説明

消失性バインダー組成物

【課題】導電体、誘電体または蛍光体層にクレーターおよび/またはピンホールなどの膜欠陥が生じないように膜が可撓性を発揮するための粘度を有し、安全にかつ簡便に取り扱え、より低温で消失する導電性、誘電性または蛍光性塗料用の消失性バインダー組成物を開発して提供する。
【解決手段】C10〜C16架橋環式二環性炭化水素化合物またはその誘導体を含有する消失性バインダー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消失性バインダー組成物に関するものである。より詳しくは、本発明の組成物は、導電体層、誘電体層または蛍光体層形成用塗料の消失性バインダー組成物として、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略す)または積層コンデンサーなどを製造するため好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
今日、導電性塗料(もしくは導電性ペースト)または誘電体塗料(もしくは誘電体ペースト)は、PDPおよび積層セラミックコンデンサーなどにおいて電極または誘電層を形成することを目的として、広く用いられている。
【0003】
通常、上記の塗料を構成するバインダー樹脂として、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース系樹脂ならびにポリα-メチルスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコールウレタン系樹脂およびメラミン系樹脂などのポリマー類が知られている。
なかでも、導電性粒子または誘電性粒子などの機能性粒子の分散性、組成物の塗布特性、燃焼の容易性などの観点から、エチルセルロースが広く用いられている(例えば特許文献1)。
【0004】
しかしながら、上記のようなバインダー樹脂を用いた導電性または誘電性塗料を使用した場合、乾燥工程または焼成工程などにおいて、バインダー樹脂の残存などが原因となるデラミネーションなどの不都合が生じ、この問題を解決すべく、硫化テルペン、硫化ロジンまたはアルキルメルカプタンを用いる試みがなされている(例えば特許文献2)。しかしながら、この場合、硫黄原子由来の臭いなどの環境上および健康上の問題が新たに生じ、防臭を目的とする特別の施設が必要である。
【0005】
また、バインダー樹脂としてセルロース系樹脂を含有する導電性または誘電性塗料のガラス基板に対する難接着性の改善を目的として、セルロース系樹脂の代わりにアクリル樹脂の使用も試みられている(例えば特許文献3)。しかしながらその場合、導電性粒子の分散安定性が不十分なために、導電性または誘電性粒子の凝集および/または沈降を生じ、さらに膜形成材料層にクレーターおよび/またはピンホールなどの膜欠陥が生じ、新たな問題となっている。
この問題を解決すべく、アクリル系共重合体樹脂に脂肪酸を加えるか、または(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂を用いる試みもなされている(例えば特許文献4および5)が、この場合、重合反応における重合体樹脂の分子量の制御が困難である。また、エチルセルロースを用いた場合、600℃付近までの焼成工程において、微量の残渣が残存し、電気特性を低下させるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−306862号公報
【特許文献2】特開平6−260016号公報
【特許文献3】特開平11−232928号公報
【特許文献4】特開平11−219619号公報
【特許文献5】特開2004−55402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本願発明は、膜形成材料層にクレーターおよび/またはピンホールなどの膜欠陥が生じないように膜が可撓性を発揮するための適度な粘度を有し、安全にかつ簡便に取り扱え、より低温で消失するバインダーの開発および提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、消失性バインダーの開発を目的として鋭意研究した結果、C10〜C16架橋環式二環性炭化水素化合物またはその誘導体が比較的低温で消失性を有することを見出した。
すなわち、本発明によれば、C10〜C16架橋環式二環性炭化水素化合物またはその誘導体を含有することを特徴とする消失性バインダー組成物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明による消失性バインダー組成物は、C10〜C16架橋環式二環性炭化水素化合物またはその誘導体(以下、架橋環式二環性炭化水素化合物という)を含む。
該化合物は油状物質であり、適度な粘性を有しており、かつ比較的低い温度で消失性を有しているので、例えば従来用いられてきたエチルセルロースのような前記のバインダー樹脂の代替として、導電性または誘電性塗料を構成するバインダー樹脂成分および有機溶剤として用いることができる。
【0010】
すなわち、本発明による消失性バインダー組成物を用いれば、前記のバインダー樹脂を用いることなく、またはその使用量を大きく低減させることができる。
さらに、本発明による消失性バインダー組成物を用いれば、従来用いられてきたバインダー樹脂の有機溶剤への溶解工程を省略できる。
【0011】
その上、本発明による消失性バインダー組成物を用いれば、デラミネーション、クレーター、ピンホールおよび焼成残渣がない導電体層、誘電体層または蛍光体層を形成することができ、PDPまたは積層セラミックコンデンサーなどの製造に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の消失性バインダー組成物はC10〜C16架橋環式二環性炭化水素化合物またはその誘導体を含有する。
本発明における、架橋環式炭化水素化合物またはその誘導体としては、二環式テルペン化合物またはその誘導体あるいはビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン誘導体化合物を挙げられる。
二環式テルペン化合物としては、例えばα-ピネン、β-ピネン、カンフェン、Δ-2
-カレン、Δ-3-カレン、リモネン、テルピネン、ターピノーレン、ロンギフォーレン
およびカリオフィレンなどのモノテルペン化合物が挙げられる。
【0013】
二環式テルペン化合物の誘導体としては、例えば上記のモノテルペン化合物とフェノールか、または水酸基、アルキル基もしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェノールとの反応物あるいはそれらの還元物などが挙げられる。
なかでも、カンフェンまたはα-ピネンとフェノールとの反応物、すなわち、イソボルニルフェノールまたはp-メンテニルフェノールおよびこれらの還元物、すなわち、イソボルニルシクロヘキサノールまたはp-メンテニルシクロヘキサノールが好ましい。
また、ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン誘導体化合物、より具体的には、1-イソプロピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物またはそのエステル化合物も好ましい。
【0014】
上記の化合物はいずれも油状物質であり、本発明の消失性バインダー組成物は、上記の化合物から選択される1種または2種以上の混合物をそのままで、あるいは当該組成物を有機溶剤の溶液として供することができる。
【0015】
本発明による消失性バインダー組成物に用いられ得る有機溶剤としては、ジエチルケトンおよびメチルブチルケトンのようなケトン類;n-ペンタノールおよびシクロヘキサノールのようなアルコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルおよび3-メチル-3-メトキシブタノールのようなエーテル系アルコール類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびメトキシブチルアセテートのようなエーテル系エステル類ならびにターピネオールのようなモノテルペン系アルコール類などが挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
上記の有機溶剤の中でも、好適な粘度を有し、かつ入手し易いターピネオールが特に好ましい。
【0016】
なお、有機溶剤として用いられるターピネオールは、例えば、5%、10%および15%の濃度で用いることができる。
例えば、本発明の組成物の10%ターピネオール溶液は、毎分10℃の昇温速度での熱分析で、250℃における残存率が1%以下であり、優れた消失性を示す。
【0017】
また、本発明による消失性バインダー組成物には、添加剤として他にバインダー、粘着性付与剤、可塑剤、表面張力調整剤、安定剤、消泡剤、分散剤などを任意成分として加えてもよい。
本発明の組成物の用途にもよるが、上記の添加剤を加えた際の導電性、誘電性または蛍光性塗料の分散体としての安定性の観点から、本組成物または本組成物の有機溶剤溶液は機能性粒子100部に対して、1〜100部、好ましくは5〜30部を添加することができる。
【0018】
本発明による組成物は、前記有機溶剤、導電性または誘電性金属粒子およびガラス粉末ならびに必要であれば他の任意成分と合わせ、ロール混練機、ミキサーおよびホモミキサーなどの当業者に公知の混練機を用いて混練して導電性または誘電性塗料を調製することができる。
なお、上記の本発明による組成物を含む導電性または誘電性塗料は、例えば、スクリーン印刷、ロールコーター、ブレードコーター、カーテンコールおよびワイヤーコーターのような従来の塗布方法を用いて、ガラス基板などのような塗布対象物に直接塗布するか、印刷するかまたは支持フィルムを介して転写塗布して塗装膜を形成することができる。
【0019】
したがって、本発明による消失性バインダー組成物は、導電性金属粒子、ガラス粉末、誘電体セラミックス粉体または蛍光物質と併用することにより、導電性、誘電性、または蛍光性塗料の消失性バインダーとして極めて有用である。
これらの導電性、誘電性または蛍光性塗料に本発明による消失性バインダー組成物を用いることによりPDPおよび/または積層セラミックコンデンサーの電極用導電体層または誘電体層あるいはPDP用蛍光体層を好適に形成できる。
【0020】
本発明による消失性バインダー組成物を導電性塗料に用いる場合に添加し得る導電性金属としては、金、銀、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、銅、クロムおよび白金などの1種の金属またはこれらの混合物もしくはこれらの合金が挙げられる。
上記の導電性金属の中でも、特に、大気中で焼成しても酸化による導電性の低下が生じず、比較的安価な銀が好ましい。
また、還元性雰囲気で焼成する場合には、ニッケルまたは銅が好ましい。
【0021】
上記の導電性金属の形状としては、粒状、球状、フレーク状など特に限定されず、これらの形状を単独または2種以上の混合物として使用してもよいが、安定な分散体を形成し得る粒状が好ましく、その粒径としては0.1〜10μmが挙げられ、0.2〜5μmがより好ましい。
【0022】
本発明による消失性バインダー組成物を誘電性塗料に用いる場合に添加し得るガラス粉末としては、本発明の消失性バインダーがほぼ完全に消失し得る温度以上の軟化点を有するものが好ましい。例えばガラス粉末をPDPに用いる場合、該パネルのガラス基板の形状になんら変化を及ぼさない400〜600℃の温度範囲にその軟化点を有するガラス粉末が、特に好ましい。
【0023】
そのようなガラス粉末または誘電性セラミックス体としては、酸化鉛-酸化ホウ素-酸化ケイ素-酸化カルシウム(PbO-B2O3-SiO2-CaO)系、酸化亜鉛-酸化ホウ素-酸化ケイ素(ZnO-B2O3-SiO2)系および酸化鉛-酸化亜鉛-酸化ホウ素-酸化ケイ素(PbO-ZnO-B2O3-SiO2)系ガラス粉末などが挙げられる。
また、本発明による消失性バインダー組成物を誘電性塗料に用いる場合に添加し得る誘電性粉末としては、チタン酸バリウムが好ましい。
さらに、本発明の消失性バインダー組成物に通常の蛍光物質を添加することにより蛍光性塗料を調製できる。
【実施例】
【0024】
以下の製造例、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例および製造例によりなんら制限されるものではない。
なお、実施例、製造例および試験例では、特に記載がない限り、以下の試薬および分析装置を用いた。
【0025】
フェノール:和光純薬工業製、試薬特級
カンフェン:日本テルペン化学製カンフェン
ラネーニッケル触媒:日揮化学製N-153
α-ピネン:日本テルペン化学製α−ピネン
p-メンタジエン混合物:日本テルペン化学製ジペンテンT
【0026】
活性白土:水澤化学製活性白土NN
エチルセルロース:ダウケミカル社製STD-45
ブチラール樹脂:積水化学工業製BM−SZ
ターピネオール:日本テルペン化学製ターピネオール
ニッケル粉:堺化学工業製SP-020
【0027】
ガラス粉末:松浪硝子工業製MB−008
銀粉:同和鉱業製 銀粉AG−2−1
チタン酸バリウム:堺化学工業製 高純度ペロブスカイトBT-04A
蛍光体物質:日亜化学工業製 赤色蛍光体材料((Y. Gd)Bo3- Eu3+)
熱分析装置:エスアイアイナノテクノロジー株式会社製TGDTA6300
【0028】
製造例1
フェノール80 gおよび活性白土2.5 gの混合物を110〜120℃に加熱下撹拌し、カンフェン66 gを滴下し、同温度で10時間撹拌を継続した。反応混合物を室温まで冷却し、触媒をろ別し、ろ液を減圧蒸留に付し、145〜165℃/3 mmHgの留分を捕集してイソボルニルフェノール145 gを得た。
【0029】
製造例2
上記のイソボルニルフェノール100 gおよびラネーニッケル触媒10 gの混合物をオートクレーブ中、50 kg/cm2の圧力下、150℃で10時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、ラネーニッケルをろ別し、ろ液を減圧蒸留に付し、155〜165℃/3 mmHgの留分を捕集してイソボルニルシクロヘキサノール99 gを得た。
【0030】
製造例3
フェノール80 gおよび活性白土2.5 gの混合物を110〜120℃に加熱下撹拌し、α-ピネン60 gを滴下し、同温度で10時間撹拌を継続した。反応混合物を室温まで冷却し、残渣をろ別し、ろ液を減圧蒸留に付して125〜154℃/1.5 mmHgの留分を捕集してp-メンテニルフェノール68 gを得た。
【0031】
製造例4
無水マレイン酸78.3 gおよびトルエン30 gの混合物を120℃で加熱撹拌下に溶解し、次いで同温度で撹拌下にp-メンタジエンの異性体混合物(α-テルピネン36.2%含有物) 300 gを滴下し、さらに6時間撹拌を継続した。反応混合物を冷却後に減圧蒸留に付し、160〜175℃/3 mmHgの留分を捕集して1-イソプロピル-4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物(IMA-100) 122 gを得た。
【0032】
比較例1
エチルセルロース10 gをターピネオール90 gに溶解させ、溶液を調整し熱分析用試料とした。
【0033】
比較例2
エチルセルロース5 gをターピネオール95 gに溶解させ、溶液を調整し熱分析用試料とした。
【0034】
実施例1
イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH) 10 gをターピネオール90 gに溶解させ、溶液を調整し熱分析用試料とした。
【0035】
実施例2
エチルセルロース5 gおよびイソボルニルシクロヘキサノール(MTPH) 5 gをターピネオール90 gに溶解させ、溶液を調整し熱分析用試料とした。
【0036】
実施例3
イソボルニルフェノール(BN) 10 gをターピネオール90 gに溶解させ、溶液を調整し熱分析用試料とした。
【0037】
実施例4
エチルセルロース5 gおよびイソボルニルフェノール5 gをターピネオール90 gに溶解させ、溶液を調整し熱分析用試料とした。
【0038】
実施例5
p-メンテニルフェノール(TI-D) 10 gをターピネオール90 gに溶解させ、溶液を調整し熱分析用試料とした。
【0039】
実施例6
エチルセルロース5 gおよびp-メンテニルフェノール(TI-D) 5 gをターピネオール90 gに溶解させ、溶液を調整し熱分析用試料とした。
【0040】
実施例7
製造例4で得られたIMA-100 10 gをターピネオール90 gに溶解させ、溶液を調整し熱分析用試料とした。
【0041】
実施例8
エチルセルロース5 gおよびIMA-100 5 gをターピネオール90 gに溶解させ、溶液を調整し熱分析用試料とした。
【0042】
試験例1
上記の比較例1、2および実施例1〜8で得られた各溶液5 mgをそれぞれ毎分10℃の昇温速度で30〜500℃の温度範囲で熱分析に付し、得られた結果を次の表1にまとめて示す。
【0043】
【表1】

【0044】
上記の表からも明らかように、本発明の組成物;イソボルニルフェノール、イソボルニルシクロヘキサノール、p-メンテニルフェノールまたは1-イソプロピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物をそれぞれ10%とターピネオール90%からなる組成物は、いずれも250℃での残存率は1%以下となり優れた消失性を示した。また、残分率が0になる温度が低くなっていた。
【0045】
実施例9
以下の成分を、ロール混練機を用いて均一に混練して導電性塗料を調製した。
銀粉 0.5μm 100 g
イソボルニルシクロヘキサノール 10 g
ターピネオール 20 g
【0046】
実施例10〜13
実施例9において、イソボルニルシクロヘキサノールに替えてイソボルニルフェノール、p-メンチルフェノール、p-メンチルシクロヘキサノールおよび1-イソピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物をそれぞれ用い、同様にして、導電性塗料をそれぞれ調製した。
【0047】
実施例14
以下の成分を、ロール混練機を用いて均一に混練して導電性塗料を調製した。
ニッケル粉 100 g
イソボルニルシクロヘキサノール 10 g
ターピネオール 20 g
【0048】
実施例15〜18
実施例14において、イソボルニルシクロヘキサノールに替えてイソボルニルフェノール、p-メンチルフェノール、p-メンチルシクロヘキサノールおよび1-イソピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物をそれぞれ用い、同様にして、導電性塗料をそれぞれ調製した。
【0049】
実施例19
以下の成分を、ロール混練機を用いて均一に混練して誘電性塗料を調製した。
イソボルニルシクロヘキサノール 20 g
ターピネオール 30 g
ガラス粉末 100 g
【0050】
実施例20〜23
実施例19において、イソボルニルシクロヘキサノールに替えてイソボルニルフェノール、p-メンチルフェノール、p-メンチルシクロヘキサノールおよび1-イソピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物をそれぞれ用い、同様にして、誘電性塗料をそれぞれ調製した。
【0051】
実施例24
以下の成分を、ロール混練機を用いて均一に混練して誘電性塗料を調製した。
イソボルニルシクロヘキサノール 20 g
ターピネオール 30 g
チタン酸バリウム 100 g
【0052】
実施例25〜28
実施例24において、イソボルニルシクロヘキサノールに替えてイソボルニルフェノール、p-メンチルフェノール、p-メンチルシクロヘキサノールおよび1-イソピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物をそれぞれ用い、同様にして、誘電性塗料をそれぞれ調製した。
【0053】
実施例29
以下の成分を、ロール混練機を用いて均一に混練して蛍光性塗料を調製した。
イソボルニルシクロヘキサノール 10 g
ターピネオール 20 g
蛍光物質 100 g
【0054】
実施例30〜33
実施例29において、イソボルニルシクロヘキサノールに替えてイソボルニルフェノール、p-メンチルフェノール、p-メンチルシクロヘキサノールおよび1-イソピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物をそれぞれ用い、同様にして、蛍光性塗料を調製した。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明による消失性バインダー組成物は、適度な粘性を有する油状物質であり、かつ比較的低い温度で消失性を有しているので、例えば従来用いられてきたエチルセルロースのようなバインダー樹脂の代替として、導電性、誘電性または蛍光性塗料を構成するバインダー樹脂成分および有機溶剤として用いることができる。
【0056】
その上、本発明による消失性バインダー組成物を用いれば、デラミネーション、クレーター、ピンホールおよび焼成残渣がない導電体層、誘電体層または蛍光体層を形成することができ、PDPまたは積層セラミックコンデンサーなどの製造に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10〜C16架橋環式二環性炭化水素化合物またはその誘導体を含有することを特徴とする消失性バインダー組成物。
【請求項2】
10〜C16架橋環式二環性炭化水素化合物またはその誘導体が、二環式テルペン化合物またはその誘導体あるいはビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン誘導体化合物である請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項3】
二環式テルペン化合物またはその誘導体が、カンフェンもしくはα-ピネンまたは該化合物とフェノールとの反応物、あるいはそれらの還元物からなる群から選択される請求項2に記載のバインダー組成物。
【請求項4】
カンフェンまたはα-ピネンとフェノールとの反応物が、イソボルニルフェノールまたはp-メンテニルフェノールである請求項3に記載のバインダー組成物。
【請求項5】
カンフェンまたはα-ピネンとフェノールとの化合物の還元物が、シクロヘキサン環を含有する請求項3に記載のバインダー組成物。
【請求項6】
ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン誘導体化合物が、1-イソプロピル-4-メチル-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物またはそのエステル化合物である請求項2に記載のバインダー組成物。
【請求項7】
10〜C16架橋環式二環性炭化水素化合物の10%ターピネオール溶液からなるバインダー組成物の毎分10℃の昇温速度での熱分析で、250℃における残存率が、1%以下である請求項1〜6の何れか一つに記載のバインダー組成物。
【請求項8】
焼成可能なペーストの製造のために用いられる請求項1〜7の何れか一つに記載のバインダー組成物。
【請求項9】
プラズマディスプレイパネルの電極、誘電体層または蛍光体層の製造に用いられる請求項1〜8の何れか一つに記載のバインダー組成物。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか一つに記載のバインダー組成物と導電性金属粒子を含むことを特徴とする導電性塗料。
【請求項11】
請求項1〜8の何れか一つに記載のバインダー組成物とガラス粉末を含むことを特徴とする誘電性塗料。
【請求項12】
請求項1〜8の何れか一つに記載のバインダー組成物と蛍光物質を含むことを特徴とする蛍光性塗料。
【請求項13】
請求項1〜8の何れか一つに記載のバインダー組成物と誘電体セラミックス粉体を含むことを特徴とする誘電性塗料。

【公開番号】特開2007−217603(P2007−217603A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41260(P2006−41260)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000229254)日本テルペン化学株式会社 (5)
【Fターム(参考)】