ値となることを、減少させ又は排除することで活性薬剤の治療効果を改善することができる。この改善された治療効果には、例えば、潜在的に全身性副作用を最小限とすることが含まれてよい。活性薬剤を介入なしに持続的に送達することは、例えば、対象中に本明細書に記載の浸透圧式デリバリーシステムを1つ又は2つ以上移植することにより、提供することができる。
【0164】
このような移植可能な浸透圧式デリバリーシステムは、何週間、何か月、又は1年間以上の間にわたってさえも治療量の薬剤が提供されるように設計することができる。対象に一体挿入された移植可能な浸透圧式デリバリーシステムは、対象により容易にいじり回されることはない。従って、必要な投与計画の遵守が一般的に確保される。
【0165】
例えば、移植可能な浸透圧式デリバリーシステムから対象に送達された本発明の懸濁製剤で処置された対象は、小分子のような他の薬剤と合わせて治療することによっても利益を得ることができる。ある態様に於いて、本発明の浸透圧式デリバリーシステムがインターフェロンを送達するために用いられる場合、合わせて行う治療として、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害薬(例えば、リバビリン、リバビリン類似体、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウム、アミノチアジアゾール、チオフェンフリン、チアゾフリン及び/又はビラミジン(viramidine))による治療を挙げることができる。
【0166】
ある態様に於いて、本発明は、対象に上記の懸濁製剤(例えば、HCV又は多発性硬化症の治療のためのインターフェロンを含む;例えば、HCVの治療のためのωインターフェロン、βインターフェロン、αインターフェロン若しくはペグ化されたαインターフェロン;又は多発性硬化症の治療のためのβインターフェロン)を投与することを含むインターフェロン応答性障害の治療法に関する。この改善された治療効果により、例えば、疲労及びインフルエンザに似た症状といった、インターフェロン治療の公知の全身性副作用を潜在的に最小限とすることができる。
【0167】
特定のインターフェロンは、特定のウイルス感染(例えば、HCV又はHIVによる感染)、多発性硬化症及び特定のがんの治療に用いられる。多くの疾患状態は、特定のインターフェロンによる長期治療を必要とする。従って、上記の懸濁製剤と組み合わせた本発明の浸透圧式デリバリーシステムにより、例えば、インターフェロンの注入可能製剤を繰り返し投与することに対する便利で効果的な代替を提供することができる。インターフェロンを含む懸濁製剤を含む本発明の浸透圧式デリバリーシステムを用いたインターフェロン応答性障害の治療には、他の有益な活性薬剤(例えば、ウイルス感染の場合リバビリン)を用いた治療を合わせることも含まれてよい。
【0168】
ある局面に於いて、本発明は、治療効果のある量のインターフェロンを長期にわたって対象に投与することを含む、このような治療を必要とした対象に於ける、ウイルス感染、例えば、HCVによる感染の治療法を含む。ここで、インターフェロンは、例えば、α、β又はωインターフェロンであり、これは移植された浸透圧式デリバリーシステムを用いて投与される。ある態様に於いて、浸透圧式デリバリーシステムは、約1.3〜約1.7μl/日の体積流量(μl/日)を提供するように設計される。これは、対象に移植された後に浸透圧式デリバリーシステムが作動して14日〜21日の間に約120〜約230マイクログラムの累積タンパク質(例えば、インターフェロンのタンパク質)を放出することに相当する。典型的には、送達の時間経過は約90日であり、治療される対象に対していくらかの柔軟性を持たせるために更に約10日作動させる。
【0169】
別の局面に於いて、本発明は、治療効果のある量のインターフェロンを対象に長期にわたって投与することを含む、このような治療を必要とする対象に於ける、多発性硬化症の治療法を含む。ここで、インターフェロンは、移植された浸透圧式デリバリーシステムを用いて投与される。ある態様に於いて、インターフェロンは、β又はωインターフェロンである。
【0170】
更に別の局面に於いて、本発明は、治療効果のある量のインシュリン分泌性ペプチドを対象に長期にわたって投与することを含む、このような治療を必要とする対象に於ける糖尿病又は糖尿病関連疾患の治療法を含む。ここで、インシュリン分泌性ペプチドは、移植された浸透圧式デリバリーシステムを用いて投与される。ある態様に於いて、インシュリン分泌性ペプチドは、GLP−1ペプチド(GLP−1類似体又は誘導体を含む)又はエキセンディン−4ペプチド(エキセンディン−4類似体又は誘導体を含む)である。
【0171】
本発明の局面は、ωインターフェロンを活性薬剤として含む浸透圧式デリバリーシステムに関して、本明細書以下に記載される。これらの実施例は限定することを意図していない。
【0172】
以下の詳細及び特許請求の範囲を検討すれば、本発明の他の目的は当業者にとって自明であろう。
【実施例】
【0173】
実験
以下の実施例は、本発明の装置、方法及び配合の作製法及び使用法の完全な開示及び記載を当業者に提供するためのものであり、発明者が本発明と考えるものの範囲を限定することを意図するものではない。用いられる数字(例えば、量、温度等)に関しては正確性を確保するために努力したが、いくらかの実験誤差及び偏差を考慮すべきである。特に明記されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力はおよそ大気圧である。
【0174】
本発明により生成された組成物は、医薬品に要求される内容物及び純度についての規格を満たす。
【0175】
実施例1
浸透圧式デリバリーシステムアセンブリー
図1に例示されるように、例えば、HCV感染の治療のためのωインターフェロンを含む浸透圧式デリバリーシステムは、以下の部品から組み立てた:(i)移植等級のチタン合金からなりその端部にアンダーカットを有したリザーバー(ii)それぞれの錠剤がセルロース結合剤及びポビドン結合剤と共に主に塩化ナトリウム塩を含む、2つの円柱錠剤形状の浸透活性製剤(iii)超高分子量ポリエチレンからなる図2A記載のピストンアセンブリー(iv)ポリウレタンからなり、リザーバー内のアンダーカットと結合する4つの保持リブを有した半透膜(v)らせん状の開口部を有した流量調節器、及び(vi)懸濁ビヒクル(安息香酸ベンジル及びポビドン)中に粒子製剤(ωインターフェロン、スクロース、メチオニン、クエン酸一水和物、及びクエン酸ナトリウム)を含む懸濁製剤を含む活性薬剤含有製剤。
【0176】
実施例2
ωインターフェロンの累積放出速度
実施例1に記載されるいくつかの浸透圧式デリバリーシステムのリザーバーを、実施例1に記載される懸濁製剤150−μLで満たした。浸透圧式デリバリーシステムの半透膜端を、3mLのリン酸緩衝液(PBS)で満たした栓をしたガラスバイアル内に置き、浸透圧式デリバリーシステムの流量調節器端を、2.5〜3mLの放出速度媒体(0.14MのNaCl及び0.2%のアジ化ナトリウムを有したpH6.0のクエン酸塩緩衝液)で満たしたガラスバイアル内に置いた。これらのシステムを、流量調節器側を下にしてキャップをした試験管に置き、そして37℃の水浴に部分的に浸した。特定の時点で、流量調節器端のガラスバイアルを2.5〜3mLの放出速度媒体(0.14MのNaCl及び0.2%のアジ化ナトリウムを有したpH6.0のクエン酸塩緩衝液)で満たした新しいガラスバイアルと交換した。流量調節器端からサンプルを収集し、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いて分析した。図3は、120日を超える時間の関数としての、ωインターフェロン製剤の累積放出率を示す。図3に於いて、縦軸はパーセント累積放出(累積放出(%))を表し、そして横軸は時間を日数(時間(日))で表わしている。
【0177】
図3の縦軸は、浸透圧式システムから送達される累積的な活性薬剤の0〜100%の範囲を表す。これらのデータは、本発明のピストンアセンブリーを含む浸透圧式デリバリーシステムにより、意図した送達期間にわたって活性薬剤を薬剤的に許容可能な連続した、線形の活性薬剤徐放が可能となることを示す。図3の浸透圧式システムは、少なくとも100日間活性薬剤を送達するように設計された。
【0178】
実施例3
溶媒に放出された浸出物の評価
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる流量調節器をチタン合金からなるリザーバーの端部に挿入した。本質的に図2Aに示され記載される、超高分子量ポリエチレンからなるピストンアセンブリーをリザーバーの管状内腔内に置いた。100%安息香酸ベンジル溶媒を、流量調節器及びピストンアセンブリーに接触したリザーバーの管状内腔内に装填した。これらのシステムを40℃で3か月間保存し、0、45、90日にサンプルをとった。サンプルを染色技術により分析し、安息香酸ベンジル中に揮発性浸出物又は不揮発性浸出物が存在するかどうかを確認した。揮発性浸出物の定量限界(LOQ)は1.4μg/mlであり、不揮発性浸出物の定量限界は9.0μg/mlであった。分析結果は下の表2に表わされる。
【0179】
【表2】

【0180】
これらのデータは、本発明のピストンアセンブリー、例えば、超高分子量ポリエチレンからなる図2Aに記載されるピストンアセンブリーの使用により、浸透圧式デリバリーシステムに於いて用いる場合、耐浸出性となり、そして、定量限界未満かつ医薬的許容可能な最大許容限界未満の揮発性浸出物及び不揮発性浸出物量となる。
【0181】
実施例4
フッ素化シリコーンからなるピストンアセンブリーから溶媒に放出される浸出物の比較
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)からなる流量調節器を、チタン合金からなるリザーバーの端部に挿入した。フッ素化シリコーンからなる従来のピストンをリザーバーの管状内腔内に置いた。100%安息香酸ベンジル溶媒を、流量調節器及び従来のピストンと接触したリザーバーの管状内腔内に充填した。これらのシステムを40℃で3か月間保存し0、45、及び90日にサンプルをとった。これらのサンプルを染色技術により分析し、安息香酸ベンジル中に揮発性浸出物又は不揮発性浸出物が存在するかどうかを確認した。揮発性浸出物の定量限界(LOQ)は1.4μg/mlであり、不揮発性浸出物の定量限界は9.0μg/mlであった。分析結果は以下の表3に示される。
【0182】
【表3】

【0183】
これらのデータは、本発明のピストンアセンブリー、例えば、超高分子量ポリエチレンからなる図2Aに記載されるピストンの使用により、浸透圧式デリバリーシステムに用いられる場合、耐浸出性に関して優れた特性が与えられ、その結果、例えば、フッ素化シリコーンを含む従来のピストンと比較して(例えば、表2及び表3のデータを比較せよ)揮発性及び不揮発性浸出物の量が低くなる(例えば、表2のデータ参照)。
【0184】
当業者には明らかであるが、上記の態様の種々の改変及び変種を、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく作製することができる。このような改変及び変種は本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性薬剤含有製剤を液体環境に送達するための浸透圧式デリバリーシステムであって:
活性薬剤含有製剤及び浸透剤含有製剤を含有する管状内腔(lumen)を含むリザーバー;及び
浸透剤含有製剤から活性薬剤含有製剤を分離するために管状内腔中に位置するピストンアセンブリーを含み;
ここで、該ピストンアセンブリーは、前記管状内腔に位置するように構築され配置された胴体を含み、該胴体は有機溶媒中で耐浸出性であるポリマー材料からなり、かつ該胴体はリザーバーの壁に係合し封着するための手段を更に含む、浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項2】
前記胴体は、その遠心端に、前記リザーバーの壁に係合し封着するための縁、及び、該遠心端に、該リザーバーの壁に対して該縁を偏らせるために保持されたばねを含む円柱状胴体である、請求項1に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項3】
前記ばねは前記円柱状胴体の遠心端の空洞に保持される、請求項2に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項4】
前記ばねはラジアルばねである、請求項2に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項5】
前記ばねは傾斜コイルばねである、請求項4に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項6】
前記ばねは非反応性金属からなる、請求項2に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項7】
前記ピストンアセンブリーは、前記管状内腔に位置するように構築され配置された胴体を含み、該胴体は有機溶媒中で耐浸出性であるポリマー材料からなり、そして1又は2以上のコンセントリック溝を含み、それぞれの溝は前記リザーバーの壁に係合し封着するための手段を提供するエラストマーO−リングを保持するために形成されている、請求項1に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項8】
前記ポリマー材料はポリエチレン、ポリアリールエーテルケトン及び超高分子量ポリエチレンよりなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項9】
前記有機溶媒は安息香酸ベンジル及びベンジルアルコールよりなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項10】
前記ポリマー材料は前記有機溶媒に40℃で少なくとも約45日間暴露した場合、揮発性の浸出液を約1.4μg/ml未満生じる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項11】
前記浸透剤含有製剤に隣接するリザーバーの第一の遠心端に位置する半透膜を更に含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項12】
前記活性薬剤含有製剤に隣接するリザーバーの第二の遠心端に位置する流量調節器を更に含み、該流量調節器は前記液体環境に前記活性薬剤含有製剤を送達するための開口部を有している、請求項11に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項13】
前記ピストンアセンブリーは、前記リザーバー内の圧力に応じて該リザーバー内で可動である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項14】
前記活性薬剤含有製剤は1種又は2種以上の有機溶媒を含む懸濁ビヒクルを含む懸濁製剤である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項15】
前記有機溶媒は安息香酸ベンジル及びベンジルアルコールよりなる群から選択される、請求項14に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項16】
前記懸濁製剤は、1種又は2種以上のインターフェロンを含む粒子製剤を更に含む、請求項15に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項17】
前記インターフェロンはαインターフェロン、βインターフェロン、δインターフェロン、γインターフェロン、ωインターフェロン、λインターフェロン、τインターフェロン、及びこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項16に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項18】
前記インターフェロンはωインターフェロンである、請求項17に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項19】
前記インターフェロンはβインターフェロンである、請求項17に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項20】
前記活性薬剤含有製剤は1種又は2種以上のインシュリン分泌性ペプチドを含む粒子製剤を含む懸濁製剤である、請求項1〜15記載のいずれか1項に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項21】
前記インシュリン分泌性ペプチドはグルカゴン様タンパク質1(GLP−1)及びエキセンディン−4よりなる群から選択される、請求項20に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項22】
前記リザーバーはチタン合金からなり;
前記活性薬剤含有製剤はωインターフェロン、スクロース、メチオニン、クエン酸一水和物、及びクエン酸ナトリウムを含む粒子製剤、並びに安息香酸ベンジル及びポリビニルピロリドンを含む懸濁ビヒクルを含む懸濁製剤であり;
前記浸透剤含有製剤は2つの円柱錠剤を含み、それぞれの錠剤は塩化ナトリウム塩をセルロース結合剤及びポビドン結合剤と共に含み;
前記ピストンアセンブリーは、超高分子量ポリエチレンを含み、ここで、前記リザーバーの壁に対して前記縁を偏らせるために保持された前記ばねは傾斜コイルばねであり;
前記浸透圧式デリバリーシステムは、
前記浸透剤含有製剤に隣接するリザーバーの第一の遠心端に位置する半透膜であって、ここで、該半透膜はポリウレタンを含む、半透膜;及び
前記活性薬剤含有製剤に隣接する前記リザーバーの第2の遠心端に位置する流量調節器であって、ここで、前記流量調節器はポリエーテルエーテルケトンを含む、流量調節器、
を更に含む、請求項2に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項23】
前記システムは対象に移植可能である、請求項22に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項24】
前記リザーバーは不浸透性材料からなる、請求項1〜23のいずれか1項に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項25】
前記システムは対象に移植可能である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項26】
活性薬剤含有製剤を液体環境に送達するための浸透圧式デリバリーシステムであって:
活性薬剤含有製剤及び浸透剤含有製剤を含む管状内腔を有するリザーバーであって、前記リザーバーはチタン合金を含むリザーバー;
(i)ωインターフェロン、スクロース、メチオニン、クエン酸一水和物、及びクエン酸ナトリウムを含む粒子製剤、並びに(ii)安息香酸ベンジル及びポリビニルピロリドンを含む懸濁ビヒクル、を含む懸濁製剤を含む前記活性薬剤含有製剤;
2種類の円柱錠剤を含む前記浸透剤含有製剤であって、それぞれの錠剤は塩化ナトリウム塩をセルロース結合剤及びポビドン結合剤と共に含む浸透剤含有製剤;
前記浸透剤含有製剤から前記活性薬剤含有製剤を分離するための前記管状内腔内に位置するピストンアセンブリーであって、ここで、(i)該ピストンアセンブリーは前記管状内腔に位置させるために構築され、配置された砂時計形状を有した円柱状胴体を含み、(ii)該円柱状胴体は超高分子量ポリエチレンを含み、該円柱状胴体は、その遠心端に、前記リザーバーの壁に対して係合し封着するための縁を、また、該遠心端に、該リザーバーの壁に対して該縁を偏らせるために保持された傾斜コイルばねを更に有している、ピストンアセンブリー;
前記浸透剤含有製剤に隣接する前記リザーバーの第1の遠心端に位置する半透膜であって、該半透膜はポリウレタンを含む、半透膜;及び
前記活性薬剤含有製剤に隣接する前記リザーバーの第2の遠心端に位置する流量調節器であって、該流量調節器はポリエーテルエーテルケトンを含む、流量調節器
を含む、浸透圧式デリバリーシステム。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の浸透圧式デリバリーシステムの製造方法であって、
前記リザーバー、前記活性薬剤含有製剤、前記浸透剤含有製剤、前記ピストンアセンブリー、半透膜及び流量調節器を提供すること;
前記ピストンアセンブリーを前記活性薬剤含有製剤が前記浸透剤含有製剤から分離するように管状内腔に位置させ、前記半透膜を前記浸透剤含有製剤に隣接する前記リザーバーの第1の遠心端に位置させ、そして前記流量調節器を前記活性薬剤含有製剤に隣接する前記リザーバーの第2の遠心端に位置させるように、前記リザーバー、前記活性薬剤含有製剤、前記浸透剤含有製剤、前記ピストンアセンブリー、前記半透膜及び前記流量調節器を組み立てること、を含む製造方法。
【請求項28】
インターフェロン反応性疾患の治療法で対象に用いられる浸透圧式デリバリー装置であって、該方法は対象に請求項16〜19及び26のいずれか1項に記載の装置を移植することを含む、浸透圧式デリバリー装置。
【請求項29】
インターフェロン反応性疾患の治療法で対象に用いられる請求項28に記載の浸透圧式デリバリー装置であって、ここで、前記インターフェロン反応性疾患はC型肝炎ウイルス感染症である、浸透圧式デリバリー装置。
【請求項30】
前記インターフェロンはαインターフェロン又はωインターフェロンである、請求項30に記載の浸透圧式デリバリー装置。
【請求項31】
インターフェロン反応性疾患の治療法で対象に用いられる請求項28に記載の浸透圧式デリバリー装置であって、ここで、前記インターフェロン反応性疾患は多発性硬化症である、浸透圧式デリバリー装置。
【請求項32】
前記インターフェロンはβインターフェロン又はωインターフェロンである、請求項31に記載の浸透圧式デリバリー装置。
【請求項33】
糖尿病又は糖尿病関連疾患の治療法で対象に用いられる浸透圧式デリバリー装置であって、該方法は請求項20又は21のいずれか1項に記載の装置を対象に移植することを含む、浸透圧式デリバリー装置。
【請求項34】
浸透圧式デリバリーシステムのための、リザーバーの管状内腔に位置するピストンアセンブリーであって:
前記管状内腔に位置するように構築され配置された胴体であって、該胴体は安息香酸ベンジル及びベンジルアルコールよりなる群から選択される溶媒を含む有機溶媒の存在下で耐浸出性であるポリマー材料からなり、該胴体は前記リザーバーの壁に対して係合し封着するための手段を更に含む胴体
を含むピストンアセンブリー。
【請求項35】
請求項34に記載のピストンアセンブリーであって、ここで、前記胴体はその遠心端に、前記リザーバーの壁に係合し封着するための縁、及び、該遠心端に、該リザーバーの壁に対して該縁を偏らせるために保持されたばねを含む円柱状胴体である、ピストンアセンブリー。
【請求項36】
前記ばねは、傾斜コイルばねであり、非反応性金属からなる、請求項35に記載のピストンアセンブリー。
【請求項37】
請求項34に記載のピストンアセンブリーであって、ここで、該ピストンアセンブリーは前記管状内腔に位置するように構築され配置された胴体を含み、該胴体は有機溶媒中で耐浸出性であるポリマー材料からなり、そして1又は2以上のコンセントリック溝を含み、それぞれの溝は前記リザーバーの壁に係合し封着するための手段を提供するエラストマーO−リングを保持するために形成されている、ピストンアセンブリー。
【請求項38】
請求項34〜37のいずれか1項に記載のピストンアセンブリーであって、ここで、前記ポリマー材料は、ポリエチレン、ポリアリールエーテルケトン及び超高分子量ポリエチレンよりなる群から選択される、ピストンアセンブリー。
【請求項39】
請求項34〜38のいずれか1項に記載のピストンアセンブリーであって、ここで、前記ポリマー材料は、前記有機溶媒に40℃で少なくとも約45日間暴露した場合、揮発性の浸出液を約1.4μg/ml未満生じる、ピストンアセンブリー。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A−4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2010−500890(P2010−500890A)
【公表日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523832(P2009−523832)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/017634
【国際公開番号】WO2008/021133
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(508346561)インターシア セラピューティクス,インコーポレイティド (5)
【Fターム(参考)】