説明

消泡剤

【課題】ハジキの発生の少ない消泡剤を提供すること。
【解決手段】カルボン酸アルミニウム(A)及び炭化水素油(B)を含有し、カルボン酸アルカリ土類金属を含まない消泡剤であって、
(A)がジカルボン酸アルミニウム(A2)、またはモノカルボン酸アルミニウム(A1)及びジカルボン酸アルミニウム(A2)の混合物であり、
(A)及び(B)の重量に基づいて(A)の含有量が0.1〜60重量%、(B)の含有量が40〜99.9重量%であり、
(A1)の含有量が(A1)及び(A2)の合計重量に基づいて40重量%以下である消泡剤を用いる。
さらに遊離脂肪酸(FA)を含有してなり、(FA)の含有量が(A1)及び(A2)の重量に基づいて1〜30重量%であることが好ましい。
さらに芳香族炭素(BA)含有炭化水素油(B)を含んでなり、(BA)の含有量が(B)の全炭素数に基づいて1〜30個数%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消泡剤に関する。さらに詳しくは、紙パルプ工業、食品工業、繊維工業、建材用ボード製造、塗料工業又は化学工業等の加工工程用及び排水処理工程用として好適な消泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシロキサン−ポリエーテル−ブロック重合体、水不混和性油、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ブロック重合体、乳化剤、並びに金属石鹸(脂肪酸アルカリ土類金属及び/又は脂肪酸アルミニウム)を含有する消泡剤が知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特公昭63−52927号公報(対応USP4384976)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の金属石鹸を含有する消泡剤は、低粘度の塗料に用いられた場合塗膜にハジキが多く発生するという問題点があった。すなわち、本発明の目的は、ハジキの発生の少ない消泡剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のカルボン酸アルミニウムを使用することにより上記目的を達成することを見いだし、本発明に到達した。すなわち、本発明の消泡剤の特徴は、カルボン酸アルミニウム(A)及び炭化水素油(B)を含有し、カルボン酸アルカリ土類金属を含まない消泡剤であって、
(A)がジカルボン酸アルミニウム(A2)、またはモノカルボン酸アルミニウム(A1)及びジカルボン酸アルミニウム(A2)の混合物であり、
(A)及び(B)の重量に基づいて(A)の含有量が0.1〜60重量%、(B)の含有量が40〜99.9重量%であり、
(A1)の含有量が(A1)及び(A2)の合計重量に基づいて40重量%以下である点を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の消泡剤は、ハジキの発生が極めて少ない。さらに、消泡性能に極めて優れている。よって、紙パルプ工業、食品工業、繊維工業、建材用ボード製造、塗料工業又は化学工業等の加工工程用及び排水処理工程用の消泡剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
カルボン酸アルミニウム(A)は、ジカルボン酸アルミニウム(A2)から構成されるか、モノカルボン酸アルミニウム(A1)及びジカルボン酸アルミニウム(A2)の混合物から構成される。
モノカルボン酸アルミニウム(A1)及びジカルボン酸アルミニウム(A2)を構成するカルボン酸の炭素数は、4〜30が好ましく、さらに好ましくは8〜24、特に好ましくは14〜22である。炭素数がこの範囲であると、消泡性能がさらに良好となる。
このカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸及び脂環式カルボン酸等のいずれも使用できるが、消泡性の観点等から、脂肪族カルボン酸が好ましい。
【0008】
モノカルボン酸アルミニウム(A1)としては、モノブタン酸アルミニウム、モノオクタン酸アルミニウム、モノテトラデカン酸アルミニウム、モノペンタデカン酸アルミニウム、モノヘキサデカン酸アルミニウム、モノヘプタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、モノノナデカン酸アルミニウム、モノエイコサン酸アルミニウム、モノドコサン酸アルミニウム、モノトリアコンタン酸アルミニウム、モノテトラデセン酸アルミニウム、モノヘキサデセン酸アルミニウム、モノオクタデセン酸アルミニウム、モノエイコセン酸アルミニウム、モノドコセン酸アルミニウム及びモノリノレン酸アルミニウム等が挙げられる。これらのうち、消泡性の観点等から、モノオクタン酸アルミニウム、モノテトラデカン酸アルミニウム、モノペンタデカン酸アルミニウム、モノヘキサデカン酸アルミニウム、モノヘプタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、モノノナデカン酸アルミニウム及びモノドコサン酸アルミニウムが好ましく、さらに好ましくはモノオクタン酸アルミニウム、モノヘキサデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム及びモノドコサン酸アルミニウムである。
【0009】
ジカルボン酸アルミニウム(A2)としては、ジブタン酸アルミニウム、ジオクタン酸アルミニウム、ジテトラデカン酸アルミニウム、ジペンタデカン酸アルミニウム、ジヘキサデカン酸アルミニウム、ジヘプタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、ジノナデカン酸アルミニウム、ジエイコサン酸アルミニウム、ジドコサン酸アルミニウム、ジトリアコンタン酸アルミニウム、ジヘキサデセン酸アルミニウム、ジオクタデセン酸アルミニウム及びジリノール酸アルミニウム等が挙げられる。
これらのうち、消泡性の観点等から、ジオクタン酸アルミニウム、ジテトラデカン酸アルミニウム、ジペンタデカン酸アルミニウム、ジヘキサデカン酸アルミニウム、ジヘプタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、ジノナデカン酸アルミニウム及びジドコサン酸アルミニウムが好ましく、さらに好ましくはジオクタン酸アルミニウム、ジヘキサデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム及びジドコサン酸アルミニウムである。
これらのモノカルボン酸アルミニウム及び/又はジカルボン酸アルミニウムは2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合、上記の好ましいものが主成分として含まれていることが好ましい。なお、本発明において主成分とは、成分全体の重量に基づいて、少なくとも40重量%を含まれる成分を意味し、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上含まれることである。
【0010】
モノカルボン酸アルミニウム(A1)の含有量(重量%)は、(A1)及びジカルボン酸アルミニウム(A2)の合計重量に基づいて、40以下が好ましく、さらに好ましくは0又は0.1〜30、特に好ましくは0又は0.1〜22、最も好ましくは0である。この範囲であると、さらにハジキの発生が少なくなる。
【0011】
カルボン酸アルミニウム(A)の含有量(重量%)は、(A)及び炭化水素油(B)の重量に基づいて、0.1〜60が好ましく、さらに好ましくは2〜33、特に好ましくは3〜17、最も好ましくは4〜16である。この範囲であると、消泡性能がさらに良好となる。
【0012】
カルボン酸アルミニウム(A)は、公知の方法(たとえば複分解法や直接法等)により製造することができる{脂肪酸化学<改訂増補版>、昭和45年8月10日、株式会社幸書房発行}。
複分解法とは、カルボン酸をアルカリ(水酸化ナトリウム等)により中和塩に変換した後、この中和塩とアルミニウム無機化合物(たとえば水酸化アルミニウム)とを反応させてカルボン酸アルミニウムを製造する方法である。また直接法とは、カルボン酸とアルミニウム無機化合物とを生成するカルボン酸アルミニウムの融点以上の温度で反応させる方法である。
【0013】
本発明の消泡剤には、遊離脂肪酸(FA)をさらに含んでいてもよい。
遊離脂肪酸(FA)としては、カルボン酸アルミニウム(A)を構成するカルボン酸と同じもの等が使用でき、好ましいものも同じである。
遊離脂肪酸(FA)を含有する場合、(FA)は、カルボン酸アルミニウム(A)を構成するカルボン酸であることが好ましい。
遊離脂肪酸は2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合、上記の好ましいものが主成分として含まれていることが好ましい。
【0014】
遊離脂肪酸(FA)を含有する場合、(FA)の含有量(重量%)は、モノカルボン酸アルミニウム(A1)及びジカルボン酸アルミニウム(A2)の合計重量に基づいて、1〜30が好ましく、さらに好ましくは2〜27、特に好ましくは3〜25である。この範囲であると、消泡性能がさらに良好となる。
【0015】
カルボン酸アルミニウム(A)には、通常、遊離離脂肪酸(FA)が含まれる。そこで、上記の含有量となるように、カルボン酸アルミニウム(A)から、遊離脂肪酸(FA)を除去(洗浄、蒸留等)してもよい。一方、遊離脂肪酸(FA)を追加して、上記の好ましい範囲としてもよい。
遊離脂肪酸(FA)を含有するカルボン酸アルミニウムは、市場から容易に入手でき、次表の商品等が挙げられる。この他、試薬メーカー等からも、容易にカルボン酸アルミニウムを入手できる。
【0016】
【表1】

【0017】
本発明の消泡剤は、カルボン酸アルカリ土類金属を含まないものである。カルボン酸アルカリ土類金属としては、カルボン酸とアルカリ土類金属とから構成される。カルボン酸としては、カルボン酸アルミニウム(A)を構成するカルボン酸と同じものである。カルボン酸アルカリ土類金属としては、ジオクタデカン酸マグネシウム及びモノオクダデカン酸カルシウム等が挙げられる。カルボン酸アルカリ土類金属と含有すると、ハジキが発生しやすくなる。
【0018】
炭化水素油(B)としては、原油のうち、250〜415℃の留分を水素添加して得られる鉱物油等が使用できる。
炭化水素油(B)には、芳香族炭素(aromatic carbon)(BA)を含有することが好ましい。
芳香族炭素(BA)を含有する場合、(BA)の含有量(個数%)は、炭化水素油(B)の全炭素数に基づいて、1〜30が好ましく、さらに好ましくは2〜20、特に好ましくは4〜15、最も好ましくは6〜12である。この範囲であると、消泡性能及び製品安定性(ゲル化、分離等)がさらに良好となる。
炭化水素油(B)中にナフテン炭素(naphthenic carbon)(BB)を含有する場合、(BB)の含有量(個数%)は、炭化水素油(B)の全炭素数に基づいて、15〜40が好ましく、さらに好ましくは18〜36、特に好ましくは20〜34、最も好ましくは22〜32である。この範囲であると、消泡性がさらに良好となる。
炭化水素油(B)中にパラフィン炭素(paraffinic carbon)(BC)を含有する場合、(BC)の含有量(個数%)は、炭化水素油(B)の全炭素数に基づいて、50〜80が好ましく、さらに好ましくは54〜74、特に好ましくは56〜72、最も好ましくは58〜70である。この範囲であると、消泡性がさらに良好となる。
なお、芳香族炭素(BA)、ナフテン炭素(BB)及びパラフィン炭素(BC)の含有量は、環分析(n−d−M)法{ASTM D3238−74(Reapproved 1979)}に準拠して測定される。
【0019】
炭化水素油(B)の動粘度(mm2/s;40℃)としては、4〜146が好ましく、さらに好ましくは4〜30、特に好ましくは10〜28、最も好ましくは15〜25である。この範囲であると、消泡性能及び製品安定性がさらに良好となる。
【0020】
炭化水素油(B)としては、市場から容易に入手でき、次表の商品等が挙げられる。これらのうち、消泡性能及び製品安定性の観点等から、コスモピュアスピンG、コスモピュアスピンE、コスモSP10、スタノール35、スタノールLP35、フッコール STマシン、コスモ ニュートラル150、日石スーパーオイル D及び日石スーパーオイル Bが好ましく、さらに好ましくはコスモピュアスピンG及びコスモピュアスピンEである。これらの炭化水素油(B)は、2種以上の混合物であってもよい。
【0021】
【表2】

なお、炭化水素油(B)としては、動植物油及び上記の炭化水素油と動植物油との混合物等も使用できる。
【0022】
動植物油としては、天然植物油、天然動物油及びこれらの変性油等が使用でき、牛脂、豚脂、鯨油、魚油、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、トウモロコシ油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、月見草油、パーム油、ヤシ油、パーム核油等及びこれらの水素添加油等が挙げられる。
【0023】
炭化水素油(B)の含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)及び炭化水素油(B)の重量に基づいて、40〜99.8が好ましく、さらに好ましくは67〜98、特に好ましくは83〜97、最も好ましくは84〜96である。この範囲であると、消泡性能がさらに良好となる。
【0024】
本発明の消泡剤には、さらに一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(C)を含有することが好ましい。
ポリオキシアルキレン化合物(C)としては、ポリオキシアルキレン基を含む化合物であれば制限なく使用できる。
ポリオキシアルキレン基としては、炭素数3〜4のオキシアルキレン基(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン)の複数個が化学結合した基が含まれる。
ポリオキシアルキレン基には、オキシアルキレン基の1種から構成されていてもよく、又は2種以上から構成されていてもよい。2種以上から構成される場合、結合様式はブロック、ランダム及びこれの混合のいずれでもよい。
一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(C)に換えて、または加えて、特公昭50−5157号、特公昭49−38923号、特公昭50−1475号、特公昭45−7973号公報、特開昭50−4282号又は特開平2−289526号の各公報に記載されたポリオキシアルキレン化合物;並びにこれらの混合物等も使用できる。
しかし、少なくとも一般式(1)で表されるポリアルキレン化合物(C)を含むことが好ましい。
【0025】
【化1】

ただし、一般式(1)においてR1は水素原子又は炭素数2〜22の有機基、R2は水素原子又は炭素数8〜31のアシル基、OAは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、mは1〜3の整数、nは10〜60の整数を表す。
【0026】
炭素数2〜22の有機基としては、直鎖アルキル基、直鎖アルケニル基及びアシル基等が含まれる。
直鎖アルキル基としては、エチル、n−ブロピル、n−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシル、カプリル、ラウリル、ミリスチル、ステアリル及びベヘニル等が挙げられる。
直鎖アルケニル基としては、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、3−ブテニル、2−ブテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、1−ヘキセニル、オクテニル、デカニル、オレイル、オクタデセニル及びドコセニル等が挙げられる。
アシル基としては、カプロイル、ラウロイル、ミリスチロイル、ステアロイル、ベヘニロイル、リグノセリニル、セロチニル及びオレイロイル基等が挙げられる。
これらのR1のうち、消泡性及びハジキの観点等から、水素原子、直鎖アルキル基及び直鎖アルケニル基が好ましく、さらに好ましくは水素原子及び直鎖アルキル、特に好ましくはn−ブロピル、n−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシル、最も好ましくはn−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシルである。
【0027】
炭素数8〜31のアシル基としては、カプロイル、ラウロイル、ミリスチロイル、ステアロイル、ベヘニロイル、リグノセリニル、セロチニル及びオレイロイルが挙げられる。 これらのR2のうち、消泡性及びハジキの観点等から、水素原子、ラウロイル、ミリスチロイル、オレイロイル及びステアロイル基が好ましく、さらに好ましくは水素原子、ラウロイル、オレイロイル及びステアロイル、特に好ましくは水素原子である。
【0028】
炭素数3〜4のオキシアルキレン基としては、オキシプロピレン、オキシブチレン及びこれらの混合物が含まれる。これらのうち、オキシプロピレンが好ましい。
なお、オキシアルキレン基として、炭素数3〜4のオキシアルキレン基を主体的に含んでいればよく、一部にオキシエチレンを含んでもよい。主体的とは、オキシアルキレン基の構成単位のモル数に基づいて少なくとも70モル%含まれることを意味し、好ましくは75モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは85モル%以上、最も好ましくは90モル%以上含まれることである。
【0029】
複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、ブロック状、ランダム状及びこれらの混合のいずれでもよいが、ランダム状が好ましい。
nとしては、10〜60の整数が好ましく、さらに好ましくは20〜50の整数、特に好ましくは25〜45の整数である。この範囲であると、ハジキの発生がさらに抑制される。
一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物としては、以下の化学式で示される化合物等が挙げられる。なお、poはオキシプロピレン基を、boはオキシブチレン基を表し、・はブロック状を、/はランダム状を表す。
【0030】
【化2】

【0031】
これらのうち、式(6)、(9)、(13)、(14)、(15)、(19)又は(20)で表されるポリオキシアルキレン化合物が好ましく、さらに好ましくは式(6)、(9)、(14)又は(20)で表されるポリオキシアルキレン化合物である。これらのポリオキシアルキレン化合物(C)は、2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合、上記の好ましいものが主成分として含まれていることが好ましい。
【0032】
ポリオキシアルキレン化合物(C)は、公知の方法、例えば、炭素数2〜22の直鎖アルカノール又は直鎖アルケノールと炭素数3〜4のアルキレンオキシドとを反応させる方法、また炭素数2〜22の直鎖アルカノール又は直鎖アルケノールと炭素数3〜4のアルキレンオキシドとを反応させたのち、この反応物と炭素数2〜22又は炭素数8〜31の脂肪酸と反応させる方法等により得ることができる。
一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(C)は、市場から容易に入手でき、たとえば、商品名として、ニューポール LB−385,LB−625,LB−1145,LB−1715及びLB−1800X{三洋化成工業(株)製}、並びにユニルーブ MB−19,MB−38及びMB−370{日本油脂(株)製}等が挙げられる。
【0033】
ポリオキシアルキレン化合物(C)を含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)の重量に基づいて、3〜70000が好ましく、さらに好ましくは20〜400、特に好ましくは90〜300である。この範囲であると、さらにハジキが少なくなる。
【0034】
本発明の消泡剤には、さらにシリカ(D)を含有させることができる。
シリカ(D)は、公知の無機粉末シリカ及び無機粉末シリカを疎水化処理した疎水性シリカ等が使用できる。
これらのうち、消泡性の観点等から、疎水性シリカが好ましい。
【0035】
無機粉末シリカとしては、(1)湿式法シリカ:無機シリカエーロゲル(シリカヒドロゲル中の水分を、70℃以下の沸点を持ち、かつ水との混和性を有する溶媒(メタノール、アセトン、ギ酸メチル、酢酸メチル等)にて置換した後、加熱して該溶媒を除去することにより得られるコロイドシリカ)、(2)熱分解法シリカ:発煙シリカ(四塩化ケイ素を焼いて生じたシリカ煤からなるコロイドシリカ)、及び(3)溶融固体法シリカ:沈降性シリカ(ケイ酸ナトリウム水溶液に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等のナトリウムイオンを滴下することにより凝集して得られるシリカ粒子)等が含まれ、いずれの方法で製造されたものでも構わない。これらのうち、消泡性の観点等から、発煙シリカ及び沈降性シリカが好ましく、さらに好ましくは沈降性シリカである。
無機粉末シリカとしては、商品名として、NIPGEL AY−200,AY−401,AY−601,AZ−200,AZ−400,BY−200,BZ−200,CX−200,Nipsil L−250,E−200A,E−220,G−300,N−300A(日本シリカ株式会社);FINESIL E70,T32,K41,F80 (株式会社トクヤマ);SYLYSIA 250N,310P,350,420(富士シリシア化学株式会社);AEROSIL 130,200,300,380,OX50(日本アエロジル株式会社);L−90,LM−150,MS−55,EH−5,M−7D(キャボットカーボン社);並びにAEROSIL OX50,MOX80(デグサジャパン株式会社)等が挙げられる。これらの無機粉末シリカは、2種以上の混合物であってもよい。
【0036】
なお、疎水性シリカは、上記の無機粉末シリカを疎水化剤で加熱処理することにより容易に得ることができる。
疎水化剤としては、シリコーンオイル及び変性シリコーンオイル等が含まれる。
シリコーンオイルとしては、動粘度10〜3000(mm2/s、25℃)のジメチルシロキサン等が挙げられ、シクロテトラジメチルシロキサン等も含まれる。
変性シリコーンとしては、上記のジメチルシロキサンのメチル基の一部を炭素数2〜6のアルキル基、炭素数2〜4のアルコキシル基、フェニル基、水素原子、ハロゲン(塩素及び臭素等)原子、及び/又は炭素数2〜6のアミノアルキル基等に置き換えたもの等が含まれる。
【0037】
疎水化剤の含有量(重量%)としては、疎水性シリカの重量に基づいて、5〜70が好ましく、さらに好ましくは7〜50、特に好ましくは10〜30である。この範囲であると消泡性がさらに優れる。
疎水化処理の加熱温度(℃)としては100〜400が好ましく、さらに好ましくは150〜350、特に好ましくは200〜300である。
疎水化処理には、溶媒{炭化水素油(B)、動粘度(mm2/s、40℃)5〜30のパラフィンオイル及びプロセスオイル等}及び反応触媒(硫酸、硝酸、塩酸、ヒドロキシ酢酸、トリフルオロ酢酸、p−ニトロ安息香酸、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)等が使用できる。
【0038】
疎水性シリカとしては、商品名として、Nipsil SS−10,SS−40,SS−50及びSS−115(日本シリカ株式会社);AEROSIL R972,RX200及びRY200(日本アエロジル株式会社);TS−530,TS−610,TS−720(キャボットカーボン社);AEROSIL R202,R805及びR812(デグサジャパン株式会社);REOLOSIL MT−10,DM−10及びDM−20S (株式会社トクヤマ);並びにSYLOPHOBIC 100,702,505及び603(富士シリシア化学株式会社)等が挙げられる。これらの疎水性シリカは、2種以上の混合物であってもよい。
シリカ(D)を含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウムの重量に基づいて、0.1〜100が好ましく、さらに好ましくは1〜50、特に好ましくは2〜30である。この範囲であると消泡性がさらに良好となる。
【0039】
本消泡剤には、カルボン酸アルミニウム(A)、炭化水素油(B)、ポリオキシアルキレン化合物(C)及びシリカ(D)以外に、その他の成分{天然ワックス、炭素数12〜30のアルコール、炭素数12〜30のカルボン酸エステル、炭素数8〜30の脂肪酸アミド及び/又はシリコーン油等}を含有することができる。さらに、公知の界面活性剤(新・界面活性剤入門、三洋化成工業(株)昭和60年発行第2刷、63−81頁等)、増粘剤、防腐剤(防菌・防黴剤辞典、日本防菌防黴学会昭和61年第1版発行、1−32頁等)及び/又は溶剤(溶剤ハンドブック、講談社 昭和51年発行、143−881頁等)を含んでもよい。
【0040】
天然ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、モンタンワックス、みつろう及びラノリン等が挙げられる。これらの天然ワックスは、2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合、カルナウバワックス、モンタンワックス及び/又はラノリンが主成分として含まれていることが好ましい。
【0041】
天然ワックスを含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)の重量に基づいて、0.1〜30が好ましく、さらに好ましくは0.3〜20、特に好ましくは0.5〜10である。この範囲であると消泡性がさらに良好となる。
【0042】
合成ワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、ポリエチレンワックス及びフィッシャー・トロプシュワックス等が挙げられる。これらの合成ワックスは、2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合、マイクロクリスタリンワックス及び/又はポリエチレンワックスが主成分として含まれていることが好ましい。
【0043】
合成ワックスを含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)の重量に基づいて、0.01〜300が好ましく、さらに好ましくは0.3〜250、特に好ましくは5〜200である。この範囲であると消泡性がさらに良好となる。
【0044】
アルコールとしては、天然アルコール(ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、ミリシルアルコール及びオレイルアルコール等)及び合成アルコール(チーグラー法で合成される直鎖非分岐状の飽和アルコール、オキソ法で合成される直鎖第1級アルコール又は分岐第1級アルコール、パラフィンを空気酸化して合成される直鎖第2級アルコール等)等が使用できる。これらのアルコールは、2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール及び/又はオレイルアルコールが主成分として含まれていることが好ましい。
【0045】
アルコールを含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)の重量に基づいて、0.1〜300が好ましく、さらに好ましくは0.3〜200、特に好ましくは5〜180である。この範囲であると消泡性がさらに良好となる。
【0046】
炭素数12〜30のカルボン酸エステルとしては、炭素数1〜30の1〜6価アルコールと炭素数12〜30のカルボン酸との脂肪酸エステルが用いられ、パルミチンステアレート、ステリルステアレート、ステアリルオレート、オレイルオレート及びオレイルステアレート等が挙げられる。これらの12〜30のカルボン酸エステルは、2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合、パルミチンステアレート、ステリルステアレート、ステアリルオレート、オレイルオレート及び/又はオレイルステアレートが主成分として含まれていることが好ましい。
【0047】
炭素数12〜30のカルボン酸エステルを含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)の重量に基づいて、0.1〜300が好ましく、さらに好ましくは0.3〜200、特に好ましくは0.5〜160である。この範囲であると消泡性がさらに良好となる。
【0048】
炭素数8〜30の脂肪酸アミドとしては、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスパルミチルアミド、エチレンビスラウリルアミド、ブチレンビスステアリルアミド及びブチレンビスパルミチルアミド等が挙げられる。これらの脂肪酸アミドは、2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合、エチレンビスステアリルアミドが主成分として含まれていることが好ましい。
【0049】
炭素数8〜30の脂肪酸アミドを含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)の重量に基づいて、0.1〜400が好ましく、さらに好ましくは0.3〜200、特に好ましくは5〜160である。この範囲であると消泡性がさらに良好となる。
【0050】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン及び上記のシリコーンオイル(疎水化剤)等が使用できる。これらのシリコーン油は、2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合、ジメチルポリシロキサン及び/又はポリエーテル変性シリコーンが主成分として含まれていることが好ましい。
【0051】
シリコーン油を含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)の重量に基づいて、0.1〜300が好ましく、さらに好ましくは0.3〜200、特に好ましくは5〜100である。この範囲であると消泡性がさらに良好となる。
【0052】
公知の界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が用いられる。
【0053】
公知の界面活性剤を含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)の重量に基づいて、0.01〜20が好ましく、さらに好ましくは0.1〜100、特に好ましくは0.3〜50である。この範囲であると製品安定性(分離)が良好となる。
【0054】
増粘剤としては、有機変成モンモリロナイト、有機変成サポナイト、有機変成ヘクトライト、有機変成ナトリウムシリシックマイカナトリウム、有機変成リチウムテニオライト、有機変成ベントナイト、ヒドロキシステアリン酸、ポリイソブチレン、ポリアルキルメタクリレート及びエチレン−プロピレンコポリマー等が挙げられる。これらの増粘剤は、2種以上の混合物であってもよく、混合物の場合、ポリアルキルメタクリレート、エチレン−プロピレンコポリマーが主成分として含まれていることが好ましい。
【0055】
増粘剤を含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)の重量に基づいて、0.01〜20が好ましく、さらに好ましくは0.1〜100、特に好ましくは0.3〜50である。この範囲であると製品安定性(分離)が良好となる。
【0056】
防腐剤としては、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール(BNP)、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(MIT)、1,2−ベンゾチアゾリン−3−オン及び2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。
【0057】
防腐剤を含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)の重量に基づいて、0.001〜5が好ましく、さらに好ましくは0.01〜3、特に好ましくは0.1〜2である。この範囲であると製品安定性がさらに良好となる。
【0058】
溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル及び水が使用できる。
【0059】
溶剤を含有する場合、この含有量(重量%)は、カルボン酸アルミニウム(A)の重量に基づいて、0.1〜300が好ましく、さらに好ましくは0.3〜200、特に好ましくは0.5〜100である。この範囲であると製品安定性および消泡性がさらに良好となる。
【0060】
本発明の消泡剤は、カルボン酸アルミニウム(A)、炭化水素油(B)、並びに必要により一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(C)、シリカ(D)、その他の成分、公知の界面活性剤、増粘剤、防腐剤及び/又は溶剤を加熱して均一混合する方法等により得ることができる。
加熱混合温度(℃)としては、カルボン酸アルミニウムが溶融又は溶解する温度が好ましく、たとえば、80〜190が好ましく、さらに好ましくは100〜180、特に好ましくは130〜170、最も好ましくは140〜160である。
【0061】
加熱混合装置としては、上記の温度に加熱でき均一混合できる装置であれば制限なく、プロペラ型攪拌機、ディゾルバー、ホモミキサー、ボールミル、サンドミル、超音波分散機、ニーダー及びラインミキサー等が挙げられる。なお、これらの装置は組み合わせて使用できる。
加熱混合した後、カルボン酸アルミニウム(A)の粒子径を調整することが好ましい。粒子径の調整方法としては、5〜40℃で攪拌する方法等が適用でき、加熱混合した装置内で、そのまま5〜40℃に冷却してもよい。
【0062】
本発明の消泡剤の粘度(mPa・s/25℃)は、30〜2000が好ましく、さらに好ましくは50〜1000、特に好ましくは70〜500である。この範囲であると消泡性がさらに良好となる。なお、粘度は、JIS K7233−1986の4.2単一円筒回転粘度計法(ISO2555に対応する)に準拠して測定される。
【0063】
本発明の消泡剤は、一括添加法、連続添加方法、断続添加方法又は泡測定器と消泡剤添加装置とを連動させた方法等により、被添加液体に添加することができる。また、1カ所添加及び多点添加のいずれでもよい。また、添加に際しては適当な希釈溶媒又は水などで希釈してもよい。
【0064】
本発明の消泡剤は、公知の消泡剤{たとえば、ポリエーテル消泡剤、シリコーン消泡剤(特公昭51−35556号、特開昭52−2887号、特公昭52−19836号、特公昭55−23084号、特開平6−142410号及び特開平6−142411号各公報等)、鉱物油消泡剤(特公昭49−109276号、特開昭52−22356号、特開昭54−32187号、特開昭55−70308号及び特開昭56−136610号各公報等)及びワックスエマルション消泡剤(特開昭47−114336号、特開昭60−156516号、特開昭62−171715号、特開昭64−68595号、特開平1−210005号及び特開平4−349904号各公報等)}等と併用してもよい。
【0065】
本発明の消泡剤の添加量(重量%)は、被添加液体の発泡状態、温度、粘度などに応じて適宜設定すればよいが、被添加液体の重量に基づいて、0.0001〜10が好ましく、さらに好ましくは0.0005〜8、特に好ましくは0.001〜5、最も好ましくは0.005〜3である。添加温度は0〜100℃程度が好ましく、さらにこのましくは10〜60℃、特に好ましくは20〜50℃である。
【実施例】
【0066】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
<製造例1>
温度計、攪拌機及び還流装置を備えたステンレス反応容器にイオン交換水100部、50%水酸化ナトリウム水溶液50部、及び界面活性剤{ナロアクティHN−80、三洋化成工業(株)}10部を投入し、攪拌下70℃に加熱した。次いで、攪拌しつつオクタン酸90部を投入し、70℃で1時間攪拌した。引き続き、70℃で水酸化アルミニウム57.1部を1時間かけて投入し、さらに70℃で1時間攪拌した。その後、得られた混合物を1時間かけて30℃まで冷却し、ろ過、水洗を行い、オクタン酸アルミニウム(a4)を得た。
そして、モノオクタン酸アルミニウム(a41)の含有量は、(a41)及びジオクタン酸アルミニウム(a42)の合計重量に基づいて、39%であった。また、遊離オクタン酸(fa1)の含有量は、(a41)及び(a42)の合計重量に基づいて5%であった。また、オクタン酸アルミニウム(a4)についてDSC(Differencial Scanning Calorimetry)分析し、85℃(トリオクタン酸アルミニウムの融点)付近で吸熱ピークが観察されないこと{(a4)中にトリオクタン酸アルミニウムが含有されていないこと}を確認した。
【0067】
なお、モノカルボン酸アルミニウム(A1){モノオクタン酸アルミニウム(a41)}、ジカルボン酸アルミニウム(A2){ジオクタン酸アルミニウム(a42)}及び遊離脂肪酸(FA){遊離オクタン酸(fa1)}の含有量(重量%)は、以下のようにして得た。
(1)遊離脂肪酸(FA)の定量
100cc三角フラスコに測定試料1gを精秤し、試薬特級のイソプロピルアルコール50gを投入し、70℃、10分間よく混合した後、試薬特級のアセトンを用いてメスフラスコで正確に100ccに調製した。その後No.5Cろ紙(ADVANTEC社製)でろ過し、このろ液をガスクロマトグラフィー(GC)分析に供した。
【0068】
(2)全脂肪酸の定量
100cc三角フラスコに測定試料5gを精秤し、イオン交換水1ml及び濃塩酸1mlを投入して90℃、10分間反応させた。その後、試薬特級のアセトンでメスフラスコを用いて全体を100mlにし、2時間静置したのち、上澄みをガスクロマトグラフィー(GC)分析に供した。
【0069】
<GC測定条件>
装 置 :GC−14B(島津製作所製)
カ ラ ム :DB−FFAPキャピラリーカラム(Agilent Technologies 30m)
インジェクション温度:250℃
検 出 器 温 度 :250℃
カ ラ ム 温 度 :初期100℃、温度昇温速度10℃/分、
最終250℃(保持時間30分)
キャリアー流速 :ヘリウム1.0ml/分、スプリット比1/20
メイクアップガス :窒素ガス40ml/分
注 入 量 :1ml
【0070】
(3)アルミニウム原子の定量
測定試料2.000gを100ml三角フラスコに精秤し、硝酸15ml、エーテル10ml、水30mlを加え、よく攪拌した後、分液ロートを用いてエーテル抽出した。エーテル層及び水層を分離し、エーテル層に再び硝酸20mlを加えてよく振り、水層を集めた(これを3回繰り返した)。集めた水層を10分間煮沸して、冷却後250mlメスフラスコに入れて水を加え250mlとし、50mlホールピペットで50mlを取りだし、200mlビーカー中にとり、20重量%酢酸アンモニウム水溶液で中和した(指示薬B.P.B使用 黄→青)。さらに酢酸(和光純薬工業(株)特級)で(青→黄)pH3〜3.5にした後、Cu−PAN指示薬1ml加え、100℃に加熱し、直ちに1/100mol/l−EDTA溶液で適定した。橙黄色に変色したら再び100℃に加熱し、100℃において1分間橙黄色が持続するまで滴定を繰り返し、次式によりアルミニウム原子の含有量(重量%)を算出した。
X(重量%)=EDTA溶液の使用量(ml)×0.02698×5/2.000
【0071】
(4)計算
全脂肪酸の含有量から遊離脂肪酸(FA)の含有量を差し引くことにより、カルボン酸アルミニウム(A)に含まれるカルボン酸の含有量(GCC)を求めた後、この(GCC)、アルミニウム原子の含有量(GA)、アルミニウム原子の原子量27及びカルボン酸の分子量(M)を用いて次式から、モノカルボン酸アルミニウム(A1)の含有量(GA1)及びジカルボン酸アルミニウム(A2)の含有量(GA2)を算出した。
【数1】

【0072】
製造例1について、具体的に計算すると以下の通りになる。
遊離脂肪酸(fa1)の含有量は5g、全オクタン酸の含有量は81.6g、アルミニウム原子の含有量は9.6gであったので、
ジオクタン酸アルミニウム(a42)の含有量は、330×(76.6/144−9.6/27)=58.2gとなり、
モノオクタン酸アルミニウム(a41)の含有量は、204×(2×9.6/27−76.6/144)=36.6gとなる。
そして、(a41)及び(a42)の合計重量に基づく(a41)の含有量は、39%、また、(a41)及び(a42)の合計重量に基づく遊離オクタン酸(fa1)の含有量は、5%となる。
【0073】
DSC分析の測定条件は以下の通りである。
装置名:DSC6200(セイコーインスツルメンツ社製)
スタート温度:20℃
リミット温度:200℃
昇温レート:5℃/分
200℃での保持時間:10分
サンプル量10mg
試料容器:簡易密封アルミ製容器
雰囲気:空気
【0074】
<製造例2>
温度計、攪拌機及び還流装置を備えたステンレス反応容器にイオン交換水100部、50%水酸化ナトリウム水溶液25部、及び界面活性剤{ナロアクティHN−80、三洋化成工業(株)}10部を投入し、攪拌下70℃に加熱した。次いで、攪拌しつつドコサン酸100部を投入し、70℃で1時間攪拌した。引き続き、70℃で水酸化アルミニウム39.4部を1時間かけて投入し、さらに70℃で1時間攪拌した。その後、得られた混合物を1時間かけて30℃まで冷却し、ろ過、水洗を行い、ドコサン酸アルミニウム(a5)を得た。
そして、モノドコサン酸アルミニウム(a5)の含有量は、(a51)及びジドコサン酸アルミニウム(a52)の合計重量に基づいて、11%であった。
また、遊離ドコサン酸(fa2)の含有量は、(a51)及び(a52)の合計重量に基づいて11%であった。
また、ドコサン酸アルミニウム(a5)についてDSC分析し、110℃(トリドコサン酸アルミニウムの融点)付近で吸熱ピークが観察されないこと{(a5)中にトリドコサン酸アルミニウムが含有されていないこと}を確認した。
【0075】
<実施例1>
温度計、攪拌機を備えたステンレス反応容器に炭化水素油(b1){コスモピュアスピンG<コスモ石油(株)>715部及びJSOアロマ790<日本サン石油(株)>71部からなる混合炭化水素油}786部を投入した後、攪拌しつつカルボン酸アルミニウム(a1){SA−1000、堺化学工業(株)}44部を投入た。得られた混合物を135℃まで加熱した後、ポリオキシアルキレン化合物{ニューポール LB−385(c1)、三洋化成工業(株)}100部及び天然ワックス{Licowax S(e1)、クラリアント(株)モンタンワックス}70部を投入し、135℃で1時間攪拌した。その後、得られた混合物を1時間かけて20℃まで冷却し、本発明の消泡剤(S1)を得た。そして、分散度試験{JISK5600−2−5:1999(ISO 1524:1983に対応):以下、同じである}により、この(S1)には5μm以上の粒の無いことを確認した。
【0076】
<実施例2>
炭化水素油(b1)786部、カルボン酸アルミニウム(a1)44部、ポリオキシアルキレン化合物(c1)100部、天然ワックス{Licowax S(e1)}70部を、
炭化水素油(b2){コスモSP10<コスモ石油(株)>511部及びコスモピュアスピンG<コスモ石油(株)>275部からなる混合炭化水素油}786部、カルボン酸アルミニウム(a2){SA−1500<堺化学工業(株)>}44部、ポリオキシアルキレン化合物(c1)100部、合成ワックス{FT−100(e2)、日本精鑞(株)合成ワックス}7部に変更した以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(S2)を得た。なお、実施例1と同様にして、5ミクロン以上の粒の無いことを分散度試験により確認した。
【0077】
<実施例3>
炭化水素油(b1)786部、カルボン酸アルミニウム(a1)44部、ポリオキシアルキレン化合物(c1)100部、天然ワックス{Licowax S(e1)}70部を、
炭化水素油(b3){コスモピュアスピンGの259部及びJSOアロマ790の527部からなる混合炭化水素油}786部、カルボン酸アルミニウム(a3){SA−2000堺化学工業(株)}44部、ポリオキシアルキレン化合物(c1)0部、アルコール{カルコール18、花王(株) ステアリルアルコール(e3)}70部に変更した以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(S3)を得た。なお、実施例1と同様にして、5ミクロン以上の粒の無いことを分散度試験により確認した。
【0078】
<実施例4>
カルボン酸アルミニウム(a1)44部、ポリオキシアルキレン化合物(c1)100部、天然ワックス{Licowax S(e1)}70部を、
製造例1で得たオクタン酸アルミニウム(a4)44部、ポリオキシアルキレン化合物(c1)70部、合成ワックス{エキセパールOL−OL、花王(株)製オレイルオレート}(e4)70部に変更した以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(S4)を得た。なお、実施例1と同様にして、5ミクロン以上の粒の無いことを分散度試験により確認した。
【0079】
<実施例5>
カルボン酸アルミニウム(a1)44部、天然ワックス{Licowax S(e1)}70部を、
製造例2で得たドコサン酸アルミニウム(a5)44部、シリコーン{SILWET L−720日本ユニカー(株)シリコーンオイル(e5)}70に変更した以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(S5)を得た。なお、実施例1と同様にして、5ミクロン以上の粒の無いことを分散度試験により確認した。
【0080】
<実施例6>
ポリオキシアルキレン化合物(c1)100部、天然ワックス{Licowax S(e1)}70部を、
ポリオキシアルキレン化合物{ニューポール LB−3000 三洋化成工業(株)(c2)}100部、天然ワックス(e1)0部に変更し、シリカ(d1){NIPSIL SS−10 日本シリカ工業(株)}5部を使用した以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(S6)を得た。なお、実施例1と同様にして、5ミクロン以上の粒の無いことを分散度試験により確認した。
【0081】
<実施例7>
カルボン酸アルミニウム(a1)44部、炭化水素油(b1)786部を、
カルボン酸アルミニウム(a2)1部、炭化水素油(b1)999部に変更した以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(S7)を得た。なお、実施例1と同様にして、5ミクロン以上の粒の無いことを分散度試験により確認した。
【0082】
<実施例8>
カルボン酸アルミニウム(a1)44部、炭化水素油(b1)786部、ポリオキシアルキレン化合物(c1)100部を、
カルボン酸アルミニウム(a2)60部、炭化水素油(b1)40部、ポリオキシアルキレン化合物(c2)785部に変更した以外、実施例1と同様にして、本発明の消泡剤(S8)を得た。なお、実施例1と同様にして、5ミクロン以上の粒の無いことを分散度試験により確認した。
【0083】
<比較例1>
カルボン酸アルミニウム(a1)を含まない以外、実施例1と同様にして、比較用の消泡剤(HS1)を得た。なお、実施例1と同様にして、5ミクロン以上の粒の無いことを分散度試験により確認した。
【0084】
<比較例2>
カルボン酸アルミニウム(a1)44部を、カルボン酸アルミニウム(a1)22部及びモノステアリン酸アルミニウム{和光純薬(株)モノステアリン酸アルミニウム(純度85%)}22部に変更した以外、実施例1と同様にして、比較用の消泡剤(HS2)を得た。なお、実施例1と同様にして、5ミクロン以上の粒の無いことを分散度試験により確認した。
【0085】
<比較例3>
カルボン酸アルミニウム(a1)44部を、カルボン酸アルミニウム(a2)22部及びステアリン酸マグネシウム{SM−1000、堺化学工業(株)ジステアリン酸マグネシウム(純度90%)}22部に変更した以外、実施例1と同様にして、比較用の消泡剤(HS3)を得た。なお、実施例1と同様にして、5ミクロン以上の粒の無いことを分散度試験により確認した。
【0086】
<比較例4>
カルボン酸アルミニウム(a1)44部を、カルボン酸アルミニウム(a2)22部及びトリステアリン酸アルミニウム{昭和化学(株)トリステアリン酸アルミニウム(純度95%)}22部に変更した以外、実施例1と同様にして、比較用の消泡剤(HS4)を得た。なお、実施例1と同様にして、5ミクロン以上の粒の無いことを分散度試験により確認した。
【0087】
実施例1〜8及び比較例1〜4で得た消泡剤S1〜S8及びHS1〜HS4について、これらの組成と、これらの消泡剤の製品安定性とを表3に示した。
なお、製品安定性は、140mlガラス製密閉容器に入った約110mlの消泡剤を、40℃で30日間放置した後、目視で観察し、次の評価基準により評価した。
良好 :分離及びゲル化がない
ゲル化:流動性がなく、さらに激しく攪拌しても流動性がない
分離 :二層に分離した
【0088】
【表3】

A:カルボン酸アルミニウム{モノカルボン酸アルミニウム(A1)、ジカルボン酸アルミニウム(A2)、遊離脂肪酸(FA)}
B:炭化水素油{芳香族炭化水素油(BA)}
C:ポリオキシアルキレン化合物
D:シリカ
E:その他の成分
注)(A1)及び(A2)の合計重量に基づく含有量(%)
【0089】
<評価例1>
実施例1〜8及び比較例1〜4で得た消泡剤S1〜HS4を用いて、以下のようにエマルション塗料を調製した。これらのエマルション塗料について、以下の方法により、消泡性及びハジキについて評価し、これらの結果を表4に示した。
【0090】
(1)エマルションベース塗料の調製
以下の原料組成にて、インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザー(日本精器会社製、モデルED)を用いて、グラインディング及びレットダウンして塗料化とした。得られた塗料は実施例1と同様に分散度をチェックして、5ミクロン以上の粒の無いことを確認した。
次いでこの塗料を、ストマー粘度計(JIS K5400−1990)で77KU(25℃)になるように水で希釈してエマルションベース塗料を得た。
【0091】
<グライディング工程>
水 8.2部
SNディスパーサント5027;サンノプコ(株)製分散剤 1.2部
SNシックナー636;サンノプコ(株)製増粘剤 0.5部
アンモニア水溶液(25%) 0.2部
エチレングリコール 3.4部
タイーペークR930;石原産業(株)製二酸化チタン 27.8部
【0092】
<レットダウン工程>
ボンコートEC819;大日本インキ化学工業(株)製アクリルエマルション55.5部
ノプコサイドSN215;サンノプコ(株)製防腐剤 1.0部
テキサノール;イーストマンケミカル社製造膜調整剤 2.0部
SNシックナー636 0.2部
合 計 100.0部
【0093】
(2)エマルション塗料の調製
エマルションベース塗料に、消泡剤S1〜HS4を1重量%(対エマルションベース塗料)となるように加えて、インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザーにて15〜25℃、2000rpm、3分間攪拌混合してエマルション塗料1〜12を得た。
また消泡剤を加えない塗料を作成しエマルション塗料13とした。
【0094】
(3)消泡性及びハジキの評価
ブリキ板{厚さ0.5mm、20×30cmにカット}をアセトン/布にて脱脂した後、ウェット膜厚250μmとなるようにエマルション塗料1〜13をローラー塗装した後、25℃、60%相対湿度に調整したコントロールルームにて1日間乾燥させて、塗膜表面を観察し以下の基準により消泡性及びハジキを評価した。
また、エマルション塗料1〜13を40℃にて1ケ月静置保管した後(エイジング後)、改めてインペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザーにて、15〜25℃、2000rpm、3分間攪拌混合してエイジング評価用のエマルション塗料を得、同様に消泡性及びハジキを評価した。
【0095】
<消泡性>
5:泡痕が2個以下ある
4:泡痕が2〜5個ある
3:泡痕が5〜10個ある
2:泡痕が10〜20個ある
1:泡痕が20個以上ある
【0096】
<ハジキ>
5:ハジキ又はクレータリング痕が2個以下ある
4:ハジキ又はクレータリング痕が2〜5個ある
3:ハジキ又はクレータリング痕が5〜10個ある
2:ハジキ又はクレータリング痕が10〜20個ある
1:ハジキ又はクレータリング痕痕が20個以上ある
【0097】
<評価例2>
実施例1〜8及び比較例1〜4で得た消泡剤S1〜HS4を用いて、以下のように紙塗工用のコーティングカラーを調製した。これらのコーティングカラーについて、以下の方法により、消泡性及びハジキを評価し、これらの結果を表4に示した。
【0098】
(1)コーティングカラーベースの調製
以下の原料組成にて、インペラー型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザー(日本精器会社製、モデルED)を用いて、コーティングカラーベースを作成した。
【0099】
<カラー処方>
水 29.4部
SNディスパーサント5040;サンノプコ(株)製分散剤 0.35部
水酸化ナトリウム水溶液(50%) 0.22部
FMT−90;(株)ファイマテック製重質炭酸カルシウム 53.3部
HTクレー : 二級クレー 60.0部
SBR2803F: JSR(株)製SBRラテックス 20.0部
MS4600: 日本食品加工(株)製酸化澱粉 8.6部
合 計 172.0部
【0100】
(2)消泡性及びハジキの評価
コーティングカラーベースに、消泡剤を1%となるように加えて、インペラー型羽根を装着したエクセル
オートホモジナイザーにて15〜25℃、2000rpm、10分間攪拌混合してコーティングカラーを得た。また、消泡剤を添加しないこと以外は上記の方法と同様にしてブランクコーティングカラー(消泡剤無添加)を得た。そして、これらのコーティングカラーについて、10分間攪拌直後のコーティングカラーの比重を、JIS K5600−2−4:1999(金属製比重瓶:比重カップ)に準じて測定した。比重が大きいほど泡のかみ込みが少なく、消泡性が良好であることを表している。
またガラス板{厚さ5mm、20×30cmにカット}をアセトン/布にて脱脂した後、ウェット膜厚250μmとなるようにコーティングカラーをアプリケーターにて塗装した後、塗膜表面を観察し以下の基準によりハジキを評価した。
【0101】
<ハジキ>
5:ハジキが2個以下ある
4:ハジキが2〜5個ある
3:ハジキが5〜10個ある
2:ハジキが10〜20個ある
1:ハジキが20個以上ある
【0102】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の界面活性剤は、製紙パルプ工業、食品工業、繊維工業、合成樹脂工業、合成ゴム工業、樹脂エマルション工業、コンクリート工業、塗料工業、し尿処理、排水処理などの水を多量に用いる製造・処理工程など、発泡障害が問題になる全ての製造・処理工程に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸アルミニウム(A)及び炭化水素油(B)を含有し、カルボン酸アルカリ土類金属を含まない消泡剤であって、
(A)がジカルボン酸アルミニウム(A2)、またはモノカルボン酸アルミニウム(A1)及びジカルボン酸アルミニウム(A2)の混合物であり、
(A)及び(B)の重量に基づいて(A)の含有量が0.1〜60重量%、(B)の含有量が40〜99.9重量%であり、
(A1)の含有量が(A1)及び(A2)の合計重量に基づいて40重量%以下である消泡剤。
【請求項2】
さらに遊離脂肪酸(FA)を含有してなり、(FA)の含有量がモノカルボン酸アルミニウム(A1)及びジカルボン酸アルミニウム(A2)の重量に基づいて1〜30重量%である請求項1に記載の消泡剤。
【請求項3】
さらに芳香族炭素(BA)含有炭化水素油(B)を含んでなり、
芳香族炭素(BA)の含有量が炭化水素油(B)の全炭素数に基づいて1〜30個数%である請求項1又は2に記載の消泡剤。
【請求項4】
さらに一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(C)を含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の消泡剤。
【化1】

ただし、一般式(1)においてR1は水素原子又は炭素数2〜22の有機基、R2は水素原子又は炭素数8〜31のアシル基、OAは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、mは1〜3の整数、nは10〜60の整数を表す。

【公開番号】特開2006−87966(P2006−87966A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272757(P2004−272757)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】