説明

浸透圧送出システムの二片構成内部チャネル型の流れモジュレータ

更なる信頼性および流れモジュレータ機能を有する浸透圧送出システムを提供する。浸透圧送出システムの流れモジュレータは、浸透圧送出システムのリザーバの開口内に位置決めされるべく構成かつ配置された外シェルと、外シェル内に挿入された内コアと、外シェルと内コアとの間に形成されて螺旋形状を有する流体チャネルとを含む。流体チャネルは、浸透圧送出システムのリザーバから活性物質製剤を送出し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する参考説明
本出願は、言及したことにより全体的内容が、本明細書に援用される、2006年5月30日に出願された米国仮出願第60/809,451号の優先権を主張する。
本発明は、概ね、流体環境において活性物質を持続的に送出する浸透圧送出システムに関する。より詳細には本発明は、流体環境において浸透圧送出システムから活性物質を送出する流れモジュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、米国特許第6,524,305号に記述された如き関連技術の浸透圧送出システム(osmotic delivery system)40を示す。浸透圧送出システム40は、浸透物質47と活性物質44とを収容する囲繞体42を含む。浸透物質47と活性物質44との間の仕切りを、分離部材46が形成する。囲繞体42の第一開口45内には半透性プラグ48が挿入される。半透性プラグ48は、囲繞体42の内部への流体の進入を選択的に可能にする。囲繞体42の第二開口39へ、流れモジュレータ20が挿入される。流れモジュレータ20は、囲繞体42の内部への流体の逆拡散を制御し乍ら、活性物質44が囲繞体42の内部からの退出を可能にする。浸透圧送出システム40が流体環境に設置されたとき、囲繞体42の外部からの流体は半透性プラグ48を通り囲繞体42に進入して浸透物質47に浸透し、浸透物質47を膨潤させる。浸透物質47は自身が膨潤するにつれて分離部材46を変位させ、流れモジュレータ20を介して所定量の活性物質44を使用環境へ送出する。
【0003】
図1に示された関連技術の浸透圧送出システム40において、流れモジュレータ20の外面は螺旋状送出路32を含み、送出路を介して、活性物質44は囲繞体42の内部から外部へ通過する。螺旋状送出路32を形成する螺条36は、活性物質44が螺旋状送出路32を通過するときに囲繞体42の内面43に接触するように、囲繞体42の内面43に当接する。螺旋状送出路32のピッチ、幅、断面積および形状は、流体環境から囲繞体42内への逆拡散が最小限となる如く選択される。流れモジュレータ20には、充填孔22および排気孔24が形成される。浸透圧送出システム40を組立てるときには、先ず流れモジュレータ20を囲繞体42へ挿入する。次に、活性物質44を充填孔22から囲繞体42へ注入し、他方で囲繞体42内の気体を排気孔24から逃す。その後、孔22、24へキャップ26を挿入して、活性物質44の送出が螺旋状送出路32を介してのみ行われるようにする。
【特許文献1】米国特許第6,524,305号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記説明から理解されるように、浸透圧送出システムにおいて更なる信頼性および流れモジュレータ能力を提供することに対する要望が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
一特徴として、本発明は、
浸透圧送出システムのリザーバの開口内に位置決めされるように構成かつ配置された外シェルと、
前記外シェル内に挿入された内コアと、
前記外シェルと前記内コアとの間に形成された流体チャネルであって、前記浸透圧送出システムのリザーバから活性物質製剤を送出し得る流体チャネルとを含む、浸透圧送出システムの流れモジュレータに関する。
【0006】
別の特徴として本発明は、リザーバと、前記リザーバの第一端に配設されて前記リザーバ内への流体流入を選択的に可能にする半透性プラグと、前記リザーバの第二端に配設された流れモジュレータであって、前記リザーバ内に収容された活性物質製剤を、浸透圧送出システムが作用する流体環境に対して送出し得る螺旋状内部チャネルを含む流れモジュレータを備えた、浸透圧送出システムに関する。
【0007】
更に別の特徴として本発明は、
不透過性材料で作成されたリザーバと、前記リザーバ内に浸透圧エンジンを収容する第一チャンバと、
前記リザーバ内において活性物質製剤を収容する第二チャンバと、
前記リザーバの第一端で第一チャンバに隣接して配設された半透性プラグと、
前記リザーバの第二端で第二チャンバに隣接して配設された、上述の流れモジュレータとを含む、活性物質製剤のための植設可能な送出システムに関する。
【0008】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明および添付の各請求項から明らかであろう。
【0009】
以下に説明される添付図面は本発明の代表的実施形態を例示するが、本発明は他の等しく有効な実施形態を許容し得ることから、添付図面は本発明の有効範囲を制限するものと見做されるべきでない。各図は必ずしも縮尺通りではないが、明瞭化および簡潔さのために幾つかの特定構造および幾つかの図は縮尺通りにまたは概ね誇張されて示されることがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、添付図面に示された幾つかの好適実施形態を参照して本発明を詳細に説明する。好適実施形態の説明上、本発明の十分な理解のために多くの特定の詳細が示されている。しかしながら、当業者であれば、これらの特定の詳細の幾つかもしくは全てが無くても本発明は実施され得ることを理解するであろう。他の事例において、本発明を不必要に不明瞭としないように、公知の特徴および/またはプロセス段階は詳細には記述されていない。更に、共通または同様の要素を特定するために同様または同一の参照番号が使用されている。
【0011】
図2A乃至図2Eは、浸透圧送出システムのリザーバから活性物質製剤を送出する流れモジュレータ200の部分断面図を示す。図2Aを参照すると流れモジュレータ200は、浸透圧送出システムのリザーバ内の活性物質製剤に晒される側である取入側201と、浸透圧送出システムが作用する流体環境に晒される側である吐出側203とを有する。典型的に流体環境は水性環境、すなわち流体環境は水を含有する。流れモジュレータ200は、外シェル202と、外シェル202内に挿入された概ね円筒状の内コア204とを含む。外シェル202と内コア204との間で、流れモジュレータ200の取入側201から吐出側203にかけて、螺旋形状の流体チャネル206が延在する。流体チャネル206の全てまたは実質的部分は、螺旋形状を有し得る。流体チャネル206は、流れモジュレータ200の内部にある。故に流れモジュレータ200は、流体チャネル206を通過する活性物質製剤と、浸透圧送出システムのリザーバとの間のバリヤを形成する。
【0012】
図2A乃至図2Cにおいて、内コア204の外面210は外シェル202の内面212と合致する。流体チャネル206は、図2Aに示された如く内コア204の外面210に形成されるか、または図2Bに示された如く外シェル202の内面212に形成され得る。選択的に、図2Cに示された如く流体チャネル206は、内コア204の外面210に形成された第一流体チャネル206aと、外シェル202の内面212に形成された第二流体チャネル206bとを含み、その場合に第一流体チャネル206aおよび第二流体チャネル206bは相互に対して隣接または連通する。流体チャネル206a、206bの各々の全てまたは実質的部分は螺旋形状を有する。選択的に、図2Dに示された如く、内コア204の外面210と外シェル202の内面212との間に流れインサート214が設置され、この場合に流れインサート214は流体チャネル206を提供する。流れインサート214は、例えばコイル管とされてよく、その場合にコイル管の巻線間のスペースが流体チャネル206の役割を果たす。選択的に流れインサート214は螺旋溝が形成された中空の円筒体もしくはスリーブとされてよく、その場合には螺旋溝が流体チャネル206の役割を果たす。流体チャネル206は任意の所望断面を有してよく、その例として円形状もしくはD形状が挙げられる。図2A乃至図2Eにおいて、D形状の流体チャネルが示される。流体チャネル206の長さは、浸透圧送出システムの構成および所望の解放速度に依存する。典型的に、流体チャネル206の(螺旋)長さは10〜50mmの範囲である。典型的に、流体チャネル206の有効断面直径は0.1〜0.5mmの範囲である。これらの範囲は例示であり、本明細書中に別様に記述される本発明を限定することは意図されない。
【0013】
図2A乃至図2Dを参照すると、内コア204の最大外径および外シェル202の最大内径は、内コア204の外面210と外シェル202の内面212との間に締り嵌めもしくはシールが存在する如く選択される。この締り嵌めまたはシールは、製剤の流れを流体チャネル206に制限する。この締り嵌めもしくはシールは、内コア204および/または流れインサート214が外シェル202から放出されるのを阻止するに十分であり得る。他方、図2A乃至図2Cにおいて、内コア204および外シェル202の表面210、212の合致部分は、内コア204を外シェル202に付加的に固定するためにねじ山結合、接着剤結合、溶接結合等の特徴を含んでよい。図2Dにおいて、流れインサート214の内面および外面214a、214bの各部分であって、内コア204および外シェル202のそれぞれの外面210および内面212の合致部分間には、同様の結合構造が形成され得る。図2Eは、外シェル202からの内コア204の放出を阻止する他の方法を開示し、この方法は外シェル202の内面212上の内ショルダ218に当接/係合する内コア204の外面210上の外ショルダ216を含む。これにより、流れモジュレータ200の吐出側203への内コア204の放出が阻止される。ショルダ216、218の当接/係合面は、平坦とされ得るか、または図2Eに示された如くテーパ付けされ得る。
【0014】
浸透圧送出システムが作用する流体環境へ内コア204が外シェル202から放出されるのを阻止するために当接/係合するショルダ216、218の使用は、図2A乃至図2Dに示された実施形態の内の任意の実施形態に対して適用され得る。更に、図2A乃至図2Eに示された実施形態の夫々の特徴の内の任意の特徴は、交換され且つ組み合わされることにより、流れモジュレータ200の他の実施形態が構成され得る。例えば図2Eにおいて、図2Cに関して記述された如き螺旋形状を有するチャネルが外シェル202の内面212にも配置され得る。あるいは、図2Dにおいては、外シェル202の内面212および/または内コア204の外面210に図2Aおよび図2Bに関して記述された如き螺旋形状を有するチャネルが夫々配置され得、その場合に外シェル202および/または内コア204におけるチャネルは、流れインサート214における流体チャネル206と隣接または連通する。
【0015】
図2A乃至図2Eを参照すると、外シェル202、内コア204および流れインサート214は好適には、不活性で生体適合性の材料で形成される。不活性で生体適合性の材料例として、限定的でなく、非反応性ポリマ、およびチタン、ステンレス鋼、白金およびそれらの合金、ならびにコバルト/クロム合金の如き金属が挙げられる。非反応性ポリマは、浸透圧送出システムが作用する流体環境に活性物質製剤が送出されるときに活性物質製剤と金属材料との間の相互作用を回避することが望ましい場合に有用である。適切な非反応性ポリマ例として、限定的で無く、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリアリールエーテルエーテルケトンの如きポリアリールエーテルケトン、超高分子量ポリエチレン、フッ素化エチレン−プロピレン、ポリメチルペンテン、および液晶ポリマが挙げられる。好適には、少なくとも、外シェル202、内コア204および流れインサート214の各表面であって、活性物質製剤が流体チャネル206を通り流れるときに活性物質製剤に対して晒される各表面は、活性物質製剤に不都合な影響を与えない材料で作成または被覆される。好適実施形態において、それらの各表面は、不活性で生体適合性である非金属材料で作成される。斯かる非金属材料は非反応性ポリマであり、その例は上述の通りである。
【0016】
流体チャネル206の長さ、断面形状および流れ面積は、流体チャネル206を通る活性物質製剤の平均的な線速度が、浸透圧送出システムが作用する流体環境からの拡散もしくは浸透による材料の線形内方流入の平均的な線速度よりも大きいように選択され得る。これにより、もし制御されなければ浸透圧送出システムにおける活性物質製剤を汚染する逆拡散を減衰もしくは緩和する効果が得られる。活性物質製剤の解放速度は、以下に記述される如く流体チャネル206の幾何学形状を改変することにより改変され得る。
【0017】
流体チャネル206を通る活性物質の対流量(convective flow)は、浸透圧送出システムの圧送速度と、浸透圧送出システムのリザーバ内の活性物質製剤における活性物質の濃度とにより決定される。対流量は以下の如く表現され得る:
Qca=(Q)(Ca) (1)
式中、
Qcaは、mg/日を単位とする有効な対流移送量であり、
Qは、cm3/日を単位とする活性物質製剤の全体的対流移送量であり、且つ
Caは、mg/cm3を単位とする浸透圧送出システムのリザーバ内の活性物質製剤における活性物質の濃度である。
【0018】
流体チャネル206を流出する活性物質の拡散流量は、活性物質の濃度および拡散率と、流体チャネル206の断面形状および長さとの関数である。拡散流量は以下の如く表現され得る:
Qda=Dπr2ΔCa/L (2)
式中、
Qdaは、mg/日を単位とする活性物質の拡散移動量であり、
Dは、cm2/日を単位とする流れモジュレータ20を通る拡散率であり、
rは、cmを単位とする流体チャネル206の有効内側半径であり、
ΔCaは、mg/cm3を単位とする、浸透圧送出システムのリザーバ内の活性物質製剤における活性物質の濃度と、流れモジュレータ200の送出オリフィス205の外側流体環境における活性物質の濃度との間の差であり、且つ
Lは、cmを単位とする流体チャネル206の(螺旋)長さである。
【0019】
一般的に、濃度差ΔCaが浸透圧送出システム内の活性物質製剤における活性物質の濃度Caによって接近似するように、浸透圧送出システム内の活性物質製剤における活性物質の濃度は、使用流体環境における活性物質の濃度よりも相当に高い。故に、次式が成り立つ:
Qda=Dπr2Ca/L (3)
【0020】
活性物質の拡散流量(flux)を、活性物質の対流量よりも相当に少なく維持することが概ね望ましい。これは以下の如く表される:
Qda/Qca=Dπr2Ca/QCaL=Dπr2/QL<1 (4)
式(4)は、相対的拡散流量は、体積流量および通路長が大きいほど小さく、拡散率およびチャネル半径が大きいほど大きく、且つ活性物質濃度に依存しないことを表している。
【0021】
流体チャネル206が浸透圧送出システム内へ開放している場合の水分の拡散流量は、以下の如く近似され得る:
Qwd(res)=CoQe(-QL/DwA) (5)
式中、
Coは、mg/cm3を単位とする水分の濃度プロフィルであり、
Qは、mg/日を単位とする質量流量であり、
Lは、cmを単位とする流体チャネル206の長さであり、
Dwは、cm2/日を単位とする、流体チャネル206内の物質を通る水分の拡散率であり、且つ
Aは、cm2を単位とする流体チャネル206の断面積である。
【0022】
上記送出オリフィスの一端から他端に亙る流体力学的な圧力低下は以下の如く計算され得る:
ΔP=8QLμ/πr4 (6)
式中、
Qは、mg/日を単位とする質量流量であり、
Lは、cmを単位とする螺旋状の流体チャネルの長さであり、
μは、製剤の粘度であり、且つ
rは、cmを単位とする流体チャネルの有効内側半径である。
【0023】
図3は、流れモジュレータ200を含む浸透圧送出システム300を示す。浸透圧送出システム300は図2Aの流れモジュレータ200と共に示されているが、図2A乃至図2Eに示された流れモジュレータ200の内の任意の流れモジュレータが浸透圧送出システム300と共に使用され得る。浸透圧送出システム300は、身体内に植設され得る如く寸法設定されるリザーバ302を含む。リザーバ302は、開放端304、306を有する。流れモジュレータ200は開放端304に挿入される。開放端306には、半透性プラグ308が挿入される。
【0024】
半透性プラグ308は、浸透圧送出システムが動作する流体環境からリザーバ302内への流体の流量(rate)を制御する膜である。半透性プラグ308は、流体環境からの流体のリザーバ302への進入を可能にする。リザーバ302内の組成物は、半透性プラグ308の半透性の性質により、半透性プラグ308を介してリザーバ302の外へ流出することを阻止される。半透性プラグ308は、開放端306に部分的にもしくは完全に挿入され得る。前者の場合に半透性プラグ308は、リザーバ302の端部に係合する停止部材として作用する拡大端部308aを含み得る。半透性プラグ308の外面308bは突起もしくはリブ308cを有し、リブはリザーバ302の内面310に係合することにより、半透性プラグ308をリザーバ302に対して固定すると共に、リザーバ302と半透性プラグ308との間にシールを形成する。リザーバ302は、また、半透性プラグ308上の突起308cを受ける逃げ溝も含み得る。半透性プラグ308の半透性材料は、湿潤時にリザーバ302の形状に形状適合し得る材料であって、リザーバ302の内面310に付着し得る材料である。典型的には、これらの材料は、上記圧送速度(pumping rate)およびシステム構成要件に基づいて選択され得るポリマ材料である。適切な半透性材料として、限定的で無く、可塑性セルロース材料、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の如き強化ポリメチルメタクリレート、およびポリウレタンおよびポリアミド、ポリエーテル−ポリアミド共重合体、熱可塑性共ポリエステルなどが挙げられる。ポリウレタンが概ね好適である。
【0025】
リザーバ302の内側には2つのチャンバ312、314が形成される。チャンバ312、314は、摺動可能なピストンもしくは可撓性なダイヤフラムの如き仕切り316により分離され、該仕切りは、リザーバ302内に嵌合してシール接触を形成すべく、且つリザーバ302内で長手方向に移動もしくは変形すべく構成される。好適には、仕切り316は不透過性の弾性材料で形成される。一例として仕切り316は不透過性の弾性材料で作成された摺動可能ピストンとされ得ると共に、該仕切りは、リザーバ302の内面310とのシールを形成する環状リング形状突起316aを含み得る。チャンバ314内において半透性プラグ308に隣接して浸透圧エンジン(osmotic engine)318が配設されると共に、チャンバ312内には流れモジュレータ200に隣接して活性物質製剤320が配設される。仕切り316は、使用に際して定常状態の流れにて、流体環境からの流体が半透性プラグ308を介してリザーバ302へ流入する速度(rate)に対応する速度で活性物質製剤320が流体チャネル206から放出されるように、半透性プラグ308を介してリザーバ302へ進入し得る周囲流体から活性物質製剤320を分離する。
【0026】
浸透圧エンジン318は、図示された如く錠剤の形態とされ得る。一個以上の斯かる錠剤が使用され得る。選択的に浸透圧エンジン318は、他の形状、組織構造、密度および稠度を有し得る。例えば浸透圧エンジン318は、粉末または細粒の形態とされ得る。浸透圧エンジン318は浸透性ポリマを含み得る。浸透性ポリマは、水分および生体液の如き水性流体を吸収し得る親水性ポリマであって、水性流体を吸収すると同時に平衡状態へと膨潤もしくは膨張し、吸収した流体の大部分を保持し得る親水性ポリマである。浸透性ポリマは高度に膨潤もしくは膨張し、通常は2〜50倍の体積増大を呈する。浸透性ポリマは、架橋されていても、されていなくても良い。好適な浸透性ポリマは、膨潤後に共有結合もしくはイオン結合または残留結晶領域により形成された架橋の如く、軽度に架橋された親水性ポリマである。浸透性ポリマは、植物由来、動物由来もしくは合成由来とされ得る。浸透圧エンジン318において使用に適した浸透性ポリマもしくは親水性ポリマの例として、限定的で無く、30,000〜5,000,000の分子量を有するポリ(ヒドロキシ−アルキル・メタクリレート);10,000〜360,000の分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP);陰イオン性および陽イオン性のヒドロゲル;高分子電解質複合体;グリオキサール、ホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドにより架橋されて低いアセテート残量を有すると共に200〜30,000の重合度を有するポリビニル・アルコール;メチルセルロースと、架橋寒天と、カルボキシメチルセルロースとの混合物;ヒドロキシプロピルメチルセルロースとナトリウムカルボキシメチルセルロースとの混合物;ヒドロキシプロピルエチルセルロースとナトリウムカルボキシメチルセルロースとの混合物;ナトリウムカルボキシメチルセルロース;カリウムカルボキシメチルセルロース;無水マレイン酸の共重合体であって、該共重合体に関する無水マレイン酸のモル当たりで0.001〜約0.5モルの飽和架橋剤により架橋されたスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンまたはイソブチレンとの無水マレイン酸の共重合体を細かく分割した分散体から形成された、水により膨潤可能な非水溶性の共重合体;水により膨潤可能な、N−ビニルラクタムのポリマ;ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンゲル;ポリオキシブチレン−ポリエチレンブロック共重合体ゲル;イナゴマメガム(carob gum);ポリアクリルゲル;ポリエステルゲル;ポリ尿素ゲル;ポリエーテルゲル;ポリアミドゲル;ポリセルロースゲル;ポリガムゲル;および最初は乾燥したヒドロゲルであって、ガラス質の該ヒドロゲルに浸透してそのガラス温度を低下させる水分を吸い込んで吸収するというヒドロゲルが挙げられる。浸透性ポリマの他の例として、CARBOPOL(登録商標)酸性カルボキシポリマ、すなわち、ポリアリルスクロースと架橋されたアクリル酸のポリマであって、カルボキシルポリメチレンおよびカルボキシビニルポリマとして知られ、250,000〜4,000,000の分子量を有するというポリマ;CYNAMER(登録商標)ポリアクリルアミド;架橋された水膨潤可能なインデン−マレイン酸無水物ポリマ;80,000〜200,000の分子量を有するGOOD-RITE(登録商標)ポリアクリル酸;100,000〜5,000,000以上の分子量を有するPOLYOX(登録商標)ポリエチレンオキシド・ポリマ;澱粉グラフト共重合体;ジエステル架橋ポリグルランの如き縮合グルコース単位から構成されたAQUA-KEEPS(登録商標)などの如き、ヒドロゲルを形成するポリマが挙げられる。浸透圧エンジン318は、また、浸透性ポリマに加えて、またはそれに代えて、浸透物質を含み得る。浸透物質として、半透性壁部を通して外部流体に対し浸透圧勾配を呈する無機および有機の化合物が挙げられる。浸透物質は流体を浸透式システム内へと吸収することで、利用可能流体を以て上記製剤を押圧して上記流れモジュレータを介して送出する。浸透物質は、浸透的に効果的な化合物もしくは溶質として知られている。浸透圧エンジン318に有用な浸透物質の例としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、リン酸カリウム、マンニトール、尿素、イノシトール、琥珀酸マグネシウム、酒石酸、およびラフィノース、スクロース、グルコース、ラクトース、ソルビトールの如き炭水化物、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0027】
活性物質製剤320は、一種類以上の活性物質を含み得る。上記活性物質は、生理学的もしくは薬理学的に有効な任意の物質、特に、人間または動物の身体に投与されることが知られた薬剤、ビタミン、栄養剤などの物質とされ得る。流れモジュレータ200を介して浸透圧送出システム300により投与され得る活性物質としては、限定的で無く、感染症、慢性的痛覚、糖尿病、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血液循環系、シノプティック部位(synoptic site)、神経効果器接合部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、局所ホルモン系、消化器および排泄系、ヒスタミン系、および中枢神経系に作用する薬剤が挙げられる。適切な作用物質は、例えば、タンパク質、酵素、ホルモン、ポリヌクレオチド、核タンパク質、多糖類、糖タンパク質、リポタンパク質、ポリペプチド、ステロイド、鎮痛剤、局部麻酔薬、抗生物質、抗炎症性コルチコステロイド、目薬、およびこれらの種の合成類似体から選択され得る。好適な活性物質としては、巨大分子(タンパク質およびペプチド)、および高度に強力な活性物質が挙げられる。上記活性物質は、固体、液体およびスラリの如き多様な化学的および物理的形態で存在し得る。一種類以上の活性物質に加え、製剤320は選択的に、抗酸化剤、安定化剤、緩衝剤、および浸透増進剤の如き、医薬的に容認可能な担体および/または付加的成分を含み得る。
【0028】
リザーバ302に使用される材料は、その寸法もしくは形状の変化なしで浸透圧エンジン318の膨張に耐えるに十分に剛性なものであるべきである。更に上記材料は、植設時にリザーバ302が委ねられ得る応力下で、または手術時に発生する圧力による応力下で、該リザーバが確実に漏出、裂開、破断または歪曲しないものでなければならない。リザーバ302は、当業界で知られた不活性で生体適合性である天然材料もしくは合成材料で形成され得る。リザーバ302の材料は、生体侵食性(biocrodible)であっても、なくても良い。生体侵食性である材料は、使用流体環境において、少なくとも部分的に溶解し、分解し、または別様に侵食される。好適には、リザーバ302の材料は生体非侵食性である。リザーバ302に対して好適な材料は、概ね人間に対する植設に許容できる材料である。特に、リザーバ302内の製剤の安定性が使用流体環境に対して敏感である場合、リザーバ302の材料は不透過性であることが好適である。リザーバ302に適した材料例として、非反応性ポリマ、または生体適合性の金属もしくは合金が挙げられる。リザーバ302に対する非反応性ポリマの例として、限定的で無く、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元重合体の如きアクリロニトリルポリマ;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、およびテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロエチレンとの共重合体の如きハロゲン化ポリマ;ポリイミド;ポリスルホン;ポリカーボネート;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリ塩化ビニル−アクリル共重合体;ポリカーボネート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン;およびポリスチレンが挙げられる。リザーバ302に対する金属製材料の例として、限定的で無く、ステンレス鋼、チタン、白金、タンタル、金、およびそれらの合金、ならびに金メッキされた鉄系合金、白金メッキされた鉄系合金、コバルト−クロム合金、および窒化チタン被覆されたステンレス鋼が挙げられる。寸法が重要な用途、有効搭載容量が大きくて持続時間の長い用途、および製剤が植設部位における身体の化学作用に対して敏感である用途に対し、リザーバ302は好適には、チタンにより、または60%超、多くの場合には85%超のチタンを含むチタン合金により作成される。
【0029】
流れモジュレータ200の直径は、該流れモジュレータ200がリザーバ302の開放端304に圧力嵌めされ得る如く選択され得る。また、外シェル202の外面220およびリザーバ302の内面310上に、流れモジュレータ200をリザーバ302に固定するための螺条の如き特定構造を含んでよい。
【0030】
次の例は本発明を解説するものであり、本明細書中に他に記載された本発明を限定すると解釈されるべきでない。
【0031】
図3に示された如く、例えばC型肝炎を治療するインターフェロン・オメガ(IFN−ω)を収容する浸透圧送出システムが、以下の構成要素から組立てられた:(i)植設等級のチタン合金で作成されると共に端部に逃げ溝を有するリザーバ、(ii)主として、セルロースおよびポビドン結合剤を有する塩化ナトリウム塩を各々が含むという2個の円筒状錠剤を含む浸透圧エンジン、(iii)ピストン、(iv)ポリウレタンで作成されると共に、リザーバに逃げ溝と合致する保持リブを有する半透性プラグ、(v)D形状断面、0.25mmの直径および35mmの螺旋長を有する螺旋状の内部流れチャネルを有する流れモジュレータ、および(vi)非水性媒体中に懸濁されたIFN−ωの粒子製剤を含む懸濁液製剤。
【0032】
上述の如き数個の浸透圧送出システムのリザーバが、150μリットルの懸濁液製剤により充填された。各浸透圧送出システムの半透性プラグ端が、リン酸塩緩衝溶液(PBS)により満たされたガラス小瓶内に載置され、且つ各浸透圧送出システムの流れモジュレータの端部が、解放用水性媒体により満たされたガラス小瓶内に載置された。各システムは、5℃および30℃で夫々保存もしくは温置された。指定された時点で、上記解放用媒体が除去され、新たな溶液と交換された。サンプリングされた解放用媒体は、逆位相高性能液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)を用いて活性物質含有量について分析された。図4は、6ヶ月に亙る試験管内におけるIFN−ωの累積的解放量を示している。
【0033】
本発明は、次の利点を有する。二部構成流れモジュレータは、流れモジュレータの設計および製造における融通性を可能にする。外シェルはリザーバと一体化されないので、流れモジュレータがリザーバに挿入される前に、流れモジュレータのチャネルの検査を可能にする。二部構成の流れモジュレータは、リザーバへの流れモジュレータの挿入時に上記チャネル上への付加的機械的力を最小限にする。二片構成もしくは二部構成(two-piece)の流れモジュレータは共通の外スリーブを維持し乍ら、内コアもしくは流れインサートのチャネルを変更することにより、融通性により流体チャネルの寸法を最適化する。
【0034】
本発明は限られた数の実施形態に関して説明されたが、本開示内容に恩恵を受ける当業者であれば、本明細書中に開示された本発明の有効範囲から逸脱しない他の実施形態が案出され得ることを理解するであろう。故に、本発明の範囲は特許請求の範囲の各請求項によってのみ限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】従来技術の浸透圧送出システムの断面図である。
【図2A】外シェル内に挿入された内コアと、内コアに形成された螺旋状内部流体チャネルとを有する流れモジュレータの部分断面図である。
【図2B】外シェル内に挿入された内コアと、外シェルに形成された螺旋状内部流体チャネルとを有する流れモジュレータの部分断面図である。
【図2C】外シェル内に挿入された内コアと、内コアおよび外シェルに形成された螺旋状内部流体チャネルとを有する流れモジュレータの部分断面図である。
【図2D】外シェル内に挿入された内コアと、螺旋状内部流体チャネルを含むと共に内コアと外シェルとの間に介設された流れインサートとを有する流れモジュレータの部分断面図である。
【図2E】外シェル内に挿入された内コアと、内コアが外シェルから放出されるのを阻止する内コアおよび外シェル上の夫々の係合面とを有する流れモジュレータの部分断面図である。
【図3】図2Aの流れモジュレータを備えた浸透圧送出システムの断面図である。
【図4】図3に係る浸透圧送出システムを用いた活性物質の試験管内での累積的解放量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸透圧送出システムのリザーバの開口内に位置決めできるように構成かつ配置された外シェルと、
前記外シェル内に挿入された内コアと、
前記外シェルと前記内コアとの間に形成された流体チャネルであって、前記浸透圧送出システムのリザーバから活性物質製剤を送出し得る流体チャネルとを含む、浸透圧送出システムの流れモジュレータ。
【請求項2】
前記流体チャネルは、前記外シェルの内面に合致する前記内コアの外面上に形成されている、請求項1記載の流れモジュレータ。
【請求項3】
前記流体チャネルは、前記内コアの外面と合致する前記外シェルの内面上に形成されている、請求項1記載の流れモジュレータ。
【請求項4】
前記流れモジュレータは、前記外シェルと内コアとの間に配設された流れインサートを更に含み、
前記流体チャネルは前記流れインサート内に形成されている、請求項1記載の流れモジュレータ。
【請求項5】
前記外シェル、内コアおよび流れインサートは不活性材料で作成されている、請求項4記載の流れモジュレータ。
【請求項6】
前記不活性材料は非金属材料である、請求項5記載の流れモジュレータ。
【請求項7】
前記外シェルおよび内コアは不活性材料で作成されている、請求項1記載の流れモジュレータ。
【請求項8】
前記不活性材料は非金属材料である、請求項7記載の流れモジュレータ。
【請求項9】
前記外シェルは前記内コアに封止状態で係合している、請求項1記載の流れモジュレータ。
【請求項10】
前記内コアは外ショルダを含み且つ前記外シェルは内ショルダを含み、
前記外ショルダおよび内ショルダは、使用に際して、係合することにより前記外シェルから前記内コアが放出されるのを阻止する、請求項1記載の流れモジュレータ。
【請求項11】
前記流体チャネルの長さは10〜50mmの範囲である、請求項1記載の流れモジュレータ。
【請求項12】
前記流体チャネルの有効断面直径は0.1〜0.5mmの範囲である、請求項1記載の流れモジュレータ。
【請求項13】
リザーバと、
前記リザーバの第一端に配設されて前記リザーバ内への流体流入を選択的に可能にする半透性プラグと、
前記リザーバの第二端に配設された流れモジュレータであって、前記リザーバ内に収容された活性物質製剤を、浸透圧送出システムが作用する流体環境に送出し得る螺旋状内部チャネルを含む流れモジュレータとを含む、浸透圧送出システム。
【請求項14】
前記流れモジュレータは、外シェルと、前記外シェル内に挿入された内コアとを含み、
前記螺旋状内部チャネルは前記外シェルと前記内コアとの間に形成されている、請求項13記載の浸透圧送出システム。
【請求項15】
前記流れモジュレータは前記リザーバの第二端内に圧力嵌めされている、請求項14記載の浸透圧送出システム。
【請求項16】
前記浸透圧送出システムは、前記リザーバ内に設置され且つ移動可能である仕切りであって、浸透圧エンジンを収容する第一チャンバと、前記活性物質製剤を収容する第二チャンバとを形成する仕切りを更に含み、
第一チャンバは前記半透性プラグに隣接し且つ第二チャンバは前記流れモジュレータに隣接している、請求項14記載の浸透圧送出システム。
【請求項17】
前記活性物質製剤はインターフェロン・オメガを含む、請求項13記載の浸透圧送出システム。
【請求項18】
不透過性材料で作成されたリザーバと、
前記リザーバ内において浸透圧エンジンを収容する第一チャンバと、
前記リザーバ内において活性物質製剤を収容する第二チャンバと、
前記リザーバの第一端にて第一チャンバに隣接して配設された半透性プラグと、
前記リザーバの第二端にて前記第二チャンバに隣接して配設された、請求項1乃至12記載の流れモジュレータとを含む、活性物質製剤のための植設可能な送出システム。
【請求項19】
前記活性物質製剤はインターフェロン・オメガを含む、請求項18記載の植設可能な送出システム。
【請求項20】
前記浸透圧エンジンと前記活性物質製剤との間の仕切りを更に含む、請求項18記載の植設可能な送出システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−538717(P2009−538717A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513435(P2009−513435)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/069990
【国際公開番号】WO2007/140416
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(508346561)インターシア セラピューティクス,インコーポレイティド (5)
【Fターム(参考)】