説明

消火設備

【課題】末端試験装置での滞留水を発生を防止すると共に、固定設備となる部分を減らして小型化とコスト低減を図る。
【解決手段】閉鎖型のスプリンクラーヘッド18を装着した上水道を供給する配管10aの末端に末端試験装置20を設ける。末端試験装置20は、第1のT型継手22、末端試験弁24、ワンタッチ継手26からなる固定ユニット20aと、ワンタッチ接続部材30、第2のT型継手28、圧力計32、オリフィス34及びホース継手36からなる可搬ユニット20bに分離され、末端試験の場合は、固定ユニット20aに可搬ユニット20bを接続して放水試験を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば上水道を供給する配管に、火災による熱気流を受けて作動する閉鎖型のスプリンクラーヘッドを装着した消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅、共同住宅、グループホームなどでは、上水道と同じ配管に閉鎖型のスプリンクラーヘッドを接続し、火災時に上水道を使用して消火を行う消火設備が知られている。
【0003】
ここで、一般住宅のスプリンクラーヘッドへの水圧は例えば0.05MPaが要求されており、上水道からの0.05MPaを超える給水圧力が確保できることで、火災時に充分な消火性能を得ることができる。
【0004】
図13は従来の上水道直結型の消火設備であり、例えば一般住宅に引き込まれた上水道配管10は一般設備配管10aと消火設備配管10bに分岐される。一般設備配管10aには、手洗12や浴槽15に対する蛇口16が接続される。
【0005】
消火設備配管10bには例えば部屋毎に分けて閉鎖型のスプリンクラーヘッド18が接続され、また配管末端側でトイレ14の給水タンクに接続される。閉鎖型のスプリンクラーヘッド18は感熱機構で保持された弁部材によりヘッド開口を閉鎖しており、火災による熱気流を受けて感熱機能が所定温度に達すると熱分解して弁部材を離脱させることでヘッド開口を開き、上水道水を散水させる。
【0006】
また消火設備配管10bの末端には末端試験装置100が設けられ、スプリンクラーヘッド18から実際に放水させることなく放水試験ができるようにしている。末端試験装置100は、仕切弁102に続いてT型継手104を接続し、T型継手104の分岐ポート側に仕切弁105を介して圧力計106を接続している。またT型継手104に続いては末端試験弁108が接続され、その2次側にはスプリンクラーヘッド18が1台作動した場合に相当する放水流量を流すオリフィス110が接続され、末端は排水される。なお、末端試験装置100は屋外に設けられ、屋外に放水することで試験を行うことができる。
【0007】
図14は実際に設置されている末端試験装置100を取り出して示しており、例えば上下方向に、仕切弁102、T型継手104、配管112、末端試験弁108及びオリフィス110を接続し、T型継手104の分岐ポートに配管114を介して仕切弁105を介して圧力計106を接続している。
【0008】
末端試験装置100による試験操作は、仕切弁102を開いて水道水を導入し、続いて末端試験弁108を開いてオリフィス110にスプリンクラーヘッド18の1台の作動に相当する試験流量を流し、この状態で仕切弁105を開いてオリフィス110の1次側圧力を圧力計106に導入して放水圧力を読取り、例えば0.05MPa以上の放水圧力が得られていれば適正と判断する。
【0009】
試験が終了したら仕切弁102を閉じ、その2次側配管の水道水をトイレ14の給水タンクに流して水抜きし、ある程度時間が経過して水抜きが完了したら末端試験弁108を閉じるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−24360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の消火設備にあっては、消火設備配管10bの末端に設けた末端試験装置100の部分で滞留水が発生して長期間に亘り死に水となるため、配管や機器の耐久性に悪影響を及ぼし、衛生面でも問題がある。
【0012】
例えば図13に示した末端試験装置100の場合、通常時は仕切弁102を閉鎖しており、仕切弁102の1次側となる配管の立ち上がり部分で滞留水が発生する問題がある。
【0013】
また仕切弁102の2次側については、試験後に排水することで水抜きをしているが、末端試験装置100による試験を終了して仕切弁102を閉じて2次側の水抜きをしている段階でT型継手104側から圧力計106側へ逆流する可能性があり、内部が見えにないことから水抜きができていない状態で末端試験弁110を閉じてしまうと、仕切弁102と末端試験弁108の間に滞留水が発生する問題がある。
【0014】
また、仕切弁102は上水道の配管に接続しても良いように日本水道協会の認証を取得した弁を選択して用いることで腐食による悪影響を防止しているが、仕切弁102よりも二次側の配管や各装置は認証を取得したものを使用しておらず、消火設備配管10b側へ逆流する場合も考えられ衛生面の問題があった。特に末端試験装置100は消火設備に使われる装置であることから、上水道における認証を取得したものが存在しない部品もあり、単純に上水道の配管に接続しては衛生面の問題が考えられる。
【0015】
更に、従来の末端試験装置100は、仕切弁102、T型継手104、配管112、末端試験弁108、オリフィス110及び圧力計106の全てを固定設備として設置しており、装置が大型化して設置スペースが大きくなり、コストも嵩むという問題がある。また寒冷地に従来の末端試験装置100を設置する場合は、装置全体に凍結防止の保温材を巻く必要があり更に大型化する問題がある。
【0016】
本発明は、末端試験装置での滞留水の発生を防止すると共に、固定設備となる部分を減らして小型化とコスト低減を図るようした消火設備を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、配管に火災による熱気流を受けて作動する閉鎖型のスプリンクラーヘッドを装着した消火設備に於いて、
前記スプリンクラーヘッドよりも末端側となる前記配管の位置に末端試験装置を設け、
末端試験装置は、
配管に挿入接続された滞流防止構造を備えた第1の多方継手と、
第1の多方継手の分岐ポートに接続された末端試験弁と、
末端試験弁の2次側に相手部材を着脱自在に接続する第1接続部材と、
第1接続部材に対し着脱自在な第2接続部材と、
前記第2接続部材に接続した第2の多方継手と、
第2の多方継手の第1の接続部に接続された圧力計と、
第2の多方継手に第2の接続部に接続されたオリフィス及び排水路接続部材と、
を備え、末端試験弁を開操作して前記オリフィスを介して排水路接続部材へ試験放水した場合の放水圧力を圧力計に表示させて試験する構造としたことを特徴とする。
【0018】
ここで、末端試験装置の第1の多方継手、末端試験弁及び第1接続部材は配管側に接続固定される固定ユニットを構成し、第2接続部材、第2の多方継手、圧力計、オリフィス及び排水路接続部材は、試験を行う場合に固定ユニットに接続して使用される可搬ユニットを構成する。
【0019】
固定ユニットの部分にカバー部材を装着する。
【0020】
スプリンクラーヘッドは、放水圧力0.05MPaの場合に毎分30リットルの放水流量となる第1スプリンクラーヘッド、又は、放水圧力0.02PMaの場合に毎分30リットルの放水流量となる第2スプリンクラーヘッドであり、
オリフィスとして、配管に第1スプリンクラーヘッドを接続している場合は、末端試験弁を開放した際に放水圧力0.05MPaに対応した圧力損失を発生する第1オリフィスを設け、配管に前記第2スプリンクラーヘッドを接続している場合は、末端試験弁を開放した際に放水圧力0.02MPaに対応した圧力損失を発生する第2オリフィスを設ける。
【0021】
ホース接続継手は第1オリフィス又は第2オリフィスを交換自在に設ける。
【0022】
ホース接続継手は第1オリフィス又は第2オリフィスを切替え自在に設ける。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、トイレの給水タンクなどの水道使用機器に対する配管に設けたスプリンクラーヘッドの末端となる配管位置に、第1の三方継手、末端試験弁及び接続継手部を固定ユニットとして接続固定し、接続継手と接続する接続部材、第2の三方継手、圧力計、オリフィス内蔵の排水継手により可搬ユニットを構成し、固定ユニットに対し末端試験の場合に可搬ユニットを接続することで末端試験装置を構築して放水試験を行うことができ、消火設備には末端試験装置の一部を構成する固定ユニットを接続固定するだけでよいことから、末端試験のため固定側が小型化されて設置スペースも低減できる。
【0024】
また固定ユニットは一般住宅の消火設備系統毎に設置する必要があるが、可搬ユニットは複数の消火設備に対する共通ユニットとして点検要員が維持管理して末端試験の際に持ち込むこととなり、設備コストの低減を図ることができる。
【0025】
またスプリンクラー及び末端試験装置の固定ユニットを設けている配管はトイレタンク等の水道使用機器に接続されているため、滞留水が発生せず、配管や機器の耐久性に悪影響を及ぼすことがなく、衛生面の問題も起きない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による消火設備の実施形態を示した説明図
【図2】図1に設ける末端試験装置の固定ユニットから可搬ユニットを取り外した状態を示した説明図
【図3】本発明による末端試験装置の実施形態を固定ユニットから可搬ユニットを分離した状態で示した説明図
【図4】図3の固定ユニットに対するカバー装着状態を示した説明図
【図5】図3の固定ユニットに対し可搬ユニットを接続して末端試験装置を構成した本発明の実施形態を示した説明図
【図6】弁閉で一部流路を開いている本発明の消火設備で使用する遮断装置の他の実施形態を示した断面図
【図7】本発明で使用する第1のT型継手の実施形態を示した説明図
【図8】本発明で使用するワンタッチ継手の実施形態を示した説明図
【図9】本発明で使用するワンタッチ接続部材の実施形態を示した説明図
【図10】本発明で使用するホース継手と内蔵したオリフィスの実施形態を示した説明図
【図11】オリフィスの異なる2つの可搬ユニットを交換接続可能とする本発明の他の実施形態を示した説明図
【図12】異なるオリフィスの切替え使用を可能とする本発明の他の実施形態を示した説明図
【図13】従来の上水道の配管に直結する従来の消火装置を示した説明図
【図14】従来の消火設備に設けた末端試験装置の配管部分を取り出して示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明による消火設備の実施形態を示した説明図である。図1において、例えば一般住宅に引き込まれた上水道配管10は一般設備配管10aと消火設備配管10bに分岐される。一般設備配管10aには、手洗12や浴槽15に対する蛇口16が接続されている。
【0028】
消火設備配管10bには滞留防止構造を備えたT型継手15を使用して例えば部屋毎に分けて閉鎖型のスプリンクラーヘッド18が接続され、配管10bの末端はトイレ14の給水タンクに接続されている。
【0029】
閉鎖型のスプリンクラーヘッド18は感熱機構で保持された弁部材によりヘッド開口を閉鎖しており、火災による熱気流を受けて感熱機能が所定温度に達すると熱分解して弁部材を離脱させることでヘッド開口を開き、上水道水を散水させる。
【0030】
このような上水道を使用した消火設備につき本発明の実施形態にあっては、消火設備配管10bに接続しているスプリンクラーヘッド18の末端となる配管位置に末端試験装置20を設けている。末端試験装置20は消火設備配管10b側に固定接続される固定ユニット20aと、固定ユニット20aに対し着脱自在な可搬ユニット10bで構成される。
【0031】
固定ユニット20aは、消火設備配管10に挿入接続された滞流防止構造を備えた第1のT型継手22、第1のT型継手22の分岐ポートに接続された末端試験弁24、末端試験弁24の2次側に相手部材をワンタッチ操作により着脱自在に接続するワンタッチ継手26で構成される。
【0032】
一方、可搬ユニット20bは、固定ユニット20aのワンタッチ継手26に対し着脱自在なワンタッチ接続部材30、ワンタッチ接続部材30を分岐ポートに接続した第2のT型継手28、第2の型継手28の出入口ポートの一方に接続された圧力計32、第2のT型継手28の出入口ポートの他方に接続され、オリフィス34を内蔵したホース継手36で構成される。オリフィス34はスプリンクラーヘッド18が1台作動した場合に相当する流量を流す。本実施形態で使用する上水道直結型のスプリンクラーヘッド18としては例えば流量定数K43とK30の2種がある。流量定数K43とK30のスプリンクラーヘッドの放水流量30リットル/分におけるそれぞれの放水圧力は
K43 0.05MPa
K30 0.10MPa
となる。
【0033】
このため放水量30リットル/分を流した場合に、スプリンクラーヘッド18の流量定数に応じた放水圧力を発生する穴径のオリフィス34を準備して使用することになり、その詳細は後の説明で明らかにする。なお、末端試験装置20を構成する固定ユニット20a側の部材は環境面・衛生面を考慮して鉛レスの材料を使用する。特に常時充水状態の第1のT型継手22から末端試験弁24までは鉛レスの材料を使用する。
【0034】
図2は図1に示した末端試験装置の固定ユニットから可搬ユニットを分離した状態を示している。通常時に、消火設備配管10bには末端試験装置10の固定ユニット20a側の機器である第1のT型継手22、末端試験弁24及びワンタッチ継手26が固定接続されており、可搬ユニット20bは取り外されており、点検要員側で保管管理されている。
【0035】
可搬ユニット20bは特定の消火設備に設けた固定ユニット20a専用のユニットではなく、同じ固定ユニット20aを固定設置している別系統あるいは別建物の消火設備に対する共通ユニットとして使用することができる。
【0036】
通常時は固定ユニット20a側の末端試験弁24は閉じており、トイレ14の使用に対し、給水タンクに水道水を供給しており、末端試験装置20を設けていても後述する第1のT型継手22内の構造により末端試験弁24の一次側での滞留水は発生しない。
【0037】
放水試験を行う場合には、分離している可搬ユニット20bを図1に示すように固定ユニット20aに接続する。即ち、固定ユニット20aのワンタッチ継手26に対し可搬ユニット20bのワンタッチ接続部材30を挿入して接続固定する。また可搬ユニット20bのホース継手36にホースを接続してベランダなどの排水管に引き出して排水可能とする。
【0038】
この状態で末端試験弁24を開くと水道水が可搬ユニット20bのオリフィス34を通ってホース継手36に接続されたホースに流れ、オリフィス34を通過する際の流路抵抗により1次側に流量に応じた放水圧力が発生し、圧力計32に表示される。
【0039】
圧力計32の表示は、スプリンクラーヘッド18の流量定数K43の場合、0.05MPa以上あれば適正と判断でき、また流量定数K30の場合は0.10MPa以上あれば適正と判断できる。
【0040】
放水試験が終了したならば、末端試験弁24を閉じて放水を止め、ホース継手36からホースを外して片付け、更に、固定ユニット20aから可搬ユニット20bを取り外す。
【0041】
図3は本発明による末端試験装置の具体的な実施形態を固定ユニットから可搬ユニットを分離した状態で示した説明図である。図3において、末端試験装置20の固定ユニット20aは第1のT型継手22の分岐ポートにコック24aにより開閉する末端試験弁24をニップル23を介して接続し、その2次側にワンタッチ継手26を接続している。
【0042】
一方、可搬ユニット20bは第2のT型継手28の分岐ポートにワンタッチ接続部材30を接続して固定ユニット20a側のワンタッチ継手26に対し着脱自在としている。第2のT型継手28の入出力ポートの上側には圧力計32が接続され、下側にはオリフィス内蔵のホース継手46が接続され、放水試験の場合はホース46が接続される。
【0043】
図4は図3の固定ユニットに対するカバー装着状態を示した説明図であり、図4(A)は正面、図4(B)は平面を示している。図4において、本実施形態の末端試験装置20の固定ユニット20aは一般家庭の配管が位置する部屋などの壁面に露出して設置され、そのままでは家屋内の美観を損なうことから、第1のT型継手22の部分に本体カバー40を装着すると共に、分岐ポートに接続した末端試験弁24及びワンタッチ継手26の部分に分岐カバー42を装着している。
【0044】
本体カバー40及び分岐カバー42は合成樹脂製であり、部屋の内装に近い例えばベージュなどに着色している。本体カバー40は左側に開放し、右側の分岐ポート部分に開口穴を備え、上下にも開口した蒲鉾形状であり、分岐ポート側から継手本体に嵌め入れることで装着している。分岐カバー42は円筒体を縦割りして左右に分割可能としており、末端試験弁24のコック24aの根本部分に対応して分割通し穴を開口している。
【0045】
図5は図3の固定ユニット20aに対し可搬ユニット20bを接続して末端試験装置20を構成した状態を示しており、特別な工具を必要とせずに、ワンタッチ操作で着脱することができる。
【0046】
図6は図3の本体ユニットに設けた第1のT型継手の実施形態を示した説明図であり、図6(A)は一部断面とした正面、図6(B)は一部断面とした側面、図6(C)は分岐側から見た底面を示している。
【0047】
図6において、第1のT型継手20は本体48の一方に流入ポート50を形成すると共に反対側に流出ポート52を形成し、直交する方向に分岐ポート54を形成している。流入ポート50と流出ポート52の間の内部流路には分岐ポート54の手前位置まで延在して隔壁55が形成されており、隔壁55の流入ポート50と流出ポート52の相対する部分には連通穴56が開口し、滞留防止構造を構成している。
【0048】
第1のT型継手22の入流ポート50から流入した水道水は矢印Aに示すように、その一部が隔壁55の貫通穴56を通って流出ポート52に流れ、同時に入流ポート50から流入した水道水の一部は矢印Bに示すように、隔壁55に沿って分岐ポート54側を迂回するように流れて流出ポート52に向かい、分岐ポート54側の内部流路についても水道水が流れ、分岐ポート54側に水道水の滞留が起きないようにしている。
【0049】
図7は本発明で使用するワンタッチ継手の実施形態を示した説明図であり、図7(A)に半断面を、図7(B)に右側面を示している。図7において、ワンタッチ継手26の本体60は左側に流入ポート62を形成すると共に、右側にワンタッチ継手機構を組み込んでいる。
【0050】
ワンタッチ継手機構は、本体60の右開口の手前にリング状の小径部68を形成すると共にその奥に大径部70を形成し、ここに挿入口65を備えたスライダ64を左側に形成した複数のガイド開口にボール66を支持した状態で嵌め入れ、ボール66を小径部68に位置させている。スライダ64はテフロン(R)などの合成樹脂で作られている。
【0051】
ボール66の左側には外周をガイド開口に嵌め入れて軸方向に移動可能なリテーナ67が組み込まれ、リテーナ67は左側に組み込んだスプリング72によりボール66を右側に押付けている。スプリング72の左側の内部流路には2本のOリングなどを用いたシール74が組み込まれている。
【0052】
図8は本発明で使用するワンタッチ接続部材の実施形態を示した説明図である。図8において、ワンタッチ接続部材30は、本体76に内部流路86を貫通しており、左側の連結筒78の所定位置にボール嵌合溝80を形成し、右側にはナット部82とねじ部84を形成している。連結筒78は図7のワンタッチ継手26に設けたスライダ64の挿入口の穴径およびシール74を配置した内部流路の穴径に対応して嵌合及びシールできる径を有する。
【0053】
図9は図7のワンタッチ継手26に図8のワンタッチ接続部材30を装着した状態を示した説明図である。図7のワンタッチ継手26に図8のワンタッチ接続部材30を装着する場合、まずスライダ64を押し込み、ボール66を小径部66から大径部70の位置に移動させる。
【0054】
この状態でスライダ64の挿入口65にワンタッチ接続部材30の連結筒78を押し込むと、ボール66は大径部70に位置していることで内側に飛び出すことがなく、ワンタッチ接続部材30の連結筒78を嵌め入れることができる。連結筒78の先端がワンタッチ継手26の内部流路の段部に当接すると、ボール66は連結筒78に形成したボール嵌合溝80に位置しており、この状態でスライダ64の押し込みを解除すると、スプリング72によりリテーナ67を介してボール66は小径部68に押し込まれ、ホール66の一部がボール嵌合溝80内に入り、チャッキングにより抜け止め固定される。
【0055】
ワンタッチ接続部材30を外したい場合は図9の接続状態でスライダ64を左側に押し込むとボール66によるチャッキングが解除され、ワンタッチ接続部材30をワンタッチ継手26から抜き出すことができる。
【0056】
図10は本発明で使用するホース継手と内蔵したオリフィスの実施形態を示した説明図であり、図10(A)はホース継手の断面、図10(B)(C)はホース継手に内蔵する2種のオリフィスを取り出して示している。
【0057】
図10(A)において、ホース継手36は本体88の上部に流入路90を形成すると共にその外側にねじ部91を形成し、流入路90の底部にオリフィス34を内蔵している。本体88の下側には断面楔形の環状段付き溝を複数連設したホース接続部92が設けられ、内部に小径に絞り込んだ放水穴94を形成している。
【0058】
本実施形態で使用するオリフィスは、図10(B)に取り出して示すスプリンクラーヘッドの流量定数K43に対応したオリフィス穴96aをもつ第1オリフィス34aと、図10(C)に取り出して示すスプリンクラーヘッドの流量定数K30に対応したオリフィス穴96bをもつ第2オリフィス34bの2種類を準備し、放水試験を行う消火設備に使用されているスプリンクラーヘッドに適合したいずれか一方のオリフィスを選択して使用する。
【0059】
図11は図10(B)(C)に示したオリフィスの異なる2つの可搬ユニットを交換接続可能とする本発明の他の実施形態を示した説明図である。
【0060】
図11において、消火設備側に固定接続される固定ユニット20aは図2と同じであるが、可搬ユニットとして第1オリフィス34aを設けた第1可搬ユニット20b−1と、第2オリフィス34bを設けた第2可搬ユニット20b−2の2つを準備しており、放水試験を行おうとする消火設備のスプリンクラーヘッド18に適合した第1オリフィス34aを設けた第1可搬ユニット20b−1、または第2オリフィス34bを設けた第2可搬ユニット20b−2のいずれか一方を選択して固定ユニット20aに装着して放水試験を行う。
【0061】
勿論、第1可搬ユニット20b−1及び第2可搬ユニット20b−2は複数の消火設備に対し選択的に使用可能な共通ユニットであり、点検要員側に保管管理して放水試験の際に使用することになる。
【0062】
なお、第1オリフィス34aと第2オリフィス34bを選択して可搬ユニット20に交換接続可能にしてもよく、この構成にすれば可搬ユニットを一種類にすることができる。
【0063】
図12は異なるオリフィスの切替え使用を可能とする本発明の他の実施形態を示した説明図である。図12において、消火設備側に固定接続される固定ユニット20aは図2と同じであるが、可搬ユニット20bとして第2のT型継手28とホース継手36の間に三方切替弁98により第1オリフィス34aと第2オリフィス34bを切替可能に設けている。
【0064】
放水試験の際には対象とする消火設備のスプリンクラーヘッド18に適合するように器三方切替弁98の切替えにより第1オリフィス34aまたは第2オリフィス34bのいずれか一方を選択した後に固定ユニット20aに装着して放水試験を行う。
【0065】
このように第1オリフィス34aまたは第2オリフィス34bを切替選択可能としたことで、2種のスプリンクラーヘッドの設置に対応した放水試験を簡単且つ効率良く行うことができる。
【0066】
なお、上記の実施形態は、上水道配管10を一般設備配管10aと消火設備配管10bの2系統に分け、消火設備配管10bの末端を一般設備機器としてトイレの給水タンクに接続した場合を例にとっているが、同じ配管の途中に一般設備機器とスプリンクラーヘッドを接続した構成としても良く、この場合にも末端試験装置はスプリンクラーヘッドから見て末端側となる配管位置に設け、その末端側に適宜の一般設備機器を1又は複数接続する構成とすれば良い。
【0067】
なお、第1のT型継手22や第2のT型継手28はT型形状の継手に限定されることなく、3方継手等の多方向のポートを備える多方継手であってよい。多方継手は複数の分岐管で構成してもよい。また第2のT型継手28の各ポートに接続される圧力計32、ワンタッチ接続部材30及びホース継手36の接続位置は、図3の接続に限定されず、例えば圧力計32の接続するポートとワンタッチ接続部材30の接続するポートを交換しても良い。
【0068】
また、固定ユニット20aと可搬ユニット20bの接続は、各々に設けたワンタッチ継手、ワンタッチ接続部材によりスライダ64の1操作で着脱できる構成としているが、この構成に限らず、試験時に着脱できる一対の第1接続部材と第2接続部材で構成すれば良い。
【0069】
また、可搬ユニット20bのオリフィス34はホース継手36内に収納した構成にしているが、これに限らず、第2のT字継手28とホース継手36の間にネジ部で挿入接続される構成であっても良い。ホース接続部36は、ホースの内部に挿入される図5のような接続部に限らず、例えばワンタッチ継手を介して排水路に接続される排水路接続部材であってもよい。
【0070】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0071】
10:上水道配管
10a:一般設備配管
10b:消火設備配管
18:スプリンクラーヘッド
20:末端試験装置
20a:固定ユニット
20b:可搬ユニット
20b−1:第1可搬ユニット
20b−2:第2可搬ユニット
22:第1のT型継手
24:末端試験弁
26:ワンタッチ継手
28:第2のT型継手
30:ワンタッチ接続部材
32:圧力計
34:オリフィス
34a:第1オリフィス
34b:第2オリフィス
36:ホース継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に火災による熱気流を受けて作動する閉鎖型のスプリンクラーヘッドを装着した消火設備に於いて、
前記スプリンクラーヘッドよりも末端側となる前記配管の位置に末端試験装置を設け、
前記末端試験装置は、
前記配管に挿入接続された滞流防止構造を備えた第1の多方継手と、
前記第1の多方継手の分岐ポートに接続された末端試験弁と、
前記末端試験弁の2次側に相手部材を着脱自在に接続する第1接続部材と、
前記第1接続部材に対し着脱自在な第2接続部材と、
前記第2接続部材に接続した第2の多方継手と、
前記第2の多方継手の第1の接続部に接続された圧力計と、
前記第2の多方継手に第2の接続部に接続されたオリフィス及び排水路接続部材と、
を備え、前記末端試験弁を開操作して前記オリフィスを介して排水路接続部材へ試験放水した場合の放水圧力を前記圧力計に表示させて試験する構造としたことを特徴とする消火設備。
【請求項2】
請求項1記載の消火設備に於いて、
前記末端試験装置の第1の多方継手、末端試験弁及び第1接続部材は前記配管側に接続固定される固定ユニットを構成し、
前記末端試験装置の第2接続部材、第2の多方継手、圧力計、オリフィス及び排水路接続部材は、試験を行う場合に前記固定ユニットに接続して使用される可搬ユニットを構成したことを特徴とする消火設備。
【請求項3】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記固定ユニットの部分にカバー部材を装着したことを特徴とする消火設備。
【請求項4】
請求項1記載の消火設備に於いて、前記スプリンクラーヘッドは、放水圧力0.05MPaの場合に毎分30リットルの放水流量となる第1スプリンクラーヘッド、又は、放水圧力0.02PMaの場合に毎分30リットルの放水流量となる第2スプリンクラーヘッドであり、
前記オリフィスとして、前記配管に前記第1スプリンクラーヘッドを接続している場合は、前記末端試験弁を開放した際に前記放水圧力0.05MPaに対応した圧力損失を発生する第1オリフィスを設け、前記配管に前記第2スプリンクラーヘッドを接続している場合は、前記末端試験弁を開放した際に前記放水圧力0.02MPaに対応した圧力損失を発生する第2オリフィスを設けたことを特徴とする消火設備。
【請求項5】
請求項4記載の消火設備に於いて、前記第1オリフィス又は第2オリフィスを交換自在に前記可搬ユニットに設けることを特徴とする消火設備。
【請求項6】
請求項4記載の消火設備に於いて、前記第1オリフィス又は第2オリフィスを切替え自在に前記可搬ユニットに設けたことを特徴とする消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−95794(P2012−95794A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245013(P2010−245013)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(000151025)株式会社タブチ (86)
【Fターム(参考)】