説明

消臭剤

【課題】日常的に発生する臭いの解消手段として、安全性が高く取り扱いが容易で、しかも消臭効果の持続性に優れた消臭剤を提供する。
【解決手段】柑橘類、特にシークワーサーから抽出して得たエキス成分を含む消臭剤であって、シークワーサーエキス成分としては果肉及び果皮から抽出して得られた水溶性成分及び油溶性成分からなる混合エキス成分を使用することによって、L−アスコルビン酸及びフラボノイド類を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柑橘類から抽出して得たエキス成分を含む消臭剤であって、該エキス成分がL−アスコルビン酸及びフラボノイド類を含むことを特徴とする消臭剤であり、特に、シークワーサーから抽出して得たエキス成分を配合した消臭剤、詳細には、シークワーサー果肉及び果皮から抽出して得た、L―アスコルビン酸及びフラボノイド類を含むエキス成分を配合した消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、植物エキス成分を用いた消臭剤として、各種植物ならびに果実から抽出したエキス成分を用いた消臭剤が多数提案されている。植物エキス成分の中で、消臭効果が知られている成分としてL−アスコルビン酸やフラボノイド類が存在する。
【0003】
L−アスコルビン酸は、優れた酸化還元力を備えており、これが消臭効果に寄与する。L−アスコルビン酸を含む消臭剤としては、特許文献1及び2に示すように、L−アスコルビン酸と無機塩類/金属塩類との組み合せによる消臭用組成物などが提案されている。また、緑茶のフラボノイド類に弱い消臭効果が認められることは当業者間では公知となっている。
【特許文献1】特公平4−63705号公報
【特許文献2】特公平5−16301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら従来技術はいずれも、L−アスコルビン酸と無機塩類あるいは金属塩類などの化学薬品を併用するものであり、刺激性が懸念されるとともに、その取り扱いに際しては、ある程度の専門的知識と熟練を要するものであり、また、L−アスコルビン酸やフラボノイドを単独で使用した場合、満足のいく消臭効果が得られなかった。
【0005】
従って、日常的に発生する臭いの解消手段として、安全性が高く取り扱いが容易で、しかも消臭効果の持続性に優れた消臭剤が、当該技術分野では待望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上述した従来技術での背景に鑑み、様々な果実ならびに果皮に由来するエキス(成分)による消臭効果について鋭意検討を重ねた結果、柑橘類、その中でも特にシークワーサーから抽出して得たエキス成分に含まれるL−アスコルビン酸とフラボノイド類が、通常に化学的に単離して得たL−アスコルビン酸やフラボノイド類よりも改善された持続性を備えた消臭効果を呈するとの知見を得るに至り、本願発明を完成したものである。
【0007】
すなわち、本願発明の要旨とするところは、柑橘類、特にシークワーサーから抽出して得たエキス成分を含む消臭剤であって、当該エキス成分がL−アスコルビン酸及びフラボノイド類を含むことを特徴とした消臭剤にある。
【0008】
シークワーサーは柑橘類の一種であり、その果実は、各種アスコルビン酸を代表とするビタミン類、ノビレチンなどのフラボノイド類、有機酸、ミネラル、等の各種有用物質を多量に含有している。
【0009】
ただ、シークワーサーのエキス成分の中でも、L−アスコルビン酸等の水溶性ビタミンは果肉部に豊富に含まれている水溶性成分であり、一方、ノビレチンなどのフラボノイド類は果皮部に豊富に含まれている油溶性成分である。したがって、単に、果肉を圧搾しただけでは、水溶性成分であるL−アスコルビン酸は得られるものの、果皮に多量に含まれるノビレチンなどのフラボノイド類は約500分の1ほどの極微量しか得られず、逆に、果皮にはノビレチンなどのフラボノイド類は多量に含まれるものの、L−アスコルビン酸が含まれず、L−アスコルビン酸とフラボノイド類の相乗効果を期待した消臭剤としては十分なものではなかった。
【0010】
そこで、本発明においては、シークワーサー果肉及び果皮を同時に圧搾処理し残渣除去して得られた搾汁を遠心分離処理する工程を含む抽出方法によって得られたエキス成分を消臭剤の有効成分として含むことを特徴とする。
【0011】
すなわち、果肉及び果皮を同時に圧搾処理することにより、水溶性成分と油溶性成分とを抽出することが可能となり、これら両方の成分(混合エキス成分)を使用することでL−アスコルビン酸及びフラボノイド類を含む消臭剤を得ることが可能となる。このように水溶性成分と油溶性成分とからなる混合エキス成分の消臭剤用途への応用はいままで報告されていない。
【0012】
なお、興味深いことに、天然柑橘類から得られたL−アスコルビン酸及びフラボノイド類を含むエキス成分を配合した消臭剤は、化学的に単離されたL−アスコルビン酸やフラボノイド類を含む消臭剤に比べて消臭効果が高く、消臭剤全体に対するエキス成分の含有量が0.5重量%以上であれば優れた消臭効果を発揮する。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の消臭剤は、シークワーサー果肉及び果皮から抽出したエキス成分を配合したため、優れた消臭効果を発揮するのみならず、消臭剤としての有効成分は食品素材のみから得ることができるため、安全性が高く取り扱いが容易で、その廃棄処分に伴う環境への悪影響も懸念されないなどの効果をも派生する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願発明の消臭剤に含まれるシークワーサー果実ならびに果皮からのエキス成分の抽出方法は、シークワーサーの果肉と果皮を同時に洗浄処理後、圧搾処理を行い、残渣を分離し、分離した搾汁を遠心分離処理して、果汁と精油の混合物(混合エキス成分)を抽出することにより得られる。
【0015】
得られた混合エキス成分は、水溶性成分と、油溶性成分とが、混合部分と2相に分離した部分が存在する状態であり、消臭剤としてはこの状態のまま使用してもよいが、適当な界面活性剤を使用することで油溶性成分を水溶性成分に均一に分散あるいは溶解させると、消臭効果を均一化することができ一定の品質を確保できる点で好ましい。
【0016】
そして、このようにして抽出したエキス成分を含む本願発明の消臭剤は、通常の製剤化の方法に従って製剤化され、霧状、液状、クリーム状、あるいは固体(ブロック状、粒状、ゲル状など)の形態にて、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品(摂取することにより口臭等の臭いに対して消臭効果を標榜する食品)として提供される。
【0017】
なお、本願発明の消臭剤は、日常的に発生する臭い、例えば室内臭、車内臭、ゴミ臭などの環境に由来する臭い、あるいはペット臭、体臭、口臭、足臭などの生体に由来する臭いに対して適用可能である。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[消臭剤の調製]
表1に示すように、本発明品1を含む3種類の消臭剤を調製した。すなわち、上記実施形態で得られたシークワーサーの混合エキス成分100重量%品を本発明品1とし、比較品としてL−アスコルビン酸1%水溶液(比較品1)、緑茶フラボノイド配糖体1%水溶液(比較品2)の3種類の消臭剤を調製した。なお、シークワーサーの混合エキス成分100g中に含まれる各成分量は、L−アスコルビン酸20mg、ノビレチン250mgであった。
【0019】
【表1】

【0020】
[消臭剤の評価]
上記3種類の消臭剤を用いて、アルカリ系悪臭物質(0.5%アンモニア水溶液)と、酸性系悪臭物質(硫化水素飽和水溶液)に対する消臭効果について検知管法による評価を行なった。評価の手順は以下の通りである。
(1)10ccミニビーカーを、10リットルのガラスデシケータ中に静置する。
(2)前記ミニビーカーに、消臭剤5mlと、悪臭物質各5mlとを注入する。
(3)前記ガラスデシケータを密閉する。
(4)密閉して30分後、検知管(アルカリ系悪臭物質(アンモニア)に対しては、No.3La検知管(ガステック社製);酸性系悪臭物質(硫化水素)に対しては、No.4L検知管(ガステック社製))を用いて悪臭物質濃度を測定した。→「測定値1」
(5)上記(2)〜(4)において消臭剤の代りにイオン交換水5mlを注入したほかは、同様の操作で悪臭物質濃度を測定し、これをコントロール測定値とした→「測定値2」
(6)以下の式1に従って、各消臭剤の消臭率を求めた。
消臭率(%)=(測定値2−測定値1)×100/測定値2…(式1)
試験結果を、下記表2に示す。
【0021】
【表2】

【0022】
[評価結果]
表2に示した結果より、本願発明に係る消臭剤である本発明品1は、液体(液剤)の態様において、L−アスコルビン酸を配合した比較品1及び緑茶フラボノイド配糖体を配合した比較品2と比較して改善された消臭効果を示すことが確認された。
【実施例2】
【0023】
[噴霧用消臭剤の調製]
表3記載の組成を有する噴霧用消臭剤(本発明品2)を調製した。なお、比較剤として比較品3(表3のシークワーサーエキス成分をL−アスコルビン酸1%水溶液で置換したもの)、比較品4(表3のシークワーサーエキス成分を緑茶フラボノイド配糖体1%水溶液で置換したもの)を用いた。
【0024】
【表3】

【0025】
[消臭剤の評価]
得られた3種類の消臭剤(本発明品2、比較品3及び比較品4)を用いて、噴霧用消臭剤としての消臭効果について評価を行なった。評価の手順は、実施例1記載の消臭剤の評価方法手順において、(2)について「前記ミニビーカーに、悪臭物質各5mlを注入し、消臭剤を自動噴霧器により5分間で5mlを空間噴霧した。」と読み替え、その他の手順は同様にして、消臭効果について検知管法によって検定を行った。
試験結果を、下記表4に示す。
【0026】
【表4】

【0027】
[評価結果]
表4に記載の結果より、シークワーサーから抽出されたエキス成分を希釈して噴霧用消臭剤として適用しても、L−アスコルビン酸を配合した比較品3及び緑茶フラボノイド配糖体を配合した比較品4と比較して改善された消臭効果を示すことが確認された。
【実施例3】
【0028】
[口臭防止用食品消臭剤の調製]
表5記載の組成を有する消臭剤(本発明品3)を調製した。具体的には、ゼラチン外皮を0.5g使用し、内容物を300mg封入したソフトカプセルを調整した。比較剤として比較品5(表5のシークワーサー混合エキス成分をグリセリンで置換したもの)を用いた。
【0029】
【表5】

【0030】
[消臭剤の評価]
得られた本発明に係る消臭剤(本発明品3)と、比較品5を用いて、14名が餃子(王将製)100gを食べた後、表6のように本発明品3、比較品5を水100mlとともに飲用した群と、何も食べず水100mlを飲用したコントロールの群を、飲用15分後、臭気判定士による口臭の低減効果に関する官能試験を実施した。
試験結果を、下記表6に示す。
【0031】
【表6】

【0032】
[評価結果]
表6に記載の結果より、本願発明の消臭剤(本発明品3)を食品として適用しても、グリセリンを配合した比較品5からして、改善された消臭効果を示すことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘類から抽出して得たエキス成分を含む消臭剤であって、該エキス成分がL−アスコルビン酸及びフラボノイド類を含むことを特徴とする消臭剤。
【請求項2】
前記フラボノイド類が、ノビレチンであることを特徴とする請求項1記載の消臭剤。
【請求項3】
前記柑橘類が、シークワーサーであることを特徴とする請求項1又は2記載の消臭剤。
【請求項4】
前記エキス成分が、シークワーサー果肉及び果皮を同時に圧搾処理し残渣除去して得られた搾汁を遠心分離処理する工程を含む抽出方法によって得られたエキス成分である請求項3記載の消臭剤。
【請求項5】
シークワーサーの果肉及び果皮から抽出して得られた水溶性成分及び油溶性成分からなる混合エキス成分を含有することを特徴とする消臭剤。
【請求項6】
前記エキス成分の含有濃度が0.5重量%以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の消臭剤。
【請求項7】
前記消臭剤が、噴霧用剤、液状、クリーム状、固体、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択された形態の医薬品、医薬部外品、化粧品、食品(消臭効果を標榜するものに限る)、または、室内用消臭剤である請求項1〜6のいずれかに記載の消臭剤。
【請求項8】
前記消臭剤が、室内臭、車内臭、ゴミ臭、ペット臭、体臭、口臭、足臭、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択された臭いを除去するための消臭剤である請求項1〜7のいずれかに記載の消臭剤。

【公開番号】特開2006−87754(P2006−87754A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278580(P2004−278580)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【特許番号】特許第3665327号(P3665327)
【特許公報発行日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】