説明

消火設備

【課題】 普通火災、油火災の両方に対応した消火設備を得ることを目的とする。
【構成】 消火用水と水成膜泡消火薬剤とを混合して泡水溶液を生成する混合器6を備えた消火設備において、混合器6の二次側に配管を介して常時閉の開閉制御弁30を接続し、その開閉制御弁の二次側に開放型消火ヘッド32を接続した。
開放型消火ヘッド32が設けられた防護区域には、火災感知器34が配設され、火災感知器が火災信号を出力すると、受信機36が開閉制御弁に開弁信号を出力する。そうすると、開閉制御弁の一次側の泡水溶液が、開放型消火ヘッドからほぼ泡水溶液の状態のまま泡立てないで防護区域に放出される。開放型消火ヘッドのデフレクタ14は、平らなものが使用されて、泡水溶液が泡立つのを抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災は大まかにA火災(普通火災)、B火災(油火災)及びC火災(電気火災)の3つに分類されている。A火災は、木材、紙、布等の固体可燃物による火災、B火災は、ガソリン、石油類や油脂類による火災、C火災は、変電所、発電所、その他の電気機器が多く、感電の危険を伴う施設で発生する火災である。また消火設備は一般に、スプリンクラ消火設備、泡消火設備、粉末消火設備及びガス消火設備に分類される。
【0003】
この泡消火設備(例えば、特許文献1)は、主にB火災の抑制と消火を主眼においた設備であり、A火災に対しては、通常のスプリンクラ消火設備と比較すると、冷却、延焼防止において性能が劣るものと考えられる。
【特許文献1】実開平6−83048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで駐車場には、通常、ガソリン等による油火災に備えて泡消火設備が設けられている。しかし、駐車場における火災事例を調査すると、A火災に相当する可燃物の火災が意外と多く、約半分を占めている。また火災はA、B、C火災がそれぞれ単独で発生するのは稀で、例えば塗料店などで火災が発生すると、塗料等によるB火災と住居(木材建物)等によるA火災とが一緒に発生する場合が多い。そこで本発明は、A火災、B火災の両方に対応した消火設備を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以上の課題を解決するためになされたもので、給水源及び水成膜泡消火薬剤源に接続され、該給水源から供給される消火用水と該水成膜泡消火薬剤源から供給される水成膜泡消火薬剤とを混合して泡水溶液を生成する混合器を備えた消火設備において、前記混合器の二次側に配管を介して接続される常時閉の開閉制御弁と、該開閉制御弁の二次側に接続された開放型消火ヘッドと、該開放型消火ヘッドが設けられた防護区域に配設された火災感知器と、該火災感知器から火災信号を受信すると、前記開閉制御弁に開弁信号を出力する受信機とを備え、前記火災感知器が火災を感知して火災信号を出力すると、前記開閉制御弁の一次側の泡水溶液を、前記開放型消火ヘッドからほぼ泡水溶液の状態のまま泡立てないで前記防護区域に放出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
以上のような本発明は、消火薬剤として水成膜泡消火薬剤を使用し、開放型消火ヘッドから泡水溶液を泡状ではなく、ほぼ液体の状態で放出する。よって、普通火災に対しては燃焼物に泡水溶液を降りかけ冷却させることで火災を消火し、また油火災に対してはガソリン等の燃料の表面に水成膜を形成して、酸素を遮断することで火災を消火する。このため防護区域で普通火災及び油火災のいずれが発生しても、または両方が同時に発生して
も、確実にその火災を消火することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
参考例
この発明の実施例を図1により説明する。2は消火用水Wが貯えられた給水源としての水槽、4は水成膜泡消火薬剤Gを収容した消火薬剤の一例としての薬剤タンクである。6は混合器で、水槽2と薬剤タンク4に接続され、水槽2から供給される消火用水Wと薬剤タンク4から供給される水成膜泡消火薬剤Gとを混合して水成膜溶液としての泡水溶液を生成する。なお水槽2から消火用水Wが混合器6に供給される際、その消火用水Wの一部は配管5を通って薬剤タンク4にも供給される。薬剤タンク4では消火用水Wが供給されることによって、混合器6に水成膜泡消火薬剤Gを供給することになる。
【0008】
この水成膜泡消火薬剤Gは、フッ素系界面活性剤を主成分とし、起泡安定剤、水溶性高分子、凍結抑止剤等からなる水溶性液体用の泡消火薬剤である。一般的には、泡と水成膜の両者の空気遮断作用により消火を行う。しかし本発明では、消火ヘッドから泡水溶液をほとんど泡立っていない状態で噴霧し、可燃物や燃料の表面に薄膜、所謂水成膜を形成して被覆し、窒息消火させるものである。
【0009】
8は混合器6の二次側に配管を介して接続された閉鎖型消火ヘッドで、例えば駐車場や塗装工場などの普通火災(A火災)と油火災(B火災)の両方の火災発生の可能性がある防護区域に設けられる。勿論、消火ヘッド8をA火災やB火災が単独で発生する防護区域に設けても構わない。
【0010】
この閉鎖型消火ヘッド8を図2を用いて説明する。閉鎖型消火ヘッド8は、ヘッド本体10と、放出口11を閉鎖する弁体12と、弁体12を放出口11に押し付ける感熱部材の一例としてのグラスバルブ13と、放出口11から放出される泡水溶液をほぼ水溶液の状態のまま防護区域に分散するデフレクタ14とを備えている。デフレクタ14は図示のように、周縁部に爪を有しない平らなものが使用される。これは泡水溶液とデフレクタ14とのぶつかりを減らすことで、泡水溶液が泡立つのを抑えるためである。
【0011】
ところで泡消火設備で従来、使用される泡ヘッドは、デフレクタを金網によって覆うことで、放出口から放出される泡水溶液の発泡倍率を高めている。この発泡倍率は低膨張の場合で数倍以上で、高膨張の場合は数百倍に達するようにしてある。これに対して本発明の閉鎖型消火ヘッド8は、金網を除去し、デフレクタ14を外部に露出させた構造にしている。これにより、放出口11から放水された泡水溶液(混合液)はほとんど発泡することなく、全周方向に拡散放出され、拡散時に泡水溶液が泡立つのを抑えることが可能となる。
【0012】
20は防護区画毎に設けられた流水検知装置で、閉鎖型消火ヘッド8と混合器6の間に設けられる。流水検知装置20の二次側配管内は泡水溶液又は水が満たされており、閉鎖型消火ヘッド8が開放して二次側配管内の圧力が低下すると、流水検知装置20は消火制御盤22に圧力低下に基づく流水検知信号を出力する。
【0013】
なお図1において、24はポンプ、26はポンプ24から圧送される消火用水Wの水圧を調整する圧力調整弁でそれぞれ消火制御盤22と信号線を介して接続される。また図示はしないが、ポンプ24と混合器6の間に、二次側配管内を所定の圧力に加圧するための圧縮空気が貯留された圧力空気槽を接続して、この圧力空気槽内の圧縮空気が所定値よりも低下した時に、ポンプ24を起動させるようにしてもよい。
【0014】
次にこの実施形態の作動について説明する。防護区域で例えば、車両等の燃料が原因となるB火災が発生すると、その熱によって閉鎖型消火ヘッド8のグラスバルブ13内のアルコールが膨張し、その結果、グラスバルブ13は破裂する。これにより弁体12が落下し放出口11が開放され、流水検知装置20の二次側配管内に溜まっていた泡水溶液が放出口11から放出される。そして流水検知装置20は消火制御盤22に流水検知信号を出力し、それにより消火制御盤22からポンプ24にポンプ起動信号が送信され、ポンプ24が起動される。
【0015】
このポンプ24の起動に伴い、圧力調整弁26により圧力を調整されながら、水槽2の消火用水Wが混合器6及び薬剤タンク4に供給される。混合器6は水槽2から供給された消火用水Wと薬剤タンク4から供給された水成膜泡消火薬剤Gとを混合して、所定濃度、例えば1.0%〜2.5%の泡水溶液を生成する。この泡水溶液は流水検知装置20及び二次側配管を通って、閉鎖型消火ヘッド8に供給され、放出口11からデフレクタ14に向かって放出される。
【0016】
この時、閉鎖型消火ヘッド8には、金網がなくデフレクタ14が外部に露出した状態で取り付けられており、また泡水溶液自体も低発泡性であるため、しかも泡水溶液の濃度を通常(普通は3.0%)よりも薄くしているので、泡水溶液はほとんど泡立つことなく、ほぼ液体の状態で直接、消火ヘッド8から放出される。
【0017】
つまりデフレクタ14によって泡水溶液を小さな水滴状にして飛散させるため、速度エネルギーが減少せず、よって泡状で放出される場合に比べて大幅にその飛距離を伸ばすことができるので消火範囲を拡大することが可能となり、また炎に対して高い貫通力を有する。
【0018】
また泡水溶液は火炎の中に直接飛び込み、炎の気流に逆らって燃料の表面に達して、その燃料の表面に水成膜を形成する。この水成膜は拡散されて燃料全体を覆い窒息消火させる。この水成膜の広がり方は非常に迅速で、燃料表面の隅々にまで及ぶので、効果的な消火を行うことができる。
【0019】
次に防護区域にある例えばダンボールなどが燃えてA火災が発生した場合について説明する。上述したように、閉鎖型消火ヘッド8からは泡水溶液は泡ではなく、ほぼ液体の状態で放出される。このため燃焼物に泡水溶液が降りかかると、燃焼物は泡水溶液によって冷却されるという所謂冷却効果によって消火される。このように本発明では、泡水溶液を直接ほぼ液体のまま放出することで、A火災に対して、通常のスプリンクラ消火設備における消火と同様な消火効果を得ることが可能となる。
【0020】
なお本参考例においては、消火ヘッドとして閉鎖型の消火ヘッドを用いた場合により説明したが、開放型の消火ヘッドを使用しても同様な効果を得ることができる。
【0021】
実施形態1
消火ヘッドとして開放型の消火ヘッドを用いた場合の一実施形態を図3により説明する。なお図3において、流水検知装置20の一次側の構成は図1と同じなので、薬剤タンク4と混合器6のみを図示し、他を省略している。
【0022】
図3において、30は防護区域毎に流水検知装置20の二次側に設けられた常時閉の開閉制御弁で、後述の受信機からの信号により開弁される。32は開閉制御弁30の二次側に接続された開放型の消火ヘッドで、その構成は例えば図2において、弁体12とグラスバルブ13とを取り除いたものである。
【0023】
34は開放型消火ヘッド32が設けられた防護区域毎に1又は複数個配設された火災感知器、36は火災感知器34が接続され、火災感知器34から火災と判断される信号を受信すると、対応する防護区域の開閉制御弁30に開弁信号を出力する受信機である。
【0024】
火災感知器34が火災を感知して火災信号を出力すると、受信機36は対応する防護区域の開閉制御弁30に開弁信号を出力し開弁させる。これにより開閉制御弁30の一次側の泡水溶液は二次側に流出して開放型ヘッド32からデフレクタ14によって、上記と同様に飛散放出される。
【0025】
同時に流水検知装置20から流水信号が出力されてポンプ24が起動される。ポンプ起動後の動作説明は第1の実施形態と同じなので、説明を省略する。なお、火災感知器34と開閉制御弁30の代わりに、感熱バルブを用いるようにしてもよい。
【0026】
以上のような本発明は、消火薬剤として水成膜泡消火薬剤を使用し、閉鎖型消火ヘッドから泡水溶液を泡状ではなく、ほぼ液体の状態で放出する。よって、普通火災に対しては燃焼物に泡水溶液を降りかけ冷却させることで火災を消火し、また油火災に対してはガソリン等の燃料の表面に水成膜を形成して、酸素を遮断することで火災を消火する。このため防護区域で普通火災及び油火災のいずれが発生しても、または両方が同時に発生しても、確実にその火災を消火することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の消火設備のシステム図である。
【図2】閉鎖型噴霧ヘッドの断面図である。
【図3】開放型ヘッドを使用した場合の本発明の消火設備のシステム図である。
【符号の説明】
【0028】
2 水槽、 4 薬剤タンク、 5 配管、 6 混合器、8 閉鎖型消火ヘッド、
10 ヘッド本体、 11放出口、12 弁体、 13 感熱部材、 14 デフレクタ、
20 流水検知機能付開放弁、 22 消火制御盤、24 ポンプ、 26 圧力調整弁、
30 開閉制御弁、32 開放型消火ヘッド、 34 火災感知器、 36 受信機、tt

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源及び水成膜泡消火薬剤源に接続され、該給水源から供給される消火用水と該水成膜泡消火薬剤源から供給される水成膜泡消火薬剤とを混合して泡水溶液を生成する混合器を備えた消火設備において、
前記混合器の二次側に配管を介して接続される常時閉の開閉制御弁と、
該開閉制御弁の二次側に接続された開放型消火ヘッドと、
該開放型消火ヘッドが設けられた防護区域に配設された火災感知器と、
該火災感知器から火災信号を受信すると、前記開閉制御弁に開弁信号を出力する受信機とを備え、
前記火災感知器が火災を感知して火災信号を出力すると、前記開閉制御弁の一次側の泡水溶液を、前記開放型消火ヘッドからほぼ泡水溶液の状態のまま泡立てないで前記防護区域に放出することを特徴とする消火設備。
【請求項2】
前記開放型消火ヘッドのデフレクタは、平らなものが使用されて、放出口から放水される前記泡水溶液とのぶつかりを減らして前記泡水溶液が泡立つのを抑えることを特徴とする請求項1記載の消火設備。
【請求項3】
前記給水源の消火用水を圧送するポンプと、該ポンプの起動に伴って、前記消火用水の水圧を調整する圧力調整弁とを設け、圧力を調整しながら前記給水源の消火用水を前記混合器及び水成膜泡消火薬剤源に供給することを特徴とする請求項1又は2記載の消火設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate