説明

消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法および消耗電極式ガスシールドアーク溶接システム

【課題】安価な炭酸ガスをシールドガスとして用いた場合であってもスパッタ量を低減でき、多層盛り溶接等においても高溶着量を得ることができる消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法および消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムを提供する。
【解決手段】シールドガスGとして炭酸ガスを用い、1周期あたりパルスピーク電流レベルおよび/またはパルス幅の異なる2種類のパルス波形を交互に出力し、1周期あたり1溶滴を移行させるパルスアークを先行極アークとして用いて溶融池Mを形成し、通電加熱されたフィラーワイヤ6bを後行極として溶融池Mに挿入し、通電加熱距離Exを200〜500×10−3[m]とし、先行極ベース電流値が後行極フィラー電流値よりも大きくなるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消耗電極ワイヤと通電加熱したフィラーワイヤとを用いた消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法および消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、製造業においては、工期短縮、コストダウンに懸命の努力が払われており、消耗電極式ガスシールドアーク溶接においては更なる高能率化に対する要望が高まっている。ここで、1電極ワイヤによる消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法においては、高能率化を図るためにワイヤ溶融速度を増加させると、スパッタの大量発生のみならず、ワイヤ送給速度の変動によるアーク不安定、溶融池が掘下げられることによる不整ビードの形成、溶接欠陥の発生、等の数々の問題が頻発するため、ワイヤ溶融速度を増加させて高溶着化し、高能率化を図ることには限界がある。
【0003】
更なる高能率化を図るための2電極消耗電極式ワイヤ(以下、2電極ワイヤという)を用いた消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法であるホットワイヤGMA(Gas Metal Arc)溶接法は、消耗電極式ワイヤによってアークを発生させて溶融池を形成し、通電加熱したフィラーワイヤを当該溶融池に挿入することで、アーク溶接の高能率化を図る溶接方法である。
【0004】
このようなホットワイヤGMA溶接法を用いた技術としては、例えば次のようなものが提案されている。特許文献1では、シールドガスノズル内に2本のワイヤを挿入して先行の消耗電極ワイヤでアークを発生させ、後行のフィラーワイヤを溶融池に挿入する消耗電極式アーク溶接法であって、消耗電極ワイヤから母材に流れる溶接電流の一部を分流してフィラーワイヤに導いて溶接電源のアース端へと合流させる溶接法が提案されている。このような溶接法を用いると、近接している消耗電極ワイヤとフィラーワイヤとに流される電流の向きが逆になるため、アークが常に前方を向くようになり、高速溶接時における溶け込み深さを確保することができるという効果があった。
【0005】
また、特許文献2では、先行の消耗電極ワイヤでアークを発生させ、後行の無通電フィラーワイヤを溶融池に挿入することにより、溶融池の冷却を促進すると同時に、溶融金属の充填を行う2溶接ワイヤ送給アーク溶接方法が提案されている。このような溶接方法を用いると、薄板重ね継手の高速溶接において、アンダカットやハンピングといった不整ビード欠陥を抑制することができるという効果があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平03−275280号公報
【特許文献2】特開2008−055506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、フィラーワイヤを用いた溶接法は既に広く知られている技術であるが、ホットワイヤGMA溶接法は、2電極間の磁気干渉によりスパッタが大量発生するという課題が解決されておらず、技術的に定着しているとは言い難かった。特に、ガスコストが安価な炭酸ガスアーク溶接を先行極として用いると、スパッタが極めて多くなるため、その適用例は皆無であった。
【0008】
例えば、特許文献1で提案された溶接法では、先行極と近接した後行極の分流電流により、先行極アークが磁気干渉を受けて不安定となる。その結果、1電極ワイヤの場合と比較して先行極からのスパッタ量が増加するという問題があった。また、高溶着化を狙ってフィラーワイヤの溶融速度を増加させるには、分流電流を200〜400[A]程度まで増加させる必要があるため、先行極アークからのスパッタ量が著しく増加するという問題が生じた。
【0009】
さらに、特許文献1で提案された溶接法において、先行極アークに安価な炭酸ガスをシールドガスとして用い、かつ、通常の直流定電圧電源を用いて溶接を行うと、先行極の溶滴移行がもともと不規則なグロビュラー移行であるため、磁気干渉によるスパッタ量が極めて著しかった。また、この場合、ガスノズルに付着したスパッタがシールド不良を発生させる上、溶接部周辺に大量の大粒スパッタが付着してしまう。このような問題は、後行極フィラーへの通電電流を分流電流に拠らず別電源から供給する場合であっても同様であった。
【0010】
また、特許文献2に係る溶接方法では、フィラーワイヤが通電加熱されていないため、フィラーワイヤの溶融速度を大幅に増加させることはできないという問題があった。そのため、中厚板を対象とした多層盛り溶接で望まれる溶着量増加効果が期待できなかった。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、消耗電極ワイヤと通電加熱したフィラーワイヤとを用いた消耗電極式ガスシールドアーク溶接において、安価な炭酸ガスをシールドガスとして用いた場合であっても、スパッタ量が少なく、かつ、中厚板の多層盛り溶接等においても高溶着量を得ることができる消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法および消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するために本発明に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法は、消耗電極ワイヤによるアークで形成された溶融池に、フィラー電流によって通電加熱されたフィラーワイヤを添加する消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法であって、シールドガスとして炭酸ガスを用い、1周期あたりパルスピーク電流レベルおよび/またはパルス幅の異なる2種類のパルス波形を交互に出力し、1周期あたり1溶滴を移行させるパルスアークを先行極アークとして用いて溶融池を形成し、通電加熱された前記フィラーワイヤを後行極として前記溶融池に挿入し、前記溶融池に挿入される前記フィラーワイヤの先端と前記フィラーワイヤの通電点との距離を、200〜500×10−3[m]とし、先行極ベース電流値が後行極フィラー電流値よりも大きくなるように設定する。
【0013】
このような手順によれば、消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法は、シールドガスとして炭酸ガスを用い、かつ、消耗電極ワイヤと通電加熱したフィラーワイヤの2電極ワイヤを用いてアーク溶接を行うことで、低コストかつ高能率のアーク溶接が可能となる。またパルスアークを先行極アークとして用いることで、溶滴の形成および離脱をパルス電流波形に同期させて規則正しく行うことができる。
【0014】
また、溶融池に挿入されるフィラーワイヤの先端とフィラーワイヤの通電点との距離を所定範囲内としてフィラーワイヤの通電加熱距離を延長することで、フィラーワイヤの予熱に必要なフィラー電流を従来よりも大幅に低減することができる。さらに、後行極フィラー電流値を先行極ベース電流値以下とすることで、後行極に給電されたフィラー電流による、ベース期間中の先行極アークに対する磁気干渉を抑制することができ、先行極アークの硬直性を維持することができる。
【0015】
また、本発明に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法は、前記消耗電極ワイヤの先端と前記フィラーワイヤの先端との距離である電極間距離De[m]を、4〜15×10−3[m]の範囲内とし、前記電極間距離De[m]と、前記溶融池に挿入される前記フィラーワイヤの先端と前記フィラーワイヤの通電点との距離である通電加熱距離Ex[m]と、前記フィラーワイヤの送給速度Vw[m/s]と、前記フィラーワイヤの電流密度J[A/m]と、の関係を、下記式(1)を満たすものとすることが好ましい。
【0016】
【数1】

【0017】
このような手順によれば、消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法は、電極間距離De[m]、通電加熱距離Ex[m]、フィラーワイヤの送給速度Vw[m/s]、フィラーワイヤの電流密度J[A/m]、の関係を所定の関係とすることにより、送給されるフィラーワイヤの温度分布を最適化することができる。従って、フィラーワイヤの加熱不足や過熱を防止することができ、例えば未溶融フィラーワイヤが被溶接部材を突っつくことにより、溶融池を乱し先行極アークからのスパッタを発生させてしまう現象や、フィラーワイヤが過熱されて軟化することにより、微少な送給変動が生じフィラー側からアークが発生してしまう結果、スパッタを発生させてしまう現象を防止することができる。
【0018】
また、本発明に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法は、前記後行極フィラー電流値を150[A]以下とすることが好ましい。
【0019】
このような手順によれば、消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法は、後行極フィラー電流値を所定値以下とすることにより、後行極に給電されたフィラー電流による、ベース期間中の先行極アークに対する磁気干渉をより抑制することができる。
【0020】
そして、本発明に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムは、1周期あたりパルスピーク電流レベルおよび/またはパルス幅の異なる2種類のパルス波形を交互に出力し、1周期あたり1溶滴を移行させるパルスアークを先行極アークとして用いて形成した溶融池に、フィラー電流によって通電加熱されたフィラーワイヤを添加する消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムであって、シールドガスとして炭酸ガスを用い、先行極ベース電流値が後行極フィラー電流値よりも大きくなるように設定し、先行極である消耗電極ワイヤを被溶接部材に供給する先行極トーチと、前記溶融池に挿入される前記フィラーワイヤの先端と前記フィラーワイヤの通電点との距離が200〜500×10−3[m]である給電部材と、を備え、後行極である前記フィラーワイヤを前記溶融池に供給する後行極トーチと、を備える構成とする。
【0021】
このような構成を備える消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムは、シールドガスとして炭酸ガスを用い、かつ、消耗電極ワイヤと通電加熱したフィラーワイヤの2電極ワイヤを用いてアーク溶接を行うことで、低コストかつ高能率のアーク溶接が可能となる。またパルスアークを先行極アークとして用いることで、溶滴の形成および離脱をパルス電流波形に同期させて規則正しく行うことができる。
【0022】
また、溶融池に挿入されるフィラーワイヤの先端とフィラーワイヤの通電点との距離を所定範囲内としてフィラーワイヤの通電加熱距離を長くすることで、フィラーワイヤの予熱に必要なフィラー電流を従来よりも大幅に低減することができる。さらに、後行極フィラー電流値を先行極ベース電流値以下とすることで、後行極に給電されたフィラー電流による、ベース期間中の先行極アークに対する磁気干渉を抑制することができ、先行極アークの硬直性を維持することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法および消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムによれば、安価な炭酸ガスをシールドガスとして用いても、溶滴の形成と離脱は1電極ワイヤ時と同様に行われ、通常の直流定電圧電源を先行極アーク用として用いたホットワイヤGMA溶接法と比較してスパッタ量を大幅に低減できる。また、消耗電極ワイヤと通電加熱したフィラーワイヤの2電極ワイヤを用いてアーク溶接を行うため、中厚板の多層盛り溶接等においても高溶着量を得ることができる。従って、低コスト、低スパッタ、高溶着を兼ね備えた溶接方法および溶接システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムの溶接制御装置が生成するパルス波形の一例を示す波形図である。
【図2】実施形態に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムの溶接制御装置が生成するパルス波形による溶接ワイヤ先端部の時系列変化を模式的に示す説明図である。
【図3】実施形態に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムの溶接制御装置の制御により測定された溶接電圧および溶接電流のタイミングチャートである。
【図4】実施形態に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムの一例を模式的に示す構成図である。
【図5】実施形態に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムの溶接電源、フィラー電源および溶接制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【図6】図5に示すくびれ検出器の構成例を示すブロック図である。
【図7】本発明の効果を示す実験例に関する図であって、(a)は、フィラーワイヤの送給速度とフィラー電流値との関係を通電加熱距離別に示したグラフ、(b)は、フィラーワイヤの送給速度とスパッタ発生量との関係を通電加熱距離別に示したグラフ、である。
【図8】本発明の効果を示す実験例に関する図であって、(a)は、パルスベース電流値をフィラー電流値よりも低くした状態でパルスアーク溶接を行った場合における、先行極の溶接電流および溶接電圧と、後行極のフィラー電流値の時間的変化を示すグラフ、(b)は、パルスベース電流値をフィラー電流値よりも高くした状態でパルスアーク溶接を行った場合における、先行極の溶接電流および溶接電圧と、後行極のフィラー電流値の時間的変化を示すグラフ、である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムおよび消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法について、詳細に説明する。まず、パルスアーク溶接の概要について説明した後、アーク溶接システムおよびアーク溶接方法について、説明していくこととする。なお、以下の説明では、「消耗電極式ガスシールドアーク溶接システム」を適宜「アーク溶接システム」と略し、「消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法」を適宜「アーク溶接方法」と略すこととする。
【0026】
[パルスアーク溶接の概要]
アーク溶接システムおよびアーク溶接方法は、一般的な直流定電圧電源を用いたアーク溶接ではなく、アーク溶接システムの溶接制御装置が、予め設定された波形パラメータに基づいて、図1に示すような異なる2種類のパルス波形をパルス周期の1周期の間に交互に生成して溶接電源に出力することで、パルス周期の1周期ごとに1溶滴の移行を行うパルスアーク溶接を前提としている。以下、図1を参照しながらパルスアーク溶接の概要について、簡単に説明する。
【0027】
パルス波形WPは、図1に示すように、後記する溶接制御装置によって生成される矩形もしくは台形の形を繰り返す電流波形である。パルス波形WPのうち、図1に示す第1パルス201は、消耗電極ワイヤ先端からの溶滴を離脱させるための第1パルス波形である。ここで、第1パルス201のピーク期間Tp1およびベース期間Tb1を含む期間を第1パルス期間と呼ぶ。また、第1パルス201には、図1に示すようにピーク電流値Ip1およびベース電流値Ib1が設定されている。なお、ピーク電流値Ip1は、第2パルス202のピーク電流値Ip2よりも大きくなるように設定されている。
【0028】
パルス波形WPのうち、図1に示す第2パルス202は、溶滴を形成するための第2パルス波形である。ここで、第2パルス202のピーク期間Tp2およびベース期間Tb2を含む期間を第2パルス期間と呼ぶ。また、第2パルス202には、図1に示すようにピーク電流値Ip2およびベース電流値Ib2が設定されている。なお、図1に示すパルス波形WPにおいて、溶接電流の時間積分を時間的に平均化したものを平均電流値Iaと呼ぶ。
【0029】
パルス周期の1周期は、第1パルス期間と第2パルス期間とからなる。図1では、前回を示す第(n−1)回目のパルス周期をTpb(n−1)と、今回を示す第(n)回目のパルス周期をTpb(n)と、示している。なお、図1では、第1パルス201および第2パルス202の形状を矩形で示したが、より詳細には、ベース電流からピーク電流へ至る立上りスロープ期間である第1パルス立上りスロープ期間および第2パルス立上りスロープ期間や、ピーク電流からベース電流へ至るパルス立下りスロープ期間が含まれている。
【0030】
実施形態に係るアーク溶接システムが備える溶接制御装置は、後記するように、溶接中に溶接電圧および溶接電流を検出しており、少なくとも一方に基づいて、図2に示すような溶滴のくびれ306を検出した場合に、直ちに第1パルス201の電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替える。なお、図2では低い所定値として、ベース電流に切り替える例を示している。このような電流値の切り替えに伴う溶滴移行の詳細は、以下の通りである。
【0031】
図2において、符号311で示す消耗電極ワイヤ先端305は、前回のパルス周期Tpb(n−1)にて溶滴が離脱した後の第2パルスピーク期間Tp2に成長したものである。第2パルスベース期間Tb2に電流が急激に減少するため、溶滴に作用する上方への押上げ力が弱まり、溶滴は、消耗電極ワイヤ先端305に懸垂形成される。
【0032】
続いて、第1パルスピーク期間Tp1に入ると、ピーク電流による電磁ピンチ力により、符号312で示すように、溶滴は変形し、急速にくびれ306が生じる。溶滴の離脱前にくびれ306を検知することにより、第1パルスピーク期間Tp1中あるいは第1パルス立下りスロープ期間中であっても即座に第1パルスベース電流値Ib1または検知時の電流より低い所定電流に切替え、離脱後のワイヤ側にアークが移動する瞬間においては、符号313で示すように電流が下がっている状態にする。これにより、ワイヤのくびれ306部分の飛散や離脱後の残留融液の飛散による小粒スパッタを大幅に低減できる。
【0033】
続いて、符号314で示すように、第2パルスピーク期間Tp2では、溶滴離脱後のワイヤに残留した融液が、離脱したり飛散したりしないようなレベルに予め第2パルスピーク電流値Ip2を設定した上で溶滴を成長させる。そして、符号315で示すように、第2パルスベース期間Tb2で溶滴の形成を行いながら再び、符号311で示す状態に戻るため、1周期あたり1溶滴の移行を極めて規則正しく実現できる。
【0034】
そしてこのとき、後記するように、第1パルスベース期間Tb1および第2パルスベース期間Tb2における電流値がフィラー通電電流以上となるように設定すれば、ベース期間中における先行極アークに対する磁気干渉を抑制することができ、先行極アークの硬直性を維持できる。その結果、安価な炭酸ガスをシールドガスとして用いても、溶滴の形成と離脱は1電極ワイヤ時と同様に行われ、通常の直流定電圧電源を先行極アーク用として用いたホットワイヤGMA溶接法と比較してスパッタ量を大幅に低減できる。
【0035】
ここで、実施形態に係るアーク溶接システムが溶接制御装置によって検出する溶接電圧の瞬時値Voの一例を図3の上段に示し、溶接電流の瞬時値Ioの一例を図3の中段に示す。なお、溶接制御装置は、後記するように下記の式(2)で表す電圧誤差積分値Sv2の演算を行う。図3の下段に、電圧誤差積分値Sv2の演算の演算結果の一例を示す。
【0036】
【数2】

【0037】
式(2)に示されるパラメータのうち、Ksは、溶接電源の外部特性の傾きであり、予め設定された消耗電極ワイヤの送給速度、溶接電圧の設定やワイヤの種類に応じて決定されている。Is2は、第2パルス期間における溶接電流設定値であり、予め設定された溶接電流設定値Isに応じて決定されている。Vs2は、第2パルス期間における溶接電圧設定値であり、予め設定された溶接電圧設定値Vsに応じて決定されている。Io2は、第2パルス期間において検出された溶接電流の瞬時値である。Vo2は、第2パルス期間において検出された溶接電圧の瞬時値である。
【0038】
溶接制御装置が式(2)で表す電圧誤差積分値Sv2の演算を開始するタイミングは、パルス周期において第1パルス期間を終了して第2パルス期間を開始した時点である。例えば、図3において、nパルス目のパルス周期において第1パルス期間の期間では、電圧誤差積分値Sv2の値は0であるが、第2パルス期間を開始した時点から、Sv2の値は0から下降していくことがわかる。続いて、第2パルスピーク期間Tp2が終了すると、Sv2の値は上昇し始め、0となった時点で、nパルス目のパルス周期が終了し、(n+1)パルス目のパルス周期が開始していることがわかる。
【0039】
[消耗電極式ガスシールドアーク溶接システム]
次に、実施形態に係るアーク溶接システム1について、図4を参照しながら詳細に説明する。アーク溶接システム1は、前記したように、シールドガスGとして炭酸ガスを用い、先行極である消耗電極ワイヤ6aによるアークによって溶融池Mを形成し、後行極であるフィラーワイヤ6bを溶融池Mに添加して溶接を行うシステムである。
【0040】
アーク溶接システム1は、図4に示すように、ワイヤ送給装置2a,2bと、溶接電源3aと、フィラー電源3bと、溶接制御装置4と、先端から消耗電極ワイヤ6aを供給する先行極トーチ5aと、先端からフィラーワイヤ6bを供給する後行極トーチ5bと、を備えている。以下、アーク溶接システム1が備える各構成について、詳細に説明する。
【0041】
ワイヤ送給装置2aは、消耗電極ワイヤ6aを先行極トーチ5aに送給するための装置であり、消耗電極ワイヤ6aを送り出すローラ等からなる装置である。ワイヤ送給装置2aは、図4に示すように、溶接制御装置4を介して溶接電源3aと接続されている。そして、この溶接制御装置4が溶接指令信号を溶接電源3aに出力すると、溶接電源3aによってワイヤ送給装置2aが駆動され、図示しないワイヤ収納容器から図示しないワイヤ送給路を介して、消耗電極ワイヤ6aが先行極トーチ5aに送給される。
【0042】
ワイヤ送給装置2bは、フィラーワイヤ6bを後行極トーチ5bに送給するための装置であり、フィラーワイヤ6bを送り出すローラ等からなる装置である。ワイヤ送給装置2bは、図4に示すように、溶接制御装置4を介してフィラー電源3bと接続されている。そして、この溶接制御装置4が指令信号をフィラー電源3bに出力すると、フィラー電源3bによってワイヤ送給装置2bが駆動され、図示しないワイヤ収納容器から図示しないワイヤ送給路を介して、フィラーワイヤ6bが後行極トーチ5bに送給される。
【0043】
溶接電源3aは、消耗電極ワイヤ6aを送り出すワイヤ送給装置2aに回転制御信号を出力して駆動するとともに、消耗電極ワイヤ6aに溶接電流を供給するための電源である。溶接電源3aは、溶接制御装置4の制御に従って、被溶接部材Wとの間にアークを発生させるために必要な大きさの溶接電流および溶接電圧を、後記する給電チップ23を介して消耗電極ワイヤ6aに供給する。なお、溶接電源3aの詳細については、後記する。
【0044】
フィラー電源3bは、フィラーワイヤ6bを送り出すワイヤ送給装置2bに回転制御信号を出力して駆動するとともに、フィラーワイヤ6bにフィラー電流を供給するための電源である。フィラー電源3bは、溶接制御装置4の制御に従って、ジュール熱によってフィラーワイヤ6bを加熱するために、フィラー電流およびフィラー電圧を給電ブロック17を介してフィラーワイヤ6bに供給する。なお、フィラー電源3bの具体的な内部構成については、後記する。
【0045】
ここで、フィラー電源3bとして通常の定電圧特性の溶接電源を用いると、ワイヤ送給量およびフィラー電流を単独で制御することができない。また、通常の定電圧特性の溶接電源では、アークを発生させずに安定した溶融池Mを形成するための条件範囲が小さくなり、本施行法の利点が損なわれる。従って、フィラーワイヤ6bから極力アークを発生させることなく良好な溶接ビードを得るためには、ワイヤ送給量およびフィラー電流を単独で制御することができる定電流特性の溶接電源をフィラー電源3bとして用いることが好ましい。
【0046】
また、フィラー電源3bは、フィラーワイヤ6bと被溶接部材Wとの間の電圧を検出し、一定の電圧を超えたとき、すなわちアークの発生が検出されたときは、設定電流にかかわらずフィラー電流値Ifを10[A]以下に瞬時に低減してフィラーワイヤ6bの溶融を抑えて、アークの発生を防止する機能を有することがより好ましい。
【0047】
溶接制御装置4は、溶接電源3aによる溶接電流の供給、フィラー電源3bによるフィラー電流の供給、および、ワイヤ送給装置2a,2bの駆動を制御するための装置である。なお、溶接制御装置4の具体的な内部構成については、後記する。
【0048】
先行極トーチ5aは、前記したワイヤ送給装置2aの駆動によって、被溶接部材Wに対して消耗電極ワイヤ6aを供給するものである。先行極トーチ5a内部には、後記する給電チップ23が設けられており、溶接電源3aからの溶接電流が当該給電チップ23を介して消耗電極ワイヤ6aに供給されるように構成されている。
【0049】
この溶接電流は、前記したように、1周期あたりパルスピーク電流レベルおよび/またはパルス幅が異なる第1パルス201および第2パルス202を用いたパルス電流である。従って、消耗電極ワイヤ6aと被溶接部材Wとの間には、前記したように1周期あたり1溶滴の移行を行なうパルスアークが発生し、図4に示すような溶融池Mが形成される。なお、この際に先行極トーチ5aから供給する消耗電極ワイヤ6aの極性は、図4に示すように、DCEPとする。
【0050】
後行極トーチ5bは、前記したワイヤ送給装置2bの駆動によって、溶融池Mに対してフィラーワイヤ6bを供給する装置である。後行極トーチ5b内部には、後記する給電ブロック17が設けられており、フィラー電源3bからのフィラー電流が当該給電ブロック17を介してフィラーワイヤ6bに供給されるように構成されている。なお、後行極トーチ5bの具体的な内部構成については、後記する。
【0051】
前記したフィラー電源3bからフィラーワイヤ6bの給電ブロック17に対してフィラー電流が給電されると、当該給電ブロック17内を走行するフィラーワイヤ6bはジュール熱によって通電加熱される。そして、このように通電加熱されて溶融しやすくなったフィラーワイヤ6bは、図4に示すように、消耗電極ワイヤ6aによって形成された溶融池Mに挿入され、溶接金属となる。なお、この際に後行極トーチ5bから供給されるフィラーワイヤ6bの極性は、DCEPとDCENのどちらでもよい。
【0052】
消耗電極ワイヤ6aは、前記した先行極トーチ5aによって被溶接部材Wに供給されるワイヤであり、フィラーワイヤ6bは、前記した後行極トーチ5bによって溶融池Mに供給されるワイヤである。消耗電極ワイヤ6aとフィラーワイヤ6bとしては、例えば、ソリッドワイヤ、フラックス入りワイヤ等を用いることができ、それぞれ同じ種類のワイヤ、あるいは異なる種類のワイヤを用いることができる。なお、消耗電極ワイヤ6aおよびフィラーワイヤ6bのワイヤ径は、溶接条件等によって適宜変更されるが、例えば1.0〜1.6[mmφ]とすることができる。
【0053】
ここで、本発明の実施形態に係るアーク溶接システム1においては、溶接電源3aの先行極ベース電流値が、フィラー電源3bの後行極フィラー電流値よりも大きくなるように予め設定する。このように、先行極ベース電流値を後行極フィラー電流値よりも大きくすることにより、フィラー電流の影響による先行極アークのベース期間中における磁気干渉を抑制することができる。従って、先行極アークの硬直性を維持することができる。なお、先行極ベース電流値および後行極フィラー電流値の設定は、例えばアーク溶接を行う前に作業者が直接これらの設定値を調節することで行う。
【0054】
次に、アーク溶接システム1が備える後行極トーチ5bの具体的な構成について、図4を参照しながら詳細に説明する。後行極トーチ5bは、図4に示すように、トーチボディ11と、ワイヤガイド12と、接続部材13a,13bと、スプリングライナー14と、セラミックリング15と、絶縁カバー16と、給電ブロック17と、絶縁ジョイント18a,18bと、押えスプリング19と、を備えている。以下、後行極トーチ5bが備える各構成について、詳細に説明する。なお、図4においては、説明の便宜上後行極トーチ5bの縮尺を拡大して表示している。
【0055】
トーチボディ11は、後行極トーチ5bの基体となる筒状の部材である。トーチボディ11は、図4に示すように、内部にフィラーワイヤ6bが走行可能な径の孔が形成されている。また、トーチボディ11は、トーチ先端側の一端がワイヤガイド12と接続され、トーチ後端側の他端が接続部材13aを介してスプリングライナー14、セラミックリング15および絶縁カバー16と接続されている。
【0056】
ワイヤガイド12は、後行極トーチ5b先端において、フィラーワイヤ6bをガイドしながら送り出す筒状の部材である。ワイヤガイド12は、図4に示すように、内部にフィラーワイヤ6bが走行可能な径の孔が形成されている。また、ワイヤガイド12は、トーチ後端側の他端がトーチボディ11と接続されている。
【0057】
スプリングライナー14は、内部にフィラーワイヤ6bを走行させるための筒状の部材である。スプリングライナー14は、例えばコイルスプリング等の弾性部材で構成することができる。スプリングライナー14の内部には、図4に示すように、絶縁性のセラミックリング15によって形成されたワイヤ送給路が形成され、外部は絶縁カバー16で被覆されている。従って、スプリングライナー14の内部および外部は、絶縁処理部材によっていずれも絶縁処理されている。スプリングライナー14は、トーチ先端側の一端が接続部材13aを介してトーチボディ11と接続され、トーチ後端側の他端が接続部材13bを介して絶縁ジョイント18aと接続されている。
【0058】
セラミックリング15は、走行中のフィラーワイヤ6bを絶縁処理するための円筒状の部材である。セラミックリング15は、図4に示すように、内部にフィラーワイヤ6bが走行可能な径の孔が形成されており、フィラーワイヤ6bの送給方向に複数並べることで筒状のワイヤ送給路を形成している。また、セラミックリング15は、トーチ先端側の一端が接続部材13aを介してトーチボディ11と接続され、トーチ後端側の他端が給電ブロック17と接続されている。なお、セラミックリング15は、後行極トーチ5bにおける絶縁処理部材として機能する。
【0059】
絶縁カバー16は、後行極トーチ5b内部の部材を絶縁処理するための筒状の部材である。絶縁カバー16は、例えばゴム等の絶縁性樹脂で構成することができる。絶縁カバー16は、図4に示すように、スプリングライナー14を周囲から被覆するように形成されている。また、絶縁カバー16は、トーチ先端側の一端が接続部材13aを介してトーチボディ11と接続され、トーチ後端側の他端が接続部材13bを介して絶縁ジョイント18aと接続されている。なお、絶縁カバー16は、後行極トーチ5bにおける絶縁処理部材として機能する。
【0060】
給電ブロック17は、走行中のフィラーワイヤ6bに対して、フィラー電流を給電するための給電部材である。給電ブロック17は導電性の部材で構成され、図4に示すように、内部にフィラーワイヤ6bが走行可能かつ接触可能な径の孔が形成されている。また、給電ブロック17は、トーチ先端側の一端がセラミックリング15および絶縁ジョイント18aと接続され、トーチ後端側の他端が絶縁ジョイント18bと接続されている。従って、給電ブロック17は、消耗電極ワイヤ6a用の給電チップ23と絶縁処理されている。
【0061】
ここで、従来のホットワイヤGMA溶接法では、後行極トーチの先端近くにフィラー電流の給電点があるため、通電加熱距離Ex[m]は25〜100×10−3[m]程度であり、高溶着量を得るためにはフィラーワイヤ6bに大電流を通電する必要があった。そのため、従来のホットワイヤGMA溶接法では、後行極であるフィラーワイヤ6bに給電されたフィラー電流によって、先行極アークが磁気干渉を受け、規則的な溶滴形成と離脱が不可能となったり、アーク切れが発生していた。
【0062】
一方、本発明の実施形態に係るアーク溶接システム1においては、フィラーワイヤ6bの通電加熱距離Ex[m]が200〜500×10−3[m]となるように、後行極トーチ5bの長さを調整する。この通電加熱距離Ex[m]とは、図4に示すように、溶融池Mに挿入されるフィラーワイヤ6bの先端P1と、フィラーワイヤ6bの通電点P2との距離を指している。また、フィラーワイヤ6bの先端P1とは、図4に示すように、溶融池M表面においてフィラーワイヤ6bが挿入される部分、言い換えると、溶融池Mとフィラーワイヤ6bとの接触部分のことを示している。そして、給電点Pとは、図4に示すように、フィラーワイヤ6bと給電ブロック17との接触部分における最も先端、すなわち、最も溶融池Mに近い部分のことを示している。
【0063】
このように、通電加熱距離Ex[m]を従来よりも延長することで、フィラーワイヤ6bの予熱に必要なフィラー電流を従来よりも大幅に低減することができる。その結果、先行極アークの磁気干渉によるスパッタ増加を抑制することができ、更なる低スパッタを実現できる。
【0064】
なお、通電加熱距離Ex[m]を前記した範囲内とする方法としては、例えば、先行極トーチ5aを製造する際に各部材の大きさおよび長さを調整して物理的な距離を調整する方法等が挙げられる。
【0065】
絶縁ジョイント18a,18bは、フィラー電源3bから給電ブロック17に給電されるフィラー電流が他部材に漏出しないように給電ブロック17を絶縁するとともに、給電ブロック17と他部材とを接続するための部材である。絶縁ジョイント18a,18bは、絶縁性の部材で構成され、図4に示すように、給電ブロック17を両側から挟みこむように支持している。また、絶縁ジョイント18aは、トーチ先端側の一端が接続部材13bを介してスプリングライナー14、セラミックリング15および絶縁カバー16と接続され、トーチ後端側の他端が給電ブロック17と接続されている。また、絶縁ジョイント18bは、トーチ先端側の一端が給電ブロック17と接続されている。なお、絶縁ジョイント18a,18bは、後行極トーチ5bにおける絶縁処理部材として機能する。
【0066】
ここで、給電ブロック17、スプリングライナー14、ワイヤガイド12からなるフィラーワイヤ送給系においては、給電ブロック17から先のフィラーワイヤ6bは絶縁されている必要がある。そこで、前記したように、セラミックリング15をワイヤ送給方向に並べてその中心にフィラーワイヤ6bが送給されるように構成する。そして、このセラミックリング15をスプリングライナー14や絶縁性樹脂等の絶縁カバー16を用いて単独または両方で被覆することにより、フィラーワイヤ送給系に任意の曲率を付与することが可能となり、後行極トーチ5bの配置も容易となる。
【0067】
押えスプリング19は、給電ブロック17内部の孔の径を、フィラーワイヤ6bが走行する中心方向に縮径させるための強制給電機構である。このように押えスプリング19によって給電ブロック17内部の孔の径を縮径させることで、給電ブロック17とフィラーワイヤ6bとの接触が容易となる。押さえスプリング19は、例えばコイルスプリング等の弾性部材で構成することができ、フィラーワイヤ6bの走行が妨げられない範囲内で、給電ブロック17の外径を中心方向に縮径させる。
【0068】
ここで、アーク溶接システム1においては、溶融池M直上における消耗電極ワイヤ6aの先端とフィラーワイヤ6bの先端との距離である電極間距離De[m]を、4〜15×10−3[m]の範囲内となるように各電極を配置することが好ましい。電極間距離De[m]が4×10−3[m]未満の場合、ワイヤの曲がり癖等によってワイヤ先端がふらつくため、先行極アーク中にフィラーワイヤ6bが溶融池Mに挿入されると、フィラーワイヤ6bが過度に溶融してフィラーワイヤ6b側からもアークが発生してしまう場合がある。また、電極間距離De[m]が15×10−3[m]以上の場合、高溶着量を得るためにフィラーワイヤ6bの送給速度Vw[m/s]を増加させると、フィラー電流を増加させたとしても、フィラーワイヤ6bが完全に溶融しないまま溶融池Mに残り、溶接欠陥が発生してしまう場合がある。従って、アーク溶接システム1においては、電極間距離De[m]を前記した範囲内とすることにより、安定した溶接が可能となる。
【0069】
[溶接電源、フィラー電源および溶接制御装置の具体的構成]
次に、実施形態に係るアーク溶接システム1が備える溶接電源3a、フィラー電源3bおよび溶接制御装置4のそれぞれの具体的構成について、図5および図6を参照しながら詳細に説明する。なお、図5においては、先行極トーチ5aおよび後行極トーチ5bを簡略化して図示している。
【0070】
溶接電源3aは、図5に示すように、出力制御素子21と、電流検出器22と、電圧検出器24と、を備えている。以下、溶接電源3aが備える各構成について、詳細に説明する。
【0071】
出力制御素子21は、3相200V等の商用電源に接続されており、この出力制御素子21に与えられた電流は、図示しないトランス、ダイオード等の整流部および直流リアクトルを経由して、溶接電流を検出する電流検出器22を介して、給電チップ23に与えられる。なお、給電チップ23は、破線で示すように、先行極トーチ5a内に収納されている。
【0072】
図示しないトランスを介した出力制御素子21の低位電源側には、図5に示すように、被溶接部材Wが接続されており、給電チップ23内を挿通して給電される消耗電極ワイヤ6aと、被溶接部材Wとの間にアークが生起される。
【0073】
電流検出器22は、溶接電流の瞬時値Ioを検出し、電流検出信号を先行極出力制御器25に出力するものである。また、電流検出器22は、第2パルス期間における溶接電流の瞬時値Io2も検出し、この検出信号を積分器36に出力する。
【0074】
電圧検出器24は、給電チップ23と被溶接部材Wとの間の溶接電圧の瞬時値Voを検出し、電圧検出信号を先行極出力制御器25に出力するものである。また、電圧検出器24は、第2パルス期間における溶接電圧の瞬時値Vo2も検出し、この検出信号を積分器36に出力する。
【0075】
フィラー電源3bは、図5に示すように、出力制御素子26と、電流検出器27と、電圧検出器28と、を備えている。以下、フィラー電源3bが備える各構成について、詳細に説明する。
【0076】
出力制御素子26は、3相200V等の商用電源に接続されており、この出力制御素子26に与えられた電流は、図示しないトランス、ダイオード等の整流部および直流リアクトルを経由して、フィラー電流を検出する電流検出器27を介して、給電ブロック17に与えられる。なお、給電ブロック17は、破線で示すように、後行極トーチ5bに設けられている。
【0077】
図示しないトランスを介した出力制御素子26の低位電源側には、図5に示すように、被溶接部材Wが接続されている。給電ブロック17内を挿通して給電されるフィラーワイヤ6bは、通電加熱され、被溶接部材Wに形成された溶融池Mに挿入される。
【0078】
電流検出器27は、フィラー電流の瞬時値Ifを検出し、電流検出信号を後行極出力制御器29に出力するものである。
【0079】
電圧検出器28は、給電ブロック17と被溶接部材Wとの間のフィラー電圧の瞬時値Vfを検出し、電圧検出信号を後行極出力制御器29に出力するものである。
【0080】
溶接制御装置4は、図5に示すように、先行極出力制御器25と、後行極出力制御器29と、波形生成器31と、波形設定器32と、くびれ検出器33と、パラメータ設定器34と、演算部35と、積分器36と、Sv2比較器37と、を備えている。以下、溶接制御装置4が備える各構成について、詳細に説明する。
【0081】
先行極出力制御器25は、電流検出器22から入力される溶接電流の検出信号(Io)と、電圧検出器24から入力される溶接電圧の検出信号(Vo)と、波形生成器31から入力される第1パルス201および第2パルス202からなるパルス波形WPを示す信号、とに基づいて、消耗電極ワイヤ6aに給電する溶接電流および溶接電圧の指令値を決定し、溶接指令信号を出力して出力制御素子21を制御することによって先行極トーチ5aによる溶接出力を制御する。
【0082】
後行極出力制御器29は、指令信号を出力して出力制御素子26を制御することによって後行極トーチ5bによるフィラー出力を制御する。なお、後行極出力制御器29は、ジュール熱によってフィラーワイヤ6bを加熱するための電流であって、被溶接部材Wとの間にアークを発生させない程度の大きさのフィラー電流およびフィラー電圧の指令値を決定する。
【0083】
また、後行極出力制御器29は、フィラーワイヤ6bと被溶接部材Wとの間の電圧を検出し、一定の電圧を超えたとき、すなわちアークの発生が検出されたときは、設定電流にかかわらず、10A以下に電流値を瞬時に低減してフィラーワイヤ6bの溶融を抑え、アークの発生を防止する機能を備えることもできる。
【0084】
波形生成器31は、パルス波形WPが異なる2種類のパルス信号として溶滴を離脱させるための第1パルス201と、溶滴を形成するための第2パルス202とを交互に生成し、出力制御素子21を介して溶接電源3aに出力するものである。このために、波形生成器31には、波形設定器32で設定された各種波形パラメータが入力される。
【0085】
また、波形生成器31は、溶滴のくびれ306(図2参照)が検出された場合に直ちに第1パルス201の電流値を検出時の電流値よりも低い所定値に切り替える。実施形態では、波形生成器31には、くびれ検出器33から、溶滴離脱直前を示す第1パルス期間終了信号(Tp1f)が入力される。波形生成器31は、第1パルス期間終了信号(Tp1f)が入力された場合に、波形設定器32で設定された設定値に基づいて、第1パルスベース期間Tb1では、第1パルスベース電流値Ib1になるように、先行極出力制御器25の出力を補正するための信号である出力補正信号を先行極出力制御器25に出力する。また、第1パルス期間終了信号(Tp1f)が入力されて第1パルスベース期間Tb1が終了した場合に、波形生成器31は、波形設定器32で設定されたパルス形状となるように、第2パルス202の波形信号を出力し、続いて、再び第1パルス201および第2パルス202による交互出力を繰り返す。
【0086】
また、波形生成器31には、Sv2比較器37から、前記した式(2)の演算結果が0と等しくなったことを示す第2パルスベース期間終了信号(Tb2f)が入力される。波形生成器31は、パルス周期毎に、第2パルスベース期間終了信号(Tb2f)が入力された場合に、当該パルス周期を終了して次回のパルス周期を開始する。
【0087】
波形設定器32は、第1パルス201および第2パルス202における、ピーク電流、パルスピーク期間、ベース電流、パルスベース期間、立上りスロープ期間、立下がりスロープ期間等の波形パラメータを波形生成器31に設定するものである。実施形態では、波形設定器32は、図示しない記憶手段に予め記憶された波形パラメータの各値を波形パラメータ設定信号として波形生成器31に入力する。
【0088】
くびれ検出器33は、電流検出器22で検出された溶接電流および電圧検出器24で検出された溶接電圧の少なくとも一方に基づいて、前記したように、溶滴離脱直前の状態として溶滴のくびれ306を検出するものである。くびれ検出器33は、溶接電圧あるいはアークインピーダンス等について1階または2階の時間微分信号を用いることで、溶滴のくびれ306を検出することが可能である。実施形態では、くびれ検出器33は、電圧検出器24で検出された溶接電圧の瞬時値Voの時間2階微分値に基づいて溶滴のくびれ306を検出することとした。
【0089】
アーク溶接システム1においては、くびれ検出器33は、図6に示すように、溶接電圧微分器41と、2階微分器42と、2階微分値設定器43と、比較器44とを備え、波形生成器31から溶滴離脱検出許可信号が入力されているときに、それぞれの処理を行うこととした。以下、くびれ検出器33が備える各構成について、詳細に説明する。
【0090】
溶接電圧微分器41は、電圧検出器24により検出された溶接電圧の瞬時値Voを時間微分する。この時間微分電圧値dV/dtは、2階微分器42により、さらに時間微分され、その算出結果である時間2階微分値dV/dtは、比較器44に入力される。2階微分値設定器43は、ワイヤ先端から溶滴が離脱する直前のくびれに相当する溶接電圧の時間2階微分値に相当するしきい値を、時間2階微分値として設定するものである。
【0091】
比較器44は、2階微分器42から入力する溶接中の溶接電圧の瞬時値Voの時間2階微分値である2階微分検出値と、2階微分値設定器43で設定された時間2階微分値である2階微分設定値と、を比較するものである。比較器44は、2階微分検出値が2階微分設定値以上になったときに、溶滴がワイヤ先端から離脱直前であるものと判定し、第1パルス期間終了信号(Tp1f)を波形生成器31に出力する。これは、ワイヤ先端に存在する溶滴の根元がくびれ、そのくびれが進行する結果、溶接電圧および抵抗が上昇することを捉えるものである。このように時間2階微分値等を用いて、溶接電圧および抵抗の上昇を検出する場合、溶接中の溶接条件の変化に影響されず、正確に溶滴のくびれ306を検出できる。
【0092】
図5に戻って、溶接制御装置4の説明を続ける。
パラメータ設定器34は、消耗電極ワイヤ6aの送給速度、溶接電流設定値Is、溶接電圧設定値Vs等を演算部35に設定するものである。実施形態では、パラメータ設定器34は、図示しない記憶手段に予め記憶された溶接パラメータの各値を、設定溶接電流値信号、設定溶接電圧値信号等の設定パラメータ信号として演算部35に入力する。
【0093】
演算部35は、予め定められた各設定値に基づいて、各種パラメータを算出し、算出した各種パラメータを積分器36に入力するものである。具体的には、演算部35は、入力される各設定値に応じて溶接電源3aの外部特性の傾きKsを一義的に決定する。外部特性の傾きKsは、溶接電流設定値Isまたは溶接電圧設定値Vs、消耗電極ワイヤ6aの送給速度、ワイヤの種類等に応じて適正に設定される。演算部35は、例えば、変換用のテーブルや関数を用いて外部特性の傾きKsを決定する。
【0094】
また、演算部35は、入力される設定溶接電流値信号の値Isに応じて、第2パルス期間における溶接電流設定値Is2を一義的に決定する。演算部35は、例えば、変換用のテーブルや関数を用いて第2パルス期間における溶接電流設定値Is2を決定する。
【0095】
さらに、演算部35は、入力される設定溶接電圧値信号の値Vsおよび設定溶接電流値信号の値Isに応じて、第2パルス期間における溶接電圧設定値Vs2を一義的に決定する。実施形態では、演算部35は、式(3)の演算を行って第2パルス期間における溶接電圧設定値Vs2を決定する。
【0096】
【数3】

【0097】
式(3)において、Vs_iniは、溶接電流設定値Isに応じて決まる一元中央電圧、Vs2_iniは、第2パルス期間における溶接電流設定値Is2に応じて決まる第2パルス期間における一元中央電圧、Vs2_chgは、設定溶接電圧値信号の値(Vs)を1[V]変化させた場合の第2パルス期間における溶接電圧設定値Vs2の変化量である。
【0098】
積分器36は、演算部35からそれぞれ入力される外部特性の傾きKs、第2パルス期間における溶接電流設定値Is2および溶接電圧設定値Vs2と、電流検出器22から入力される溶接電流の検出信号(Io)と、電圧検出器24から入力される溶接電圧の検出信号(Vo)とを用いて、前記した式(2)を演算し、電圧誤差積分値の演算結果を示す積分値信号(Sv2)をSv2比較器37に出力する。積分器36が、前記した式(2)の演算を開始するタイミングは、パルス周期の第2パルス期間の開始時点である。積分器36は、式(2)で表す電圧誤差積分値Sv2の演算結果が0となった時点で演算を終了する。
【0099】
Sv2比較器37は、入力される積分値信号(Sv2)が0と等しくなったか否かを比較するものであり、Sv2=0となった時点で、第2パルスベース期間終了信号(Tb2f)を波形生成器31に出力する。波形生成器31は、第2パルスベース期間終了信号(Tb2f)が入力された場合に、当該パルス周期を終了して次回のパルス周期を開始する。これをパルス周期毎に繰り返すことによって、外部特性の傾きKs上に動作点を形成することができ、1周期1溶滴とするアーク溶接を実現できる。
【0100】
以上のような構成を備えるアーク溶接システム1は、シールドガスGとして炭酸ガスを用い、かつ、2電極ワイヤを用いてアーク溶接を行うことで、低コストかつ高能率のアーク溶接が可能となる。また、パルスアークを先行極アークとして用いることで、溶滴の形成および離脱をパルス電流波形に同期させて規則正しく行うことができる。
【0101】
なお、1電極ワイヤを用いた従来のアーク溶接方法においては、安価な炭酸ガスをシールドガスGとして用いたとしても、前記したようなパルスアークを先行極として用いることで、規則正しい溶滴形成と離脱が可能となり低スパッタ溶接が可能である。一方、2電極ワイヤを用いた従来のホットワイヤGMA溶接法においては、通電加熱距離Ex[m]が25〜100×10−3[m]程度と短いため、後行極であるフィラーワイヤ6bに大電流を通電する必要がある。従って、この大電流によってベース期間Tb1,Tb2の先行極アークが磁気干渉を受け、規則的な溶滴形成と離脱が不可能となったり、アーク切れが発生する。
【0102】
一方、実施形態に係るアーク溶接システム1は、溶融池Mにおけるフィラーワイヤ6bの先端P1とフィラーワイヤ6bの通電点P2との距離を所定範囲内としてフィラーワイヤ6bの通電加熱距離を延長することで、フィラーワイヤ6bの予熱に必要なフィラー電流を従来よりも大幅に低減することができる。さらに、後行極フィラー電流値を先行極ベース電流値以下とすることで、後行極であるフィラーワイヤ6bに給電されたフィラー電流による、ベース期間Tb1,Tb2中の先行極アークに対する磁気干渉を抑制することができ、先行極アークの硬直性を維持することができる。
【0103】
そのため、安価な炭酸ガスをシールドガスGとして用いても、溶滴の形成と離脱は1電極ワイヤ時と同様に行われ、通常の直流定電圧電源を先行極アーク用として用いたホットワイヤGMA溶接法と比較してスパッタ量を大幅に低減できる。また、消耗電極ワイヤ6aと通電加熱したフィラーワイヤ6bの2電極ワイヤを用いてアーク溶接を行うため、中厚板の多層盛り溶接等においても高溶着量を得ることができる。従って、低コスト、低スパッタおよび高溶着を兼ね備えた溶接システムを提供することができる。
【0104】
なお、実施形態に係るアーク溶接システム1は、前記したように電極間距離De[m]を4〜15×10−3[m]の範囲内とした上で、電極間距離De[m]、通電加熱距離Ex[m]、フィラーワイヤ6bの送給速度Vw[m/s]、フィラーワイヤ6bの電流密度J[A/m]を、下記式(1)を満たすような関係となるように、予めこれらの値を設定することが好ましい。
【0105】
【数4】

【0106】
上記式(1)は、フィラーワイヤ6bが適切な温度分布となる条件式である。電極間距離De[m]および通電加熱距離Ex[m]、フィラーワイヤ6bの送給速度Vw[m/s]、フィラー電流値If[A]あるいはフィラーワイヤ6bの電流密度J[A/m]が適正値でないと、フィラーワイヤ6bの加熱不足や過熱を防止することができない場合がある。
【0107】
ここで、フィラーワイヤ6bの温度は、電極間距離De[m]が小さい程、先行極アークの輻射熱の影響を受けて高くなる。また、フィラーワイヤ6bの温度は、通電加熱距離Ex[m]が大きい程、フィラー電流値If[A]が大きいほど、ジュール発熱効果により高くなる。また、フィラーワイヤ6bの送給速度Vw[m/s]が大きい程、加熱時間が短くなり、フィラーワイヤ6bの温度は低くなる。本発明者らは、これらのパラメータを変化させて鋭意実験を重ねた結果、上記式(1)の値が4〜10の範囲内である場合、溶融池M直上のフィラーワイヤ6bの温度が最適となることを見出した。
【0108】
一方、上記式(1)の値が4未満の場合、フィラーワイヤ6bの加熱が不足し、例えば未溶融のフィラーワイヤ6bが被溶接部材を突っつくことにより、溶融池Mを乱し先行極アークからのスパッタを発生させてしまう現象が起こる場合がある。また、上記式(1)の値が10を超える場合、フィラーワイヤ6bが過熱されて軟化することにより、微少な送給変動が生じフィラー側からアークが発生してしまう結果、スパッタを発生させてしまう現象が起こる場合がある。従って、上記式(1)の値は4〜10の範囲内とすることが好ましい。
【0109】
また、実施形態に係るアーク溶接システム1は、フィラー電源3bのフィラー電流値Ifが150[A]以下となるように、予め設定することが好ましい。このように、フィラー電流値Ifを所定値以下とすることにより、後行極であるフィラーワイヤ6bに給電されたフィラー電流による、ベース期間Tb1,Tb2中の先行極アークに対する磁気干渉をより抑制することができる。
【0110】
また、実施形態に係るアーク溶接システム1は、後行極であるフィラーワイヤ6bの更に後方にもう1つのフィラーワイヤ6bを設けて、3電極ワイヤのアーク溶接システムとすることもできる。なお、このように3電極のアーク溶接システムとするには、別途追加されるフィラーワイヤ6bに対応させて、ワイヤ送給装置2b、フィラー電源3b、後行極トーチ5bおよびフィラーワイヤ6bを1つずつ追加し、かつ、溶接制御装置4にも後行極出力制御器29を1つ追加すればよい。このように3電極のアーク溶接システムとすることにより、更なる高能率化を図ることができる。
【0111】
[消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法]
次に、実施形態に係るアーク溶接方法について、詳細に説明する。実施形態に係るアーク溶接方法は、シールドガスGとして炭酸ガスを用い、先行極である消耗電極ワイヤ6aによるアークによって溶融池Mを形成し、後行極であるフィラーワイヤ6bを溶融池Mに添加して溶接を行う溶接方法である。実施形態に係るアーク溶接方法は、消耗電極ワイヤ6aと被溶接部材Wとの間にアークを発生させて溶融池Mを形成する第1のステップと、通電加熱したフィラーワイヤ6bを溶融池Mに挿入する第2のステップと、に大別することができる。
【0112】
(1)第1のステップ
第1のステップは、1周期あたりパルスピーク電流レベルおよび/またはパルス幅の異なる2種類のパルス波形を交互に出力し、1周期あたり1溶滴を移行させるパルスアークを発生させ、溶融池Mを形成するステップである。
【0113】
ここで、2種類のパルス波形である第1パルス201および第2パルス202については、前記した通りである(図1参照)。また、消耗電極ワイヤ6aの溶接出力の制御は、前記した溶接制御装置4の先行極出力制御器25によって行なわれる。すなわち、先行極出力制御器25は、図5に示すように、電流検出器22から入力される溶接電流の検出信号(Io)と、電圧検出器24から入力される溶接電圧の検出信号(Vo)と、波形生成器31から入力される第1パルス201および第2パルス202からなるパルス波形WPを示す信号、とに基づいて、消耗電極ワイヤ6aに給電する溶接電流および溶接電圧の指令値を決定し、溶接指令信号を出力して出力制御素子21を制御することによって先行極トーチ5aによる溶接出力を制御する。そして、先行極出力制御器25によるこのような制御によって、消耗電極ワイヤ6aと被溶接部材Wとの間に、1周期あたり1溶滴の移行を行なうパルスアークが発生する。
【0114】
(2)第2のステップ
第2のステップは、フィラー電流によって通電加熱されたフィラーワイヤ6bを溶融池Mに挿入するステップである。
【0115】
前記した第1および第2のステップにおいて、給電ブロック17と給電チップ23は絶縁されている。絶縁処理の方法としては、例えば図4に示す後行極トーチ5bのように、セラミックリング15、絶縁カバー16、絶縁ジョイント18a,18b等の絶縁処理部材を用いて給電ブロック17以外の金属部材と絶縁する方法が挙げられる。但し、給電ブロック17以外の金属部材と絶縁処理可能であればよいため、セラミックリング15、絶縁カバー16、絶縁ジョイント18a,18b、のうちの1つまたは2つ絶縁処理部材のみで絶縁処理を行なってもよい。
【0116】
また、前記した第1および第2のステップにおいて、フィラーワイヤ6bの通電加熱距離Ex[m]は、200〜500×10−3[m]とする。通電加熱距離Ex「m」とは、前記したように、溶融池Mに挿入されるフィラーワイヤ6bの先端P1と、フィラーワイヤ6bの通電点P2との距離を指している。通電加熱距離Ex[m]を前記した範囲内に制御する方法としては、前記したように、先行極トーチ5aを製造する際に各部材の大きさおよび長さを調整して物理的な距離を調整する方法等が挙げられる。
【0117】
また、前記した第1および第2のステップにおいて、先行極ベース電流値であるパルスベース電流値Ib1,Ib2が後行極フィラー電流値であるフィラー電流値Ifよりも大きくなるように設定する。
【0118】
以上のような手順を行なうアーク溶接方法は、シールドガスGとして炭酸ガスを用い、かつ、2電極ワイヤを用いてアーク溶接を行うことで、低コストかつ高能率のアーク溶接が可能となる。またパルスアークを先行極アークとして用いることで、溶滴の形成および離脱をパルス電流波形に同期させて規則正しく行うことができる。
【0119】
また、溶融池Mに挿入されるフィラーワイヤ6bの先端P1とフィラーワイヤ6bの通電点P2との距離を所定範囲内としてフィラーワイヤ6bの通電加熱距離Ex[m]を延長することで、フィラーワイヤ6bの予熱に必要なフィラー電流を従来よりも大幅に低減することができる。さらに、後行極フィラー電流値を先行極ベース電流値以下とすることで、後行極であるフィラーワイヤ6bに給電されたフィラー電流による、ベース期間Tb1,Tb2中の先行極アークに対する磁気干渉を抑制することができ、先行極アークの硬直性を維持することができる。
【0120】
そのため、安価な炭酸ガスをシールドガスGとして用いても、溶滴の形成と離脱は1電極ワイヤ時と同様に行われ、通常の直流定電圧電源を先行極アーク用として用いたホットワイヤGMA溶接法と比較してスパッタ量を大幅に低減できる。また、消耗電極ワイヤ6aと通電加熱したフィラーワイヤ6bの2電極ワイヤを用いてアーク溶接を行うため、中厚板の多層盛り溶接等においても高溶着量を得ることができる。従って、低コスト、低スパッタおよび高溶着を兼ね備えた溶接方法を行うことができる。
【0121】
なお、実施形態に係るアーク溶接方法は、前記したように電極間距離De[m]を4〜15×10−3mの範囲内とした上で、電極間距離De[m]、通電加熱距離Ex[m]、フィラーワイヤ6bの送給速度Vw[m/s]、フィラーワイヤ6bの電流密度J[A/m]を、下記式(1)を満たすような関係となるように、予めこれらの値を設定することが好ましい。
【0122】
【数5】

【0123】
上記式(1)を満たすことにより、溶融池M直上のフィラーワイヤ6bの温度分布が最適化するため、フィラーワイヤ6bの加熱不足や過熱を防止することができる。従って、例えば未溶融のフィラーワイヤ6bが被溶接部材を突っつくことにより、溶融池Mを乱し先行極アークからのスパッタを発生させてしまう現象や、フィラーワイヤ6bが過熱されて軟化することにより、微少な送給変動が生じフィラー側からアークが発生してしまう結果、スパッタを発生させてしまう現象を防止することができる。
【0124】
また、実施形態に係るアーク溶接方法においては、フィラー電源3bのフィラー電流値Ifが150[A]以下となるように、予め設定することが好ましい。このように、フィラー電流値Ifを所定値以下とすることにより、後行極であるフィラーワイヤ6bに給電されたフィラー電流による、ベース期間Tb1,Tb2中の先行極アークに対する磁気干渉をより抑制することができる。
【実施例1】
【0125】
次に、本発明に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法の効果を確認する実験例について、図7を参照しながら詳細に説明する。本実験例では、2電極ワイヤを用いた消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法によってビードオンプレート溶接を実施した場合における、パルスアーク溶接を行うことの効果、通電加熱距離Ex[mm]を200〜500[mm]とすることの効果、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも大きくすることの効果、について検証する。表1に本発明の要件を満たす実施例と、本発明の要件を満たさない比較例の溶接条件を示す。なお本実験例では、説明の便宜上、消耗電極ワイヤ送給速度の単位を[m/min]とし、フィラーワイヤの送給速度Vwの単位を[m/min]とし、通電加熱距離Exの単位を[mm]として説明する。
【0126】
【表1】

【0127】
なお、表1に示したもの以外の溶接条件は全て共通とし、以下の通りとした。
(その他溶接条件)
シールドガス:CO
先行極:ソリッドワイヤ 1.2[mmφ]
後行極:フラックス入りワイヤ 1.2[mmφ]
試験板:SM490A
先行極のチップ−母材間距離:25×10−3[m]
先行極の平均電流値Ia:300[A]
溶接速度:30[cm/min]
電極間距離De:10×10−3[m]
【0128】
ここで、表1に示すNo.1,2は、本発明の要件を満たす実施例であって、パルスアーク溶接を行うとともに、通電加熱距離Ex[mm]を200〜500[mm]の範囲内とし、かつ、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも大きくしてアーク溶接を行ったものである。
【0129】
一方、表1に示すNo.3は、本発明の要件を満たさない比較例であって、直流定電圧電源を用いた通常のアーク溶接を行うとともに、通電加熱距離Ex[mm]を200[mm]未満としたものである。また、No.4も、本発明の要件を満たさない比較例であって、パルスアーク溶接を行うとともに、通電加熱距離Ex[mm]を200〜500[mm]の範囲内とし、かつ、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも小さくしてアーク溶接を行ったものである。
【0130】
図7(a)は、表1で示したNo.1〜3における、フィラーワイヤの送給速度Vw[m/min]とフィラー電流値Ifとの関係を、通電加熱距離Ex[mm]別に示したグラフである。図7(a)を参照すると、本発明の要件を満たす実施例であるNo.1,2は、本発明の要件を満たさない比較例であるNo.3と比較してアーク溶接に必要なフィラー電流値Ifを大幅に低減できていることがわかる。特に、通電加熱距離Ex[mm]を500[mm]としたNo.2は、その低減効果が著しい。
【0131】
従って、図7(a)の結果により、通電加熱距離Ex[mm]とフィラー電流値If[mm]とが相関関係にあり、かつ、通電加熱距離Ex[mm]を200〜500[mm]の範囲内とすることにより、後行極トーチに供給するフィラー電流値Ifを大幅に低減できることが明らかとなった。
【0132】
また、図7(b)は、フィラーワイヤの送給速度Vw[m/min]とスパッタ発生量[g/min]との関係を、通電加熱距離Ex[mm]別に示したものである。図7(b)を参照すると、本発明の要件を満たす実施例であるNo.1は、本発明の要件を満たさない比較例であるNo.3,4と比較して、スパッタ発生量[g/min]を大幅に低減できていることがわかる。
【0133】
従って、図7(b)の結果により、通電加熱距離Ex[mm]およびパルスベース電流値Ib1,Ib2とフィラー電流値Ifの大小関係と、スパッタ発生量[g/min]とが相関関係にあり、かつ、通電加熱距離Ex[mm]を200〜500[mm]の範囲内とし、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも大きくすることにより、スパッタ発生量を大幅に低減できることが明らかとなった。
【実施例2】
【0134】
次に、本発明に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法の効果を確認する別の実験例について、図8を参照しながら詳細に説明する。本実験例では、2電極ワイヤを用いた消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法によってビードオンプレート溶接を実施した場合における、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも大きくすることの効果、についてさらに詳細に検証する。なお、本実験例における実施例の溶接条件は、前記した表1のNo.1(実施例)と同様であり、比較例の溶接条件は、前記した表1のNo.4(比較例)と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0135】
図8(a)は、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも小さくした状態でパルスアーク溶接を行った場合における、先行極の溶接電流および溶接電圧と、後行極のフィラー電流値Ifの時間的変化を示すグラフである。図8(a)における上段のパルス波形は、先行極の溶接電圧であり、下段のパルス波形は、先行極の溶接電流であり、下段の直線波形は、後行極のフィラー電流である。
【0136】
図8(a)を参照すると、溶接電流および溶接電圧のパルス波形が所々乱れ、切断されていることがわかる。これは、ベース期間Tb1,Tb2における先行極アークが、フィラー電流によって磁気干渉を受けており、アーク切れが発生していることを示している。従って、図8(a)の結果により、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも小さくすると、先行極アークに磁気干渉が発生してアーク切れが発生することがわかる。
【0137】
図8(b)は、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも大きくした状態でパルスアーク溶接を行った場合における、先行極の溶接電流および溶接電圧と、後行極のフィラー電流値Ifの時間的変化を示すグラフである。図8(b)における上段のパルス波形は、先行極の溶接電圧であり、下段のパルス波形は、先行極の溶接電流であり、下段の直線波形は、後行極のフィラー電流である。
【0138】
図8(b)を参照すると、溶接電流および溶接電流のパルス波形は乱れることなく一定の周期で繰り返していることがわかる。これは、ベース期間Tb1,Tb2における先行極アークが、フィラー電流によって磁気干渉を受けることなく、アーク切れが発生していないことを示している。従って、図8(b)の結果により、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも大きくすると、先行極アークの磁気干渉を防止することができることがわかる。
【0139】
すなわち、図8(a)、(b)の結果により、パルスベース電流値Ib1,Ib2とフィラー電流値Ifとの大小関係と、先行極アークのベース期間Tb1,Tb2中における磁気干渉と、が相関関係にあり、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも大きくすることにより、ベース期間Tb1,Tb2中の先行極アークに対するフィラー電流の磁気干渉を抑制することができ、アーク切れを防止できることが明らかとなった。
【実施例3】
【0140】
次に、本発明に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法の効果を確認するさらに別の実験例について、表2を参照しながら詳細に説明する。本実験例では、前記した式(1)、パルスベース電流値Ib1,Ib2とフィラー電流値Ifの大小関係およびパルスアーク溶接と、スパッタ量との関係についてさらに詳細に検証する。まず表2に、本実施例における溶接条件および溶接結果を示す。なお、本実施例では、説明の便宜上、通電加熱距離Exの単位を[mm]とし、電極間距離Deの単位を[mm]とし、フィラーワイヤの送給速度Vwの単位を[m/min]として説明する。また、表2に示した溶接結果の評価では、スパッタ量が1.0g/min未満を◎と、1.0g/min以上2.0g/min未満を○と、2.0g/min以上を×と評価した。
【0141】
【表2】

【0142】
表2におけるNo.5〜31は、本発明の要件を満たす実施例である。そしてその中でも特にNo.5〜22は、パルスアーク溶接を行い、通電加熱距離Ex[mm]を200〜500[mm]とし、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも大きくし、かつ、前記した式(1)の値である表2のパラメータを4〜10の範囲内とした例である。従って、No.5〜22は、他の例と比較して最もスパッタ量を低減できていることがわかる。
【0143】
また、No.23〜31は、パルスアーク溶接を行い、通電加熱距離Ex[mm]を200〜500[mm]とし、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも大きくし、前記した式(1)の値である表2のパラメータを4〜10の範囲外とした例である。No.23〜31は、前記したNo.5〜22には及ばないものの、比較例と比較してスパッタ量を低減できていることがわかる。
【0144】
一方、No.32〜36は、通電加熱距離Ex[mm]を200[mm]未満とし、かつ、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも小さくしているため、スパッタ量を十分に低減できていないことがわかる。さらに、前記した式(1)の値である表2のパラメータも5〜15の範囲外となっている。また、No.37〜43は、パルスベース電流値Ib1,Ib2をフィラー電流値Ifよりも小さくしているため、スパッタ量を十分に低減できていないことがわかる。さらに、No.37を除けば、前記した式(1)の値である表2のパラメータも4〜10の範囲外となっている。
【0145】
No.44,45は、通電加熱距離Ex[mm]が500[mm]超えであるため、送給不良が生じてスパッタ量を測定することができなかったが、前記した式(1)の値である表2のパラメータは4〜10の範囲外となっている。また、No.46〜48は、パルスアーク溶接ではなく通常のアーク溶接を行っているため、スパッタ量を十分に低減できていないことがわかる。
【0146】
以上、本発明に係る消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法および消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムについて、発明を実施するための形態および実施例により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変等したものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0147】
1 消耗電極式ガスシールドアーク溶接システム
2a ワイヤ送給装置
2b ワイヤ送給装置
3a 溶接電源
3b フィラー電源
4 溶接制御装置
5a 先行極トーチ
5b 後行極トーチ
6a 消耗電極ワイヤ
6b フィラーワイヤ
11 トーチボディ
12 ワイヤガイド
13a 接続部材
13b 接続部材
14 スプリングライナー
15 セラミックリング
16 絶縁カバー
17 給電ブロック
18a 絶縁ジョイント
18b 絶縁ジョイント
19 押えスプリング
21 出力制御素子
22 電流検出器
23 給電チップ
24 電圧検出器
25 先行極出力制御器
26 出力制御素子
27 電流検出器
28 電圧検出器
29 後行極出力制御器
30 電流比較器
31 波形生成器
32 波形設定器
33 くびれ検出器
34 パラメータ設定器
35 演算部
36 積分器
37 Sv2比較器
41 溶接電圧微分器
42 2階微分器
43 2階微分値設定器
44 比較器
201 第1パルス
202 第2パルス
304 アーク
305 消耗電極ワイヤ先端
306 溶滴のくびれ
A アーク、パルスアーク
De 電極間距離
Ex 通電加熱距離
G シールドガス
Ia 平均電流値
Ib1 第1パルスのベース電流値(第1パルスベース電流値)
Ib2 第2パルスのベース電流値(第2パルスベース電流値)
If フィラー電流値(フィラー電流の瞬時値)
Ip1 第1パルスのピーク電流値(第1パルスピーク電流値)
Ip2 第2パルスのピーク電流値(第2パルスピーク電流値)
Is 溶接電流設定値
Is2 溶接電流設定値
J フィラーワイヤの電流密度
M 溶融池
P1 フィラーワイヤ先端
P2 給電点
Tb1 第1パルスのベース期間(第1パルスベース期間)
Tb2 第2パルスのベース期間(第2パルスベース期間)
Tp1 第1パルスのピーク期間(第1パルスピーク期間)
Tp2 第2パルスのピーク期間(第2パルスピーク期間)
Tpb(n) 今回のパルス周期
Tpb(n−1) 前回のパルス周期
Vf フィラー電流の瞬時値
Vs 溶接電圧設定値
Vs2 溶接電圧設定値
Vw フィラーワイヤの送給速度
W 被溶接部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消耗電極ワイヤによるアークで形成された溶融池に、フィラー電流によって通電加熱されたフィラーワイヤを添加する消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法であって、
シールドガスとして炭酸ガスを用い、
1周期あたりパルスピーク電流レベルおよび/またはパルス幅の異なる2種類のパルス波形を交互に出力し、1周期あたり1溶滴を移行させるパルスアークを先行極アークとして用いて溶融池を形成し、
通電加熱された前記フィラーワイヤを後行極として前記溶融池に挿入し、
前記溶融池に挿入される前記フィラーワイヤの先端と前記フィラーワイヤの通電点との距離を、200〜500×10−3[m]とし、
先行極ベース電流値が後行極フィラー電流値よりも大きくなるように設定することを特徴とする消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法。
【請求項2】
前記消耗電極ワイヤの先端と前記フィラーワイヤの先端との距離である電極間距離De[m]を、4〜15×10−3[m]の範囲内とし、
前記電極間距離De[m]と、前記溶融池に挿入される前記フィラーワイヤの先端と前記フィラーワイヤの通電点との距離である通電加熱距離Ex[m]と、前記フィラーワイヤの送給速度Vw[m/s]と、前記フィラーワイヤの電流密度J[A/m]と、の関係を、下記式(1)を満たすものとすることを特徴とする請求項1に記載の消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法。
【数1】

【請求項3】
前記後行極フィラー電流値を150[A]以下とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の消耗電極式ガスシールドアーク溶接方法。
【請求項4】
1周期あたりパルスピーク電流レベルおよび/またはパルス幅の異なる2種類のパルス波形を交互に出力し、1周期あたり1溶滴を移行させるパルスアークを先行極アークとして用いて形成した溶融池に、フィラー電流によって通電加熱されたフィラーワイヤを添加する消耗電極式ガスシールドアーク溶接システムであって、
シールドガスとして炭酸ガスを用い、
先行極ベース電流値が後行極フィラー電流値よりも大きくなるように設定し、
先行極である消耗電極ワイヤを被溶接部材に供給する先行極トーチと、
前記溶融池に挿入される前記フィラーワイヤの先端と前記フィラーワイヤの通電点との距離が200〜500×10−3[m]である給電部材と、を備え、後行極である前記フィラーワイヤを前記溶融池に供給する後行極トーチと、
を備えることを特徴とする消耗電極式ガスシールドアーク溶接システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−230142(P2011−230142A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101110(P2010−101110)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】