説明

消火器用容器及び消火器

【課題】軽量であり、耐圧性及び耐衝撃性に優れる消火器用容器及びそれを用いた消火器を提供すること。
【解決手段】本発明は、消火器に用いられる消火器用容器10において、非晶性樹脂からなる本体部1と、該本体部1の外周を被覆するシュリンクラベル2と、を備える消火器用容器10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火器用容器及びそれを用いた消火器に関する。
【背景技術】
【0002】
消火器には、消防法に基づく国家検定制度が定められており、これに合格したものでないと、使用できない。
現在、一般に普及している可搬式の消火器としては、加圧式ABC粉末消火器が挙げられる。かかる加圧式ABC粉末消火器に用いられる消火器用容器は、金属性であり、耐圧性及び耐衝撃性に優れる。
【0003】
ところが、上記加圧式ABC粉末消火器は、消火器用容器が金属製であるので、重量が大きくなり、可搬式であるにも関わらず、運び難いという欠点がある。特に、女性やお年寄りには運搬の負担が大きく、場合によっては運べない場合もある。また、金属製の容器は、錆びによる強度低下を防止するために塗装等の塗装工程が必須であり、塗装による製造工程の煩雑化、環境への悪影響等の問題がある。
このため、消火器の軽量化及び塗装工程の省略が望まれている。
【0004】
これに対し、消火器用容器を樹脂化し、軽量化を図る試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
また、合成樹脂製容器を用い、外周面に鋼線を螺旋状に巻回した消火器用合成樹脂製容器(例えば、特許文献2参照)や、ブロー成形したプラスチック製のボンベ状容器の外周にガラス繊維等の補強繊維が巻回された消火器の外筒(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−64678号公報
【特許文献2】実開昭60−182069号公報
【特許文献3】実公平6−20546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の消火器においては、容器が軽量化されているので、運搬が容易となるものの、上述した鉄製の容器と比較して、耐圧性及び耐衝撃性が極めて劣る欠点がある。
上記特許文献2及び3に記載の消火器においては、容器の外周に鋼線や補強繊維を巻回する必要があるので、製造が困難である。また、容器を樹脂化したものの、鋼線や補強繊維の重量が大きいので、軽量化が不十分である。さらに、容器を樹脂化したものにあっては錆びの発生によって強度が低下することはないが、屋外等で長期の保管がなされる消火器にあっては樹脂の強度が紫外線等によって劣化する所謂耐候性の問題が生じる虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、軽量であり、耐候性、耐圧性及び耐衝撃性に優れる消火器用容器及びそれを用いた消火器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、耐圧性及び耐衝撃性に優れる樹脂を選定し、消火器用容器の本体部に用い、且つこれをシュリンクラベルで被覆することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(1)消火器に用いられる消火器用容器において、非晶性樹脂からなる本体部と、該本体部の外周を被覆するシュリンクラベルと、を備える消火器用容器に存する。
【0010】
本発明は、(2)シュリンクラベルが本体部に密着されている上記(1)記載の消火器用容器に存する。
【0011】
本発明は、(3)本体部の底部が半球状であり、本体部を立たせるための底カバー材を更に備える上記(1)又は(2)に記載の消火器用容器に存する。
【0012】
本発明は、(4)シュリンクラベルの一部が本体部と底カバー材とに挟持されている上記(3)記載の消火器用容器に存する。
【0013】
本発明は、(5)非晶性樹脂が変性ポリフェニレンエーテルであり、本体部がブロー成形して得られるものである上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の消火器用容器に存する。
【0014】
本発明は、(6)消火器用容器の製造方法であって、非晶性樹脂を用いダイレクトブロー成形法により本体部を形成する成形工程と、本体部を円筒状のシュリンクラベル内に挿入し、加熱することでシュリンクラベルを収縮させて本体部に密着させる被覆工程と、本体部の下部に底カバー材を嵌合させる嵌合工程と、を備える消火器用容器の製造方法に存する。
【0015】
本発明は、(7)消火剤が収容された上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の消火器用容器と、該消火器用容器内に設けられ、高圧ガスが充填したガス用容器と、該消火器用容器に取り付けられた操作レバーと、消火器用容器の内部に連通するサイホン管と、該サイホン管を介して消火剤を噴射するホーンと、を備え、操作レバーを操作することにより、高圧ガスが消火器用容器内を加圧し、消火剤がホーンから噴射する消火器に存する。
【0016】
本発明は、(8)消火剤が粉末である上記(7)記載の消火器に存する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の消火器用容器は、本体部を非晶性樹脂からなるものとすることで、意外にも、耐圧性及び耐衝撃性を飛躍的に向上させることができる。これに加え、本発明の消火器用容器は、本体部をシュリンクラベルで被覆することにより、塗装工程等を施さなくても耐候性を向上させることができ、屋外等で長期保管が可能となる。また、本体部をシュリンクラベルで被覆することにより、耐圧性及び耐衝撃性もより向上させることができる。さらに、シュリンクラベルに文字を描いたり、色をつけたりすることで、消火器自体を装飾することができる。なお、上記シュリンクラベルは、本体部に密着されていることが好ましい。
【0018】
上記消火器用容器は、本体部の底部が半球状であると、耐圧性がより向上する。この場合、消火器用容器を立てられなくなるので、底カバー材を底部に設けることが好ましい。
【0019】
上記消火器用容器は、シュリンクラベルの一部が本体部と底カバー材とに挟持されている場合、シュリンクラベルを確実に固定できる。また、シュリンクラベルで本体部を確実に被覆することができ、本体部の露出を防止して太陽光などによる紫外線が直接照射されることを防止することができる。
【0020】
上記消火器用容器において、非晶性樹脂が変性ポリフェニレンエーテルである場合、耐圧性及び耐衝撃性をより一層向上させることができる。また、本体部がブロー成形して得られるものである場合、本体部の製造が容易となる。
【0021】
本発明の消火器用容器の製造方法は、ダイレクトブロー成形で本体部を成形するので、軽量な本体部を容易に形成できるという利点がある。また、この本体部を、円筒状のシュリンクラベルに挿入し、本体部にシュリンクラベルを密着させる被覆工程を備えるので、重量も大きくならず、塗装等の工程が不要であり、製造も容易である。
【0022】
本発明の消火器は、上述した消火器用容器を備えるので、軽量でありながら、耐候性、耐圧性及び耐衝撃性にも優れる。また、消火剤が粉末であると、より長期間安定に保存できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係る消火器用容器の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る消火器用容器の製造工程を示すチャートである。
【図3】図3の(a)〜(c)は、本実施形態に係る消火器用容器の製造方法におけるダイレクトブロー成形法の工程を示す概略断面図である。
【図4】図4の(a)は、本実施形態に係る消火器用容器の製造方法における被覆工程を示す側面図であり、(b)は、(a)の上面図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る消火器用容器の製造方法における嵌合工程を示す概略図である。
【図6】図6は、本発明に係る消火器の一実施形態を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明に係る消火器の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
図1は、本発明に係る消火器用容器の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る消火器用容器10は、非晶性樹脂からなる本体部1と、該本体部1の外周を被覆するシュリンクラベル2と、本体部1を立たせるための底カバー材3と、を備える。
【0026】
本実施形態に係る消火器用容器10は、消火剤を収容可能であり、本体部1の上部に公知の操作レバー等を取り付けることにより、消火器として用いることができる。なお、かかる消火器についての詳細は後述する。
【0027】
以下、消火器用容器10が備える、本体部1、シュリンクラベル2及び底カバー材3について、更に詳細に説明する。
【0028】
(本体部)
本体部1は、非晶性樹脂からなり、直接、消火剤を収容する部位である。
本体部1は、円筒状の胴部1bと、胴部1bの下部に設けられた半球状の底部1cと、胴部1bの上部に設けられた螺合部1aと、からなる。すなわち、本体部1は、螺合部1a、胴部1b及び底部1cがこの順序で一体となっている。
【0029】
本体部1は、公知の操作レバーを、螺合部1aを介して螺合可能となっている。
一方、底部1cは、後述する底カバー材3を嵌合させるため、胴部1bよりもやや直径が小さくなっている。また、底部1cには、底カバー材3を固定するための窪み部5が設けられている。
【0030】
かかる窪み部5は、線状であり、本体部1の外周に水平方向且つ同一面に一列に複数設けられている。そして、各窪み部5の間には、窪みがない拘止部Pが設けられている。これにより、後述する底カバー材3の横ずれが防止される。
【0031】
本体部1は、非晶性樹脂を用いて、ブロー成形することにより、螺合部1a、胴部1b及び底部1cが同時に一体に製造される。
かかるブロー成形としては、ダイレクトブロー成形法や2軸延伸ブロー成形法が挙げられる。これらの中でも、本体部1は、軽量な本体部を容易に形成できるという観点から、ダイレクトブロー成形法で成形することが好ましい。なお、かかる製造方法(成形法)の詳細については後述する。
【0032】
上記非晶性樹脂として用いられる樹脂は、ポリアミド(PA)、非晶ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリスチレン(PS)、ポリサルフォン(PSF)、又は、これらをポリマーアロイ化としたもの等が挙げられる。
これらの中でも、非晶性樹脂は、耐熱性、耐衝撃性の観点から、ポリフェニレンエーテル(PPE)を用いたポリマーアロイであることが好ましい。具体的には、ポリフェニレンエーテル(PPE)とポリスチレン(PS)とのポリマーアロイ(PPE/PSアロイ)、ポリフェニレンエーテル(PPE)と耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)とのポリマーアロイ(PPE/HIPSアロイ)、又は、ポリフェニレンエーテル(PPE)とポリアミド(PA)とのポリマーアロイ(PPE/PAアロイ)等の変性ポリフェニレンエーテルが挙げられる。
また、これらの中でも、非晶性樹脂は、耐圧性が極めて優れるPPE/PSアロイであることが特に好ましい。
【0033】
本体部1の壁厚は、平均肉厚が2.0mm以上であることが好ましく、2.5〜4.5mmであることがより好ましい。
壁厚の平均肉厚が2.0mm未満であると、壁厚が上記範囲内にある場合と比較して、耐圧性が不十分となる傾向があり、壁厚が5.0mmを超えると、壁厚が上記範囲内にある場合と比較して、コスト高となるばかりか、重量も大きくなり消火器を運搬しにくくなる傾向がある。
【0034】
本体部1の破壊圧力は、4.0MPa以上であることが好ましい。
この場合、一般の消火器における高圧ガスが消火器用容器内を加圧しても、消火器用容器の変形を確実に防止できる。
【0035】
本体部1を構成する熱可塑性樹脂の曲げ弾性率は、2000Mpa以上であることが好ましく、2000〜5000MPaであることがより好ましい。なお、かかる曲げ弾性率は、ASTM D790に準じて測定した値である。
曲げ弾性率が2000MPa未満であると、曲げ弾性率が上記範囲内にある場合と比較して、耐圧性に劣る傾向があり、圧力に対して胴部1bに永久変形が生じる虞がある。
【0036】
本体部1の曲げ強さは、70MPa以上であることが好ましく、70〜95MPaであることがより好ましい。なお、かかる曲げ強さは、ASTM D790に準じて測定した値である。
曲げ強さが70MPa未満であると、曲げ強さが上記範囲内にある場合と比較して、耐圧強度に劣る傾向があり、圧力に対して亀裂が生じ易くなる。
【0037】
本体部1のアイゾット衝撃強さは、90J/m以上であることが好ましく、90〜150J/mであることがより好ましい。なお、かかる引張り強さは、ASTM D256(ノッチ付き)に準じて測定した値である。
アイゾット衝撃強さが90MPa未満であると、アイゾット衝撃強さが上記範囲内にある場合と比較して、耐衝撃性に劣る傾向があり、落下等により本体部1が破裂する虞がある。
【0038】
(シュリンクラベル)
シュリンクラベル2は、本体部1の外周を被覆する。さらに詳しくは、本体部1の螺合部1aと底部1cの下端を除く全面を覆うように密着される。
消火器用容器10においては、本体部1をシュリンクラベル2で被覆するので、耐候性さらには屋外にて長期間保管された場合であっても耐圧性及び耐衝撃性が低下することを防止することができる。
また、本体部1の露出を防止して太陽光などによる紫外線が直接照射されることを防止することができ、本体部1の劣化を好適に防止することができる。
【0039】
このとき、シュリンクラベル2を本体部1の外周に密着させることが好ましい。すなわち、シュリンクラベル2は、円筒状の熱収縮性フィルムからなるものが好適に用いられる。
熱収縮性フィルムからなる円筒状のシュリンクラベル2を用いることにより、本体部1に容易に密着状態で被覆することができるので、製造が容易である。また、重量も大きくならない。
【0040】
このようなシュリンクラベル2としては、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなり、単層又は多層の透明なフィルムが用いられる。
これらの中でも、シュリンクラベル2は、汎用性の観点から、ポリエステルからなる熱収縮性フィルムであることが好ましい。
【0041】
シュリンクラベル2は、全面に印刷が施されていることが好ましい。すなわち、シュリンクラベル2は、本体部1に種々の表示をするとともに、外部からの紫外線を遮断するように、透明な熱収縮性フィルムの裏面に印刷を行い、裏面が内側となるように円筒状に形成されていることが好ましい。
【0042】
シュリンクラベル2の裏面側に紫外線吸収性着色層を設けることが好ましい。
かかる紫外線吸収性着色層は、紫外線透過率が低いものが好ましい。具体的には、紫外線吸収性着色層を有するシュリンクラベル2の紫外線透過率が50%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましく、3%未満であることが更に好ましい。
【0043】
かかる紫外線吸収性着色層としては、印刷により着色材を施した層、紫外線吸収剤をコーティングした層、無機材料を蒸着させた層、紫外線吸収性のフィルムをラミネートした層、又は、それらの組み合わせの層等が挙げられる。
特に、紫外線吸収性着色層は、シュリンクラベル2の裏面全面に印刷により着色材を施したものが好ましい。
【0044】
シュリンクラベル2は、裏面側に多層印刷を施してもよい。表面側に注意書き等の表示を印刷し、その上から紫外線吸収剤等を含んだインクまたは黒色のインクにより印刷をすることで、本体部1への紫外線の透過を好適に遮断することができる。なお、熱収縮性フィルムを構成する樹脂自体に着色剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有させてもよい。
【0045】
ちなみに、消火器用容器10の装飾の例として、本体部1に種々の模様を表示するとともに、透明な熱収縮性フィルムの裏面に文字等の印刷を行い、裏面が内側となっている形態が挙げられる。
【0046】
(底カバー材)
底カバー材3は、本体部1を立たせるために、本体部1の底部1cに取り付けられる。
消火器用容器10においては、底カバー材3が取り付けられるので、消火器用容器10を立てることができる。
【0047】
底カバー材3は、円筒状になっており、内壁に環状の突起部3aを有する。
かかる底カバー材3は、突起部3aが本体部1の底部1cの窪み部5に嵌合されている。
これにより、底カバー材3が本体部1に確実に固定される。
【0048】
消火器用容器10においては、シュリンクラベル2の一部が本体部1と底カバー材3とに挟持されている。このため、消火器用容器10は、シュリンクラベル2を確実に固定できる。なお、シュリンクラベル2は、その下端が剥がれる恐れがあるが、底カバー材3によって、本体部1に押し付けられているので、剥がれが生じない。特に、底カバー材3の突起部3aでシュリンクラベル2を窪み部5に落とし込むので、より確実に固定される。
また、半球状の本体部1の底部1cが底カバー材3で覆われるので、底部1cをシュリンクラベル2で被覆しなくてもよい。
【0049】
この場合、耐衝撃性、或いは耐候性は、底カバー材3により、担保される。すなわち、底カバー材3により、本体部1の露出を防止して太陽光などによる紫外線が直接照射されることを防止することができる。ちなみに、本体部1の底部1cは、半球状であるので、胴部1bよりも耐圧性に優れる。
また、後述するように、シュリンクラベル2を円筒状とし、本体部1を挿入して、本体部1の外周に密着状態で被覆すればよいので、製造が容易となる。
【0050】
以上述べてきたように、本実施形態に係る消火器用容器10は、本体部1を非晶性樹脂からなるものとすることで、高圧ガスが消火器用容器内を加圧しても、本体部1の破損又は変形を抑制することができ、且つ本体部1の外周をシュリンクラベル2で被覆することで、耐候性を向上させて本体部1の紫外線等による劣化を防止して、屋外等に長期間保管された場合であっても、本体部1の破損又は変形を確実に防止できる。
このことから、上記消火器用容器10によれば、耐圧性及び耐衝撃性に優れるものとなる。
【0051】
次に、消火器用容器10の製造方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る消火器用容器の製造工程を示すチャートである。
図2に示すように、本実施形態に係る消火器用容器10の製造方法は、非晶性樹脂を用いダイレクトブロー成形法により本体部1を形成する成形工程S1と、本体部1を円筒状のシュリンクラベル2内に挿入し、シュリンクラベル2を密着させる被覆工程S2と、本体部1の下部に底カバー材3を嵌合させる嵌合工程S3と、を備える。
【0052】
本発明の消火器用容器の製造方法は、ブロー成形により本体部1を成形し、この本体部1に別途準備した印刷を施した円筒状のシュリンクラベル2を被せて、シュリンクラベル2を熱収縮させて被覆させることにより製造するので、重量も大きくならず、製造も容易である。
【0053】
以下、本実施形態に係る消火器用容器の製造方法が備える、成形工程S1、被覆工程S2、嵌合工程S3、について更に詳細に説明する。
【0054】
(成形工程)
成形工程S1は、ダイレクトブロー成形法により、本体部1を形成する工程である。
図3の(a)〜(c)は、本実施形態に係る消火器用容器の製造方法におけるダイレクトブロー成形法の工程を示す概略断面図である。
【0055】
まず、成形工程S1においては、図示しない押出機で非晶性樹脂のペレットを溶融、混練させる。
そして、図3の(a)に示すように、溶融状態の非晶性樹脂を押出ヘッド21からチューブ状に押し出し、弱い空気を入れてプリブローすることにより、円筒状のパリソン22とする。
【0056】
次に、図3の(b)に示すように、パリソン22を金型23で挟んで、型締めし、パリソン22内に高圧空気を矢印Aの方向に吹き込み、パリソン22を金型23にそった形状(消火器用容器10の本体部1の形状)となるように膨らませる。
【0057】
そして、冷却し、非晶性樹脂が固まったら、図3の(c)に示すように、金型23を開いて、取り出すことにより、本体部1が得られる。
【0058】
(被覆工程)
被覆工程S2は、本体部1にシュリンクラベル2を被覆する工程である。
図4の(a)は、本実施形態に係る消火器用容器の製造方法における被覆工程を示す側面図であり、(b)は、(a)の上面図である。
【0059】
図4の(a)及び(b)に示すように、被覆工程S2においては、本体部1を、円筒状のシュリンクラベル2内に、本体部1の胴部1bが完全に被覆されるように挿入する。
そして、外側からシュリンクラベル2を本体部1に熱収縮させて密着させることにより、本体部1にシュリンクラベル2が被覆されたものが得られる。
【0060】
(嵌合工程)
嵌合工程S3は、本体部1の下部に底カバー材3を嵌合させる工程である。
図5は、本実施形態に係る消火器用容器の製造方法における嵌合工程を示す概略図である。
【0061】
図5に示すように、嵌合工程S3においては、本体部1の底部1cに底カバー材3を嵌合させる。
このとき、底カバー材3を半球状の底部1cの壁面に滑らせるようにして嵌め込み、上述した底部1cの窪み部5に、底カバー材3の突起部3aが嵌合するようにする。
こうして、消火器用容器10が得られる。
【0062】
次に、本発明に係る消火器について説明する。
本発明に係る消火器は、上述した消火器用容器10が用いられる。
図6は、本発明に係る消火器の一実施形態を示す断面図である。
図6に示すように、本実施形態に係る消火器20は、消火剤が収容された消火器用容器10と、該消火器用容器10内に設けられ、高圧ガスが充填したガス用容器31と、消火器用容器10に取り付けられた操作レバー32と、消火器用容器10の内部に連通するサイホン管35と、サイホン管35を介して消火剤33を噴射するホーン34と、を備える。
【0063】
本実施形態に係る消火器20は、耐久性の観点から、加圧式消火器であることが好ましい。
このため、用いられる消火剤は、粉末であることが好ましい。
【0064】
消火器20に用いられる消火剤としては、公知のものが用いられ、例えば、リン酸二水素アンモニウムを主成分とするもの、炭酸水素ナトリウムを主成分とするもの、炭酸水素カリウムを主成分とするもの等が挙げられる。
【0065】
消火器20においては、操作レバー32に備えられたキャップ37が、本体部1の螺合部1aに螺合されている。これにより、操作レバー32が本体部1に取り付けられている。
【0066】
消火器20においては、安全栓36を抜き、操作レバー32を操作することにより、高圧ガスが消火器用容器10内を加圧し、消火剤33がサイホン管35を介して、ホーン34から噴射するようになっている。
【0067】
本実施形態に係る消火器20は、上述した消火器用容器10を備えるので、軽量でありながら、耐圧性及び耐衝撃性にも優れる。また、消火剤33が粉末であると、より長期間安定に保存できるという利点がある。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0069】
例えば、本実施形態に係る消火器用容器10において、本体部1の底部は、半球状となっているが、本体部1を起立させることができるように、底部の頂点が平らになった半球台状であってもよい。なお、この場合、シュリンクラベル2は、本体部1の底部全体を被覆することが好ましい。
【0070】
消火器20は、加圧式消火器であるが、消火器用容器10を蓄圧式消火器として用いてもよい。
図7は、本発明に係る消火器の他の実施形態を示す断面図である。
図7に示す消火器30は、消火剤が収容された消火器用容器10と、消火器用容器10に取り付けられた操作レバー32aと、消火器用容器10の内部に連通するサイホン管35aと、サイホン管35aを介して消火剤33aを噴射するホーン34aと、を備える。
【0071】
消火器30においては、消火器用容器10内が既に加圧されており、安全栓36aを抜き、操作レバー32aを操作することにより、消火剤33aがサイホン管35aを介して、ホーン34aから噴射するようになっている。
【0072】
この場合、消火剤としては、粉末系に加え、水、泡系の消火剤も使用できる。
水、泡系の消火剤としては、純水、炭酸カリウムを主成分とするもの、フッ素系界面活性剤を主成分とするもの、硫酸アルミニウムを主成分とするもの、二酸化炭素、ハロン1301等が挙げられる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
ポリフェニレンエーテルとポリスチレンとのポリマーアロイである変性ポリフェニレンエーテル樹脂(非晶性樹脂、旭化成ケミカルズ社製、商品名:ザイロン600H)を用い、図3の(a)〜(c)に示すダイレクトブロー成形法により、本体部を作成した。
得られた本体部の壁面の平均肉厚(壁厚)は、2.6mm(最低肉厚2.4mm、最大肉厚3.0mm)で容積が1.6リットルであった。
【0075】
次に、裏面に紫外線吸収性着色層として着色材の全面印刷を施したポリエステルからなるシュリンクラベルを、図4の(a)及び(b)に示すように、本体部に密着させて本体部を被覆し、図5に示すように、底カバー材を取り付けることにより、消火器用容器のサンプルを得た。
【0076】
(実施例2)
本体部の壁面の平均肉厚を4.0mm(最低肉厚3.8mm、最大肉厚4.7mm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、消火器用容器のサンプルを得た。
【0077】
(実施例3)
変性ポリフェニレンエーテル樹脂の代わりに、ポリフェニレンエーテルとポリアミドとのポリマーアロイである変性ポリフェニレンエーテル樹脂(非晶性樹脂、旭化成ケミカルズ社製、商品名:ザイロンA0100)を用い、本体部の壁面の平均肉厚を3.5mm(最低肉厚3.1mm、最大肉厚3.8mm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、消火器用容器のサンプルを得た。
【0078】
(実施例4)
本体部の壁面の平均肉厚を2.0mm(最低肉厚1.8mm、最大肉厚2.4mm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、消火器用容器のサンプルを得た。
【0079】
(実施例5)
変性ポリフェニレンエーテル樹脂の代わりに、ポリカーボネート樹脂(非晶性樹脂、Sabic社製、商品名:レキサンPK2870)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、消火器用容器のサンプルを得た。
【0080】
(実施例6)
変性ポリフェニレンエーテル樹脂の代わりに、ポリカーボネート(PC)とポリブチレンテレフタレート(PBT)のポリマーアロイ(Sabic社製、商品名:ゼノイX6800BM)を用い、本体部の壁面の平均肉厚を4.0mm(最低肉厚3.8mm、最大肉厚4.7mm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、消火器用容器のサンプルを得た。
【0081】
(比較例1)
変性ポリフェニレンエーテル樹脂の代わりに、高密度ポリエチレン樹脂(結晶性樹脂、日本ポリエチレン社製、商品名:ノバテックHB111R)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、消火器用容器のサンプルを得た。
【0082】
(比較例2)
シュリンクラベルを用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、消火器用容器のサンプルを得た。
【0083】
(比較例3)
シュリンクラベルを用いなかったこと以外は、実施例5と同様にして、消火器用容器のサンプルを得た。
【0084】
(評価方法)
1.耐圧試験
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた消火器用容器のサンプルに、水を充填し、水圧力で2MPaの圧力を5分間与えた。その後のサンプルの状態を黙視にて確認した。
また、同様にして、水圧力で4MPaの圧力を1分間与えた。その後のサンプルの状態を黙視にて確認した。
【0085】
黙視による評価基準は、サンプルに変形・歪み、及び、亀裂、が全く生じないものを「○」とし、サンプルに歪み、又は、亀裂、が生じたものを「△」とし、サンプルに歪み、及び、亀裂が生じ、水が漏れたものを「×」とした。
得られた結果を表1に示す。
【0086】
2.耐候性試験
消火器用容器の紫外線劣化による耐圧強度の低下を確認するためにキセノン耐候性試験機を用いてJIS K7350−2に準拠して1000時間照射した後、上記耐圧試験にて水圧力で4MPaの圧力を1分間与え、同様の評価基準にて評価を行なった。
得られた結果を表1に示す。
【0087】
〔表1〕

【0088】
2.耐衝撃性試験
実施例1〜6で得られた消火器用容器のサンプルのシュリンクラベルに文字を印刷したものを用い、印刷した面が本体部1と接触するように密着させて、サンプルを横向きに台の上に固定した。そして、300gの錘の先端に直径25mmの鋼球を取り付け、サンプルの壁面の印刷した部分の上方50cmの高さから鋼球を落下させた。その後のサンプルの状態を黙視にて確認した。なお、鋼球の材質は、JIS B1501に適合するものを用いた。
【0089】
黙視による評価基準は、文字に歪みが全く生じないものを「○」とし、文字に僅かに歪みが生じたものを「△」とし、文字が歪んだものを「×」とした。
得られた結果を表2に示す。
【0090】
〔表2〕

【0091】
これらの試験により、実施例1〜6で得られた消火器用容器は、耐圧性及び耐衝撃性に優れることがわかった。一方、本発明によらない比較例1〜3で得られた消火器用容器は、耐圧性及び耐衝撃性が不十分であった。
また、実施例1〜6で得られた消火器用容器の中でも、PPE/PS及びPPE/PAを非晶性樹脂として用いた消火器用容器は、耐圧性及び耐衝撃性が極めて優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明に係る消火器用容器は、消火剤を収容可能であり、本体部1の上部に公知の操作レバー等を取り付けることにより、消火器として用いることができる。また、本発明に係る消火器用容器は、耐候性、耐圧性及び耐衝撃性が優れるので、従来の鉄製の容器の代わりとして、消火器に用いることができる。
【符号の説明】
【0093】
1・・・本体部
1a・・・螺合部
1b・・・胴部
1c・・・底部
2・・・シュリンクラベル
3・・・底カバー材
3a・・・突起部
5・・・窪み部
10・・・消火器用容器
20,30・・・消火器
21・・・押出ヘッド
22・・・パリソン
23・・・金型
31・・・ガス用容器
32,32a・・・操作レバー
33,33a・・・消火剤
34,34a・・・ホーン
35,35a・・・サイホン管
36,36a・・・安全栓
37・・・キャップ
P・・・拘止部
S1・・・成形工程
S2・・・ラミネート工程
S3・・・嵌合工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火器に用いられる消火器用容器において、
非晶性樹脂からなる本体部と、
該本体部の外周を被覆するシュリンクラベルと、
を備える消火器用容器。
【請求項2】
前記シュリンクラベルが前記本体部に密着されている請求項1記載の消火器用容器。
【請求項3】
前記本体部の底部が半球状であり、
前記本体部を立たせるための底カバー材を更に備える請求項1又は2に記載の消火器用容器。
【請求項4】
前記シュリンクラベルの一部が前記本体部と前記底カバー材とに挟持されている請求項3記載の消火器用容器。
【請求項5】
前記非晶性樹脂が変性ポリフェニレンエーテルであり、前記本体部がブロー成形して得られるものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の消火器用容器。
【請求項6】
消火器用容器の製造方法であって、
非晶性樹脂を用いダイレクトブロー成形法により本体部を形成する成形工程と、
本体部を円筒状のシュリンクラベル内に挿入し、加熱することでシュリンクラベルを収縮させて本体部に密着させる被覆工程と、
本体部の下部に底カバー材を嵌合させる嵌合工程と、
を備える消火器用容器の製造方法。
【請求項7】
消火剤が収容された請求項1〜5のいずれか一項に記載の消火器用容器と、
該消火器用容器内に設けられ、高圧ガスが充填したガス用容器と、
該消火器用容器に取り付けられた操作レバーと、
前記消火器用容器の内部に連通するサイホン管と、
該サイホン管を介して前記消火剤を噴射するホーンと、
を備え、
前記操作レバーを操作することにより、前記高圧ガスが前記消火器用容器内を加圧し、前記消火剤が前記ホーンから噴射する消火器。
【請求項8】
前記消火剤が粉末である請求項7記載の消火器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−274008(P2010−274008A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131635(P2009−131635)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】