説明

消火設備

【課題】可搬式ラックに火災が発生しても初期段階で迅速に消火することができるようにした消火設備を提供する。
【解決手段】ゴム製品やプラスチック製品を積載するための可搬式ラック1に、パッケージタイプの消火設備20を取付けたものであり、この消火設備20は、消火薬剤貯蔵容器21、感熱開放弁22、消火配管23及び噴射ノズル24から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備に関し、特にゴム製品やプラスチック製品を積載する可搬式ラックの消火に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固定式のラック及びラックに沿って走行可能なスタッカクレーンを備えた自動倉庫においては、スタッカクレーンの昇降台に消火装置を搭載し、昇降台に搭載された消火装置を遠隔操作するというものがあった(例えば特許文献1参照)。一方、可搬式のラックを利用した倉庫、とりわけタイヤやプラスチック製品を貯蔵するラック倉庫には、製品が単にラックの上に並べられ、ラックが必要に応じて移動させられる。このラック自体に何らかの消火対策を講じてないことが実情である。
【特許文献1】特開平9−150911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
固定式の自動倉庫におけるスタッカクレーンの昇降台に消火装置を搭載して、ラックに火災があった場合にはその消火装置を起動して消火することができるが、可搬式ラックの倉庫の場合には、ラック自体が常に移動され、すなわち倉庫のレイアウトが常に変更される。そのため、スタッカクレーンを使用することができない。しかし、可搬式ラック自体に何らか消火対策を取らないと、万が一ラックに貯蔵されているタイヤやプラスチックなど可燃物の火災が発生すれば、火源をすぐに特定できず、火災がたちまち大きく広がり、やがて大惨事に繋がる恐れがある。特にタイヤの場合には、その形状がドーナツ状になっているため、内部空洞があり内側面は着火、延焼しやすい、という問題点があった。
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、可搬式ラックに火災が発生しても初期段階で迅速に消火することができるようにした消火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る消火設備は、ゴム製品やプラスチック製品を積載するための可搬式ラックに、パッケージタイプの消火設備を取付けたものである。
また、本発明に係る消火設備において、前記パッケージタイプの消火設備は、前記可搬式ラックに取付けられた消火薬剤貯蔵容器及び噴射ノズルを含むものである。
また、本発明に係る消火設備は、前記可搬式ラックの枠を構成するパイプを前記消火薬剤貯蔵容器の消火薬剤の導管に利用したものである。
また、本発明に係る消火設備は、前記噴射ノズルを前記可搬式ラックの側面に取付け、その噴射方向が前記可搬式ラックの内部側になるように配置したものである。
また、本発明に係る消火設備は、前記消火薬剤貯蔵容器の吐出部に感熱開放弁を設け、前記消火薬剤貯蔵容器を該感熱開放弁を介して前記噴射ノズルと連通させるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、可搬式ラックにパッケージタイプの消火設備を取付けることで、ラックがどこに移動されても、消火設備が付随するので、ラック火災が発生してもすぐ消火ができ、初期火災の消火に効果が大である。
また、可搬式ラックの枠(フレーム)を構成するパイプを消火装置の消火薬剤の導管に利用したことにより、消火用の配管をわざわざ配設しなくてもよい。この分、設備のコストが低減できる。
また、噴射ノズルをラック側面に取付け、噴射ノズルをその噴射方向が可搬式ラックの内部側になるように配置したので、例えば可搬式ラックに積載された燃焼危険性が高いタイヤの中央空洞部分を狙い消火薬剤を噴射することができ、消火効率がよい。
また、感熱開放弁は、可搬式ラックに発生する異常温度を検知したときに開放し、消火薬剤を放出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施形態1.
図1及び図2は本発明の実施形態1に係る可搬式ラック用のパッケージタイプの消火設備の構成を示す正面図及び側面図である。同図において、可搬式ラック1は例えば三段からなり、各段にはタイヤ2が縦方向に横に並べて置かれ、タイヤ2同士の間に殆ど隙間がなく密接した状態で置かれる。可搬式ラック1の下部側には一定のスペース11があり、それは例えばフォークリフト(図示せず)を使って可搬式ラック1を移動するためのフォーク挿入用の空間である。また、可搬式ラック1の上部側にもスペース12が設けられていて、消火薬剤貯蔵容器21がこのスペース12に搭載されている。
【0008】
本実施形態のパッケージタイプの消火設備20は、上記の消火薬剤貯蔵容器21と、可搬式ラック1周囲の温度を感知し、所定温度を超えると消火薬剤貯蔵容器21を開放する感熱開放弁22と、消火配管23と、消火薬剤を噴射(放射)する噴射ノズル(放射ノズル)24とから構成されている。火災が発生すると、感熱開放弁22が開放されて消火薬剤貯蔵容器21内の消火薬剤が消火配管23を介して噴射ノズル24からタイヤ2に向けて噴射されて消火される。消火配管23は、可搬式ラック1の枠(フレーム)を形成しているパイプを利用しており、そのため、消火配管23を別途配設する必要がなく、消火設備20としてコストが低減できる。また、噴射ノズル24は各段の側面の中央部に、噴射方向を可搬式ラック1の内側に向けさせるように設置されている。発明者の実験によると、タイヤ2がドーナツのような形状を有し、また図示しないがそのドーナツの内側部分の材料が薄いので、非常に燃えやすいということが解明されている。また、タイヤ2同士が密接しており内側部分に空洞が形成されているため、タイヤ2の内側部分に一旦着火すると、その空洞効果でタイヤ2同士の間に延焼が非常に速いことも、発明者の実験により解明されている。したがって、本実施形態では噴射ノズル24を各段の側面の中央部に噴射方向が可搬式ラック1の内側に向けるように設置しており、このようにすることにより消火薬剤をタイヤ2の内側部分に噴射することができ、消火効率を向上させることができる。
【0009】
以上のように本実施形態においては、タイヤやプラスチック製品を貯蔵するための可搬式ラック1にパッケージタイプの消火設備20を取り付けたことにより、可搬式ラック1がどこに移動されても、消火設備20がそれに付随するので、可搬式ラック1に火災が発生してもすぐに消火ができ、初期火災の消火に効果が大である。また、噴射ノズル24を可搬式ラック1の側面の中央部に取付けたので、防護対象物の中央部を狙って消火薬剤を噴射することができ、消火効率がよい。また、噴射ノズル24をその噴射方向が可搬式ラック1の内部側になるように配置したので、タイヤ2の中央空洞部分を狙って消火薬剤を噴射することができ、消火効率がよい。更に、感熱開放弁22は、可搬式ラック1に発生する異常温度を検知したときに開放されて、消火薬剤貯蔵容器21内の消火薬剤を放出することができるので、使い勝手のよいものとなっている。
【0010】
実施形態2.
なお、上記の実施形態1においては消火薬剤貯蔵容器21を可搬式ラック1の上部に搭載する例について説明したが、本発明はそれに限定されず、可搬式ラック1の他の位置に搭載してもよい。また、消火薬剤は粉末、泡、不可燃性ガス、水、強化液と考えられる。
また、上記の実施形態1においては、噴射ノズル24を各段の側面の中央部に配置する例について説明したが、噴射ノズル24を各段の他の位置、例えば可搬式ラック1のスペース12の下部に設置してもよい。
また、保護対象としてタイヤの例について説明したが、本発明は他のゴム製品においても同様に適用することができ、更に、プラスチック製品にも同様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る可搬式ラック用のパッケージタイプの消火設備の構成を示す正面図である。
【図2】上記実施形態1に係る可搬式ラック用のパッケージタイプの消火設備の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0012】
1 可搬式ラック、2 タイヤ、11,12 スペース、20 パッケージタイプの消火設備、21 消火薬剤貯蔵容器 、22 感熱開放弁、23 消火配管、24 噴射ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム製品やプラスチック製品を積載するための可搬式ラックに、パッケージタイプの消火設備を取付けたことを特徴とする消火設備。
【請求項2】
前記パッケージタイプの消火設備は、前記可搬式ラックに取付けられた消火薬剤貯蔵容器及び噴射ノズルを含むものであることを特徴とする消火設備。
【請求項3】
前記可搬式ラックの枠を構成するパイプを前記消火薬剤貯蔵容器の消火薬剤の導管に利用したことを特徴とする請求項2記載の消火設備。
【請求項4】
前記噴射ノズルを前記可搬式ラックの側面に取付け、その噴射方向が前記可搬式ラックの内部側になるように配置したことを特徴とする請求項2又は3記載の消火設備。
【請求項5】
前記消火薬剤貯蔵容器の吐出部に感熱開放弁を設け、前記消火薬剤貯蔵容器を該感熱開放弁を介して前記噴射ノズルと連通させることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の消火設備。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−252851(P2007−252851A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−84774(P2006−84774)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】