説明

消毒・漂白装置、及び該装置の管理システム

【課題】二酸化塩素などの揮発性消毒・漂白液の消毒・漂白効果を、長時間にわたって劣化させることなく維持することができる、簡便で安価な消毒・漂白装置を提供する。
【解決手段】二酸化塩素などの揮発性消毒・漂白液21を入れた収納容器22を紫外線から遮蔽し、かつ所定温度範囲に維持し、収納容器22内への空気の流入を回避すると共に、消毒・漂白に必要な所定量の消毒・漂白液を圧送し、噴霧する。所定温度範囲の維持は、冷蔵装置15、揮発性液体やベルチェ素子を利用する冷却手段115が使用可能である。また、収納容器22から消毒・漂白液21を圧送して噴霧する手段は、ポンプ24を利用する吸引機構、収納容器22を外部から押圧する容器外部加圧機構118、収納容器22内に導入される不活性ガスの圧力を利用する容器内部加圧機構130のいずれかを利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消毒・漂白装置に関するもので、より具体的には消毒・漂白液として二酸化塩素などの揮発性剤を使用する消毒・漂白装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院における感染症、学校や介護施設における集団感染などがしばしば話題になるなど、これらの施設における細菌・雑菌による感染要因の排除が重要な社会的ニーズとなっている。さらには、昨今の新型インフルエンザ・ウィルスなどによる差し迫った危機に対応するためにも、消毒装置がより身近な存在となり、各家庭にまで広く普及することが望まれている。消毒装置には古くから各種形式のものが知られているが、より安価で手軽に入手できるものが提供されることが望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された装置によれば、市販の薬剤ボトルにポンプと逆止弁を備えたチューブを装着し、消毒領域内に差し伸べられた手をセンサが検出することによってポンプが稼動し、所定量の薬剤をノズルから噴霧する消毒器を開示している。
【0004】
消毒、漂白液としては、二酸化塩素が注目を浴びている(例えば、特許文献2参照。)。二酸化塩素は、強い酸化作用によって消毒、漂白作用を果たし、しかも人畜には全く無害である点で好ましい薬剤であるといえる。昨今では、これを水溶液とした消毒、漂白液が市販され、普及され始めている。勿論、これ以外にも次亜塩素酸ナトリウムやクレゾール石鹸液、アルコールなどの伝統的な消毒・漂白液も広く利用されている。これら薬剤の中でも酸化作用を有するものでは、上述のように消毒にも漂白にも使用され得る。本明細書の説明では、主に消毒に関係して説明を行うものとするが、これによって漂白のための利用を排除するものではない。また、ここでいう「消毒」には、「殺菌」、「滅菌」、「除菌」などの広い概念を含むものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した二酸化塩素は、消毒効果、安全性、経済性(安価である)などの点で消毒液として非常に高いポテンシャルを有しているが、反面、管理が難しいという難点を有している。特には、高い温度や紫外線に接することにより、あるいは空気に触れることによって分解し易く、分解すれば薬効を減ずるものとなる。特に医薬品としての使用に堪える消毒液であるためには、二酸化塩素の分解を防止し、その濃度を一定に維持することが求められる。たとえば、上述した特許文献1に示す消毒器によれば、ポンプの駆動により薬剤が圧送された後のボトル内には空気が入り込み、これによって二酸化塩素は分解、変質され、あるいは空気中の雑菌がボトル内に入り込む。ボトルは環境内に露出して配置されているため、大気の温度上昇にともなってボトル内は昇温し、さらには大気中の紫外線を浴びる。すなわち、従来技術における消毒・漂白装置では、二酸化塩素の分解防止に関して無防備であるといえる。
【0006】
以上より、本発明は、上述した従来技術の問題を解消し、二酸化塩素を使用しても、その消毒、漂白能力を有効に維持することができ、簡便で安価な消毒・漂白装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、二酸化塩素を入れたタンクを紫外線から遮蔽し、かつ一定温度に維持し、タンク内への空気の流入を回避すると共に、消毒に必要な所定量の二酸化塩素を噴霧することを可能にする消毒・漂白装置を提供することによって上述した課題を解決するもので、具体的には以下の内容を含む。
【0008】
すなわち、本発明にかかる一つの態様は、消毒・漂白液を収納する収納容器と、前記消毒・漂白液を圧送する圧送手段と、前記消毒・漂白液を噴霧もしくは滴下するノズルと、以上の要素を収納するケースとから構成され、対象物に消毒・漂白液を噴霧もしくは滴下して該対象物を消毒・漂白するための消毒・漂白装置であって、前記ケースの内部を予め定められた温度範囲に維持する冷却手段をさらに備え、前記収納容器が、内部の消毒・漂白液の使用に応じて収縮する柔軟性を有していることを特徴とする消毒・漂白装置に関する。
【0009】
前記圧送手段は、ポンプを利用して前記収納容器内から前記消毒・漂白液を吸引して圧送する吸引機構、前記収納容器を外部から押圧して消毒・漂白液を前記収納容器から押し出す容器外部加圧機構のいずれかとすることができる。この内、容器外部加圧機構は、取出し口を下方に向けた前記収納容器を、前記消毒・漂白液の消費に応じて該取出し口の水頭高さがノズルの高さ、あるいはノズルを越える高さに至るまで、下方から上方に向けて押し上げるスプリング機構とすることができる。
【0010】
本発明に係る他の態様として、前記圧送手段は、収納容器に導入される不活性ガスの圧力を利用して当該収納容器内部を加圧して消毒、漂白液を押し出す容器内部加圧機構とすることでもよい。
【0011】
前記冷却手段としては、冷蔵装置、揮発液を利用する冷却装置、ベルチェ素子を利用する冷却装置のいずれかを利用することができる。
【0012】
上記の消毒・漂白装置には、収納容器内の消毒・漂白液の残量僅少、バッテリの残量僅少、ケース内部の温度異常の少なくともいずれか一つを検出するための検出手段、及び該検出手段による検出結果を伝達する送信手段が備えられていてもよい。
【0013】
ノズルの上流側近傍にある前記消毒・漂白液の流動路を開閉するバルブ、ノズルに対向して差し込まれる利用者の手指または消毒・漂白対象物を検出する検出センサ、前記検出センサからの信号に基いてバルブを開閉制御する制御装置をさらに備えていてもよい。
【0014】
本発明に係る他の態様は、複数の場所に設置された上記の消毒・漂白装置を集中管理する管理システムであって、各消毒・漂白装置から送信される管理信号をGPSまたは無線の通信手段により受信し、受信結果に基いて必要な補給、メンテナンスを行うことを特徴とする管理システムに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る消毒・漂白装置の実施により、消毒・漂白液を簡易な装置を用いて長時間にわたり変質することなく利用することが可能となる。また、本発明に係る消毒・漂白装置の管理システムの実施により、複数の異なる場所に設置された複数の消毒・漂白装置に対して効率的に補給・メンテナンスを提供することができるようになる。また、これらにより、消毒・漂白装置を病院、介護施設から学校、家庭に至るまで、広く普及させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る消毒・漂白装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す消毒・漂白装置の構造を示す内部構成図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る消毒・漂白装置の構造を示す内部構成図である。
【図4】図3に示す消毒・漂白装置の他の態様に係る構造を示す内部部分構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る第1の実施の形態の消毒装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の各実施の形態では、代表例として「消毒装置」、「消毒液」などと表示するが、「漂白装置」、「漂白液」に対しても同様に適用可能である。図1は、本実施の形態に係る消毒装置1の外観を示しており、図において、消毒装置1は、ケース10と、ケース10の外壁の一部の窪みを利用して設けられるシャワー室12と、ケース10の外壁に取り付けられるパイロットランプ13(13a、13b)と、ケース10内部に設けられる後述する本体部20と、本体部20を電源に接続するための電源コード14とから構成されている。ケース10の一部には扉11が設けられ、後述する消毒液の取替えや内部の清掃、メンテナンス時などに開閉して使用される。ただし、同様の目的のために他の開閉扉が設けられていてもよい。露出したシャワー室12を除き、ケース11の内部は保冷されており、したがって扉11には冷蔵庫と同様に外気温を遮断するシール11aが巡らされている。
【0018】
図2は、消毒装置1のケース10の内部構造と、ケース10内に収納される本体部20の構成要素とを透視して表示している。まずケース10の内部には、冷却手段である冷蔵装置15と、温度センサ16とが設けられている。冷蔵装置15は、冷蔵庫と同様な構成とすることができ、循環する溶媒の気化熱を利用する冷蔵サイクルによりケース10の内部全体を保冷する。なお、これは既知の技術であり、本明細書においては「冷蔵装置」と呼ぶことにより、後述する他の冷却手段とは区別する。温度センサ16は、ケース10内部の温度を所定の範囲に保つよう監視するためのもので、検出結果に応じて冷蔵装置15を稼動するための指令信号を発する。ケース10内部の保冷は、消毒液を一定の温度以下に保ってその効能を維持するものであり、通常では15℃以下、好ましくは10℃以下に維持するよう構成される。省エネルギーの観点から、ケース10自身が断熱性を有する材料で形成されるか、あるいはケース10内部に断熱材が貼られていることが好ましい。加えて、ケース10内にはレベルセンサ19が設けられ、後述する消毒液の消費状態を検出可能である。さらに、シャワー室12に対向して、差し込まれる利用者の手指を検出するための手指センサ17が設けられている。これらセンサからの検出信号に基く制御は、下記の本体部20の制御と共に制御装置18により行われる。
【0019】
ケース10内部に収納される本体部20は、消毒液21を収納する収納容器22と、収納容器22の口にワンタッチにて着脱可能な取出しキャップ23と、消毒液21を圧送するポンプ24と、圧送される消毒液21をシャワー室12内に噴霧するノズル25と、これらの間を結ぶ配管26(26a、26b)とから構成されている。本実施の形態で使用される消毒液21は揮発性の消毒液であり、好ましくは二酸化塩素水溶液であるが、各種アルコールなど他の消毒液であってもよい。収納容器22は、内部の消毒液21の使用による容積の減少に応じて収縮する柔軟性を有し、図示の例では蛇腹構造の胴部を有するボトルとしているが、例えば消毒液と反応しないプラスチック製袋、ゴム製袋などとすることもできる。収納容器22は、少なくとも500mlの容量を備えたものであることが好ましい。このような構造により、消毒液21が使用により減少しても収納容器22内部に外気が導入されることがなく、外気により消毒液21を変質させることがない。収納容器22は、例えばケース10の底から立ち上がるボトルステイ27でそのショルダー部を保持するなどによりケース10内に着脱可能に支持される。
【0020】
ポンプ24の下流側にある配管26bには、配管内の圧力によって開閉するバルブ28が設けられている。これは、消毒液21の放出前後における液垂れを防止し、かつ大気中の雑菌が消毒液に触れることを阻止する。バルブ28のさらに下流側にノズル25が配置され、ノズル25の先端はシャワー室12内に露出してシャワー室12内に適当な拡散角度で消毒液21を噴霧する。本願発明の目的からは、必ずしも噴霧する必要はなく、所定量の消毒液21を滴下することでもよい。シャワー室12の底部となるケース10の部分には、落下する廃液、汚れを回収する回収皿29が取出し自在に配置されていることが好ましい。
【0021】
以上のように構成された本実施の形態に係る消毒装置1の動作を、図1、2を参照して説明する。まず、電源コード14が電源に接続され、電力が供給されることによって冷蔵装置15が稼動し、ケース10内部、特には本体部20を冷却する。消毒液21を満たした収納容器22が準備され、扉11を開けて配管26aごと取出しキャップ23をケース10の外部に引出し、収納容器22の蓋を除いてワンタッチでキャップ23が収納容器22の口にはめ込まれる。このため、少なくとも上流側の配管26aには、余裕のある長さのフレキシブルチューブが用いられる。収納容器22はその後、ケース10内のボトルステイ27にセットされ、扉11が閉められる。図示の例では収納容器22を上下逆さまに配置しているが、キャップ23を上にした通常の配置とすることでもよい。扉11を閉めることにより、収納容器22は保冷状態、かつ紫外線遮断状態に置かれる。
【0022】
この状態で利用者がシャワー室12内に手を差し込むと手指センサ17がこれを検出し、その信号に基いて制御装置18がポンプ24の稼動を指令し、これによって消毒液21が収納容器22から圧送されてバルブ28が開き、ノズル25から所定量の消毒液21が利用者の手指に噴霧される。通常、1回の噴霧量は、2〜4mlほどとすることが好ましい。消毒液21の噴霧量は、ポンプ24の稼動時間、もしくはバルブ28の開放時間を制御装置18が制御することになどにより管理可能である。噴霧された消毒液21の内、余剰のもの、および手指を消毒した後の消毒液の滴などは下方に滴下し、回収皿29に回収される。消毒液21は揮発性のものであるため、直ぐに蒸発するものとなるが、利用者の手指に触れた後のものも含まれるため、回収皿29は定期的に取替え、洗浄することで消毒装置1全体を清潔に保つことができる。
【0023】
以上の繰り返し使用により、収納容器22内の消毒液21が消費され、収納容器22が上下方向に所定量縮むとレベルセンサ19がそれを検知し、制御装置18を介して一方のパイロットランプ13aを点灯させ、管理者に対して収納容器22の取替え時期であることを知らせる。他方のパイロットランプ13bは、例えば温度センサ16とリンクされ、冷蔵装置15の故障などの原因によってケース10内が所定温度以上に上昇した場合に点灯し、異常事態を知らせるなどに使用可能である。
【0024】
なお、収納容器22の上部に配置された錘30は、ポンプ24の吸引力をバックアップする機能を果たすが、必ずしも必要とはされない。後述するポンプレスの形式においては、収納容器22を押圧して消毒・漂白液を押出す機能を果たすことができる。また、本実施の形態では、ポンプ24の稼動に応じて消毒・漂白液が噴霧されるため、バルブ28は必ずしも必要とはされない。
【0025】
以上、本実施の形態に係る消毒装置1によれば、例えば特許文献1に開示された従来技術に係る消毒装置に対して以下のような特徴を有するものとなる。
1.消毒液21が所定温度以下に維持され、かつ紫外線が遮断されるため、長時間にわたって消毒液21の変質を防ぎ、所定の効能を全量使用し切るまで維持することができる。特には、消毒液として温度、紫外線による変質を受け易い二酸化塩素を使用する場合には好適である。
2.収納容器22内の消毒液21が消費されても収納容器22自身が収縮して内部に外気が導入されることがない。このため、酸素と触れることによって消毒液21が劣化することがなく、また大気中の雑菌が消毒液21に混じってこれを変質させることがない。
【0026】
次に、本発明に係る第2の実施の形態の消毒装置について、図面を参照して説明する。本実施の形態では、先の実施の形態にかかる消毒装置1に対して、省エネルギー化、軽量化、取扱い容易化を図ったもので、その概要を図3に示している。なお、図3において、先の実施の形態と同一又は類似の機能を果たす要素には、100番台の内の下2桁を同一符号としている。本実施の形態に係る消毒装置101は、電力の供給を受けることなく、消費電力を最小限に留めて装置の搬送を容易とし、設置場所選択の幅を広げている。
【0027】
まず、消毒装置101ではポンプを廃止し、スプリング118の付勢力を利用して収納容器122を押圧し、内部の消毒液121を圧送してノズル125からシャワー室112内に消毒液121を噴霧するものとしている。噴霧する消毒液121の量は、バルブ128の開放時間を制御装置118で制御することにより管理している。なお、本実施の形態で使用されるバルブ128は、先の実施の形態のような内部圧力に応じて開閉動作する構造ではなく、常時加圧された状態にある消毒液121の流動をオン・オフする形式のバルブであり、例えば電磁弁などが利用可能である。この際、消毒液121の放出の結果、消毒液121の自重が減少して消毒液121の圧送量が減少し得る。あるいは、収納容器122が順次収縮し、これに伴ってスプリング118が伸張するため付勢力が減少して消毒液121の圧送量が減少し得る。これに対し、本実施の形態ではスプリング118のバネ力を適切に選択することにより、このような減少を補正して消毒液121の残量の大小に拘わらず、噴霧量のばらつきを最小限に留めるよう工夫している。
【0028】
より具体的に、まず、消毒液121の消費に伴い、消毒液121の自重が減少するために、収納容器121を下から支えるスプリング118の付勢力のより多くの部分を収納容器122の圧縮力として利用できるようになる。次に、消毒液121の消費に伴い、図の矢印A及び破線で示すように収納容器122を下方から上方に持ち上げるため、収納容器122の水頭をノズル125の高さより低い位置からノズル125の高さまで、あるいはそれ以上にまで移動させ、これが噴霧量減少を補填する効果を生む。さらにもし必要であれば、バルブ128に作用する圧力に応じて制御装置118によりバルブ128の開放時間を調整することでもよい。あるいは段階的にロックされた板ばねを順次動作させて付勢力を補填するよう構成することでもよい。
【0029】
重量がかさむために好ましくはないが、図2に示す錘30を利用し、上方から押圧力を加えて収納容器を圧縮するようにしてもよい。あるいは、この場合においても下方からスプリングで支えるなど、上述した構造と組み合わせて使用することでもよい。いずれの場合においても、ノズル125からの噴霧量は手指の消毒をすることが目的であり、所定の範囲に入っていればある程度の噴霧量の誤差は許容可能である。
【0030】
次に、本実施の形態にかかる消毒装置101では、いわゆる冷蔵サイクルを使用した冷蔵装置(図2に示す符号15)ではなく、省エネルギー化、軽量化を目的とした他の冷却手段115を備えるものとしている。図示の例では、揮発性の高い液体、例えばエチルアルコールを柔軟性のある袋に入れて供給し、あるいは滴下させることでこれを揮発させ、その際の気化熱を利用してケース110の内部の温度を下げるものとしている。
【0031】
加えて本実施の形態では、ケース110に送信手段113(113a,113b)を備えており、これらの送信手段113は、温度センサ116やレベルセンサ119に接続されてケース110内の温度が上昇していること(例えば、冷却用の揮発性液体の補充が必要であること)、消毒液121の残量が僅少となったことを信号により送信する。無線システムやGPS(Global Positioning System)などを利用して管理センターが当該信号を受信し、補給品供給やメンテナンスのための出動をするなどの集中管理体制を築くことを可能としている。その他の構成、並びに動作は、基本的に先の実施の形態と同様である。なお、送信手段113は先の実施の形態においても同様に適用可能であり、あるいは本実施の形態でも送信手段113の代わりにパイロットランプ(図2の符号13a,13b)を装備することでもよい。
【0032】
先の実施の形態にあった冷蔵装置15、ポンプ24を除くことにより、本実施の形態にかかる消毒装置101では使用する電気エネルギーを大幅に削減することができる。各種センサ116、117、119と、バルブ128、送信手段113を動作するための僅かな電力は、代わりに設置されるバッテリ114から供給される。バッテリ114は定期的に交換されるか、必要に応じて送信手段113に含めて残量僅少の情報を管理センターに送信することが可能である。
【0033】
図示のように構成された本実施の形態にかかる消毒装置101には、各種の変更が可能である。例えば、消毒液121を圧送する手段として、スプリング118の代わりに、収納容器122を一種のアキュムレータ(蓄圧器)のように利用し、内部閉じ込められた加圧ガスの圧力で消毒液121を押し出すよう構成することができる。この場合のガスは消毒液121と反応することのない、例えば窒素ガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスが利用可能である。また、図示の例では、収納容器122を下からスプリングを用いて圧縮する形式としているが、収納容器122を柔軟性のある袋状とし、これを図の左右方向からスプリングで圧縮することでもよい。
【0034】
さらに、揮発液を利用した冷却手段の代わりとして、僅かな電力で冷却効果の得られるベルチェ素子を利用した冷却手段を使用することもできる。ベルチェ素子は、温度センサ116とリンクし、ケース110内が一定温度に上昇すると動作し、冷却すると停止することを繰り返す。その間の制御は、制御装置118により可能である。なお、ここで言う制御装置118には、単なるリレー装置をも含むものとする。これは、先の実施の形態における制御装置18も同様である。
【0035】
図4は、バッテリのみで稼動する本実施の形態にかかる消毒装置の他の態様を示している。図4は、本態様の消毒装置101aの要部を示しており、図示されない部分は図3に示す構成と同様である。本態様では、消毒液121を収納した収納容器122aが、これまでの実施の形態では収縮する柔軟性を有していたことに反し、ある程度の耐圧性を有するよう構成されている。このような容器は、例えばアルミ缶状のものが利用可能である。収納容器122aに被せられた蓋123aにはパイプ131が密閉状態で貫通し、パイプ131は圧力を一定に維持するレギュレータ132を介してボンベ130に連通している。ボンベ130内部には、窒素ガス、ヘリウムなどの不活性ガス、あるいは少なくとも消毒液121を分解、変質させないガスが加圧状態で充填されている。
【0036】
このように構成された消毒装置101aの動作は、シャワー室112内に手指が差し伸べられると手指センサ117がそれを検出し、制御装置118の指令によってバルブ128(図3参照)が開き、圧送システム内の圧力によってノズル125から消毒液121が噴霧される。これによる減圧はボンベ130からガスが供給されることによりレギュレータ132の作用により一定圧に至るまで補填される。所定量の消毒液121が噴霧されるとバルブ128が閉じ、圧送システム内は、元の加圧状態に維持され、次の利用が可能となる。
【0037】
以上、本発明に係る各実施の形態について説明してきたが、表示された実施の形態は例示であってこれらには従来技術を含む変更が可能であり、本願発明が実施の形態に記したものに限定されるものではない。例えば、消毒液の噴霧、滴下は手指センサによる検出をトリガとしているが、手指センサを使用することなく、押しボタンやペダルをトリガとして利用し、消毒液を噴霧するようにしてもよい。また、消毒液を噴霧するノズルは複数であってもよく、その際には差し込まれる手指の両側から消毒液を噴霧できるよう複数のノズルの一部をシャワー室の下側に配置して下から上方に向けて消毒液を噴霧しても、あるいはノズルをシャワー室の両側壁に配置して左右両側から消毒液を噴霧するようにしてもよい。
【0038】
さらに本発明は、これまで示した消毒装置を複数集中的に管理する管理システムをも包含している。複数の異なる場所に配置された消毒装置には、それぞれ消毒液の残量、バッテリの残量が所定レベル以下となったとき、あるいは消毒装置のケース内部の温度が所定範囲から外れたときなど、消毒装置への補給、メンテナンスが必要となったときに信号を発信する発信装置が備えられている。これら少なくとも一つの信号をGPSや無線システムを利用して管理センターで受信し、必要な補充、メンテナンスのデリバリを行うことができる。当該管理システムを利用することにより、各消毒装置は配置場所ごとにそれぞれ補充・メンテナンス体制を準備する必要がなくなり、管理を効率化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る消毒・漂白装置、並びの当該装置の管理システムは、医療分野、介護施設、病院、家庭などに対する医療品、医療装置、家庭用品を製造、供給、販売する産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1.消毒装置、 10.ケース、 11.扉、 12.シャワー室、 13.パイロットランプ、 15.冷蔵装置、 16.温度センサ、 17.手指センサ、 18.制御装置、 19.レベルセンサ、 20.本体部、 21.消毒液、 22.収納容器、 23.取出しキャップ、 24.ポンプ、 25.ノズル、 26.配管、 28.バルブ、 113.送信手段、 114.バッテリ、 115.冷却手段、 118.スプリング、 130.ボンベ、 132.レギュレータ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】実用新案登録第3140599号公報
【特許文献2】特開平11−278808号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消毒・漂白液を収納する収納容器と、前記消毒・漂白液を圧送する圧送手段と、前記消毒・漂白液を噴霧もしくは滴下するノズルと、以上の要素を収納するケースとから構成され、対象物に消毒・漂白液を噴霧もしくは滴下して該対象物を消毒・漂白するための消毒・漂白装置において、
前記ケースの内部を予め定められた温度範囲に維持する冷却手段をさらに備え、
前記収納容器が、内部の消毒・漂白液の使用に応じて収縮する柔軟性を有していることを特徴とする消毒・漂白装置。
【請求項2】
前記圧送手段が、ポンプを利用して前記収納容器内から前記消毒・漂白液を吸引して圧送する吸引機構、前記収納容器を外部から押圧して消毒・漂白液を前記収納容器から押し出す容器外部加圧機構のいずれかである、請求項1に記載の消毒・漂白装置。
【請求項3】
前記容器外部加圧機構が、取出し口を下方に向けた前記収納容器を、前記消毒・漂白液の消費に応じて該取出し口の水頭高さがノズルの高さに接近し、あるいはノズルを越える高さに至るまで、下方から上方に向けて押し上げるスプリングから構成されている、請求項2に記載の消毒・漂白装置。
【請求項4】
消毒・漂白液を収納する収納容器と、前記消毒・漂白液を圧送する圧送手段と、前記消毒・漂白液を噴霧もしくは滴下するノズルと、以上の要素を収納するケースとから構成され、対象物に消毒・漂白液を噴霧もしくは滴下して該対象物を消毒・漂白するための消毒・漂白装置において、
前記ケースの内部を予め定められた温度以下に維持する冷却手段をさらに備え、
前記圧送手段が、前記収納容器に導入される不活性ガスの圧力を利用して当該収納容器内部を加圧して消毒、漂白液を押し出す容器内部加圧機構であることを特徴とする消毒・漂白装置。
【請求項5】
前記冷却手段が、冷蔵装置、揮発液を利用する冷却装置、ベルチェ素子を利用する冷却装置のいずれかである、請求項1から請求項4のいずれか一に記載の消毒・漂白装置。
【請求項6】
前記収納容器内の消毒・漂白液の残量僅少、バッテリの残量僅少、ケース内部の温度異常の少なくともいずれか一つを検出するための検出手段、及び該検出手段による検出結果を伝達する送信手段をさらに備えている、請求項1から請求項5のいずれか一に記載の消毒・漂白装置。
【請求項7】
前記ノズルに対向して差し込まれる利用者の手指または消毒・漂白対象物を検出する検出センサ、前記検出センサからの信号に基いて装置の動作を制御する制御装置さらに備えている、請求項1から請求項6のいずれか一に記載の消毒・漂白装置。
【請求項8】
複数の場所に設置された消毒・漂白装置を集中管理する管理システムであって、
前記消毒・漂白装置が請求項6に記載の消毒・漂白装置であり、
各消毒・漂白装置から送信される管理信号をGPSまたは無線の通信手段により受信し、受信結果に基いて必要な補給、メンテナンスを行うことを特徴とする管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−268904(P2010−268904A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122119(P2009−122119)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(509142058)
【出願人】(303002435)
【Fターム(参考)】